情報通信機器、特に携帯端末などの個人用小型機器の飛躍的な普及に伴い、これを構成するメモリ素子やロジック素子などは、高集積化、高速化、低電力化など、一層の高性能化が要求されている。特に不揮発性メモリはユビキタス時代に必要不可欠だと考えられている。電源の消耗やトラブル、サーバーとネットワークが何らかの障害により切断された場合でも、不揮発性メモリは個人の重要な情報を保護できる。また、最近の携帯機器は不要の回路ブロックをスタンバイ状態にしてできるだけ消費電力を抑えるよう設計されているが、高速のワークメモリと大容量ストレージメモリを兼ねることができる不揮発性メモリが実現できれば消費電力とメモリの無駄を無くすことができる。また電源を入れると瞬時に起動できる「インスタント・オン」機能も高速の大容量不揮発性メモリが実現できれば可能になってくる。
不揮発性メモリとしては、半導体を用いたフラッシュメモリや、強誘電体を用いたFRAM(Ferro electric Random Access Memory)などが挙げられる。しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いという欠点がある。一方、FRAMは、書き換え可能回数が1テラ(T)回〜100テラ(T)回で完全にSRAM、DRAMを置き換えるには耐久性が低いという問題点があり、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題点が指摘されている。
これらの欠点を有さない不揮発性メモリとして注目されているのが、MRAMとよばれる磁気メモリである。この磁気メモリは、近年のTMR(Tunnel Magnetoresistance)材料の特性向上により、注目を集めるようになってきている(例えば、非特許文献1参照。)。
MRAMは、構造が単純であるため高集積化が容易であり、また磁気モーメントの回転により記憶を行うために書き換え可能回数が大である。またアクセス時間についても非常に高速であることが予想され、既に100MHzで動作可能であることが報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
ここで、一般的なMRAMの構成を図13の模式的斜視図によって説明する。
図13に示すように、シリコン基板等からなる半導体基体110には素子分離層102が形成され、この素子分離層102により分離された領域に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタが形成されている。すなわち、半導体基体110上にゲート絶縁膜(図示せず)を介してゲート電極101が形成され、そのゲート電極101の一方側に半導体基体110にドレイン領域108が形成され、他方側に半導体基体110にソース領域107が形成されている。また、ゲート電極101の上方には、ゲート電極のゲート幅方向に延びるワード線105が設けられている。上記ドレイン領域108は、二つの選択用トランジスタの共通にドレインとなっている。このドレイン領域108には、配線109が接続されている。
上記ワード線105の上方にはこのワード線105と交差するようにビット線106が形成されている。このワード線105とビット線106との間には、ビット線106に接続されるもので、磁化の向きが反転する記憶層を有する磁気記憶素子103が配置されている。この磁気記憶素子103は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成されている。さらに、磁気記憶素子103の下部側には、上記ビット線106と平行に配設された引き出し電極(バイパス線)111の一端が接続され、この引き出し電極111の他端側はコンタクト104を介して上記ソース領域107に電気的に接続されている。
上記MRAMでは、ワード線105およびビット線106にそれぞれ電流を流すことにより、電流磁界を磁気記憶素子103に印加し、これにより磁気記憶素子103の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記憶を行うことができる。そして、MRAM等の磁気メモリにおいて、記憶した情報を安定に保持するためには、情報を記憶する磁性層(記憶層)が、一定の保磁力を有していることが必要である。一方、記憶された情報を書き換えるためには、アドレス配線にある程度の電流を流さなければならない。
ところが、MRAMを構成する素子の微細化に従い、アドレス配線も細くなるため、充分な電流が流せなくなってくる。そこで、より少ない電流で磁化反転が可能な構成として、スピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリが注目されている(例えば、特許文献1参照。)。
スピン注入による磁化反転とは、磁性体の中を通過してスピン偏極した電子を、他の磁性体に注入することにより、他の磁性体において磁化反転を起こさせるものである。例えば、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)や磁気トンネル接合素子(MTJ素子)に対して、その膜面に垂直な方向に電流を流すことにより、これらの素子の少なくとも一部の磁性層の磁化の向きを反転させることができる。また、スピン注入による磁化反転は、素子が微細化されても、電流を増やさずに磁化反転を実現することができる利点を有している。
図14は、右縦軸にメモリ・セルサイズ(F2)、左縦軸に書き込み電流、横軸にMTJ素子の短辺サイズを採ったものである。図14に示すように、スピン注入磁化反転型は、MTJ素子サイズの縮小化にともない書き込み電流も少なくなるという特徴を有している。しかも、書き込み電流は、混載DRAMと同程度のセルサイズで、書き込み電流が100μAと少なくなっている。一方従来型のMRAMは、MTJ素子サイズの縮小化にともない書き込み電流が大幅に増加するようになるという特徴を有している。しかも、6トランジスタ型のSRAM(6TSRAM)と同程度のセルサイズのとき、書き込み電流が1mA程度となっている。
上述したスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリ装置を図15の模式的斜視図および図16は模式的断面図によって説明する。
図15および図16に示すように、シリコン基板等からなる半導体基体160には素子分離層152が形成され、この素子分離層152により分離された領域に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタが形成されている。すなわち、半導体基体160上にゲート絶縁膜(図示せず)を介してゲート電極151が形成され、そのゲート電極151の一方側に半導体基体160にドレイン領域158が形成され、他方側に半導体基体160にソース領域157が形成されている。このゲート電極151はワード線も兼ねる。また上記ドレイン領域158は、二つの選択用トランジスタの共通にドレインとなっている。このドレイン領域158には、コンタクト154cを介して配線159が接続されている。
上記ゲート電極(ワード線)151の上方にはこのゲート電極151と交差するようにビット線156が形成されている。上記ソース領域157とビット線156との間には、コンタクト154aを介してソース領域157に接続するとともに、コンタクト154bを介してビット線156に接続されるもので、スピン注入により磁化の向きが反転する記憶層を有する磁気記憶素子153が配置されている。この磁気記憶素子153は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成されている。
図16に示すように、上記磁気記憶素子153は、例えば、トンネル絶縁層を挟むように磁性層161および磁性層162が形成されており、この2層の磁性層161、162のうち、一方の磁性層を磁化の向きが固定された磁化固定層として、他方の磁性層を磁化の向きが変化する磁化自由層、すなわち記憶層としている。
また、磁気記憶素子153は、ビット線156およびソース領域157にコンタクト154a、154bを介して接続されていることから、磁気記憶素子153に電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。このようなスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリの場合、前記図13に示した一般的なMRAMと比較して、デバイス構造を単純化することができるという特徴も有している。また、スピン注入による磁化反転を利用することにより、外部磁界により磁化反転を行う一般的なMRAMと比較して、素子の微細化が進んでも、書き込み電流が増大しないという利点がある。
しかし、スピン注入磁化反転では、素子サイズが100×150nmの楕円形において、書き込み電流が400μA程度であり、より一層の低電流化が必要である(例えば、非特許文献3参照。)。
消費電力を抑えるためには、スピン注入効率を改善して、入力する電流を減らす必要がある。また、読み出し信号を大きくするために、大きな磁気抵抗変化率を確保する必要があり、情報記憶層に接している中間層をトンネルバリア層にすることが効果的である。その場合、バリア層の耐電圧の制限が生じ、この点からも、スピン注入時の電流を抑える必要がある。
さらに、上述のように書き込みのための電流は、磁気記憶素子に直列に接続された素子選択用トランジスタにより制御されるが、このトランジスタのドライブ能力の範囲内に書き込み電流を抑える必要もある。
書き込み電流については、一般的に下記(1)式のような関係にあると考えられている。(1)式における、Msは記憶層材料の飽和磁化、Vは記憶層材料の体積、ηは書き込み電流効率、αはダンピングファクターである。
書き込み電流閾値(T=0K):Ic0∝α/η・Ms・V…(1)
以上のように、スピン注入現象を利用したメモリを実現させるには、書き込み電流閾値の低減が不可欠である。そのためには、書き込み電流効率が高い、ダンピングファクターを低下させる等の、磁気記憶材料の開発がまず必要である。
また、書き込み電流しきい値は、記憶層材料の体積に比例するため、単純な方法としては、磁気記憶素子を微細化することでも、書込み電流しきい値の低減が可能である。
大容量メモリを実現するためには、当然ながら、書き込み電流および、読み出し抵抗のバラツキ低減が不可欠である。前者の書き込み電流については、素子のLWR(Line Width Roughness)や形状(アスペクト比、面積)がバラツキの要因として考えられる。また後者の読み出し抵抗は、トンネルバリアの膜厚と面積に比例する。トンネルバリアの膜厚については、その成膜方法・装置の改善により、ある程度のバラツキ抑制が可能と考えられている。
以上のように、スピン注入型のメモリ装置の実現とその大容量化には、磁気記憶素子の微細化に加えて、素子サイズ(面積)バラツキの抑制が必要である。
スピン注入磁化反転による磁気記憶素子には、短軸長100nm以下でアスペクト比1.2〜3.0の微細ドットが必要であり、開発段階では主に電子線描画露光で形成される。しかし、数メガビット以上の大容量・高密度メモリの量産化には、その描画時間の長さより電子線描画露光の適用は難しいと考えられている。
一方、先端CMOSで広く用いられている、ArF露光のような光リソグラフィー技術による微細ドットのパターンニングでは、フォーカス・マージン(DOF)が、同サイズのLine&Spaceに比べて半分程度となってしまい、均一な微細ドットをウエハ全面に形成することが困難となっている。
特開2003−17782号公報
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M. Hosomi et al., 「A Novel Nonvolatile Memory with Spin Torque Magnetization Switching: Spin-RAM」
まず、本発明の磁気記憶装置の製造方法により製造される磁気記憶装置の一例を、図1の概略構成断面図および図2のレイアウト平面図によって説明する。図1は、1選択素子と1MTJ素子(1T1J型)のMRAMのメモリセルの断面構造を示した図面である。また、図2は、図1に示したMRAMの書き込みワード線、磁気記憶素子、ビット線等のレイアウトを示し、半導体基板、センス線、選択トランジスタ等の図示は省略してある。
図1および図2に示すように、半導体基板10には、素子分離領域11に囲まれた活性領域内に選択用トランジスタ20が形成されている。この選択用トランジスタ20はMOS型FETで構成されていて、具体的には、上記半導体基板10上にゲート絶縁膜21を介して形成したゲート電極22と、このゲート電極22の両側の上記半導体基板10に形成した不純物層(ソース領域)23、不純物層(ドレイン領域)24とによって構成されている。そして、上記選択用トランジスタ20は第1層間絶縁膜41により被覆されている。この第1層間絶縁膜41表面は、例えば平坦化されている。さらに、第1層間絶縁膜41上には、第2層間絶縁膜42が形成されている。
上記一方の不純物層23には、上記第1層間絶縁膜41に形成されたプラグ71aが接続され、このプラグ71aには上記第1層間絶縁膜41上に形成されたランディングパッド部72が接続されている。上記選択用トランジスタ20の他方の不純物層24にはプラグ71sを介してセンス線15が形成されている。上記ランディングパッド部72と上記センス線15とは同一層で形成することができる。
さらに第1層間絶縁膜41上には、例えば複数層(例えば2層)に第2層間絶縁膜42が形成され、この第2層間絶縁膜42には、上記ランディングパッド部72に接続するビア73、ランディングパッド74、ビア75が形成されている。上記第2層間絶縁膜42上には、書き込みワード線12が配設され、また上記ビア75に接続するランディングパッド部76が形成されている。このランディングパッド部76と上記書き込みワード線12とは同一層で形成することができる。上記書き込みワード線12は、例えばアルミニウム銅合金、銅、銅合金等の配線材料で形成されている。
上記書き込みワード線12、ランディングパッド部76を被覆するように、上記第2層間絶縁膜42上に第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、上記ランディングパッド部76に接続するビア77が形成され、このビア77には、第3層間絶縁膜43上に形成された引き出し電極(バイパス線とも言われる)37を介して磁気記憶素子30が接続されている。したがって、この磁気記憶素子30は、上記書き込みワード線12上方の上記引き出し電極37上に形成されている。また、上記書き込みワード線12と上記磁気記憶素子30との間隔が所定の長さとなるように、上記書き込みワード線12上の第3層間絶縁膜43の膜厚が決定されている。
上記磁気記憶素子30は、例えば、下層より、反強磁性体層32と磁化固定層33とからなる第1強磁性体層31、トンネル絶縁層34、記憶層(磁化自由層)35となる第2強磁性体層とで構成されているMTJ素子であり、さらに記憶層35上には導電性を有するキャップ層36が形成されている。このキャップ層36は、例えば、下層(トップコート層)が、例えば、厚さ5nmのタンタル(Ta)膜からなり上層が、例えば、厚さ100nmの窒化チタン(TiN)からなる。
上記磁化固定層33は、合成反強磁性結合(SAF)を有する多層構造(例えば、強磁性体材料層/金属層/強磁性体材料層)とすることができ、より具体的には、下層から一例として、Co−Fe層、Ru層、Co−Fe層の3層構造を有する。この磁化固定層33は、反強磁性体層32との交換結合によって、磁化の方向がピニング(pinning)される。
また、上記記憶層35は、外部印加磁場によって、その磁化の方向が磁化固定層33に対して平行または反平行に変えられる。
また、上記磁化固定層33、磁化自由層である記憶層35は単層であっても、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Anti-ferromagnet)を持つ多層膜であっても良い。また、上記キャップ層36は、MTJ素子の記憶層35を構成する原子とMTJ素子を接続するビット線13を構成する原子の相互拡散防止、接触抵抗の低減および記憶層35の酸化防止という役割がある。したがって、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等で形成されている。さらに、上記引き出し電極37は、反強磁性体層32で兼ねることもできる。
上記磁気記憶素子30を形成するエッチング加工は、トンネル絶縁層34で一度エッチングを停止させる。磁化固定層33を含んで残した第1強磁性体層31については、トランジスタに導くコンタクトに繋げるバイパス線としても使用するため、バイパスとなる引き出し電極37のパターニングマスクによりエッチングしている。つまり、磁気記憶素子30の加工は、主に磁化自由層である記憶層35を加工するMTJパターンニングと、主に磁化固定層33、引き出し電極37からなる引き出し電極パターニングの2回のリソグラフィー技術とエッチングより行われている。
また、上記第3層間絶縁膜43上には上記磁気記憶素子30の表面が露出するようにして上記磁気記憶素子30が埋め込まれるように第4層間絶縁膜44が形成されている。この第4層間絶縁膜44上には、上記磁気記憶素子30のキャップ層36上を被覆するように、上記磁気記憶素子30を保護するもので導電性を有する保護膜14が形成されている。この保護膜14は、少なくとも磁気記憶素子30の上面より大きく形成され、その上面を完全に被覆するように形成されている必要がある。
上記磁気記憶素子30は、その一方(例えば下方)側には上記したように引き出し電極37が接続され、他方(例えば上方)側には上記キャップ層36、保護膜14を介してビット線13が接続されている。このビット線13は、上記磁気記憶素子30を間にして上記書き込みワード線12に対して交差(例えば直交)するように配設されている。
次に、本発明の磁気記憶装置の製造方法の一実施の形態(実施例)を、図3〜図9の製造工程断面図によって説明する。図3〜図9では、磁気記憶素子30の製造工程を主に説明する。また図3〜図9における(1)図では前記図2に示したX−X線位置の断面図を示し、(2)図では前記図2に示したY−Y線位置の断面図を示した。
既存の製造方法によって、前記図1に示したように、例えば、半導体基板10に、素子分離領域11を形成し、この素子分離領域11に囲まれた活性領域内に選択用トランジスタ20を形成する。そして、上記選択用トランジスタ20を被覆する第1層間絶縁膜41、第2層間絶縁膜42、第3層間絶縁膜43を形成する。この第1層間絶縁膜41〜第3層間絶縁膜43を形成する間に、センス線15、選択トランジスタ20に接続されるビア71a、71s、73、75、77、ランディングパッド72、74、76、書き込みワード線12等を形成する。上記ランディングパッド部72と上記センス線15とは同一層で形成することができる。上記構成は一例であり、少なくとも、書き込みワード線12およびそれを被覆する第3層間絶縁膜43までを形成しておく。
次に、図3(1)、(2)に示すように、ビア77を形成した後、第3層間絶縁膜43上に、引き出し電極形成層81、反強磁性体層32、磁化固定層33、トンネル絶縁層34、記憶層(磁化自由層)35、キャップ層36を下層より順に形成する。各成膜の具体的な一例を以下に説明する。
上記引き出し電極形成層81は、例えば、スパッタリング法によって、タンタル(Ta)膜を10nmの厚さに堆積して形成される。この成膜条件の一例としては、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を100cm3/minとし、成膜雰囲気の圧力を0.6Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを200Wに設定した。
次に、上記引き出し電極形成層81上に反強磁性体層32を形成する。上記反強磁性体層32は、反強磁性体を有する膜であればよく、例えば白金−マンガン(Pt−Mn)合金で20nmの厚さに形成される。
厚さ20nmのPt−Mn合金から成る反強磁性体層32の成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を100cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.6Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを200Wに設定する。
さらに、上記反強磁性体層32上に磁化固定層33を形成する。この磁化固定層33は、例えば、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Anti-ferromagnet)を有するもので、下層から、2nmの厚さのコバルト−鉄(Co−Fe)層、1nmの厚さのルテニウム(Ru)層、2nmの厚さのコバルト−鉄(Co−Fe)層の3層構造を有する。このようにして、反強磁性体層32と磁化固定層33とからなる第1強磁性体層31を形成する。
上記磁化固定層33の成膜条件の一例としては、まず、最下層の厚さ2nmのCo−Fe合金層の成膜条件は、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を50cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.3Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを100Wに設定する。上記中間層の厚さ1nmのRu層の成膜膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を50cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.3Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを50Wに設定する。最上層の厚さ2nmのCo−Fe合金層の成膜条件は、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を50cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.3Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを100Wに設定する。
さらに、トンネル絶縁層34、記憶層(第2強磁性体層)35、キャップ層36を順次、成膜する。上記トンネル絶縁層34は、例えば厚さが0.5nm〜1.5nmの酸化マグネシウム(MgO)で形成される。
上記MgOから成るトンネル絶縁層34の成膜は、一例として、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を100cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を1.0Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを500Wに設定する。
上記記憶層(磁化自由層ともいう)35は、例えばコバルト−鉄−ホウ素(Co−Fe−B)合金、コバルト−鉄−(Co−Fe)合金、ニッケル−鉄(Ni−Fe)合金等で形成される。ここでは、一例として、厚さ3nmのコバルト−鉄−ホウ素(Co−Fe−B)合金を用いた。
上記コバルト−鉄−ホウ素(Co−Fe−B)合金から成る記憶層35の成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を50cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.3Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを200Wに設定する。
上記キャップ層36は、例えば、下層が厚さ5nmのタンタル(Ta)で形成される。この成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を100cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.6Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを200Wに設定する。
上記キャップ層36の上層は、例えば、厚さ100nmのTiNで形成される。この成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンと窒素とを用い、それぞれの供給流量を30cm3/min、70cm3/minに設定し、成膜雰囲気の圧力を0.7Paに設定し、スパッタリング装置のDCパワーを10kWに設定する。
上記引き出し電極形成層81からキャップ層36までの成膜は、成膜毎に大気にさらされることなく、例えばin−situで行われることが好ましい。
次に、キャップ層36上にエッチング用のハードマスク層50を形成する。このハードマスク層50は、例えば厚さが100nmの酸化シリコン(SiO2)層で形成される。なお、ハードマスク層50を構成するその他の材料として、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化酸化シリコン(SiON)等を挙げることができる。また上記ハードマスク層50は積層構造であってもよい。このハードマスク層50は、リソグラフィ工程における反射防止効果や、エッチング停止、金属拡散防止等の機能を兼ねて形成される場合もある。ここでは一例として、厚さ100nmの酸化シリコン(SiO2)層を、例えばバイアス高密度プラズマCVD装置を用いて成膜し、酸化シリコン(SiO2)層52を、例えばバイアス高密度プラズマCVD(HDP−CVD)装置を用いて成膜する。これらの成膜条件を以下に例示する。
上記SiO2層の成膜条件の一例としては、プロセスガスにモノシラン(SiH4)と酸素(O2)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用い、それぞれの供給流量を60cm3/min、120cm3/min、130cm3/minとする。また成膜装置のRFパワーを、例えばトップで1.5kW、サイドで3kWに設定する。
次に、上記ハードマスク層50上の全面にレジスト材料を塗布した後、リソグラフィ技術によって、トンネル磁気記憶素子を形成するためのマスクとなるレジストパターン(図示せず)を形成する。次いで、上記レジストパターンをエッチングマスクとして用いた反応性イオンエッチング法によって、ハードマスク層50をこれから形成しようとする引き出し電極の短手方向にまたぐように、具体的には、一例として、上記書き込みワード線12の配設方向と平行な方向のラインパターンとなるようにパターニングする。このときのエッチング条件を以下に例示する。
SiO2層のエッチング条件の一例としては、エッチングガスにオクタフルオロシクロブタン(C4F8)と一酸化炭素(CO)とアルゴン(Ar)と酸素(O2)とを用い、それぞれの供給流量を、10cm3/min、50cm3/min、200cm3/min、4cm3/minに設定する。またエッチング装置のRFパワーを1kW、エッチング雰囲気の圧力を5Pa、基板温度を20℃に設定する。
上記ハードマスク層50は、例えば、これから形成しようとする引き出し電極を少なくともまたぐような断続的なラインパターンであってもよい。この場合のラインパターンは、一つの引き出し電極をまたぐものでも、もしくは複数の引き出し電極を連続的にまたぐものであってもよい。
その後、レジストパターンを除去する。この除去方法は、例えば、酸素プラズマアッシング処理および有機洗浄処理による。
次に、図4(1)、(2)に示すように、ハードマスク層50(前記図3参照)をマスクとして用いて、反応性イオンエッチング法によって、キャップ層36および記憶層35を反応性イオンエッチング法によってパターニングする。これらのエッチング条件を以下に例示する。
上記キャップ層36のエッチング条件の一例としては、エッチングガスに塩素(Cl2)と三塩化ホウ素(BCl3)と窒素(N2)とを用い、それぞれの供給流量を、60cm3/min、80cm3/min、10cm3/minに設定する。またエッチング装置のソースパワーを1kW、バイアスパワーを150W、エッチング雰囲気の圧力を1Paに設定する。
また記憶層35のエッチング条件の一例としては、エッチングガスに塩素(Cl2)と酸素(O2)とアルゴン(Ar)とを用い、それぞれの供給流量を、50cm3/min、20cm3/min、20cm3/minに設定する。またエッチング装置のソースパワーを1kW、バイアスパワーを150W、エッチング雰囲気の圧力を1Paに設定する。
ここで、記憶層35のエッチング工程では、トンネル絶縁層34のエッチング中にエッチングが停止するように時間設定されている。なお、記憶層35のエッチング工程において、トンネル絶縁層34がエッチングされ、さらに、磁化固定層33の一部分までエッチングが進む場合であっても、エッチング生成物が記憶層35およびトンネル絶縁層34の側壁に堆積し、その結果、記憶層35と磁化固定層33との間で電気的な短絡が発生するといった現象が生じることの無いようなエッチング条件設定を行う。その後、アッシング処理、水洗もしくは有機洗浄処理を行う。
上記キャップ層36および記憶層35を反応性イオンエッチング法によってパターニングする代わりに、イオンミリング法(イオンビームエッチング法)に基づきパターニングすることもできる。その際、エッチング後、水洗もしくは有機系の洗浄液、エアロゾル等によって、側壁に堆積した堆積物、エッチングガス残り、パーティクル、エッチング残渣等を除去する。
この結果、図10の平面レイアウト図に示すように、これから形成しようとする引き出し電極37(2点鎖線で示す)の短手方向にまたぐように、具体的には、一例として、書き込みワード線12の配設方向と平行な方向に、上記キャップ層36および記憶層35からなるラインパターン38が形成される。
次に、図5(1)、(2)に示すように、上記ラインパターン38を被覆するエッチング用のハードマスク層51を形成する。このハードマスク層51は、例えば厚さが100nmの酸化シリコン(SiO2)層で形成される。なお、ハードマスク層51を構成するその他の材料として、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化酸化シリコン(SiON)等を挙げることができる。また上記ハードマスク層51は積層構造であってもよい。このハードマスク層51は、リソグラフィ工程における反射防止効果や、エッチング停止、金属拡散防止等の機能を兼ねて形成される場合もある。ここでは一例として、厚さ100nmの酸化シリコン(SiO2)層を、例えばバイアス高密度プラズマCVD装置を用いて成膜する。これらの成膜条件を以下に例示する。
上記SiO2層の成膜条件の一例としては、プロセスガスにモノシラン(SiH4)と酸素(O2)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用い、それぞれの供給流量を60cm3/min、120cm3/min、130cm3/minとする。また成膜装置のRFパワーを、例えばトップで1.5kW、サイドで3kWに設定する。
次に、上記ハードマスク層51上の全面にレジスト材料を塗布した後、リソグラフィ技術によって、引き出し電極を形成するためのマスクとなるレジストパターン(図示せず)を形成する。次いで、上記レジストパターンをエッチングマスクとして用いた反応性イオンエッチング法によって、ハードマスク層51を、上記ラインパターン38と、上記トンネル絶縁層34、磁化固定層33、反強磁性体層32および引き出し電極形成層81をこれから形成しようとする引き出し電極のパターン形状に形成する。具体的には、一例として、書き込みワード線12(前記図1参照)の配設方向と直交する方向のパターンとなるようにパターニングする。このときのエッチング条件を以下に例示する。
SiO2層のエッチング条件の一例としては、エッチングガスにオクタフルオロシクロブタン(C4F8)と一酸化炭素(CO)とアルゴン(Ar)と酸素(O2)とを用い、それぞれの供給流量を、10cm3/min、50cm3/min、200cm3/min、4cm3/minに設定する。またエッチング装置のRFパワーを1kW、エッチング雰囲気の圧力を5Pa、基板温度を20℃に設定する。このとき、レジストパターンに被覆されていない部分の先に形成されたハードマスク層50も除去される。なお、ハードマスク層50は、ハードマスク50を用いた記憶層35のエッチングが終了した後に除去してもよい。
その後、レジストパターンを除去する。この除去方法は、例えば、酸素プラズマアッシング処理および有機洗浄処理による。
次に、図6(1)、(2)に示すように、ハードマスク層51をマスクとして用いて、反応性イオンエッチング法によって、トンネル絶縁層34、磁化固定層33、反強磁性体層32および引き出し電極形成層81を反応性イオンエッチング法によってパターニングする。これらのエッチング条件を以下に例示する。
上記トンネル絶縁層34から引き出し電極形成層81までのエッチング条件の一例としては、エッチングガスに一酸化炭素(CO)とアンモニア(NH3)とを用い、それぞれの供給流量を、25cm3/min、75cm3/minに設定する。またエッチング装置のソースパワーを1.2kW、バイアスパワーを200W、エッチング雰囲気の圧力を0.53Paに設定する。
エッチングでは、上記ラインパターン38のMTJをドット状にするために、ラインパターン38の一部を同時にエッチングする必要がある。その際、エッチングする膜の厚さに差があるため、初期のエッチングステップでは、ラインパターン38の加工に使用したエッチング条件に、トンネル絶縁層34のMgO膜に対してエッチングレートが低下する条件を適用する。これにより、ハードマスク層51が形成されていないラインパターン38がエッチングされている間、トンネル絶縁層34のエッチングがなかなか進行しない状態となる。これによって、最終的に、エッチング前にあったエッチング膜厚の差は大きく低減され、エッチング領域の高さがほぼ同一高さになるように調整される。これによって、磁化固定層33、反強磁性体層32、引き出し電極形成層81等のエッチングが、エッチングされる面において均等に行えるようになる。
この結果、反強磁性体層32、磁化固定層33、トンネル絶縁層34および磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する記憶層35を有する磁気記憶素子(MTJ)30が形成される。
上記トンネル絶縁層34、磁化固定層33、反強磁性体層32および引き出し電極形成層81を反応性イオンエッチング法によってパターニングする代わりに、イオンミリング法(イオンビームエッチング法)に基づきパターニングすることもできる。その際、エッチング後、水洗もしくは有機系の洗浄液、エアロゾル等によって、側壁に堆積した堆積物、エッチングガス残り、パーティクル、エッチング残渣等を除去する。
この結果、図11の平面レイアウト図に示すように、書き込みワード線12の配設方向と平行な方向に形成されたラインパターン38の一部であるキャップ層36、記憶層35およびトンネル絶縁層34、磁化固定層33および反強磁性体層32からなる磁気記憶素子30が、引き出し電極37と併せて形成される。なお、この時点では、引き出し電極37上に反強磁性体層32、磁化固定層33、トンネル絶縁層34が平面レイアウト的にみて引き出し電極37と同形状に形成されている。したがって、引き出し電極37上に、引き出し電極37と同形状の反強磁性体層32、磁化固定層33、トンネル絶縁層34が積層されている。
ここで、一般的なセルレイアウトの一例を図12のレイアウト図によって説明する。
図12に示すように、書き込みワード線12の配設方向と平行な方向にキャップ層36、記憶層35、トンネル絶縁層34、磁化固定層33および反強磁性体層32からなる磁気記憶素子30が形成されるが、キャップ層36および記憶層35が一回のリソグラフィー技術とエッチングとにより形成されるため、引き出し電極37との位置合わせずれやサイズばらつきが生じやすくなる。
次に、図7に示すように、上記磁気記憶素子30を被覆するように上記第3層間絶縁膜43上に第4層間絶縁膜44を形成する。上記第4層間絶縁膜44は、例えば、酸化シリコン(SiO2)を、例えばバイアス高密度プラズマCVD(HDP−CVD)装置を用いて成膜する。これらの成膜条件は、プロセスガスにモノシラン(SiH4)と酸素(O2)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用い、それぞれの供給流量を60cm3/min、120cm3/min、130cm3/minとする。また成膜装置のRFパワーを、例えばトップで1.5kW、サイドで3kWに設定する。
次に、図8に示すように、第4層間絶縁膜44表面を平坦化する。この平坦化は、例えば化学的機械研磨(CMP)により行う。そして、TiNからなるキャップ層36表面でCMPを停止させて、キャップ層36表面を露出させる。このCMPには、研磨面の凹凸が平坦化されると研磨レートが低下する特性を有するスラリーとして、例えば、セルフ・ストップ機能を有する酸化セリウム(CeO)系のスラリーを用いる。なお、キャップ層36上に残されているハードマスク層50(前記図3参照)もこのCMPにより除去される。
上記CMP条件の一例として、プラテン回転数を80rpm〜120rpm、プラテン圧力を150hPa〜300hPa、スラリー供給量を150min〜200cc/minとした。
次に、図9に示すように、上記第4層間絶縁膜44上に、保護膜14を形成する。この保護膜14は、後の配線形成工程、ビア形成工程等の後処理としての洗浄工程、化学的機械研磨工程等のいわゆるウエット処理を行った際に、そのウエット処理で用いる薬液に対して耐性を有する材料であればよく、例えば、チタン(Ti)膜と窒化チタン(TiN)膜との積層構造とし、例えばチタン(Ti)膜を5nmの厚さに成膜し、窒化チタン(TiN)膜を45nmの厚さに成膜して形成する。この成膜例では、チタン膜が下地に対する窒化チタン膜の密着層としての機能を有し、窒化チタン膜が保護膜の機能を有する。これらの成膜条件の一例を以下に例示する。
Ti膜の成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンを用い、その供給流量を65cm3/minに設定する。また成膜雰囲気の圧力を0.5Pa、スパッタリング装置のDCパワーを1kWに設定する。また、TiN膜の成膜条件の一例としては、スパッタリング装置を用い、プロセスガスにアルゴンと窒素(N2)を用い、それぞれの供給流量を20cm3/minと90cm3/minとに設定する。また成膜雰囲気の圧力を0.6Pa、スパッタリング装置のDCパワーを3kWに設定する。
その後、通常のレジスト塗布、リソグラフィー技術によりレジストマスクを形成した後、このレジストマスクを用いて、例えば反応性イオンエッチング法によって、保護膜14を、上記磁気記憶素子30を被覆するように、例えば後に形成されるビット線13の形成領域に沿うようにパターニングする。したがって、保護膜14は、磁気記憶素子30よりも平面的にみて大きな面積を有している。上記エッチング条件を以下に例示する。
上記保護膜14のエッチング条件の一例としては、エッチングガスに塩素(Cl2)と三塩化ホウ素(BCl3)とを用い、それぞれの供給流量を、70cm3/minと40cm3/minに設定する。またエッチング装置のソースパワーを1.2kW、バイアスパワーを120W、エッチング雰囲気の圧力を1Paに設定する。
上記保護膜14としては、上記説明したチタン(Ti)膜と窒化チタン(TiN)膜との積層構造の他に、例えば、タンタル(Ta)膜と窒化タンタル(TaN)膜との積層構造、タングステン(W)膜と窒化タングステン(WN)膜との積層構造、上記チタン、タンタル以外の高融点金属膜とその窒化膜との積層構造、アルミニウム(Al)系金属材料、銅(Cu)系金属材料等、CMOSのBEOL(バックエンドオブライン)プロセスとの相性の良い材料を使用することが可能である。
次いで、上記保護膜14を被覆するように、上記第4層間絶縁膜44上にビット線を形成するための導電膜を成膜した後、通常のレジスト塗布、リソグラフィー技術によりビット線を形成するためのレジストからなるエッチングマスクを形成し、それを用いて上記導電膜をエッチング加工して、上記磁気記憶素子30の記憶層35にキャップ層36、保護膜14を介して電気的に接続するビット線13を形成する。尚、上記ビット線13は、保護膜14を被覆する層間絶縁膜を形成した後、この層間絶縁膜にビット線が形成される配線溝を形成し、その配線溝に配線材料を埋め込むことで形成することもできる。このような溝配線技術は、上記センス線、書き込みワード線等にも適用することができる。
こうして、強磁性体材料から成り、磁化反転状態に依存して抵抗値が変化することで情報を記憶する記憶層35を有する磁気記憶素子(トンネル磁気抵抗素子:MTJ素子)30を備えた磁気記憶装置1を得ることができる。
上記磁気記憶装置の製造方法では、引き出し電極形成層81と、反強磁性体層32と、強磁性体からなる磁化固定層33と、トンネル絶縁層34と、強磁性体からなる記憶層35と、キャップ層36とを順に積層してから、はじめに、キャップ層36と記憶層35とを、これから形成しようとする引き出し電極37をその短手方向にまたぐラインパターン38に形成してから、ラインパターン38と、トンネル絶縁層34から引き出し電極形成層81までを引き出し電極37のパターン形状に形成するので、磁気記憶素子30の記憶層35が、1回の光リソグラフィー技術とエッチングにより形成されるのではなく、2回の光リソグラフィー技術とエッチングにより形成される。このため、1回の光リソグラフィー技術とエッチングにより形成した場合には、リソグラフィー技術でのマスクパターンに対する形状変換差が大きくなるが、本発明の方法では、ほぼレイアウト設計のパターン形状が形成される。また、引き出し電極37の形成工程と併せて、記憶層35がセルフアラインで形成されるため、サイズバラツキの少ない磁気記憶素子30となる。さらに、磁気記憶素子30が引き出し電極に対してセルフアラインで形成されるため、重ね合わせ余裕を設ける必要がなくなり、セルサイズを縮小することが容易になる。
よって、現行の光リソグラフィー技術により、サイズバラツキの少ない微細ドット素子形状の磁気記憶素子30の形成が可能となるので、新たな装置および技術開発が不要となり、安価に大容量の磁気記憶装置1を実現することできるという利点がある。
1…磁気記憶装置、32…反強磁性体層、33…磁化固定層、34…トンネル絶縁層、35…記録層、36…キャップ層、37…引き出し電極、38…ラインパターン、43…第3層間絶縁膜