JP4674331B2 - 細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体 - Google Patents

細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体 Download PDF

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本発明は、生体吸収性を有し、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を有する細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体に関する。
組織工学の進歩に伴い、生体吸収性材料に細胞を組み込んだ、いわゆるハイブリッド型の人工臓器や、特定の立体構造に構築された生体吸収性材料に、特定の細胞、または組織を組み込み、このものを培養技術を利用して、前記細胞や組織を産生させ、得られた生体組織や移植組織を移植などの用途に用いる、いわゆる再生医療用材料の研究が注目されている。これらの新しい医療技術は、人類の健康とよりよい生活に対しての大きな貢献が期待されるものである。そして現在、検討の対象に上がっている組織や細胞としては、軟骨、血管、靱帯、硝子体、末梢神経、皮膚、心筋、骨等が挙げられる。また、肝臓や膵臓などの一部臓器も対象とされている。
例えば、チューブ状の材料を切断された末梢神経同士で繋ぎ、このチューブ状に成形された材料内で末梢神経を再生させようとする試みなどがなされている。また、中空糸モジュールや多孔性の材料に肝細胞や膵臓細胞を植え込み、これらの細胞を増殖させて、人工臓器を得ようとする試みもなされている(非特許文献1)。
しかしながら、これらの組織、細胞の培養・増殖に使用する成形材料としては、医療器具そのものの一部として利用されるものであることから、材料としての特性に加え、生体への悪影響が実質にないことが厳格に要求されることは、当然に予測されることである(非特許文献2)。
東京女子医科大学工学研究施設編、21世紀を開く先端医療、第139〜140頁、株式会社ニュートンプレス(1999) 川瀬雅也、八木清仁、生物工学、第80巻(5)、189(2002)
近年、組織工学(ティッシュエンジニアリング)の進歩に伴い、人工材料に細胞を組み込んだ、いわゆるハイブリッド型の人工臓器の開発が進められている。また、培養した生体組織や移植組織を用いた、再生医療も注目されている。これらの新しい医療技術は、人類の健康とよりよい生活に対しての大きな貢献が期待されるものである。このような材料としては、生分解性に富みかつ生体吸収性が高いことから、ポリエステル類の高分子化合物の利用が検討されている。しかしながら、ポリエステル類の高分子化合物の内、生体への悪影響が懸念される不純物の含量が極めて少ない、高純度の材料が容易に得られること、工業的な実施も容易であること、用途、使用態様に応じて、反応条件などを制御することで、所望とされる目的とする物性を有するものが得やすいこと等の観点から、環状ラクトン系原料を開環重合させた生体吸収性の材料が注目されている。環状ラクトン系原料を用いて開環重合させるには、反応性等からオクチルスズ等スズ系の触媒が使用されている。
しかしながら、金属の中でも、スズなどの重金属は、生体への悪影響をもたらすことが知られており、このような金属が、例え少量でも残存する材料を生体への移植等に使用することは、好ましくない。勿論、生体に直接埋植しないような使用方法、例えば、特定細胞の組織培養際の基材として、使用する場合などにおいても、細胞自身への毒性が問題となり、細胞の由来などにもよるが、場合によっては、使用できないことがあるので、なるべく避けることが好ましい。
本発明は、生体細胞に対して、良好な生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す金属元素又は同金属元素の化合物から選ばれた少なくとも一種を、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すに充分な量を含む、合成重合体からなる生体吸収性を有する新規材料を提供することを目的とするものである。例えば、術後の切開部の縫合糸や、交通事項などによる複雑骨折患者などの骨固定材としては、患部の治癒と共に、自然と分解され、生体組織に吸収されるという優れた特質を示す、材料の提供が強く求められている。
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討の結果、生体吸収性の合成重合体であり、その重合体及びその重合体の分解物が生体に吸収されても生体には悪影響を実質的に及ぼさず、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すに充分な量の生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す金属元素及び/又は同金属元素の化合物を含む、合成重合体からなる材料が、上記目的を達せすることができることを見出し、本発明を完成させてものである。
本発明の細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体は、重合触媒として、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す金属元素又はその金属元素の化合物を用い、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分、又は乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分とトリメチレンカーボネートとを(共)重合して得られる重合体であり、その重合体に含まれる金属元素及び/又はこの金属元素の化合物は、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を有する生体吸収性材料から形成されるものである。従って、本発明の細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体は、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す金属元素又はその金属元素の化合物を含有する材から形成されるものである。前記金属元素及びこの金属元素の化合物の含有量は、触媒としての作用を発揮できる量であることは当然であるが、同時に、この材料を使用したとき、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す量であれば、充分であるが、通常は、金属元素換算で、生体吸収性を有する重合体100質量部に対し、0.000001〜2質量部、好ましくは0.00001〜1質量部、より好ましくは0.0001〜0.1質量部、特に好ましくは0.001〜0.05質量部である。
本発明の細胞・組織培養用基材は、組織工学および再生医療等のための、ヒトおよび動物の軟骨細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、造血幹細胞、肝細胞、角膜細胞、繊維芽細胞、表皮細胞、間葉糸幹細胞、ES細胞などの細胞・組織培養用基材としてもちいることができる。なお、ここで、生体吸収性とは、生体内において、酵素的、又は、非酵素的を問わず、使用した材料重量が減少し、最終的には、材料そのものが体内から消失するという性質を言う。勿論、生体外、例えば、土壌中や海水などの自然環境下においては、微生物等の作用により、容易に分解され、後には、生物に対して悪影響を有する重金属類が集積することのない、いわゆる生分解性をも示すものであることは言うまでもない。
本発明の細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体を形成する生体吸収性を有する材料は、縫合糸、骨固定用具(ピン、スクリュー、プレート)、人工弁、人工骨、人工軟骨、人工関節、人工血管、癒着防止膜、ヘルニアメッシュ、人工硬膜、心血管系修復パッチなどの埋植用医療器具としてもちいることができる。勿論、これらの医療用の用途に限定されるものではなく、各種の衛生材料など、例えば、歯ブラシ、注射器、医薬品の容器の素材としても使用可能であることは言うまでもない。
なお、前記合成重合体からなる生体吸収性を有する材料としては、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、または、ポリ(乳酸−カプロラクトン)の何れか一種の重合体を含むものが好適に使用される。前記金属元素が、細胞の良好な生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属元素及び/又は同金属元素の化合物由来の金属である生体吸収性を有する材料は、この金属が良好な生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示す。前記合成重合体からなる生体吸収性を有する材料中に含まれるチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛及び鉄から選択される少なくとも1種の金属元素及び/又は同金属元素の化合物由来の金属の合計量は、金属元素換算で、0.000001〜2質量%、好ましくは0.00001〜1質量%、より好ましくは0.0001〜0.1質量%、特に好ましくは0.001〜0.05質量%以下であることが、適切な生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すので好ましい。金属元素がチタン、及び/又は鉄であることがより好ましく、チタンであることが更に好ましい。なお、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すに充分な量とは、上記の金属元素及び/又は同金属元素化合物由来の金属を全く含まない上記の合成重合体と比較して、少なくとも、統計的に有意な生体細胞の増殖・分化の機能促進を示すに充分な量をいう。生体細胞の起源、培養条件、金属元素の種類等により多少変動することは当然であるが、金属元素換算で、0.000001〜2質量%、好ましくは0.00001〜1質量%、より好ましくは0.0001〜0.1質量%、特に好ましくは0.001〜0.05質量程度である。
体吸収性を有する材料は、主要成分である合成重合体の製造に際して、細胞の良好な生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属元素及び/又は同金属元素の化合物を触媒として使用していることから、細胞の増殖や分化にも、優れた作用を示し、特に生体吸収性材料として、広く使用できる可能性を有している。また、この材料を使用した細胞・組織培養用器材は、増殖力も高く、高い分化力を有していることから、再生医療分野において、優れた効果が発揮されるものと期待される。勿論、埋植用としての適性も高いものと考えられる。
体吸収性を有する材料は、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分から得られる(共)重合体であり、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、乳酸とグリコール酸との共重合体、乳酸と酪酸との共重合体、乳酸とε−カプロラクトンとの共重合体、グリコール酸と酪酸との共重合体、グリコール酸とε−カプロラクトンとの共重合体、酪酸とε−カプロラクトンとの共重合体、乳酸とグリコール酸と酪酸との三元共重合体、乳酸とグリコール酸とε−カプロラクトンとの三元共重合体、乳酸と酪酸とε−カプロラクトンとの三元共重合体、グリコール酸と酪酸とε−カプロラクトンとの三元共重合体、乳酸とグリコール酸と酪酸とε−カプロラクトンとの四元共重合体を挙げることができる。さらに、トリメチレンカーボネートと、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分との共重合体などもあげることができる。
ここで、乳酸類とは、乳酸、ラクチド(D、L、DL)を挙げることができる。また、グリコール酸類とは、グリコール酸、グリコシドを挙げることができる。ヒドロキシアルカン酸とは、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸などのヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸などを挙げることができる。
即ち、生体吸収性を有する材料は、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を有する金属元素及び/又はこの金属元素の化合物の存在下で、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分を共重合して得られる(共)重合体である。さらに、生体吸収性を有する材料として、上記の金属元素及び/又はこの金属元素の化合物の存在下で、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分とトリメチレンカーボネートとを共重合して得られる共重合体も好ましい。
前記(共)重合体を製造する場合、重合触媒として用いる金属元素及び/又はこの金属元素の化合物の添加量は、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分の総量、又は乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種の成分とトリメチレンカーボネートとの総量100質量部に対し、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部、特に好ましくは0.01〜0.8質量部であることが、得られる高分子の物性および合成にかかわるコストの低減のために好ましい。重合触媒として用いる金属元素及び/又はこの金属元素の化合物としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛及び鉄から選択される金属元素及び/又は同金属元素の化合物から選択される少なくとも1種であって、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を有するものが挙げられる。
このような金属元素及び/又はこの金属元素の化合物のより具体的な例としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛及び鉄などの金属元素、前記金属元素の塩化物、アルコキシド化合物、カルボン酸化合物及びその塩化合物、及びアセチルアセトン錯体などの金属元素の化合物を挙げることができ、これらは2種以上の組み合わせたものでもよい。
金属元素の化合物としては、(1)金属元素の塩化物としては、塩化チタン(IV)などのチタンの塩化物、塩化ジルコニウム(IV)などのジルコニウムの塩化物、塩化ハフニウム(IV)などのハフニウムの塩化物、塩化タンタル(V)などのタンタルの塩化物、塩化
ニオブ(V)などのニオブの塩化物、塩化鉄(II)などの鉄の塩化物、塩化亜鉛ジエチル
エーテル錯体などの亜鉛の塩化物などが、(2)金属元素のアルコキシド化合物としては、テトラブトキシチタン(IV)などのチタンのアルコキシド化合物、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)tert−ブトキシドなどのジルコニウムのアルコキシド化合物、ハフニウム(IV)エトキシドなどのハフニウムのアルコキシド化合物、ニオブ(V)エトキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタル(V)メトキシドなどのニオブのアルコキシド化合物、タンタル(V)エトキシドなどのタンタルのアルコキシド化合物、鉄の
アルコキシド化合物、亜鉛のアルコキシド化合物などが、(3)金属元素のカルボン酸化合物としては、2−エチルヘキサン酸ジルコニルなどのジルコニウムのカルボン酸化合物、2−エチルヘキサン酸タンタル(IV)などのタンタルのカルボン酸化合物、2−エチルヘキサン酸ニオブ(IV)などのニオブのカルボン酸化合物、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛のカルボン酸化合物などが、そして(4)金属元素のアセチルアセトン錯体としては、チタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)オキサイド、チタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシドなどのチタンのアセチルアセトン錯体、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナートなどの鉄のアセチルアセトン錯
体、亜鉛アセチルアセトナートなどの亜鉛のアセチルアセトン錯体、アセチルアセトナトジルコニウム(IV)などのジルコニウムのアセチルアセトン錯体、ハフニウム(IV)アセチルアセトナート、トリフルオロアセチルアセトンハフニウム(IV)などのハフニウムのアセチルアセトン錯体、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル(V)などのタンタ
ルのアセチルアセトン錯体、ニオブ(III)アセチルアセトナートなどのニオブのアセチ
ルアセトン錯体などがあげられる。製造条件としては、通常、この種の開環重合に採用される条件を適宜取捨選択して採用すればよい。本発明の細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体を形成する生体吸収性を有する材料に含まれる金属元素及び/又は同金属元素の化合物は、チタン及び鉄の少なくとも一方、及び/又はその塩化物又はアルコキシド化合物である。
その際、プロトンを開始剤とした開環重合を採用することができる。それ故、水などの活性プロトン種を除去しておくことが好ましく、また、微量の高級アルコールなどを添加して、反応を制御してもよい。本発明に係る生体吸収性を有する新規材料は、通常、用途に応じた加工が可能な範囲内であれば、特に制限はないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000の範囲、好ましくは、12,000〜800,000の範囲である。重量平均分子量が、15,000〜600,000の範囲であると、加工性、取扱い性及び機械的な特性において優れているので、更に好ましい。重量平均分子量が10、000未満では、構造材料として好ましくなく、1、000、000を超えると生分解性が遅くなるなどして、好ましくない。Mw/Mnは、好ましくは、1.1〜5.0、更に好ましくは、1.1〜4.0、特に好ましくは、1.1〜3.0である。
体吸収性を有する材料は、単独で、術後の縫合糸や骨固定材等として生体組織内に直接埋植させて使用してもよく、あるいは、宿主内埋め込み用構造体を構成するに際し、同材料を高分子膜にコーティングまたは含浸、あるいは膜状に加工した生体吸収性を有する材料を高分子から構成される高分子膜に積層してもよい。また、細胞・組織培養の場合には、本発明に係る生体吸収性を有する材料をシート状、フィルム状、板状、糸状、籠状、スポンジ状などとして、あるいは、組織・臓器やその欠損部を模した形状などの任意の形状に加工して用いることができる。これらの加工したものは、表面が多孔質であってもよく、平滑であってもよく、表面に多数のディンプル(窪み)やエンボスを有するものであってもよい。
体吸収性を有する材料は、再生医療及び移植医療、ティッシュエンジニアリング、ハイブリッド型人工臓器の開発や評価などに利用できる宿主内埋め込み用構造体の構成材料として有効に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例及び比較例により何ら制限を受けるものではない。
(実施例1)
L−ラクチドモノマー10g、触媒としてのテトラブトキシチタン0.03g、オクチルアルコール0.001gを100ml容量のアンプルに添加し、更に溶媒として塩化メチレン50mlを添加し、室温で完全に溶解させた。その後、減圧下で溶媒の塩化メチレンを除去し、均一な混合物を得た。窒素封入後、アンプルを密封し、140℃で4時間、加熱混合し、重合を行った。加熱停止後、放冷した。室温まで冷却後、反応物をテトラヒドロフラン100mlに溶解させて、溶解液を冷メタノール中に滴下して、無色の沈殿物を得た。これを減圧乾燥して、再度テトラヒドロフラン100mlに溶解させ、溶解液を冷メタノール中に滴下して精製を行った。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。得られたポリマーの収量は、5.82gで、収率は、58.2%であった。更に、このものについて、残存チタン量をIPC(原子吸光分析)で測定したところ、残存チタン量は、114ppmであった。
このものの分子量は、GPCを用い以下の条件で測定した。
(測定条件)
使用機種:東ソー(株)製SC−8010システム
カラム:Shodex K−800D+K−805L×2本
溶媒:CHCl3
温度:カラム恒温槽40℃
濃度:約0.1wt/vol%
流速:1.0ml/分
標準試料:ポリスチレンスタンダード
検出器:示差屈折計(R1)
測定結果は、Mwが、2.08×104、Mnが1.80×104で、Mw/Mnが1.15であった。
(実施例2)
L−ラクチドモノマーに代えてε−カプロラクタム10gを使用した以外は、実施例1と同じ条件下で重合を行った。得られたポリマーの収量は、7.45g、収率は、74.5%であった。残存チタン量についても同様に測定したところ、63.5ppmであった。分子量についても、同様に測定したところ、Mwが、1.29×105、Mnが5.16×104で、Mw/Mnが2.50であった。
同様にして、乳酸とε−カプロラクタムとをモル比で84%:16%を含む乳酸−カプロラクトン共重合体が得られるような量を用い、触媒として塩化鉄(II)を使用して、乳酸−カプロラクトン共重合体Aを得た。このもののMwは、18.4×104、Mnが11.5×104で、残存鉄の量は200ppmであった。また、乳酸とε−カプロラクタムとをモル比で60%:40%を含む乳酸−カプロラクトン共重合体が得られるような量を用い、触媒として塩化亜鉛ジエチルエーテル錯体を使用して、乳酸−カプロラクトン共重合体Bを得た。このもののMwは、23.4×104、Mnが15.0×104で、残存亜鉛の量は100ppmであった。
(比較例1)
触媒としてオクチルスズ0.03gを使用した以外は、実施例1と同じ条件下で重合を行った。得られたポリマーの収量は、6.32g、収率は、63.2%であった。残存スズ量について同様に測定したところ、529ppmであった。分子量についても、同様に測定したところ、Mwが、2.85×105、Mnが1.66×104で、Mw/Mnが1.72であった。
(比較例2)
L−ラクチドモノマーに代えてε−カプロラクタムを10g使用した以外は、比較例1と同じ条件下で重合を行った。得られたポリマーの収量は、8.28g、収率は、82.8%であった。残存スズ量について同様に測定したところ、862ppmであった。分子量についても、同様に測定したところ、Mwが、1.44×105、Mnが6.93×104で、Mw/Mnが2.07であった。
以下、細胞・組織培養基材、及び埋植用医療器具としての利用に関する実施例及び比較例について述べることとする。
(実施例3〜5、比較例3〜5)
(軟骨細胞の増殖及び軟骨細胞の分化に対する影響についての評価)
実施例1で得られたポリ乳酸、同様にして製造した上記乳酸−カプロラクトン共重合体A、及び乳酸−カプロラクトン共重合体B、比較例1で得られたポリ乳酸、並びに金属を利用しないプロセスで合成された市販のポリ乳酸(商品名:ラクテイ2000;島津製作所製)を用いて、ヒト軟骨細胞の分化・増殖に及ぼす影響を評価した。
各ポリマーをジメチルスルホキシドに溶解させポリマー溶液を得た。各ヒト軟骨細胞培養系に、ポリマー濃度で50μg/mlの濃度となるように各ポリマー溶液を添加し、かくして調製した試料を炭酸ガスインキュベーター中で、37℃で4週間培養した。
培養終了後、軟骨細胞の増殖は、クリスタルバイオレットで、また、軟骨細胞の分化は、アルシアンブルーで、それぞれ試料を染色し、得られた染色見本を用いて、増殖・分化の状態を評価した。なお、ポリ乳酸溶液を添加していない試料の軟骨細胞の増殖及び分化状況を100として、相対的評価により行った。評価結果は、以下の表1に示す。
Figure 0004674331
本願発明に係るポリマーを使用した実施例3においては、軟骨細胞の増殖、軟骨細胞の分化に対して、優れた効果を示すことが明らかとなった。
本発明に係る細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体は、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示すため、欠損した組織を修復させ生体による機能を取り戻すための基材など、組織工学、及び再生医療の広範な分野において、安全に使用できる。また、本発明に係る細胞・組織培養用基材、及び宿主内埋め込み用構造体は、細胞の分化・増殖を促進する元素を本来的に含んでおり、細胞・組織の培養や組織・器官の治療に有効である。これら特徴を以て、健康と福祉の増進に貢献できる。

Claims (6)

  1. 生体吸収性であって、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示し、チタン及び鉄の少なくとも一方の金属元素及び/又は同金属元素の化合物を含む、合成重合体からなる材料で構成され、
    前記金属元素及び/又は同金属元素の化合物の含有量は、前記材料100質量部に対して、0.000001〜2質量部であり、
    前記合成重合体が、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種以上の成分から得られる(共)重合体であり、
    前記金属元素の化合物が、金属元素の塩化物、又は金属元素のアルコキシド化合物であると共に、
    シート状、フィルム状、板状、籠状、スポンジ状、あるいは、組織・臓器やその欠損部を模した形状を有する細胞・組織培養用基材。
  2. 前記金属元素及び/又は同金属元素の化合物が、チタン及び/又はテトラブトキシチタン、あるいは鉄及び/又は塩化鉄(II)である請求項1に記載の細胞・組織培養用基材。
  3. 前記金属元素の化合物が、テトラブトキシチタン又は塩化鉄(II)である請求項1または2に記載の細胞・組織培養用基材。
  4. 生体吸収性であって、生体細胞の増殖・分化の機能促進作用を示し、チタン及び鉄少なくとも一方の金属元素及び/又は同金属元素の化合物を含む、合成重合体からなる材料で構成され、
    前記金属元素及び/又は同金属元素の化合物の含有量は、前記材料100質量部に対して、0.000001〜2質量部であり、
    前記合成重合体が、乳酸類、グリコール酸類、ヒドロキシアルカン酸、及びε−カプロラクトンから選ばれる少なくとも1種以上の成分から得られる(共)重合体であり、
    前記金属元素の化合物が、金属元素の塩化物、又は金属元素のアルコキシド化合物であると共に、
    前記材料が高分子膜にコーティングまたは含浸された、あるいは膜状に加工された前記材料が高分子膜に積層された宿主内埋め込み用構造体。
  5. 前記金属元素及び/又は同金属元素の化合物が、チタン及び/又はテトラブトキシチタン、あるいは鉄及び/又は塩化鉄(II)である請求項4に記載の宿主内埋め込み用構造体
  6. 前記金属元素の化合物が、テトラブトキシチタン又は塩化鉄(II)である請求項4または5に記載の宿主内埋め込み用構造体。
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