(本開示に係る一実施形態に至った経緯)
光学的に情報を記録する媒体の記録容量を高くする手段の一つとして、記録密度を高くすることが挙げられる。記録密度を高くする手段の一つとしては、最短マーク長を短くする方法が挙げられる。マーク長が短くなるほど周期信号はより高周波数になり、システムノイズの影響を受けてディスクのS/N(S:信号、N:雑音)が低下し、信号品質が悪化するという課題が生じる。良好な信号品質を得るためには、S/Nを向上させる必要がある。
S/Nを向上させるためには、1)Sを上げること、2)Nを下げること、3)Sを上げ、かつNを下げること、のいずれかが必要となる。この中で、本発明者らは1)のSを上げることによるS/Nの向上を検討した。
Sを上げるためには変調度を向上させる必要がある。変調度は下記の式で示される。式中、Runrecは未記録状態での反射率、Rrecは記録状態での反射率を示す。
変調度=(Runrec−Rrec)/Runrec
したがって変調度を向上させるためには、記録状態での反射率Rrecをより小さくすることが必要となる。
ここで反射率について詳細を説明する。反射率は各情報層の案内溝(ランド部、グルーブ部)の反射率であり、情報層が積層されない状態(即ち、単独層)で測定されるものをいう。実際にディスクを組み立てた状態にて、各情報層で測定される反射率は、実効反射率と呼ばれる。片面3層のアーカイバル・ディスクの場合、例えば、L0層の実効反射率は、再生レーザ光をディスクに入射させて、L2層とL1層を通過させてL0層に至った光が反射し、さらにL1層とL2層を通過して、光ピックアップに戻る光の量を求めることにより測定される。すなわち、L0層の実効反射率は、ピックアップを出た再生レーザパワー(100%)に対する戻ってきた再生レーザパワーの割合を求めることによって測定される。L1層の実効反射率は、L2層を通過した光が反射されて、L2層を通過して光ピックアップに戻る光の量を求めることにより測定される。L2層の実効反射率は、他の情報層を通過せずに入射する光が反射されて、他の層を通過することなく光ピックアップに戻る光の量を求めることにより測定される。
次に、第1世代の300GBのアーカイバル・ディスクで採用している記録膜について説明する。第1世代のアーカイバル・ディスクでは、記録膜として、W−Cu−Zn−Mn−O(O:酸素)の膜を採用している。各元素の機能を説明する。
記録膜中のW−Oは透明な酸化物で、レーザ光が記録膜に照射された際に、酸素を発生して記録膜を膨張させる機能を有する。また、Wを含むターゲットを用いて記録膜をDC(DC:DirectCurrent、直流)スパッタリングで形成する際に、ターゲット中のWは安定にDCスパッタリングを持続させる機能を有する。Wが無ければ、記録膜が膨張せず、記録マークの形成が困難になる。Wが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタリングにより記録膜を形成すると、Wは、記録膜中ではW−Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
記録膜中のCu−Oは光吸収性を有する酸化物であり、記録膜にレーザ光を吸収させる役割を担う。また、ターゲット中のCuはターゲットに導電性を付与し、記録膜をDCスパッタリングで形成する際に、安定にDCスパッタリングを持続させる機能を有する。Cuが無いターゲットを用いると、DCスパッタリングが非常に困難になる。Cuが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタリングにより記録膜を形成すると、Cuは、記録膜中ではCu−Oとなるか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物になる。
記録膜中のZn−Oは導電性を有する酸化物であり、これを含むターゲットを用いてDCスパッタリングにより記録膜を形成すると、DCスパッタリングの持続性がより安定する。また、Zn−Oの量を調整することで、記録膜の透過率や光吸収率を調整することができる。ただし、ターゲット中にZn−Oが含まれていなくてもDCスパッタリングは可能である。Zn−Oが含まれるターゲットを用いて、酸素を導入しながらスパッタリングにより記録膜を形成すると、Zn−Oは記録膜中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
記録膜中のMn−Oは光吸収性を有する酸化物であり、レーザ光が記録膜に照射された際に、酸素を発生して記録膜を膨張させる機能を有する。Mn−Oが多いほど変調度は大きくなり、信号品質は向上する。Mn−Oが無ければ、品質のよい記録マークは形成できない。Mn−Oが含まれるターゲットを用い、酸素を導入しながらスパッタリングにより記録膜を形成すると、Mn−Oは記録膜中でそのまま存在するか、あるいは他の元素と結合して少なくとも一部が複合酸化物となる。
Rrecをより小さくする方法として、信号を記録する際に(すなわち、信号マークを形成する際に)、酸素をより多く発生させる方法がある。レーザ光を照射して信号マークを形成すると、信号マークにおいて、酸素が気体(泡)として存在していることは、電子顕微鏡により確認されている。そこで、本発明者らは、酸素の泡をより発生させる手段として、酸化されやすい酸化物を記録膜に添加することを検討した。
酸化されやすい酸化物は、具体的には、Al、Mg、CaおよびCeの酸化物である。より詳細には、スパッタリング等により形成されるこれらの元素の酸化物の膜には、安定な酸化物とともに、不安定な酸化物が含まれやすく、この不安定な酸化物が酸化されやすい性質を有する。例えば、Ceの酸化物のうち、安定なものはCeO2である。CeO2を含む膜をスパッタリングで形成するときには、CeO2以外に、不安定なCe酸化物が含まれやすい。この不安定なCe酸化物は、Ceの酸化数がより大きい酸化物に変化しようとする性質を有する。本発明者らは、そのような酸化されやすい酸化物の性質を利用することを検討した。
これらの元素は酸化物の生成自由エネルギー〔kJ/mol〕が、比較的小さいという特性を持つ。この特性は、これらの元素が不安定な酸化物の状態にあるときに、他の酸化物の酸素を容易に奪えることを意味する。したがって、これらの元素の酸化物のいずれかを記録膜に添加することにより、他の酸化物は酸素が離脱しやすい状態となり、その記録膜にレーザ光を照射して記録を行うと、酸素の泡がより多く発生して記録膜が膨張し、Rrecが小さくなる。その結果、高い変調度を得ることができる。これらの元素は、従前のW−Cu−Zn−Mn−Oに添加してもよく、あるいは従前のW−Cu−Zn−Mn−OのZnの少なくとも一部と置き換えてもよい。
すなわち、本開示の第1の態様は、
レーザ光の照射により情報を記録または再生する情報記録媒体であって、
3以上の情報層を含み、少なくとも一つの前記情報層が、レーザ光照射面から見て遠い方から近い方に向かって、第1誘電体膜、記録膜、および第2誘電体膜をこの順に含み、
前記記録膜が少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含む、
情報記録媒体である。
本開示の第2の態様は、前記記録膜において、Wと、Cuと、Mnと、前記元素Mとが、下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
を満たす、第1の態様の情報記録媒体である。
本開示の第3の態様は、前記少なくとも一つの前記情報層において、前記第1誘電体膜および前記第2誘電体膜が、Zr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dの酸化物を含む、第1の態様の情報記録媒体である。
本開示の第4の態様は、
前記少なくとも一つの前記情報層が、第3誘電体膜をさらに含み、
前記レーザ光照射面から見て遠い方から近い方に向かって、前記第1誘電体膜、前記第3誘電体膜および前記記録膜がこの順に配置されており、
前記第3誘電体膜がNbの酸化物を含む、
第3の態様の情報記録媒体である。
本開示の第5の態様は、前記元素DがZrおよびInである第3の態様または第4の態様の情報記録媒体である。
本開示の第6の態様は、前記記録膜が、Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mをさらに含む、第1の態様の情報記録媒体である。
本開示の第7の態様は、前記記録膜が、Znをさらに含む第1の態様または第6の態様の情報記録媒体である。
本開示の第8の態様は、情報層を形成する工程を3以上含む情報記録媒体の製造方法であって、
少なくとも一つの前記情報層を形成する工程が、第1誘電体膜を形成する工程、記録膜を形成する工程、および第2誘電体膜を形成する工程を含み、
前記第1誘電体膜および前記第2誘電体膜を形成する工程がそれぞれ、Zr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dを含むターゲットを用いて、スパッタリングにより、元素D1の酸化物を含む膜を形成することを含み、
前記記録膜を形成する工程が、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含むターゲットを用いて、スパッタリングにより、少なくともWと、Cuと、Mnと、酸素とを含み、少なくとも一つの元素Mをさらに含む膜を形成することを含む、
情報記録媒体の製造方法である。
本開示の第9の態様は、前記記録膜を形成する工程で用いる前記ターゲットにおいて、W、Cu、Mnおよび前記元素Mが、下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
を満たす、第8の態様の情報記録媒体の製造方法である。
本開示の第10の態様は、前記記録膜を形成する工程で用いるターゲットが、Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mをさらに含む、第8の態様の情報記録媒体の製造方法である。
本開示の第11の態様は、前記記録膜を形成する工程で用いるターゲットが、Znをさらに含む、第8の態様または第10の態様の情報記録媒体の製造方法である。
本開示の第12の態様は、情報記録媒体の記録膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含み、W、Cu、Mnおよび前記元素Mが下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
を満たす、スパッタリングターゲットである。
本開示の第13の態様は、Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mをさらに含む、第12の態様のスパッタリングターゲットである。
本開示の第14の態様は、Znをさらに含む、第12の態様または第13の態様のスパッタリングターゲットである。
以下、本開示の実施の形態を図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例示的なものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
実施の形態1として、レーザ光6を用いて情報の記録及び再生を行う情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その光学的情報記録媒体の断面を示す。本実施の形態の情報記録媒体100は、情報を記録および再生する情報層を、基板1を介して両側にそれぞれ3層ずつ(合計6層)設けており、カバー層4側よりレーザ光6を照射し、各情報層での情報の記録および再生が可能である多層光学的情報記録媒体である。レーザ光6は波長405nm付近の青紫色域のレーザ光である。
情報記録媒体100は、A面と称する情報記録媒体101とB面と称する情報記録媒体102を貼り合わせた、両面の情報記録媒体である。二つの記録媒体101および102は、それらの基板1の裏面(情報層を有する面とは逆側)にて貼り合わせ層5により貼り合わされている。A面情報記録媒体101およびB面情報記録媒体102は各々、基板1上に中間分離層2および3などを介して、順次積層されたL0層10、L1層20およびL2層30を有し、さらに、L2層30に接して設けられたカバー層4を有する。L1層20およびL2層30は透過型の情報層である。
情報記録媒体100において、案内溝を基板1に形成した場合、本明細書においては、レーザ光6に近い側にある面を便宜的に「グルーブ」と呼び、レーザ光6から遠い側にある面を便宜的に「ランド」と呼ぶ。このグルーブとランドの両方に対応する位置で記録膜に、記録密度を高くして(すなわち、マーク長を短くして)ピットを形成すれば(ランド−グルーブ記録)、1情報層あたりの容量を例えば83.4GBにすることができる。情報記録媒体100においては6つの情報層で情報の記録および再生が可能であるから、情報記録媒体100は500GBの容量を有するものとして提供できる。案内溝は、後述するとおり、中間分離層2および3にも形成してよい。特に、L1層20およびL2層30において、ランド−グルーブ記録を実施する場合には、中間分離層20および30に案内溝を形成することが好ましい。
3つの情報層の実効反射率は、L0層10、L1層20およびL2層30の反射率と、L1層20およびL2層30の透過率を各々調整することにより制御できる。
本明細書中では、上記のとおり、3つの情報層を積層した状態で測った各情報層の反射率を、実効反射率と定義する。特に断りがない限り、「実効」と記載していなければ、積層しないで測った反射率を指す。また、Rgはグルーブ部の未記録状態での溝部反射率、Rlはランド部の未記録状態での溝部反射率を示す。
本実施の形態では、一例として、L0層10の実効Rgが2.9%、実効Rlが3.1%、L1層20の実効Rgが4.4%、実効Rlが4.8%、L2層30の実効Rgが5.7%、実効Rlが6.3%となるように設計した構成を説明する。
L2層30の透過率が72%、L1層20の透過率が71%である場合、L0層10はRgが7.5%、Rlが8.0%、L1層20はRgが7.0%、Rlが7.7%、L2層30はRgが5.7%、Rlが6.3%となるように設計すれば、前述の反射率を得ることができる。ここでの透過率は記録膜が未記録状態であるときのグルーブ部およびランド部での平均値を示している。
以下、基板1、中間分離層2、中間分離層3、カバー層4および貼り合わせ層5の機能、材料および厚さについて説明する。
基板1の材料として、例えばポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMA等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。基板1の記録膜12側の表面には、必要に応じてレーザ光を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。基板1は透明であることが好ましいが、半透明であってもよく、特に透明性は限定されない。また、基板1の形状は特に限定されず、円盤状であってもよい。基板1は、例えば、厚さが約0.5mmであり、直径が約120mmである円盤状のものである。
基板1のL0層10側の表面には、必要に応じてレーザ光6を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板1に形成した場合、前述したとおり、レーザ光10に近い側の溝(面)を「グルーブ」と呼び、レーザ光10から遠い側の溝(面)を「ランド」と呼ぶ。溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は、例えば10nm以上50nm以下であってよい。ランド・グルーブ記録方式を採用し、かつ高い記録密度でする場合、クロストークの影響を低減するために、溝深さはより深く設計してよい。但し、溝を深くすると反射率は下がる傾向にある。クロストークを低減するとともに、反射率を維持できるよう、溝深さは20nm以上40nm以下であることが好ましい。実施の形態1ではグルーブ−ランド間の距離(グルーブの幅方向の中心と、当該グルーブに隣接するランドの幅方向の中心との間の距離)は、約0.225μmであるが、これに限定されるものではない。
中間分離層2および3は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂等からなり、例えばアクリル系樹脂からなる。中間分離層2および3は、記録および再生に用いる波長λのレーザ光に対して光吸収が小さいものであると、レーザ光6を効率よくL0層10およびL1層20に到達させることができる。中間分離層2および3は、L0層10、L1層20およびL2層30のフォーカス位置を区別するために設けられるものである。したがって、中間分離層2および3の厚さは、例えば、対物レンズの開口数(NA)とレーザ光の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上としてよい。焦点の光強度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。また、L1層20における裏焦点の影響を防ぐため、中間分離層2と中間分離層3の厚さは異なる値としてよい。
中間分離層2および3において、レーザ光6の入射側に凹凸の案内溝が形成されていてもよい。中間分離層2および3に設ける案内溝の段差、およびグルーブ−ランド間の距離は、基板1に設けられる案内溝に関して説明したとおりである。実施の形態1では、溝深さ(グルーブ面とランド面の段差)は30nm、グルーブ−ランド間の距離は、約0.225μmとしているが、これらに限定されるものではない。
カバー層4は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)、もしくは遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等からなる。カバー層4は、使用するレーザ光に対して光吸収が小さいものであってよい。あるいは、カバー層4は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いて形成してよい。これらの材料を使用する場合は、カバー層4は、シート状や薄板状であってよい。シート状や薄板状のカバー層4は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を接着剤として、L2層30における第2誘電体膜33に貼り合わせることにより形成してよい。カバー層4の厚さは、例えば、NA=0.85で良好な記録および再生が可能な厚さである40μm〜80μm程度としてよく、特に、50μm〜65μm程度としてよい。
貼り合わせ層5は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂からなり、A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102を接着させている。貼り合わせ層5の透明性は特に限定されず、透明であっても、半透明であってもよい。貼り合わせ層5にはレーザ光6を遮光する膜を設けてもよい。貼り合わせ層5の厚さは5μm〜80μm程度であってよく、特に20μm〜50μm程度であってよい。
情報記録媒体100の厚さをBD規格の媒体と同等の厚さとする場合、中間分離層2および3ならびにカバー層4の厚さの総和は100μmに設定してよい。例えば、中間分離層2を約25μm厚、中間分離層3を約18μm厚、カバー層4を約57μm厚に設定してよい。
次に、L0層10の構成について説明する。L0層10は基板1の表面上に、少なくとも第1誘電体膜11、記録膜12、および第2誘電体膜13がこの順に積層されることにより形成されている。
第1誘電体膜11は、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働きや、記録マークの膨らみを調整して信号振幅を制御する働きを有する。また、第1誘電体膜11は、記録膜12への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜12中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。
レーザ光6が入射する面(カバー層4の表面)から最も遠い位置にあるL0層10は、その再生光量が最も小さくなる傾向にある。また、本発明者らの知見によれば、記録膜12の両側に位置する二つの誘電体膜11、13のうち、レーザ光6の入射面からより遠い側に位置する第1誘電体膜11が、再生光量により影響を及ぼすことがわかった。ここで、再生光量とは、実効反射率と再生パワーの積で決まる値である。再生光量が大きいほど、S/N比を向上させることができる。
そこで、本実施形態においては、第1誘電体膜11を、Zr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dの酸化物を含む膜としている。元素Dの酸化物は透明な膜を形成できる。Zr、In、Sn、およびSiの酸化物は、基板1および記録膜12との密着性が良い。第1誘電体膜11と記録膜12との密着性が良好であると、再生パワーを大きくしても、二つの膜の間で剥離(すなわち、劣化)が生じにくいので、再生パワーを大きくすることができる。
第1誘電体膜11は、元素Dの酸化物を一つ含んでよく(一元系であってよく)、その場合、例えば、ZrOx、InOx、SnOx、およびSiOx(xは任意の数字)のいずれか一つを選んでよい。また、これらの酸化物は、各々ZrO2、In2O3、SnO2、およびSiO2であると、良好な保存信頼性を情報記録媒体に付与することができる。
第1誘電体膜11は、例えばスパッタリングにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、第1誘電体膜11に含まれる酸化物は、スパッタリング中の酸素および/または金属の欠損もしくは過剰、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施形態および他の実施形態において、第1誘電体膜11に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損もしくは過剰、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。
第1誘電体膜11は、これらの酸化物から選択される2以上の酸化物の混合物から成ってよく、あるいは2以上の酸化物で形成された複合酸化物から成ってよい。
第1誘電体膜11が元素Dとして2つの金属元素を含む場合(二元系である場合)、その組成は、例えば、ZrO2−In2O3、ZrO2−SnO2、ZrO2−SiO2、In2O3−SnO2、In2O3−SiO2、SnO2−SiO2等であってよい。ここで、「−」は「混合」を意味する。したがって、例えば、ZrO2−In2O3はZrO2およびIn2O3の2つの酸化物が混合されていることを意味する。In2O3を含む二元系酸化物は導電性が高いために、当該二元系酸化物の膜は、直流(DC)スパッタリングにより形成することが可能であり、したがって高い成膜速度で形成できる。二元系の第1誘電体膜11は、例えば、ZrO2−In2O3、In2O3−SnO2であってよい。二元系の組成において、酸化物の混合比は特に限定されない。
第1誘電体膜11が元素Dとして3つの金属元素を含む場合(三元系である場合)、その組成は、例えば、ZrO2−In2O3−SnO2、ZrO2−In2O3−SiO2、ZrO2−SnO2−SiO2、In2O3−SnO2−SiO2等であってよい。In2O3を含む三元系酸化物は導電性が高いために、当該三元系酸化物の膜は、直流(DC)スパッタリングにより形成することが可能であり、したがって高い成膜速度で形成できる。三元系の第1誘電体膜11は、例えば、ZrO2−In2O3−SnO2、ZrO2−In2O3−SiO2であってよい。三元系の組成において、酸化物の混合比は特に限定されない。
第1誘電体膜11が元素Dとして4つの金属元素を含む場合(四元系である場合)、その組成は、例えば、ZrO2−In2O3−SnO2−SiO2等であってよい。四元系の組成において、酸化物の混合比は特に限定されない。
含まれる全酸化物を100mol%としたとき、例えば、ZrO2を含む膜は、ZrO2を25mol%以上含んでよく、特に30mol%以上含んでよい。それにより再生光によるマークの記録劣化を抑えることができる。ZrO2は70mol%以下含まれることが好ましい。ZrO2が70mol%を越えると、導電性が低下して、DCスパッタリングにより膜を形成することが困難になる。
また、ZrO2−SiO2−In2O3の系において、In2O3は系の導電性に寄与する。In2O3が多く含まれると系の導電性が高くなり、当該系をスパッタリングターゲットとするDCスパッタリングがより容易になる。In2O3の含有量は、例えば30mol%以上70mol%以下であってよく、特に35mol%以上60mol%以下であってよい。ZrO2−SiO2−In2O3の系では、ZrO2濃度(mol%)>SiO2濃度(mol%)であってよく、その場合、繰り返しの再生特性が向上する。
第1誘電体膜11が、例えば、ZrO2−SiO2−In2O3の系のものである場合、その組成は、例えば、(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40、(ZrO2)35(SiO2)25(In2O3)40、(ZrO2)40(SiO2)20(In2O3)40、(ZrO2)45(SiO2)15(In2O3)40、(ZrO2)50(SiO2)10(In2O3)40、(ZrO2)55(SiO2)5(In2O3)40、(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50、(ZrO2)30(SiO2)20(In2O3)50、(ZrO2)35(SiO2)15(In2O3)50、(ZrO2)40(SiO2)10(In2O3)50、(ZrO2)45(SiO2)5(In2O3)50等であってよい。これは、後述する第1誘電体膜21、31についても同様である。
第1誘電体膜11は、元素Dの酸化物を例えば、50mol%以上含んでよく、元素Dの酸化物から実質的に成っていてよい。ここで「実質的に」という用語は、第1誘電体膜11が例えばスパッタリングにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびスパッタリングターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は第1誘電体膜11に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、後述するその他の誘電体膜に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
第1誘電体膜11は、元素Dの酸化物以外の化合物を含んでいてよい。例えば、第1誘電体膜11は、ZnS、WO3、TiO2、Bi2O3、MoO3、Ta2O5、およびCeO2から選択される少なくとも一つの化合物を含んでよい。
第1誘電体膜11の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜12への水分の侵入を抑制できないことがある。40nmを超えると、L0層10の反射率が低下することがある。
第1誘電体膜11の組成は、例えば、X線マイクロアナライザー(XMA)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、またはラザフォード後方散乱分析法(RBS)で分析することができる。後述するその他の誘電体膜も同様にこれらの手法でその組成を分析することができる。
記録膜12は、Wと、Cuと、Mnと、酸素(O)とを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含む。記録膜12はWとCuとMnと酸素とを含むので、例えば、レーザ光6の照射によってOが分離し、また、O同士が結合して、記録マークとなる膨張部を形成する。この膨張部の形成は非可逆的な変化であるため、この記録膜12を備えたL0層は追記型のものとなる。
元素Mは、酸化物の生成自由エネルギー〔kJ/mol〕が小さいという特性を持つ。この特性は、他の酸化物の酸素を容易に奪えることを意味する。したがって、元素Mを記録膜に添加することにより、他の酸化物は酸素が離脱しやすい状態となり、その記録膜にレーザ光を照射して記録を行うと、酸素の泡がより多く発生して記録膜が膨張し、高い変調度を得ることができる。
CaおよびCeは、記録膜12において酸化物の形態で存在していてよい。CaおよびCeはそれぞれ、酸化数の異なる複数の酸化物を形成し得る。一般に酸素の多い酸化物は透明である。例えば、CaO(カルシウム2価)は無色である。Ce2O3(セリウム3価)は黄緑色であるが、CeO2(セリウム4価)は無色である。
記録膜12に含まれる、W、Cu、Mn、および元素Mを合わせて100原子%としたとき、各元素の割合は、下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
で表されてよい。W、Cu、Mn、および元素Mが上記式を満たす記録膜12は、L0層10の記録再生特性を良好にする。
式中、x(Wの割合)は、15以上60以下であることが好ましい。xがこの範囲内にあれば記録膜12を安定なDCスパッタリングにより形成でき、良好な記録再生特性を有するL0層が得られる。W、Cu、Mn、およびMの各単体ターゲットを同時にスパッタリングするマルチスパッタリングを実施する場合、x≧15であると、DCスパッタリングを良好に実施できる。W、Cu、Mn、およびMを混合した合金ターゲットを用いる場合、20≦x≦50であると、DCスパッタリングを良好に実施できる。
xが15未満であると、DCスパッタリングを実施する場合に、スパッタリングが不安定となることがあり、異常放電が生じやすくなる。xが60を超えると、L0層10の記録に大きなレーザパワーが必要となることがある。
yおよびzは0<y≦40、0<z≦40を満たす。yおよびzを40以下とすることにより、記録膜12の光吸収率を最適化し、再生光による信号劣化を防ぐことができる。
zが大きいほど、L0層の反射率はより高くなる傾向にある。例えば、20≦z≦40を満たす記録膜12は、L0層10の反射率をより向上させる。y=0および/またはz=0になると、大きな記録パワーが必要になる。
x+y+zは60以上95未満である。60≦x+y+z<95であると、L0層10の記録再生特性が良好なものとなる。また、60≦x+y+z<95であると、記録の際に酸素の泡がより多く発生して、記録膜12がより膨張し、変調度をより高くすることができる。x+y+zが60未満であると、元素Mの割合が多くなりすぎて、記録膜12の消衰係数が小さくなり、透過率が過度に高くなり、吸収率が小さくなることがある。その結果、L0層10の記録に大きなレーザパワーが必要になることがあり、また、高速記録も困難になることがある。また、x+y+zが95以上になると、Mの割合が少なくなって、記録膜12の変調度を高くすることができない。
記録膜12の元素Mは、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。本実施形態においては、特に、酸化物の生成エネルギー〔kJ/mol〕が小さいCeを用いてよい。これらの元素のいずれかが元素Mとして記録膜12に含まれると、記録膜12の変調度をより高くすることができる。
記録膜12はさらにAl、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mを含んでもよい。元素mもまた、その酸化物の生成エネルギー〔kJ/mol〕が比較的小さいものである。したがって、元素mを含ませることにより、記録の際に、酸素の泡の形成が促進され、より高い変調度を得ることができる。元素mの含有量は、記録膜12の屈折率および消衰係数を考慮して、W、Cu、Mn、元素Mおよび元素mの原子数を合わせて100としたときに、30原子%以下であってよい。
元素mは、記録膜12において酸化物の形態で存在していてよい。Al、MgおよびTaはそれぞれ、酸化数の異なる複数の酸化物を形成し得る。一般に酸素の多い酸化物は透明である。Al2O3(アルミニウム3価)、MgO(マグネシウム2価)、Ta2O5(タンタル5価)はいずれも透明である。
記録膜12は、元素Mに加えて、または元素Mと元素mに加えて、NbおよびMoから選ばれる少なくとも一つの元素をさらに含んでもよい。これらの元素は透明な酸化物を形成する。これらの元素は、記録膜12の屈折率および消衰係数を調整することができ、L0層10の反射率および透過率を調整することができる。NbおよびMoから選ばれる少なくとも一つの元素の含有量は、記録膜12の屈折率および消衰係数を考慮して、W、Cu、Mn、元素M、含まれる場合には元素m、ならびにNbおよびMoから選ばれる少なくとも一つの元素の原子数を合わせて100としたときに、30原子%以下であってよい。
記録膜12はさらにZnを含んでもよい。Znを含ませることにより、記録膜12をDCスパッタリングで形成する際にスパッタリングの安定性をさらに向上させることができる。そのため、スパッタパワーを上げたり、Arガスを少なくしたりしても、異常放電が発生しにくくなり、生産性が向上する。また、スパッタリング速度をより速くして、良好な生産性で記録膜12を形成することができる。Znの含有量は、記録膜12の屈折率や消衰係数に影響しないよう、W、Cu、Mn、元素M、含まれる場合には元素m、NbおよびMoから選ばれる少なくとも一つの元素、ならびにおよびZnの原子数を合わせて100としたときに、20原子%以下であってよい。
記録膜12の組成は、例えば、
W−Cu−Mn−Ca−O(O:酸素)、
W−Cu−Mn−Ca−Al−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ce−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ce−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mg−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mg−Ta−O、
W−Cu−Mn−Ca−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mg−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Mg−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Ce−Al−Mg−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mg−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Ta−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mg−Ta−Zn−O、
等であってよい。
あるいは、記録膜12の組成は、
W−Cu−Mn−Ca−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ce−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Nb−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Mo−O、
W−Cu−Mn−Ca−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mo−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Al−Mo−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ca−Mg−Mo−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mo−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Al−Mo−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Nb−Zn−O、
W−Cu−Mn−Ce−Mg−Mo−Zn−O、
等をであってよい。
記録膜12中のWは、透明性の高いWO3の形態で存在していてよい。記録膜12には、金属W、WO2、WO2とWO3の中間の酸化物(W18O49、W20O58、W50O148、W40O119など)、またはマグネリ相(WnO3nー1)が含まれていてもよい。
記録膜12中のCuは、CuOまたはCu2Oの形態で存在していてよい。記録膜12には、金属Cuが含まれていてもよい。
記録膜12の膜中のMnは、MnO、Mn3O4、Mn2O3、およびMnO2から選ばれる少なくとも一つの酸化物の形態で存在していてよい。記録膜12には、金属Mnが含まれていてもよい。
記録膜12中のCaは、無色のCaOの形態で存在していてよい。記録膜12には、CaO2が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Caが含まれていてもよい。特に、CaOは透明であるので、CaOは記録膜12の透明性が求められる場合に有利である。
記録膜12中のCeは、無色のCeO2の形態で存在していてよい。記録膜12には、Ce2O3が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Ceが含まれていてもよい。特に、CeO2は透明であるので、CeO2は記録膜12の透明性が求められる場合に有利である。
記録膜12中のAlは、無色のAl2O3の形態で存在していてよい。記録膜12には、AlO、またはAl2Oが含まれていてもよい。記録膜12には、金属Alが含まれていてもよい。特に、Al2O3は透明であるので、Al2O3は記録膜12の透明性が求められる場合に有利である。
記録膜12中のMgは、無色のMgOの形態で存在していてよい。記録膜12には、Mg2O3、またはMgO2が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Mgが含まれていてもよい。特に、MgOは透明であるので、MgOは記録膜12の透明性が求められる場合に有利である。
記録膜12中のTaは、無色のTa2O5の形態で存在していてよい。記録膜12には、TaO2が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Taが含まれていてもよい。特に、Ta2O5は透明であるので、Ta2O5は記録膜12の透明性が求められる場合に有利である。
記録膜12中のZnは、無色のZnOの形態で存在していてよい。金属Znが含まれていてもよい。
記録膜12中のNbは、無色のNb2O5またはNbOxの形態で存在していてよい。Nb2O5とNbOxが混在していてもよい。記録膜12には、NbO、NbO2、またはマグネリ相(Nb3n+1O8n−2)が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Nbが含まれていてもよい。
記録膜12中のMoは、無色のMoO3の形態で存在していてよい。記録膜12には、MoO2、MoO2とMoO3の中間の酸化物(Mo3O8、Mo4O11、Mo5O14、Mo8O23、Mo9O26、Mo17O47など)、またはマグネリ相(MonO3n−2)が含まれていてもよい。記録膜12には、金属Moが含まれていてもよい。
記録膜12中には、W、Cu、Mn、元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)、元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)、およびZnから選択される2以上の金属を含む複合酸化物が存在してもよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ca−Oである場合、記録膜12の系は、WO3−CuO−MnO2−CaO、WO3−CuO−Mn2O3−CaO、WO3−CuO−Mn3O4−CaO、WO3−CuO−MnO−CaO、WO3−Cu2O−MnO2−CaO、WO3−Cu2O−Mn2O3−CaO、WO3−Cu2O−Mn3O4−CaO、およびWO3−Cu2O−MnO−CaOのいずれかである可能性が高い。これらの系は、CaOよりも不安定であって酸化されやすい、Caの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Oである場合、記録膜12の系は、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2、WO3−CuO−MnO−CeO2、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2のいずれかである可能性が高い。これらの系は、CeO2よりも不安定であって酸化されやすい、Ceの酸化物をさらに含んでよい。
上記したいずれの系も、さらにAl、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素を含んでよく、その場合、AlはAl2O3、MgはMgO、TaはTa2O5の形態で含まれてよい。さらにZnを含んでもよく、その場合、ZnはZnOの形態で含まれてよい。
具体的には、記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ca−Al−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CaO−Al2O3、WO3−CuO−Mn2O3−CaO−Al2O3、WO3−CuO−Mn3O4−CaO−Al2O3、WO3−CuO−MnO−CaO−Al2O3、WO3−Cu2O−MnO2−CaO−Al2O3、WO3−Cu2O−Mn2O3−CaO−Al2O3、WO3−Cu2O−Mn3O4−CaO−Al2O3、およびWO3−Cu2O−MnO−CaO−Al2O3のいずれかであってよい。これらの系は、CaOおよびAl2O3よりも不安定であって酸化されやすい、CaおよびAlの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Mg−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CeO2−MgO、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2−MgO、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2−MgO、WO3−CuO−MnO−CeO2−MgO、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2−MgO、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2−MgO、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2−MgO、およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2−MgOのいずれかであってよい。これらの系は、CeO2およびMgOよりも不安定であって酸化されやすい、CeおよびMgの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ca−Ta−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CaO−Ta2O5、WO3−CuO−Mn2O3−CaO−Ta2O5、WO3−CuO−Mn3O4−CaO−Ta2O5、WO3−CuO−MnO−CaO−Ta2O5、WO3−Cu2O−MnO2−CaO−Ta2O5、WO3−Cu2O−Mn2O3−CaO−Ta2O5、WO3−Cu2O−Mn3O4−CaO−Ta2O5、およびWO3−Cu2O−MnO−CaO2−Ta2O5のいずれかであってよい。これらの系は、CaOおよびTa2O5よりも不安定であって酸化されやすい、CaおよびTaの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Al−Zn−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−CuO−MnO−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2−Al2O3−ZnO、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2−Al2O3−ZnO、およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2−Al2O3−ZnOのいずれかであってよい。これらの系は、CeO2およびAl2O3よりも不安定であって酸化されやすい、CeおよびAlの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Zn−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CeO2−ZnO、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2−ZnO、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2−ZnO、WO3−CuO−MnO−CeO2−ZnO、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2−ZnO、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2−ZnO、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2−ZnO、およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2−ZnOのいずれかであってよい。これらの系は、CeO2よりも不安定であって酸化されやすい、Ceの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Nb−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CeO2−Nb2O5、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2−Nb2O5、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2−Nb2O5、WO3−CuO−MnO−CeO2−Nb2O5、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2−Nb2O5、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2−Nb2O5、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2−Nb2O5、およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2−Nb2O5のいずれかであってよい。これらの系は、CeO2よりも不安定であって酸化されやすい、Ceの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ce−Mo−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CeO2−MoO3、WO3−CuO−Mn2O3−CeO2−MoO3、WO3−CuO−Mn3O4−CeO2−MoO3、WO3−CuO−MnO−CeO2−MoO3、WO3−Cu2O−MnO2−CeO2−MoO3、WO3−Cu2O−Mn2O3−CeO2−MoO3、WO3−Cu2O−Mn3O4−CeO2−MoO3、およびWO3−Cu2O−MnO−CeO2−MoO3のいずれかであってよい。これらの系は、CeO2よりも不安定であって酸化されやすい、Ceの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12の組成が、例えば、W−Cu−Mn−Ca−Mg−Nb−Oである場合、記録膜12の系は、例えば、WO3−CuO−MnO2−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−CuO−Mn2O3−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−CuO−Mn3O4−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−CuO−MnO−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−Cu2O−MnO2−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−Cu2O−Mn2O3−CaO−MgO−Nb2O5、WO3−Cu2O−Mn3O4−CaO−MgO−Nb2O5、およびWO3−Cu2O−MnO−CaO−MgO−Nb2O5のいずれかであってよい。Nbの酸化物が記録膜12に含まれると、L0層の反射率を高めることができる。これらの系は、CeO2およびMgOよりも不安定であって酸化されやすい、Ceの酸化物およびMgの酸化物をさらに含んでよい。
記録膜12に含まれる上記の酸化物は、必ずしも化学量論組成になっていなくてもよく、酸素が一部欠損していてもよく、あるいは過剰になっていてもよい。あるいはまた、それらの酸化物が混合している系であってよい。
このように、記録膜12が複数の酸化物を含み、酸素以外の元素であるW、Cu、Mn、およびMの組成が、WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)で表され、式中、x、yおよびzが、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ、60≦x+y+z<95を満たせば、大容量(例えば、1ディスクあたり500GB)の情報の記録再生に必要なS/Nを確保できる変調度が得られる。
記録膜12に含まれる酸素の割合は、W、Cu、Mn、元素M、および酸素、ならびに含まれる場合には元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)、Nb、Mo、およびZnの原子数の合計を100%としたときに、例えば、60原子%以上80原子%以下であってよく、特に66原子%以上76原子%以下であってよい。酸素の割合が60原子%未満であると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。前述のとおり、再生光量とは、実効反射率と再生パワーの積で決まる値である。酸素の割合が80原子%を超えると、記録感度が悪くなりすぎて、記録に大きなパワーが必要になり、高速記録も困難になる。
記録膜12は、W、Cu、Mn、元素M、および酸素、ならびに含まれる場合には元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)、Nb、MoおよびZnから選択される少なくとも一つの元素から実質的になっていてよい。ここで、「実質的に」という用語は、記録膜12が例えばスパッタリングにより形成される場合には、スパッタ雰囲気に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分、有機物(C)、空気、スパッタ室に配置された冶具およびスパッタリングターゲットに含まれる不純物に由来する他の元素が不可避に含まれる場合があることを考慮して使用されている。これら不可避の成分は記録膜12に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよい。これは、後述する他の記録膜に関して、「実質的に」という用語を用いる場合に同様に適用される。
記録膜12の厚さは、例えば、15nm以上60nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。記録膜12の厚さが15nm未満であると、記録膜12が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないことがあり、その結果、チャンネルビットエラーレートが悪化する。チャンネルビットエラーレートとは、記録した全部のピット又はマークの数に対する、再生されないピット又はマークの数の割合を指す。記録膜12の厚さが60nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜12の厚さが60nmを超えると、記録膜12の成膜に要する時間(スパッタリング時間)が長くなり生産性が低下することがある。
記録膜12の厚さは、例えば、段差計、エリプソメータ、および電子顕微鏡などで、ナノメートル単位で厳密に計測することができる。
記録膜12の組成は、例えば、X線マイクロアナライザー(XMA)、EDS(エネルギー分散型X線分析)、またはラザフォード後方散乱分析法(RBS)で分析することができる。
第2誘電体膜13は第1誘電体膜11と同様に、光学的な位相差を調節して信号振幅を制御する働き、および記録ピットの膨らみを制御して信号振幅を制御する働きを有する。また、第2誘電体膜13は、中間分離層2側からの記録膜12への水分の侵入を抑制する働き、および記録膜12中の酸素が外部へ逃避するのを抑制する働きを有する。第2誘電体膜13はまた、中間分離層2から記録膜12への有機物の混入を抑制したり、L0層10と中間分離層2との密着性を確保したりする機能も併せ持つ。
第2誘電体膜13は、第1誘電体膜11と同様に元素Dの酸化物を含むものであってよく、他の組成のものであってよい。前述のとおり、第2誘電体膜13の組成がL0層10の再生光量に及ぼす影響は、第1誘電体膜11のそれよりも小さいため、第2誘電体膜13の組成は特に限定されない。
第2誘電体膜13は、元素Dの酸化物を一つ含んでよく(一元系であってよく)、その場合、例えば、ZrO2、In2O3、SnO2、およびSiO2のいずれかを含んでよい。これらは透明な酸化物であり、また、中間分離層2と良好に密着する。
第2誘電体膜13は、例えばスパッタリングにより形成されるナノメータオーダの薄膜である。そのため、第2誘電体膜13に含まれる酸化物は、スパッタリング中の酸素および/または金属の欠損もしくは過剰、ならびに不可避的な不純物の混入により、厳密に言えば、化学量論組成とならないことがある。この理由により、本実施形態および他の実施形態において、第2誘電体膜13に含まれる酸化物は必ずしも化学量論組成のものでなくてもよい。また、前述のとおり、本明細書において化学量論組成で表された材料には、酸素および/または金属の欠損もしくは過剰、ならびに不純物の混入等により、厳密に言えば化学量論組成のものではないものも含まれることとする。
第2誘電体膜13は、これらの酸化物から選択される2以上の酸化物の混合物から成ってよく、あるいは2以上の酸化物で形成された複合酸化物から成ってよい。
第2誘電体膜13が元素Dとして2つの金属元素を含む場合(二元系である場合)の組成例、元素Dとして3つの金属元素を含む場合(三元系である場合)の組成例、元素Dとして4つの金属元素を含む場合(四元系である場合)の組成例は、先に第1誘電体膜11に関連して説明したとおりである。
第2誘電体膜13の厚さは、例えば、5nm以上40nm以下であってよい。厚さが5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜12への水分の侵入を抑制できないことがある。厚さが40nmより大きいと、L0層10の反射率が下がる。
第1誘電体膜11、記録膜12、および第2誘電体13の具体的な厚さはマトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により設計できる。各膜の厚さを調整することにより、記録膜12が未記録の場合と記録の場合の各反射率、および記録部−未記録部間での反射光の位相差を調整して、再生信号の信号品質を最適化することが可能である。
次にL1層20の構成について説明する。L1層20は、中間分離層2の表面上に、少なくとも第1誘電体膜21、記録膜22、および第2誘電体膜23がこの順に積層されることにより形成されている。
第1誘電体膜21の機能は、前述したL0層10の第1誘電体膜11のそれと同様である。また、第1誘電体膜21は、中間分離層2とL1層20とを密着させる役割も有する。L1層20は、L0層10よりもレーザ光6の入射面に近い側にあるため、L0層10よりも高い実効反射率を確保しやすい。したがって、第1誘電体膜21は、反射率以外の特性を考慮した上で、第1誘電体膜11または第2誘電体膜13に関連して例示した材料を用いて形成してよい。あるいは、第1誘電体膜21は、他の材料、例えば、第1誘電体膜11で用いる材料よりも屈折率の小さい材料を用いて形成してよい。
第1誘電体膜21の組成は、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−In2O3、ZrO2−SnO2、In2O3−SiO2、In2O3−SnO2、SnO2−SiO2、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−SiO2−SnO2、ZrO2−In2O3−SnO2、In2O3−SnO2−SiO2等であってよい。ZrO2−SiO2−In2O3、およびIn2O3−SnO2の膜は、DCスパッタリングにより形成可能である。
第1誘電体膜21の厚さは、10nm以上50nm以下であってよい。10nm未満であると、中間分離層2との密着性が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。50nmを超えると、L1層20の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜21の厚さが50nmを超えると、第1誘電体膜21の成膜に要する時間(スパッタリング時間)が長くなり生産性が低下することがある。
記録膜22の機能は、前述したL0層10の記録膜12のそれと同様である。上記のとおり、L1層20はL0層10よりも概して高い実効反射率を与えやすいので、記録膜22の組成は、反射率以外の特性を考慮して限定してよい。記録膜22は、記録膜12に関連して例示した材料と同様の材料を用いて形成してよい。記録膜22は、元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)およびZnの少なくとも一つをさらに含んでよい。記録膜22は、NbまたはMoをさらに含んでよい。
より具体的には、記録膜22は、記録膜12と同様に、Wと、Cuと、Mnと、元素M(元素MはCaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)と、酸素とを含み、W、Cu、Mn、およびMの組成が、例えば、WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ、60≦x+y+z<95)で表される材料で形成してよい。その場合、L1層20の変調度を向上させることができる。
L1層20はL0層10よりもレーザ光6に近い位置にあるので、その実効反射率を高くしやすい。そのため、記録膜22は、高い透過率を確保することを優先して、L0層10の記録膜12よりもzの値(Mn量)が小さい材料で形成してよい。上記式において、zは例えば10≦z≦35を満たしてよい。
記録膜22に含まれる酸素の割合は、金属元素と酸素の原子数の合計を100%としたときに、例えば60原子%以上80原子%以下であってよく、特に67原子%以上77原子%以下であってよい。
記録膜22の膜厚は、15nm以上60nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜22が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないので、チャンネルビットエラーレートが悪化する。60nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜22の厚さが60nmを超えると、記録膜22の成膜に要する時間(スパッタリング時間)が長くなり生産性が低下することがある。
第2誘電体膜23の機能は、前述したL0層10の第2誘電体膜13のそれと同様である。第2誘電体膜23の組成は、特に限定されない。これは、L1層20は、L0層10よりもレーザ光6の入射面に近い側にあるため、第2誘電体膜21の組成を特定のものとしなくても、その実効反射率を確保しやすいことによる。第1誘電体21と同じ組成の材料を用いてもよい。第2誘電体膜23は、第1誘電体膜11または第2誘電体膜13に関連して例示した材料を用いて形成することができる。あるいは、第2誘電体膜23は、他の材料、例えば第1誘電体膜11で用いる材料よりも屈折率の小さい材料を用いて形成してよい。
第2誘電体膜23の組成は、例えば、ZrO2−SiO2、ZrO2−In2O3、ZrO2−SnO2、In2O3−SiO2、In2O3−SnO2、SnO2−SiO2、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−SiO2−SnO2、ZrO2−In2O3−SnO2、In2O3−SnO2−SiO2等であってよい。ZrO2−SiO2−In2O3、およびIn2O3−SnO2の膜は、DCスパッタリングにより形成可能である。
第2誘電体膜23の厚さは、5nm以上40nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下して、記録膜22への水分の侵入を抑制できなくなることがあり、40nmを超えると、L1層20の反射率が下がることがある。
次にL2層30の構成について説明する。L2層30は、中間分離層3の表面上に、少なくとも第1誘電体膜31、記録膜32、および第2誘電体膜33がこの順に積層されることにより形成されている。
L2層30の構成は基本的にはL1層20と同様である。
第1誘電体膜31は、L1層20の第1誘電体膜21と同様の機能を有し、したがって、L0層10の第1誘電体膜11と同様の機能を有する。また、第1誘電体膜31は、中間分離層3とL2層30とを密着させる役割をも有する。また、第1誘電体膜31は、第1誘電体膜21と同様、その組成は特に限定されない。L2層30は最も外側に位置するため、第1誘電体膜31の組成を特定のものとしなくても、L2層30の実効反射率を確保しやすいことによる。したがって、第1誘電体膜31は、L0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜12に関連して例示した材料を用いて形成することができ、あるいは他の材料を用いて形成してよい。第1誘電体膜31は、例えば、第1誘電体膜11で用いる材料よりも屈折率の小さい材料で形成してよい。
第1誘電体膜31の厚さは、10nm以上50nm以下であってよい。10nm未満であると、中間分離層3との密着性が低下して、記録膜32への水分の侵入を抑制する保護機能が低下することがある。50nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。また、第1誘電体膜31の厚さが50nmを超えると、第1誘電体膜31の成膜に要する時間(スパッタリング時間)が長くなり生産性が低下することがある。
記録膜32の機能は、L1層20の記録膜22のそれと同様であり、したがって、L0層10の記録膜12のそれと同様である。したがって、記録膜32は、記録膜22と同様、L0層10の記録膜12に関連して例示した材料を用いて形成することができる。より具体的には、記録膜32は、記録膜12と同様に、Wと、Cuと、Mnと、元素Mと、酸素とを含み、W、Cu、Mn、およびMの組成が、例えば、WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ、60≦x+y+z<95)で表される材料で形成してよい。記録膜32は元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)およびZnの少なくとも一つをさらに含んでよい。記録膜32はさらにNbまたはMoを含んでよい。その場合、L2層30の透過率を高めることができ、L0層10の実効反射率を向上させる、すなわちL0層10の再生光量を大きくすることができる。
L2層30はレーザ光6に最も近い位置にあるので、その実効反射率を大きくしやすい。よって、記録膜32は、高い透過率を確保することを優先して、L0層10の記録膜12およびL1層20の記録膜22よりもzの値(Mn量)が小さい材料で形成してよい。上記式において、zは例えば5≦z≦35を満たしてよい。
記録膜32に含まれる酸素の割合は、記録膜22のそれと同様、金属元素と酸素の原子数の合計を100%としたときに、例えば60原子%以上80原子%以下であってよく、特に65原子%以上75下原子%以下であってよい。
記録膜32の膜厚は、15nm以上60nm以下としてよく、特に25nm以上50nm以下としてよい。15nmより薄いと記録膜32が十分に膨張せず、良好な記録マークが形成されないので、チャンネルビットエラーレートが悪化する。60nmを超えると、記録感度が良くなって記録パワーが小さくなり、その分再生パワーが低下して、再生光量が小さくなることがある。また、記録膜32の厚さが60nmを超えると、記録膜32の成膜に要する時間(スパッタリング時間)が長くなり生産性が低下することがある。
第2誘電体膜33は、L1層20の第2誘電体膜23と同様の機能を有し、したがって、L0層10の第2誘電体膜13と同様の機能を有する。また、第2誘電体膜33は、第2誘電体膜23と同様、その組成は特に限定されない。L2層30は最も外側に位置するため、第2誘電体膜33の組成を特定のものとしなくても、その実効反射率を確保しやすいからである。したがって、第2誘電体膜33は、L0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜12に関連して例示した材料を用いて形成することができ、あるいは他の材料を用いて形成してよい。第2誘電体膜33は、例えば、第1誘電体膜11で用いる材料よりも屈折率の小さい材料で形成してよい。
第2誘電体膜33の厚さは、5nm以上40nm以下であってよい。5nm未満であると、保護機能が低下し、記録膜32への水分の侵入を抑制できないことがある。40nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。
ここで情報記録媒体100の実効反射率について説明する。実施の形態1ではL0層10の実効Rgが2.9%、実効Rlが3.1%、L1層20の実効Rgが4.4%、実効Rlが4.8%、L2層30の実効Rgが5.7%、実効Rlが6.3%とした。L0層10の性能をさらに向上させるためには、L0層10の反射率をより高くするか、あるいはL1層20およびL2層30の反射率をより低くしてよい。このような設計とすることによって、記録または再生時における迷光の影響を低減することができる。迷光とは、記録または再生時において、再生の対象でない情報層で反射した光のことを指し、迷光が光検出器に入射すると、外乱成分となり、安定した信号を得られなくなる。
第1誘電体膜11、21、31、記録膜12、22、32、および第2誘電体膜13、23,33は、これらを構成する酸化物を混合したスパッタリングターゲットを用いて、RF(RF:radiofrequency)スパッタリングまたはDCスパッタリングにより形成してよい。あるいは、これらの膜は、酸素を含まない合金スパッタリングターゲットを用いて、酸素導入下でのRFスパッタリング、または酸素導入下でのDCスパッタリングにより形成してよい。あるいはまた、各酸化物のスパッタリングターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、同時にRFスパッタリングまたはDCスパッタリングに付す方法で、これらの膜を形成してよい(マルチスパッタリング法)。RFスパッタリングとDCスパッタリングは同時に実施してもよい。さらに別の膜形成方法としては、金属の単体もしくは合金からなるスパッタリングターゲット、または酸化物のスパッタリングターゲットをそれぞれ個別の電源に取り付けて、必要に応じて酸素を導入しながら同時にRFスパッタリングする方法や、同時にDCスパッタリングする方法が挙げられる。あるいは、金属と酸化物を混合してなるスパッタリングターゲットを用い、酸素を導入しながら、RFスパッタリングまたはDCスパッタリングする方法で、これらの膜を形成してよい。
実施の形態1の変形例においては、本実施の形態に示す情報記録媒体100において、いずれかの情報層の記録膜が、Te−O−PdまたはGe−Bi−O等の他の記録膜、すなわちW−O系記録膜以外の記録膜であってもよい。あるいは、他の変形例においては、必要に応じて、反射膜および上記において例示していない材料から成る誘電体膜を設けてもよい。本開示に係る技術の効果は、これらの変形例においても達成される。
さらに別の変形例においては、特定組成の第1誘電体膜と特定組成の記録膜との組み合わせが、L0層10に加えて又はL0層10に代えて、別の情報層で実現されていてよい。特定組成の第1誘電体膜と特定組成の記録膜との組み合わせは、再生光量が低下しやすいL0層10の再生光量を向上させるのに効果的であるが、他の情報層で用いられる場合には当該他の情報層の再生光量を向上させることができる。
また、特定組成の第1誘電体膜と特定組成の記録膜との組み合わせをL1層20またはL2層30に用いると、L1層20またはL2層30の透過率を上げることができるので、L0層10に到達するレーザ光6の量が増え、L0層10の実効反射率を向上させることができ、ひいてはL0層10の再生光量を向上させることができる。すなわち、L1層20およびL2層30に特定組成の第1誘電体膜と特定組成の記録膜を適用することによっても、L0層10に記録した短いマークのS/N比を高くすることができる。
情報記録媒体100の記録方式は、線速度一定のConstantLinearVelocity(CLV)、回転数一定のConstantAngularVelocity(CAV)、ZonedCLVおよびZonedCAVのいずれであってよい。使用できるデータビット長は51.3nmである。
本実施の形態の情報記録媒体100への情報の記録および再生は、対物レンズの開口数NAが0.91である光学系で実施してよく、あるいはNA>1の光学系で実施してよい。光学系としてはSolid Immersion Lens(SIL)、またはSolid Immersion Mirror(SIM)を使用してもよい。この場合、中間分離層2および3、ならびにカバー層4は5μm以下の厚さとしてよい。あるいは、近接場光を利用した光学系を用いてもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2として、本開示の情報記録媒体の別の一例を説明する。実施の形態2として、レーザ光を用いて情報の記録及び再生を行う情報記録媒体の一例を説明する。図2に、その光学的情報記録媒体の断面を示す。本実施の形態の情報記録媒体200は、以下の3点において実施の形態1と異なる。第1の相違点は、L0層10において、第3誘電体膜14が、第1誘電体膜11と記録膜12との間に設けられていることである。第2の相違点は、L1層20において、第3誘電体膜24が、第1誘電体膜21と記録膜22との間に設けられていることである。第3の相違点は、L2層30において、第3誘電体膜34が、第1誘電体膜31と記録膜32との間に設けられていることである。
L0層10は、レーザ光6照射側から見て遠い方から、第1誘電体膜11、第3誘電体膜14、記録膜12、および第2誘電体膜13をこの順に含んでよい。
第3誘電体膜14は、L0層10の反射率向上に寄与し、再生光量を増加させることができる。第3誘電体膜14の屈折率は高いことが好ましく、2.2以上であることが好ましい。第3誘電体膜14は、Nbの酸化物を含んでよい。第3誘電体膜14において、Nbは、特にNb2O5の形態で存在してよい。Nbの酸化物は透明な酸化物であって、波長405nmにおける屈折率が高い。より具体的には、分光エリプソメータを用いて実測したNb2O5の屈折率値は、波長405nmにおいて、2.42である。また、Nbの酸化物を含むことにより、高い成膜レートで、第3誘電体膜14を形成することができる。
第3誘電体膜14の導電性がより高くなるよう、NbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。
また、第3誘電体膜14は、その比抵抗値が1Ω・cm以下であることが好ましい。これは後述する第3誘電体膜24、34についても同様である。
第3誘電体膜14は、Nbの酸化物を例えば、50mol%以上含んでよく、Nbの酸化物から実質的に成っていてよい。「実質的に」という用語の意味は、実施の形態1において第1誘電体膜11に関連して説明したとおりである。
第3誘電体膜14は、さらにZrの酸化物を含んでよい。Zrの酸化物は、例えばZrO2であるが、必ずしも化学量論組成のものでなくてよい。Zrの酸化物は、第3誘電体膜14の硬さや第1誘電体膜11との密着性等を調整することができる。Zrの酸化物が含まれる場合にも、第3誘電体膜14は、Nbの酸化物は50mol%以上含んでよい。Nbの酸化物の割合が小さすぎると、屈折率が下がり、L0層10の反射率を高めることができないことがある。
第3誘電体膜14がZrO2を含む場合、当該ZrO2として安定化ジルコニアを用いてもよい。これは後述する第3誘電体膜24、34についても同様である。
第1誘電体膜11/第3誘電体膜14の組み合わせは、例えば、ZrO2(第1誘電体膜11)/NbOx(第3誘電体膜14)、ZrO2/Nb2O5、SiO2/NbOx、SiO2/Nb2O5、In2O3/NbOx、In2O3/Nb2O5、SnO2/NbOx、SnO2/Nb2O5、ZrO2−SiO2/NbOx、ZrO2−SiO2/Nb2O5、ZrO2−In2O3/NbOx、ZrO2−In2O3/Nb2O5、ZrO2−SnO2/NbOx、ZrO2−SnO2/Nb2O5、In2O3−SiO2/NbOx、In2O3−SiO2/Nb2O5、In2O3−SnO2/NbOx、In2O3−SnO2/Nb2O5、SnO2−SiO2/NbOx、SnO2−SiO2/Nb2O5、ZrO2−SiO2−In2O3/NbOx、ZrO2−SiO2−In2O3/Nb2O5、ZrO2−SiO2−SnO2/NbOx、ZrO2−SiO2−SnO2/Nb2O5、ZrO2−In2O3−SnO2/NbOx、ZrO2−In2O3−SnO2/Nb2O5、In2O3−SnO2−SiO2/NbOx、In2O3−SnO2−SiO2/Nb2O5であってよい。
特に、第1誘電体膜11/第3誘電体膜14の組み合わせは、ZrO2−SiO2−In2O3/NbOx、ZrO2−SiO2−In2O3/Nb2O5であってよい。これらの組み合わせは、第1誘電体膜11と第3誘電体膜14がともにDCスパッタリングにより形成可能である組み合わせである。よって、これらの組み合わせを用いれば、DCスパッタリングによって、良好な生産性で情報記録媒体200を製造することが可能となる。第1誘電体膜11が、実施の形態1において例示した、他の二元系、三元系、または四元系の組成である場合でも、第3誘電体膜14を設けてよい。
あるいは、第3誘電体膜14は、波長405nmにおける屈折率が高い(例えば、2.2以上である)限りにおいて、他の金属の酸化物を含んでいてよく、他の金属の酸化物から実質的になっていてよい。他の金属の酸化物は、例えば、MoO3、WO3、Bi2O3、TiO2である。
第1誘電体膜11の厚さは、3nm以上15nm以下であってよい。第1誘電体膜11の厚さがこの範囲内にあれば、第1誘電体膜11と基板1との密着性、および第1誘電体膜11と第3誘電体膜14との密着性が良好となる。第1誘電体膜11の厚さが3nm未満であると、基板1との密着性、および第3誘電体膜14との密着性が不十分となることがある。第1誘電体膜11の厚さが15nmを超えると、L0層10の反射率が低下することがある。
第3誘電体膜14の厚さは、3nm以上35nm以下であってよい。第3誘電体膜14の厚さがこの範囲内にあれば、第3誘電体膜14と第1誘電体膜11との密着性、および第3誘電体膜14と記録膜12との密着性が良好となる。第3誘電体膜14の厚さが3nm未満であると、第1誘電体膜11との密着性、および記録膜12との密着性が不十分となることがある。第3誘電体膜14の厚さが35nmを超えると、L0層10の反射率が低下することがある。
L0層10に関して、第1誘電体膜11および第3誘電体膜14以外の膜の構成は実施の形態1で説明したものと同一であるから、ここではその説明を省略する。
L1層20は、レーザ光6照射側から見て遠い方から、第1誘電体膜21、第3誘電体膜24、記録膜22、および第2誘電体膜23をこの順に含んでよい。
第3誘電体膜24は、L1層20の反射率向上に寄与し、再生光量を増加させることができる。第3誘電体膜24の屈折率は高いことが好ましく、2.2以上であることが好ましい。第3誘電体膜24はNbの酸化物を含んでよい。第3誘電体膜24において、Nbは、特にNb2O5の形態で存在してよい。Nbの酸化物は透明な酸化物であって波長405nmにおける屈折率が高い。より具体的には、分光エリプソメータを用いて実測したNb2O5の屈折率値は、波長405nmにおいて、2.42である。また、Nbの酸化物を含むことにより、高い成膜レートで、第3誘電体膜24を形成することができる。
第3誘電体膜24の導電性がより高くなるよう、NbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。
第3誘電体膜24は、Nbの酸化物を例えば、50mol%以上含んでよく、Nbの酸化物から実質的に成っていてよい。「実質的に」という用語の意味は、実施の形態1において第1誘電体膜11に関連して説明したとおりである。
第3誘電体膜24は、さらにZrの酸化物を含んでよい。Zrの酸化物は、例えばZrO2であるが、必ずしも化学量論組成のものでなくてよい。Zrの酸化物は、第3誘電体膜24の硬さや第1誘電体膜21との密着性等を調整することができる。Zrの酸化物が含まれる場合にも、第3誘電体膜24は、Nbの酸化物は50mol%以上含んでよい。Nbの酸化物の割合が小さすぎると、屈折率が下がり、L1層20の反射率を高めることができないことがある。
第1誘電体膜21/第3誘電体膜24の組み合わせの例は、前述のL0層10の第1誘電体膜11/第3誘電体膜14の組み合わせの例と同様である。
特に、第1誘電体膜21/第3誘電体膜24の組み合わせは、ZrO2−SiO2−In2O3/NbOx、ZrO2−SiO2−In2O3/Nb2O5であってよい。これらの組み合わせは、第1誘電体膜21と第3誘電体膜24がともにDCスパッタリングにより形成可能である組み合わせである。よって、これらの組み合わせを用いれば、DCスパッタリングによって、良好な生産性で情報記録媒体200を製造することが可能となる。第1誘電体膜21が、実施の形態1において例示した、他の二元系、三元系、または四元系の組成である場合でも、第3誘電体膜24を設けてよい。
L1層20において、第3誘電体膜24は、必要に応じて設けてよい。第1誘電体膜21と第2誘電体膜23を形成することによって要求される反射率を確保できる場合は、第3誘電体膜24を必ずしも設ける必要はない。
第1誘電体膜21の厚さは、3nm以上15nm以下であってよい。第1誘電体膜21の厚さがこの範囲内にあれば、第1誘電体膜21と中間分離層2との密着性、および第1誘電体膜21と第3誘電体膜24との密着性が良好となる。第1誘電体膜21の厚さが3nm未満であると、中間分離層2との密着性、および第3誘電体膜24との密着性が不十分となることがある。第1誘電体膜21の厚さが15nmを超えると、L1層20の反射率が低下することがある。
第3誘電体膜24の厚さは、3nm以上35nm以下であってよい。第3誘電体膜24の厚さがこの範囲内にあれば、第3誘電体膜24と第1誘電体膜21との密着性、および第3誘電体膜24と記録膜22との密着性が良好となる。第3誘電体膜24の厚さが3nm未満であると、第1誘電体膜21との密着性、および記録膜22との密着性が不十分となることがある。第3誘電体膜24の厚さが35nmを超えると、L1層20の反射率が低下することがある。
L1層20に関して、第1誘電体膜21および第3誘電体膜24以外の膜の構成は実施の形態1で説明したものと同一であるから、ここではその説明を省略する。
L2層30は、レーザ光6照射側から見て遠い方から、第1誘電体膜31、第3誘電体膜34、記録膜32、および第2誘電体膜33をこの順に含んでよい。
第3誘電体膜34は、L2層30の反射率向上に寄与し、再生光量を増加させることができる。第3誘電体膜34の屈折率は高いことが好ましく、2.2以上であることが好ましい。第3誘電体膜34はNbの酸化物を含んでよい。第3誘電体膜34において、Nbは、特にNb2O5の形態で存在してよい。Nbの酸化物は透明な酸化物であって波長405nmにおける屈折率が高い。より具体的には、分光エリプソメータを用いて実測したNb2O5の屈折率値は、波長405nmにおいて、2.42である。また、Nbの酸化物を含むことにより、高い成膜レートで、第3誘電体膜34を形成することができる。
第3誘電体膜34の導電性がより高くなるよう、NbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。
第3誘電体膜34は、Nbの酸化物を例えば、50mol%以上含んでよく、Nbの酸化物から実質的に成っていてよい。「実質的に」という用語の意味は、実施の形態1において第1誘電体膜11に関連して説明したとおりである。
第3誘電体膜34は、さらにZrの酸化物を含んでよい。Zrの酸化物は、例えばZrO2であるが、必ずしも化学量論組成のものでなくてよい。Zrの酸化物は、第3誘電体膜34の硬さや第1誘電体膜31との密着性等を調整することができる。Zrの酸化物が含まれる場合にも、第3誘電体膜34は、Nbの酸化物は50mol%以上含んでよい。Nbの酸化物の割合が小さすぎると、屈折率が下がり、L2層30の反射率を高めることができないことがある。
第1誘電体膜31/第3誘電体膜34の組み合わせは、前述のL0層10の第1誘電体膜11/第3誘電体膜14の組み合わせと同様である。
特に、第1誘電体膜31/第3誘電体膜34の組み合わせは、ZrO2−SiO2−In2O3/NbOx、ZrO2−SiO2−In2O3/Nb2O5であってよい。これらの組み合わせは、第1誘電体膜31と第3誘電体膜34がともにDCスパッタリングにより形成可能である組み合わせである。よって、これらの組み合わせを用いれば、DCスパッタリングによって、良好な生産性で情報記録媒体200を製造することが可能となる。第1誘電体膜31が、実施の形態1において例示した、他の二元系、三元系、または四元系の組成である場合でも、第3誘電体膜34を設けてよい。
L2層30においては、第3誘電体膜34は、必要に応じて設けてよい。第1誘電体膜31と第2誘電体膜33を形成することによって要求される反射率を確保できる場合は、第3誘電体膜34を必ずしも設ける必要はない。
第1誘電体膜31の厚さは、3nm以上15nm以下であってよい。第1誘電体膜31の厚さがこの範囲内にあれば、第1誘電体膜31と中間分離層3との密着性、および第1誘電体膜31と第3誘電体膜34との密着性が良好となる。第1誘電体膜31の厚さが3nm未満であると、中間分離層3との密着性、および第3誘電体膜34との密着性が不十分となることがある。第1誘電体膜31の厚さが15nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。
第3誘電体膜34の厚さは、3nm以上35nm以下であってよい。第3誘電体膜34の厚さがこの範囲内にあれば、第3誘電体膜34と第1誘電体膜31との密着性、および第3誘電体膜34と記録膜32との密着性が良好となる。第3誘電体膜34の厚さが3nm未満であると、第1誘電体膜31との密着性、および記録膜32との密着性が不十分となることがある。第3誘電体膜34の厚さが35nmを超えると、L2層30の反射率が低下することがある。
L2層30に関して、第1誘電体膜31および第3誘電体膜34以外の膜の構成は実施の形態1で説明したものと同一であるから、ここではその説明を省略する。
(実施の形態3)
次に、実施の形態1で説明した情報記録媒体100の製造方法を、実施の形態3として説明する。
L0層10を構成する第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13は気相成膜法の一つであるスパッタリング法により形成できる。
まず、基板1(例えば、厚み0.5mm、直径120mm)を成膜装置内に配置する。
続けて、第1誘電体膜11を形成する工程において、基板1上に第1誘電体膜11を成膜する。このとき、基板1に螺旋状の案内溝が形成されているときは、この案内溝側に第1誘電体膜11を成膜する。第1誘電体膜11は、得ようとする組成に応じて、Zr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dを含むターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより形成される。希ガスは、例えば、Arガス、Krガス、またはXeガスであるが、コスト面ではArガスが有利である。これはスパッタリングの雰囲気ガスを希ガスまたはその混合ガスとする、いずれのスパッタリングについてもあてはまる。
スパッタリングターゲットは、元素Dを酸化物の形態で含んでよく、あるいは金属の形態で含んでよい。金属からなるターゲットを使用する場合には、酸素ガスを含む雰囲気中で実施する反応性スパッタリングにより酸化物を形成してよい。
導電性を有する(比抵抗値は好ましくは1Ω・cm以下である)スパッタリングターゲットを用いて、DCスパッタリング、またはパルスDCスパッタリングを実施すると、RFスパッタリングを実施する場合と比較して、より高い成膜レートを達成できる。
具体的には、スパッタリングターゲットの組成は、ZrO2、In2O3、SnO2、SiO2、ZrO2−In2O3、ZrO2−SnO2、ZrO2−SiO2、In2O3−SnO2、In2O3−SiO2、SnO2−SiO2、ZrO2−In2O3−SnO2、ZrO2−In2O3−SiO2、ZrO2−SnO2−SiO2、In2O3−SnO2−SiO2、ZrO2−In2O3−SnO2−SiO2等であってよい。これらのスパッタリングターゲットを用いると、スパッタリングターゲットと同じ組成の薄膜を形成することができる。また、In2O3および/またはSnO2を含む組成のスパッタリングターゲットは、導電性が高く、DCスパッタリングによって安定的に第1誘電体膜11を形成することを可能とする。よって、In2O3および/またはSnO2を含む組成のスパッタリングターゲットを用いると、第1誘電体膜11の形成時に高い成膜レートを期待できる。
また、第1誘電体膜11を複数の誘電体材料で形成する場合、誘電体材料それぞれのスパッタリングターゲットを用いて、複数のカソードから誘電体材料を同時に堆積させるマルチスパッタリングを実施してよい。マルチスパッタリングにおいては、各カソードのスパッタパワーを調整することで、薄膜において所望の組成比を得ることができる。
例えば、第1誘電体膜11として、ZrO2−In2O3からなる薄膜を形成する場合、スパッタリングターゲットの組み合わせとして、(ZrO2、In2O3)を用いることができる。同様にして、以下に挙げる二元系、三元系、四元系の薄膜を、それぞれ以下に示すスパッタリングターゲットの組み合わせ(括弧内に記載された複数の酸化物がターゲットの組み合わせに相当する)で形成することができる。
・ZrO2−SnO2(ZrO2、SnO2)
・ZrO2−SiO2(ZrO2、SiO2)
・In2O3−SnO2(In2O3、SnO2)
・In2O3−SiO2(In2O3、SiO2)
・SnO2−SiO2(SnO2、SiO2)
・ZrO2−In2O3−SnO2(ZrO2、In2O3、SnO2)
・ZrO2−In2O3−SiO2(ZrO2、In2O3、SiO2)
・ZrO2−SnO2−SiO2(ZrO2、SnO2、SiO2)
・In2O3−SnO2−SiO2(In2O3、SnO2、SiO2)
・ZrO2−In2O3−SnO2−SiO2(ZrO2、In2O3、SnO2、SiO2)
続いて、記録膜12を形成する工程において、第1誘電体膜11上に記録膜12を成膜する。記録膜12は、その組成に応じて、金属合金または金属−酸化物の混合物からなるスパッタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気中または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングを実施することにより形成できる。記録膜12の厚さが第1誘電体膜11などの誘電体膜より厚いので、生産性を考慮し、記録膜12は、RFスパッタリングより高い成膜レートが期待できるDCスパッタリング、またはパルスDCスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。記録膜12中に多くの酸素を含有させるため、雰囲気ガス中に多量の酸素ガスを混合することが好ましい。
スパッタリングターゲットは、W、Cu、Mn、および元素Mを含み、W、Cu、Mn、および元素Mが下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
を満たすものであってよい。
スパッタリングターゲットに含まれるW、Cu、Mn、および元素Mを合わせた原子数を100%としたときに、Wの含有量が15原子%よりも少ないと、DCスパッタリングが不安定になる場合がある。その場合、パルスDCスパッタリングで成膜してよい。形成しようとする記録膜12に含まれるWの含有量が20原子%よりも少ない場合には、記録膜12を構成する各金属の単体またはその酸化物からなるターゲットを同時にスパッタリングするマルチスパッタリングを実施してよい。マルチスパッタリングにおいては、各カソードのスパッタパワーを調整することで、薄膜において所望の組成比を得ることができる。
記録膜12を形成する工程では、Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mをさらに含むターゲットを用いてよい。元素mを含むターゲットを用いることにより、得られる記録膜12において、記録の際に、酸素の泡の形成が促進され、より高い変調度を得ることができる。
記録膜12を形成する工程では、さらにZnを含むターゲットを用いてよい。Znを含むターゲットは、元素mを含んでよく、あるいは含んでいなくてもよい。Znを含むターゲットを用いることにより、記録膜12をDCスパッタリングで形成する際にスパッタリングの安定性をさらに向上させることができる。
具体的には、記録膜12の成膜に際して合金ターゲットまたは混合物ターゲットを用いる場合、ターゲットの組成は、W−Cu−Mn−Ca、W−Cu−Mn3O4−Ca、W−Cu−Mn3O4−CaO、W−Cu−Mn−Ca−Al、W−Cu−Mn3O4−Ca−Al、W−Cu−Mn3O4−CaO−Al、W−Cu−Mn3O4−CaO−Al2O3、W−Cu−Mn−Ca−Mg、W−Cu−Mn3O4−Ca−Mg、W−Cu−Mn3O4−CaO−Mg、W−Cu−Mn3O4−CaO−MgO、W−Cu−Mn−Ca−Ta、W−Cu−Mn3O4−Ca−Ta、W−Cu−Mn3O4−CaO−Ta、W−Cu−Mn−Ca−Zn、W−Cu−Mn3O4−Ca−ZnO、W−Cu−Mn3O4−CaO−ZnO、W−Cu−Mn−Ce、W−Cu−Mn3O4−Ce、W−Cu−Mn3O4−CeO2、W−Cu−Mn−Ce−Al、W−Cu−Mn3O4−Ce−Al、W−Cu−Mn3O4−CeO2−Al、W−Cu−Mn3O4−CeO2−Al2O3、W−Cu−Mn−Ce−Mg、W−Cu−Mn3O4−Ce−Mg、W−Cu−Mn3O4−CeO2−Mg、W−Cu−Mn3O4−CeO2−MgO、W−Cu−Mn−Ce−Ta、W−Cu−Mn3O4−Ce−Ta、W−Cu−Mn3O4−CeO2−Ta、W−Cu−Mn−Ce−Zn、W−Cu−Mn3O4−Ce−ZnO、W−Cu−Mn3O4−CeO2−ZnO等であってよい。
また、マルチスパッタリングにより、例えば、W−Cu−Mn−Ca−Oからなる薄膜を記録膜12として形成する場合、スパッタリングターゲットの組み合わせとして、(W、Cu、Mn、Ca)または(W、Cu、Mn、CaO)等を用いることができる。同様にして、以下に挙げる組成の薄膜を、それぞれ以下に示すスパッタリングターゲットの組み合わせ(括弧内に記載された複数の金属がターゲットの組み合わせに相当する)で形成することができる。
・W−Cu−Mn−Ce−O:(W、Cu、Mn、Ce)
・W−Cu−Mn−Ca−Al−O:(W、Cu、Mn、Ca、Al)
・W−Cu−Mn−Ca−Mg−O:(W、Cu、Mn、Ca、Mg)
・W−Cu−Mn−Ca−Ta−O:(W、Cu、Mn、Ca、Ta)
・W−Cu−Mn−Ca−Zn−O:(W、Cu、Mn、Ca、Zn)
・W−Cu−Mn−Ce−Al−O:(W、Cu、Mn、Ce、Al)
・W−Cu−Mn−Ce−Mg−O:(W、Cu、Mn、Ce、Mg)
・W−Cu−Mn−Ce−Ta−O:(W、Cu、Mn、Ce、Ta)
・W−Cu−Mn−Ce−Zn−O:(W、Cu、Mn、Ce、Zn)
続いて、第2誘電体膜13を形成する工程において、記録膜12上に第2誘電体膜13を成膜する。第2誘電体膜13は、第2誘電体膜13の組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気でスパッタリングを実施することにより形成できる。また、第2誘電体膜13を複数の誘電体材料で形成する場合、誘電体材料それぞれのスパッタリングターゲットを用いて、マルチスパッタリングを実施してよい。
第2誘電体膜13の形成に用いるスパッタリングターゲットとしては、前述した第1誘電体膜11を形成するスパッタリングターゲットを用いてよい。
続いて、中間分離層2を形成する工程において、第2誘電体膜13上に中間分離層2を形成する。中間分離層2は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、例えばアクリル系樹脂をL0層10上に塗布しスピンコートした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。中間分離層2に案内溝を設ける場合、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂に密着させた状態でスピンコートした後に樹脂を硬化させ、さらにその後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がす方法で中間分離層2を形成してよい。また、中間分離層2は二段階で形成してよく、具体的には、厚みの大部分を占める部分を先にスピンコート法で形成し、次に案内溝を有する部分を、スピンコート法と転写用基板による転写との組み合わせにより形成してよい。
続いて、L1層20を形成する。具体的には、まず、第1誘電体膜21を形成する工程において、中間分離層2上に第1誘電体膜21を形成する。第1誘電体膜21は、前述した第1誘電体膜11と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
続いて、記録膜22を形成する工程において、第1誘電体膜21上に記録膜22を形成する。記録膜22は、前述した記録膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
続いて、第2誘電体膜23を形成する工程において、記録膜22上に第2誘電体膜23を形成する。第2誘電体膜23は、前述した第2誘電体膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
続いて、中間分離層3を形成する工程において、第2誘電体膜23上に中間分離層3を形成する。中間分離層3は、前述した中間分離層2と同様の方法で形成できる。
続いて、L2層30を形成する。L2層30は、基本的には前述したL1層20と同様の方法で形成できる。
まず、第1誘電体膜31を形成する工程において、中間分離層3上に第1誘電体膜31を形成する。第1誘電体膜31は、前述した第1誘電体膜11と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
続いて、記録膜32を形成する工程において、第1誘電体膜31上に記録膜32を形成する。記録膜32は、前述した記録膜12と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
続いて、第2誘電体膜33を形成する工程において、記録膜32上に第2誘電体膜33を形成する。第2誘電体膜33は、前述した第2誘電体膜13と同様の方法で、得ようとする組成に応じたスパッタリングターゲットを用いて形成できる。
いずれの誘電体膜および記録膜も、スパッタリング時の供給電力を10W〜10kWとし、成膜室の圧力を0.01Pa〜10Paとして形成してよい。
続いて、カバー層4を形成する工程において、第2誘電体膜33上にカバー層4を形成する。第2誘電体膜33に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)または遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を塗布し、必要に応じて、スピンコートを実施して樹脂を均一に延ばし、その後、樹脂を硬化させる方法でカバー層4を形成できる。あるいは、カバー層4は、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、もしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、またはガラスから成る円盤状の基板を貼り合わせる方法で形成してよい。
なお、各層の成膜方法として、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相堆積法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)および分子線エピタキシー法(MBE法:Molecular Beam Epitaxy)を用いることも可能である。
このようにしてA面情報記録媒体101を製造することができる。
また必要に応じ、基板1およびL0層10に、ディスクの識別コード(例えば、BCA(Burst Cutting Area))が含まれるようにしてもよい。例えば、ポリカーボネート製の基板1に識別コードを付ける場合、基板1を成形した後に、CO2レーザなどを用いて、ポリカーボネートを溶解・気化することにより、識別コードを付けることができる。また、L0層10に識別コードを付ける場合、半導体レーザなどを用いて、記録膜12に記録して識別コードを付けることができる。L0層10に識別コードを付ける工程は、第2誘電体膜13の形成後、あるいは中間分離層2の形成後、あるいはL2層30形成後にカバー層4を形成した後、あるいは後述する貼り合わせ層5の形成後に実施してよい。
同様にしてB面情報記録媒体102の製造も可能である。
B面情報記録媒体102の基板1に案内溝を設ける場合、螺旋の回転方向は前述したA面情報記録媒体101の基板1の案内溝のそれと逆向きでもよいし、または同じ向きでもよい。
最後に、A面情報記録媒体101において基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)を均一に塗布し、B面情報記録媒体102の基板1の案内溝が設けられた面とは反対の面を塗布した樹脂に貼り付ける。その後、樹脂に光を照射して硬化させることにより、貼り合わせ層5を形成する。あるいは、遅効性硬化型の光硬化型樹脂をA面情報記録媒体101に均一に塗布した後に光を当て、その後、B面情報記録媒体102を貼り付けて、貼り合わせ層5を形成してもよい。
このようにして、実施の形態1に係る、両面に情報層を有する情報記録媒体100を製造することができる。また、本実施形態によれば、いずれの貼り合わせ工法を用いても、高変調度を有する情報記録媒体100を製造することができる。
(実施の形態4)
実施の形態2で説明した情報記録媒体200の製造方法を、実施の形態4として説明する。
情報記録媒体200の製造方法は、以下の3点において、実施の形態3で説明した製造方法と異なる。第1の相違点は、L0層10において、第3誘電体膜14を、第1誘電体膜11と記録膜12との間に形成することである。第2の相違点は、L1層20において、第3誘電体膜24を、第1誘電体膜21と記録膜22との間に形成することである。第3の相違点は、L2層30において、第3誘電体膜34を、第1誘電体膜31と記録膜32との間に形成することである。以下、これらの相違点について説明する。
まず、第3誘電体膜14の形成方法を説明する。第3誘電体膜14を形成する工程においては、第1誘電体膜11上に第3誘電体膜14を形成する。第1誘電体膜11までの形成方法は、実施の形態3で説明したとおりである。第3誘電体膜14は、得ようとする組成に応じて、Nbを含むターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより形成される。第3誘電体膜14の導電性がより高くなるよう、スパッタリングターゲットとしてNbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。そのとき、微量の酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、成膜してもよい。あるいはNb2O5のターゲットを用いてもよい。あるいは金属Nbのターゲットを用いて、酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、NbOxまたはNb2O5を含む膜を形成してよい。
スパッタリングターゲットがNbの酸化物を含む場合、DCスパッタリングまたはパルスDCスパッタリングで成膜できるため、高い成膜レートで、第3誘電体膜14を形成することができる。
第3誘電体膜14を形成した後、記録膜12等を、実施の形態3で説明した方法により形成して、実施の形態2に係る情報記録媒体200のL0層10を形成することができる。
次に、第3誘電体膜24の形成方法を説明する。
第3誘電体膜24を形成する工程においては、第1誘電体膜21上に第3誘電体膜24を形成する。第1誘電体膜21までの形成方法は、実施の形態3で説明したとおりである。第3誘電体膜24は、得ようとする組成に応じて、Nbを含むターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより形成される。第3誘電体膜24の導電性がより高くなるよう、スパッタリングターゲットとしてNbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。そのとき、微量の酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、成膜してもよい。あるいはNb2O5のターゲットを用いてもよい。あるいは金属Nbのターゲットを用いて、酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、NbOxまたはNb2O5を形成してよい。
スパッタリングターゲットがNbの酸化物を含む場合、DCスパッタリングまたはパルスDCスパッタリングで成膜できるため、高い成膜レートで、第3誘電体膜24を形成することができる。
第3誘電体膜24を形成した後、記録膜22等を、実施の形態3で説明した方法により形成して、実施の形態2に係る情報記録媒体200のL1層20を製造することができる。但し、L1層20の形成において、第3誘電体膜24を形成する工程は、必要に応じて設けてよい。第1誘電体膜21と第2誘電体膜23によって、要求される反射率を確保できる場合は、第3誘電体膜24を形成する工程は、必ずしも設ける必要はない。
次に、第3誘電体膜34の形成方法を説明する。
第3誘電体膜34を形成する工程においては、第1誘電体膜31上に第3誘電体膜34を形成する。第1誘電体膜31までの形成方法は、実施の形態3で説明したとおりである。第3誘電体膜34は、得ようとする組成に応じて、Nbを含むターゲットを用いて、希ガス雰囲気、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより形成される。第3誘電体膜34の導電性がより高くなるよう、スパッタリングターゲットとしてNbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を用いてよい。そのとき、微量の酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、成膜してもよい。あるいはNb2O5のターゲットを用いてもよい。あるいは金属Nbのターゲットを用いて、酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、NbOxまたはNb2O5を形成してよい。
スパッタリングターゲットがNbの酸化物を含む場合、DCスパッタリングまたはパルスDCスパッタリングで成膜できるため、高い成膜レートで、第3誘電体膜34を形成することができる。
第3誘電体膜34を形成した後、記録膜32等を、実施の形態3で説明した方法により形成して、実施の形態2に係る情報記録媒体200のL2層30を製造することができる。L2層30を形成した後、カバー層4等を、実施の形態3で説明した方法により形成して、実施の形態2に係る情報記録媒体200を製造することができる。但し、L2層30の形成においては、第3誘電体膜34を形成する工程は、必要に応じて設けてよい。第1誘電体膜31と第2誘電体膜33によって、要求される反射率を確保できる場合は、第3誘電体膜34を形成する工程は、必ずしも設ける必要はない。
(実施の形態5)
実施の形態5として、実施の形態1で説明した記録膜12を形成するためのスパッタリングターゲットを説明する。本実施形態のスパッタリングターゲットは、少なくともWと、Cuと、Mnとを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含み、W、Cu、Mnおよび元素Mが、下記の式:
WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)
(式中、15≦x≦60、0<y≦40、0<z≦40、且つ60≦x+y+z<95)
を満たすスパッタリングターゲット(単に「ターゲット」とも呼ぶ)である。
本実施形態のターゲットは、粉末を、高温および高圧下で焼結させた焼結体であってよい。その充填率(密度)は90%以上であってよく、特に95%以上であってよい。
元素MとしてCaを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、CaおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットにおいて、Wは、金属W粉末、WO3粉末、WO2粉末、WO2とWO3の中間の酸化物の粉末、およびマグネリ相(WnO3nー1)の粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。Wは、特に、金属W粉末およびWO3粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末の形態で含まれてよい。金属Wの融点は3400℃、WO3の融点は1473℃であるので(岩波理化学辞典第五版等参照、以下に同じ)、これらの材料の粉末は高温で焼結させることが可能である。
このターゲットにおいて、Cuは、金属Cu粉末、CuO粉末、およびCu2O粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。Cuは、特に、金属Cu粉末およびCu2O粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末の形態で含まれてよい。金属Cuの融点は1083℃、Cu2Oの融点は1230℃であるので、これらの材料の粉末は高温で焼結させることが可能である。
このターゲットにおいて、Mnは、金属Mn粉末、MnO粉末、Mn3O4粉末、Mn2O3粉末、およびMnO2粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。Mnは、特に、金属Mn粉末、MnO粉末、およびMn3O4粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末の形態で含まれてよい。金属Mnの融点は1240℃、MnOの融点は1840℃、Mn3O4の融点は1700℃であるので、これらの材料の粉末は高温で焼結させることが可能である。
このターゲットにおいて、Caは、金属Ca粉末およびCaO粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Ca粉末の融点が840℃であるのに対し、CaO粉末の融点は2570℃である。そのため、Caは特にCaO粉末の形態で含まれてよい。CaO粉末は高温で焼結させることが可能である。
元素MとしてCeを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、CeおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、およびMnの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Ceは、金属Ce粉末およびCeO2粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Ce粉末は160℃で発火する性質があるため、Ceは特にCeO2粉末の形態で含まれてよい。CeO2の融点は2400℃であるので、CeO2粉末は高温で焼結させることが可能である。
本実施形態のターゲットは、Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素mをさらに含んでよい。
元素mとしてAlを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、AlおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Alは、金属Al粉末およびAl2O3粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Al粉末の融点が660℃であるのに対し、Al2O3粉末の融点は2070℃である。そのため、Alは特にAl2O3粉末の形態で含まれてよい。Al2O3粉末は高温で焼結させることが可能である。
元素mとしてMgを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、MgおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Mgは、金属Mg粉末およびMgO粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Mg粉末の融点が650℃であるのに対し、MgO粉末の融点は2850℃である。そのため、Mgは、特にMgO粉末の形態で含まれてよい。MgO粉末は高温で焼結させることが可能である。
元素mとしてTaを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、TaおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Taは、金属Ta粉末およびTa2O5粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。Taの融点は2990℃、Ta2O5の融点は1870℃であるので、これらの材料の粉末は高温で焼結させることが可能である。
本実施形態のターゲットは、Znをさらに含んでよい。Znを含むターゲットは、前記元素mを含んでいてよく、あるいは含んでいなくてよい。Znを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、ZnおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Znは、金属Zn粉末およびZnO粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Zn粉末の融点が420℃であるのに対し、ZnO粉末の融点は1980℃である。そのため、Znは、特にZnO粉末の形態で含まれてよい。ZnO粉末は高温で焼結させることが可能である。
本実施形態のターゲットは、Nbをさらに含んでよい。Nbを含むターゲットは、前記元素mを含んでいてよく、あるいは含んでいなくてよい。Nbを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、NbおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Nbは、金属Nb粉末、Nb2O5粉末、およびNbOx粉末より選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。金属Nbの融点は2470℃、Nb2O5の融点は1485℃であるので、これらの材料の粉末は高温で焼結させることが可能である。
本実施形態のターゲットは、Moをさらに含んでよい。Moを含むターゲットは、前記元素mを含んでいてよく、あるいは含んでいなくてよい。Moを含むターゲットは、金属および/または酸化物の焼結体であってよい。具体的には、ターゲットは、例えば、W、Cu、Mn、Ca、Ce、MoおよびO(酸素)を含む合金ターゲットであってよい。
このターゲットに含まれるW、Cu、Mn、CaおよびCeの形態は、前述したとおりであるので、説明を省略する。
このターゲットにおいて、Moは、金属Mo粉末、MoO3粉末、および粉末MoOxより選ばれる少なくとも一つの粉末(より正確には焼結された粉末)の形態で含まれてよい。Moは、特に、金属Mo粉末の形態で含まれてよい。金属Moの融点は2620℃であるので、その粉末は高温で焼結させることが可能である。
いずれも、単体金属の粉末および/または酸化物の粉末を厳密に秤量して、焼結に付して、所望の組成比のターゲットが得られるようにする。
上記した組成のターゲットはいずれも、製造が可能であれば、溶融ターゲットであってもよい。
ターゲットの形状は特に限定されず、例えば、円盤形、矩形、または円筒形であってよい。ターゲットは、例えば、直径200mm、厚さ10mmの円盤状のターゲットであってよい。また、ターゲットは、バッキングプレートと呼ばれる銅を主成分とした板に、InやIn−Snによって貼り付けて用いてよい。バッキングプレートに貼り付けた状態のターゲットを用いたスパッタリングは、スパッタリング装置内でバッキングプレートを直接的または間接的に水冷しながら実施してよい。
本実施形態のターゲットは、DCスパッタリングを可能とするものであってよい。そのようなターゲットは、例えば、1×10−2Ω・cm未満の比抵抗値を有し、特に5×10−3Ω・cm以下の比抵抗値を有する。
以上のように、本開示に係る技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必要な必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面または詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
次に、実施例を用いて本開示の技術を詳細に説明する。
(実施例1−1)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の一例を説明する。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、第1誘電体膜11として厚さ12nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)、記録膜12として表1に示す組成の膜、第2誘電体膜13として厚さ9nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。記録膜12は、L0層10の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
第1誘電体膜11および第2誘電体膜13の膜厚は、L0層10において所定の反射率が得られるように、マトリクス法に基づく計算により決定した。本実施例および以下の実施例において、各情報層の第1誘電体膜および第2誘電体膜の膜厚はいずれも、当該情報層において所定の反射率が得られるように、マトリクス法に基づく計算により決定した。
ここで記録膜の組成は、元素比としては酸素を除いた金属元素比(原子%)のみを記載した形で表記し、以降についても同様に表記する。例えば、W27Cu18Mn26Zn29(原子%)の酸化物であればW27Cu18Mn26Zn29−Oと表記する。但し、表中では理解の容易のため、酸素を除いた金属元素比(原子%)のみを記載した形で表記している。
波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率は、未記録状態でRg≒9.0%、Rl≒9.6%であった。
第1誘電体膜11および第2誘電体膜13の成膜は、ZrO2、SiO2およびIn2O3を含む混合ターゲットを使用し、Ar雰囲気でDC電源を用いて行った。第1誘電体膜11および第2誘電体膜13の成膜時のAr流量は12sccmとし、スパッタパワーは3kWとした。また、記録膜12の成膜は、W、Cu、Mn、元素MおよびO(酸素)を含む合金ターゲットを使用し、Ar+O2の混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。記録膜12の成膜時のAr流量は12sccm、O2流量は30sccmとし、スパッタパワーは5kWとした。スパッタリングターゲットは、いずれも直径200mmのサイズのものを使用した。以降、スパッタリングターゲットは、いずれも直径が200mmのものを使用した。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層2を形成した。具体的には、まず、中間分離層2の厚さのほとんどを占めるメイン部分を、紫外線硬化型樹脂のスピンコートと紫外線照射による硬化によって形成した。次いで、メイン部分の表面に紫外線硬化型樹脂をスピンコートし、これの上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなる転写用基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、転写用基板を剥離して、案内溝が形成された中間分離層2を形成した。中間分離層2の厚さは約25μmとした。
中間分離層2上にL1層20を形成した。具体的には、L1層20の第1誘電体膜21として厚さ23nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40(mol%)を、記録膜22として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oを、第2誘電体膜23として厚さ15nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜21および第2誘電体膜23の膜厚は、波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30がない場合のL1層20の反射率が、未記録状態でRg≒7.2%、Rl≒7.6%となり、透過率が約72%となるように決定した。
第1誘電体膜21および第2誘電体膜23の成膜条件は、前述したL0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜13それと同様とした。また、記録膜22の成膜は、W、Cu、Mn、ZnおよびO(酸素)を含む合金ターゲットを使用し、Ar+O2の混合ガス雰囲気でパルスDC電源を用いて行った。記録膜22の成膜時のAr流量は12sccm、O2流量は32sccmとし、スパッタパワーは5kWとした。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3は、中間分離層2と同様の方法で形成した。中間分離層3の厚さは約18μmとした。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として厚さ24nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40(mol%)を、記録膜32として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oを、第2誘電体膜33として厚さ22nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30の反射率が、未記録状態でRg≒5.7%、Rl≒6.3%、透過率が約79%となるように決定した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の成膜条件は、前述したL0層10の第1誘電体膜11および第2誘電体膜13のそれと同様とした。また、記録膜32の成膜条件は、前述したL1層20の記録膜22のそれと同様とした。
その後、紫外線硬化型樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させて、厚さ約57μmのカバー層4を形成した。これにより、A面情報記録媒体101の作製を完了した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。案内溝の螺旋の回転方向は、前述したA面情報記録媒体101の基板1に形成する案内溝のそれとは逆の方向とした。
その基板1上に、L0層10、中間分離層2、L1層20、中間分離層3、L2層30およびカバー層4を形成した。B面情報記録媒体102は、各情報層の構成(各膜の組成、厚さ、各情報層の反射率および透過率等)が、A面情報記録媒体101の各情報層の構成と同じとなるように、各情報層を構成する膜(第1誘電体膜、記録膜、第2誘電体膜)を形成した。各膜は、A面情報記録媒体101の形成で採用した方法と同じ方法で形成した。カバー層4も、A面情報記録媒体101のカバー層4と同じ構成とし、同じ方法で形成した。中間分離層2および3も、A面情報記録媒体101のそれらと同じ構成とし、同じ方法で形成した。
但し、B面情報記録媒体102において、中間分離層2および3に設けた螺旋状の案内溝の回転方向は、A面情報記録媒体101の中間分離層2および3に設けた案内溝の螺旋の回転方向とは逆にした。また、波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率は、A面情報記録媒体101のそれと同様、未記録状態でRg≒9.0%、Rl≒9.6%であった。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面に紫外線硬化型樹脂を均一に塗布し、塗布した樹脂にB面情報記録媒体102の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面を貼り付けた。それから、紫外線により樹脂を硬化させて、貼り合わせ層5を形成した。このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した(ディスクNo.1−101〜102)。
(比較例1−1)
A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102の記録膜12を、厚さ32nmのW27Cu18Mn26Zn29−Oとしたこと以外は、実施例1−1と同じ構成の情報記録媒体を作製した(ディスクNo.1−001)。
実施例および比較例(ディスクNo.1−001)の情報記録媒体100のL0層10の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表1に示す。
片面三層構造のディスクについて、変調度は以下の方法で評価した。
評価装置(パルステック製、商品名ODU−1000)のレーザ光の波長は405nm、対物レンズの開口数NAは0.91であり、グルーブおよびランドに情報の記録を行った。記録の線速度は13.54m/s(500GB−6倍速)および再生の線速度は9.03m/s(500GB−4倍速)とした。データビット長を51.3nmとし、1情報層あたり83.4GBの情報を記録した。また再生時のパワーはL0層10およびL1層20に対しては1.6mW、L2層30に対しては1.2mWとした。再生光として、2:1で高周波重畳(変調)されたレーザ光6を用いた。ランダム信号(2T〜12T)による記録を行い、変調度を評価した(以下においても同じ)。
信号品質は、記録直後のc−bER(channel bit error rate)を測定し、本実施例においては参考値として2E−3を信号品質の良否の基準とした。c−bERが2E−3以下であれば信号品質は良好であると判断した(以下においても同じ)。
ディスクNo.1−101〜102とディスクNo.1−001との比較より、記録膜12がW、Cu、Mnを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含む情報記録媒体において、変調度が向上することがわかる。ディスクNo.1−101〜102のc−bERはいずれも、E−4台を示しており、良好な信号品質が得られている。良好な信号品質を得るためには、60%以上の変調度を確保することが好ましい。B面情報記録媒体102についても同様に、記録膜12の変調度が向上し、良好な信号品質が得られている。
(実施例1−2)
記録膜12として表2に示す組成の膜を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.1−103〜115)を作製した。記録膜12は、L0層10の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
本実施例において、記録膜12の形成に際しては、以下のターゲットを使用した。
W−Cu−Mn−Ca−Mg系の場合:W、Cu、Mn、Ca、Mg、およびO(酸素)を含む合金ターゲット;
W−Cu−Mn−Ca−Al系の場合:W、Cu、Mn、Ca、Al、およびO(酸素)を含む合金ターゲット;
W−Cu−Mn−Ca−Ta系の場合:W、Cu、Mn、Ca、Ta、およびO(酸素)を含む合金ターゲット;
W−Cu−Mn−Ca−Zn系の場合:W、Cu、Mn、Ca、Zn、およびO(酸素)を含む合金ターゲット。
実施例および比較例(ディスクNo.1−001)の情報記録媒体100のL0層10の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表2に示す。
ディスクNo.1−103とディスクNo.1−001との比較より、記録膜12がW、Cu、Mn、および元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、No.1−104〜115とディスクNo.1−001との比較より、記録膜12が元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)およびZnから選択される一つの元素をさらに含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、記録膜12がW、Cu、Mnおよび元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含み、元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)をさらに含む情報記録媒体101(ディスクNo.1−104〜106、108〜110、112〜114)は、元素mを含まないもの(ディスクNo.1−103)と比較して、より向上した変調度を示す。信号品質は、記録膜12がいずれの組成であっても、良好な値を示している。B面情報記録媒体102についても同様に記録膜12の変調度の向上が見られ、良好な信号品質が得られている。
記録膜12がZnを含むことにより、記録膜12をDCスパッタリングで形成する際にスパッタリングの安定性をさらに向上させることができる。そのため、スパッタパワーを上げても、および/またはArガスの流量を低くしても、異常放電が発生しにくくなり、生産性が向上する。
(実施例1−3)
第1誘電体膜11として厚さ12nmの表3に示す組成の膜を形成し、記録膜12として厚さ32nmのW27Cu18Mn26Ca29−Oの組成の膜を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.1−116〜123)を作製した。
第1誘電体膜11の成膜は、Ar雰囲気でDC電源またはRF電源を用いて行った。本実施例において、第1誘電体膜11の成膜に際しては、以下のターゲットを使用した。
ZrO2−SiO2−In2O3系の場合:ZrO2、SiO2およびIn2O3を含む混合ターゲット
ZrO2−In2O3系の場合:ZrO2およびIn2O3を含む混合ターゲット;
SiO2−In2O3系の場合:SiO2およびIn2O3を含む混合ターゲット;
SnO2−In2O3系の場合:SnO2およびIn2O3を含む混合ターゲット;
ZrO2−SiO2系の場合:ZrO2およびSiO2を含む混合ターゲット;
ZnS−SiO2系の場合:ZnSおよびSiO2を含む混合ターゲット;
ZrO2の場合:ZrO2を含むターゲット;
SiO2の場合:SiO2を含むターゲット。
実施例の情報記録媒体100のL0層10の変調度および繰り返し再生回数を評価した。繰り返し再生回数とは、記録部を繰り返し再生し、c−bERが2E−3を上回ったときの再生回数を指す。繰り返し再生回数が多いほど、情報記録媒体100の繰り返し再生特性がより良好であることを示す。繰り返し再生時の再生パワーは、L0層10に対しては4.4mW、L1層20に対しては3.3mW、L2層30に対しては2.7mWとした(以下においても同じ)。その結果を表3に示す。
ディスクNo.1−116〜123は、第1誘電体膜11に含まれる元素Dの酸化物を変化させたものである。いずれの第1誘電体膜11を適用した場合でも、変調度は70%以上の高い値である。また、第1誘電体膜11をZr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dの酸化物を含むものとすることにより、基板1との密着性および記録膜12との密着性をよくすることができ、良好な繰り返し再生回数を得ることができる。第1誘電体膜11に(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を適用した場合には、繰り返し再生回数が多少悪化するものの、実用上の問題はない。
第1誘電体膜11にIn2O3またはSnO2が含まれている場合、DCスパッタリングが可能である。表3に示す成膜レートは、ディスクNo.1−116の第1誘電体膜11のレートを基準値として規格化した値であり、DCスパッタリングが可能な材料は、DCスパッタリング不可の材料よりも高い成膜レート値を示している。したがって、In2O3またはSnO2を含む第1誘電体膜11は、良好な生産性で形成することができる。
(実施例1−4)
記録膜12として表4に示す組成の膜を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.1−124〜138)を作製した。記録膜12は、L0層10の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
実施例および比較例(ディスクNo.1−001)の情報記録媒体100のL0層10の変調度、信号品質および繰り返し再生回数を評価し、下記の基準により、各ディスクを総合的に評価した。
◎:変調度が60%以上、且つ記録直後のc−bERが1.0E−3未満、且つ繰り返し再生回数が比較例のディスクのそれと同じか、またはそれを上回る。
○:変調度が60%以上、且つ記録直後のc−bERが1.0E−3以上2.0E−3以下、且つ繰り返し再生回数が比較例のディスクのそれと同じか、またはそれを上回る。
×:変調度が60%以下、または記録直後のc−bERが2.0E−3よりも大きい、または繰り返し再生回数が比較例のディスクのそれを下回る。
本実施例で、総合評価において比較対象としたディスクはNo.1−001である。
記録膜12の金属元素の組成が、WxCuyMnzM100−x−y−z(原子%)の式で表される場合に、xが15未満である媒体(ディスクNo.1−127)、又は60を超える媒体(ディスクNo.1−131)においては、信号品質の低下が見られるが、実用上の問題はない。また、yおよびzが40を超える媒体(ディスクNo.1−134、1−136)においては、繰り返し再生回数の低下が見られるが、実用上の問題はない。x+y+zが95以上である媒体(ディスクNo.1−138)においては、変調度の低下が見られるが、変調度の値が60%であるため、実用上の問題はない。B面情報記録媒体102のL0層10についても同様の傾向が見られる。
(実施例1−5)
本実施例では図2に示す情報記録媒体200の一例を説明する。
本実施例では、第1誘電体膜11として厚さ5nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、第3誘電体膜14として厚さ12nmの表5に示す組成の膜、記録膜12として厚さ32nmのW27Cu18Mn26Ca29−Oの膜を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にして情報記録媒体200(ディスクNo.1−139〜144)を作製した。この実施例においては、図2に示す情報記録媒体200とは異なり、L1層20およびL2層30において、第3誘電体膜24、34は形成しなかった。
第3誘電体膜14の成膜は、Ar雰囲気中で、DC電源またはRF電源を用いて行った。本実施例において、第3誘電体膜14の成膜に際しては、以下のターゲットを使用した。
Nb2O5の場合:NbOx(x<2.5、酸素を欠損させたNb2O5に相当)を含むターゲット;
MoO3の場合:MoO3を含むターゲット;
WO3の場合:WO3を含むターゲット;
Bi2O3の場合:Bi2O3を含むターゲット;
TiO2の場合:TiO2を含むターゲット。
本実施例では、情報記録媒体200のL0層10の実効Rgおよび変調度を評価した。その結果を表5に示す。
第3誘電体膜14を設けていないディスクNo.1−144と比較して、ディスクNo.1−139〜143のように、屈折率が、例えば2.2以上の材料を第3誘電体膜14に設けることにより、実効Rgが増加する。成膜レートは、ディスクNo.1−139の第3誘電体膜14の成膜レートを基準値として規格化した値である。DCスパッタリングが可能な材料は、DCスパッタリング不可の材料よりも高い成膜レート値を示している。したがって、DCスパッタリングが可能な材料を用いると、良好な生産性で第3誘電体膜14を形成することができる。B面情報記録媒体102についても同様に、第3誘電体膜14を適用することで、記録膜12の実効Rgの増加が見られる。
(実施例2−1)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の一例を説明する。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、第1誘電体膜11として厚さ12nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)、記録膜12として厚さ32nmのW27Cu18Mn26Zn29−O、第2誘電体膜13として厚さ9nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率は、未記録状態でRg≒9.0%、Rl≒9.6%であった。
第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13のそれと同様とした。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層2を形成した。具体的には、まず、中間分離層2の厚さのほとんどを占めるメイン部分を、紫外線硬化型樹脂のスピンコートと紫外線照射による硬化によって形成した。次いで、メイン部分の表面に紫外線硬化型樹脂をスピンコートし、これの上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなる転写用基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、転写用基板を剥離して、案内溝が形成された中間分離層2を形成した。中間分離層2の厚さは約25μmであった。
中間分離層2上にL1層20を形成した。具体的には、L1層20の第1誘電体膜21として厚さ23nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40(mol%)、記録膜22として表6に示す組成の膜、第2誘電体膜23として厚さ15nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。記録膜22は、L1層20の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30がない場合のL1層20の反射率は、未記録状態でRg≒7.2%、Rl≒7.6%であり、透過率は約72%であった。
第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23のそれと同様であるとした。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3は、中間分離層2と同様の方法で形成した。中間分離層3の厚さは約18μmであった。
中間分離層3上にL2層30を形成した。第1誘電体膜31として厚さ24nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40(mol%)を、記録膜32として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oを、第2誘電体膜33として厚さ22nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30の反射率が、未記録状態でRg≒5.7%、Rl≒6.3%、透過率が約79%となるように決定した。
第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33のそれと同様とした。
その後、紫外線硬化型樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させて、厚さ約57μmのカバー層4を形成した。これにより、A面情報記録媒体101の作製を完了した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。案内溝の螺旋の回転方向は、前述したA面情報記録媒体101の基板1に形成した案内溝のそれとは逆の方向とした。
その基板1上に、L0層10、中間分離層2、L1層20、中間分離層3、L2層30およびカバー層4を形成した。B面情報記録媒体102は、各情報層の構成(各膜の組成、厚さ、各情報層の反射率および透過率等)が、A面情報記録媒体101の各情報層の構成と同じとなるように、各情報層を構成する膜(第1誘電体膜、記録膜、第2誘電体膜)を形成した。各膜は、A面情報記録媒体101の形成で採用した方法と同じ方法で形成した。カバー層4も、A面情報記録媒体101のカバー層4と同じ構成とし、同じ方法で形成した。中間分離層2および3も、A面情報記録媒体101のそれらと同じ構成とした。但し、B面情報記録媒体102において、中間分離層2および3に設けた螺旋状の案内溝の回転方向は、A面情報記録媒体101の中間分離層2および3に設けた案内溝の螺旋の回転方向とは逆にした。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面に紫外線硬化型樹脂を均一に塗布し、塗布した樹脂にB面情報記録媒体102の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面を貼り付けた。それから、紫外線により樹脂を硬化させて、貼り合わせ層5を形成した。このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した(ディスクNo.2−101〜102)。
(比較例2−1)
A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102の記録膜22を、厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oとしたこと以外は、実施例2−1と同じ構成の情報記録媒体を作製した(ディスクNo.2−001)。
実施例および比較例(ディスクNo.2−001)の情報記録媒体100のL1層20の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表6に示す。
ディスクNo.2−101〜102とディスクNo.2−001との比較より、記録膜22がW、Cu、Mnを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含む情報記録媒体において、変調度が向上することがわかる。ディスクNo.2−101〜102のc−bERはいずれも、E−4台を示しており、良好な信号品質が得られている。すなわち、特定組成の記録膜をL1層20に適用した場合に、L1層20に記録した信号品質を向上させ得ることが確認される。良好な信号品質を得るためには、60%以上の変調度を確保することが好ましい。B面情報記録媒体102についても同様に、記録膜22の変調度が向上し、良好な信号品質が得られている。
(実施例2−2)
記録膜22として表7に示す組成の膜を形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.2−103〜115)を作製した。記録膜22は、L1層20の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
実施例および比較例(ディスクNo.2−001)の情報記録媒体100のL1層20の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表7に示す。
ディスクNo.2−103とディスクNo.2−001との比較より、記録膜22がW、Cu、Mn、および元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、No.2−104〜115とディスクNo.2−001との比較より、記録膜22が元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)、およびZnから選択される一つの元素をさらに含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、記録膜22がW、Cu、Mnおよび元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含み、元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)をさらに含む情報記録媒体101(ディスクNo.2−104〜106、108−110、112〜114)は、元素mを含まないもの(ディスクNo.2−103)と比較して、より向上した変調度を示す。信号品質は、記録膜22がいずれの組成であっても、良好な値を示している。B面情報記録媒体102についても同様に記録膜22の変調度の向上が見られ、良好な信号品質が得られている。
記録膜22がZnを含むことにより、記録膜22をDCスパッタリングで形成する際にスパッタリングの安定性をさらに向上させることができる。そのため、スパッタパワーを上げても、および/またはArガスの流量を低くしても、異常放電が発生しにくくなり、生産性が向上する。
(実施例2−3)
第1誘電体膜21として厚さ23nmの表8に示す組成の膜を形成し、記録膜22として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Ca34−Oの組成の膜を形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.2−116〜123)を作製した。
実施例の情報記録媒体100のL1層20の変調度および繰り返し再生回数を評価した。その結果を表8に示す。
ディスクNo.2−116〜123は、第1誘電体膜21に含まれる元素Dの酸化物を変化させたものである。いずれの第1誘電体膜21を適用した場合でも、変調度は66%以上の高い値である。また、第1誘電体膜21をZr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dの酸化物を含むものとすることにより、中間分離層2との密着性および記録膜22との密着性をよくすることができ、良好な繰り返し再生回数を得ることができる。第1誘電体膜21に(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を適用した場合には、繰り返し再生回数が多少悪化するものの、実用上の問題はない。
第1誘電体膜21にIn2O3またはSnO2が含まれている場合、DCスパッタリングが可能である。表8に示す成膜レートは、ディスクNo.2−116の第1誘電体膜21のレートを基準値として規格化した値であり、DCスパッタリングが可能な材料は、DCスパッタリング不可の材料よりも高い成膜レート値を示している。したがって、In2O3またはSnO2を含む第1誘電体膜21は、良好な生産性で形成することができる。
(実施例2−4)
第1誘電体膜21として厚さ23nmの表9に示す組成の膜、記録膜22として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Ca34−Oの組成の膜を形成したこと以外は、実施例2−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.2−124〜126)を作製した。
実施例の情報記録媒体100のL1層20の変調度および繰り返し再生回数を評価した。その結果を表9に示す。
ディスクNo.2−124〜126においては、第1誘電体膜21にZrO2−SiO2−In2O3系を適用し、三つの酸化物の割合を変化させている。第1誘電体膜21に含まれるZrO2量が増加すると、繰り返し再生回数がさらに増加し、より良好な繰り返し再生特性を得られることが分かる。
(実施例3−1)
本実施例では図1に示す情報記録媒体100の一例を説明する。
まずA面情報記録媒体101の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。その基板1上に、第1誘電体膜11として厚さ12nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)、記録膜12として厚さ32nmのW27Cu18Mn26Zn29−O、第2誘電体膜13として厚さ9nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L1層20およびL2層30がない場合のL0層10の反射率は、未記録状態でRg≒9.0、Rl≒9.6%であった。
第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜11、記録膜12および第2誘電体膜13のそれと同様とした。
続けて、L0層10上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層2を形成した。具体的には、まず、中間分離層2の厚さのほとんどを占めるメイン部分を、紫外線硬化型樹脂のスピンコートと紫外線照射による硬化によって形成した。次いで、メイン部分の表面に紫外線硬化型樹脂をスピンコートし、これの上に案内溝が形成されたポリカーボネートからなる転写用基板を貼り合わせ、紫外線により樹脂を硬化させた後、転写用基板を剥離して、案内溝が形成された中間分離層2を形成した。中間分離層2の厚さは約25μmとした。
中間分離層2上にL1層20を形成した。具体的には、L1層20の第1誘電体膜21として厚さ23nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40(mol%)を、記録膜22として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oを、第2誘電体膜23として厚さ15nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30がない場合のL1層20の反射率は、未記録状態でRg≒7.2%、Rl≒7.6%であり、透過率は約72%であった。
第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜21、記録膜22および第2誘電体膜23のそれと同様とした。
続けて、L1層20上に螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が設けられた中間分離層3を形成した。中間分離層3は、中間分離層2と同様の方法で形成した。中間分離層3の厚さは約18μmとした。
中間分離層3上にL2層30を形成した。具体的には、L2層30の第1誘電体膜31として厚さ24nmの(ZrO2)30(SiO2)30(In2O3)40、記録膜32として表10に示す組成の膜、第2誘電体膜33として厚さ22nmの(ZrO2)25(SiO2)25(In2O3)50(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。記録膜32は、L2層30の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
第1誘電体膜31および第2誘電体膜33の膜厚は、波長405nmのレーザ光6を照射したときに、L2層30の反射率が、未記録状態でRg≒5.7%、Rl≒6.3%、透過率が約79%となるように決定した。
第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33の成膜条件は、実施例1−1で説明した第1誘電体膜31、記録膜32および第2誘電体膜33のそれと同様とした。
その後、紫外線硬化型樹脂を第2誘電体膜33上に塗布し、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させて、厚さ約57μmのカバー層4を形成した。これにより、A面情報記録媒体101の作製を完了した。
次にB面情報記録媒体102の構成を説明する。基板1として、螺旋状の案内溝(深さ30nm、トラックピッチ(ランド−グルーブ間距離)0.225μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.5mm)を用意した。案内溝の螺旋の回転方向は、前述したA面情報記録媒体101の基板1に形成した案内溝のそれとは逆の方向とした。
その基板1上に、L0層10、中間分離層2、L1層20、中間分離層3、L2層30およびカバー層4を形成した。B面情報記録媒体102は、各情報層の構成(各膜の組成、厚さ、各情報層の反射率および透過率等)が、A面情報記録媒体101の各情報層の構成と同じとなるように、各情報層を構成する膜(第1誘電体膜、記録膜、第2誘電体膜)を形成した。各膜は、A面情報記録媒体101の形成で採用した方法と同じ方法で形成した。カバー層4も、A面情報記録媒体101のカバー層4と同じ構成とし、同じ方法で形成した。中間分離層2および3も、A面情報記録媒体101のそれらと同じ構成とした。但し、B面情報記録媒体102において、中間分離層2および3に設けた螺旋状の案内溝の回転方向は、A面情報記録媒体101の中間分離層2および3に設けた案内溝の螺旋の回転方向とは逆にした。
最後に、A面情報記録媒体101の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面に紫外線硬化型樹脂を均一に塗布し、塗布した樹脂にB面情報記録媒体102の基板1の案内溝が形成された面とは反対の面を貼り付けた。それから、紫外線により樹脂を硬化させて、貼り合わせ層5を形成した。このようにして本実施例の情報記録媒体100を作製した(ディスクNo.3−101〜102)。
(比較例3−1)
A面情報記録媒体101とB面情報記録媒体102の記録膜32を、厚さ34nmのW33Cu16Mn17Zn34−Oとしたこと以外は、実施例3−1と同じ構成の情報記録媒体を作製した(ディスクNo.3−001)。
実施例および比較例(ディスクNo.3−001)の情報記録媒体100のL2層30の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表10に示す。
ディスクNo.3−101〜102とディスクNo.3−001との比較より、記録膜32がW、Cu、Mnを含み、CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素Mをさらに含む情報記録媒体において、変調度が向上することがわかる。ディスクNo.3−101〜102のc−bERはいずれも、E−4台を示しており、良好な信号品質が得られている。すなわち、特定組成の記録膜をL2層30に適用した場合に、L2層30に記録した信号品質を向上させ得ることが確認される。良好な信号品質を得るためには、60%以上の変調度を確保することが好ましい。B面情報記録媒体102についても同様に、記録膜32の変調度が向上し、良好な信号品質が得られている。
(実施例3−2)
記録膜32として表11に示す組成の膜を形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.3−103〜115)を作製した。記録膜32は、L2層30の反射率がいずれのサンプルでも同じになるように、厚さ31nm〜34nmの範囲で調整した。
実施例および比較例(ディスクNo.3−001)の情報記録媒体100のL2層30の変調度および信号品質の評価を行った。その結果を表11に示す。
ディスクNo.3−103とディスクNo.3−001との比較より、記録膜32がW、Cu、Mn、および元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、No.3−104〜115とディスクNo.3−001との比較より、記録膜32が元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)、およびZnから選択される一つの元素をさらに含むことにより、変調度が向上することがわかる。また、記録膜32がW、Cu、Mnおよび元素M(CaおよびCeより選ばれる少なくとも一つの元素)を含み、元素m(Al、Mg、およびTaより選ばれる少なくとも一つの元素)をさらに含む情報記録媒体101(ディスクNo.3−104〜106、108〜110、112〜114)は、元素mを含まないもの(ディスクNo.3−103)と比較して、より向上した変調度を示す。信号品質は、記録膜32がいずれの組成であっても、良好な値を示している。B面情報記録媒体102についても同様に記録膜32の変調度の向上が見られ、良好な信号品質が得られている。
記録膜32がZnを含むことにより、記録膜32をDCスパッタリングで形成する際にスパッタリングの安定性をさらに向上させることができる。そのため、スパッタパワーを上げても、および/またはArガスの流量を低くしても、異常放電が発生しにくくなり、生産性が向上する。
(実施例3−3)
第1誘電体膜31として厚さ24nmの表12に示す組成の膜を形成し、記録膜32として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Ca34−Oの組成の膜を形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.3−116〜123)を作製した。
実施例の情報記録媒体100のL2層30の変調度および繰り返し再生回数を評価した。その結果を表12に示す。
ディスクNo.3−116〜123は、第1誘電体膜31に含まれる元素Dの酸化物を変化させたものである。いずれの第1誘電体膜31を適用した場合でも、変調度は67%以上の高い値である。また、第1誘電体膜31をZr、In、Sn、およびSiより選ばれる少なくとも一つの元素Dの酸化物を含むものとすることにより、中間分離層3との密着性および記録膜32との密着性をよくすることができ、良好な繰り返し再生回数を得ることができる。第1誘電体膜31に(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を適用した場合には、繰り返し再生回数が多少悪化するものの、実用上の問題はない。
第1誘電体膜31にIn2O3またはSnO2が含まれている場合、DCスパッタリングが可能である。表12に示す成膜レートは、ディスクNo.3−116の第1誘電体膜31のレートを基準値として規格化した値であり、DCスパッタリングが可能な材料は、DCスパッタリング不可の材料よりも高い成膜レート値を示している。したがって、In2O3またはSnO2を含む第1誘電体膜31は、良好な生産性で形成することができる。
(実施例3−4)
第1誘電体膜31として厚さ24nmの表13に示す組成の膜、記録膜32として厚さ34nmのW33Cu16Mn17Ca34−Oの組成の膜を形成したこと以外は、実施例3−1と同様にして情報記録媒体100(ディスクNo.3−124〜126)を作製した。
実施例の情報記録媒体100のL2層30の変調度および繰り返し再生回数を評価した。その結果を表13に示す。
ディスクNo.3−124〜126においては、第1誘電体膜31にZrO2−SiO2−In2O3系を適用し、三つの酸化物の割合を変化させている。第1誘電体膜31に含まれるZrO2量が増加すると、繰り返し再生回数がさらに増加し、より良好な繰り返し再生特性を得られることが分かる。
本開示の情報記録媒体とその製造方法は、より高い変調度を与える情報層を有するように構成されるので、高記録密度で情報を記録するのに適しており、大容量のコンテンツを記録する光ディスクに有用である。具体的にはアーカイバル・ディスク規格に準じて両面に3以上の情報層を備える、次世代の光ディスク(例えば、記録容量500GB)に有用である。