JP7266206B2 - 醤油諸味ペースト及びその製造方法並びに飲食品 - Google Patents

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Description

本発明は、醤油諸味ペースト及びその製造方法並びに飲食品に関する。更に詳しくは、醤油諸味をそのまま用いた醤油諸味ペースト及びその製造方法、並びに、この醤油諸味ペーストを含んだ飲食品に関する。
醤油原料である醤油諸味は、発酵を経て残存された難発酵性の食物繊維を多く含んだ固形分を有する。この固形分を圧搾により除去した液体が醤油となっている。しかしながら、圧搾は、多大なエネルギー、時間及び手間を要すること、その過程で、醤油の酸化、好ましい香り成分の揮散等を生じてしまう等、課題を多く含む。このような観点から、圧搾を行うことなく、醤油諸味を利用する試みがなされている。このような技術として、下記特許文献1及び2が知られている。
特開昭52-72896号公報 特開平5-115259号公報
特許文献1には、醤油諸味を粘度3000cps以上になるように機械的に固形分を微粒化する技術が開示されている。この技術によれば、圧搾工程を要さず、塩カドのとれた、まるみのあるうまい調味料が得られることが開示されている。
しかしながら、特許文献1の第2-3頁の実施例に開示される通り、実際に行われた微粒化法はホモミキサーを利用する方法のみであり、いずれも50メッシュのスクリーンを通して夾雑物を除去して得られたペーストである。このことから、ホモミキサーによるペーストは、粒度の粗いペーストであることが分かるとともに、結果的に夾雑物という廃棄分を生じてしまっていることが分かる。また、粘度は水分の影響を受けて大きく変化するものである。従って、ペースト粘度は原料たる醤油諸味の水分率に影響されることになり、得られるペースト粘度のみを頼りに目的特性を得ることは不可能ともいえる。
このように、特許文献1の方法は、微粒化により圧搾を要することなく醤油諸味を利用できることを示しているとしても、醤油諸味の全量をそのまま利用する技術は開示されていない。また、実際、ホモミキサーを用いてペースト調整しても塩カド低減は大きいものではないことが分かっている。
特許文献2にも、醤油諸味を微粒化する方法として、ホモミキサー、コロイドミル、パルパーフィニッシャー等を利用する方法が開示されている。特にパルパーフィニッシャーを使用する方法により、諸味中の未消化の大豆や小麦の皮、襖等の不溶性固形分を効率良く取除くことができることが開示(特許文献2の段落[0017])されている。
しかしながら、このように諸味中の未消化の大豆や小麦の皮、襖等の不溶性固形分を除去することで、結果として廃棄分を生成することとなり、不溶性固形分を有効に利用した技術とはいえない。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、廃棄分を生じることなく醤油諸味をそのまま利用しながら、醤油諸味に特有の塩カドが大幅に低減された醤油諸味ペースト及びその製造方法、並びに、このような醤油諸味ペーストが含まれた飲食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、廃棄分を生じることなく醤油諸味をそのまま利用するための微細化、及び、微細化に伴う塩カドの低減について検討を重ねた。その結果、醤油諸味を微細化したペースト中の固形分の粒径を所定値よりも小さくすると、擾乱による粒径変化をほとんど生じない特異な醤油諸味ペーストが得られること、この醤油諸味ペーストは、極端な塩カドの低減を生じていること、更に、この醤油諸味ペーストを添加した食品では粒子の分散安定性が極めて高いこと、を知見し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、次の[1]~[9]を提供するものである。
[1]擾乱前に測定される平均粒径(d50)が60μm以下であり、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)も60μm以下であることを特徴とする醤油諸味ペースト。
[2]前記擾乱前の平均粒径をD(μm)とし、前記擾乱後の平均粒径をD(μm)とした場合に、|(D-D)/D|が0.2以下である[1]に記載の醤油諸味ペースト。
[3]調味料である[1]又は[2]に記載の醤油諸味ペースト。
[4][1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストが配合されていることを特徴とする飲食品。
[5][1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストの製造方法であって、
醤油諸味をペースト状に微細化する微細化工程を備えることを特徴とする醤油諸味ペーストの製造方法。
[6]前記微細化工程は、媒体攪拌ミルを用いて前記醤油諸味又はその粗砕物をペースト状に微細化する媒体攪拌ミル処理工程を含む[5]に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
[7]前記媒体攪拌ミルが、ビーズミルである[6]に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
[8]前記微細化工程は、媒体攪拌ミル処理工程前に、前記醤油諸味を粗砕する処理工程を含む[6]又は[7]に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
[9]前記醤油諸味が、分級されていない醤油諸味である醤油諸味ペーストの製造方法。
本発明の醤油諸味ペーストによれば、廃棄分を生じることなく醤油諸味をそのまま利用しながら、醤油諸味に特有の塩カドが大幅に低減された醤油諸味ペーストを提供できる。
本発明の飲食品によれば、上述の醤油諸味ペーストに由来する成分を安定して分散させておくことができる。従って、醤油諸味に特有の塩カドが大幅に低減されつつ、沈殿や凝集に起因した風味変化を生じない飲食品を提供できる。また、この塩カド低減によって、共存される他の食味を引き出し、増強させることから、調味成分量を削減し、カロリーを低減することができる。
本発明の醤油諸味ペーストの製造方法によれば、廃棄分を生じることなく醤油諸味をそのまま利用しながら、醤油諸味に特有の塩カドが大幅に低減された醤油諸味ペーストを製造できる。特にまろやかさを付与する脂質を実質含有しない脱脂大豆を利用した醤油諸味においてとりわけ有益である。
実施例における「凝集の評価(1)」の結果を示す画像である。 実施例における「凝集の評価(2)」の結果を示す画像である。
[1]醤油諸味ペースト
本発明の醤油諸味ペーストは、擾乱前に測定される平均粒径(d50)が60μm以下であり、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)も60μm以下であることを特徴とする。
本醤油諸味ペーストは、そのままの醤油諸味を微細化してペースト状にしたものである。即ち、醤油諸味に含まれる固形分の全量が微細化されることによって、全体としてペースト状になった醤油諸味である。そして、そのままの醤油諸味をペースト状にしたもののなかで、特に擾乱を行った場合に、擾乱前及び擾乱後の両方において測定される平均粒径(d50)が60μm以下である醤油諸味ペーストは、塩カドが極端に小さくなるという特異な性質を示す。更に、このような醤油諸味ペーストを調味料として他の飲食品へ添加した場合、醤油諸味ペーストを構成する固形分が、添加先の飲食品内で、沈殿したり、凝集したりすることが抑制される。その結果、極めて風味変化を生じ難い飲食品を提供できる。
(1)擾乱及び平均粒径
上述の通り、本醤油諸味ペーストは、擾乱前及び擾乱後の両方において測定される平均粒径が60μm以下という特性を有する。この際の擾乱は、当該醤油諸味ペーストに対して超音波を印加することを意味する。具体的には、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間印加することを意味する。一般に、擾乱を行うと、測定される平均粒径が変化する。例えば、凝集粒子(二次粒子)は擾乱により分散されて非凝集粒子(一次粒子)になり易く、擾乱前の平均粒径に対し、擾乱後の平均粒径が小さくなる傾向にある。一方、非凝集粒子(一次粒子)は擾乱により凝集されて凝集粒子(二次粒子)になり易く、擾乱前の平均粒径に対し、擾乱後の平均粒径が大きくなる傾向にある。
特に擾乱後の平均粒径が、擾乱前の平均粒径よりも大きくなる醤油諸味ペーストでは、時間経過とともに平均粒径が大きくなる可能性がある。平均粒径が時間経過に伴って大きくなり得る場合は、結果的に、食感を損ねたり、沈殿物を生じることが危惧される。沈殿物は、調味の不均一化を来し、風味劣化を危惧することになる。
この点、本醤油諸味ペーストは、理由は定かではないものの、擾乱前後の両方において測定される平均粒径が60μm以下に維持される。そして、この性質を示す醤油諸味ペーストは、上述の通り、塩カドが極端に小さくなっていることが観察される。
また、上述の性質を示す醤油諸味ペーストは、擾乱前の平均粒径の方が僅かに小さいことが多いため、醤油諸味ペーストを構成する固形分の粒子は、非凝集粒子の方が凝集粒子よりも多く含まれているものと考えられる。しかしながら、非凝集粒子が多く含まれた醤油諸味ペーストは、通常であれば、粒子間における何らかの相互作用により凝集促進されて、平均粒径が大きくなるように変化しがちであるが、本醤油諸味ペーストでは、この現象はほとんど観察されない。従って、凝集され難い非凝集粒子を多く含んだ醤油諸味ペーストであることが予測される。更に、本醤油諸味ペーストを調味料として他の飲食品に添加しても、粒子の凝集がほとんど観察されない。従って、添加先においても凝集され難さが維持されていると考えられる。このような性質から、添加先の飲食品において風味変化を生じ難い性質が得られていると考えられる。
本醤油諸味ペーストは、上述の通り、擾乱前後の平均粒径(d50)が60μm以下であればよく、その平均粒径の下限としては、微細化処理時間対微細化度の作業効率の観点から、1μm以上であることが好ましい。なかでも、平均粒径は10μm以上、更には、20μm以上が好ましい。平均粒径が10μm以上、更には、20μm以上の醤油諸味ペーストでは、擾乱による粒径変化をより高度に抑制することができる。一方、この平均粒径は50μm以下が好ましく、更には40μm以下が好ましく、特に35μm以下が好ましい。このような醤油諸味ペーストでは、特に優れた塩カド低減効果が発現されるとともに、優れた凝集抑制効果が発揮される。また、当然ながら、平均粒径は小さい方が、例えば、ざらざらとした粒感等の食感を生じることなく、舌触りの良さを得ることができる。
また、上述した平均粒径(d50)は、擾乱前後において変化しないか、又は、変化するとしても、その変化が小さいことが好ましい。具体的には、擾乱前の平均粒径(d50)をD(μm)とし、擾乱後の平均粒径(d50)をD(μm)とした場合に、平均粒径変化率を示す|(D-D)/D|が0.2以下(|(D-D)/D|≦0.2)であることが好ましい。即ち、Dに対してDは、平均粒径変化率が20%を超えて大きく又は小さくならないものであることが好ましい。このような性質を有する醤油諸味ペーストでは、特に優れた塩カド低減効果が発現されるとともに、優れた凝集抑制効果が発揮される。更に、平均粒径変化率を示す|(D-D)/D|は、|(D-D)/D|≦0.15が好ましく、|(D-D)/D|≦0.10がより好ましく、|(D-D)/D|≦0.08が特に好ましい。
尚、平均粒径変化率を示す|(D-D)/D|の下限は上述のように、「0」であってもよいが、|(D-D)/D|≧0.001とすることができ、|(D-D)/D|≧0.01とすることができ、|(D-D)/D|≧0.02とすることができる。
尚、上述の平均粒径(d50)は、測定される粒径分布において、所定の粒径を境に粒径分布を二分割した際に、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が50:50となる粒径である。この平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
また、本発明において「粒径」は、特に指定が無い限り体積基準で測定された粒径を意味する。更に、本発明において「粒子」は、前述の通り、粒径測定において実際のその粒径が測定される粒子であって、凝集の有無を問わず、凝集粒子及び非凝集粒子を含む意味である。
(2)醤油諸味
醤油諸味は、醤油の原料となる物品に発酵させる手段を講じたものであり、醤油諸味は、液体分(可溶性固形分を含む)と、醤油の原料となる物品が分解されずに残存した固形分(不溶性固形分)と、を含む。即ち、醤油諸味は、上述の発酵させる手段を講じたものを分離(例えば、圧搾、篩別等の固液分離など)する前のものである。分離を行っていない醤油諸味を利用することで、廃棄分を生ずることなく本醤油諸味ペーストを製造できるとともに、効果的に塩カドの低減を行うことができる。また、分離工程を要さないことから、工数削減及びコスト削減に資する。
醤油諸味としては、例えば、本醸造方式の醤油諸味(醤油の醸造法に従って調製される濃口醤油諸味、淡口醤油諸味、白醤油諸味、再仕込み醤油諸味、溜醤油諸味など)、新式醸造方式の醤油諸味、酵素処理液・アミノ酸液混合方式の醤油諸味等が挙げられる。更に、醤油の発酵メカニズムを応用した、穀類や豆類やそれらの混合物を原料とする、麹菌の培養物やその抽出物による発酵物及び/又は分解物、これらを酵母や乳酸菌などの微生物で発酵、分解した発酵物及び/又は分解物なども本発明にいう醤油諸味に含むものとする。更に、上述した醤油諸味は、加熱により風味調整されていてもよく、加熱により発酵・分解を行う菌の一部又は全部が殺菌されていてもよい。風味調整のための加熱、殺菌のための加熱の条件(温度、時間、攪拌の有無等)は限定されず、目的とする風味や品質に応じて適宜調整できる。
上述のような発酵等により醤油諸味を形成することとなる原料としては、穀類及びその各部が挙げられる。具体的には、大豆(丸大豆、脱脂大豆等)、小麦(小麦、小麦ふすま等)などが挙げられる。これらのうち、本醤油諸味ペーストに適した原料構成としては、脱脂大豆、小麦(小麦ふすまを除いた部位)、小麦ふすまの3種の組合せが挙げられる。これら成分の割合は限定されないが、例えば、脱脂大豆と小麦と小麦ふすまとの合計を100質量%とした場合に、脱脂大豆を40質量%以上(通常、70質量%以下)、特に45質量%以上含むことができる。より具体的には、脱脂大豆と小麦と小麦ふすまとの合計を100質量%とした場合に、各々を40~60質量%:39~59質量%:0.001~1質量%の割合で含むことができる。
一方、上述の発酵等により醤油諸味を形成することとなる原料は、大豆原料として丸大豆を含んでもよいが、本発明の効果をより顕著に発揮できるという観点からは、丸大豆を含まない原料であることが好ましい。通常、丸大豆を利用した醤油諸味は、丸大豆に含まれる油分やその発酵物、分解物等に起因し、比較的まろやかな醤油諸味となることが知られている。即ち、脱脂された脱脂大豆を利用して得られた醤油諸味は、丸大豆を用いて得られた醤油諸味に比べて塩カドが強く感じられ易い。従って、本発明において、塩カドを低減するという効果がより顕著に得られる醤油諸味は、丸大豆が含まれない醤油諸味、又は、丸大豆の含有割合が小さい醤油諸味であるといえる。具体的には、脱脂大豆(特に剥皮処理されたもの)が醤油諸味の原料穀類に含まれる一方、丸大豆は、当該原料穀類全体を100質量%とした場合に10質量%以下(0質量%であってもよい)であることが好ましい。
また、醤油諸味は、前述の通り、固形分(不溶性固形分)と液体分(可溶性固形分を含む)を含む。その割合は限定されないが、通常、固形分と液体分との合計を100質量%とした場合に、固形分の割合(固形分率)は1~40質量%とすることができる。このような割合に固液共存された状態は、後述するように、媒体撹拌ミルによる微細化方式のなかでも、特に湿式ビーズミルによる微細化を活用できる点において優位である。即ち、醤油諸味をそのままペースト化するのに適した形態であるといえる。上述の固形分率は、更には、2~30質量%とすることができ、3~20質量%とすることができ、4~15質量%とすることができる。
尚、醤油諸味の固形分率は、通常状態における醤油諸味の質量をWとし、醤油諸味のうちの不溶性固形分の質量をWとした場合に、Wに占めるWの割合(%)を意味する。このうち不要性固形分の質量Wは、醤油諸味の質量Wから液体分の質量Wを差し引いた質量(W=W-W)である。また、液体分の質量Wは、醤油諸味を濾過して得られる濾液の質量W21と、濾過残渣(諸味)を圧搾して得られる液体分の質量W22と、の合計量(W=W21+W22)である。
尚、本醤油諸味ペーストは、醤油諸味ペーストの製造方法において後述するように、醤油諸味ペーストの調味及び/又は調香等を目的として、他成分を含むことができる。具体的には、ペースト化前の醤油諸味、又は、ペースト化後の醤油諸味に、後述する他成分を含むことができる。これらの割合は、限定されないが、通常、醤油諸味ペースト全体を100質量%とした場合に、他成分は40質量%以下である。この割合は、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
本醤油諸味ペーストは、特に調味料としての利用に適する。具体的には、醤油諸味をペースト化したものであることから、醤油代替の調味料として利用できる。更に、醤油は粘性が低い液体であるのに対し、本醤油諸味ペーストはより高い粘性を本来的に有することができる。このため、液垂れを抑制でき、展着性により優れた醤油代用調味料して利用できる。この粘性は、必要に応じて水分量調節等によりコントロールすることができる。また、この際に、水分量を増加させても、前述の通り、固形分の凝集が抑制されているため、安定した調味料とすることができる。
本醤油諸味ペーストを調味料として利用する場合、具体的には、ぽん酢に添加するための調味料、各種たれ類に添加するための調味料、鍋物用調味料、つゆ類(麺つゆ等)に添加するための調味料、ドレッシングを構成する調味料、ディップソースを構成する調味料、パスタソースを構成する調味料、米飯用の味付け調味料、等の各種調味料として好適に利用できる。
[2]醤油諸味ペーストの製造方法
本発明の醤油諸味ペーストの製造方法は、前述した醤油諸味ペーストの製造方法であって、醤油諸味をペースト状に微細化する微細化工程を備えることを特徴とする。
(1)微細化工程
微細化工程は、醤油諸味をペースト状に微細化(ペースト化)する工程である。即ち、微細化処理を行う工程である。醤油諸味から本醤油諸味ペーストを形成する方法は限定されず、微細化によりペースト状にすることができればよい。この微細化処理は、得られる醤油諸味ペーストの擾乱前後の平均粒径(d50)が60μm以下となる性質を有するよう調製できればよく、その条件及び手段(装置)等は限定されない。
例えば、醤油諸味を微細化(ペースト化)する装置としては、ミル(媒体撹拌ミル、コロイドミル、ロールミル、ジェットミル、ハンマーミル、容器駆動ミル等を含む)、ホモジナイザ(高圧ホモジナイザ、超音波ホモジナイザ、高速ホモジナイザ等を含む)、ミキサ(ホモミキサ等を含む)、ブレンダ、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。尚、上記のうち、容器駆動ミル(回転ミル)には、転動式、振動式、遊星式等の各種の容器駆動ミルが含まれる。また、ジェットミルには、例えば、品名「スターバースト」のような衝突粉砕機が含まれる。
本発明では、醤油諸味が固液共存されたものであるため、上述の装置のなかでも、液体分を除去することなく、湿式で効率よく微細化(即ち、湿式粉砕、湿式微細化)できる装置が好ましい。このような観点から、媒体撹拌ミル(特に湿式媒体撹拌ミル)、ホモジナイザ(特に高圧ホモイジナイザ)、コロイドミルが好ましく、とりわけ媒体撹拌ミル(特に湿式媒体撹拌ミル)が好ましい。即ち、本方法における微細化工程は、媒体攪拌ミルを用いて醤油諸味の微細化を行う処理工程を備えることができる。
この媒体撹拌ミルには、ビーズミル及びボールミルが含まれるが、ビーズミル(特に湿式ビーズミル)が好ましい。尚、ビーズミルは、バッチ式、循環式及び連続式のいずれの装置であってもよく、更には、これらのうちの1種又は2種以上を組合せて利用できる。
加えて、湿式ビーズミルは、醤油諸味に含まれる吸水性や膨潤性を示す未分解の水溶性食物繊維(ペクチン等)をせん断等により低分子化していると考えられる。このため、湿式ビーズミルにより微細化を行うことで、水溶性植物繊維に起因する粒径変化を抑制できる醤油諸味ペーストが得られると考えられる。即ち、水溶性植物繊維が低分子化されることで、水溶性植物繊維による吸水膨潤が抑制され、非凝集粒子の凝集や、非凝集粒子同士の接着を抑制できると考えられる。
上述の湿式ビーズミルにより醤油諸味の微細化を行う場合、微細化条件は限定されない。例えば、ビーズミルに用いるビーズを構成する材料としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、チタニア、ガラス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、風味への影響を抑える観点からジルコニアが好ましい。
また、ビーズ径は限定されないが、例えば、0.01~5mmとすることができ、0.1~4mmが好ましく、0.3~3mmがより好ましい。上記ビーズ径では、醤油諸味を十分に微細化してペーストにすることができるとともに、処理後の醤油諸味ペースト内からビーズを分離し易くすることができる。
更に、湿式ビーズミルに必要とされる媒体は、醤油諸味に本来的に含まれた液体分を利用できるが、更に、必要に応じ、液媒を添加することもできる。具体的には、油脂、有機溶媒、液化気体等があげられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
その他、微細化を行う際の環境(温度、圧力など)も限定されない。従って、高温で微細化してもよく、常温で微細化してもよく、低温で微細化(例えば、凍結して微細化)してもよい。更に、高圧で微細化してもよく、常圧で微細化してもよく、低圧で微細化(例えば、減圧して微細化)してもよい。
また、本方法の微細化工程において微細化する醤油諸味は、予め粗砕された粗砕物であってもよい。特に上述のように媒体攪拌ミルを用いて微細化を行う媒体攪拌ミル処理工程を備える場合には、媒体攪拌ミル処理工程前に、醤油諸味を粗砕する粗砕工程を備えることが好ましい。これにより、醤油諸味の全量をより無駄なく微細化することができるとともに、微細化効率を高めることができる。粗砕工程では、醤油諸味を粗砕できればよく、利用する装置は限定されないが、例えば、ミキサ(カッターミキサ)、ミル(カッターミル、リングミル等)、ブレンダ、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等を利用することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本方法において微細化する醤油諸味は分級されていないものであることが好ましい。分級とは、粒子の大きさによってこれらを分ける操作を指す(特に醤油諸味ペーストにおいては固液分離操作を指す)。具体的には圧搾や、篩別や、網押しなどの操作を含む。分級を行なうと、微細化処理前に、難発酵性の小麦ふすまや大豆の皮等の比較的大きな粒子が除かれることになり、結果的に廃棄分を生じてしまうため好ましくない。即ち、大きな粒子を有効に活用できず、醤油諸味からロスが生じてしまうことになる。
また、本方法で用いる醤油諸味は、必要に応じて微細化前に加熱処理や殺菌処理を行うことができる。処理条件は、適宜に行うことができるが、例えば、70~95℃の温度で、1秒~180分間の加熱殺菌処理することができる。これらの処理は、後述する他成分の配合後に行うこともできる。
本方法では、得られる醤油諸味ペーストの調味及び/又は調香等を目的として、醤油諸味の微細化前に他成分を配合しておくこともできる。微細化前に他成分を配合しておくことで、他成分の微細化を同時に行うことができるとともに、安定して醤油諸味ペースト内に分散させることができ、工数を削減することができる。
他成分としては、食材、調味料、食品添加物等が挙げられる。具体的には、各種農水産物、又はその加工品等、食酢、みりん、醤油、味噌、アルコール類等の発酵調味料、油脂類(例えばごま油、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、パーム核油、パーム分別油(PMF)、綿実油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、香味油、ココナッツオイル、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、サラダ油、キャノーラ油、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油、乳脂、ギー、カカオバター等)、塩類(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)等、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本方法により得られた醤油諸味ペーストは、どのような容器に収容してもよいが、樹脂製容器、樹脂製袋、ガラス製瓶、金属製缶、及び紙容器などの各種の容器に充填して提供することができる。前述した加熱処理や殺菌処理等の各種処理は、このような容器に充填した後、行うこともできる。
[3]飲食品
本発明の飲食品は、前述の醤油諸味ペーストが配合されていることを特徴とする。
本醤油諸味ペーストは、どのような飲食品に利用してもよい。前述の通り、本醤油諸味ペーストは、醤油諸味をペースト化したものであることから、醤油代替の調味料として利用できる。また、水等の粘性の低い液体に投入しても、醤油諸味ペーストを構成する固形分の凝集が抑制されるため、品質の安定した飲食品とすることができる。
本発明の飲食品を構成する食材も限定されず、例えば、肉、魚介類、野菜、穀類、豆腐及び麺類等の非加工食材、加工食材等の各種食材のうちの1種又は2種以上を用いることができる。具体的には、従来より醤油や醤油を含有する調味料類を使用して調製する飲食品であればいずれにも適用できるが、惣菜類、汁物類、麺類、米飯類、弁当類、漬物類、サラダ類、鍋物類、等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
[1]醤油諸味ペースト
(1)醤油諸味
下記醤油諸味を用意した。脱脂大豆、小麦、小麦ふすまを、質量比50:49.97:0.03の割合とし、醤油?で培養した培養物を用意した。この培養物と食塩水(濃度33質量%)とを質量比36:64の割合で混合して仕込み、6ヶ月間発酵熟成させて醤油諸味(固形分(不溶性固形分)と液体分(可溶性固形分を含む)との合計を100質量%とした場合に、固形分が約6質量%である醤油諸味)を得た。尚、発酵熟成は、醤油諸味を製造する定法に従って調温、醗酵管理することにより行った。また、得られた醤油諸味は、圧搾を行っていない状態の醤油諸味である。
(2)粗砕工程
カッターミル(大阪ケミカル株式会社、品名「ワンダークラッシャー WC-3L」)を用い、上記(1)の醤油諸味の粗砕を行い、醤油諸味の粗砕物を得た。粗砕条件は、当該装置の速度ダイヤル目盛を5に合わせ、3分間の粗砕を行った。
(3)微細化工程
上記(2)で得られた醤油諸味の粗砕物を、下記の異なる3種の微細化手法を用いて合計7種の醤油諸味ペーストを得た。各微細化の詳細は、以下の通りである。
(3-1)実施例1
ビーズミル(湿式媒体撹拌ミル、湿式ビーズミル、アイメックス株式会社製、品名「RMBイージーナノ」)を用い、上記(2)で得られた醤油諸味粗砕物の微細化(ペースト化)を行って、実施例1の醤油諸味ペーストを得た。微細化条件は、醤油諸味粗砕物120mLに対し、直径2mmのジルコニアビーズ380gを用い、ミルの回転数2000rpm、冷却水温度5℃にて、10分間の微細化を行った。
(3-2)実施例2
実施例1と同様の微細化を30分間行い、実施例2の醤油諸味ペーストを得た。
(3-3)実施例3
実施例1と同様の微細化を60分間行い、実施例3の醤油諸味ペーストを得た。
(3-4)実施例4
実施例1と同様の微細化を90分間行い、実施例4の醤油諸味ペーストを得た。
(3-5)比較例1
ホモジナイザ(高圧ホモジナイザ、Niro Soavi社製(同栄商事株式会社販売)、品名「PANDA PLUS2000」)を用い、上記(2)で得られた醤油諸味粗砕物の微細化(ペースト化)を行って、比較例1の醤油諸味ペーストを得た。
(3-6)比較例2
石臼式ミル(マスコロイダ、コロイドミル、グローエンジニアリング製、品名「マルチミル RD2-15型」)を用い、上記(2)で得られた醤油諸味粗砕物の微細化(ペースト化)を行って、比較例2の醤油諸味ペーストを得た。微細化条件は、グラインダとして、グローエンジニアリング製「NP15-46B」を利用し、ミルが擦り合わない最小クリアランスである50μm(目盛1)に設定して微細化を行った。
(3-7)比較例3
比較例2と同様の微細化を行って、比較例3の醤油諸味ペーストを得た。但し、ミルのクリアランスを100μm(目盛2)に設定した。
[2]粒径測定
実施例1~4及び比較例1~3の各醤油諸味ペーストに含まれる粒子の粒子径分布を測定した。この粒度分布の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社、品名「Microtrac MT3300 EX2システム」)を用い、測定アプリケーションソフトウェアとしてマイクロトラック・ベル株式会社製の品名「DMSII(Data Management System version2)」を用いた。
尚、測定に際し、上述のソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施した後、同ソフトのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで適正濃度範囲に入るまでサンプルを直接投入した。
また、測定条件は、分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒(蒸留水)屈折率:1.333、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとした。
(1)擾乱前の平均粒径測定
超音波処理を行っていない実施例1~4及び比較例1~3の各醤油諸味ペーストの平均粒径測定を行った。測定に当たっては、試料投入後にサンプルローディング2回以内に試料濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行い、得られた結果を測定値とした。この結果を表1に示した。
尚、平均粒径(d50)は、得られた粒子径分布を、ある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が50:50となる粒子径として算出した。
(2)擾乱後の平均粒径測定
超音波処理を行った実施例1~4及び比較例1~3の各醤油諸味ペーストの平均粒径測定を行った。具体的には、装置への試料投入後に、サンプルローディングにて試料濃度を適正範囲内に調整した後、上述のソフトウェアの超音波処理ボタンを押下して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて、3分間印加した。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、試料濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行い、得られた結果を測定値とした。この結果を表1に示した。
尚、平均粒径(d50)については擾乱前の測定と同様である。
(3)擾乱前後における平均粒径変化率の算出
上記(1)で得られた擾乱前の平均粒径をD(μm)とし、上記(2)で得られた擾乱後の平均粒径をD(μm)として、(D-D)/Dの式により擾乱前後(超音波処理の有無)の平均粒径(d50)の変化率を算出した。この結果を表1に示した。
[3]食味(塩カド)の評価
実施例1~4及び比較例1~3の各醤油諸味ペーストの食味(塩カド)の評価を行った。評価試験は、当該試験前に、検査員全員で標準サンプル評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。評価は下記1~5に示す5段階の基準に従った。また、評価は5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか1つ選択する方式で行った。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値として算出し、小数点以下を四捨五入した。この結果を表1に示した。
5:微細化前の醤油諸味に比べ尖った塩味の刺激を全く感じず、塩カドがない。
4:微細化前の醤油諸味に比べ尖った塩味の刺激をほとんど感じず、塩カドが弱い。
3:微細化前の醤油諸味に比べ尖った塩味の刺激をあまり感じず、塩カドがやや弱い。
2:微細化前の醤油諸味に比べ尖った塩味の刺激はやや弱いものの感じられ、塩カドを認める。
1:微細化前の醤油諸味と同等の尖った塩味の刺激を強く感じ、塩カドを認める。
尚、塩カドの評価は、下記(A)~(C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀であり、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜して行った。また、評価試験前に、検査員全員で標準サンプル評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。
(A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
(B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
(C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
[4]凝集の評価(1)
実施例1~4及び比較例1~3の各醤油諸味ペーストの凝集性に関する評価を行った。評価試験は、下記の「つゆ」を調製し、このつゆを、直径9cmのカップに移し、蓋をして、室温(約20℃)で静置した。その後、3日間経過後に、カップ内容物を観察し、その凝集状態を観察した。更に、このうち、比較例1の醤油諸味ペースト、比較例2の醤油諸味ペースト、実施例1の醤油諸味ペーストの各々用いたつゆの凝集状態を比較したデジタル画像を図1に示した。
つゆ:水200g、醤油100g、みりん100g、砂糖5g、だし粉3g、醤油諸味ペースト4gを混合して「つゆ」を調製した。
尚、評価は、当該試験前に、検査員全員で標準サンプル評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある目視検査を行った。評価は下記1~5に示す5段階の基準に従った。また、評価は5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか1つ選択する方式で行った。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値として算出し、小数点以下を四捨五入した。この結果を表1に示した。
5:微細化前の醤油諸味と比べ凝集塊を全く認めない。
4:微細化前の醤油諸味と比べ凝集塊を認めるもののほとんどないといえる。
3:微細化前の醤油諸味と比べ凝集塊を認めるものの少なく許容範囲である。
2:微細化前の醤油諸味と比べ凝集塊を認めるものの凝集塊が小さい。
1:微細化前の醤油諸味と比べ大きい凝集塊を認める。
Figure 0007266206000001
[5]凝集の評価(2)
比較例1の醤油諸味ペースト、比較例2の醤油諸味ペースト、実施例1の醤油諸味ペーストの各々を、直径9cmのカップに移し、蓋をして、室温(約20℃)で静置した。その後、1週間経過後に、カップ内容物の表面状態を観察した。また、比較したデジタル画像を図2に示した。
[6]試験結果の評価1
表1に示す通り、比較例1~3の醤油諸味ペーストでは、擾乱前の平均粒径がいずれも60μmを超えていた。また、比較例1の醤油諸味ペーストでは、擾乱後の平均粒径も60μmを超えていた。また、比較例1~3の醤油諸味ペーストでは、擾乱前の平均粒径に対して、擾乱後の平均粒径がいずれも小さくなっており、その変化率は-25.7%~-52.0%と大きかった。
これに対して、実施例1~4の醤油諸味ペーストでは、擾乱前後の両方において平均粒径がいずれも60μm以下であった。また、擾乱前の平均粒径に対して、擾乱後の平均粒径の変化率が極めて小さく-10.4%~+6.16%であった。尚、以上の結果から、平均粒径の下限としては、特に制限されるものではないものと思われたが、微細化処理時間対微細化度の作業効率の観点から、1μm以上であれば好ましいと思われた。
更に、塩カド低減効果は、比較例1~3では、ほとんど認められなかったのに対し、実施例1~4では優れた塩カド低減効果が認められた。
尚、凝集の評価と同様に、凝集が抑制された試験例では、舌触りもよいものであることが確認された。
また、表1及び図1(図1中の白矢印の位置等に凝集が認められるのが分かる)に示す通り、凝集抑制効果は、比較例1~3では、ほとんど認められなかったのに対し、実施例1~4では優れた凝集抑制効果が認められた。
更に、図2に示す通り、内容物の表面の凹凸が大きく変化しており、数mm大の粒状物が観察されることが分かる。また、固液分離も認められた。これに対し、実施例1による内容物は、表面が滑らで、大きな凹凸が観察されず、固液分離が認められなかった。即ち、凝集進行が長期にわたって維持され、品質を保持できていることが分かった。
[6]調味料としての評価
(1)調味料の調製
比較例1の醤油諸味ペースト、比較例2の醤油諸味ペースト、実施例1の醤油諸味ペーストの各々を利用して、下記に示す4種類の調味料を調合した。また、いずれの醤油諸味ペーストをも添加しない対照品を調製した。
(1)麺つゆ
水200g、醤油100g、みりん100g、砂糖5g、だし粉3g及び醤油諸味ペースト4gを混合して麺つゆを得た。
(2)醤油ドレッシング
サラダ油200g、醤油200g、穀物酢(酸度4.2%)200g及び醤油諸味ペースト4gを混合して醤油ドレッシングを得た。
(3)ごまポン酢
水57g、醤油10g、醸造酢(酸度15%)10g、砂糖10g、すりごま5g、食塩4g、ねりごま2g、ゆず果汁1g及び醤油諸味ペースト1gを混合してごまポン酢を得た。
(4)ごまだれ
水44g、サラダ油10g、砂糖10g、すりごま10g、ねりごま10g、醤油5g、醸造酢(酸度15%)4g、食塩3g、卵黄1g、いりごま1g、澱粉1g及び醤油諸味ペースト1gを混合してごまだれを得た。
(2)調味料の評価
前述の醤油諸味ペーストに関する「食味(塩カド)の評価」及び「凝集の評価(1)」と同様にこれらの評価を行った。加えて、同様に下記基準に従って「調味料による風味の増強」の評価を行った(評価結果の集計についても同様である)。この結果を表2に示す。
5:対照品と比較して調味料全体の風味が強く増強されている。
4:対照品と比較して調味料の醤油以外の風味がやや強く増強されている。
3:対照品と比較して調味料の醤油以外の風味がわずかに増強されている。
2:対照品と比較して調味料の醤油以外の風味がほとんど増強されていない。
1:対照品と比較して調味料の醤油以外の風味が増強されていない。
Figure 0007266206000002
[7]試験結果の評価1
表2の結果から、表1の結果と同様に、醤油諸味ペーストによる塩カド低減効果、及び、凝集抑制効果は、調製した調味料において継続されていることが分かる。即ち、塩カド低減効果は、調味料においても、比較例1~2では、ほとんど認められなかったのに対し、実施例1では優れた塩カド低減効果が認められた。また、凝集抑制効果は、調味料においても、比較例1~2では、ほとんど認められなかったのに対し、実施例1では優れた凝集抑制効果が認められた。
更に、風味の増強という観点においても、比較例1~2に対し、実施例1は極めて優れた効果を示した。これは、塩カドが取れることによって、醤油以外の原料の風味も含めた調味料の香りや味が相対的に強く増強されることによるものと考えられる。結果的に、従来の醤油諸味ペーストに比べて、本発明の醤油諸味ペーストを利用することにより、同様の食味を与えるのに添加が必要となる糖分や、香料等の食品添加物の量を相対的に低減できることが分かった。これは生活者の健康という観点からも好ましい調味料であるといえる。
本発明の醤油諸味ペーストは、食品分野において広く利用される。更に、生活者の食生活にかかわる行為の簡便性、快適性、健康性の向上が期待される。

Claims (14)

  1. 擾乱前に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D 10μm以上60μm以下であり、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D 10μm以上60μm以下であり、更に、|(D -D )/D |が0.2以下であることを特徴とする醤油諸味ペースト。
  2. 液媒を添加した醤油諸味から得られる醤油諸味ペーストであって、
    擾乱前に測定される平均粒径(d50)を(μm)とした場合に前記D が10μm以上60μm以下であり、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)を(μm)とした場合に前記D も10μm以上60μm以下であり、更に、|(D-D)/D|が0.2以下であることを特徴とする醤油諸味ペースト。
  3. 調味料である請求項1又は2に記載の醤油諸味ペースト。
  4. 請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストが配合されていることを特徴とする飲食品。
  5. 請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストの製造方法であって、
    醤油諸味をペースト状に微細化する微細化工程を備えることを特徴とする醤油諸味ペーストの製造方法。
  6. 前記醤油諸味に液媒を添加する工程を含む請求項5に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  7. 前記微細化工程、媒体攪拌ミルを用いて前記醤油諸味をペースト状に微細化する媒体攪拌ミル処理工程を含む請求項5又は6に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  8. 前記媒体攪拌ミルが、ビーズミルである請求項に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  9. 前記媒体攪拌ミルが、1種類である請求項7又は8に記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  10. 前記微細化工程は、媒体攪拌ミル処理工程前に、前記醤油諸味を粗砕する粗砕工程を含む請求項7乃至9のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  11. 前記醤油諸味が、分級されていない醤油諸味である請求項5乃至10のうちのいずれかに記載の醤油諸味ペーストの製造方法。
  12. 醤油諸味に液媒を加える工程と、前記工程により得られた液媒追加醤油諸味をペースト状に微細化する微細化工程とを備える製造方法により得られる醤油諸味ペースであって、
    擾乱前に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D が10μm以上60μm以下であり、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D も10μm以上60μm以下であり、更に、|(D -D )/D |が0.2以下であることを特徴とする醤油諸味ペースト。
  13. 前記微細化工程が、1種類の媒体攪拌ミルを用いて前記醤油諸味をペースト状に微細化する媒体撹拌ミル処理工程である請求項12に記載の醤油諸味ペースト。
  14. 醤油諸味ペーストの塩カド抑制方法であって、
    擾乱前に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D を10μm以上60μm以下とし、且つ、擾乱後に測定される平均粒径(d50)をD (μm)とした場合に前記D も10μm以上60μm以下とし、更に、|(D -D )/D |が0.2以下とすることを特徴とする醤油諸味ペーストの塩カド抑制方法。
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