JP2008280627A - ラッセルストレッチレース編地および編レース製品 - Google Patents

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Abstract


【課題】 美観が良好であり、かつ風合いが良好であるラッセルストレッチレース編地および編レース製品を提供する。
【解決手段】 鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の一部、鎖編糸21同士の交差部55の一部が接着され、格子の歪みが防がれる。これによって美観の良好なレース編地が得られ、しかもその優れた美観を長期にわたって保つことができる。しかもレース編地20全体に編込まれる鎖編糸21の接着性を利用しているので、視覚的および触覚的に統一性が得られ、美観および風合いが損なわれることはない。また全ての交差部50,55が接着される場合のように、伸縮性および柔軟性が損なわれてしまうことがない。このように美観が良好でありかつ風合いが良好である、伸縮性のレース編地20が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ラッセルストレッチレース編地および編レース製品に関する。
従来技術のレース編地が、たとえば特許文献1に開示される。このレース編地は、カバーリング糸が、スカラップ部分に編込まれている。カバーリング糸は、熱溶融性を有する芯糸と、熱可塑性合成繊維糸である被覆糸から成る。編成後にレース編地を加熱することで、カバーリング糸のうちの、芯糸の一部が溶融し、溶融物が被覆糸の間から滲出してくる。そしてこの溶融物が、隣接する他の糸を接着するようにして固化する。これによって編レース製品のうちで、スカラップ部分におけるほつれを防止している。
特開平11−81073号公報
従来技術のレース編地では、スカラップ部分にのみ、熱接着糸が編込まれ、スカラップ部分とそれ以外の部分とでは、互いに異なる糸で編成される。このような構成では、同一の編組織に編成しても、視覚的および触覚的に統一性が得られず、美観および風合いが低くなってしまう。これに対してスカラップ部分だけでなく全体に熱接着糸を編込むことが考えられるが、全体に熱接着糸を編込むと、滲出した溶融物が被覆糸の表面に付着して全体に広がり、柔軟性が損なわれるうえ、被覆糸ではなく溶融物が肌に触れることになり、風合いが悪化してしまう。さらにこのような構成では、伸縮性を有するレース編地を実現することができない。また逆に熱接着糸を全く用いない構成も考えられるが、そのような構成では、糸同士の交差部の全てにおいて、糸同士がずれやすく、格子が歪みを生じて美観が損なわれてしまうおそれがある。
したがって本発明の目的は、美観が良好であり、かつ風合いが良好であるラッセルストレッチレース編地および編レース製品を提供することである。
本発明は、複数のループ状部分を有するラッセル編の鎖編組織を形成する鎖編糸と、
弾発的に伸縮する伸縮性を有し、鎖編組織に編込まれて鎖編組織に伸縮性を与えるための伸縮糸を備え、
前記伸縮糸は、鎖編糸との交差部の一部で、鎖編糸の接着性を利用して鎖編糸と接着される伸縮糸とを備えることを特徴とするラッセルストレッチレース編地である。
また本発明は、鎖編糸同士の交差部の一部が、鎖編糸の接着性を利用して互いに接着されていることを特徴とする。
また本発明は、鎖編糸と伸縮糸との交差部の接着率が、鎖編糸同士の交差部の接着率より高いことを特徴とする。
また本発明は、鎖編糸は、溶融温度の低い材料から成る繊維を含む糸であることを特徴とする。
また本発明は、前記ラッセルストレッチレース編地を用いて製造されることを特徴とする編レース製品である。
請求項1記載の本発明によれば、伸縮性を有する伸縮糸が、鎖編組織に編込まれて鎖編組織に伸縮性が与えられ、伸縮性を有するラッセルストレッチレース編地(以下単に「レース編地」という)が得られる。また鎖編糸と伸縮糸との交差部の一部が接着され、鎖編糸と伸縮糸との大きな位置ずれが防がれ、鎖編糸と伸縮糸との位置ずれに起因する格子の歪みが防がれる。たとえばレース編地の縫製または裁断などの製造過程に起因する外力、着用または洗濯などの使用状態に起因する外力が作用しても、格子の歪みが防がれて格子の形状が維持され、美観の良好なレース編地が得られ、しかもその優れた美観を長期にわたって保つことができる。しかもレース編地全体に編込まれる鎖編糸の接着性を利用して、鎖編糸と伸縮糸とを接着しているので、部分的に異なる糸が用いられる構成ではなく、視覚的および触覚的に統一性が得られ、美観および風合いが損なわれることはない。また鎖編糸と伸縮糸との交差部の全てが接着される場合のように、伸縮性および柔軟性が損なわれてしまうことがなく、伸縮性が維持されかつ風合いの良好なレース編地が得られる。ここで風合いとは、手触りを意味しており、良好な風合いとは、柔軟性を有する手触りを意味する。このように美観が良好でありかつ風合いが良好である、伸縮性のレース編地が得られる。
請求項2記載の本発明によれば、鎖編糸同士の交差部の一部が互いに接着されているので、鎖編糸同士の大きな位置ずれが防がれ、鎖編糸同士の位置ずれに起因する格子の歪みが防がれる。しかもレース編地全体に編込まれる鎖編糸の接着性を利用して、鎖編糸と伸縮糸とを接着しているので、部分的に異なる糸が用いられる構成ではなく、視覚的および触覚的に統一性が得られ、美観および風合いが損なわれることはない。
請求項3記載の本発明によれば、鎖編糸と伸縮糸との交差部の接着率が、鎖編糸同士の交差部の接着率より高い。これによって糸の交差部全体の接着率を低く抑え、柔軟性を保ったうえで、格子の歪みに影響しやすい鎖編糸と伸縮糸との位置ずれをできるだけ防ぎ、美観を保つことができる。
請求項4記載の本発明によれば、鎖編糸は、溶融温度の低い材料から成る繊維を含んでいる。鎖編糸は、この溶融温度の低い繊維によって接着性を有する構造であり、鎖編糸による糸同士の接着することができる。
請求項5記載の本発明によれば、前述のような美観が良好であり、かつ風合いの良好なレース編地を用いて編レース製品が製造されるので、美感および風合いの優れた高品質の編レース製品を得ることができる。
図1は、本発明の実施の一形態であるラッセルストレッチレース編地(以下、単に「レース編地」という)20の一部を示す編成組織図である。図2は、鎖編糸21および熱接着糸23以外の糸を省略してレース編地20を示す編成組織図である。これらの図1、図2は、理解を容易にするために編成組織を模式的に示したものであって、レース編地20の実物の編組織は、第1ループ状部分24および第2ループ状部分25の曲率半径が小さく、各糸21,22,23が極めて近接または接触した状態となる。また図1には、理解を容易にするために、鎖編糸21に左下がりの斜線のハッチングを付し、伸縮糸23に右下がりの斜線のハッチングを付して示す。また図2は、各糸21,23の厚みを省略して示す。
また本発明において、各糸21〜23によって編成された編地を前駆体編地と称する。レース編地20は、前駆体編地が加熱されたものである。さらにレース編地20を用いて製造される製品を編レース製品と称する。
レース編地20は、経編地であってラッセル編みされるラッセル編地であり、かつ伸縮性を有するストレッチ編地である。レース編地20は、鎖編糸21と、挿入糸22と、伸縮糸23とを含む糸によって編成され、各糸21〜23によって複数の格子が形成され、各格子にそれぞれ囲まれる複数の透孔が形成される。このレース編地20では、格子の形状および配置によってレース模様が形成される。またレース編地20は、単位面積あたりに配置される糸の量が密な柄部と、単位面積あたりに配置される糸の量が疎な下地部とを有し、これらの柄部および下地部の形状および配置によって柄模様が形成される。このような柄模様入りのレース編地20は、たとえば女性用肌着などの編レース製品を製造するために用いられる。
図1に示すようにレース編地20は、複数のループ状部分24,25を有するラッセル編の鎖編組織19を形成する鎖編糸21と、弾発的に伸縮する伸縮性を有し、鎖編組織19に編込まれて鎖編組織19に伸縮性を与えるための伸縮糸23とを備えている。またレース編地20は、挿入糸22を有しており、鎖編組織19に編込まれている。鎖編糸21は、経糸または地編編成糸と称される場合もある。また挿入糸22は、緯糸と称される場合もある。
さらにレース編地20では、鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の一部で、鎖編糸21の接着性を利用して接着されている。鎖編糸21と伸縮糸23との全ての交差部50で接着されるのではなく、あくまで一部の交差部50だけが接着されている。またレース編地20では、鎖編糸21同士の交差部55の一部が、鎖編糸21の接着性を利用して互いに接着されている。鎖編糸21同士の全ての交差部55が接着されるのではなく、あくまで一部の交差部55だけが接着されている。またレース編地20では、鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の接着率が、鎖編糸21同士の交差部55の接着率より高い。接着率とは、交差部全数のうち接着される交差部数である。またレース編地20では、鎖編糸21と挿入糸22との交差部が接着されていてもよいが、本実施の形態では、ほとんど接着されていない。
図3は、編成前の鎖編糸21の一部を示す正面図である。図4は、レース編地20を編成している鎖編糸21の一部を示す正面図である。鎖編糸21は、レース編地20を編成している状態では、図1、図2に示すような形状であるが、図4には、理解を容易にするために直線状に延ばした状態で示す。鎖編糸21は、伸縮性を有する芯糸30に、被覆糸31をらせん状に巻付けた糸である。芯糸30は、熱可塑性合成樹脂から成る単繊維糸(フィラメント糸)であり、たとえばポリエステル系ポリウレタンから成る。被覆糸31は、合成樹脂から成る複数の長繊維によって構成される長繊維糸(フィラメントヤーン)であり、たとえばポリアミド(商標名:ナイロン)から成る。
鎖編糸21は、編成前の状態では、図3に示すように被覆糸31同士が互いに接触し、芯糸30が露出しないように、被覆糸31によって覆われている。鎖編糸21は、芯糸30の伸縮性を利用し、図4に示すように伸張させた状態で編成されている。鎖編糸21は、伸張された状態では、被覆糸31間にらせん状の隙間が形成され、この隙間から芯糸30が露出する状態となる。
挿入糸22は、合成樹脂から成る複数の長繊維によって構成される長繊維糸(フィラメントヤーン)であり、たとえばポリアミド(商標名:ナイロン)、レーヨン、ポリエステルなどから成る。伸縮糸23は、スパンデックスとも呼ばれる糸であり、伸縮性を有する材料から成る単繊維糸(フィラメント糸)であり、たとえばポリエステル系ポリウレタンから成る。
鎖編糸21の芯糸30と、伸縮糸23とは、ともにポリエステル系ポリウレタンから成るが、互いに異なる種類のポリエステル系ポリウレタンから成っており、伸縮糸23の溶融温度よりも芯糸30の溶融温度が低い。芯糸30の溶融温度は、被覆糸31、挿入糸22、伸縮糸23の各溶融温度よりも低く、熱可塑性を有する。このように鎖編糸21は、溶融温度の低い材料から成る芯糸30を含む糸である。
図5は、本実施形態のレース編地20の製造工程の一例を示すフローチャートである。まずステップa0で、レース編地20の編成に用いる各糸の選択、レース編地20に形成すべき柄模様の決定および所望の編成組織を形成するための編地の設計が完了するなどして編地編成の準備が完了すると、ステップa1に進み、レース編地20の製造を開始する。
編地編成工程であるステップa1では、ラッセル編機である編機を用いて、レース編地20の前駆体となる前駆体編地を編成する。編機は、ステップa0で設計される編立て順序に従って、鎖編糸21に熱接着糸23などの各糸21,22を編込んで、図1に示すレース編地20と同様の編成組織の前駆体編地を編成する。
前駆体編地においては、鎖編糸21および伸縮糸23は、伸縮性を有している。編機は、伸縮性を有する糸を伸長させた状態で、編成動作を実行する。前駆体編地は、伸長状態で編込まれた糸の復元力によって、編成後に縮むこととなり、この伸縮性がレース編地20まで維持されると、レース編地20が伸縮性を有するストレッチレース編地となる。このように前駆体編地の編成が完了すると、ステップa2に進む。
加熱工程であるステップa2では、ステップa1で編成された前駆体編地を、鎖編糸21の芯糸30の溶融温度以上であり、かつ芯糸30以外の糸22,23,31の溶融温度未満の温度まで加熱する。ステップa2で前駆体編地を加熱するにあたっては、前駆体編地を伸張させ、鎖編糸21が、図4に示すように伸長される状態で加熱される。これによって鎖編糸21の芯糸30が部分的に露出される状態で加熱されて溶融することになる。
したがって鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50のうち、伸縮糸23が芯糸30の露出する部分に接触している交差部50だけにおいて、鎖編糸21と伸縮糸23とが接着される。また鎖編糸21同士の交差部55のうち、芯糸30の露出する部分同士が接触している交差部55だけにおいて、鎖編糸21同士が接着される。
鎖編糸21の芯糸30と伸縮糸23とは、種類は異なるが、共にポリエステル系ポリウレタンから成るので芯糸30溶融されることによって容易に接着される。また芯糸30同士も溶融することによって容易に接着される。これに対して、鎖編糸21の被覆糸31は、ポリアミドから成り、また挿入糸22は、ポリアミド、レーヨンなどから成り、芯糸30とは接着されにくい。したがって前述のような交差部50,55の一部だけが接着され、鎖編糸21と挿入糸22との交差部はほとんど接着されない。さらに鎖編糸21同士の交差部55は、芯糸30が露出する部分同士が接触していなければ接着されないので、鎖編糸21同士の交差部55接着率は、鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の接着率よりも低くなる。
このように前駆体編地を加熱して、鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の一部を接着させるとともに、鎖編糸21同士の交差部55の一部を接着させて、レース編地20を形成し、ステップa3に進む。ステップa3では、形成したレース編地20を精練もしくは染色した後、ファイナルヒートセットとも呼ばれる熱処理を行って形態を固定し、レース編地20の製造手順を終了する。ステップa2で前駆体編地を加熱することによって、鎖編糸21の芯糸30は溶融するので、伸縮性が損なわれるが、伸縮糸23は、溶融温度未満までしか加熱されないので、伸縮性を維持することができる。したがってレース編地20は、伸縮性を有している。
このような本実施の形態のレース編地20によれば、伸縮性を有する伸縮糸23が、鎖編組織19に編込まれて鎖編組織に伸縮性が与えられており、伸縮性を有するレース編地を実現することができる。また鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の一部が接着され、鎖編糸21同士の交差部55の一部が互いに接着されている。これによって鎖編糸21と伸縮糸23との位置ずれ、および鎖編糸21同士の位置ずれが防がれ、格子の歪みが防がれる。たとえばレース編地の縫製または裁断などの製造過程に起因する外力、着用または洗濯などの使用状態に起因する外力が作用しても、格子の歪みが防がれて格子の形状が維持され、美観の良好なレース編地が得られ、しかもその優れた美観を長期にわたって保つことができる。
しかもレース編地20全体に編込まれる鎖編糸21の接着性を利用して、鎖編糸21と伸縮糸23とを接着し、鎖編糸21同士を接着しているので、部分的に異なる糸が用いられる構成ではなく、視覚的および触覚的に統一性が得られ、美観および風合いが損なわれることはない。さらに芯糸30を被覆糸31で覆った鎖編糸21を伸長させ、芯糸30の露出する部分で接着しているので、芯糸30の溶融物で被覆糸31の表面が覆われてしまうことがなく、レース編地20およびこれを用いて製造される編レース製品を肌に接触させたとき、芯糸30の溶融物が肌に接触せずに、被覆糸31が肌に接触する。被覆糸31は、前述のような紡績糸であり、複数の単繊維の集まりであるので、柔らかいソフトな感触が得られ、良好な風合いが保たれる。ここで風合いとは、手触りを意味しており、良好な風合いとは、柔軟性を有しかつソフト感を有する手触りを意味する。
また鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50および鎖編糸21同士の交差部55の全てが接着される場合のように、伸縮性および柔軟性が損なわれてしまうことがなく、伸縮性が維持されかつ風合いの良好なレース編地が得られる。さらに鎖編糸21と伸縮糸23との交差部50の接着率が、鎖編糸21同士の交差部55の接着率より高い。これによって糸の交差部50,55全体の接着率を低く抑え、柔軟性を保ったうえで、格子の歪みに影響しやすい鎖編糸21と伸縮糸23との位置ずれをできるだけ防ぎ、美観を保つことができる。このように美観が良好でありかつ風合いが良好である、伸縮性のレース編地が得られる。またこのような高品質のレース編地20を用いて編レース製品を製造すれば、高品質の編レース製品を得ることができる。
前述の加熱工程における加熱条件は、鎖編糸21の芯糸30が溶融するとともに、芯糸30以外の糸の脆性化を含めて特性変化が防がれる加熱条件に設定される。また加熱工程における加熱条件は、芯糸30が糸としての形態を保てる程度の温度に加熱する加熱条件に設定されることが好ましい。これによって芯糸30の溶融物が編地の表面に表れないようして、肌に接触しにくくすることができる。
加熱条件は、たとえば加熱温度と、加熱時間とが設定される。芯糸30が溶融する最低溶融温度をB1とし、最低溶融温度で加熱したときに軟化するまでの時間をD1とする。また芯糸30以外の糸の特性が変化する最低特性変化温度をB2とし、最低特性変化温度で加熱したときに特性が変化するまでの時間をD2とする。この場合、本実施形態では、加熱工程での加熱温度をB3とし、加熱時間をD3とすると、B1<B3<B2、D1<D3<D2に設定される。さらにB3をできるだけB1に近い値とし、D3をできるだけD1に近い値とすることによって、芯糸30の糸としての形態を保ちやすくすることができる。
本実施形態では、芯糸30として10デニール以上300デニール以下、好ましくは10デニール以上50デニール以下のポリエステル系熱可塑性ポリウレタン弾性糸を用いる。また170℃以上、195℃以下の加熱温度で、30sec以上90sec以下の加熱時間、熱処理する。これによって芯糸30を溶融させるとともに、残余の糸が特性変化することを防ぐことができる。
たとえば加熱時間を一定にした場合、加熱温度を170℃未満とすると、溶融した芯糸30による接着力が小さくなる。また加熱温度が195℃を超えると、芯糸30の糸としての形態を保持しにくくなるうえ、芯糸30以外の糸の特性が変化してしまうおそれがある。これに対して本実施形態では、上述したように加熱温度を170℃以上、195℃以下とすることで、上述した問題が生じることを防ぐことができる。
芯糸30は、細いほど接着部が点接点に近くなって小さくなり、風合いが良くなり、太くなるほど接着部が大きくなって風合いが損なわれる。芯糸30太くしてかつ良好な風合いを保つために、被覆糸31を太くすることが考えられるが、鎖編糸21が太くなり、レース編地の透け感が損なわれてしまう。また芯糸30は、細いほど、強度が小さくなり、太いほど、強度が大きくなる。したがって芯糸30が、10デニール未満の細い糸である場合、強度が小さくなりすぎる問題を有し、300デニールを超える太い糸である場合、風合いが損なわれる問題を有する。芯糸30を、10デニール以上300デニール以下にすることによって、強度的に不足がなくかつ良好な風合いが得られる。同様の観点で、芯糸30を、10デニール以上50デニール以下にすることが好ましい。
またレース編地20は、前述のように交差部50,55の一部が接着されているので、糸のほつれの進展を防ぐ効果がある。したがってたとえばレース編地20を、モチーフカットおよびフリーカットなどと呼ばれるように、任意の形状の裁断することができるようになる。
図6は、本発明の実施の他の形態のレース編地20Aを示す編成組織図である。図6には、鎖編糸21および伸縮糸23以外の糸を省略して示す。また図6は、各糸21,23の厚みを省略して示す。図6のレース編地20Aは、図1〜図5のレース編地20と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる構成だけ説明し、同一の構成の説明を省略する。図1〜図5のレース編地20では、図2に示すようにラン止め部42が形成される構成としたが、図6のレース編地20Aは、挿入糸22を横糸として用い、図6に示すように、ラン止め部42のない構成とする。また本発明の実施の形態として、ラン止め部42の少ない構成とすることもできる。
本発明のレース編地20Aは、前述のように各交差部50,55の一部が接着されており、糸のほつれを防ぐことができるので、ラン止め部42を形成しないまたは少ない構成とすることが可能である。ラン止め部42のないまたは少ない構成とすれば、鎖編糸21の横渡りを無くしまたは少なくし、美観を向上して品質を向上することができる。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえば各糸21〜23の材質などは、適宜変更することができる。
本発明の実施の一形態であるレース編地20の一部を示す編成組織図である。 鎖編糸21および熱接着糸23以外の糸を省略してレース編地20を示す編成組織図である。 編成前の鎖編糸21の一部を示す正面図である。 レース編地20を編成している鎖編糸21の一部を示す正面図である。 本実施形態のレース編地20の製造工程を示すフローチャートである。 本発明の実施の他の形態のレース編地20Aを示す編成組織図である。
符号の説明
19 鎖編組織
20,20A レース編地(ラッセルストレッチレース編地)
21 鎖編糸
22 挿入糸
23 伸縮糸
24 第1ループ状部分
25 第2ループ状部分
30 芯糸
31 被覆糸
50,55 交差部
C コース方向
W ウエール方向

Claims (5)

  1. 複数のループ状部分を有するラッセル編の鎖編組織を形成する鎖編糸と、
    弾発的に伸縮する伸縮性を有し、鎖編組織に編込まれて鎖編組織に伸縮性を与えるための伸縮糸を備え、
    前記伸縮糸は、鎖編糸との交差部の一部で、鎖編糸の接着性を利用して鎖編糸と接着される伸縮糸とを備えることを特徴とするラッセルストレッチレース編地。
  2. 鎖編糸同士の交差部の一部が、鎖編糸の接着性を利用して互いに接着されていることを特徴とする請求項1に記載のラッセルストレッチレース編地。
  3. 鎖編糸と伸縮糸との交差部の接着率が、鎖編糸同士の交差部の接着率より高いことを特徴とする請求項2に記載のラッセルストレッチレース編地。
  4. 鎖編糸は、溶融温度の低い材料から成る繊維を含む糸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のラッセルストレッチレース編地。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のラッセルストレッチレース編地を用いて製造されることを特徴とする編レース製品。
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