JP2008278813A - 容器詰め緑色野菜加工食品および退色防止材 - Google Patents

容器詰め緑色野菜加工食品および退色防止材 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱処理後の緑色野菜の退色が軽減された容器詰め緑色野菜加工食品および加熱処理後の緑色野菜の退色を軽減することができる退色防止材を提供する。
【解決手段】容器詰め緑色野菜加工食品は、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、加熱処理後の緑色野菜の退色が軽減された容器詰め緑色野菜加工食品および加熱処理後の緑色野菜の退色を軽減することができる退色防止材に関する。
加熱殺菌処理を施された容器詰め食品は、長期間の保存が可能であり、単に温めるだけで簡便に食することができるため、その需要は高まっている。しかしながら、特に緑色の濃い野菜を含有する食品に加熱殺菌処理を施した場合、野菜の緑色色素であるクロロフィルがフェオフィチンなどに変化して退色してしまい、外観上良好な食品を得ることができない。
上記のような容器詰め緑色野菜の退色を防止する方法としては、特開昭61−47141号公報(特許文献1)のように、緑色野菜をブランチング後アルカリ性溶液とパウチ詰めし、加熱処理される方法が挙げられる。しかしながら、保存中にアルカリによって野菜の風味が劣化してしまうという問題があった。
また、一般的な緑色植物の退色防止方法として、ブランチングにより植物に含まれる酵素を不活性化し、変色を抑える方法が行われている。また、ブランチングを行う際にカルシウム剤を添加することによって、さらに効果的に緑色の退色が防止されることが明らかになっている。例えば、特開昭56−160959号公報(特許文献2)には、カルシウムを含有する水溶液で緑色植物をブランチングすることにより、他の金属を含有する水溶液に比べて、緑色の退色を効果的に防止できるという内容が開示されている。また、特許第3430130号公報(特許文献3)には、炭酸カルシウムと食塩とを加えた水で緑色植物をブランチングすることにより、色鮮やかな緑色を維持できると記載されている。しかしながら、100℃以上の温度での加熱殺菌処理を行う容器詰め緑色野菜の退色は著しいことから、カルシウム剤を含有する水溶液中での緑色野菜のブランチング処理のみでは、容器詰め緑色野菜の退色防止効果は十分なものとは言い難かった。
特開昭61−47141号公報 特開昭56−160959号公報 特許第3430130号公報
そこで、本発明の目的は、粒径が特定の範囲の卵殻を使用して、加熱殺菌処理後の野菜の退色が軽減された容器詰め緑色野菜加工食品、ならびに、粒径が特定の範囲の卵殻を使用して、加熱処理後の緑色野菜の退色を軽減することができる退色防止材を提供するものである。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、容器詰め緑色野菜加工食品に、粒径が特定の範囲の卵殻を配合するならば、意外にも、緑色野菜の退色の少ない容器詰め緑色野菜加工食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様に係る容器詰め緑色野菜加工食品は、
平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含む。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記卵殻の平均粒径が0.05〜1μmであることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記卵殻は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記卵殻は、平均粒径が0.05〜0.5μmであって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記加熱処理は、100℃以上の温度で施されることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記卵殻の配合量が、分散液に対して0.001〜5%であることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品において、前記卵殻は、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものであることができる。
本発明の一態様に係る退色防止材は、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する。
上記退色防止材において、前記卵殻は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であることができる。
上記退色防止材において、前記卵殻は、平均粒径が0.05〜0.5μmであって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であることができる。
上記退色防止材において、前記卵殻は、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものであることができる。
上記容器詰め緑色野菜加工食品および退色防止材によれば、粒径が特定の範囲の卵殻を利用して、緑色野菜の退色を効果的に防止することができ、かつ、該卵殻は苦味が少ないため、食品の風味への影響が少ない。
例えば、上記容器詰め緑色野菜加工食品および退色防止材によれば、容器詰め緑色野菜加工食品の加熱殺菌処理による退色を防止できることから、卵殻の有効利用、ならびに、容器詰め緑色野菜加工食品の新たな需要の拡大が期待される。
以下、本発明の一実施形態に係る、粒径が特定の範囲の卵殻を含有する容器詰め緑色野菜加工食品および退色防止材について説明する。なお、本実施形態において、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
1.容器詰め緑色野菜加工食品
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品は、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含む。
以下、本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品の構成要素について説明する。
1.1.卵殻
本発明において「卵殻」とは、鳥類の卵の殻、特に鶏卵の殻をいう。卵殻はその主成分が炭酸カルシウムであり、2%程度のタンパク質を含む。
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品で使用される卵殻(以下、「微粉砕化卵殻」ともいう。)は、原料卵殻そのものあるいは原料卵殻を粗く粉砕した卵殻粉末を、その粒子の平均粒径が0.01〜2μm(好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μm)となるまで微粉砕化したものである。ここで、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.01μm未満であると、凝集しやすく、分散性に劣る場合があり、一方、2μmを超えると、退色防止効果が得られにくい。分散性に優れ、かつ、退色防止効果を得るためには、微粉砕化卵殻の平均粒径は0.05〜1μmであるのが好ましく、0.05〜0.5μmであるのがより好ましい。
微粉砕化卵殻は、例えば、振動ミル、ボールミル、シェカーやハンマーミル、ターボミル、ファインミル、ジェットミル、バンタムミル、グラインダーミル、カッターミル、ビーズミルなどの粉砕機を使用する機械的粉砕により得ることができ、これらの粉砕機を単独もしくは2つ以上組み合わせて使用することができる。
平均粒径が0.01〜2μmであり、かつ、粒度分布が狭い微粉砕化卵殻を得ることができる点で、微粉砕化卵殻は特に、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものであることが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、スターミルLMZ(アシザワ・ファインテック株式会社製)、OBミル(ターボ工業株式会社製)、スーパーアペックスミル(寿工業株式会社製)等が挙げられる。
ビーズミルを使用して卵殻を平均粒径0.01〜2μm(好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μm)に湿式粉砕することにより、クリーム状の微粉砕化卵殻含有スラリーが得られる。上記スラリーをそのまま食品等に添加することにより、微粉砕化卵殻の凝集を防止したまま使用することができる。
また、上記スラリーを乾燥させて得られた微粉砕化卵殻を使用してもよい。乾燥方法としては特に限定されるものではなく、噴霧乾燥や凍結乾燥など、一般的に行われる方法で実施することができる。また、デキストリン等の賦形剤や、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を、上記スラリーに適宜添加してから乾燥を行ってもよい。
微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であることが好ましく、退色防止効果により優れている点で、平均粒径が0.05〜0.5μm(好ましくは0.1〜0.3μm)であって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であることがより好ましい。
また、微粉砕化卵殻の粒度の分布状態を示す変動係数は0.1〜0.8であるのが好ましく、0.1〜0.7であるのがより好ましい。微粉砕化卵殻の変動係数が0.1〜0.8であることにより、凝集しにくいため分散性に優れ、かつ、退色防止効果に優れている。
微粉砕化卵殻の配合量は、製品(容器詰め緑色野菜加工食品)に対して0.001〜5%であるのが好ましく、退色保持効果をより高めるには、0.01〜2%であることが好ましい。
1.2.緑色野菜加工食品
緑色野菜としては、例えば、グリーンアスパラガス、いんげんまめ、えだまめ、さやえんどう、スナップえんどう、グリーンピース、オクラ、キャベツ、小松菜、しゅんぎく、そらまめ、にがうり、ピーマン、ブロッコリー、ほうれんそう等のクロロフィルを含有する野菜が挙げられる。
本発明において、「緑色野菜加工食品」には、上記緑色野菜を適当な大きさに切ったもの、またはペースト状としたもの、あるいは、そのまま加工する食品であれば特に限定されるものではなく、煮物、炒め物、スープ等の他、ブランチングした野菜そのものも含まれる。
1.3.容器
本発明において、「容器」とは、緑色野菜加工食品を詰めて密封後、加熱処理を施すことが可能な容器であり、缶、びん、レトルトパウチ等が挙げられる。
1.4.容器詰め緑色野菜加工食品の製造
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品は、上述の微粉砕化卵殻を含有する分散液中で緑色野菜を加熱処理することにより得られる。
ここで、分散液を構成する媒体は通常、水であるが、本発明の効果を損なわない範囲で食塩水やだし汁等も使用することができる。分散液中の微粉砕化卵殻の配合量は通常、0.001〜5%である。
緑色野菜に対する分散液の量は、緑色野菜全体が浸漬するのに足りる量であればよく、具体的には、緑色野菜の0.5倍量以上が好ましく、1倍量以上がより好ましい。なお、分散液の上限量は規定していないが、生産性を考慮し、緑色野菜の30倍量以下が好ましく、20倍量以下がより好ましい。
また、加熱処理は100℃以上で施されるのが好ましく、100〜135℃で施されるのがより好ましい。また、加熱処理は容器詰め加工食品の殺菌処理であってもよく、この場合、通常、105〜125℃で加熱処理を行う。本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品は、加熱処理が施された場合(例えば、加熱処理として100〜125℃で行われるレトルトパウチのための殺菌処理が施された場合)において、緑色野菜の退色を効果的に防止することができる。
1.5.作用効果
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品によれば、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含むことにより、緑色野菜の退色を効果的に防止することができ、かつ、該卵殻は苦味が少ないため、加工食品の風味への影響が少ない。なお、本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品の退色は、市販の測色色差計を用いて評価することができ、具体的な評価方法としては、例えば、実施例に記載された評価方法が挙げられる。
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品によれば、特に、容器詰め緑色野菜加工食品の加熱殺菌処理による退色を防止できることから、卵殻の有効利用、ならびに、容器詰め緑色野菜加工食品の新たな需要の拡大が期待される。
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品では、卵殻中のタンパク質が緑色野菜中の退色防止効果に大きく寄与していると推測される。卵殻は炭酸カルシウムの結晶化を制御する複数のタンパク質を含み、中には卵殻に特徴的なものも存在する(Nys, Y., Gautron, J., McKee, M.D., Garcia-Ruiz, J.M., Hincke, M.T.: Biochemical and functional characterization of eggshell matrix proteins in hens. World's Poul. Sci. J. (2001) 57: 401-413, およびReyes-Grajeda,.J.P., Moreno, A., Romero, A.: Crystal structure of ovocleidin-17, a major protein of the calcified Gallus gallus eggshell. J. Biol. Chem. (2004) 279(39): 40876-40881参照)。
本実施形態に係る容器詰め緑色野菜加工食品は、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で緑色野菜を加熱処理して得られる。この加熱処理において、平均粒径が0.01〜2μmである卵殻を使用することにより、卵殻中に含まれるタンパク質が卵殻の表面に効率良く露出して、このタンパク質がカルシウムに配位し、このカルシウムが緑色野菜中のクロロフィルとキレートを形成することにより、クロロフィルがフェオフィチンなどに変化して緑色野菜が退色するのを防止することができると推測される。
2.退色防止材
本実施形態に係る退色防止材は、上記微粉砕化卵殻を含有する。本実施形態に係る退色防止材における微粉砕化卵殻の含有量は通常0.01〜100%である。退色防止材の形態としては、上記湿式粉砕により得られる、クリーム状の微粉砕化卵殻含有スラリーそのもの、あるいはさらに防腐剤等を添加したものであってもよい。また、上記スラリーを乾燥させて得られた微粉砕化卵殻を使用してもよく、賦形剤や乳化剤等を適宜添加したものであってもよい。
本実施形態に係る退色防止材によれば、微粉砕化卵殻を含有することにより、緑色野菜の退色を効果的に防止することができ、かつ、該卵殻は苦味が少ないため、添加した際に食品の風味に及ぼす影響が少ない。したがって、本実施形態に係る退色防止材は、緑色野菜を含む各種の加工食品に使用することができる。
3.実施例
次に、本発明を以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
3.1.微粉砕化卵殻の調製
本実施例においては、以下の条件にて所定の平均粒径および粒度分布を有するように微粉砕された微粉砕化卵殻を調製した。より具体的には、精製水に卵殻(以下、微粉砕化卵殻と区別するために、「原料卵殻」と表記する。)を分散させた原料卵殻分散液(スラリー)について、以下の条件で湿式ビーズミルを使用して、原料卵殻を湿式粉砕した。
3.1.1.原料
(1)原料卵殻(平均粒径:11.0μm((株)全農・キユーピー・エツグステーション製))
(2)精製水
3.1.2.微粉砕化卵殻の調製
3.1.2−1.粉砕(湿式粉砕)条件
湿式ビーズミル:スターミルLMZ2(アシザワ・ファインテック(株)製)
ビーズ:ジルコニア製,Φ0.3mm
ビーズ充填率:85%(粉砕室容量に対し);空間率49%
ローター周速:12m/s
3.1.2−2.微粉砕化卵殻の調製方法
精製水8kgをビーズミルに連結したミキシングタンクに仕込み、原料卵殻2kgを投入して、湿式ビーズミルの循環運転(ミルで粉砕されたスラリーをタンクにリターン)を行うことにより、微粉砕化卵殻含有スラリーを調製した。
湿式ビーズミルによる粉砕処理を所定時間(5,15,60分)行うことにより、粒径の異なる微粉砕化卵殻(微粉砕化卵殻1〜3)を得た。
3.1.3.平均粒径および粒度分布測定
試料(微粉砕化卵殻含有スラリー)0.3gを精製水10gに分散させて1分間超音波を照射した後、粒径分析計に供した。分散剤を添加する際は超音波照射前に2滴滴下した。
また、原料卵殻の粒度分布を測定する場合、まず、原料卵殻0.1gを精製水10gに分散させ、この分散液4gを精製水20gに分散させた後、超音波を照射して供試検体とした。
粒度分布測定は、装置内蔵の超音波照射機(3分間、40W)を使用して行った。なお、平均粒径はメジアン径とした。粒度分布測定における測定装置および測定条件は以下の通りである。
粒度分布計:マイクロトラックMT3300EXII(日機装(株));レーザ回折式
屈折率:1.68(重炭酸カルシウムの文献値);水(分散媒)1.33
分散剤:アロンA−6330(ポリカルボン酸系重合体、東亜合成(株)製)
微粉砕化卵殻1〜3の平均粒径はそれぞれ、0.94μm(粒径の実測範囲:0.45〜7.78μm)、0.59μm(粒径の実測範囲:0.19〜7.78μm)、0.12μm(粒径の実測範囲:0.03〜0.58μm)であり、これらの変動係数(CV)はそれぞれ、0.70、0.67、0.57であった。
また、これら微粉砕化卵殻の粒度分布はいずれも、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であった。なかでも、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.12μmである微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であった。
3.2.容器詰めグリーンピースの緑色保持(退色防止)効果
3.2.1.原料
表1に示すように、実施例1〜6では、容器詰め緑色野菜加工食品として、微粉砕化卵殻を用いて容器詰めグリーンピースを調製し、この容器詰めグリーンピースについて、微粉砕化卵殻による緑色保持効果を検討した。一方、比較例1〜4では、微粉砕化卵殻のかわりに、原料卵殻または炭酸カルシウムを用いて容器詰めグリーンピースを調製して、緑色保持効果を検討した。各実施例および比較例で使用した原料は以下の通りである。
(1)添加剤
(i)微粉砕化卵殻(3.1.で得られた微粉砕化卵殻1〜3含有スラリー(濃度20%))
(ii)原料卵殻(平均粒径11.0μm((株)全農・キユーピー・エツグステーション製)
(iii)炭酸カルシウム(平均粒径13.4μm(関東化学(株)製、特級))
(2)緑色野菜
冷凍グリーンピース(目開き9.50mm径のメッシュに通し、メッシュを通らずに残ったグリーンピースを選別して試験に使用した)
3.2.2.試験方法ならびに測定および評価方法
3.2.2−1.卵殻または炭酸カルシウム分散液の調製
精製水200gに対し10,000μg/g(固形分)になるように、微粉砕化卵殻、原料卵殻および炭酸カルシウムをそれぞれ量り取り、分散させた。この分散液(10,000μg/g)を良く撹拌しながら20g取り、180gの精製水で希釈した(10倍希釈)。以降、同様の操作で100倍希釈まで行い、1,000μg/g、100μg/gの分散液をそれぞれ調製した。
3.2.2−2.加熱処理(レトルト殺菌)
グリーンピース12gおよび上記分散液100gをレトルトパウチに入れ、加熱処理(レトルト殺菌(温度:110℃、時間:30分間))を行った。
3.2.2−3.色差(a値)の測定
レトルトパウチからグリーンピースを取り出し、精製水でグリーンピースを洗った後、測色色差計(日本電色工業(株)、測色色差計ZE−2000)を用いて色差(a値)を測定した。
3.2.2−4.緑色の官能評価
1,000μg/gの微粉砕化卵殻、原料卵殻、および炭酸カルシウムをそれぞれ添加したレトルトパウチからグリーンピースを取り出し、精製水で洗浄した後、目視にて緑色の濃さを評価した。無添加品を対照とし、2点としたときの緑色の濃さを、5点を上限として点数化した。評価は成人男女10名によって行った。
3.2.3.測定および評価結果
3.2.3−1.a値の測定結果
レトルト殺菌後のグリーンピースの緑色程度を定量的に評価するため、測色色差計にて測定された色差をL表色系にて数値化を行った。その結果を表2に示す。一般に、a値が小さいほど、緑色が強いといえる。
表2によれば、炭酸カルシウム、原料卵殻、および微粉砕化卵殻を使用した場合のいずれにおいても、添加濃度に応じてa値が低下(緑が強くなる)しており、その低下度合いは、添加剤が炭酸カルシウム<原料卵殻<微粉砕化卵殻の順に大きくなった。
また、添加剤の平均粒径が小さいほどa値が低下しており、その低下度合いは11.0μm(比較例1,2)<0.94μm(実施例5,6)<0.59μm(実施例3,4)<0.12μm(実施例1,2)の順に大きくなった。特に、0.12μmの微粉砕化卵殻を配合したグリーンピース(実施例1,2)の緑色が最も強い結果となった。
特に、実施例1の微粉砕化卵殻(平均粒径:0.12μm)を液中に0.1%(w/w)(=1,000μg/g)添加した場合、炭酸カルシウム添加群(比較例3,4)および無添加群(対照)に対して有意(p=0.01,Tukey−Kramer法)にa値が低下(緑が強くなる)した。
3.2.3−2.官能評価結果
10名による評価結果を表3に示す。表3によれば、目視による評価では、対照品および比較例1のグリーンピースに対して、実施例1,3,5のグリーンピースは緑色が濃い評価となった。特に、実施例1の微粉砕化卵殻(平均粒径:0.12μm)を添加したグリーンピースが最も緑色が濃い評価となった。
以上の結果より、実施例1〜6の容器詰め緑色野菜加工食品によれば、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含むことにより、緑色野菜の緑色保持効果を有することが確認された。
また、本実施例によれば、平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する退色防止材は、緑色野菜とともに分散液中で加熱処理することにより、緑色野菜の緑色保持効果(退色防止効果)を奏することが確認された。

Claims (11)

  1. 平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する分散液中で加熱処理された緑色野菜を含む、容器詰め緑色野菜加工食品。
  2. 前記卵殻の平均粒径が0.05〜1μmである、請求項1に記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  3. 前記卵殻は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下である、請求項1または2のいずれかに記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  4. 前記卵殻は、平均粒径が0.05〜0.5μmであって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  5. 前記加熱処理は、100℃以上で施される、請求項1乃至4のいずれかに記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  6. 前記卵殻の配合量が、分散液に対して0.001〜5%である、請求項1乃至5のいずれかに記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  7. 前記卵殻は、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものである、請求項1乃至6のいずれかに記載の容器詰め緑色野菜加工食品。
  8. 平均粒径0.01〜2μmの卵殻を含有する、退色防止材。
  9. 前記卵殻は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下である、請求項8に記載の退色防止材。
  10. 前記卵殻は、平均粒径が0.05〜0.5μmであって、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下である、請求項8または9のいずれかに記載の退色防止材。
  11. 前記卵殻は、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものである、請求項8乃至10のいずれかに記載の退色防止材。
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