JP2008273167A - 光記録媒体、スパッタリングターゲット、及びそれらの製造方法 - Google Patents

光記録媒体、スパッタリングターゲット、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】青色波長領域のレーザ光による記録再生が可能で、高感度かつ低線速から高線速までの広い線速範囲の記録にも適した光記録媒体とその製造方法、及び、該光記録媒体の記録層を製膜するためのスパッタリングターゲットとその製造方法の提供。
【解決手段】(1)基板上に、少なくとも青色波長領域のレーザ光で記録再生可能な記録層を有し、該記録層がBi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)及び/又はN(窒素)を含み、Feを含まない光記録媒体。
(2)記録層が、更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含む(1)記載の光記録媒体。
【選択図】図1

Description

本発明は、追記型(WORM:Write Once Read Many)光記録媒体に係り、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光でも高密度の記録を行なうことが可能な光記録媒体、特に、高い記録感度をもつ光記録媒体、2層以上の記録層をもつ光記録媒体、及び低速から高速まで広い範囲の線速に対応可能な高記録感度を必要とする光記録媒体とその製造方法、並びに、該光記録媒体の記録層を製膜するためのスパッタリングターゲットとその製造方法に関する。
本発明者らは、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光で高密度の記録が可能な追記型光記録媒体として、特許文献1〜4などにおいて、金属又は半金属の酸化物、とりわけBi酸化物を主成分とする記録層の有用性を提案している。また、本出願人の出願に係る特許文献5などで、Bi、B、O(酸素)からなる記録層を用いた追記型光記録媒体が更に良好な特性を示すことを開示している(以下、これらの出願に係る技術を自社先行技術と呼ぶ)。これらの自社先行技術は、非常に優れた記録再生特性を示すことが確認できている。
上記の他に、特許文献6にも、Bi酸化物を主成分とする記録層を有する追記型光記録媒体が開示されているが、炭素、窒素を加えた系については検討されていない。
また、特許文献7〜8などには、金属窒化物、金属炭化物を含む記録層を用いた情報記録媒体が開示されているが、金属窒化物を主成分としており、金属窒化物の分解を記録原理とするものであって、BiとO(酸素)を主成分とする本発明の参考にはならない。
一方、光ディスクには、高密度化、高速化という流れがあり、従来のDVDにおいても二層化による高密度化が行われ、また、高速化では、16倍速記録が可能なものまで登場している。青色LDを用いる光ディスクにおいても、この流れは変わらず、高速記録の方向へ向かうと考えられており、高速記録用の光記録媒体の開発が始まりつつある。
しかし、前記自社先行技術では高速記録について全く検討していない。また、特許文献6の発明も、記録再生特性と信頼性(再生安定性や保存安定性等)の改善を目的とするものであって、高速記録については検討していない。更に、酸化ビスマスに種々の元素Xを添加した材料については検討しているが、Xの中にC、Nは含まれておらず、酸化ビスマスに2種類以上の元素を添加した具体例も示されていない。
別に、本発明者らは、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光で高密度の記録が可能な追記型光記録媒体のBi酸化物を主成分とする記録層を製膜するためのスパッタリングターゲットとして、先願(特許文献9参照)でBi、Feを含むターゲットについて、また、特願2006−055120では、Bi、Bを含むターゲット又は、Bi、B、Oを含むターゲットについて開示した。
スパッタリング法は薄膜の気相形成法の1つとして広く知られており、工業的な薄膜製造にも利用されてきた。スパッタリング法では、目的とする膜の成分と同じ成分のターゲット材を用意し、通常は、このターゲット材にグロー放電で発生させたAr(アルゴン)ガスイオンを衝突させてターゲット材の構成原子を叩き出し、基板上に原子を堆積させることにより成膜が行われる。特に酸化物は一般に融点が高いため、蒸着法などの方法は好ましくなく、高周波を印加する高周波スパッタリングがよく用いられる。
スパッタリングは製造プロセスで多くの実績がありスループットの点でも有利である。しかし、2種類以上の元素の混合材料からなる膜を製膜する場合、ターゲットの組成と膜の組成が同じにならないことが多いため、ターゲットの組成について検討が必要になる。またターゲットを構成する化合物の形態により、膜の構造、性質が異なることが多いため、この点についても検討が必要である。また、生産コストの面から、更なる製膜速度の向上も必要となっている。製膜速度の向上のためには、より大きな電力を投入する必要があり、その場合にもターゲットが破壊されないようにターゲット強度の向上が必要となる。
上記の他に、特許文献10には、Biなどの低融点金属ターゲットを用い、CHなどとArとの混合ガス中でスパッタすることにより、炭素とBiを含有する記録層を製膜する方法が開示されているが、Biと酸素を主成分とする本発明とは異なる。
特開2003−48375号公報 特開2005−161831号公報 特開2005−108396号公報 特開2006−116948号公報 特開2006−247897号公報 特許第3802040号公報 特開2006−182030号公報 特許第3810076号公報 特開2007−169779号公報 特許第1480945号公報
光記録媒体においては、レーザー光の出力の限界、耐久性、省電力性能等の観点から、低い記録パワーで記録が可能な高感度な記録特性が求められる。また、高密度記録と共に情報転送速度の向上のため高線速記録が求められるが、その場合、高線速記録では低線速記録に比べて更に記録感度の向上が必要となる。また、互換性の関係で、低線速から高線速まで全ての記録線速範囲に対応する必要がある。
そこで、本発明は、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光による記録再生が可能で、高感度かつ低線速から高線速までの広い線速範囲の記録にも適した光記録媒体とその製造方法、及び、該光記録媒体の記録層を製膜するためのスパッタリングターゲットとその製造方法の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜27の発明(以下、本発明1〜27という)によって解決される。
1) 基板上に、少なくとも青色波長領域のレーザ光で記録再生可能な記録層を有し、該記録層がBi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)及び/又はN(窒素)を含み、Feを含まないことを特徴とする光記録媒体。
2) 記録層が、更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含むことを特徴とする1)記載の光記録媒体。
3) 記録層が、Bi、B、O及びCからなることを特徴とする2)記載の光記録媒体。
4) 記録層が、Bi、B、O及びNからなることを特徴とする2)記載の光記録媒体。
5) Cの含有量が記録層全体の1.5〜49原子%であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体。
6) Nの含有量が記録層全体の1.5〜21原子%であることを特徴とする4)記載の光記録媒体。
7) 記録層に隣接して上部保護層及び/又は下部保護層を有することを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光記録媒体。
8) 上部保護層及び/又は下部保護層が硫化物、酸化物、窒化物、炭化物の何れか、又はそれらの複合体からなることを特徴とする7)記載の光記録媒体。
9) 上部保護層と下部保護層の少なくとも一方が硫化物を含むことを特徴とする8)記載の光記録媒体。
10) 上部保護層と下部保護層の少なくとも一方がZnS・SiOからなることを特徴とする9)記載の光記録媒体。
11) 基板上に、少なくとも、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層が順次積層されたことを特徴とする7)〜10)の何れかに記載の光記録媒体。
12) 基板上に、少なくとも、反射層、上部保護層、記録層、下部保護層、カバー層が順次積層されたことを特徴とする7)〜10)の何れかに記載の光記録媒体。
13) Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)を含み、Feは含まないことを特徴とするスパッタリングターゲット。
14) 更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含むことを特徴とする13)記載のスパッタリングターゲット。
15) Bi、B、O及びCからなることを特徴とする14)記載のスパッタリングターゲット。
16) Cの含有量が全体の1.5〜49原子%であることを特徴とする13)〜15)の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
17) Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にN(窒素)を含み、Feを含まないことを特徴とするスパッタリングターゲット。
18) 更に、B、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Si、Ti、Zr、Cr、Hf、Cu、Ta、Y、Nb、Al、Vから選択される少なくとも一種の元素Zを含むことを特徴とする17)記載のスパッタリングターゲット。
19) Bi、B、O及びNからなることを特徴とする18)記載のスパッタリングターゲット。
20) Nの含有量が全体の1.5〜21原子%であることを特徴とする17)〜19)の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
21) 直流スパッタリングが可能であることを特徴とする13)〜16)の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
22) 充填密度が90%以上であることを特徴とする13)〜21)の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
23) 酸化ビスマス粉末と炭素粉末を混合し焼結することを特徴とする13)記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
24) 酸化ビスマス粉末と、Al、B、Ca、Cr、Hf、Mo、Nb、Si、Ta、Ti、V、W、Zrの中から選択される少なくとも1種類の元素の炭化物の粉末を混合し焼結することを特徴とする14)記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
25) 酸素を遮断した状態、不活性雰囲気中、又は真空中で焼結することを特徴とする23)又は24)記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
26) Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用い、C(炭素)を含むガスとAr(アルゴン)の混合ガス中で記録層を製膜することを特徴とする3)記載の光記録媒体の製造方法。
27) Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用い、N(窒素)とAr(アルゴン)の混合ガス中で記録層を製膜することを特徴とする4)記載の光記録媒体の製造方法。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明1の光記録媒体は、基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層がBi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)及び/又はN(窒素)を含み、Feを含まない。ここで主成分とは、Biと酸素を併せた含有量(原子%)が、記録層中で最も多いことを意味する。また、Biと酸素を含むという表現にしたのは、最も多いのはBi酸化物であるが、記録層中にはBi酸化物以外に金属Biが含まれる場合があることによる。
Feを含む記録層を用いた場合、記録層の光学特性などが不安定になることが分かっている。その原因は明らかではないが、Feが複数の価数を取り得るため酸化状態が不安定になりやすく、その結果、ターゲットが不安定になったり、記録層の組成のばらつきが比較的大きくなるなどの原因が考えられる。組成がばらつくこと、特に酸素の含有量の安定性が比較的低いことから、光学特性のばらつきを生じる。そのため、光記録媒体の特性もばらつきが比較的大きくなってしまうなどの悪影響がある。
一方、Feを含まない記録層では、記録層の光学特性が比較的安定しており、光記録媒体の特性も安定する等の効果が大きい。実際に、後述する実施例16に示したように、記録層の光学特性の一つである光の吸収率を調べたところ、Feを含む場合には、ばらつきが大きく、Feを含まない場合には、ばらつきが小さいことが明らかとなった。
記録層の形態は、Bi、O、Cを含む形態、Bi、O、Nを含む形態、Bi、O、C、Nを含む形態の3通りがある。
記録層中の酸素の割合は30〜65原子%程度であり、好ましくは45〜62原子%、更に好ましくは47〜59原子%程度である。酸素量が多いと安定性が向上し、記録特性も向上するが、感度が悪くなる。酸素量が少ないと感度がよいが、保存安定性などの信頼性が劣化する。
Biの割合は20〜38原子%の範囲が特に好ましい。Biの量に関しては、Bi及びBi酸化物が記録の本質を担っているため、Biが少なくなると記録マークの形成が難しくなり、記録特性が悪化する。また、Biが多くなると、感度は向上するが、保存特性などの信頼性が悪化する。
後述するように、C(炭素)の割合は、1.5〜49原子%程度、N(窒素)の割合は、1.5〜21原子%程度が好ましい。
このようにBiと酸素(実質はBi酸化物)を主成分とし、少量の炭素及び/又は窒素を含むことにより、好ましい特性の光記録媒体が得られる。
本発明の記録原理は、レーザ光の照射によりBi酸化物のBiと酸素が分離し、Biが析出することにより光学的な特性が変化して記録が行われると考えられるが、その際に、炭素及び/又は窒素を含ませることにより、酸素の結合状態の変化、光の吸収率の変化などを制御することができ、感度の向上を図ることが可能となる。また、融点も変化するので、感度の向上を図ることが可能となる。
炭素は、炭素単体又は化合物の形、或いはそれらの混合の形で記録層中に含有させる。記録層中に含有させる方法としては、炭素単体又は炭化物としてターゲット中に混合し、そのターゲットを用いて製膜を行うことにより、記録層中に炭素を導入することができる。また、CO、CHなど炭素を含むガスをArガスに混合し、スパッタにより製膜を行うことにより記録膜中に炭素を導入することも可能である。また、炭素を有機化合物として記録層中に含む形態でもよい。
窒素は、窒素単体又は化合物の形、或いはそれらの混合の形で記録層中に含有させる。記録層中に含有させる方法としては、窒化物としてターゲット中に混合し、そのターゲットを用いて製膜を行うことにより、記録層中に窒素を導入することができる。また、窒素ガスをArガスに混合し、スパッタにより製膜を行うことにより記録膜中に窒素を導入することも可能である。
本発明2では、記録層が更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含有する。
これらの元素が1.5〜18原子%程度含まれていると効果が大きい。Bi窒化物は、少ない方が好ましく、ほぼ検出できない程度に少ない方が更に好ましい。
記録層の好ましい形態は、Bi酸化物、X酸化物、X窒化物からなる形態、Bi酸化物、X酸化物、X炭化物からなる形態である。
原理などは明らかでないが、記録に元素の酸化状態が大きく関わっているため、酸化物の生成し易さと大きく関係があると考えている。
酸化物の生成し易さを示す生成エンタルピーがBiと同等な場合、酸化物が酸素を離し単体元素になり易いため、光の吸収率が向上する。また、融点も変化するため感度の向上を図ることが可能となる。Ge、Sn、Liなどがこれに該当する元素である。
また、B、Li、Na、Mg、K、Ca、Pなどの元素は、酸化ビスマスと共存することにより、ガラス化し易くなる性質を有する。メカニズムは明らかでないが、ガラス化し易さが感度向上と関係している可能性がある。
また、Cu、Ag、Pdなどの比較的酸化しにくい元素の場合は、それ自身はあまり酸化しないため、Bi酸化物の方から酸素が奪われ易くなっており、Biが単体金属として存在する確率が高くなる。その結果、BiとCu、Ag、Pdなどの元素が単体金属として存在することにより感度が向上すると考えられる。
La系列の元素は、Biと比較すると酸化し易いため、Biが単体金属として存在し易くなり、感度向上に寄与していると考えられる。
また、スパッタリング法などの製膜方法では、膜中に酸素が過剰な状態を作り出すことも可能であるが、この場合、酸素は、格子間に入り込むなど不安定な形で膜中に存在することが考えられる。この場合においても、元素Xを添加することで感度向上が可能となり効果が大きい。
本発明3は、記録層が、Bi、B、O及びCからなる。各元素の好ましい割合は、上記本発明2の場合と同じである。炭化物は、光の吸収が大きいため、記録層中に存在することにより記録光を吸収し易くなり、より感度が向上する。また、Bを添加することにより、Biが酸素と結合したり、記録により酸素を離したりする現象がより確実に起きるようになっている。記録層の好ましい形態は、Bi酸化物、B酸化物、B炭化物の3種類の化合物からなる形態である。
本発明4は、記録層が、Bi、B、O及びNからなる。各元素の好ましい割合は、上記本発明2の場合と同じである。また、Bを添加することにより、Biが酸素と結合したり、記録により酸素を離したりする現象がより確実に起きるようになっている。
記録層の好ましい形態は、Bi酸化物、B酸化物、B窒化物からなる形態である。
炭素を添加することによる効果は、以下の(1)から(3)が考えられる。
(1)低ジッタを実現でき、記録特性が向上する。(2)感度が向上する。(3)保存安定性、再生光安定性などの信頼性が向上する。
これらの効果をもたらす炭素の役割は、記録マーク中の結晶相が微細化しやすくする、光の吸収を大きくする、記録膜の安定性を向上するなどであると考えられる。
記録層において、記録により酸化ビスマスがBiと酸化ビスマスに相分離したとき、Biや酸化ビスマスが凝集せずに微細化すると考えられる。即ち、炭素添加により記録マーク中の結晶の微細化が起き、良好な記録特性を示すと考えられる。また、炭素は光の吸収が大きいため、記録層の光吸収が大きくなり、記録感度が向上する。また、湿度、熱、光により記録マーク部の結晶構造が変化するのを抑制し、保存安定性、再生光安定性などの信頼性が向上する。
含有される炭素が少ないと、上述の効果が得られず、記録マーク中に大きなBiの結晶が析出して良好な記録特性が得られない場合があったり、光吸収が不十分のため、記録感度が悪かったり、記録マーク中に大きな結晶が生じるとその結晶が変質するときなどの影響も大きくなり、信頼性が低下しやすくなる。
逆に、炭素が多すぎると、記録マーク中に炭素が多くなり、記録部と未記録部のコントラストを生じさせている酸化ビスマスが相対的に少なくなるため、コントラストが得にくくなり、記録特性が劣化する。また、光を吸収しやすくなり過ぎ、未記録部も変化しやすくなるため、保存安定性、再生光安定性が劣化する。また、スパッタリングターゲットを作製するときに炭素が凝集し、均一に分散したものが得にくくなるため、炭素が凝集した黒い斑点状のものが見られるようになる。このようなスパッタリングターゲットは、充填密度や強度を向上させることが難しくなり、また、このターゲットを用いて製膜した記録層の組成を安定させることが困難となる。
これらの観点から、炭素含有量の好ましい範囲は、記録層全体の1.5〜49原子%程度である。
一例として、BiとC(炭素)からなる複合ターゲットを用い、C量(記録層全体に対する原子%)を、表1に示すように変化させて記録層を製膜した点以外は、後述する実施例2と同様にして追記型光記録媒体を作成し、再生光安定性を調べた。
結果を表1に示す。再生光安定性の評価は、実施例2と同様にして記録した部分に、再生光パワー0.6mWで、高周波重畳を印加し、100万回の再生を行った後、ジッタ値の低下率が20%以上の場合を「△」、20%未満の場合を「○」とした。
表1から分かるように、炭素が少ないと、記録マーク部の安定性が悪く、記録層の再生光による安定性が劣化する。また、炭素が多すぎると、未記録部の安定性が悪く、再生光安定性が劣化する。
また、スパッタリングターゲットの密度を調べるため、同じ条件で3枚作製し、ターゲットの充填密度の平均が90%以上となった場合を「○」、90%未満の場合を「△」とした。結果を表2に示す。90%未満の場合、比較的ターゲット強度が弱い。
Figure 2008273167
また、別の例として、BiとBのモル比8:1の混合物にC(炭素)を加えた複合ターゲットを用いて記録層を製膜した点以外は、後述する実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。炭素は表2に示すC量(記録層全体に対する原子%)となるように変化させて加えた。
これらの追記型光記録媒体について、実施例1と同様にして最適記録パワーを調べた。最適記録パワーは、温度80℃、湿度85%の環境下で500時間の保存試験前後での値を調べた。
その結果を表2に示す。評価基準は、最適記録パワーを規格値の上限記録パワーで割った値を1から引いた値が、0.1以上である場合に「○」、0.1より小さい場合に「△」とした。0.1より小さい場合は、比較的感度がよくないことを示している。
Figure 2008273167
窒素は、記録により酸化ビスマスがBiと酸化ビスマスに相分離したとき、Biや酸化ビスマスが凝集せずに微細化する役割も担っていると考えられる。即ち、窒素添加により記録マーク中の結晶の微細化が起き、良好な記録特性を示すと考えられる。
窒素含有量の好ましい範囲は、下記表3の結果から分かるように、記録層全体の1.5〜21原子%程度である。窒素が多くなりすぎると感度が低下するため好ましくない。
一例として、BiとBのモル比13:5の混合物にBNを加えた複合ターゲットを用いて記録層を製膜した点以外は、後述する実施例3と同様にして追記型光記録媒体を作成した。BNは、表3に示すN量(記録層材料全体に対する原子%)となるように変化させて加えた。
これらの追記型光記録媒体について、実施例3と同様にして最適記録パワーを調べた。最適記録パワーは、温度80℃、湿度85%の環境下で500時間の保存試験前後での値を調べた。
その結果を表3に示す。評価基準は、最適記録パワーを規格値の上限記録パワーで割った値を1から引いた値が、0.1以上である場合に「○」、0.1より小さい場合に「△」とした。0.1より小さい場合は、比較的感度がよくないことを示している。
Figure 2008273167
記録層の膜厚は、5〜30nmの範囲に設定することが好ましく、5〜20nmが更に好ましい。膜厚が5nmを下回ると、上記本発明の構成により、記録再生波長での光吸収機能を高めた記録層であっても、十分な記録感度を確保しにくくなるし、膜厚が30nmを超えると、追記型光記録媒体としての反射率が急激に低下し、記録再生特性が劣化するので好ましくない。
本発明7は、記録層に隣接して上部保護層及び/又は下部保護層を有する。
本発明8は、保護層が硫化物、酸化物、窒化物、炭化物の何れか、又はそれらの複合体からなる。
本発明9は、上部保護層と下部保護層の少なくとも一方が硫化物を含む。
本発明10は、上部保護層と下部保護層の少なくとも一方がZnS・SiOからなる。
記録層の上下には、上部保護層や下部保護層を設けることが好ましい。これらの保護層は、記録層の変形・破壊を抑制し、記録層の溶融、組成変化、拡散を受容する機能を有する。また、これらの保護層は、通常は反射率を高めるために記録再生波長に対して透明であることが好ましいが、記録感度を調整するために、記録再生波長に対する光吸収機能をある程度付与することも可能である。このような保護層を設けることにより、記録マークにおける変形の寄与を従来に比べて非常に小さくすることができ、また、高線速記録における記録パワーの増加による変形の寄与の激増を防ぐことができるため、高線速記録特性の向上に効果がある。また、保存安定性の向上にも効果がある。
保護層材料としては硫化物が好ましい。理由は明らかでないが、硫化物と記録層材料が混合又は反応したり相互拡散することにより、記録マークの形成が容易かつ良好となり更に高速化されるため、記録感度が向上すると考えられる。また、硫化物は比較的軟らかいものが多いため、記録時に起こる記録層の変形による応力が緩和され易いと考えられる。
具体例としては、ZnS、CaS、SrS、BiS、GeS、又はこれらの混合物が挙げられるが、更に、酸化物、窒化物などを混合してもよい。
特に、記録再生光に対する透明性や生産性の観点から、ZnS・SiOを主成分とする材料が好ましい例として挙げられる。また、断熱効果を十分得るためには、SiO、ZrO、Ta、SnOを主成分とすることが好ましい。
また、保護層材料として酸化物、窒化物、炭化物などの比較的硬くて反応性の低い材料を用いることもでき、記録マークが形成された後、その変形、組成変化が起きにくくなるし、記録層の熱によって分解、昇華、空洞化等を起こさないので好ましい。
具体例としては、Al、MgO、ZrO、SnO、Nb、Ta、SiO、Y、CeO、ZnO、TiO、Inなどの単純酸化物系の酸化物、或いはこれらの酸化物の複合酸化物;2MgO・SiO、MgO・SiO、CaO・SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、2MgO・2Al・5SiO、LiO・Al・4SiOなどのケイ酸塩系の酸化物;窒化シリコン、窒化アルミニウム、BN、TiNなどの窒化物系材料;SiC、BC、TiC、WC、アモルファス炭素などの炭化物系材料;SiON、AlON、SiAlON、TiOC、SiOCなどの複合化合物が挙げられる。
上記の他に、MgF、CaFなどのフッ化物を用いることもできるし、硬さや熱伝導率の高さを生かして硼化物などを用いることもできる。
更に、保護層材料として色素や樹脂などの有機材料を使用することも可能である。
色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系、アゾ系、ホルマザン系各色素、及び、これらの金属錯体化合物などが挙げられる。
樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を用いることができ、これらを単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
有機材料層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、塗布などの通常の手段によって行なうことができる。塗布法を用いる場合には、上記有機材料などを有機溶剤に溶解し、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法で塗布すればよい。
塗布法に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
上部保護層は、記録層と反射層の間に設けられる層であって、主に記録感度、反射層の制御を行う機能を担う。上部保護層の膜厚が薄くなり過ぎると、記録層で発生した熱が必要以上に放熱されるため、10nm以上の膜厚に設定することが好ましい。また、上部保護層の膜厚が厚くなると、記録層で発生した熱が放熱されにくく、記録マーク間の熱干渉が大きくなるため、100nm以下の膜厚に設定することが好ましい。
下部保護層は、記録層の保存信頼性を確保するために設けられる。即ち下部保護層は、基板やカバー層を透過してくる酸素、水分、その他のガスから記録層を守る働きをする。よって、記録層を十分に守るためには、膜厚を10nm以上とすることが好ましい。しかし、生産性の観点から、100nm以下の膜厚に設定することが好ましい。
本発明11は、基板上に、少なくとも、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層が順次積層された層構成を有する。これにより、感度が良好で高線速記録が可能な、HD DVD−Rに規格準拠した光記録媒体を実現できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、本発明12のように、基板上に、少なくとも、反射層、上部保護層、記録層、下部保護層、カバー層を順次積層した層構成とする。これにより、感度が良好で高線速記録が可能な、BD−R規格に準拠した光記録媒体を実現できる。
上記層構成において、上部保護層と下部保護層は、同じ材料を用いても異なる材料を用いても良く、また、各保護層を2層以上の層からなる積層構成としてもよい。
例えば上部保護層を2層構成とし、記録層と隣接する層には硫化物を含む材料を用い、反射層に隣接する層には、硫化物を含まない層を用いる組み合わせが、感度、保存特性の観点から好ましい。
本発明の追記型光記録媒体は、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光により記録再生が可能であるが、好ましいのは、波長450nm以下のレーザ光である。なお、500nmを超える波長領域のレーザ光でも記録再生は可能である。
基板やカバー層の素材は、熱的、機械的に優れた特性を有し、基板側から(基板を通して)記録再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば特別な制限はない。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。
基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。従って、通常の基板よりも薄いカバー層を設け、カバー層側から記録再生を行なうことにより、チルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにする。これにより、BD−R規格を超えた高記録密度化を図ることができる。
更に近接場光を用いて記録する場合には、カバー層として、数nmから数十nm程度の薄い層を用いる。この層は、高屈折率であると光が広がらず、小さいスポットのまま記録層に達するため、高密度記録にとって好ましい。また、薄くなるため、硬く、耐磨耗性、摺動特性が良い材料を用いることが好ましく、窒化シリコン、ダイヤモンドライクカーボンなどが好ましい例として挙げられる。
反射層には、例えばAl、Al−Ti、Al−In、Al−Nb、Au、Ag、Cu等の金属、半金属及びそれらの合金を用いることができる。これらの物質は単独で用いても二種以上を組合せて用いてもよい。熱伝導率、反射率の観点からはAg、Cu、Alなどの単体金属やこれらの合金を用いることが好ましい。
これらの材料を用いて反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
合金により反射層を形成する場合は、合金をターゲット材料としたスパッタ法で作成することができるが、その他に、チップオンターゲット方式(例えば、Agターゲット上にCuチップをのせて製膜)、共スパッタ法(例えば、AgターゲットとCuターゲットを使用)でも作成することができる。
金属以外の材料を用いて低屈折率層と高屈折率層を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層の膜厚は、20〜200nmの範囲が好ましく、30〜160nmの範囲が特に好ましい。但し、本発明の反射層が多層型光記録媒体に適用される場合は、反射層膜厚の下限は、この限りではない。膜厚が、20nmより薄い場合、所望の反射率が得られない問題や保存時に反射率が低下する問題、更に、記録振幅が十分にとれない問題を生じることがある。膜厚が、200nmより厚い場合、成膜面が粗れ、反射率が低下することがある。また、生産性の観点からも好ましくない。
また、反射層がAgを含み、保護層にSを含む材料を用いる場合には、反射層と保護層の間にAgとSの反応を防止するための硫化防止層を設ける必要がある。その材料としては光吸収の小さい酸化物、窒化物、炭化物などが好ましく、例えばSiNを主成分とする窒化物、TiOなどの酸化物、SiCなどの炭化物が挙げられる。
硫化防止層の膜厚は、2〜7nm程度とすることが好ましい。2nmより薄いと、膜の不均一性により防止効果がなく、7nmより厚いと、反射率や記録感度が低下する。
反射層の上には厚い環境保護層を形成することが好ましい。その材料としては、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。有機材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。また、無機材料としては、SiO、Si、MgF、SnO等が挙げられる。
環境保護層の形成方法としては、スピンコート法やキャスト法等の塗布法、スパッタ法、化学蒸着法等が用いられるが、中でもスピンコート法が好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いる場合は、通常、適当な溶剤に溶解し、塗布乾燥して層を形成する。
紫外線硬化性樹脂を用いる場合は、通常、そのまま又は適当な溶剤に溶解して塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより層を形成する。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。
これらの材料は単独で用いても混合して用いても良く、一層でなく多層膜にして用いても良い。
環境保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲とするが、本発明においては、3〜30μmが好ましい。
本発明13のスパッタリングターゲットは、Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)を含み、Feを含まない。
また、本発明17のスパッタリングターゲットは、Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)を含み、Feを含まない。
ここで主成分とは、Biと酸素を併せた含有量(原子%)が最も多いことを意味する。また、Biと酸素を含むという表現にしたのは、最も多いのはBi酸化物であるが、Bi酸化物以外に金属Biが含まれる場合があることによる。
Feを含まないようにするのは、Feを含むスパッタリングターゲットは比較的強度が低く、製膜中に破壊される可能性があるためである。その原因は、比較的酸化されやすいFeは、簡単にFeなどの酸化物を形成するが、それらの酸化物の熱膨張係数が、10(10−6/℃)と比較的大きいことによると考えられる。
一方、炭素、SiC、BNの熱膨張係数は、それぞれ、1.5×10−6/℃、4.3×10−6/℃、3.6×10−6/℃であり、炭素や窒素を含むものは、熱膨張係数が比較的小さく、製膜時における温度変化に対して耐久性が高いと考えられる。
実際に、実施例7で用いたBi−B−C−Oターゲットや、実施例8で用いたBi−B−N−Oターゲットは、製膜時にターゲットの破損は起きないが、同様の焼結条件で作製したBi−B−Fe−Oターゲットは、同じ製膜条件ではターゲットが破損することがあり、製膜時の印加電力を1.2kWから0.8kWに下げて製膜を行う必要がある。このように、Feを含む場合には、生産性に悪影響を及ぼす。
スパッタリングターゲット中の酸素の割合は30〜65原子%程度であり、好ましくは45〜62原子%、更に好ましくは47〜59原子%程度である。酸素量が多いと製膜される記録層の組成が比較的安定性良く、記録特性も向上するが、記録感度が悪くなる。酸素量が少ないと記録感度のよい光記録媒体を作製可能であるが、ターゲット強度は比較的弱くなる傾向がある。
Biの割合は20〜38原子%の範囲が特に好ましい。Biの量に関しては、Bi及びBi酸化物が記録の本質を担っているため、Biが少なくなると記録マークの形成が難しくなり、記録特性が悪化する。また、Biが多くなると、感度は向上するが、保存特性などの信頼性が悪化する。
C(炭素)の割合は、1.5〜49原子%程度、N(窒素)の割合は、1.5〜21原子%程度が好ましい。
このようにBiと酸素(実質はBi酸化物)を主成分とし、少量の炭素又は窒素を含むことにより、好ましい特性の光記録媒体が得られる。
炭素は、炭素単体又は化合物の形、或いはそれらの混合の形でスパッタリングターゲット中に含有させる。炭化物で含有させることにより、ターゲットを焼結する際の安定性が高くなり、スパッタリングターゲットの生産性が向上する。
窒素は、化合物の形でスパッタリングターゲット中に含有させる。窒化物が、ターゲット強度を高めるための添加剤としての機能を持たせることも可能である。
本発明14のスパッタリングターゲットは、本発明13において、更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含有する。
本発明18のスパッタリングターゲットは、本発明17において、更に、B、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Si、Ti、Zr、Cr、Hf、Cu、Ta、Y、Nb、Al、Vから選択される少なくとも一種の元素Zを含有する。
これらの元素X又はZが1.5〜18原子%程度含まれていると効果が大きい。Bi炭化物、Bi窒化物は、不安定であり、焼結の際に分解してほぼ検出できない程度に少なくなることが多い。ターゲット強度の向上のためには少ない方が好ましく、ほぼ検出できない程度に少ない方が更に好ましい。好ましい形態は、Bi酸化物、X酸化物、X窒化物からなる形態、Bi酸化物、X酸化物、X炭化物からなる形態、Bi酸化物、X炭化物からなる形態である。
原理などは明らかでないが、炭化物、窒化物は、焼結助剤、強度向上のための添加剤として使用されることが多く、ターゲット強度と大きく関係があると考えている。
特に、B、Si、Ti、Nbなどは、ターゲット強度の向上に効果が大きい。
酸化物の生成し易さを示す生成エンタルピーがBiと同等な場合、酸化物が酸素を離し単体元素になり易いため、光の吸収率が向上する。また、融点も変化するため感度の向上を図ることが可能となる。Ge、Sn、Liなどがこれに該当する元素である。
また、B、Li、Na、Mg、K、Ca、Pなどの元素は、酸化ビスマスと共存することにより、ガラス化し易くなる性質を有する。メカニズムは明らかでないが、ガラス化し易さが感度向上と関係している可能性がある。
また、Cu、Ag、Pdなどの比較的酸化しにくい元素の場合は、それ自身はあまり酸化しないため、Bi酸化物の方から酸素が奪われ易くなっており、Biが単体金属として存在する確率が高くなる。その結果、BiとCu、Ag、Pdなどの元素が単体金属として存在することにより感度が向上すると考えられる。
La系列の元素は、Biと比較すると酸化し易いため、Biが単体金属として存在し易くなり、感度向上に寄与していると考えられる。
本発明15のスパッタリングターゲットはBi、B、O及びCからなる。各元素の好ましい割合は、上記本発明14の場合と同じである。BCは安定性が高いため、BCの状態で含まれるとターゲット強度が向上し、効果が大きい。このターゲットを用いて製膜した記録層は、光の吸収が大きい炭化物が記録層中に存在することにより記録光を吸収し易くなり、より感度が向上する。また、Bを添加することにより、Biが酸素と結合したり、記録により酸素を離したりする現象がより確実に起きるようになっている。
本発明15のターゲットの好ましい形態は、Bi酸化物、B酸化物、B炭化物の3種類の化合物からなる形態である。
本発明19のスパッタリングターゲットはBi、B、O及びNからなる。各元素の好ましい割合は、上記本発明17の場合と同じである。BとNがBNの状態で含まれると、ターゲット強度が高くなるので効果がある。本発明19のターゲットの好ましい形態は、Bi酸化物、B酸化物、B窒化物からなる形態である。
本発明16のスパッタリングターゲットでは、Cの含有量を全体の1.5〜49原子%とする。Cが1.5%より多い場合、製膜された記録層は、炭素が光を吸収するため感度の向上に効果がある。また、炭素が49%より多くなると、記録に関与する酸化ビスマスの割合が少なくなり、記録部と、未記録部とのコントラストが得られにくくなり、記録特性が劣化する。また、炭素が多くなりすぎると、ターゲットが作製し難くなり、ターゲットの充填密度が向上しにくいため、生産性のよい強度の高いターゲットを実現できなくなる。
本発明21のスパッタリングターゲットは、直流スパッタリングが可能であることを特徴とする。特に炭素、炭化物を含有すると抵抗率が小さくなるため、直流スパッタが可能となる。直流スパッタが可能となることにより製膜コストが低下するので好ましい。
本発明22のスパッタリングターゲットは、充填密度(相対密度)が90%以上である。充填密度が95%程度までは、充填密度の向上とともに製膜速度、ターゲットの強度が向上する。しかし、95%程度以上になると徐々にターゲットの強度が低下する。ここで充填密度とは、混合した原料が所定の比率で混合されているとしたときの理論密度に対する実際に測定した密度の割合(%)をいう。
本発明23は、酸化ビスマス粉末と炭素粉末を混合し焼結するスパッタリングターゲットの製造方法である。
本発明24は、酸化ビスマス粉末と、Al、B、Ca、Cr、Hf、Mo、Nb、Si、Ta、Ti、V、W、Zrの中から選択される少なくとも1種類の元素の炭化物の粉末を混合し焼結するスパッタリングターゲットの製造方法である。炭化物を用いることにより安定性良く炭素を混合することができる。また、炭素は導電性は高いが還元性も高いため、焼結時に酸化Biが還元されてしまう可能性があるが、安定な炭化物を混合することにより、再現性の良い製造が可能となる。
本発明25のように、酸素を遮断した状態、不活性雰囲気中、又は真空中で焼結することにより、炭素が遊離してターゲット外に逃げてしまうのを防ぐことが可能となる。ホットプレス法のような焼結方法では、ターゲットを成型する型が炭素からできているため、炭素が平衡状態になり、逃げにくくなるので効果がある。
本発明26のように、Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用いて、炭化水素のような炭素を含むガスをArと混合し製膜すると効果的である。酸素を含有しないターゲットを用いると、Biと酸素を主成分とする記録層が得られない。また、酸素を補うために酸素を混合したガスを用いて製膜を行うと、混合した炭化水素が酸化され、二酸化炭素と水になってしまうため、酸素を混合することはできない。
本発明27のように、Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用いて、窒素とArの混合ガス中で製膜すると効果的である。酸素を含有しないターゲットを用いると、Biと酸素を主成分とする記録層が得られない。そこで、酸素を補うために酸素を混合したガスを用いて製膜することは可能であるが、Biの窒化物ができると好ましくないため、窒化物ができない条件とすることが好ましい。また、窒素とArの混合ガス中で製膜することにより、Biと酸素の分離が起きやすくなり、記録時に記録マークの形成が起きやすく、記録感度の向上に効果があると考えられる。
本発明によれば、青色波長領域(350〜500nm)のレーザ光による記録再生が可能で、高感度かつ低線速から高線速までの広い線速範囲の記録にも適した光記録媒体とその製造方法、及び、該光記録媒体の記録層を製膜するためのスパッタリングターゲットとその製造方法を提供できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、実施例として、波長が405nmのレーザ光を用いた例を示したが、本発明の記録層は、350〜500nmの範囲では複素屈折率が正常分散を示し、複素屈折率に急激な変化が起きないため、同様に記録再生が可能である。即ち、350〜500nmの範囲で記録再生波長が変化すると、追記型光記録媒体としての反射率や記録感度は変化するが、記録原理が変化することはないため、同様の記録再生が可能である。
実施例1
案内溝(溝深さ21nm、平均溝幅155nm、トラックピッチ0.32μm)を有する厚さ1.1mm、直径120mmのポリカーボネート基板(製品名ST3000、帝人バイエルポリテック社製)上に、スパッタ法で、膜厚60nmのAgBi合金(Bi:0.5原子%)層、膜厚4nmのSiN膜、膜厚15nmのZnS・SiO(80:20モル%)層、膜厚16nmのBi−B−C−O層、膜厚75nmのZnS・SiO(80:20モル%)層を順に設け、更に、その上に、紫外線硬化樹脂(日本化薬DVD003)を用いて厚さ75μmポリカーボネートシート(帝人化成ピュアエース)を貼り合わせてカバー層(光透過層)とし、厚さ約1.2mmの追記型光記録媒体を作成した。
Bi−B−C−O層は、Bi−B−C(モル比、8:1:1)の複合ターゲットを用いて製膜した。スパッタリングはArガス中で行った。
この追記型光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.85)を用いて記録を行った。
追記型Blu−rayディスクの規格(BD−R Version 1.1)に準拠し線速1x(1倍速)で記録したところ、最適記録パワー4.3mWでジッター値4.4%が得られた。
同様にして、記録密度は変えず、4x(1xの4倍の線速)で記録を行い、ジッター値を評価したところ、最適記録パワー6.7mWでジッター値5.5%が得られた。
これらの値は、後述する比較例1、比較例2の追記型光記録媒体と比べて、高感度で低ジッターである。
実施例2
Bi−B−C−O層をBi−C−O層に変え、その製膜用複合ターゲットを、Bi−C(モル比、1:1)とした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.0mWでジッター値5.0%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー5.3mWでジッター値5.8%が得られた。
これらの値は、後述する比較例1、比較例2の追記型光記録媒体と比べて、高感度で低ジッターである。
比較例1
Bi−B−C−O層をBi−O層に変え、その製膜用複合ターゲットを、Biとした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1x及び4xで記録したところ、どちらの場合も、記録パワーを変化させても最適な条件が得られず、ジッター値が高いままで、低いジッター値は得られなかった。
比較例2
Bi−B−C−O層をBi−B−O層に変え、その製膜用複合ターゲットを、Bi−B(モル比、6:4)とした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.7mWでジッター値5.2%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー9.8mWでジッター値6.7%が得られた。
実施例3
Bi−B−C−O層をBi−B−N−O層に変え、その製膜用複合ターゲットを、Bi−B−BN(モル比、13:5:2)とした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.5mWでジッター値4.9%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー8.7mWでジッター値5.6%が得られた。
これらの値は、比較例1、比較例2の追記型光記録媒体と比べて、高感度で低ジッターである。
実施例4
Bi−C(モル比、1:1)からなる製膜用複合ターゲットを用い、Arと窒素の混合ガス中(Arと窒素の流量比が40:10)で記録層(Bi−C−N−O層)を製膜した点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作製した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.4mWでジッター値4.8%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー6.5mWでジッター値5.2%が得られた。
これらの値は、比較例1、比較例2の追記型光記録媒体と比べて、高感度で低ジッターである。
実施例5
Biからなるターゲットを用い、Arと窒素の混合ガス中(Arと窒素の流量比が40:10)で記録層(Bi−N−O層)を製膜した点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作製した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.6mWでジッター値4.8%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー6.9mWでジッター値5.8%が得られた。
これらの値は、比較例1、比較例2の追記型光記録媒体と比べて、高感度で低ジッターである。
実施例6
案内溝(溝深さ26nm、平均溝幅200nm、トラックピッチ0.4μm)を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に、スパッタ法を用いて、膜厚60nmのZnS・SiO層(80:20モル%)、膜厚15nmのBi−B−C−O層、膜厚20nmのZnS・SiO層(80:20モル%)、膜厚80nmのAgBi合金層(Bi:0.5原子%)を順次積層した。Bi−B−C−O層は、Bi−B−C(モル比、8:1:1)の複合ターゲットを用いて製膜した。スパッタリングはArガス中で行った。
次いで、AgBi合金層の上に、スピンコート法で紫外線硬化型樹脂(サンノプコ株式会社製:ノプコキュア134)からなる膜厚約5μmの有機保護層を設け、その上に厚さ0.6mmのダミー基板を紫外線硬化型樹脂で貼り合わせて追記型光記録媒体を得た。
この追記型光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、HD DVD−R規格〔DVD Specifications for High Density Recordable Disc(HD DVD−R) Version 1.0〕に準拠した記録密度で、1x(1倍速)の線速で記録を行った。
その結果、最適記録パワー7.6mWでPRSNRの値が29.1であった。
更に、記録密度は変えず、記録時の線速を4x(4倍速)にして記録を行ったところ、最適記録パワー13.4mWでPRSNRの値が20.4であった。
比較例3
Bi−B−C−O層をBi−B−O層に変え、その製膜用複合ターゲットを、Bi−B(モル比、6:4)とした点以外は、実施例6と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例6と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー8.8mWでPRSNRの値が24であった。
更に、実施例6と同様にして、記録時の線速を4x(4倍速)にして記録を行ったところ、最適記録パワー17.6mWでPRSNRの値が19.8であった。
実施例7
BiとBとBCの粉末を、水分吸着がないような状態で、モル比が76.4:11.8:11.8となるように秤量して混合し、更に、ボールミルで1時間乾式混合した後、500℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中650℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。
このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。このターゲットの充填密度は84%であった。
実施例8
BiとBとBNの粉末を、水分吸着がないような状態で、モル比が65:25:10となるように秤量して混合し、更にボールミルで1時間乾式混合した後、500℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中650℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。
このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。このターゲットの充填密度は88%であった。
実施例9
BiとSiCの粉末を水分吸着がないような状態で秤量し、BiとSiCがモル比で2:1になるように混合し、次いで、ボールミルで1時間乾式混合した後、700℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中750℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。
このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。このターゲットの充填密度は97%であった。
実施例10
BiとTiCの粉末を水分吸着がないような状態で秤量し、BiとTiCがモル比で2:1になるように混合し、次いで、ボールミルで1時間乾式混合した後、700℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中750℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。
このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。このターゲットの充填密度は94%であった。
実施例11
BiとNbCの粉末を水分吸着がないような状態で秤量し、BiとNbCがモル比で2:1になるように混合し、次いで、ボールミルで1時間乾式混合した後、700℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中750℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。
このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。このターゲットの充填密度は86%であった。
実施例12
実施例7で作成したスパッタリングターゲットを用いてBi−B−C−O層を製膜した点以外は、実施例1と同様にして、厚さ約1.2mmの本発明の追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.5mWでジッター値4.2%が得られた。
また、実施例1と同様にして、線速4xで記録を行い、ジッター値を評価したところ、最適記録パワー7.1mWでジッター値5.3%が得られた。
実施例13
実施例9で作成したスパッタリングターゲットを用いてBi−Si−C−O層を製膜した点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー5.0mWでジッター値5.2%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー7.3mWでジッター値5.8%が得られた。
実施例14
実施例10で作成したスパッタリングターゲットを用いてBi−Ti−C−O層を製膜した点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー5.1mWでジッター値4.8%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー6.3mWでジッター値6.3%が得られた。
実施例15
実施例11で作成したスパッタリングターゲットを用いてBi−Nb−C−O層を製膜した点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した。
この追記型光記録媒体に対し、実施例1と同様にして線速1xで記録したところ、最適記録パワー4.1mWでジッター値4.5%が得られた。
また、実施例1と同様にして線速4xで記録したところ、最適記録パワー5.9mWでジッター値6.4%が得られた。
実施例16
組成が、Bi−C−O、Bi−B−C−O、Bi−B−N−O、Bi−Si−C−O、Bi−B−Fe−O(対照)の、各スパッタリングターゲットを用い、Arガス中で製膜した記録層について、光の吸収率のばらつきを比較した。光の波長は405nmで、測定した試料は、溝の無いポリカーボネート基板上に記録層を13nm、その上にZnSSiO膜を20nm製膜したものを用いた。製膜用の真空チャンバー内に入れてから記録層の製膜を始めるまでの時間を0から60秒までランダムに選択し設定した点以外は、同じ条件で製膜を行った。そして、各ターゲットについて実験番号1〜10の10種類の試料を作製した。
膜の表面側から光を入射して光度計により光の吸収率を測定した。更に、吸収率のばらつきを調べるため、複数の日時にそれぞれ測定した吸収率を最も低い吸収率で規格化し、それぞれのばらつきを調べた。吸収率のばらつき(%)は次の式により求めた。
ばらつき(%)={(得られた吸収率)−(最も小さい吸収率)}×100/(最も
小さい吸収率)
結果を図1に示すが、ばらつきの数字が大きいものは、吸収率のばらつきが大きいことを示しており、Feを含む試料と含まない試料で差が有り、Feを含まない試料の方が、ばらつきが小さいことが分かる。
なお、Bi−B−C−Oターゲットは実施例7で用いたもの、Bi−B−N−Oターゲットは実施例8で用いたもの、Bi−Si−C−Oターゲットは実施例9で用いたものであり、Bi−C−OターゲットとBi−B−Fe−Oターゲットは、以下のようにして作製したものを用いた。
<Bi−C−Oターゲット>
BiとC(炭素)の粉末を、水分吸着がないような状態で、モル比が1:1となるように秤量して混合し、更に、ボールミルで1時間乾式混合した後、750℃で1時間焼成した。
その後、ボールミルで1時間乾式混合し、この混合粉末を150MPaで加圧成型し、大気中780℃で5時間、ホットプレス焼成することによりスパッタリングターゲットを作成した。ターゲットの大きさは、直径200mmφ、厚さ6mmとした。このターゲットを、低融点金属ボンディングにより無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングし、スパッタリングターゲットを得た。
<Bi−B−Fe−Oターゲット>
BiとBとFeの粉末を65:30:5のモル比で用いた点以外は、実施例7と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。
実施例16の評価結果を示す図。

Claims (27)

  1. 基板上に、少なくとも青色波長領域のレーザ光で記録再生可能な記録層を有し、該記録層がBi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)及び/又はN(窒素)を含み、Feを含まないことを特徴とする光記録媒体。
  2. 記録層が、更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含むことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  3. 記録層が、Bi、B、O及びCからなることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  4. 記録層が、Bi、B、O及びNからなることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
  5. Cの含有量が記録層全体の1.5〜49原子%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光記録媒体。
  6. Nの含有量が記録層全体の1.5〜21原子%であることを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。
  7. 記録層に隣接して上部保護層及び/又は下部保護層を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光記録媒体。
  8. 上部保護層及び/又は下部保護層が硫化物、酸化物、窒化物、炭化物の何れか、又はそれらの複合体からなることを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。
  9. 上部保護層と下部保護層の少なくとも一方が硫化物を含むことを特徴とする請求項8記載の光記録媒体。
  10. 上部保護層と下部保護層の少なくとも一方がZnS・SiOからなることを特徴とする請求項9記載の光記録媒体。
  11. 基板上に、少なくとも、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層が順次積層されたことを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の光記録媒体。
  12. 基板上に、少なくとも、反射層、上部保護層、記録層、下部保護層、カバー層が順次積層されたことを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の光記録媒体。
  13. Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にC(炭素)を含み、Feを含まないことを特徴とするスパッタリングターゲット。
  14. 更にB、Li、Sn、Ge、Sr、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Co、Si、In、Ti、Mn、Ga、Zr、Cr、Hf、K、Na、Zn、Ni、Cu、Pd、Ag、P、Ta、Y、Nb、Al、V、Sb、Te、La系列元素から選択される少なくとも一種の元素Xを含むことを特徴とする請求項13記載のスパッタリングターゲット。
  15. Bi、B、O及びCからなることを特徴とする請求項14記載のスパッタリングターゲット。
  16. Cの含有量が全体の1.5〜49原子%であることを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
  17. Bi(ビスマス)とO(酸素)を主成分として含み、更にN(窒素)を含み、Feを含まないことを特徴とするスパッタリングターゲット。
  18. 更に、B、Mg、Ba、Ca、Mo、W、Si、Ti、Zr、Cr、Hf、Cu、Ta、Y、Nb、Al、Vから選択される少なくとも一種の元素Zを含むことを特徴とする請求項17記載のスパッタリングターゲット。
  19. Bi、B、O及びNからなることを特徴とする請求項18記載のスパッタリングターゲット。
  20. Nの含有量が全体の1.5〜21原子%であることを特徴とする請求項17〜19の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
  21. 直流スパッタリングが可能であることを特徴とする請求項13〜16の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
  22. 充填密度が90%以上であることを特徴とする請求項13〜21の何れかに記載のスパッタリングターゲット。
  23. 酸化ビスマス粉末と炭素粉末を混合し焼結することを特徴とする請求項13記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  24. 酸化ビスマス粉末と、Al、B、Ca、Cr、Hf、Mo、Nb、Si、Ta、Ti、V、W、Zrの中から選択される少なくとも1種類の元素の炭化物の粉末を混合し焼結することを特徴とする請求項14記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  25. 酸素を遮断した状態、不活性雰囲気中、又は真空中で焼結することを特徴とする請求項23又は24記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  26. Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用い、C(炭素)を含むガスとAr(アルゴン)の混合ガス中で記録層を製膜することを特徴とする請求項3記載の光記録媒体の製造方法。
  27. Bi、B、Oを含むスパッタリングターゲットを用い、N(窒素)とAr(アルゴン)の混合ガス中で記録層を製膜することを特徴とする請求項4記載の光記録媒体の製造方法。
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