JP4667427B2 - 追記型光記録媒体 - Google Patents
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この記憶容量で、殆どの映画一本分を収容できる133分間の映像、音声、及び字幕を再生することが可能である。
一方、高精細(HD:High Definition)動画像を2時間再生又は記録再生するための開発も進められており、そのために必要な記憶容量は、ほぼ15GBと見積もられ、レーザ波長(λ)405nm、対物レンズの開口数(NA)0.65、記録層の形成されている基板1枚の厚さ0.6mmであり、記録層一層当たりの記憶容量が15GB(HD DVD−Rの場合)と定められたHD DVD規格が制定されている。
このHD DVD−R規格では、レーザ光源の短波長化による高密度化の他に、記録マーク密度の向上を可能にする信号処理技術(PRML技術)が採用されている。
また一方で、高密度化を図るために、記録再生波長を405nm程度まで短くし、かつ、対物レンズの開口数を0.85程度まで大きくして、ディスク構造に0.1mmのカバー層方式を採用することにより、DVDの4倍以上となる25GB/面の記録容量を実現したBlu−ray規格が制定されている。
これらの青色レーザ波長領域のレーザ光で記録再生を行なう追記型光記録媒体(HD DVD規格における追記型光記録媒体であるHD DVD−Rや、Blu−ray規格における追記型光記録媒体であるBD−R)を実現させるために、CD−RやDVD±Rとは異なる記録材料が開発されている。
上記青色レーザ波長領域のレーザ光とは、405nm±15nm(390nm〜420nm)程度の波長のレーザ光を示す。実際に規格で定められているレーザ光の波長は、Blu−ray disc規格でも、HD DVD規格でも、その範囲内となる405nm±5nmである。
したがって、青色レーザ対応の追記型光記録媒体の記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。
即ち、High to Low型(記録によって反射率が低下する)の追記型光記録媒体の場合、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。何故ならば、有機材料の大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能であるが、大きな屈折率を持たないため、High to Low型で、CD−RやDVD±Rのような非常に優れた記録再生特性を実現することが困難である。
そこで近年、青色レーザ対応の追記型光記録媒体に有機材料を利用するため、記録極性を「Low to High」、いわゆる「未記録部の反射率が記録マーク部よりも低くなるもの」とする傾向が見られる。
そのため本発明者らは、有機材料に代えて無機材料を記録層として使用することを提案している。例えば、本発明者らが提案した、青色レーザ波長以下でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体として、特許文献1〜4及び本出願人の先願に係る、特願2005−064328、特願2005−071626等がある。
これら特許文献1〜4、及び先願では、金属又は半金属の酸化物、とりわけビスマス酸化物を主成分とする記録層、或いは、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層の有用性を提案している。
その対策として、特許文献5などには、保護層と反射層の間に界面層を設ける方法が開示されている。また、特許文献6などには、添加元素を加えてAg合金とすることにより安定性を向上させる方法が開示されている。
しかし、界面層を設ける特許文献5の方法は、層の数が増えることにより製造工程が増えるなどの問題があり、特許文献6のAg合金を用いる方法では、十分に劣化を防止することができない。
例えば、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層を用いてHD DVD−R SL(Single Layer)を作製した場合(記録極性はHigh to Lowの場合)、最良なPRSNR(パーシャル・レスポンス・ツー・ノイズ・レシオ)、エラー率が得られる膜厚設定が行われた時のデータ部の反射率は25%程度(規格値は14〜28%)、システムリードインの反射率は30〜32%(規格値は16〜32%)となり、1Xの記録感度も9.0〜10.0mWとなっており(規格値は10.0mW以下)、一応規格値を満足することは可能であるが、更なる高感度化が望まれる。
このように、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層を有する追記型光記録媒体において、反射率が高くなりすぎる原因は、該記録層が、青色レーザ波長においても比較的高い透過率を有するためである。
勿論、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層や、この記録層に隣接する層の膜厚を調整すれば、追記型光記録媒体としての反射率を適当な範囲に抑制し、感度を改善することは可能であるが、感度中心の層構成、膜厚設定を行なうと、一般的にPRSNR、ジッタ、エラー率等の記録特性が悪化する傾向が見られる。
Tiの添加量を0.5原子%とした理由は、従来、反射層に要求される物性は高反射率と高熱伝導率であり、Alの反射率特性と熱伝導特性を損なわないようにするためには、一般的に添加元素はAlに対し1重量%程度以下にするというのが常識となっているためである(添加元素がTiの場合、Alに対する添加量1重量%は0.58原子%に相当)。
また、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層とAl−Ti合金(Ti0.5原子%)からなる反射層の間にZnS−SiO2層を設けた層構成を採用した場合でも、Ag系反射層材料で見られたような硫化による欠陥の増加は認められず、保存信頼性の改善が図られることを確認した。
しかしながら、有機色素を記録層とする場合、青色レーザ波長領域において光学特性(反射率や変調度など)が十分でなく、特に、記録極性が「High to Low」である青色レーザ対応の追記型光記録媒体への適用は難しい。
また、記録マークを形成するときには、前後の記録マークやスペースの種類による熱分布の変化を低減させるために、記録ストラテジと呼ばれる発光パワーのパルス形状等に関する規則(方式)に基づいて、発光パワーのパルス形状等を設定している。記録ストラテジは記録品質に大きな影響を与えるため、記録ストラテジの最適化が重要となる。
例えば、再生時の信号品質の劣化を防止するため、記録層(色素使用)にレーザビームの照射時間を多段階に切り替えて照射し、データをマルチレベルで記録する記録方法が提案されている(例えば、特許文献9〜11参照)。
しかしながら、上記提案の記録ストラテジは色素使用の記録層において適合するものであり、本発明の対象となる青色レーザ対応の酸化ビスマスを主成分とする記録層の場合には良好な記録マーク形成が難しい。
しかし、提案の記録再生方法における記録ストラテジでは記録マーク形成において記録品質が必ずしも十分とは云えず、更なる向上が求められている。
また、良好な記録品質での記録を行なうためには、記録ストラテジによる記録マーク形成方法の制御の他に、記録時のトラッキングサーボの安定性を確保することも重要な要素となる。
しかしながら、これらの従来技術では、トラッキングサーボの安定性の向上、ウォブルを利用したアドレス情報の再生安定性の向上、及び、システムリードイン領域にプリピットにより記録した情報の再生安定性の向上を図ろうとすると、記録特性が悪くなってしまうという問題があることが分った。
1) 基板上に、少なくとも、無機材料からなる記録層と反射層が形成されており、青色レーザ光の照射により記録層に非可逆的な変化を生じさせて情報の記録を行なうことができる追記型光記録媒体であって、記録層が酸化ビスマスを主成分としホウ素を含む材料からなり、反射層がAlに対して下記元素群(I)から選択された少なくとも1種の元素を合計で0.6〜7.0原子%含有する材料からなることを特徴とする追記型光記録媒体。
元素群(I):Ti、Cr、Pd、Sn、Cu、Mn、Si、Mg
2) 基板が案内溝を有し、該基板上に、少なくとも、下記(1)〜(4)の何れかの各層を順に有することを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
(1)記録層、上部保護層、反射層
(2)下部保護層、記録層、上部保護層、反射層
(3)反射層、上部保護層、記録層、カバー層
(4)反射層、上部保護層、記録層、下部保護層、カバー層
3) 下部保護層及び/又は上部保護層が、ZnS−SiO 2 を主成分とする材料からなることを特徴とする2)記載の追記型光記録媒体。
本発明の光記録媒体は、下記のような構成とすることが好ましいが、これに限定される訳ではない。
(a) 基板(光透過層)/記録層/上部保護層/反射層
(b) 基板(光透過層)/下部保護層/記録層/上部保護層/反射層
(c) カバー層(光透過層)/記録層/上部保護層/反射層/基板
(d) カバー層(光透過層)/下部保護層/記録層/上部保護層/反射層/基板
更に、上記構造を基本として、多層化されても構わない。例えば、(a)の構成を基本として二層化される場合には、次のような層構成が挙げられる。
(e) 基板(光透過層)/記録層/上部保護層/反射層(半透過層)/接着層/記録層/上部保護層/反射層/基板
図1、図2に、本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例について、模式図を示す。
図1に示す追記型光記録媒体は、基板1上に、下部保護層2、記録層3、上部保護層4、反射層5、オーバーコート層6、接着層7、保護基板8が順次設けられている。
図2に示す追記型光記録媒体は、基板1上に、反射層5、上部保護層4、記録層3、下部保護層2、カバー層9が順次設けられている。
本発明の記録層には、無機材料を用いる。
記録層に無機材料を用いた追記型光記録媒体としては、特開2003−145934号公報に述べられているように、主にレーザ光照射により媒体にピット(穴)をあけて情報を記録する方式のものと、相変化や合金化等による構造変化を生じさせ反射率を変化させて情報を記録する方式のものが提案されている。しかしながら、ピット方式の場合は、記録密度の向上に伴って均一なピットを得ることが困難となり、これにより信号特性と記録感度が劣化するため、あまり望ましくない。一方、相変化方式の場合には、結晶と非晶の間の相転移を利用するものにおいて、場合により記録マークが消去される危険性があり、合金化方式の場合には、レーザ照射による反射率の変動、即ち、記録マークの再生信号のコントラストが小さいという問題を有するが、記録マークの大きさを制御するためには、構造変化を利用するこれらの方式が望ましい。
ビスマスは、金属ビスマス、ビスマス合金、ビスマス酸化物、ビスマス硫化物、ビスマス窒化物、ビスマス弗化物等の何れの状態で含有されていてもよいが、酸化ビスマス(ビスマス酸化物の1つ)は必ず含有されていなければならない。
記録層中に酸化ビスマスを含有させることにより、記録層の熱伝導率を低くすることができ、高感度化や低ジッタ化を図ることができるし、記録層の複素屈折率虚部を小さくすることができるので、透過性に優れた記録層となり、多層化が容易になる。
更に、記録再生特性の改良のため、記録層中にホウ素を添加する。ビスマス及びホウ素は、安定性向上や熱伝導率の観点から、酸化状態で存在させることが望ましいが、完全に酸化させる必要はない。
即ち、本発明の記録層には、ビスマス単体や、ホウ素単体が含まれていても良い。
(イ)ビスマス酸化物ターゲットを用いてスパッタする方法
(ロ)ビスマスターゲットとビスマス酸化物のターゲットを用いてスパッタする方法
(共スパッタ法)
(ハ)ビスマスターゲットを用い、酸素導入を行ないながらスパッタする方法
(イ)の方法では、ターゲット中のビスマスが完全に酸化した状態となっているが、真空度やスパッタパワー等のスパッタ条件により、酸素が欠損し易いという現象を利用するものである。
したがって、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層にホウ素を添加することにより、熱伝導率を制御し、高密度記録特性を向上させることができるのである。
更に、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層では、記録によって、ビスマスの酸化物やビスマスが結晶化するが、この結晶や結晶粒の大きさをホウ素によって制御できる。
したがって、ホウ素によって記録部の結晶や結晶粒の大きさを制御することができ、ジッタ等の記録再生特性を大きく向上できる。これが記録層にホウ素を添加する、もう1つの理由である。
記録層材料としては、(1)酸化ビスマスからなる材料、(2)ビスマス元素単体と酸化ビスマスを含有する材料のいずれかに、ホウ素を加えた材料を用いる。
上記酸化ビスマスを主成分とする材料は、特に、青色レーザ対応の記録層材料として非常に有用であり、熱伝導率が低く耐久性が良好で高反射率化や高透過率化が実現しやすい(複素屈折率に起因する)という特徴がある。
(1)酸化物とすることで膜の硬度を高めることができる(記録層の薄膜自体の変形、或いは基板等の隣接層の変形を抑制することが可能である)。
(2)酸化物とすることで保存安定性を高めることができる。
(3)Bi等の500nmの波長域に対して光吸収率が高い元素を含ませることで、記録感度を向上させることができる。
(4)Bi等の低融点元素或いは拡散を起こし易い元素を含ませることで、大きな変形を伴わないにも拘わらず大きな変調度を発生させる記録マークを形成させることができる。
(5)スパッタ等の気相成長法により良好な薄膜を形成させることができる。
スパッタ法を用いた場合の実際の記録層の組成は、ターゲットの状態、それぞれの元素・化合物のスパッタの進み易さ、製膜時の電力、アルゴン流量などの条件に依存して変動する。また、ターゲットの組成と製膜した膜の組成とが異なる場合も多く、その組成のズレを考慮する必要もある。
記録層の厚さについては、使用される光記録媒体の条件によって最適な値は異なるが、およそ5〜30nmの範囲にあることが望ましい。更に好ましくは、10〜25nmである。膜厚が5nmより薄くなると記録マークの変調度が小さくなるため、また、30nmを超えると記録時における記録マークの形成精度が下がるため、何れも記録信号の特性が良好でなくなるので望ましくない。
保護層材料としては、通常、記録時の記録層からの熱によって分解、昇華、空洞化等を起こさないものが好ましく、例えば、Nb2O5、Sm2O3、Ce2O3、Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、UO2、ThO2などの単純酸化物系の酸化物;SiO2、2MgO・SiO2、MgO・SiO2、CaO・SiO2、ZrO2・SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、Li2O・Al2O3・4SiO2などのケイ酸塩系の酸化物;Al2TiO5、MgAl2O4、Ca10(PO4)6(OH)2、BaTiO3、LiNbO3、PZT〔Pb(Zr,Ti)O3〕、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O3〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si3N4、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB6、TiB2、ZrB2などのホウ化物系の非酸化物;ZnS、CdS、MoS2などの硫化物系の非酸化物;MoSi2などのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイヤモンド等の炭素系の非酸化物等を用いることが可能である。
特にZnS−SiO2は、酸素、水分などの出入りを防ぐ効果が大きく、保存安定性の向上に好適である。また、ZnS−SiO2は、炭素や透明導電性材料などを添加して導電性を持たせることにより直流スパッタリングでの製膜が可能となる。また、記録層の温度を記録マークが形成されるまでに効率良く上昇させることができ、記録感度を大幅に高めることが可能となる(即ち、低記録パワーでの記録が可能となる)。更に、熱伝導率の調整のためにZnO、GeOなどを添加したり、酸化物と窒化物を混合するなどの方法も可能である。ZnSとSiO2の混合比は、70:30〜90:10(モル%)の範囲が好ましく、膜の応力がほぼゼロになる80:20が特に好ましい。
これらの無機保護層の形成方法としては、前述の記録層と同様に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系、アゾ系、ホルマザン系各色素、及びこれらの金属錯体化合物などが挙げられる。
樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を用いることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
下部保護層については、下側に接しているのが樹脂材料からなる基板である場合には、更に膜厚を厚くし、20nm以上とするのがより好適である。
したがって、下部保護層の好ましい膜厚は、5〜150nmであり、更に好ましくは、20〜90nmである。特に、ZnS−SiO2(80:20モル%)を用いる場合には、30〜90nmとするのが、より好適である。
また、上部保護層の好ましい膜厚は、5〜50nmであり、更に好ましくは、5〜30nmである。
前述のように、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層を有する追記型光記録媒体において、反射率が高くなりすぎる原因は、該記録層が、青色レーザ波長においても、比較的高い透過率を有するためである。
そこで、熱伝導率が高く、Ag系材料よりも反射率が低下し、かつ、ZnS−SiO2に含まれるSと反応しない反射層材料としてAl合金を用いることを検討した。
(1)青色レーザ対応の追記型光記録媒体の規格(HD DVD−RやBD−R)に対する規格満足度
(2)記録感度の向上
(3)高温高湿下の保存信頼性の向上
元素群(I):Ti、Cr、Pd、Sn、Cu、Mn、Si、Mg
(a)反射率の上昇を抑えることができる。
(b)反射率の上昇が抑えられることと、熱伝度率が低下することにより、記録感度が向上する。
(c)高温高湿下での、粒状性(表面平滑性)の増大(悪化)が抑制される。
しかし、Alへの添加元素が、本発明の添加下限量より少ない範囲では、次の(d)〜(f)のデメリットが生じ、逆に、Alへの添加元素が、本発明の添加上限量より多い範囲では、次の(g)〜(h)のデメリットが生じる。
(d)反射率の上昇を抑えることができない(規格外となる可能性がある)。
(e)反射率が上昇し、かつ熱伝度率が増大することにより、記録感度が悪化する(規格外となる可能性がある)。
(f)高温高湿下での、粒状性(表面平滑性)の増大(悪化)が起こる可能性が高い。
(g)反射率が急激に低下する(規格外となる可能性がある)。
(h)反射率が低下し、かつ熱伝度率が急激に低下することにより、再生光安定性が悪化する。
なお、本発明のAl反射層への添加元素は、Alの粒状性(表面平滑性)を改善する(小さくする)効果を担うものであるため、添加元素自体の効果は大きくない。
そこで、スパッタリングを用いた反射層形成方法について説明する。
スパッタリングに用いる放電用ガスとしては、Arが好ましく用いられる。また、スパッタリングの条件としては、Ar流量1〜50sccm、パワー0.5〜10kW、成膜時間0.1〜30秒の範囲が好ましく、より好ましいのは、Ar流量3〜20sccm、パワー1〜7kW、成膜時間0.5〜15秒の範囲であり、更に好ましい範囲としては、Ar流量4〜10sccm、パワー2〜6kW、成膜時間1〜5秒の範囲である。
なお、スパッタリングの条件は、Ar流量、パワー、及び成膜時間の少なくとも1つが上記範囲にあることが好ましく、2つ以上が上記範囲にあることがより好ましく、全ての条件が上記範囲にあることが更に好ましい。
反射層の膜厚は、20〜200nmの範囲が好ましく、25〜180nmの範囲がより好ましく、30〜160nmの範囲が特に好ましい。但し、本発明の反射層が多層型光記録媒体に適用される場合は、膜厚の下限は、この限りではない。
膜厚が20nmより薄い場合、所望の反射率が得られない問題や保存時に反射率が低下する問題、更に、記録振幅が十分にとれない問題を生じることがある。膜厚が200nmより厚い場合、成膜面が粗れ、反射率が低下することがある。また、生産性の観点からも好ましくない。
反射層の成膜速度は6〜95nm/sの範囲であることが好ましく、7〜90nm/sの範囲であることがより好ましく、8〜80nm/sの範囲であることが特に好ましい。成膜速度が、6nm/sより遅い場合、スパッタ中に酸素が入りやすくなり、酸化により反射率が低下したり、反射層の耐腐食性が低下する場合がある。成膜速度が95nm/sより速い場合、温度上昇が大きく、基板に反りが発生することがある。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。
基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
基板の表面に、トラッキング用の案内溝や案内ピット、更にアドレス信号等のプレフォーマットが形成されていてもよい。
基板の鏡面側(案内溝等のある反対面)に、表面保護やゴミ等の付着防止のために、紫外線硬化樹脂層や無機系薄膜等を形成してもよい。
また、HD DVD−R規格に対応する追記型光記録媒体については、好ましい案内溝のトラックピッチは0.4±0.02μm、好ましいウォブルの振幅量は16±2nmである。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂は適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのまま又は適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。
これらの材料は単独で用いても混合して用いても良いし、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
上記保護層の形成方法としては、スピンコート法やキャスト法等の塗布法、スパッタリング法、化学蒸着法等が用いられるが、中でも、有機材料を用いる場合には、スピンコート法が好ましい。
上記保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲であるが、本発明においては、有機材料を用いる場合には、3〜30μmが好ましい。
これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。したがって、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにしている。
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する層である光透過性のカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射層を設け、その上に記録層を設け、更にこの上に光透過性を有するカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている(Blu−ray規格)。
このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや、紫外線硬化型樹脂により形成されるのが一般的である。本発明で言うカバー層には、カバー層を接着するための層を含めてもよい。
貼り合わせる際に用いられる接着層の材料としては、紫外線硬化型樹脂、ホットメルト接着剤、シリコーン樹脂などの接着剤を用いることができる。このような接着層の材料は、反射層又はオーバーコート層の上に、材料に応じて、スピンコート、ロールコート、スクリーン印刷法などの方法により塗布し、紫外線照射、加熱、加圧等の処理を行なって反対面のディスクと貼り合わせる。
反対面のディスクは、同様の単板ディスクでも透明基板のみでも良く、反対面のディスクの貼り合わせ面については、接着層の材料を塗布してもしなくても良い。また、接着層として粘着シートを用いることもできる。
接着層の膜厚は特に制限されるものではないが、材料の塗布性、硬化性、ディスクの機械特性の影響を考慮すると、5〜100μmが好適である。
接着面の範囲も特に制限されるものではないが、HD DVD−R規格に準拠する光記録媒体に応用する場合、接着強度を確保するためには内周端の位置がΦ15〜40mm、好適にはΦ15〜30mmであることが望ましい。
記録に際しては、予熱工程とそれに続く加熱工程とを有する記録ストラテジにより、記録層を記録マーク形成開始温度以上に加熱して記録マークを形成する。
これにより、青色レーザ波長領域においても、記録マーク形成時に記録層が速やかに記録マーク形成開始温度以上に昇温され、記録層に精度の良い記録マークが形成されるので記録品質が向上する。予熱パワー(Pb)が記録パワー(Pw)に対して70%以下の強さであれば、予熱パワーが好適な強さに維持されて、記録マークの先頭部が余分に広がるようなことがなく、PRSNRやジッタが規格値に対して十分な記録品質を得ることができる。70%を超えると、PRSNRやジッタが悪化して規格値よりも小さな値となり、十分な記録品質を得ることができない。つまり、予熱パワーが強くなり過ぎるため、記録マークが広がり過ぎてしまい、これが原因となってPRSNRが悪化する。
予熱パワー(Pb)は再生パワー(Pr)よりも強くする必要がある。予熱パワーが再生パワー以下の場合には、記録パワーが強くても温度上昇が遅れるため、記録マーク形状にバラツキが生じて記録品質が悪化する。予熱工程の効果を確実にするには、予熱パワー(Pb)を再生パワー(Pr)よりも、0.7mW以上強くすることが好ましい。
なお、PRSNRとは、Partial Response Signal to Noize Ratio(パーシャル・レスポンス・シグナル・ツー・ノイズ・レシオ)のことで、HD DVD規格に基づく信号品質を表す指標であり、規格値として15以上である必要がある。
加熱工程の後に冷却工程を設ける場合には、冷却パワー(Pc)を予熱パワー(Pb)よりも弱くする。これにより、記録マーク後方の余分な広がりを抑えることができ、精度の良い記録マークを形成できるため、PRSNRやジッタが規格値を十分に満足する記録品質を得ることができる。冷却工程の効果を確実にするには、冷却パワー(Pc)を予熱パワー(Pb)よりも、1.0mW以上弱くすることが好ましい。
また、記録パルスを単パルスとしてもよい。これにより、青色レーザ対応の短い記録マークを形成することができるほか、強い記録パワーが必要な高速記録の場合においても、高感度(低いパワー)で記録マークを形成することが可能となる。
また、単パルスの記録パワーを、形成する記録マークの長さに応じて2種類以上に変化させてもよい。青色レーザ対応の高速記録においては、長い記録マークよりも短い記録マークを形成する方が難しいが、2種類以上の記録パワーを用い、短い記録マークを形成する際により強い記録パワーを用いることにより、高速記録においても短い記録マークを精度良く形成することが可能となる。
また、記録パルスを、単パルスではなく、2種類以上のパワーの組み合わせからなるパルスとしてもよい。記録マークの形成中に記録パルスのパワーを変化させることにより、特に長い記録マークの後方が広がらず、品質の高い記録マークを形成することが可能となる。
図3〜図6は、予熱工程とそれに続く加熱工程、更には、それに続く冷却工程を説明するための模式図である。
図3の例は、先ず予熱工程で、再生パワー(Pr)より強く且つ記録パワー(Pw)より弱い予熱パワー(Pb)を記録層に加えて予熱し〔ここで(Pb)は(Pw)の70%以下の強さとする〕、続いて加熱工程で、形成すべき記録マークに対応する記録パワー(Pw)を加えて、トラックに記録マークを形成する場合を示している。
図4の例は、図3の予熱工程、加熱工程に続いて、予熱パワー(Pb)より弱い冷却パワー(Pc)を記録層に加えて、記録マーク形成後に記録層の冷却を早める場合を示している。
図3、図5では、予熱パルスを照射して、記録層を記録マーク形成開始温度未満の温度に予熱し、続いて記録すべき情報に基づいて記録パルスを照射し、記録マーク形成開始温度以上の温度に加熱して、記録マークを形成する。
図4、図6では、更に冷却パルスを照射して、記録層の冷却を早める。
このように予熱パルスと記録パルスにより順に加熱すると、記録層を速やかに記録マーク形成開始温度以上に昇温することができる。更に、冷却パルスにより、記録層の冷却を早めることができる。
短い記録マークを形成するときは、長い記録マークに比べて記録マークの後方が広がって涙状のマークになることが少ないため、単パルスで記録する方が好ましく、しかも高速記録の場合に高感度(低いパワー)で記録マークを形成することが可能となる。
また、2種類以上の記録パワーで記録することにより、特に長い記録マークの後方が広がらず、品質の高い記録マークを形成することが可能となる。
実際に記録に用いられる記録パルスの具体例としては、図10〜図13に示したようなパルスパターンが挙げられる。ここで、図10〜図13では、パルス幅について一種類の固定値を提示しているが、各パターンとも、その値に限定されるものではなく、品質の高い記録マークを形成できる条件のパルス幅を任意に選択すれば良い。
住友重機械工業社製トグル式成形機に、厚さ0.6mm、直径120mmディスク基板用の精工技研社製の金型を組み合わせて射出成形を行ない、ウォブル振幅量16±1nmのウォブル付き案内溝(溝深さ:表1参照、溝幅:半値幅205±5nm、Top165±15nm、Bottom265±20nm、トラックピッチ:0.4±0.02μm)を有する厚さ0.6mm、直径120mmのポリカーボネート基板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−4000)を形成し、その案内溝面上に、エリコン社製スパッタ装置(DVDスプリンター)を用いてスパッタ法で、ZnS−SiO2(80:20モル%)からなる膜厚60nmの下部保護層、BiとBとOからなる膜厚16nmの記録層、ZnS−SiO2(80:20モル%)からなる膜厚20nmの上部保護層、AlTi合金(Ti:1.0重量%)からなる膜厚40nmの反射層を順に製膜し、その上に、紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製KAYARAD DVD−802)を用いて、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(三菱エンジニアリングプラスチック社製ユーピロンH−4000)を貼り合わせて、図1に示したような(但し、オーバーコート層は除く)厚さ約1.2mmの追記型光記録媒体(実施例1〜5、9)を作成した。
また、実施例1と同様の方法で、ウォブル付き案内溝〔溝深さ:26nm、溝幅:表2参照(半径位置毎に半値幅を変更したもの)、トラックピッチ:0.4±0.02μm〕を有するポリカーボネート基板を形成し、これを用いて実施例1と同様にして追記型光記録媒体(実施例10)を作成した。
結果を、表1、表2、及び図14〜図18に示す(但し、実施例10については表2のみ)。なお、図14〜図18中の左右に横切るやや太い直線は規格値を示す。
また、図17の「PRSNR」は「Partial Response Signal to Noize Ratio(パーシャル・レスポンス・シグナル・ツー・ノイズ・レシオ)」の略であり、図18の「SbER」は「Simulated bit Error Rate(シミュレイテッド・ビット・エラー・レイト)」の略である。
図14〜図18から分かるように、特性の測定結果は、案内溝の溝深さ及び溝幅の影響を受けており、プッシュプルが規格内となるのは、内周部では、溝深さが23〜33nmのときであり、中周部では、溝深さが24.5nm以上のとき、外周部では、溝深さが25nm以上のときとなっている。また、中周部のPRSNRは溝深さが32nm以下のときに、SbERは溝深さが33nm以下のときに、規格内となる。
SLI(システムリードイン)領域の変調度については、溝深さが23nm以上のときに、規格内となる。
溝幅については、中周部では、170〜230nmのときに、プッシュプルが規格内となっている。
また、実施例1〜5、9、10の追記型光記録媒体に対し、HD DVD対応の光記録装置(東芝製RD−A1)により、コンテンツデータの記録・再生を行なったところ、何れの場合も、途中で記録ストップすること無く記録が終了し、記録後のデータの再生も行なうことができた。
したがって、特性が僅かに規格外となるものであっても、光記録装置での記録・再生は可能となっていた。
ZnS−SiO2(80:20モル%)からなる下部保護層の膜厚を、0〜140nmの範囲で変化させた点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成した(膜厚0nmの場合は、下部保護層が無いことになる)。
得られた追記型光記録媒体に対し、パルステック工業社製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、記録部に対する特性評価を行なった。その後で、80℃、85%RHの環境下に100時間保管する環境試験を行ない、再度、特性評価を実施し、これを100時間毎に繰り返して、通算300時間となるまで、環境試験及び特性評価を行なった。環境試験投入前(初期)の結果と、各環境試験後毎の結果を比較して、初期値を1としたときの変動した比率を求めたものを、図19〜図22に示す。
図から、ZnS−SiO2(80:20モル%)からなる下部保護層を用いる場合に、特性の劣化を抑えるためには、反射率を基準とする場合は20nm以上、変調度、PRSNR、SbERを基準とする場合は30nm以上の膜厚が必要であることが分かる。
実施例1と同じ成形機と金型を用いて射出成形した、溝深さ26nmの案内溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−4000)上に、エリコン社製スパッタ装置(DVDスプリンター)を用いてスパッタ法で、下記の層を順次積層した。
・下部保護層(ZnS−SiO2,モル比80:20)、膜厚50nm
・記録層(Bi2BOx)、膜厚15nm
・上部保護層(ZnS−SiO2,モル比80:20)、膜厚20nm
・反射層(表3に示す組成のAl−Ti合金)、膜厚60nm
なお、記録層の組成をRBS(ラザフォード後方散乱分光)で測定し、Biが完全には酸化されていないことを確認した。
次いで、Al合金反射層上に、スピンコート法で紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製KAYARAD DVD−802)からなる膜厚約5μmの有機保護層を設け、更に、厚さ0.6mmのダミー基板を紫外線硬化型樹脂により貼り合わせて図1に示したような追記型光記録媒体を得た。
更に、記録したサンプルを80℃85%RHの環境下に300時間放置した後のPRSNRを測定し、初期PRSNRとの比較を行った。
結果を図23〜図24に示す。なお、図23、図24中の横方向の点線は、規格値を示す線である。
図23から、添加元素量が7.0原子%以下で〔図23の(A)で示した領域〕、HD DVD−R規格を満足する反射率が得られることが分かる。よって、本発明の添加元素量規定範囲における上限値の有効性を確認できた。
なお、感度は、添加元素量に対して反射率と同様な傾向を示し、添加元素量が0.6〜7.0原子%の範囲では、HD DVD−R規格で規定する記録感度を十分満足した。
また、添加元素量が増えるに従い、熱伝導率や反射率の低下に伴うPRSNRの低下が起きているが、添加元素量が5.0原子%以下では、ほぼその低下量が無視できる程度である〔図23の(B)で示した領域〕。よって、本発明の添加元素量規定範囲における好ましい上限値の有効性を確認できた。
また、図24からは、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後のPRSNR低下量が、添加元素量の増加とともに抑制できることが分かった。
図24から、添加元素量が0.6原子%以上では、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後のPRSNR低下量が1.0以下となり、本発明の添加元素量規定範囲における、下限値の有効性を確認できた〔図24の(C)で示した領域〕。
また、添加元素量が1.0原子%以上では、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後のPRSNR低下量が0.5以下となり、本発明の添加元素量規定範囲における、好ましい下限値の有効性を確認できた〔図24の(D)で示した領域〕。
なお、Alへの添加元素量が7.0原子%を超えると、反射率が低下しすぎるとともに、再生光に対する安定性が悪化する傾向が見られた。
表4に示すように、Alへの添加元素の種類と添加量を変えた点以外は、実施例12と同様にして追記型光記録媒体を作製し、実施例12と同じ評価項目について測定を行なった。結果を表4に示す。
なお、表4において、最適記録パワーと最適記録パワーで記録した部分の反射率の両方がHD DVD−R規格を満足する場合を○、最適記録パワーと最適記録パワーで記録した部分の反射率の少なくとも一方がHD DVD−R規格を満足しない場合を×とした。
更に、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後の、保存前のPRSNRに対するPRSNR低下量(アーカイバル特性)が1.0以下である場合を○、1.0を超える場合を×とした。
反射層材料を表5に示すものに変えた点以外は、実施例12と同様にして追記型光記録媒体を作製し、実施例12と同じ評価項目について測定を行なった。結果を表5に示す。
表5から分かるように。本発明のAl系反射層の場合に比べて反射率が高く、記録感度がHD DVD−R規格の上限値を超えた。
また、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後の、保存前のPRSNRに対するPRSNR低下量(アーカイバル特性)は10以上であり、再生信号にAgの硫化に起因すると思われるヒゲ状の欠陥が多数発生した。
反射層材料と記録層材料を表6に示すものに変えた点以外は、実施例12と同様にして追記型光記録媒体を作製し、実施例12と同じ評価項目について測定を行なった。結果を表6に示す。
表6から分かるように、反射率と記録感度は、HD DVD−R規格を満足し、また、80℃85%RHの環境下に300時間放置した後の、保存前のPRSNRに対するPRSNR低下量(アーカイバル特性)は1.0以下であることが確認できた。
即ち、本発明のAl反射層への添加元素の効果は、酸素を除く構成元素の主成分がビスマスであり且つ酸化ビスマスを含有する記録層に対して、更には、該記録層と本発明のAl系反射層が、ZnS−SiO2を主成分とする層を介して積層されている追記型光記録媒体に対して有効であることが証明された。
本発明に係る追記型光記録媒体の記録・再生信号の評価を実施するため、図2に示した層構成の追記型光記録媒体を、次のようにして作製した。
実施例1と同じ成形機と金型を用いて射出成形した厚さ1.1mmのポリカーボネート製基板1(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンH−4000)上に、スパッタ法で順次、AlTi(Ti:1重量%)からなる膜厚35nmの反射層5、Si3N4からなる膜厚13nmの上部保護層4、Bi2BOxからなる膜厚16nmの記録層3、ZnS−SiO2(80:20モル%)からなる膜厚10nmの下部保護層2を順に成膜した。
次に、下部保護層2上に、スピンコート法で紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製KAYARAD BRD−807)を塗布し厚さ0.1mmのカバー層9を形成した。
上記記録層材料の「x」は酸素欠損が生じていることを意味している。これらの記録層は、酸素以外の構成元素(Bi、B)の化学量論組成を満たす酸化物を用いてスパッタ法で作成されるが、通常の場合、酸素欠損を生じる。しかし、正確な酸素欠損量は測定できないため「x」と表現した。なお、酸素欠損の結果、記録層には、Bi、Bの単体を含むことになる。
これらの光記録媒体の記録・再生特性を調べるため、波長:405nm、NA:0.85のパルステック工業社製の光ディスク評価装置ODU−1000を用いて、Blu−ray Disc Recordable(BD−R)規格〔System Description Blu−ray Disc Recordable Format Version1.0〕に合わせた条件により、トラックに記録マークを形成し、それぞれ規格の1倍速での記録・再生信号の評価を行なった。
記録方法としては、図3、図4に示した記録ストラテジを採用し、予熱パワー(Pb)の予熱パルスを記録層に加えて予熱した後、記録パワー(Pw)を加えた。また、図4の場合には、更に冷却パワー(Pc)を加えた。これにより、予め記録層をその記録マーク形成開始温度未満の温度に予熱し、続いて、予熱された記録層を記録マーク形成開始温度以上の温度に加熱した。更に、図4の場合には、冷却パワーを加えることにより記録層の冷却を早めた。
記録ストラテジの波形とパラメータを図11に、各パワーの強度(mW)及び予熱パワーと記録パワーの比(Pb/Pw)を表7に示す(図中のTはチャネルクロック周期を示す)。冷却パワー(Pc)を加えない場合には、図11の右端のクーリングパルスが無い波形となる。なお、表には再生パワー(Pr)が記載されているが、図11は記録ストラテジの波形を示すものであるから、再生パワーは省略した。また、図11中の各パラメータの符号は、何れも規格で使われているものである。
記録・再生信号の評価における記録品質の指標としては、Blue−ray Disk Recordable規格に基づいたジッタを用いた。判定基準は、ジッタが6.5%以下のものを「○」、6.5%より大きいものを「×」とした。
評価結果を表7に示す。
なお、図1に示す層構成の追記型光記録媒体について記録・再生信号の評価を行う場合には、例えば図10に示すような記録ストラテジの波形とパラメータを採用し、記録品質の指標としては、HD DVD−R規格に基づいたPRSNRを用いる。
これに対し、比較例13、15のように予熱パワーが70%を超えると、ジッタが6.5%より大きな値となり、十分な記録品質を得ることができなかった。記録品質が悪化したのは、予熱パワーが強すぎて記録マークが広がりすぎてしまったことに起因すると考えられる。
また、比較例12、14においては、予熱パワーが再生パワーと同じであるため、記録品質が悪化した。予熱パワーが弱い場合は、記録パワーが強くても温度上昇が遅れ、記録マーク形状にバラツキが生じてしまうことに起因すると考えられる。
また、冷却工程を設ける場合には、冷却パワーを予熱パワーよりも弱くする必要があり、この条件を満たさないと、比較例16のように記録品質が悪化する。
図2の光記録媒体に対し、予熱パワーをPb1とPb2に分け、各パワーの強度(mW)を表8に示す値とした点以外は、実施例41と同様にして、記録・再生信号の評価を行った。記録ストラテジの波形とパラメータは図11と同じである。結果を表8に示す。
図2の光記録媒体に対し、図12に示す記録ストラテジの波形(記録パルスが単パルス)とパラメータを用い、各パワーの強度(mW)を表8に示す値とし、記録線速を規格の4倍速とした点以外は、実施例41と同様にして、記録・再生信号の評価を行った(図中のTはチャネルクロック周期を示す)。なお、表には再生パワー(Pr)が記載されているが、図12は記録ストラテジの波形を示すものであるから、再生パワーは省略してある。また、図12中の各パラメータの符号は何れも規格で使われているものである。
結果を表8に示すが、比較例17では、予熱パワーが記録パワーの70%を超えるため、記録品質が悪化している。
図2の光記録媒体に対し、図13に示す記録ストラテジの波形とパラメータを用い、各パワーの強度(mW)を表8に示す値とし、記録線速を規格の4倍速とした点以外は、実施例41と同様にして、記録・再生信号の評価を行った(図中のTはチャネルクロック周期を示す)。なお、表には再生パワー(Pr)が記載されているが、図13は記録ストラテジの波形を示すものであるから、再生パワーは省略してある。また、図12中の各パラメータの符号は何れも規格で使われているものである。また、図中のPmは、このストラテジでは第2の記録パワーに相当するが、既に図8〜図9において第2、第3記録パワーがあるため、第4記録パワーと呼ぶことにした。
結果を表8に示すが、比較例18では、予熱パワーが記録パワーの70%を超えるため、記録品質が悪化している。
2 下部保護層
3 記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 オーバーコート層
7 接着層
8 保護基板
9 カバー層
T チャネルクロック周期
Pw 記録パワー
Pw1 第1記録パワー
Pw2 第2記録パワー
Pw3 第3記録パワー
Pm 第4記録パワー
Pb 予熱パワー
Pb1 第1予熱パワー
Pb2 第2予熱パワー
Pr 再生パワー
Pc 冷却パワー
Claims (3)
- 基板上に、少なくとも、無機材料からなる記録層と反射層が形成されており、青色レーザ光の照射により記録層に非可逆的な変化を生じさせて情報の記録を行なうことができる追記型光記録媒体であって、記録層が酸化ビスマスを主成分としホウ素を含む材料からなり、反射層がAlに対して下記元素群(I)から選択された少なくとも1種の元素を合計で0.6〜7.0原子%含有する材料からなることを特徴とする追記型光記録媒体。
元素群(I):Ti、Cr、Pd、Sn、Cu、Mn、Si、Mg - 基板が案内溝を有し、該基板上に、少なくとも、下記(1)〜(4)の何れかの各層を順に有することを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
(1)記録層、上部保護層、反射層
(2)下部保護層、記録層、上部保護層、反射層
(3)反射層、上部保護層、記録層、カバー層
(4)反射層、上部保護層、記録層、下部保護層、カバー層 - 下部保護層及び/又は上部保護層が、ZnS−SiO 2 を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項2記載の追記型光記録媒体。
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