JP5150074B2 - ポリ乳酸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
この解決策として幾つかの方法が提案されている。例えば、ポリ乳酸を水に対して不混和性の有機溶媒に溶解し、次いで無機酸、水溶性有機酸または水溶性錯化剤を含む水性相または水と接触させ、該有機相を分離した後、ポリ乳酸を公知の方法で単離することで触媒を除去する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリ乳酸を親水性有機溶媒の存在下、酸性物質と接触させることにより触媒を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、ポリ乳酸にホウ素化合物を添加し、触媒を失活させることで熱安定性を改善する方法が提案されている(特許文献3参照)。
すなわち、重合生成物に後処理を加えずにそのまま次の成形加工に用いることが工業的には理想であるが、スズ触媒を用いたラクチド溶融開環重合でこれを達成するのは困難である。
ポリ乳酸は、下記式(1)
ポリ−D−乳酸は、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
共重合成分単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは5万〜50万、より好ましくは8万〜30万、さらに好ましくは9万〜20万である。
チタン化合物の含有量は、ポリ乳酸の乳酸単位に対して0.005〜2.0モル%、好ましくは0.005〜1.0モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%である。即ち、ポリ乳酸の乳酸単位100モルに対して0.005〜2.0モル、好ましくは0.005〜1.0モル、より好ましくは0.005〜0.5モルである。
本発明のポリ乳酸の製造方法は、ラクチドを溶融開環重合してポリ乳酸を製造するに際し、触媒としてラクチドに対して0.01〜4.0モル%のチタン化合物を用いることを特徴とする。
本発明に用いられるラクチドは乳酸をオリゴマー化した後、解重合することによって得られる乳酸の環状二量体である。乳酸にはL−乳酸とD−乳酸が存在し、それに伴ってラクチドにもL−ラクチド、D−ラクチド、D/L−ラクチド、ラセミラクチドが存在する。本発明に用いられるラクチドの光学純度は特に限定されるものではないが、得られる高分子量ポリ乳酸の融点はポリ乳酸の光学純度によって決定され、高純度のものほど高融点のポリ乳酸が得られるため、より耐熱性の高いポリ乳酸を望むならば高光学純度のラクチドを用いることが好ましい。ポリ乳酸の光学純度は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%の範囲である。
D−ラクチドの純度は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。他の成分としては、L−ラクチド、乳酸以外の共重合成分が挙げられる。L−ラクチド、乳酸以外の共重合成分は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
溶融開環重合は、L−またはD−ラクチドをチタン化合物の存在下で加熱することにより行うことができる。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応容器を単独、または並列して使用することができる。
重合温度は、好ましくは170〜200℃で行うことができる。圧力は、好ましくは0.1〜20mmHgで行うことができる。ただし、反応系は無水雰囲気下であることが望ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合させることが望ましい。
第一工程の終点は、プレポリマー中の残存ラクチド量が15〜3%重量%に達した時点である。残存ラクチド量が15重量%より多い時点で第一工程を終了させると、残ったラクチドは第二工程にて除かれるわけであるからポリマー収率は85%より小さくなり不経済である。
第一工程に要する時間は通常は30〜600分であるが、使用した触媒の量、重合温度などによって異なるため、系中の残存ラクチド量をチェックしてその時間を適宜選択すればよい。
第二工程は、第一工程で得られたプレポリマー中の残存ラクチドを低減させる工程であり、その終点とするところは残存ラクチド量が1重量%以下となった時点が好適に選ばれる。さらに好ましくは0.5重量%以下である。第二工程の温度条件は得られるポリ乳酸の融点以上であることが必須である。光学純度によりポリ乳酸の融点が異なるため、処理温度は特に限定されるものではないが、160〜200℃が好ましい。200℃より高温にするとポリ乳酸の解重合速度が上昇し、いくら減圧によってラクチドを除いてもラクチドが再生産することにより終点に達しないことがある。また減圧の条件は特に限定されるものではないが、減圧度は低ければ低いほど終点に達するまでの時間が短縮されるため、好ましくは20mmHg以下、より好ましくは10mmHg以下である。
本発明の成形品は、本発明のポリ乳酸からなる成形品である。成形品の例としては射出、押し出し等の各種成形品、フィルム、シ−トまたは未延伸もしくは延伸配向された繊維、さらには繊維からの繊維構造物(編物、織物、不織布、紙、紐、テ−プ、ロ−プ、網など)、さらには合成皮革の様なフィルムやシートと繊維との複合物が挙げられる。
これら成形品の用途としては、防虫、保温、防霜、遮光、防草用フィルム、シ−ト、繊維構造物等の農業用用途、乗り物の内装や電気製品等の工業用用途、法面緑化保護用シ−トや繊維構造物等の土木用用途、床や壁材等の建築用途、使い捨て器具、使い捨て衣料、靴や鞄等も含めた日用生活用品、玩具やゲーム機等を含めた遊具、生理用品等を含めた衛生医療用途、漁網、釣り糸、各種養殖用ロ−プ、網などの漁業用用途等が挙げられるがこれらに限定されない。
1.評価法
(1)重量平均分子量(Mw)の測定
重量平均分子量(Mw)は、ショーデックス製GPC−11を使用し、ポリ乳酸樹脂組成物50mgを5mlのクロロホルムに溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(2)残存ラクチド量
ポリ乳酸中の残存ラクチド量は、重クロロホルム中、日本電子製核磁気共鳴装置JNM−EX270スペクトルメーターを使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積比(5.10〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積比(4.98〜5.05ppm)として算出した。
(3)熱安定性
得られたポリ乳酸を溶融処理し、その前後の重量平均分子量(Mw)を求め下記式にて熱安定性を算出した。溶融処理は、ポリ乳酸約3gを試験管中窒素下で180℃、1時間加熱することにより行った。
熱安定性(%)=溶融処理後のMw/溶融処理前のMw×100
窒素気流下にて、50mLフラスコに、フェノール(0.79g)を入れ、ジエチルエーテル20mLにて溶解した。その後、チタンテトライソプロポキシド1.2mLを加え、3時間攪拌した。得られた沈殿をろ過し、室温にて減圧乾燥し、チタンジイソプロポキシドジフェノキシドを得た。
窒素気流下にて、50mLフラスコに、フェノール(1.58g)を入れ、ジエチルエーテル20mLにて溶解した。その後、チタンテトライソプロポキシド1.2mLを加え、3時間攪拌した。得られた沈殿をろ過し、室温にて減圧乾燥し、チタンテトラフェノキシドを得た。
第一工程
L−ラクチド(武蔵野化学製)48.75g、D−ラクチド1.25gと製造例1で合成したチタン触媒0.1gを、攪拌装置、窒素導入管を備えた反応容器に投入し、窒素置換の後、窒素気流下で175℃に加熱し溶融開環重合させた。触媒量は、原料のラクチドに対して0.08モル%に相当する。60分後、分子量の上昇が飽和し、残存ラクチド量が5重量%となった。
第二工程
次に、系を3mmHgまで減圧し、3mmHg、175℃で30分間攪拌した。得られたポリ乳酸のMwは15万であった。残存ラクチド量は0.8重量%であり、残存ラクチド量が非常に少ないポリ乳酸であった。熱安定性は95%であった。
第一工程
L−ラクチド(武蔵野化学製)48.75g、D−ラクチド1.25gと製造例2で合成したチタン触媒0.05gを、攪拌装置、窒素導入管を備えた反応容器に投入し、窒素置換の後、窒素気流下で175℃に加熱し溶融開環重合させた。触媒量は、原料のラクチドに対して0.04モル%に相当する。60分後、分子量の上昇が飽和し、残存ラクチド量が5重量%となった。
第二工程
次に、系を3mmHgまで減圧し、3mmHg、175℃で30分間攪拌した。得られたポリ乳酸のMwは9万であった。残存ラクチド量は1.2重量%であり、残存ラクチド量が非常に少ないポリ乳酸であった。熱安定性は92%であった。
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)3000gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール4.07g、触媒としてオクチル酸スズ0.225gを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリ乳酸を得た。得られたポリ乳酸のMwは17万であった。融点(Tm)は176℃であった。結晶化点(Tc)は138℃であった。熱安定性は80%であった。
Claims (5)
- ラクチドを溶融開環重合してポリ乳酸を製造するに際し、触媒としてラクチドに対して0.01〜4モル%のチタンジイソプロポキシドジフェノキシド、チタンテトラフェノキシド、チタンイソプロポキシトリフェノキシドおよびチタントリイソプロポキシフェノキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種のチタン化合物を用いることを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
- (i)重合系中の残存ラクチド量が15〜3重量%となるまで重合反応を進行させプレポリマーを製造する第一工程、並びに
(ii)プレポリマーを溶融状態で減圧下におきラクチドを低減させる第二工程、
からなる請求項2記載の製造方法。 - 第二工程の減圧度が20mmHg以下である請求項3記載の製造方法。
- 請求項1記載のポリ乳酸からなる成形品。
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