JP2008097794A - 片面2層光記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】システムを変更せず、光記録媒体の条件を調整することにより、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在していても、第2情報層の記録再生が問題なくでき、ランダム記録が可能な片面2層光記録媒体の提供。
【解決手段】光入射側から順に第1情報層、中間層、及び第2情報層を有する光記録媒体であって、開口数(NA)0.65の対物レンズを用いて、波長405nmのレーザー光で記録再生したときの、第2情報層の未記録状態におけるプッシュプル信号が0.22以上であり、かつ、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部に相対する第2情報層の記録再生位置における、トラッキングオフ時のプッシュプル信号振幅aと、前記境界部の影響により現れるフラグメントエラー信号振幅bとが、次の条件を満たすようにした光記録媒体。
|b/a|≦0.35
【選択図】図4

Description

デジタル放送が既に始まっており、5年後には地上波デジタルに完全に切り換わることにより、本格的に大容量のデジタル画像コンテンツを扱う環境が整ってきた。これらのコンテンツを記録するための、高速で大容量の記憶装置としては、ハードディスクがあり、既に1テラバイトの容量が実現できている。
一方、光記録媒体は、波長405nmのレーザーを用いて、容量25GB、50GBのBlu−rayディスクと記録装置が市場に登場している。映画のコンテンツが入ったROMディスクとその再生装置も間もなく登場する状況になっている。
波長405nmのレーザー光を用いたシステムは、Blu−ray規格とHD DVD規格があり、対物レンズのNAの違いにより、容量が異なる。NA 0.65を用いた場合、片面の容量が15GB、2層で30GBになり、Blu−rayディスクに比べて容量が少なくなる。しかし、ディスクが安価にできるという利点を生かし、HD DVD規格に準じたROMディスクとその再生装置が、ごく最近発売された。
HD DVDの記録型ディスクである1回記録型ディスク(HD DVD−R)が市場に登場し、書き換え型ディスク(HD DVD−RW)も市場に登場しようとしている。書き換え型ディスクは、レコーダーだけでなく、パソコンにより大容量画像ファイルを扱うための光記録媒体として使用されるため、媒体の内周から外周方向に連続的に記録していくシーケンシャル記録と小さな容量のファイルを幾つも記録する場合に適したランダム記録方式が可能である。シーケンシャル記録の方は一回記録型媒体に適用されている。ランダム記録は、記録された領域と記録されていない領域が混在する状態をとり得る。片面1層媒体は、両方式が問題なくできる。片面2層媒体は、DVD+RW、DVD−RW、BD−RE(Blu−ray Disk Rewritable)はランダム記録が可能になっている。
青色レーザーを用いて記録する光記録媒体については、特許文献1〜3がある。但し、これらの技術とランダム記録との関係については言及していない。
国際公開03/025922号パンフレット 特開2001−243655号公報 特許第3561711号公報
波長405nm、NA0.85の対物レンズを使用するBDシステムの場合、片面2層光記録媒体の二つの情報層を隔てる中間層の厚さは25μmである。この媒体では、光入射側の第1情報層が、記録領域(結晶相と非晶質相)と未記録領域(結晶相のみ)が混在した状態となったとき、記録領域と未記録領域の境界部に相対する奥側の第2情報層の部分でも、問題なく記録再生ができる。このことは、第2情報層において第1情報層の状態の影響が小さく、層間のクロストークが小さいことを意味する。
一方、中間層の厚さが25μm、波長405nmであるが、NA0.65の対物レンズを用いた場合には、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在した状態となったときに、該境界部に相対する第2情報層の部分でトラッキングしながら記録していくと、記録中にトラックを外れてしまうという不具合が起こる。このことは、このシステムと媒体条件では第2情報層において第1情報層の状態の影響が大きく、層間のクロストークが大きいことを意味している。
そこで、本発明では、システムを変更せず、光記録媒体の条件を調整することにより、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在していても、第2情報層の記録再生が問題なくでき、ランダム記録が可能な片面2層光記録媒体の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜9)の発明によって解決される。
1) 光入射側から順に第1情報層、中間層、及び第2情報層を有し、第1情報層が少なくとも第1基板と第1記録層を有し、第2情報層が少なくとも第2基板と第2記録層を有する光記録媒体であって、開口数(NA)0.65の対物レンズを用いて、波長405nmのレーザー光で記録再生したときの、第2情報層の未記録状態におけるプッシュプル信号が0.22以上であり、かつ、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部に相対する第2情報層の記録再生位置における、トラッキングオフ時のプッシュプル信号振幅aと、前記境界部の影響により現れるフラグメントエラー信号振幅bとが、次の条件を満たすようにしたことを特徴とする光記録媒体。
|b/a|≦0.35
2) 中間層の厚さeが、次の要件を満たすことを特徴とする1)記載の光記録媒体。
25μm≦e≦33μm
3) 第1情報層が第1基板、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、半透過反射層、光学調整層からなり、該光学調整層の膜厚が10〜25nmであることを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体。
4) 光学調整層の材料が、酸化チタンを主成分とすることを特徴とする3)記載の光記録媒体。
5) 第1情報層の光透過率が、第1記録層が結晶状態にある場合は、42〜50%であり、かつ非晶質相の光透過率Taと結晶相の光透過率Tcの差が、|Tc−Ta|≦6%であることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の光記録媒体。
6) 第1基板の溝深さが、22〜28nmであることを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の光記録媒体。
7) 第2基板の溝深さが、22〜31nmであることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光記録媒体。
8) 第1記録層及び第2記録層の構成元素が、Ag、In、Sb、Te、Geであることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の光記録媒体。
9) 第1情報層、第2情報層ともに、反射率が3〜6%であることを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の光記録媒体。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
波長405nm、NA0.65のシステムを用いたHD DVD規格に用いられる光記録媒体は、基板の厚さや媒体構成がDVDと同様であり、従来の設備を利用して生産することが可能で、BDに比べて安価に作製できるというコスト面のメリットから開発が進められてきた。容量は15GBであるが、2層にすれば30GBになるので、BDの片面1層25GBより大きい。従って、容量を考えると2層の媒体が期待される。
しかしながら、2層光記録媒体では、第1情報層と第2情報層を隔てる中間層の厚さが薄いため、層間クロストークの影響が無視できなくなってくる。また、第1情報層に記録した場合としない場合とで、第2情報層の記録感度に差が生じるという問題もある。
記録感度については、第1情報層に記録した場合の光透過率を高くすることと、記録領域と未記録領域での光透過率差を小さくすることにより、第2情報層の記録感度の差を改善することが可能である。しかし、第2情報層の記録感度の差が大きい場合、第1情報層の状態を判断しながら、第2情報層に記録しなければならないし、そうしないと第2情報層の特性が大きくばらついてしまう。記録感度の差を小さくするには、光透過率をより高くすればよいが、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在し、その境界部に相対する第2情報層の部分に記録する場合に、トラック外れの症状が現れるのは、記録特性のばらつき以前の問題であり、深刻である。
そこで検討した結果、本発明者等は、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在していてもランダム記録が可能な、片面2層光記録媒体の媒体特性の最適条件を見出した。
図1に片面2層光記録媒体の構成を示す。光入射側の第1情報層1、中間層2、奥側の第2情報層3からなる。更に、図2に第1情報層1、図3に第2情報層2の構成の一例を示す。第1情報層1は、溝付第1基板4、第1下部誘電体保護層11、第1記録層12、第1上部誘電体保護層13、第1界面層(硫化防止層)14、半透過反射層15、光学調整層16からなり、第2情報層3は、第2下部誘電体保護層17、第2記録層18、第2上部誘電体保護層19、第2界面層(硫化防止層)20、第2反射層21、溝付第2基板5からなる。
第1記録層、第2記録層には、Sbの含有量が70原子%前後のSbとTeの共晶組成の材料が好ましい。具体的にはAg−In−Ge−Sb−Teなどが挙げられる。より高速記録に向けては、Ge−In−Sbを主成分とし、Zn、Te、Gaなどの少なくとも一種を添加した系、Ge−Sn−Sbを主成分とし、Mn、Znの少なくとも一種を添加した系などが挙げられる。
第1記録層の膜厚は、5〜9nmの範囲内にあることが好ましい。5nmよりも薄いと光の透過量が高くなりすぎ、記録感度が低下するし、溶融に十分な温度まで達成しないため、アモルファス相を形成しにくくなり、繰り返し記録特性が悪くなる。また9nmよりも厚いと、第1情報層の光透過率が低くなりすぎて、第2情報層の記録感度が大きく低下する。但し、記録装置側のレーザーパワーが十分高ければ、この限りではない。
第2記録層の膜厚は、10〜20nmの範囲内にあることが好ましい。更に好ましくは10nm〜15nmである。10nmより薄いと、光吸収が小さくなり、記録感度の低下や反射率の低下により特性が劣化する。また、20nmより厚いとオーバーライト特性が劣化する。
半透過反射層の材料には、Ag又はAgに0.2〜5.0重量%のBi、Cu、In、Pdなどから選ばれる少なくとも1つの金属元素を含有させた合金が好ましい。
半透過反射層の膜厚は、7〜12nmの範囲内にあることが好ましい。7nmよりも薄いと、反射率が低下し、冷却速度が下がるためアモルファス相が形成しにくくなり、変調度が小さくなる。また、12nmよりも厚いと、光透過率が低くなりすぎて第2情報層の記録感度が大きく低下する。
第2反射層の材料には、半透過反射層と同じものを用いることができる。
第2反射層の膜厚は、100〜160nmの範囲内にあることが好ましい。100nmより薄いと、放熱性が低下し、マーク長が短くなり、また面積が小さくなり、特性が劣化する。160nmより厚いと記録感度が低下する。
各情報層に用いる誘電体保護層は、記録層の耐環境性を向上させ、透明で、かつ融点が記録層よりも高い材料であることが好ましい。片面1層の相変化型光記録媒体では、誘電体保護層の材料として、特にZnS−SiOがよく用いられるが、その場合の混合比はZnS:SiO=80:20(モル%)が最も好ましい。
しかしながら、片面2層光記録媒体では、片面1層光記録媒体に比べて半透過反射層の膜厚が薄いため、放熱性が悪くなり非結晶相が形成しにくくなる。そこで、第1上部誘電体保護層には、できるだけ熱伝導率の高い材料を用いた方が良く、記録線速や記録感度により、ZnS−SiOを用いるか、より放熱性の高い酸化物を用いるかを選択する。
放熱性の高い酸化物としてはZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrO、TaO、Ta、Nbなどの金属酸化物が良く、これらの材料から選択したZnOとAlの混合物のような複合酸化物を用いても良い。
第1上部誘電体保護層の膜厚は、10〜30nmの範囲内にあることが好ましい。10nmより薄いと記録感度が低下する。30nmより厚いと、オーバーライト特性が劣化し、反射率が低下する。
第2上部誘電体保護層の膜厚は、15〜30nmの範囲内にあることが好ましい。15nmより薄いと記録感度が低下する。30nmより厚いと、オーバーライト特性が劣化し、反射率が低下する。
第1下部誘電体保護層の膜厚は、40〜60nmの範囲内にあることが好ましい。40nmより薄いと、オーバーライト特性が劣化し、高温環境下の記録マーク劣化が大きくなる。60nmより厚いと、反射率が上昇し、記録感度が低下する。
第2下部誘電体保護層の膜厚は、40〜75nmの範囲内にあることが好ましい。40nmより薄いと、オーバーライト特性が劣化し、高温環境下の記録マーク劣化が大きくなる。75nmより厚いと、反射率が上昇し、記録感度が低下する。
半透過反射層又は第2反射層がAgを含み、上部誘電体保護層にSを含む材料を用いる場合には、AgとSが反応しないように硫化防止の役割を果たす界面層(硫化防止層)を設ける必要がある。材料は光吸収の小さい酸化物が好ましく、例えばNbを主成分とする酸化物が挙げられる。
硫化防止層の膜厚は2〜7nmの範囲内にあることが好ましい。2nmより薄いと、膜の不均一性により防止効果がなく、7nmより厚いと、反射率や記録感度が低下する。
光学調整層は、光が照射された第1記録層を急冷させるため、熱伝導率及び光透過率の高い材料が良い。更に屈折率が高いことが好ましい。その具体例としては、InSnOx、InZnOx、TiO、Bi、Li、WO、或いはこれらの混合物が挙げられるが、中でもTiOを90原子%以上含む材料は、屈折率が他の材料よりも高いため特に好ましい。TiOに添加する材料としては、ZnO、Biが挙げられる。
光学調整層の屈折率は、2.4以上が好ましく、2.6以上が更に好ましい。屈折率は高いほど良いが、実際には薄膜状態で得られる値は2.8が限界である。屈折率が2.4よりも低いと、第1情報層の光透過率が低くなり、第2情報層の記録感度が悪くなる。
光学調整層の膜厚は、10〜25nmの範囲内にあることが好ましい。10nmより薄いと、第1情報層の光透過率が低くなり、第2情報層を記録するのに必要なパワーが必要以上に大きくなってしまう。25nmより厚い場合も同様である。第1情報層の光透過率が低いと、第2情報層の反射率が低下するとともに、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部の影響が、第2情報層の該境界部に相対する半径位置におけるトラック信号に対して大きくなってくるため、光透過率は高いほど良い。第1情報層としての光透過率については後で述べる。
第1、第2基板は、記録及び再生のために照射する光を十分に透過させるものであることが必要であり、当該技術分野において従来知られているものが適用される。
即ち、ガラス、セラミックスあるいは樹脂等が用いられるが、特に成形性及びコストの点で樹脂が好適である。
樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性及びコストの点で優れるポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂が好ましい。
第1基板上の第1情報層が積層される面には、スパイラル状又は同心円状のグルーブ、案内溝などの凹凸パターンが形成されている。この凹凸パターンは、通常、射出成形法またはフォトポリマー法などによって成形される。
第1基板の厚さは、0.590〜0.610mmの範囲内にあることが好ましい。また、溝深さは22〜28nmの範囲内にあることが好ましい。
第2基板の厚さは、0.595〜0.605mmの範囲内にあることが好ましい。また、溝深さは、22〜31nmの範囲内にあることが好ましい。
溝深さが上記の範囲であれば、第1情報層、第2情報層とも3%以上の反射率を確保できる。また溝信号としてのプッシュプル信号を確保するためにも上記範囲が好ましい。第2基板の溝深さが22nmより浅くなると、反射率は大きくなるが、第2情報層のプッシュプル信号が0.22より小さくなる。プッシュプル信号が0.22より小さくなると、基本的に所定のトラック(溝)に安定してトラッキングがかからなくなり、小さいほどトラッキングが外れてしまう不具合が起きる。また、31nmよりも深くなると、プッシュプル信号は大きくなるが、反射率が3%未満になってしまう。本発明の目的である第1情報層の記録領域と未記録領域の境界を通ってきた光が、第2情報層にフォーカスされ、第1情報層の影響があってもトラッキングが安定するためには、第2情報層のプッシュプル信号が0.22以上である必要がある。
また、溝深さが深いとトラッキングは安定するが、第1情報層からの影響により局所的に現れるトラッキングエラー信号の影響も大きくなるので、プッシュプル信号はトラッキングが安定する下限0.22より高いことが要求される。
この条件において、第2情報層の部分におけるトラッキングオフ時のプッシュプル信号振幅aと、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部の影響により現れるトラッキングエラー信号振幅(フラグメントエラー信号振幅)bの比|b/a|は、エラーがない条件であるb=0(V)から、エラーがあっても|b/a|≦0.35を満たす範囲であれば、第2情報層で連続してトラックを送ったり記録再生してもトラック外れが起きないことが実験で確認できている。ここで、振幅a及び振幅bは後述する図5(ロ)と図6に示す振幅値である。なお、図6には上方向のフラグメントエラー信号を示したが、この信号は下向きにも出るので、上方向を+、下方向を−とすると、振幅bは負になることもある。そこで、比を|b/a|とした。
なお、プッシュプル信号とは、フォーカスオンした場合に特定トラックにトラッキングする前の複数のトラックを跨いでいる状態で得られる正弦波状の差信号の振幅(これをプッシュプル信号振幅という)を反射信号電圧で割った値を指す。また、プッシュプル信号は入射光が光学ヘッドを通して3ビームに分かれたうちのメインビームによって測定された信号である。狭いトラックピッチの場合、メインビーム以外にその両隣りのビーム(サブビーム)も使うことにより安定したトラッキングが可能になる。
中間層は、記録及び再生を行なうために照射される光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては成形性やコストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。射出成形法又はフォトポリマー法などによって成形される案内溝などの凹凸パターンが形成されていても良い。
中間層の厚さeは25〜33μmの範囲にあることが好ましい。25μmより薄いと、第2情報層にフォーカスした場合、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部を通過した光の影響がより大きくなり、フラグメントエラー信号振幅bの増大により、|b/a|の値が0.35を超えてしまうことがある。一方、33μmより厚くなると、第2情報層のプッシュプル信号そのものが収差により小さくなり、0.22よりも小さくなってしまうことがあるため、フラグメントエラー信号振幅bは減少するが、トラッキングが不安定になりやすい。
第1、第2情報層の反射率は3〜6%とすることが好ましい。より好ましくは、第1、第2情報層ともに反射率を3〜4%とする。3%よりも低いと、情報記録再生装置によるフォーカシングが入りにくい。また、相変化型光記録媒体では記録材料の光吸収が大きいため、第1、第2情報層をともに6%よりも高くすることは難しい。仮に、第1、第2情報層の何れかの反射率を高くすることができたとしても、反射率差が大きくなると、第1情報層から第2情報層へ、又は第2情報層から第1情報層へとフォーカシングを切り替える時に、フォーカス外れが起こる可能性が大きい。
本発明の片面2層光記録媒体は、波長405nm、NA0.65の対物レンズを用いたシステムで記録再生でき、かつ、第1、第2情報層ともに未記録状態であって、ユーザーが画像、文字情報をランダムに記録できること(ランダム記録)が要求される。そのためには、中間層の厚さを、25〜33μmとすることが好ましいとされている。
この条件下で起こる不具合として、図4に示すように、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在し、その境界部に相対する第2情報層の部分X、Yにおいて、記録時、再生時にトラック外れが起きる。これは、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部を通して第2情報層を再生する場合に、第1情報層のクロストークによる影響が、光ピックアップのPD(フォトダイオード)に乗るからである。
プッシュプル法(Diffrential Push Pull法)という入射ビームを3つのビームに分けて行なうトラッキング法において、溝に位置するメインのビームと隣接するランド部に位置するサイドビームが、上記境界部を通ると、PDの2分割された各信号の差信号は、通常、溝部にトラッキングが出来ていればゼロになる。即ち、30KHzのローパスフィルターを通してPD差信号出力をモニターすると、トラッキングが出来ていれば(トラックオン)、図5(イ)のような信号になり、トラッキングが外れていれば(トラックオフ)、図5(ロ)のようにトラッキングエラー信号になる(トラッキングがかかっていて、トラック1周分の信号)。しかし、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部に相対する第2情報層の部分をトラックキングした場合、図6のような信号になる。これは、第1情報層を通過した時、記録領域と未記録領域の境界部の情報がクロストークにより乗ってきて、オフセット信号(フラグメントエラー信号)が出てくることによる。
以上の片面2層記録媒体の第1情報層の光透過率に関して、第1情報層の非晶質状態の光透過率Ta(%)と結晶状態の光透過率Tc(%)が、|Tc−Ta|≦6(%)という要件を満たし、かつ、結晶状態の光透過率Tcが42〜50%であることが好ましい。Tcが42%未満の場合には、第2情報層の記録パワーとして、DVD Specifications for High Density Re−recordable Disc for Dual Layer/Part1:Physical Specifications Ver.2.0の規格値である13mWよりも高いパワーが必要になり記録感度の低下が大きい。一方、50%を超えることは条件的に不可能である。更に好ましいのは、43〜46%である。50%を超えると、第1情報層の初期化(結晶化)が不十分となり、反射率が高くならず不均一になってしまい、実質的に光透過率が低くなってしまうことがある。
また、|Tc−Ta|が6%を超えると、第1情報層を内周から外周まで全面にわたって記録した後で第2情報層を記録する場合の記録パワーPw1と、第1情報層が未記録の場合に第2情報層を記録する場合の記録パワーPw2に、1mW以上の差が生じてしまうことがある。このため、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在する状態で、記録パワーPw2で第2情報層を記録すると、特性の良い領域と、記録感度が悪い状態で記録された特性の劣化した領域が混在してしまうことになる。
なお、|Tc−Ta|は0であることが理想である。差がゼロになると、第1情報層と第2情報層の記録感度差がなくなるからである。実際には光透過率差は4〜6%である。TcとTaの大小は、記録材料、媒体構成によりTc>Taの場合も、Ta>Tcの場合も有り得る。
一般的には、Tc=42〜43%、Ta=37%〜38%であり、第1情報層の記録、未記録の各場合において、第2情報層の記録パワーは12mW、12.5mW程度であって、約0.5mWという比較的小さな差になっている。
本発明によれば、システムを変更せず、光記録媒体の条件を調整することにより、第1情報層に記録領域と未記録領域が混在していても、第2情報層の記録再生が問題なくでき、ランダム記録が可能な片面2層光記録媒体を提供できる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1〜6)
溝深さ25nm、溝幅0.2μm、トラックピッチ0.40μmの連続した蛇行溝が形成された、直径12cm、平均厚さ0.595mmのポリカーボネート樹脂からなる第1基板上に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚44nmの第1下部誘電体保護層、Ag0.2In3.5Sb69.8Te22Ge4.5からなる膜厚8.5nmの第1記録層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚15nmの第1上部誘電体保護層、TiOからなる膜厚4nmの第1界面層、Agからなる膜厚10nmの半透過反射層、TiOからなる膜厚15nmの光学調整層を順に、Arガス雰囲気中のマグネトロンスパッタリング法で成膜して第1情報層を作成した。
一方、表1の実施例1〜6の欄に示す溝深さで、溝幅0.2μm、トラックピッチ0.40μmの連続した蛇行溝が形成された、直径12cm、平均厚さ0.600mmのポリカーボネート樹脂からなる第2基板上に、AgBi(Bi0.5重量%)からなる膜厚140nmの第2反射層、Nb−ZrO(70:30モル%)からなる膜厚3nmの第2界面層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚21nmの第2上部誘電体保護層、Ag0.2In3.5Sb69.8Te22Ge4.5からなる膜厚15nmの第2記録層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚65nmの第2下部誘電体保護層を順に、Arガス雰囲気中のマグネトロンスパッタリング法で成膜して第2情報層を作成した。
この段階で分光光度計(Steag社製 ETA−Optik)を用いて、第1情報層のみの光透過率を半径位置40mmで測定したところ、結晶状態での光透過率は42.4%であった。測定は、第1情報層上に膜のない0.6mm厚のダミー基板を貼り合わせて行った。したがって、本発明で規定する第1情報層の光透過率はこの状態の媒体における数値を表す。また、初期化前のアモルファス状態の光透過率を測定したところ、37.6%であった。したがって、光透過率差は4.8%であった。
次に、光学調整層の表面に紫外線硬化樹脂(日本化薬社製カヤラッドDVD003M)を塗布し、第2下部誘電体保護層と貼り合わせたのち、第1基板側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する片面2層相変化型光ディスクを作成した。中間層の厚さは、分光光度計(Steag社製 ETA−Optik)を用いて、表1の実施例1〜6の欄に示すように変えた。これらの値は半径位置40mmで測定したものである。
次に、初期化専用装置を用いて、第1基板側からレーザー光を照射し、第2記録層、第1記録層の順に初期化処理を行なった。初期化は、半導体レーザー(発振波長810±10nm)から出射されるレーザー光を、NA=0.55の対物レンズで各記録層にそれぞれ集光することにより行なった。
第2記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光ディスクを回転させ、線速3m/s、送り量36μm/回転、半径位置(回転中心からの距離)22〜58mm、初期化パワー350mWとした。
第1記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光ディスクを回転させ、線速5m/s、送り量50μm/回転、半径位置(回転中心からの距離)23〜58mm、初期化パワー500mWとした。
上記各光ディスクの第1情報層に対し、記録パワー10mW、記録線速6.6m/s、最短マーク長0.2μmの条件で、ETM(8−12変調方式)変調方法により、半径位置40mmから41mmの範囲に、ランダムパターンを記録した。(使用テスター:パルステック工業株式会社製ODU−1000、NA:0.65、波長:405nm)
次に、第2情報層の半径位置39.5mmから40.5mmの範囲に第1情報層と同様にして記録した。記録前の第2情報層の溝信号特性であるプッシュプル信号特性、即ち、フォーカスした状態でのPD差信号の出力を30kHzローパスフィルターに通し、得られたプッシュプル信号振幅a、これを平均反射信号で割ったプッシュプル信号、フラグメントエラー信号振幅b、及び、比率|b/a|を表1に示した。
表1から分るように、|b/a|は何れも0.35以下であり、トラックを連続に送ること(連続トラック送り)及びトラックに連続記録すること(連続記録)ができた。
テスターで第1情報層及び第2情報層の反射率を評価したところ、何れも、3〜4%の範囲であった。
Figure 2008097794
(実施例7〜12)
第2基板の溝深さを24nmとし、中間層の厚さを表2の実施例7〜12の欄に示すように変えた点以外は、実施例1と同様にして片面2層相変化型光ディスクを作成し初期化した。中間層の厚さの調整法及び測定位置も実施例1と同じである。
これらの光ディスクの第1情報層に対し、実施例1と同様にして半径位置40mmから41mmの範囲に、ランダムパターンを記録した。
次に、第2情報層の半径位置39.5mmから40.5mmの範囲に第1情報層と同様にして記録した。記録前の第2情報層の溝信号特性であるプッシュプル信号特性、即ち、フォーカスした状態でのPD差信号の出力を30kHzローパスフィルターに通し、得られたプッシュプル信号振幅a、これを平均反射信号で割ったプッシュプル信号、フラグメントエラー信号振幅b、及び、比率|b/a|を表2に示した。
表2から分るように、|b/a|は何れも0.35以下であり、中間層の厚さが、25〜33μmの範囲ではスムーズに連続記録できたが、前記範囲を外れると、トラッッキングが外れるケースがあった。しかし、テスターでフォーカス条件及びトラッキング条件を調整することにより、トラック送りが可能となった。
Figure 2008097794
(実施例13〜15)
第2基板の溝深さを24nm、中間層の厚さを半径位置40mmで29nm、光学調整層の膜厚を26nm(実施例13)、8nm(実施例14)とした点以外は、実施例1と同様にして第1情報層を準備した。
また、第2基板の溝深さを24nm、中間層の厚さを半径位置40mmで29nm、半透過反射層の膜厚を5nmとした点以外は、実施例1と同様にして第1情報層を準備した(実施例15)。
これらの第1情報層について、第1記録層が結晶状態である時の光透過率を測定したところ、実施例13が39%、実施例14が41%、実施例15が50.5%になった。
上記各第1情報層と、実施例1と同じ第2情報層を用いて、実施例1と同様にして片面2層相変化型光ディスクを作成した。
これらの光ディスクに対し、実施例1と同様にして記録を行ったところ、実施例13、14では第2情報層の記録感度が低下し、記録パワー13mWでは、記録はできたがエラーレートが5×10−5に満たなかった。但し、記録パワーを15mW程度まで大きくすれば問題なく記録できた。
一方、実施例15においては、記録パワー8mWで第2情報層に問題なく記録できたが、第1情報層の反射率がトラック内で不均一となってしまった。
上記の結果から、第1情報層の光透過率は42%以上が好ましいことが分かる。
比較例1
中間層の厚さを半径位置40mmで20μmとなるようにした点以外は、実施例1と同様にして片面2層相変化型光ディスクを作成し初期化した。
この光ディスクに対し、実施例1と同様にして記録を行い、第2情報層のプッシュプル信号振幅a、フラグメントエラー信号振幅bを測定したところ、a=40.6mW、b=14.7mVとなり、|b/a|=0.362であった。
この条件の時に、第2情報層に記録する前に連続してトラックを送ったところ、トラック外れが起きた。何回か試みたが何れも外れてしまった。
片面2層光記録媒体の構成を示す図。 第1情報層の構成の一例を示す図。 第2情報層の構成の一例を示す図。 第1情報層に記録領域と未記録領域が混在し、その境界部に相対する第2情報層の部分X、Yを示す図。 プッシュプル法による第1情報層の境界部でのPD差信号出力をモニターした結果を示す図(同一トラックを常時モニター)。(イ)トラックオンの場合、(ロ)トラックオフの場合。 プッシュプル法で第1情報層の境界部に相対する第2情報層の部分をトラックキングした場合のPD差信号出力をモニターした結果を示す図(同一トラックを常時モニター)。
符号の説明
1 第1情報層
2 中間層
3 第2情報層
4 溝付第1基板
5 溝付第2基板
11 第1下部誘電体保護層
12 第1記録層
13 第1上部誘電体保護層
14 第1界面層
15 半透過反射層
16 光学調整層
17 第2下部誘電体保護層
18 第2記録層
19 第2上部誘電体保護層
20 第2界面層
21 第2反射層

Claims (9)

  1. 光入射側から順に第1情報層、中間層、及び第2情報層を有し、第1情報層が少なくとも第1基板と第1記録層を有し、第2情報層が少なくとも第2基板と第2記録層を有する光記録媒体であって、開口数(NA)0.65の対物レンズを用いて、波長405nmのレーザー光で記録再生したときの、第2情報層の未記録状態におけるプッシュプル信号が0.22以上であり、かつ、第1情報層の記録領域と未記録領域の境界部に相対する第2情報層の記録再生位置における、トラッキングオフ時のプッシュプル信号振幅aと、前記境界部の影響により現れるフラグメントエラー信号振幅bとが、次の条件を満たすようにしたことを特徴とする光記録媒体。
    |b/a|≦0.35
  2. 中間層の厚さeが、次の要件を満たすことを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
    25μm≦e≦33μm
  3. 第1情報層が第1基板、第1下部保護層、第1記録層、第1上部保護層、半透過反射層、光学調整層からなり、該光学調整層の膜厚が10〜25nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
  4. 光学調整層の材料が、酸化チタンを主成分とすることを特徴とする請求項3記載の光記録媒体。
  5. 第1情報層の光透過率が、第1記録層が結晶状態にある場合は、42〜50%であり、かつ非晶質相の光透過率Taと結晶相の光透過率Tcの差が、|Tc−Ta|≦6%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光記録媒体。
  6. 第1基板の溝深さが、22〜28nmであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光記録媒体。
  7. 第2基板の溝深さが、22〜31nmであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光記録媒体。
  8. 第1記録層及び第2記録層の構成元素が、Ag、In、Sb、Te、Geであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光記録媒体。
  9. 第1情報層、第2情報層ともに、反射率が3〜6%であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光記録媒体。
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