JP2009001614A - ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、該製造方法で得られたポリ乳酸ブロック共重合体、およびこれを用いた成形品 - Google Patents

ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、該製造方法で得られたポリ乳酸ブロック共重合体、およびこれを用いた成形品 Download PDF

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強志 青木
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Abstract

【課題】低コストおよび低エネルギーで製造でき、ポリマー中の金属等の不純物が低減され、かつ、ステレオコンプレックス結晶の含有率が増大しうるポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ−L−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、またはポリ−D−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である:
Figure 2009001614

【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、該製造方法で得られたポリ乳酸ブロック共重合体、およびこれを用いた成形品に関する。
石油由来のプラスチックの多くは軽く強靭であり耐久性に優れ、容易に所望の形に成形することが可能であるので、量産されて我々の生活を多岐にわたって支えてきた。しかし、これらプラスチックは、環境中に廃棄された場合、容易に分解されずに蓄積する。また、焼却の際には大量の二酸化炭素を放出し、地球温暖化に拍車を掛けている。
よって、地球環境保護の目的から、非石油原料からなる樹脂、または自然環境下で微生物等によって分解される生分解性樹脂が注目され、近年世界中で研究されている。現在検討されているほとんどの生分解性樹脂は、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し、微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される成形工程における分子量低下、または色相悪化が深刻である。
その中でもポリ乳酸(以下、PLAとも称す)は、原料である乳酸またはラクチドが、天然物から製造することが可能であり、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックである。ポリ−L−乳酸(以下、PLLAとも称す)またはポリ−D−乳酸(以下、PDLAとも称す)のホモポリマー(以下、homoPLAとも称す)の製造方法としては、開環重合法や直接重合法(脱水縮合)が知られている。
homoPLAを製造する方法としては、一般的にL−ラクチドまたはD−ラクチドに対してオクチル酸スズ等の金属触媒を添加し、不活性ガス雰囲気下で、大気圧または減圧下での200℃付近の溶融重合が知られている。この方法によれば、比較的高分子量のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸が得られる。しかしながら、前記金属触媒は、酸による洗浄や脱金属等の工程を行わない限り、ポリ乳酸中に残存し、ポリ乳酸の耐熱性や安全性に悪影響を及ぼし、また、高温で重合を行うため多大なエネルギーを必要とするといった問題があった。また、一方で、実質的に金属を含まない化合物の存在下で、ポリマーを得る試みがなされている。例えば、特許文献1には、触媒として3級アミノ基とアルコール性ヒドロキシ基とを有する化合物の存在下で、ラクチドを開環重合させるポリマーの製造方法が開示されている。
一般的に、PLLAおよびPDLAの融点は、共に170℃付近とされている。そのため、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表される石油化学系ポリエステルと比較すると耐熱性が低く、例えば、製造したポリ乳酸のホモポリマー(homoPLA)を繊維等として使用する場合、製品にアイロンが掛けられないといった課題を抱えている。そのため、より高い耐熱性が必要とされているのが現状である。このような現状を打開すべく、ポリ乳酸の耐熱性向上について検討がなされてきた。その1つに、PLLAとPDLAとを混合して形成してなるステレオコンプレックスポリ乳酸(以下、scPLAとも称す)が挙げられる。しかしながら、特に高分子量領域では、ステレオコンプレックス結晶の含有率が100%であるポリ乳酸を形成することは困難であり、homoPLAが存在することで、高融点を有するscPLAの特徴が十分に生かされない問題があった。そこで、homoPLAが混在せず、安定してステレオコンプレックス結晶の含有率が100%であるポリ乳酸を作ることが強く求められている。
前記のような要求に対して、scPLA同様、PLLAとPDLAとを同量混合し、PLLAとPDLAとを反応させてブロック共重合体を形成させ、該ブロック共重合体中の異なる分子のポリ−L−乳酸ブロックとポリ−D−乳酸ブロックとの間で、ステレオコンプレックス構造を形成させるステレオブロックポリ乳酸(以下、sbPLAとも称す)の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、ポリ乳酸ブロック共重合体の異なる分子間の、ポリ−L−乳酸ブロックとポリ−D−乳酸ブロックとが優先的にscPLAを形成し、DSCチャート上にhomoPLAのピークは確認されなくなる。すなわち、homoPLAが混在せず、安定してステレオコンプレックス結晶の含有率が100%であるポリ乳酸を製造することができる。
特開2004−331782号公報 特開2006−28336号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、120〜130℃の高温重合が必要であり、重合時間も約24時間の長時間を必要とするため、脂肪族ポリエステルの製造時に多大なエネルギーを必要とする。また、得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量の上限が約20,000となっており、高分子量の脂肪族ポリエステルが得られないという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術によれば、オクチル酸スズを触媒として使用しており、酸による洗浄や脱金属等が不十分であった場合に、得られたポリ乳酸中に金属成分が残留し、ポリ乳酸の耐熱性や安全性が不十分であるという問題がある。
そこで、本発明は、低コストおよび低エネルギーで製造でき、ポリマー中の金属等の不純物が低減され、かつ、ステレオコンプレックス結晶の含有率が増大しうるポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討を積み重ねた結果、ポリ−L−乳酸を得る第1の工程と、グアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法、またはポリ−D−乳酸を得る第1の工程と、グアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法により、低温および短時間で、金属などの不純物を実質的に含まず、かつ、高いステレオコンプレックス結晶の含有率を有するポリ乳酸ブロック共重合体が製造されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリ−L−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
また、本発明は、ポリ−D−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法によれば、従来の製造方法では困難であった重量平均分子量が10,000を超える高い分子量を有し、かつ、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長するポリ乳酸ブロック共重合体が提供されうる。
また、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法によれば、実質的に金属を含まない触媒を用いて、温和な条件下で製造が可能なため、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造時のエネルギーを低減させることができ、かつ、得られる製品の色相や安定性が改良されうる。
さらに、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、耐熱性に優れるので、溶融成形して、糸、フィルム、または各種の成形体にすることができる。特に、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体を、ポリ乳酸の用途としては従来不適であった繊維として使用した場合、160℃、更にはより高温(180℃程度)でのアイロン掛けを行っても、繊維生地を痛めることがないため、あらゆる繊維製品に幅広く適用できる。また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、生分解性を有することから、廃棄後も環境への影響がない地球環境にやさしい製品を提供することができる。さらに、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、実質的に金属を含まないため、安全性の要求される医療用材料として使用可能である。また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、色相が良好なため、高い透明性等を要求される光学材料等への使用も可能である。さらに、本発明の製造方法では、使用するL体(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド;L成分)とD体(ポリ−D−乳酸またはD−ラクチド;D成分)の組成(質量比)が大幅に偏っていても、ステレオコンプレックス結晶の含有率が極めて高い、ポリ−L−乳酸ブロックとポリ−D−乳酸ブロックとを有する、ステレオコンプレックスポリ乳酸ブロック共重合体を製造することができる。そのため、製造段階でL体とD体の製造コストおよび/または価格差がある場合に、安価なほうをより多く用いて本発明の製造方法を採用することにより、従来のステレオコンプレックスポリ乳酸と同等の特性を有し、極めて低コストで安価で、かつ高機能および高付加価値を有する製品を製造し提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1は、ポリ−L−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
本発明の第2は、ポリ−D−乳酸を得る第1の工程と、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法である。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
現在、ポリ−D−乳酸の原料となりうるD−ラクチドは、供給源が限られている上に流通量が少なく、L−ラクチドと比較して価格が高いため、ステレオコンプレックス結晶の含有率が100%であるsbPLAの製造コストも必然的に高くなる。しかし、本発明にの製造方法により、D−ラクチドの使用量が抑制され、製造コストが大幅に削減されうる。また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、将来的に、L−ラクチドとD−ラクチドのコスト構造が逆転した場合でも、安価な原料の方を大量に使用して、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を等量混合して得られるsbPLAと同様の耐熱性を実現することができ、製造コストの大幅な削減につながるため、原料価格の変動によらず安定して安価なポリ乳酸ブロック共重合体が提供されうる。さらに、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、実質的に金属を含まないため、従来品より安全で安定性に優れた製品となりうる。
以下、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法を詳細に説明する。
[第1の工程]
本発明の第1の工程は、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を得る工程である。
前記ポリ−L−乳酸(PLLA)または前記ポリ−D−乳酸(PDLA)は、下記化学式(3)で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から実質的に構成される。
Figure 2009001614
前記PLLAは、PLLA中の全ての構成単位を100mol%として、好ましくは90〜100mol%、より好ましくは92〜100mol%、さらに好ましくは95〜100mol%のL−乳酸単位から構成され、L−乳酸単位以外の構成単位を含んでいても良い。L−乳酸単位以外の構成単位の含有量は、好ましくは0〜10mol%、より好ましくは0〜8mol%、さらに好ましくは0〜5mol%である。PLLA中のL−乳酸単位が90mol%未満であると、本発明の製造方法により製造されるポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。PLLA中に含まれうる他の構成単位の例としては、D−乳酸単位、乳酸以外の化合物由来の構成単位などが挙げられる。
前記PDLAは、PDLA中の全ての構成単位を100mol%として、好ましくは90〜100mol%、より好ましくは92〜100mol%、さらに好ましくは95〜100mol%のD−乳酸単位から構成され、D−乳酸単位以外の構成単位を含んでいても良い。D−乳酸単位以外の共重合成分単位の含有量は、好ましくは0〜10mol%、より好ましくは0〜8mol%、さらに好ましくは0〜5mol%である。PDLA中のD−乳酸単位が90mol%未満であると、本発明の製造方法により製造されるポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。PDLA中に含まれうる他の構成単位の例としては、L−乳酸単位、乳酸以外の化合物由来の構成単位などが挙げられる。
前記PLLA中または前記PDLA中に含まれうる乳酸以外の化合物由来の構成単位の例としては、例えば、ジカルボン酸由来の単位、多価アルコール由来の単位、ヒドロキシカルボン酸由来の単位、もしくはラクトン由来の単位、またはこれらの構成単位から得られるポリエステル由来の単位、ポリエーテル由来の単位、もしくはポリカーボネート由来の単位などが好ましく挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
前記ジカルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸などが好ましく挙げられる。前記多価アルコールの例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、もしくはポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコール、またはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させた芳香族多価アルコールなどが好ましく挙げられる。前記ヒドロキシカルボン酸の例として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸などが挙げられる。前記ラクトンの例としては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどが好ましく挙げられる。
前記PLLAまたは前記PDLAの重量平均分子量は、好ましくは1,000〜450,000、より好ましくは5,000〜225,000である。前記PLLAまたは前記PDLAの重量平均分子量が上記範囲から外れると、本発明の製造方法により得られたポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。なお、本発明において、前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
前記PLLAまたは前記PDLAの分子量分布は、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.1〜2.0である。前記PLLAまたは前記PDLAの分子量分布が上記範囲内であると、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり、好ましい。前記PLLAまたは前記PDLAの分子量分布が上記範囲から外れると、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。なお、本発明において、前記分子量分布(MwD)は、前記GPC法により得られたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との値を用いて、下記数式1により計算した値を採用するものとする。
Figure 2009001614
前記PLLAまたは前記PDLAを得る方法は、特に制限されず、例えば、L−乳酸またはD−乳酸を脱水縮合する方法、L−ラクチドまたはD−ラクチドを開環重合する方法などが挙げられるが、高分子量体を得やすく、分子量の制御も容易であることから、L−ラクチドまたはD−ラクチドを開環重合する方法が好ましい。
前記開環重合は、有機溶媒と重合触媒との存在下で行われうる。前記重合触媒は特に制限されず、その具体的な例としては、例えば、粉末スズ、酸化スズなどの無機スズ化合物、乳酸スズ、酒石酸スズ、オクタン酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズなどの有機スズ化合物、亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛化合物などの亜鉛化合物、テトラプロピルチタネートなどのチタン化合物、ジルコニウムイソプロポキシドなどのジルコニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、酸化ビスマス(III)などのビスマス化合物、酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウム化合物などの金属触媒;1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エンなどのグアニジン骨格を有する化合物、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールなどの3級アミン構造とアルコール性ヒドロキシ基とを併せ持つ化合物、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸などのスルホン酸化合物などの非金属触媒などが好ましく挙げられる。中でも、触媒として、グアニジン骨格を有する化合物を用いることがより好ましい。前記グアニジン骨格を有する化合物を用いることにより、オクタン酸スズなどの金属触媒を用いた場合の重合温度(約180℃以上)に比べて、低い温度での重合が可能であり、かつ、従来のオクタン酸スズ等の金属触媒を用いた場合の重合時間(約1〜5時間)に比べて、極めて短い時間での重合が可能である。また、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合は、金属触媒を必要としないため、従来行われていたポリマーの洗浄や脱金属などの工程を必要としない。さらに、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合は、溶液状態での重合が可能であり、従来の金属触媒を用いた場合のバルク重合に比べて、重合操作性も向上する。したがって、前記PLLAまたは前記PDLAの製造時のエネルギーの低減や、ポリマーの製造工程の簡素化が可能となり、ポリマーの製造コストを低減させることができる。また、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる方法は、反応系内の水分量や、触媒として用いられる前記グアニジン骨格を有する化合物の添加量などを制御することにより、高い分子量および/または小さい分子量分布を有するsbPLAの製造が可能となる。さらに、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合は、金属触媒を使用しないことから、得られるポリマー中に金属などの不純物がほとんど残存しないため、ポリマーの耐熱性、耐候性、保存安定性、または安全性などが改良されうる。
本工程で使用する反応容器は、特に制限されず、例えば、重合釜、混練押し出し機、管型の反応器など、従来公知のものを使用でき、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
本工程は、後述する第2の工程と同じ容器で行ってもよいし、別の容器で行っても良いが、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合を本工程に採用することにより、本工程が終了した後の生成物を単離することなく、後述する第2の工程を本工程から連続的に行うことができ、更なる製造時のエネルギーの低減、ポリマーの製造工程の簡素化、およびポリマーの製造コストの低減が可能となる。
本工程および後述する第2の工程での反応方式も、特に制限されず、連続方式であっても、バッチ方式であっても、またはこれらの組み合わせであっても良い。
以下、本工程において、前記グアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合を採用した場合の反応条件である反応系内の水分量、グアニジン骨格を有する化合物の量、ならびに重合時間および重合温度について述べる。これ以外の反応条件である、ラクチドの純度および光学純度、有機溶媒、グアニジン骨格を有する化合物の種類、反応系の雰囲気、ならびに重合開始剤については、後述する第2の工程と同様であるので、これらの反応条件については、後述の第2の工程において詳細に述べる。
<グアニジン骨格を有する化合物の使用量>
本工程におけるグアニジン骨格を有する化合物の使用量は、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、好ましくは0.01〜15mol%、より好ましくは0.1〜1mol%、さらに好ましくは0.3〜0.5mol%である。前記グアニジン骨格を有する化合物の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、0.01mol%未満であると、重合反応が完了する前に触媒が失活し、目的の分子量を有するポリマーが得られない場合がある。一方、前記グアニジン骨格を有する化合物の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、15mol%を超えると、重合反応の制御が難しくなる場合があり、第1の工程終了後に得られるポリマーの光学純度が低下する場合があり、後述する第2の工程終了後に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量分布(MwD)が大きくなる場合がある。
<反応系内の水分量>
高い分子量を有するポリ乳酸ブロック共重合体を得るという観点から、前記開環重合を行う前に、反応系内の水分量を制御することが重要である。反応系内の水分は、触媒として用いられるグアニジン骨格を有する化合物の触媒能を失活させ、また分子量の制御に影響するため、反応系内の水分量は少ないほど好ましい。
本工程において、開環重合を行う前の反応系内の水分量は、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して0〜4mol%であることが好ましく、0〜0.2mol%であることがより好ましい。前記水分量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して4mol%を超えると重合そのものが進行しない場合がある。なお、本発明において、前記水分量は、カールフィッシャー法を用い、電量滴定法により測定した値を採用するものとする。
反応系内の水分量を前記の範囲内に制御するために、脱水剤を使用することができる。脱水剤は、得られるポリマーの分子量に影響する重合反応系内の水分量を低減させる役割を果たしうるものである。前記脱水剤を用いる方法は特に制限されず、例えば、本工程で用いる有機溶媒を、反応前にあらかじめ脱水処理する際に前記脱水剤を用いてもよいし、開環重合を行う前に、前記有機溶媒に前記L−ラクチドまたはD−ラクチドを溶解させて調製した溶液に、前記脱水剤を加えて脱水処理を行ってもよいし、またはこれらの方法を併用してもよい。
前記脱水剤の具体的な例としては、シリカゲル、活性アルミナ、水素化カルシウム、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、または無水硫酸マグネシウムなどが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これらの中でも、再生利用が可能であるという観点から、シリカゲル、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、および無水硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
<重合温度および重合時間>
本工程における重合温度は、特に制限されないが、好ましくは−40〜100℃、より好ましくは−20〜40℃である。重合温度が−40℃未満であると、前記L−ラクチドまたはD−ラクチドを十分に溶解することができない場合があり、また、重合反応の進行と共に反応液の粘度が上昇するため、反応操作性が悪くなるとともに重合反応も不均一となり、低分散度のポリマーが得られない場合がある。一方、重合温度が100℃を超えると、触媒の失活が速く起こり、目標の分子量のポリマーが得られ難くなる場合があるとともに、ポリマーの着色が起こる場合がある。
本工程における重合時間は、重合温度によりその最適な時間が変わりうるが、例えば、重合温度が25℃の場合の重合時間は、好ましくは0.1〜30分、より好ましくは0.5〜10分である。重合温度が25℃の場合の重合時間が0.1分未満であると、未反応のL−ラクチドまたはD−ラクチドが多く存在するため、目的の分子量を有するポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合がある。また、本工程における未反応のL−ラクチドまたはD−ラクチドと、後述する第2の工程で添加するラクチドとが、ランダム共重合してしまうため、sbPLAの製造が困難になる場合がある。一方、重合温度が25℃の場合の重合時間が30分を超えると、本工程で得られるPLLAまたはPLDAの解重合や、本工程で得られるPLLAまたはPLDA同士のエステル交換反応が起こるため、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が低下するとともに、後述のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長が、後述する好ましい範囲から外れ、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合や、sbPLAの製造が困難となる場合がある。
[第2の工程]
前記第1の工程が終わった後に、第2の工程を行う。本工程では、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドまたはD−ラクチドの開環重合を行う。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
以下、第2の工程について、詳細に述べる。
<ラクチドの純度および光学純度>
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合、および本工程の原料として用いられるL−ラクチドまたはD−ラクチドの純度は、高い分子量を有するポリマーを得るという観点から、L−ラクチドまたはD−ラクチド中の遊離酸量が、L−ラクチドまたはD−ラクチド100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。なお、ここで言う遊離酸量とは、原料中に含まれる乳酸、環状でない乳酸縮合物、乳酸以外の有機酸などを中和したときに消費される塩基のmol数を乳酸の質量に換算し、L−ラクチドまたはD−ラクチドの質量に対する割合で表したものである。L−ラクチドまたはD−ラクチド中の遊離酸量が、10質量%を超えると、開環重合反応が進行せず、高分子量のポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合がある。L−ラクチドまたはD−ラクチドを精製する方法は、特に制限されず、例えば、晶析もしくは蒸留など従来公知の方法、特開2004−149418号公報に記載の方法、または特開2004−149419号公報に記載の方法などを、適宜選択して用いることができる。
前記第1の工程および本工程で用いられるL−ラクチドまたはD−ラクチドの光学純度は、好ましくは90〜100%ee、より好ましくは95〜100%ee、さらに好ましくは98〜100%eeである。光学純度が90%ee未満であると、得られるポリ乳酸ブロック共重合体が結晶とならないか、または得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点および結晶融解エンタルピー(ΔH)が低下する場合がある。
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程を行う前に添加するL−ラクチドまたはD−ラクチドは、他の成分を含んでいても良い。前記他の成分の例としては、添加するラクチドと逆の光学活性を有するラクチド、メソ−ラクチド、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、またはラクトンなどが好ましく挙げられる。前記ジカルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸などが好ましく挙げられる。前記多価アルコールの例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、もしくはポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコール、またはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させた芳香族多価アルコールなどが好ましく挙げられる。前記ヒドロキシカルボン酸の例として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸などが挙げられる。前記ラクトンの例としては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどが好ましく挙げられる。
第1の工程で添加されうるラクチド以外の成分の量は、第1の工程で用いられるモノマーの総モル数を100mol%として、好ましくは0〜10mol%、より好ましくは0〜8mol%である。また、本工程で添加されうるラクチド以外の成分の量は、本工程で用いられるモノマーの総モル数を100mol%として、好ましくは0〜10mol%、より好ましくは0〜8mol%である。
<有機溶媒>
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程で用いられる有機溶媒は、特に制限されず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶媒などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジオキサン、およびテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程における前記有機溶媒の使用量は、第1の工程で使用するL−ラクチドもしくはD−ラクチド、または第2の工程で使用するL−ラクチドもしくはD−ラクチド100質量%に対して、好ましくは100〜2000質量%、より好ましくは200〜1000質量%、さらに好ましくは200〜600質量%である。前記有機溶媒の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100質量%に対して、100質量%未満であると、前記L−ラクチドまたはD−ラクチドを十分に溶解することができない場合があり、また、重合反応の進行と共に重合液の粘度が上昇するため、重合操作性が悪くなるとともに重合反応も不均一となり、低分散度のポリマーが得られない場合がある。前記有機溶媒の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100質量%に対して、2000質量%を超えると、反応系内に混入する水分量が多くなることから、高分子量のポリマーを得るために多量の脱水剤を必要とし、製造コストが上昇する場合がある。
<グアニジン骨格を有する化合物の種類>
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程で用いられるグアニジン骨格を有する化合物は、下記化学式(1)で表されるグアニジン構造を分子内に有する化合物である。前記グアニジン骨格を有する化合物は、L−ラクチドまたはD−ラクチドの開環重合の触媒としての役割を果たす。
Figure 2009001614
前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基である。その具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−アミル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、4−メチルペンチル基、4−メチルペンタン−2−イル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−(n−プロピル)ブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキサン−2−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、1,1−ジメチルペンタン−1−イル基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イル基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−メチルヘプタン−2−イル基、3−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ノニル基、1−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−(n−ブチル)ペンチル基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、1,1,5−トリメチルヘキシル基、2−メチルオクタン−3−イル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−(n−ブチル)ヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、n−ドデシル基、1−メチルウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、1−メチルトリデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、またはn−エイコシル基などが挙げられる。前記アルキル基の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、−NH基、−NH(R)基(Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基である)、−N(R’)(R”)基、(R’およびR”は互いに独立して、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素数5〜20のヘテロアリール基、または窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素数6〜20のヘテロアリールアルキル基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるアルコキシ基は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基である。その具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−へキシルオキシ基、3−メチルペンタン−2−イルオキシ基、3−メチルペンタン−3−イルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンタン−2−イルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブタン−2−イルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、3−メチルヘキシルオキシ基、4−メチルヘキシルオキシ基、5−メチルヘキシルオキシ基、1−エチルペンチルオキシ基、1−(n−プロピル)ブチルオキシ基、1,1−ジメチルペンチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、1,1−ジエチルプロピルオキシ基、1,3,3−トリメチルブチルオキシ基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−メチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,4−ジメチルペンタン−3−イルオキシ基、1,1−ジメチルペンタン−1−イルオキシ基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イルオキシオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、1−メチルヘプチルオキシ基、2−メチルヘプチルオキシ基、5−メチルヘプチルオキシ基、2−メチルヘプタン−2−イルオキシ基、3−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−4−イルオキシ基、1−エチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−プロピルペンチルオキシ基、2−プロピルペンチルオキシ基、1,1−ジメチルヘキシルオキシ基、1,4−ジメチルヘキシルオキシ基、1,5−ジメチルヘキシルオキシ基、1−エチル−1−メチルペンチルオキシ基、1−エチル−4−メチルペンチルオキシ基、1,1,4−トリメチルペンチルオキシ基、2,4,4−トリメチルペンチルオキシ基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピルオキシ基、1,1,3,3−テトラメチルブチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、1−メチルオクチルオキシ基、6−メチルオクチルオキシ基、1−エチルヘプチルオキシ基、1−(n−ブチル)ペンチルオキシ基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチルオキシ基、1,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、1,1,5−トリメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクタン−3−イルオキシ基、n−デシルオキシ基、1−メチルノニルオキシ基、1−エチルオクチルオキシ基、1−(n−ブチル)ヘキシルオキシ基、1,1−ジメチルオクチルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、1−メチルデシルオキシ基、1−エチルノニルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、1−メチルウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、1−メチルトリデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、またはn−エイコシルオキシ基などが挙げられる。前記アルコキシ基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるシクロアルキル基は、炭素数4〜20のシクロアルキル基であり、その具体的な例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロテトラデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基、またはシクロエイコシル基などが挙げられる。前記シクロアルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるアリール基は、炭素数6〜30の芳香族単環または芳香族縮合環を有する基である。その具体的な例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、または9−フェナントリル基などが挙げられる。前記アリール基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるアリールアルキル基は、炭素数6〜30の芳香族単環または芳香族縮合環と、炭素数1〜3の直鎖状または分岐状のアルキル部分とを有する基である。その具体的な例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、3−(1−ナフチル)プロピル基、または3−(2−ナフチル)プロピル基などが挙げられる。前記アリールアルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環複素環または縮合複素環を有する炭素数2〜30の基である。前記へテロアリール基の具体的な例としては、フリル基、ピラニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、イソクロメニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チオピラニル基、チオクロメニル基、イソチオクロメニル基、チオキサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサチアゾリル基、オキサチアジニル基、ベンゾキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、チアナフテル基、イソチアナフテル基、チアジアゾリル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、キノリニル基、ナフチジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾキサジニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノテルラジニル基、フェノセレナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アンチリジニル基、ホスフィンドリニジル基、2H−イソホスフィンドリル基、ホスフィンドリル基、2H−ホスフィノリジニル基、イソホスフィノリニル基、またはホスフィノリニル基などが挙げられる。前記ヘテロアリール基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるヘテロアリールアルキル基は、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素数2〜30の単環複素環または縮合複素環と、炭素数1〜3の直鎖状または分岐状のアルキル部分とを有する基である。その具体的な例としては、2−ピロリルメチル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基、2−チエニルメチル基、2−(2−ピリジル)エチル基、2−(3−ピリジル)エチル基、2−(4−ピリジル)エチル基、または3−(2−ピロリル)プロピル基などが挙げられる。前記ヘテロアリールアルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記化学式(1)中の、R、R、R、R、およびRで用いられうるヘテロ環基は、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む飽和環を有する炭素数2〜30の基である。前記へテロ環基の具体的な例としては、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、イソチアゾリジニル基、オキサゾリジニル基、イソオキサゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、チオモルホリニル基、モルホリニル基、ヘキサヒドロピロリジニル基、オクタヒドロインドリジニル基、オクタヒドロイソインドリル基、オクタヒドロインドリル基、テトラヒドロオキサジアジニル基、ヘキサヒドロトリアジニル基などが挙げられる。前記ヘテロ環基中の1つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換されうる。
前記グアニジン骨格を有する化合物としては、メチルグアニジン、アミノグアニジン、1,3−ジメチルグアニジン、2−アミジノグアニジン、1,3−ジアミノグアニジンが好ましく、メチルグアニジン、アミノグアニジンがより好ましい。
また、前記化学式(1)中のRおよびR、ならびにRおよびRのいずれか一方または両方は、互いに連結されて環を形成してもよい。前記環の例としては、置換基を有していてもよいイミダゾール環、置換基を有していてもよいピリミジン環、置換基を有していてもよいプリン環、置換基を有していてもよいキナゾリン環、置換基を有していてもよいプテリジン環、または置換基を有していてもよいペリミジン環などが挙げられる。
さらに、前記化学式(1)中の、RおよびRならびにRおよびRが互いに連結して形成される、下記化学式(2)で表されるトリアザビシクロ環を有する化合物も、本発明で用いられるグアニジン骨格を有する化合物の範囲に含まれる。
Figure 2009001614
前記トリアザビシクロ環を有する化合物としては、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エン、および7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エンの少なくとも一方であることが好ましい。
前記グアニジン骨格を有する化合物は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
<グアニジン骨格を有する化合物の使用量>
本工程における前記グアニジン骨格を有する化合物の使用量は、本工程で使用するL−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、好ましくは0.01〜15mol%、より好ましくは0.1〜1mol%、さらに好ましくは0.3〜0.5mol%である。前記グアニジン骨格を有する化合物の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、0.01mol%未満であると、重合反応が完了する前に触媒が失活し、目的の分子量を有するポリマーが得られない場合がある。一方、前記グアニジン骨格を有する化合物の使用量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、15mol%を超えると、重合反応の制御が難しくなる場合があり、後述のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長が、後述する好ましい範囲から外れ、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合や、sbPLAの製造が困難となる場合があり、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量分布(MwD)が大きくなる場合がある。
本発明の製造方法において、前記のようなグアニジン骨格を有する化合物の使用量とするために、前記第1の工程と本工程との間に、前記グアニジン骨格を有する化合物を添加する工程をさらに含むことができる。
<反応系内の水分量>
高い分子量を有するポリ乳酸ブロック共重合体を得るという観点から、本工程の開環重合を行う前においても、反応系内の水分量を制御することが重要である。反応系内の水分は、触媒として用いられるグアニジン骨格を有する化合物の触媒能を失活させ、また分子量の制御に影響するため、反応系内の水分量は少ないほど好ましい。
本工程において、開環重合を行う前の反応系内の水分量は、L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して0〜4mol%であることが好ましく、0〜0.2mol%であることがより好ましい。前記水分量が、前記L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して4mol%を超えると重合そのものが進行しない場合がある。
反応系内の水分量を前記の範囲内に制御するために、脱水剤を使用することができる。脱水剤は、得られるポリマーの分子量に影響する重合反応系内の水分量を低減させる役割を果たしうるものである。前記脱水剤を用いる方法は特に制限されず、例えば、本工程で用いる有機溶媒を、反応前にあらかじめ脱水処理する際に前記脱水剤を用いてもよいし、開環重合を行う前に、前記有機溶媒に前記L−ラクチドまたはD−ラクチドを溶解させて調製した溶液に、前記脱水剤を加えて脱水処理を行ってもよいし、またはこれらの方法を併用してもよい。
前記脱水剤の具体的な例は、前記第1の工程において例示したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
<反応系の雰囲気>
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程における開環重合の雰囲気は特に制限されず、例えば、大気下、または窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下などを適宜採用することができるが、反応系内の水分量をできるだけ少なくするという観点から、重合反応の雰囲気は、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
<重合開始剤>
第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程における開環重合を開始する前に、重合開始剤をさらに使用することができる。前記重合開始剤は、第1の工程後に得られるポリ乳酸または第2の工程後に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量を制御する役割を果たしうるものである。
前記重合開始剤の具体的な例としては、1−ピレンブタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコールなどが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
前記重合開始剤の使用量は、第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および本工程における開環重合で使用するL−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、好ましくは0〜0.5mol%、より好ましくは、0〜0.2mol%である。前記重合開始剤の使用量が、L−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して0.5mol%を超えると、高い分子量を有するポリ乳酸ブロック共重合体を得ることが困難となる場合がある。
<重合温度および重合時間>
本工程における重合温度は、特に制限されないが、好ましくは−40〜100℃、より好ましくは−20〜40℃である。重合温度が−40℃未満であると、前記L−ラクチドまたはD−ラクチドを十分に溶解することができない場合があり、また、重合反応の進行と共に反応液の粘度が上昇するため、反応操作性が悪くなるとともに重合反応も不均一となり、低分散度のポリマーが得られない場合がある。一方、重合温度が100℃を超えると、触媒の失活が速く起こり、目標の分子量のポリマーが得られ難くなる場合があるとともに、ポリマーの着色が起こる場合がある。
本工程における重合時間は、重合温度によりその最適な時間が変わりうるが、例えば、重合温度が25℃の場合、重合時間は好ましくは0.1〜30分、より好ましくは0.5〜10分である。重合温度が25℃の場合の重合時間が0.1分未満であると、未反応のL−ラクチドまたはD−ラクチドが多く存在するため、目的の分子量を有するポリ乳酸ブロック共重合体が得られない場合があり、得られるポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。一方、重合温度が25℃の場合の重合時間が30分を超えると、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の解重合や得られるポリ乳酸ブロック共重合体同士がエステル交換反応を起こすため、ポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が低下するとともに、後述のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長が、後述する好ましい範囲から外れ、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合や、sbPLAの製造が困難となる場合がある。
<重合停止剤>
本発明の製造方法において、前記第2の工程における重合時間と後述のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長とを制御するために、重合停止剤をさらに使用することができる。前記重合停止剤を加えることにより、開環重合はそれ以上進行しなくなり、また、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の解重合やエステル交換反応を抑制するため、後述のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長を、所望の範囲に制御することが容易になる。
前記重合停止剤の例としては、安息香酸、塩酸、燐酸、メタ燐酸、酢酸、乳酸などが好ましく挙げられる。
前記重合停止剤の使用量は、第1の工程および第2の工程で使用したグアニジン骨格を有する化合物の総モル数 100mol%に対して、好ましくは100〜500mol%、より好ましくは150〜200mol%である。100mol%未満であると充分に触媒を失活することが困難となる場合があり、200mol%を超えるとポリマー精製時に除去しにくくなるとともに不経済となる場合がある。
<分子量(Mw)の制御>
本工程後に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は、第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および第2の工程で用いられるL−ラクチドおよびD−ラクチドの総mol数([monomer mol])、ラクチドの分子量([M])、開環重合開始前の反応系内および第2の工程のモノマー添加時に混入する水分の総mol数([HO mol])、第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および第2の工程で用いられるL−ラクチドおよびD−ラクチド中の遊離酸由来のカルボキシル基の総mol数([F.A. mol])、ならびに重合開始剤として添加されうるアルコール中のヒドロキシ基の総mol数([OH mol])から、下記数式2によって推算されうる。
Figure 2009001614
したがって、本発明の製造方法において、第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および第2の工程で用いられるL−ラクチドおよびD−ラクチドの総mol数([monomer mol])、ラクチドの分子量([M])、開環重合開始前の反応系内および第2の工程のモノマー添加時に混入する水分の総mol数([HO mol])、第1の工程におけるグアニジン骨格を有する化合物を用いる開環重合および第2の工程で用いられるL−ラクチドおよびD−ラクチド中の遊離酸由来のカルボキシル基の総mol数([F.A. mol])、ならびに重合開始剤として添加されうるアルコール中のヒドロキシ基の総mol数([OH mol])などの条件を制御することにより、得られるポリマーの重量平均分子量が制御されうる。
また、前述したような重合温度、重合時間、触媒量、および有機溶媒の量などを適宜選択することにより、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の解重合や得られるポリ乳酸ブロック共重合体同士のエステル交換反応等の副反応を制御することで、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量分布を小さくすることができる。
本発明の第3は、上述した本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法によって得られるポリ乳酸ブロック共重合体である。本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは30,000〜300,000、さらに好ましくは50、000〜250,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、機械強度、成形加工性に優れる。
また、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の分子量分布(MwD)は、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.1〜2.0である。前記ポリ乳酸ブロック共重合体の分子量分布が上記範囲から外れると、得られたポリ乳酸ブロック共重合体中のステレオコンプレックス結晶の含有率が、80%以上になり難い場合がある。
また、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体中の、ポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長は、好ましくは10〜60、より好ましくは10〜50である。前記平均連鎖長が上記範囲を外れると、ステレオコンプレックス結晶の形成が難しくなる場合があり、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が低下する場合がある。前記平均連鎖長は、前記第2の工程において、開環重合の触媒となるグアニジン骨格を有する化合物の量、溶媒の量、反応系内の水分量、重合開始剤量などを適宜調節することにより制御することができる。なお、本発明において、前記平均連鎖長は、後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の黄色度は、好ましくは0〜3である。前記黄色度が3以下であれば、ポリ乳酸ブロック共重合体の色相が優れる。なお、本発明において、前記黄色度は、JIS K7105の方法により測定した値を採用するものとする。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体のb値は、好ましくは0〜2である。前記b値が2以下であれば、ポリ乳酸ブロック共重合体の色相が優れる。なお、本発明において、前記b値は、JIS Z8730の方法により測定した値を採用するものとする。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体のL値(明度)は、好ましくは95〜100である。前記L値が95以上であれば、ポリ乳酸ブロック共重合体の色相が優れる。なお、本発明において、前記L値は、JIS Z8730の方法により測定した値を採用するものとする。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)において、30〜250℃の昇温過程と250〜30℃の冷却過程からなるプログラムを3回繰り返して、昇温過程で観測されるステレオコンプレックス結晶の融点が好ましくは190〜250℃、より好ましくは190〜220℃の範囲にある。また、下記数式3で表される、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の含有率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%である。さらに、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の、190〜250℃に現れるステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHms)は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上である。前記のようなプログラムを3回繰り返して、結晶融点が前記の範囲内にあれば、溶融と結晶化とを繰り返しても、ステレオコンプレックス結晶のみが成長することを意味する。上記の溶融と結晶化とのプログラムを3回繰り返す過程で、昇温過程で観測される結晶融点が190℃未満の場合には、ステレオコンプレックスポリ乳酸ブロック共重合体としての性能が低下する場合がある。一方、250℃を越えると、成形加工時においてポリ乳酸ブロック共重合体の熱分解により分子量が低下し、機械特性等を損なう場合がある。
Figure 2009001614
前記数式3中、ΔHmhとΔHmsは、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の示差走査熱量計(DSC)による測定の昇温過程において、150〜190℃に現れる結晶融点の融解エンタルピー(ΔHmh)および190〜250℃に現れるステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHms)である。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体が優れた耐熱性を示すためには、前記ステレオコンプレックス結晶の含有率、前記結晶融点、および前記融解エンタルピーが上記の数値範囲にあることが好ましい。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体中のL−乳酸成分とD−乳酸成分との質量比は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の範囲である。前記L−乳酸成分および前記D−乳酸成分のいずれか一方の質量比が10未満の場合には、得られるポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶の含有率が大幅に低下する場合があり、また、L体とD体との価格差が大きくなる場合に、低コストで高付加価値を有する製品を安定的に製造することが困難となる場合がある。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を所望に応じて含有することができる。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、圧空成形、または真空成形など、従来公知の方法により成形されうる。すなわち、本発明の第4は、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体から形成される成形品である。前記のような成形方法で得られる成形品の例としては、例えば、フィルム、シート、繊維、布、不織布、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、または電気・電子用部品などが挙げられる。特に、本発明の製造方法により得られるステレオコンプレックスポリ乳酸ブロック共重合体は、金属などの不純物を実質的に含まないため、高い安全性が要求される縫合糸、人工皮膚、DDS、骨固定剤、再生医療用の足場材など生体吸収性材料などの医療用途で好適に用いられうる。さらに、本発明の製造方法により得られるステレオコンプレックスポリ乳酸ブロック共重合体は、色相に優れるため、高い光学特性を必要とする光学材料としても用いられうる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、各実施例に示す、重合反応開始前の反応系内の水分量、得られたポリマーの重量平均分子量および分子量分布(MwD)、得られたポリマーの光学純度、モノマー転化率、得られたポリマーの熱的特性、得られたポリマーのステレオコンプレックス結晶の含有率、得られたポリマーのブロックの平均連鎖長、ならびに得られたポリマーの色相は、以下の方法により測定した。
(1)反応系内の水分量
カールフィッシャー電量滴定法により測定し、原料のL−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対するmol%を計算により求めた。測定条件を下記表1に示す。
Figure 2009001614
(2)重量平均分子量および分子量分布
GPC法により、ポリスチレン換算の値を測定した。測定機器等の測定条件は下記表2の通りであった。分子量分布は、測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから、前記数式1によって算出した。
Figure 2009001614
(3)光学純度
ポリ乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸との構成比率から光学純度を求めた。試料0.1gに対して、5N水酸化ナトリウム5mlとイソプロパノール2.5mlとを添加し、30℃で加熱攪拌しながら加水分解した後に1M硫酸で中和した。得られた中和液1mlを25倍に希釈し濃度を調整した。これを、高速液体クロマトグラフ(HPLC)に注入し、紫外光(波長254nm)で検出されたL−乳酸とD−乳酸とのピーク面積を算出した。HPLCの測定条件を下記表3に示す。また、前記ピーク面積から算出されたL−乳酸の質量比率[L](%)と、D−乳酸の質量比率[D](%)とから、光学純度(%ee)を下記数式4によって算出した。
Figure 2009001614
Figure 2009001614
(4)モノマー転化率
得られたポリマー中のラクチド(LTD)の質量%をガスクロマトグラフにより測定し、下記数式5より転化率を算出した。ガスクロマトグラフの条件を下記表4に示す。なお、ポリマー中のLTDのmol数は、ポリマーを100%回収した場合のポリマー質量をもとに、測定により得られたラクチド質量%をmol数に換算した。
Figure 2009001614
Figure 2009001614
(5)L−乳酸単位とD−乳酸単位との質量比
sbPLA製造時の仕込みの質量比とした。
(6)熱的特性
示差走査熱量測定計(株式会社島津製作所製DSC−60)を用いた。試料10mgをアルミニウムパンに入れ、下記表5の条件で50ml/minの窒素気流中で、ホモ結晶融解温度(Tmh)、ホモ結晶融解熱(ΔHmh)、ステレオコンプレックス結晶融解温度(Tms)、およびステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms)の測定を行った。各結晶の溶融エンタルピーはDSCチャートに表れる結晶溶融ピークとベースラインで囲まれる領域の面積により算出した。
Figure 2009001614
(7)ステレオコンプレックス結晶の含有率
ステレオコンプレックス結晶の含有率は、DSC分析において、100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のホモ結晶融解熱(ΔHmh)を−203.4J/gとし、100%結晶化したポリ乳酸ブロック共重合体のステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHms)を−142J/gとして、DSCから実際に得られた150〜190℃に現れるホモ結晶融解熱(ΔHmh)、190〜250℃に現れるステレオコンプレックス結晶化熱融解熱(ΔHms)から下記数式6にて算出した。
Figure 2009001614
(8)ブロックの平均連鎖長
得られたポリマーを、下記表6に示す条件で13C−NMRの測定を行い、カルボニル炭素(C=O)に帰属される炭素のピークのうち、ピーク(a)(170.1〜170.3MHz辺り)はホモ配列(LLLLLLまたはDDDDDD)に、ピーク(b)(169.8〜170.0MHz辺り)はラセミ鎖(LLLDDD・・・)にそれぞれ帰属させ、これらのピークの積分値から、下記の数式7により平均連鎖長を算出した。
Figure 2009001614
Figure 2009001614
(9)色相
得られたポリマー1gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムとの混合溶媒(1:1体積比)10mlに溶解し、光路1cmの石英セルに入れ、SHIMAZDU UV−2550にて、視野角2°、光源C、780〜360nmの波長範囲でスキャンし、カラー測定ソフトウェアにより、JIS Z8730、JIS K7105に基づくL値、b値、および黄色度を算出した。
(実施例1)
<homoPDLAの合成>
ガラス容器にD−ラクチド(D−LTD)5gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)15mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.14mol%であった。
次に、0.01g/mlの濃度である1−ピレンブタノール(アルドリッチ社製)のジクロロメタン溶液を、D−LTD100mol%に対して1−ピレンブタノールが0.1mol%となるように、撹拌下のナスフラスコ内にシリンジで添加した。次いで、D−LTDに対し0.5mol%の1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エン(TBD)(アルドリッチ社製)を添加し、25℃で5分間重合を行った。重合後の溶液から分析用試料を1mlシリンジで採取し、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたhomoPDLAは0.24g、モノマー転化率は99.4%、Mwは53000、Mnは35000、MwDは1.52、光学純度は96.4%eeであった。
<sbPLAの合成>
あらかじめ秤量しておいたL−ラクチド(L−LTD)5gを、撹拌下の上記homoPDLAのジクロロメタン溶液に添加した。さらに、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン15mlを添加した。5分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を3ml添加した。得られたポリマー溶液を300mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別した。得られたポリマーは、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。なお、L−LTDとジクロロメタン中とに含まれる水分は、合わせてL−LTD100mol%に対して0.13mol%であった。
得られたsbPLAは9.7g、重量平均分子量(Mw)は68000、数平均分子量(Mn)は43000、MwDは1.58であった。
DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は209℃、ΔHsは38J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は29.5、L値は99.3、b値は0.31、黄色度は0.73であった。
(実施例2)
<homoPDLAの合成>
ガラス容器にD−LTD5gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)10mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.12mol%であった。
次に、0.01g/mlの濃度である1−ピレンブタノール(アルドリッチ社製)のジクロロメタン溶液を、D−LTD100mol%に対して1−ピレンブタノールが0.1mol%となるように、撹拌下のナスフラスコ内にシリンジで添加した。次いで、D−LTDに対し0.5mol%の1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デク−5−エン(TBD)(アルドリッチ社製)を添加し、25℃で5分間重合を行った。分析用試料を1mlシリンジで採取し、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたhomoPDLAは0.26g、モノマー転化率は99.6%、Mwは67000、Mnは40000、MwDは1.67、光学純度は94.4%eeであった。
<sbPLAの合成>
上記で分析用試料を採取後、直ちに、あらかじめ秤量しておいたL−LTD5gを撹拌下の上記homoPDLAのジクロロメタン溶液に添加した。更に、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン10mlを添加した。5分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を3ml添加した。得られたポリマー溶液を300mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別した。得られたポリマーは、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。
なお、L−LTDとジクロロメタン中に含まれる水分は、合わせてL−LTD100mol%に対して0.04mol%であった。
得られたsbPLAは9.7g、Mwは94000、Mnは58000、MwDは1.61であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は209℃、ΔHsは46J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は29.7、L値は99.3、b値は0.37、黄色度は0.75であった。
(実施例3)
<L−LTD溶液の調製>
ガラス容器にL−LTD5gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)10mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液にモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)を0.5g添加し、一晩放置した。一晩放置後の溶液の水分量は、L−LTD100mol%に対して0.04mol%であった。
<homoPDLAの合成>
ガラス容器にD−ラクチド(D−LTD)5gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)15mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.11mol%であった。
次に、撹拌下、D−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを、容器内に添加し、25℃で5分間重合を行った。分析用試料をシリンジで1ml採取し、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたhomoPDLAは0.26g、モノマー転化率は99.5%、Mwは165000、Mnは99000、MwDは1.66、光学純度は92.2%eeであった。
<sbPLAの合成>
上記で分析用試料を採取後、直ちに、シリンジで採取した上記L−LTD溶液を撹拌下の上記homoPDLAのジクロロメタン溶液に添加した。10分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を3ml添加した。得られたポリマー溶液を300mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別した。得られたポリマーは、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。
得られたsbPLAは9.7gで、Mwは216000、Mnは134000、MwDは1.61であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は197℃、ΔHsは40J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は15.6、L値は99.4、b値は0.25、黄色度は0.56であった。
(実施例4)
<L−LTD溶液の調製>
ガラス容器にL−LTD15gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)30mlを添加し、撹拌してL−LTDを溶解させた。得られた溶液にモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)を1.5g添加し、一晩放置した。一晩放置後の溶液の水分量は、L−LTD100mol%に対して0.07mol%であった。
<D−LTD溶液の調製>
ガラス容器にD−LTD15gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)30mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液にモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)を1.5g添加し、一晩放置した。一晩放置後の溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.01mol%であった。
<homoPLLAの合成>
攪拌機を付した100mlの四つ口フラスコに、シリンジで採取した上記L−LTD溶液を加えた。次に、撹拌下、L−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを、容器内に添加し、25℃で5分間重合を行った。分析用試料をシリンジで1ml採取し、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたhomoPLLAは0.25g、モノマー転化率は99.7%、Mwは203000、Mnは120000、MwDは1.69、光学純度は90.6%eeであった。
<sbPLAの合成>
上記で分析用試料を採取後、直ちに、シリンジで採取した上記D−LTD溶液を撹拌下の上記homoPLLAのジクロロメタン溶液に添加した。10分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を15ml添加した。得られたポリマー溶液を1000mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。
得られたsbPLAは29.7g、Mwは252000、Mnは144000、MwDは1.75であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は193℃、ΔHsは32J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は15.6、L値は99.5、b値は0.20、黄色度は0.45であった。
(実施例5)
<D−LTD溶液の調製>
ガラス容器にD−LTD1gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)6mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液にモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)を1.5g添加し、一晩放置した。一晩放置後の溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.07mol%であった。
<homoPLLAの合成>
ガラス容器にL−LTD3gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)18mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液の水分量は、L−LTD100mol%に対して0.21mol%であった。
次に、撹拌下、L−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを、容器内に添加し、25℃で5分間重合を行った。分析用試料をシリンジで1ml採取して、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたhomoPLLAは0.1g、ラクチド転化率は99.4%、Mwは62000、Mnは45000、MwDは1.39、光学純度は98.6%eeであった。
<sbPLAの合成>
上記で分析用試料を採取後、直ちに、シリンジで採取した上記D−LTD溶液を添加し、さらに、D−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを撹拌下の上記homoPLLAのジクロロメタン溶液に添加した。10分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を4ml添加した。得られたポリマー溶液を300mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。
得られたsbPLAは4.8g、Mwは76000、Mnは52000、MwDは1.46であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は205℃、ΔHsは38J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は23.6、L値は99.2、b値は0.26、黄色度は0.58であった。
(実施例6)
<D−LTD溶液の調製>
ガラス容器にD−LTD9gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)36mlを添加し、撹拌してD−LTDを溶解させた。得られた溶液にモレキュラーシーブ3A(和光純薬工業株式会社製)を1.5g添加し、一晩放置した。一晩放置後の溶液の水分量は、D−LTD100mol%に対して0.05mol%であった。
<homoPLLAの合成>
ガラス容器にL−LTD1.1gを秤量し、モレキュラーシーブス3Aを浸漬させて脱水処理したジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、特級)4mlを添加し、撹拌してL−LTDを溶解させた。得られた溶液の水分量は、L−LTD100mol%に対して0.12mol%であった。
次いで、反応系内に窒素を導入し、−10℃の水−メタノール冷却槽に容器を浸し、撹拌下、0.01g/mlの濃度である1−ピレンブタノール(アルドリッチ社製)のジクロロメタン溶液を、L−LTD100mol%に対して1−ピレンブタノールが0.2mol%となるように、シリンジで容器内に添加した。
次いでL−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを、容器内に添加し、−10℃の冷却槽に浸した状態で、撹拌下5分間重合を行った。分析用試料をシリンジで0.4ml採取して、これを0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液0.3mlに添加して混合した後、溶液をシャーレにキャストし1晩放置しジクロロメタンを揮発させた。
得られたPLLAは0.1gで、ラクチド転化率は99.4%、Mwは44000、Mnは27000、MwDは1.62、光学純度は96.0%eeであった。
<sbPLAの合成>
上記で分析用試料を採取後、直ちに、シリンジで採取した上記D−LTD溶液を添加し、更に、D−LTDに対して0.5mol%の量のTBDを撹拌下の上記PLLAジクロロメタン溶液に添加した。10分後、0.01g/mlの濃度である安息香酸(和光純薬工業株式会社製)のジクロロメタン溶液を4ml添加した。得られたポリマー溶液を300mlの三角フラスコに移し、撹拌下ポリマー溶液に対し10倍容量のメタノールを滴下した。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。
得られたsbPLAは9.8gで、Mwは130000、Mnは79000、MwDは1.65であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は208℃、ΔHsは26J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は55%であったが、2回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は190℃、ΔHsは20J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は13.9、L値は99.2、b値は0.29、YIは0.68であった。
(比較例)
<PLLAの製造>
5mlの褐色ガラス製アンプルにL−LTDを3g、重合開始剤としてラウリルアルコール0.03gを仕込み、さらに0.1g/mlの2−エチルヘキサン酸スズのトルエン溶液を3μl添加し、減圧と窒素置換を3回繰り返した。次いで、ガスバーナーでアンプルを密封したのち、190℃のオーブン中で3時間、L−ラクチドの開環重合を行った。
開環重合反応終了後、溶融状態のままアンプルから取り出し、プレート状にし、冷却した。次にプレート状にした反応物を粉砕し、120℃、1.33kPaで減圧処理し、余剰のL−ラクチドを除去してPLLAを得た。得られたPLLAは2.5gで、ラクチド転化率は99.6%、Mwは40000、Mnは27000、MwDは1.72、光学純度は99.9%eeであった。
<sbPLAの製造>
5mlの褐色ガラス製アンプルに、上記で得たPLLA1gとD−LTD4gとを仕込み、減圧と窒素置換を3回行った。次いで、ガスバーナーでアンプルを密封したのち、190℃のオーブン中で3時間、D−LTDの開環重合を行った。
開環重合反応終了後、反応物をアンプルから取り出し、粉砕したもの4.5gを450gのクロロホルムに溶解し、ポリマーのクロロホルム溶液に対して10倍の質量のメタノール中に添加しポリマーを沈殿させた。得られたポリマー沈殿物をNo.5Cの濾紙を用いて減圧濾過により濾別、40℃、5hPaで10時間減圧乾燥した。沈殿したポリマーは、を固液分離し、乾燥してから測定に用いた。
得られたsbPLAは4.4gで、Mwは143000、Mnは72000、MwDは1.98であった。DSC測定の結果、1回目の昇温過程で検出されたsbPLAの融点は209℃、ΔHsは36J/g、ステレオコンプレックス結晶の含有率は100%であった。
また、平均連鎖長は54.1、L値は98.7、b値は1.26、黄色度は2.49であった。
実施例1〜6および比較例について、製造条件を下記表7に、ポリマーの分子量および分子量分布、第1の工程終了後に得られたポリマーの光学純度、第2の工程終了後に得られたポリマーの平均連鎖長および色相を、下記表8に、第2の工程終了後に得られたポリマーのDSC測定結果を、下記表9にそれぞれまとめた。
Figure 2009001614
Figure 2009001614
Figure 2009001614
表7〜9からわかるように、実施例の本発明の製造方法は、比較例の従来の製造方法に比べ、低温および短時間で重合が完了し、より少ないエネルギーで、従来の製造方法では困難であった高分子量でMwDが小さく、かつ、実質的に金属を含まないsbPLAを製造できることがわかった。さらに、使用するL体(ポリ−L−乳酸またはL−ラクチド;L成分)とD体(ポリ−D−乳酸またはD−LTD;D成分)との組成(質量比)が大幅に偏っていても、ステレオコンプレックス結晶の含有率が極めて高い、ポリ−L−乳酸ブロックとポリ−D−乳酸ブロックとを有するポリ乳酸ブロック共重合体を製造することができた。さらに、反応系内の水分量、重合開始剤量を調節することで、容易にポリ乳酸ブロック共重合体のMwやポリ乳酸ブロック共重合体中のブロックの連鎖長を制御することが可能であるとともに、重合触媒や溶媒量を適宜調節することにより、所望のMwDを有するポリマーが得られることがわかった。
また、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体は、色相に優れることが分かった。
本発明の製造方法は、ポリ乳酸の関連分野に好適に用いられうる。

Claims (28)

  1. ポリ−L−乳酸を得る第1の工程と、
    下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、
    を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法:
    Figure 2009001614
    前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
  2. ポリ−D−乳酸を得る第1の工程と、
    下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行う第2の工程と、
    を含むことを特徴とする、ポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法:
    Figure 2009001614
    前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
  3. 前記第1の工程は、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でL−ラクチドの開環重合を行うことを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法:
    Figure 2009001614
    前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
  4. 前記第1の工程は、下記化学式(1)で表されるグアニジン骨格を有する化合物の存在下、有機溶媒中でD−ラクチドの開環重合を行うことを特徴とする、請求項2に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法:
    Figure 2009001614
    前記化学式(1)中、R、R、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜33のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜33のヘテロアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のヘテロ環基、またはRおよびRならびにRおよびRのいずれか一方もしくは両方は互いに連結されて環を形成する。
  5. 前記グアニジン骨格を有する化合物が、前記化学式(1)中の、RおよびRならびにRおよびRが互いに連結して形成される、下記化学式(2)で表されるトリアザビシクロ環を有する化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法:
    Figure 2009001614
    前記化学式(2)中、Rは、前記化学式(1)の場合と同様である。
  6. 前記グアニジン骨格を有する化合物が、グアニジン、1‐ドデシルグアニジン、1‐デシルグアニジン、1‐テトラデシルグアニジン、1‐ヘキサデシルグアニジン、1‐オクタデシルグアニジン、1‐(2‐エチルヘキシル)グアニジン、1,1′‐オクタメチレンビスグアニジン、N,N′‐ジグアニル‐1,12‐ドデカンジアミン、ビス(2‐グアニジノエチル)アミン、メチルグアニジン、1,1‐ジメチルグアニジン、1,3−ジメチルグアニジン、1,2,3‐トリメチルグアニジン、1‐エチルグアニジン、1,1‐ジエチルグアニジン、1,2,3‐トリアミノグアニジン、1,1,3,3‐テトラメチルグアニジン、アミノグアニジン、2−アミジノグアニジン、1,3−ジアミノグアニジン、1‐グアニル尿素、グアンシジン、アグマチン、1‐(2‐メルカプトエチル)グアニジン、1‐(4‐アミノブチル)‐1‐イソペンチルグアニジン、1,1′‐[(エチルエタンジイリデン)ジニトリロ]ジグアニジン、2,2′‐エチレンビス[1‐[イミノ(アミノ)メチル]グアニジン]からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  7. 前記グアニジン骨格を有する化合物が、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エン、および7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−デク−5−エンの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項5に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  8. 前記ポリ−L−乳酸または前記ポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、1,000〜450,000であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  9. ポリ乳酸ブロック共重合体中の、L−乳酸成分とD−乳酸成分との質量比が、10:90〜90:10であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  10. 前記有機溶媒が、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ジオキサン、およびテトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  11. 前記第1の工程を行う前の反応系内の水分量が、前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100mol%に対して、0〜4mol%であることを特徴とする、請求項3〜10のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  12. 前記第2の工程を行う前の反応系内の水分量が、前記第2の工程に使用される前記L−ラクチドまたは前記D−ラクチド100mol%に対して、0〜0.2mol%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  13. 前記第1の工程を行う際に使用される前記グアニジン骨格を有する化合物の量が、前記第1の工程に使用されるL−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、0.01〜15mol%であることを特徴とする、請求項3〜12のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  14. 前記第2の工程を行う際に使用される前記グアニジン骨格を有する化合物の量が、前記第1の工程に使用されるL−ラクチドまたはD−ラクチド100mol%に対して、0.01〜15mol%であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  15. 前記第1の工程と前記第2の工程との間に、前記グアニジン骨格を有する化合物を添加する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  16. 前記第1の工程および前記第2の工程の少なくとも一方は、−40〜100℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  17. 前記第1の工程および第2の工程の少なくとも一方を行う前に、反応系内に脱水剤を加えて脱水処理を行うことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
  18. 前記脱水剤が、シリカゲル、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、および硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法によって得られるポリ乳酸ブロック共重合体。
  20. 前記ポリ乳酸ブロック共重合体中のポリ−L−乳酸ブロックおよびポリ−D−乳酸ブロックの平均連鎖長が10〜60であることを特徴とする、請求項19に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  21. 前記ポリ乳酸ブロック共重合体中の、L−乳酸成分とD−乳酸成分との質量比が、10:90〜90:10であることを特徴とする、請求項19または20に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  22. 重量平均分子量が10,000〜500,000であることを特徴とする、請求項19〜21のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  23. 示差走査熱量測定において、30〜250℃の昇温過程と250〜30℃の冷却過程とからなるプログラムを3回繰り返して、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にあることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  24. ステレオコンプレックス結晶の含有率が80〜100%であることを特徴とする、請求項19〜23のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  25. JIS Z8730に記載の方法により測定したb値が0〜2であることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  26. JIS K7105に記載の方法により測定した黄色度が0〜3であることを特徴とする、請求項19〜25のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  27. JIS Z8730に記載の方法により測定したL値(明度)が95〜100であることを特徴とする、請求項19〜26のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体。
  28. 請求項19〜27のいずれか1項に記載のポリ乳酸ブロック共重合体から形成される成形品。
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