この発明の一の局面による画像形成装置は、装置本体と、画像を印刷するとともに発熱体を含む印字ヘッドと、印字ヘッドの温度を検出するための第1温度センサと、装置本体内の雰囲気の温度である環境温度を検出するための第2温度センサと、第1温度センサおよび第2温度センサにより検出された印字ヘッドの温度および装置本体内の環境温度に基づいて印字ヘッドの発熱体に加える熱量を補正する第1の補正を行うとともに、第1の補正により補正された印字ヘッドの発熱体に加える熱量を、印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正する第2の補正を行うように制御する制御部とを備える。
この一の局面による画像形成装置では、上記のように、第1温度センサおよび第2温度センサにより検出された印字ヘッドの温度および環境温度に基づいて印字ヘッドの発熱体に加える熱量を補正する第1の補正を行うとともに、第1の補正により補正された第1補正値を、印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正する第2の補正を行うように制御するように構成することによって、発熱体に加える熱量を印字ヘッドの温度および環境温度から所定の階調(濃度)を基準にして補正したとしても、補正した熱量を印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正するので、所定の階調(濃度)に対して階調差の大きい白色側(低濃度側)の階調または黒色側(高濃度側)の階調の画像を印刷する場合であっても最適な濃度に補正される。したがって、ユーザの所望の画像を得ることができる。
上記一の局面による画像形成装置において、好ましくは、制御部は、装置本体に読み込まれた印刷画像の濃度情報から画像全体の濃度を検出するように構成され、制御部は、第1の補正により発熱体に加える熱量を補正した第1補正値を、制御部により検出された印刷画像の全体の濃度に基づいて第2の補正によりさらに補正するように制御する。このように構成すれば、発熱体に加える熱量を第1の補正により補正した第1補正値を第2の補正によりさらに補正する際に、印刷画像の濃度情報として、制御部に検出された画像全体の濃度に基づいて第2の補正を行うので、画像全体の濃度に対応して第2の補正を行うことができる。したがって、画像全体の濃度に対応して画像が印刷されるように熱量を補正することができるので、ユーザは、容易に所望の画像を得ることができる。
上記一の局面による画像形成装置において、好ましくは、制御部は、装置本体内の所定の環境温度において、印刷時に印字ヘッドの発熱体に供給するエネルギ量と、印刷された画像の濃度の濃淡に対応する色の階調との関係が規定された色テーブルに基づいて印字ヘッドの熱量を制御するように構成され、制御部は、第1補正値を第2の補正により補正した第2補正値に基づいて色テーブルを補正するように構成される。このように構成すれば、制御部により第2補正値に基づいて色テーブルを補正するので、補正された色テーブルに基づいて容易にエネルギ量が補正された印刷を行うことができる。
この場合、好ましくは、色テーブルを記憶する色テーブル記憶部と、印刷画像全体の濃度の濃淡に対応する色の階調と色の階調毎に設定されたエネルギ量の補正率との関係が規定された補正用テーブルを記憶する補正用テーブル記憶部とを含むメモリ部をさらに備えるように構成される。このように構成すれば、メモリ部に含まれる補正用テーブル記憶部に記憶された補正用テーブルにより、印刷画像全体の濃度に対する階調毎に設定されたエネルギ量の補正率を検出することができる。したがって、補正用テーブルに基づいて容易に補正を行うことができる。
上記色テーブルを記憶する色テーブル記憶部および補正用テーブルを記憶する補正用テーブル記憶部を含むメモリ部を備えた画像形成装置において、好ましくは、補正用テーブルは、所定の色の階調を基準にして濃度の濃淡に対応する色の階調と色の階調毎に設定されたエネルギ量の補正率とが対応するように構成され、制御部は、制御部により検出された印刷画像全体の濃度に該当する補正用テーブルの濃度に対応する色の階調を判別するとともに、判別した階調に対応するエネルギ量の補正率を検出し、第1補正値と検出したエネルギ量の補正率とに基づいて第2補正値を算出するとともに、算出した第2補正値に基づいて色テーブルを補正するように制御するように構成される。このように構成すれば、補正用テーブルは、所定の色の階調を基準にして、それぞれの階調と、それぞれの階調毎に設定されたエネルギ量の補正率とが対応するように構成されるので、制御部により検出された印刷画像全体の濃度に対応するそれぞれの階調毎にエネルギ量の補正率が対応されるように構成される。したがって、第2の補正において、第1補正値を適切な値に補正することができる。
上記色テーブルを記憶する色テーブル記憶部および補正用テーブルを記憶する補正用テーブル記憶部を含むメモリ部を備えた画像形成装置において、好ましくは、補正用テーブルは、所定の色の階調と所定の色の階調に対応する濃度を印刷するために必要なエネルギ量の補正率とを基準にするように構成され、補正用テーブルに規定されたエネルギ量の補正率は、基準になる所定の色の階調の補正率に対する白色側の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分が、基準になる所定の色の階調の補正率に対する黒色側の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分よりも大きくなるように設定されている。このように構成すれば、基準になる所定の色の階調の補正率と白色側(低濃度側)の階調に対応するエネルギ量の補正率との補正率の差分が、基準になる所定の色の階調の補正率と黒色側(高濃度側)の階調に対応するエネルギ量の補正率との補正率の差分よりも大きくなるので、第2の補正を行う際に、濃度のムラが認識されやすい白色側の階調による画像の印刷時において第2の補正を行う場合に、黒色側の階調による画像の印刷時に行う第2の補正に対応する補正量(補正される印刷濃度の度合い)よりも大きい補正量で補正される。したがって、ユーザは、基準になる所定の色の階調に比べて階調差の大きい低階調(白色側)の階調による画像を印刷する場合にも適切に補正された印刷画像を得ることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの全体構成を示した分解斜視図である。図2は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの全体構成を示した斜視図である。図3〜図10は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの構成を説明するための図である。まず、図1〜図10を参照して、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の構造について説明する。なお、本実施形態では、画像形成装置の一例である昇華型プリンタ100に本発明を適用した場合について説明する。
本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100は、図1に示すように、金属製のシャーシ1と、印字を行うための印字ヘッド2と、印字ヘッド2に対向するように配置されたプラテンローラ3(図3参照)と、金属製の送りローラ4(図3参照)と、所定の押圧力で送りローラ4を押圧する金属製の押さえローラ5(図3参照)と、送りローラギア6(図4および図5参照)と、樹脂製の下部用紙ガイド7aおよび上部用紙ガイド7b(図3参照)と、ゴム製の給紙ローラ8と、給紙ローラギア9(図4および図5参照)と、ゴム製の排紙ローラ10と、排紙ローラギア11(図4および図5参照)とを備えている。
また、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100は、図4および図5に示すように、巻取りリール12と、モータブラケット13と、用紙40(図1および図2参照)を搬送するためのステッピングモータ14と、印字ヘッド2を回動させる駆動源としてのステッピングモータ15と、揺動可能な揺動ギア16と、複数の中間ギア17〜20とを備えている。また本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100は、図1に示すように、インクシート51が収納されたインクシートカートリッジ50を支持するカートリッジ支持部21と、昇華型プリンタ100の動作を制御する回路部22が設けられた配線基板23と、天板24と、シャーシ1を内部に収納する筐体25(図2参照)とを備えている。また、本実施形態による昇華型プリンタ100には、インクシートカートリッジ50と、昇華型プリンタ100に供給する用紙40を収納するための給紙カセットケース26(図2参照)とが着脱可能に装着されている。
また、筐体25は、図2に示すように、蓋部材25aおよび25bを含んでいる。筐体25の蓋部材25aは、給紙カセットケース26を昇華型プリンタ100に装着するために設けられている。また、筐体25の蓋部材25bは、インクシートカートリッジ50を昇華型プリンタ100に装着するために設けられている。
また、図1に示すように、インクシートカートリッジ50は、巻取り部50aと、供給部50bとを有している。また、巻取り部50aの内部には、巻取りボビン50cが回転可能に配置されている。また、供給部50bの内部には、供給ボビン50dが回転可能に配置されている。
また、図1に示すように、シャーシ1は、互いに対向するように配置された一方側面1aと、他方側面1bと、底面1cとを有している。また、シャーシ1の一方側面1aには、上記したモータブラケット13が取り付けられている。また、シャーシ1の他方側面1bには、インクシートカートリッジ50を挿入するための挿入孔1dが設けられている。また、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bのそれぞれの上端部には、配線基板23を取り付けるための取付部1eが2つずつ形成されている。また、4つの取付部1eには、それぞれ、配線基板23を固定するためのネジ27が螺合されるネジ孔1fが形成されている。また、配線基板23は、天板24を介してシャーシ1の取付部1eに取り付けられている。具体的には、配線基板23は、配線基板23の4つの孔23aおよび天板24の4つの孔24aに通された4個のネジ27をシャーシ1の取付部1eのネジ孔1fに締め付けることによって固定されている。
ここで、本実施形態では、図1および図3に示すように、昇華型プリンタ100の装置本体の使用雰囲気の温度である環境温度を検出するための環境温度センサ28が、天板24の下面側の中央部分に設けられている。なお、環境温度センサ28は、本発明の「第2温度センサ」の一例である。
また、図3に示すように、シャーシ1の底面1cには、用紙40の前端部および後端部を検出するための用紙センサ29aおよび29bが設けられている。また、下部用紙ガイド7aは、送りローラ4および押さえローラ5の近傍に設置されている。また、上部用紙ガイド7bは、給紙時には、用紙40が下面側を通過するようにして印刷部への給紙経路に案内するとともに、排紙時には、用紙40が上面側を通過するようにして排紙経路に案内する機能を有する。また、カートリッジ支持部21には、反射型のインクシート頭出しセンサ30の反射部30aが取り付けられている。なお、インクシート頭出しセンサ30の発光部30bは、インクシート51を挟んで反射部30aと対向するように配線基板23に取り付けられている。また、天板24には、配線基板23に取り付けられたインクシート頭出しセンサ30をシャーシ1側に露出させるための孔部24b(図1参照)が形成されている。
また、図6に示すように、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bには、それぞれ、プラテンローラ3を回転可能に支持するためのプラテンローラ軸受3aが設けられている。また、送りローラ4は、図4および図5に示すように、送りローラギア6に挿入される送りローラギア挿入部4aを有する。また、送りローラ4は、シャーシ1に設けられた送りローラ軸受け(図示せず)に回転可能に支持されている。また、押さえローラ5は、押さえローラ軸受け(図示せず)に回転可能に支持されている。また、送りローラ4および押さえローラ5は、図3に示すように、用紙40を間に挟んだ状態で回転することにより、用紙40を給紙方向(図3の矢印T1方向)または排紙方向(図3の矢印U1方向)に搬送する機能を有する。また、給紙ローラ8は、給紙カセットケース26に載置された用紙40をシャーシ1の内部に取り込む機能を有する。
また、図6に示すように、印字ヘッド2は、一対の支持軸2aと、プラテンローラ3(図3参照)に対向するように配置されたヘッド部2b(図3参照)と、支持軸2aとヘッド部2bとを連結する一対のアーム部2cと、ヘッド部2bに取り付けられるヘッドカバー2d(図3参照)とを含んでいる。また、印字ヘッド2は、支持軸2aを支点として、それぞれ、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bに取り付けられている。また、印字ヘッド2は、ステッピングモータ15(図4参照)を駆動源とする押圧部材(図示せず)に押圧されることによって用紙40およびプラテンローラ3を押圧するように構成されているとともに、押圧部材と係合することにより押圧部材が回動するのに伴って印字ヘッド2も支持軸2aを支点として回動する。これにより、印字ヘッド2のヘッド部2bがプラテンローラ3に対して離間するように構成されている。また、図6に示すように、印字ヘッド2のヘッド部2bには、電圧パルス幅が供給されて発熱する複数の発熱体2eが、ヘッド部2bに沿って所定の間隔を隔てて一列に設けられている。
ここで、本実施形態では、図3および図6に示すように、印字ヘッド2の底面部の発熱体2eの近傍には、印字ヘッド2の温度を検出するためのヘッド温度センサ2fが設けられている。なお、ヘッド温度センサ2fは、本発明の「第1温度センサ」の一例である。
また、図5および図6に示すように、モータブラケット13に取り付けられたステッピングモータ14の軸部には、モータギア14aが取り付けられている。また、ステッピングモータ14は、巻取りリール12のギア部12aと、給紙ローラギア9と、排紙ローラギア11と、送りローラギア6とを駆動させるための駆動源としての機能を有する。
また、巻取りリール12は、インクシートカートリッジ50の巻取り部50aの内部に配置された巻取りボビン50c(図1参照)に係合することによって、巻取りボビン50cに巻き付けられたインクシート51を巻き取るように構成されている。また、巻取りリール12のギア部12aは、揺動ギア16が揺動することによって噛合するように配置されている。また、インクシート51は、図7に示すように、色の3原色からなる、Y色(イエロー)印字シート51aと、M色(マゼンダ)印字シート51bと、C色(シアン)印字シート51cとの3色のシートから構成されている。
また、図8に示すように、配線基板23に設けられた回路部22(図1参照)は、昇華型プリンタ100の印刷動作を制御する制御部22aと、ヘッド温度センサ2fおよび環境温度センサ28(図3参照)によって検出された温度に対応するアナログ電圧値をデジタル温度値に変換するためのA/D変換部22bと、印字ヘッド2の発熱体2e(図6参照)の温度を制御するヘッドコントローラ22cと、モータコントローラ22dと、モータドライバ22eと、フラッシュメモリ22fと、作業用メモリ22gとを備えている。なお、フラッシュメモリ22fは、本発明の「メモリ部」の一例である。
ここで、本実施形態では、図8に示すように、フラッシュメモリ22fは、基準色テーブル記憶部22hと、補正用テーブル記憶部22iと、プログラム格納メモリ部22jとを含んでいる。ここで、基準色テーブル記憶部22hには、ヘッド温度および環境温度が所定の温度である場合に、印字ヘッド2の発熱体2e(図6参照)に供給するエネルギ量と印刷された画像の濃度の濃淡に対応する色の階調との関係が規定された基準色テーブル22k(図9参照)が記憶されている。なお、本実施形態では、所定のヘッド温度を65℃、所定の環境温度を45℃に設定して基準色テーブル22kを構成している。また、所定のヘッド温度(65℃)および所定の環境温度(45℃)は、複数枚の用紙を連続的に印刷した場合に最大限上昇した状態(飽和状態)における温度である。また、この基準色テーブル22kは、常温時(約30℃)において、ヘッド温度を65℃および環境温度を45℃とした際の階調とエネルギ量との関係を規定している。また、基準色テーブル22kは、本発明の「色テーブル」の一例である。なお、本実施形態における色の濃度の濃淡に対応する値である階調は、0階調〜255階調までの256段階の階調によって構成されている。また、本実施形態における256段階の色の階調は、0階調が最も濃度が薄い白色を表しているとともに、255階調が最も濃度が濃い黒色を表すように設定されている。
また、図8に示す補正用テーブル記憶部22iには、印刷画像全体の濃度の濃淡に対応する色の階調と、色の階調毎に設定されたエネルギ量の補正率との関係が規定された補正用テーブル22l(図10参照)が記憶されている。この補正用テーブル22lは、後述する第1補正値を後述する第2補正値に補正する際に使用される。ここで、補正用テーブル22lは、灰色が印刷される128階調および128階調の灰色を印刷するために必要なエネルギ量の補正率との組み合わせを基準にして、それぞれの階調と、階調毎に設定されたそれぞれの階調の発色に必要なエネルギ量の補正率とが対応するように構成されている。また、補正用テーブル22lに規定された印字ヘッド2の発熱体2eに加えるエネルギ量の補正率は、基準になる灰色の128階調に比べて低階調(白色側の階調)または高階調(黒色側の階調)の濃度の画像を印刷する際に、それぞれの階調を理想的に印刷するためのエネルギ量の補正量に設定されている。
ここで、本実施形態では、補正用テーブル22lに規定されたエネルギ量の補正率は、図10に示すような、基準になる128階調の灰色の補正率(100%)に対する低階調(白色側)の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分が、基準になる128階調の灰色の補正率に対する高階調(黒色側)の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分よりも大きくなるように設定されている。具体的には、基準になる128階調に対応する補正率(100%)と0階調(低階調)に対応する補正率(80%)との差分(20%)が、128階調に対応する補正率(100%)と255階調(高階調)に対応する補正率(95%)との差分(5%)よりも大きくなるように設定されている。
また、フラッシュメモリ22fに含まれるプログラム格納メモリ部22jには、動作プログラムなどのプログラムが格納されている。
また、制御部22aは、上記したような基準温度テーブル22k(図9参照)に基づいて印字ヘッド2の熱量を制御するように構成されている。また、モータコントローラ22dは、モータドライバ22eを介してステッピングモータ14およびステッピングモータ15を制御するために設けられている。また、ヘッドコントローラ22cは、印字ヘッド2の発熱体2e(図6参照)に電圧パルスを印加することによって、印字ヘッド2の発熱体2eの温度を制御するために設けられている。
ここで、本実施形態では、制御部22aは、ヘッド温度センサ2fおよび環境温度センサ28(図3参照)により検出された印字ヘッド2のヘッド温度および装置本体内の環境温度に基づいて印字ヘッド2の発熱体2eに加える熱量を補正する第1の補正を行うとともに、第1の補正により補正された発熱体2eに加える熱量(第1補正値)を印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正する第2の補正を行うように制御するように構成されている。ここで、印刷画像の濃度情報とは、PC(パーソナルコンピュータ)などから昇華型プリンタ100へ読み込まれた印刷画像から制御部22aにより検出される画像全体の濃度のことである。また、制御部22aにより検出される画像全体の濃度とは、印刷画像の印画ドット値の総和によって算出される。ここで、印刷画像の印画ドット値は色の階調値を表しており、印刷画像が高濃度(高階調)であるほど印画ドット値は大きな値になる。したがって、印刷画像の印画ドット値の総和が大きな値であるほど印刷画像の全体の濃度は高濃度であると判断される。これにより、制御部22aは、第1の補正により発熱体2eに加える熱量を補正した第1補正値を、制御部22aにより検出された印刷画像の全体の濃度に基づいて行う第2の補正によりさらに補正するように制御するように構成されている。具体的には、制御部22aは、制御部22aにより検出された印刷画像全体の濃度(階調値)に該当する補正用テーブル22l(図10参照)の階調を判別するとともに、判別した階調に対応するエネルギ量の補正率を検出し、第1補正値と補正用テーブル22lから検出した補正率とを掛け合わせることによって第2補正値を算出する。そして、算出した第2補正値を基準色テーブル22k(図9参照)に加算することによって基準色テーブル22kを補正するように制御するように構成されている。
ここで、上記した第1の補正および第2の補正について説明する。まず、第1の補正について説明する。第1の補正とは、連続的に印刷を行うためにヘッド温度および環境温度が上昇することに起因して、印刷前に設定された印刷濃度に対して実際に基準色テーブル22kに基づいて印刷された印刷画像の印刷濃度に誤差が生じるのを抑制するために、誤差の差分だけ補正する補正動作をいう。つまり、誤差の差分に対応する濃度分をさらに発色させるために必要なエネルギ量を補正する。また、第1の補正によって算出される補正分のエネルギ量が、本発明における第1補正値に相当する。なお、具体的な算出方法は以下のようになる。
第1の補正の具体的な算出方法は、まず、印字ヘッド2のヘッド温度と装置本体内の環境温度とを検出するとともに、検出した温度に基づいて補正する濃度量(補正濃度量A)を以下の式(1)により算出する。
補正濃度量A=ΔH×K1+ΔS×K2・・・(1)
ΔH(飽和状態時のヘッド温度−検出された時点のヘッド温度)
ΔS(飽和状態時の環境温度−検出された時点の環境温度)
K1(ヘッド温度が1度上昇する際の濃度の変化量)
K2(装置本体の環境温度が1度上昇する際の濃度の変化量)
ここで、上記したように、飽和状態とは、連続印刷する際にヘッド温度または環境温度が最大限上昇した際の状態をいい、飽和状態のヘッド温度は約65℃程度になるとともに飽和状態の装置本体の環境温度は約45℃程度になる。また、係数K1およびK2は、予め、128階調の灰色を印刷条件を変更して複数回テスト印刷することにより導出した係数であり、K1は約0.005〜0.006程度の値となるとともに、K2は、約0.002〜0.003程度の値となる。次に、算出した補正濃度量A分を発色させるのに必要なエネルギ量C(第1補正値)を以下の式(2)により算出する。
エネルギ量C(第1補正値)=A/B・・・(2)
A(補正濃度量)
B(供給するエネルギ量を単位量大きくした際の濃度の変化量)
次に第2の補正について説明する。ここで、第1の補正を行う際に使用する上記した式(1)における係数K1およびK2は、128階調の濃度の画像をテスト印刷することにより導出されている。したがって、上記した式(1)は、128階調付近の階調の画像を印刷する際には最適な補正を行う一方で、128階調に対して階調差の大きい低階調(白色側の階調)または高階調(黒色側の階調)の画像を印刷する際には式(1)における係数K1およびK2が対応していないことに起因して濃度に誤差が発生する。すなわち、第1の補正に使用される式(1)の係数K1およびK2は、128階調に対して階調差の大きい低階調(白色側の階調)および高階調(黒色側の階調)の濃度の画像をテスト印刷することにより導出された係数ではないことによって発生する濃度誤差を補正するために、第2の補正を行う。また、この第2の補正によって第1補正値が補正された値が、本発明における第2補正値に相当する。なお、具体的な算出方法は以下のようになる。
第2の補正の具体的な算出方法は、制御部22aにより印刷画像の全体の濃度(階調値)を検出することにより、印刷画像の濃度(階調値)を認識する。そして、認識した印刷画像の濃度(階調値)に該当する補正用テーブル22l内の階調を検出するとともに、検出された補正用テーブル22l内の階調に対応している補正率Dを検出する。そして、検出された補正率Dと、上記した式(1)および(2)により算出されたエネルギ量C(第1補正値)とを掛け合わせることによって以下の式(3)により、最終的な補正エネルギ量E(第2補正値)を算出する。
補正エネルギ量E(第2補正値)=C×D・・・(3)
C(第1補正値)
D(補正率)
なお、印刷の際には、算出されたエネルギ量E(第2補正値)を基準色テーブル22k(図9参照)に加算して印刷を行う。
図11は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷画像の濃度補正動作における制御フローを示したフローチャートである。次に、図2〜図6および図8〜図11を参照して、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の動作について説明する。
まず、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の制御部22aによる印刷画像の濃度補正動作における制御について説明する。
まず、図11に示すように、ステップS1において、本発明による昇華型プリンタ100に対して印刷の指示が有るか否かが判断される。印刷の指示がないと判断された場合には、印刷の指示有りと判断されるまで繰り返しこの判断を行う。また、印刷の指示有りと判断された場合に、ステップS2に進み、上記したように、PCなどから読み込まれた印刷画像におけるドット値の総和を検出するとともに、ステップS3に進み、検出したドット値の総和に基づいて印刷画像の全体の濃度を検出する。すなわち、検出したドット値の総和の大きさから印刷画像の全体の濃度の濃さを判断する。
そして、ステップS4において、ヘッド温度センサ2fおよび環境温度センサ28(図3参照)により、印字ヘッド2のヘッド温度および装置本体内の環境温度を検出する。この際、ヘッド温度センサ2fにより、まず印字ヘッド2の発熱体2e(図3および図6参照)近傍の温度に対応する電圧値が検出された後、検出された電圧値(アナログ値)がA/D変換部22b(図8参照)により印字ヘッド2の温度データ(デジタル値)へ変換されて制御部22aに送信される。また、環境温度センサ28から検出される装置本体内の環境温度も同様にデジタル値に変換されて制御部22aに送信される。
そして、ステップS5に進み、ステップS4において検出した印字ヘッド2のヘッド温度と装置本体内の環境温度とに基づいて、上記した式(1)を使用することにより補正濃度量Aを算出する。そして、ステップS6に進み、上記した式(2)を使用することにより、補正濃度量Aを用紙40(図2参照)に発色させるために必要なエネルギ量C(第1補正値)を算出(第1の補正)する。
そして、ステップS7に進み、補正用テーブル22l(図10参照)から、ステップS2およびステップS3において検出した画像全体の濃度(階調値)に該当する階調を判別する。そして、ステップS8において、補正用テーブル22lから、判別した階調に対応する補正率Dを検出する。そして、ステップS9において、ステップS6において算出したエネルギ量C(第1補正値)と、ステップS8において検出した補正率Dとに基づいて、上記した式(3)を使用することにより最終的な補正エネルギ量E(第2補正値)を算出する。そして、ステップS10に進み、ステップS9において算出した補正エネルギ量E(第2補正値)を基準色テーブル22k(図9参照)に加算することにより基準色テーブル22kを補正する。そして、ステップS11に進み、補正された基準色テーブル22kに基づいて印刷が開始されて処理は終了する。なお、連続的に印刷を行う際において、印字ヘッド2のヘッド温度および装置本体の環境温度が、それぞれ上記したような飽和状態時の温度に達するまで第1の補正および第2の補正を繰り返し行いながら印刷動作を行う。また、印刷が終了した際に、補正された基準色テーブル22lは、補正前の状態に戻るように処理される。
次に、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100における印刷動作について説明する。図5に示すように、ステッピングモータ14が駆動するのに伴って、ステッピングモータ14に取り付けられたモータギア14aが矢印C3方向に回転し、中間ギア17および18を介して、送りローラギア6が矢印C1方向に回転する。これにより、送りローラ6が、図5の矢印C1方向に回転する。さらに、中間ギア19および20を介して、給紙ローラギア9および給紙ローラ8が、図5のC4方向に回転する。これにより、用紙40が給紙方向(図3の矢印T1方向)に搬送される。この時、揺動可能な揺動ギア16は、巻取りリール12のギア部12aに噛合しておらず、巻取りリール12のギア部12aは回転しない。これにより、給紙動作時には、供給ボビン50aおよび巻取りボビン50bに巻きつけられたインクシート51は巻き取られない。また、図3に示すように、用紙センサ29aおよび29bに用紙40の前端部および後端部が検出されることによって、用紙40が印刷開始位置にまで搬送されたか否かが判断される。そして、用紙40が印刷開始位置にまで到達されると、印字ヘッド2が印刷位置にまで下降するとともに印刷が開始される。
また、図5に示すように、ステッピングモータ14(図4参照)が駆動するのに伴って、ステッピングモータ14に取り付けられたモータギア14aが図5の矢印D3方向に回転し、中間ギア17および18を介して、送りローラギア6が図5の矢印D1方向に回転する。これにより、送りローラ4が図5の矢印D1方向に回転するとともに、送りローラ4の動きに伴って、押さえローラ5が図3の矢印B方向に回転する。さらに、中間ギア19、中間ギア20および給紙ローラ8を介して、排紙ローラギア11および排紙ローラ10が、図3のD5方向に回転する。これにより、用紙40が印画方向である排紙方向(図3の矢印U1方向)に搬送される。この時、揺動可能な揺動ギア16は、巻取りリール12のギア部12aに噛合し、巻取りリール12に係合する供給ボビン50aおよび巻取りボビン50bに巻きつけられたインクシート51が巻取りボビン50b方向に巻き取られる。そして、用紙40の印刷後に、印刷済みの用紙40を外部に排紙する。このときの動作としては、用紙40を印画する時の動作と同様に、印刷済みの用紙40は図3のU1方向に搬送される。そして、上部用紙ガイド7bの上側を搬送されるとともに、図3の矢印D5方向に回転している排紙ローラ10によって排紙される。
本実施形態では、上記のように、ヘッド温度センサ2fおよび環境温度センサ28により検出された印字ヘッド2のヘッド温度および装置本体内の環境温度に基づいて印字ヘッド2の発熱体2eに加えるエネルギ量を補正する第1の補正を行うとともに、第1の補正により補正された第1補正値を、印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正する第2の補正を行うように制御するように構成することによって、発熱体2eに加えるエネルギ量をヘッド温度および環境温度から128階調の灰色を基準にして補正する第1の補正を行ったとしても、補正したエネルギ量(第1補正値)を印刷画像の濃度情報に基づいてさらに補正するので、128階調の灰色に対して階調差の大きい低階調(白色側の階調)または高階調(黒色側の階調)の画像を印刷する場合であっても最適な濃度に補正される。したがって、ユーザの所望の画像を得ることができる。
また、本実施形態では、制御部22aを、昇華型プリンタ100の装置本体に読み込まれた印刷画像の濃度情報から画像全体の濃度を検出するように構成するとともに、制御部22aを、第1の補正により発熱体2eに加えるエネルギ量を補正した第1補正値を、制御部22aにより検出された印刷画像の全体の濃度に基づいて第2の補正によりさらに補正するように制御するように構成することによって、発熱体2eに加えるエネルギ量を第1の補正により補正した第1補正値を第2の補正によりさらに補正を行う際に、印刷画像の濃度情報として、制御部22aに検出された画像全体の濃度に基づいて第2の補正を行うので、画像全体の濃度に対応して第2の補正を行うことができる。したがって、画像全体の濃度に対応して画像が印刷されるようにエネルギ量を補正することができるので、ユーザは、容易に所望の画像を得ることができる。
また、本実施形態では、制御部22aを、昇華型プリンタ100の装置本体内の環境温度が約45℃であるとともに印字ヘッド2のヘッド温度が約65℃である状態において、印刷時に印字ヘッド2の発熱体2eに供給するエネルギ量と、印刷された画像の濃度の濃淡に対応する色の階調との関係が規定された色テーブル22kに基づいて印字ヘッド2のエネルギ量を制御するように構成するとともに、制御部22aを、第1補正値を第2の補正により補正した第2補正値に基づいて色テーブル22kを補正するように構成することによって、制御部22aにより第2補正値に基づいて色テーブル22kを補正するので、補正された色テーブル22kに基づいて容易にエネルギ量が補正された印刷を行うことができる。
また、本実施形態では、色テーブル22kを記憶する色テーブル記憶部22hと、印刷画像全体の濃度の濃淡に対応する色の階調と色の階調毎に設定されたエネルギ量の補正率との関係が規定された補正用テーブル22lを記憶する補正用テーブル記憶部22iとを含むフラッシュメモリ22fをさらに備えるように構成することによって、フラッシュメモリ22fに含まれる補正用テーブル記憶部22iに記憶された補正用テーブル22lにより、印刷画像全体の濃度に対する階調毎に設定されたエネルギ量の補正率を検出することができる。したがって、補正用テーブル22lに基づいて容易に補正を行うことができる。
また、本実施形態では、補正用テーブル22lを、128階調の灰色を基準にして濃度の濃淡に対応する色の階調と色の階調毎に設定されたエネルギ量の補正率とが対応するように構成するとともに、制御部22aを、制御部22aにより検出された印刷画像全体の濃度に該当する補正用テーブル22lの濃度に対応する色の階調を判別するとともに、判別した階調に対応するエネルギ量の補正率を検出し、第1補正値と検出したエネルギ量の補正率とに基づいて第2補正値を算出するとともに、算出した第2補正値に基づいて色テーブル22kを補正するように制御するように構成することによって、補正用テーブル22lは、128階調の灰色を基準にして、それぞれの階調と、それぞれの階調毎に設定されたエネルギ量の補正率とが対応するように構成されるので、制御部22aにより検出された印刷画像全体の濃度に対応するそれぞれの階調毎にエネルギ量の補正率が対応するように構成される。したがって、第2の補正において、第1補正値を適切な値に補正することができる。
また、本実施形態では、補正用テーブル22lを、128階調の灰色と128階調の灰色に対応する濃度を印刷するために必要なエネルギ量の補正率とを基準にするように構成するとともに、補正用テーブル22lに規定されたエネルギ量の補正率を、基準になる128階調の補正率に対する白色側の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分が、基準になる128階調の補正率に対する黒色側の階調に対応するエネルギ量の補正率の差分よりも大きくなるように設定するように構成することによって、基準になる128階調の補正率と白色側(低濃度側)の階調に対応するエネルギ量の補正率との補正率の差分が、基準になる128階調の補正率と黒色側(高濃度側)の階調に対応するエネルギ量の補正率との補正率の差分よりも大きくなるので、第2の補正を行う際に、濃度のムラが認識されやすい白色側の階調(低階調)による画像の印刷時において第2の補正を行う場合に、黒色側の階調(高階調)による画像の印刷時に行う第2の補正に対応する補正量(補正される印刷濃度の度合い)よりも大きい補正量で補正される。したがって、ユーザは、基準になる128階調に比べて階調差の大きい低階調(白色側)の階調による画像を印刷する場合にも適切に補正された印刷画像を得ることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、画像形成装置の一例として昇華型プリンタを示したが、本発明はこれに限らず、印字ヘッドにより用紙を印刷するように構成された画像形成装置であれば、昇華型プリンタ以外の画像形成装置に対しても適用可能である。
また、上記実施形態では、印字ヘッドのヘッド温度および装置本体の環境温度がそれぞれ飽和状態時の温度に到達するまで、第1の補正および第2の補正を繰り返し行いながら印刷する例を示したが、本発明はこれに限らず、ヘッド温度および環境温度が飽和状態の温度に達するまで第1の補正および第2の補正を繰り返し行わなくてもよい。
また、上記実施形態では、補正された基準色テーブルは、印刷終了時に補正前の状態に戻るような例を示したが、本発明はこれに限らず、フラッシュメモリに補正値を記録させておいてもよい。