以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体10の外観を示す切り欠き斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA部を拡大した部分断面図である。
図1に示すように、本実施態様にかかる光記録媒体10は外径が約120mm、厚みが約1.2mmである円盤状の光記録媒体であり、支持基板11と、透明中間層12,13と、光透過層(保護層)19と、支持基板11と透明中間層12との間に設けられたL0層20と、透明中間層12と透明中間層13との間に設けられたL1層30と、透明中間層13と光透過層19との間に設けられたL2層40とを備えている。
L0層20は、光入射面19aから最も遠い情報記録層を構成し、以下、光入射面19aに向かってL1層30及びL2層40の順に配置されており、L2層40は光入射面19aに最も近い情報記録層を構成している。したがって、L0層20に対してデータの記録及び/又は再生を行う場合には、L1層30及びL2層40を介してレーザビームLを照射する必要があり、L1層30に対してデータの記録及び/又は再生を行う場合には、L2層40を介してレーザビームLを照射する必要がある。尚、本明細書においては、相対的に光入射面19aに近い情報記録層を「上層」の情報記録層、相対的に支持基板11に近い情報記録層を「下層」の情報記録層と呼ぶことがある。
支持基板11は、光記録媒体10に求められる厚み(約1.2mm)を確保するために用いられる厚さ約1.1mm円盤状の基板であり、その一方の面には、その中心部近傍から外縁部に向けて、グルーブ又はピット列(いずれも図示せず)が螺旋状に形成されている。支持基板11の材料としては種々の材料を用いることが可能であり、例えば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂を用いることができる。これらのうち、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、加工性などの点からポリカーボネート樹脂やオレフィン樹脂が特に好ましい。但し、支持基板11は、レーザビームLの光路とはならないことから、高い光透過性を有している必要はない。
透明中間層12は、L0層20とL1層30とを物理的及び光学的に十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面にはグルーブ又はピット列(いずれも図示せず)が設けられている。また透明中間層13は、L1層30とL2層40とを物理的及び光学的に十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面にはグルーブ又はピット列(いずれも図示せず)が設けられている。透明中間層12,13の材料としては特に限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。透明中間層12,13は、下層の情報記録層に対してデータの記録/再生を行う場合にレーザビームLの光路となることから、十分に高い光透過性を有している必要がある。詳細については後述するが、本実施態様にかかる光記録媒体10においては、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの関係は、
Da≠Db
に設定されている。
光透過層19は、レーザビームLの光路となるとともに光入射面19aを構成し、その厚みとしては、30μm〜200μmに設定することが好ましい。光透過層19の材料としては、特に限定されるものではないが、透明中間層12,13と同様、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましい。上述のとおり、光透過層19はレーザビームLの光路となることから、十分に高い光透過性を有している必要がある。
L0層20、L1層30及びL2層40はそれぞれデータを保持するため情報記録層であり、それぞれ再生専用の情報記録層であっても良いし、ユーザによる書き込みが可能な情報記録層であっても良い。また、ユーザによる書き込みが可能な情報記録層である場合、追記型の情報記録層であっても構わないし、書き換え型の情報記録層であっても構わない。さらに、L0層20、L1層30及びL2層40が互いに同じタイプの情報記録層であっても構わないし、その一部又は全部が互いに異なるタイプの情報記録層であっても構わない。例えば、L0層20が再生専用の情報記録層であり、L1層30及びL2層40が追記型の情報記録層であっても構わないし、L0層20が再生専用の情報記録層であり、L1層30が追記型の情報記録層であり、L2層40が書き換え型の情報記録層であっても構わない。
L0層20、L1層30及び/又はL2層40が再生専用の情報記録層である場合、支持基板11、透明中間層12及び/又は透明中間層13の表面には螺旋状のピット列が形成され、これによって情報が保持される。この場合、当該情報記録層に反射膜を設けることにより、再生時に照射されるレーザビームLに対する反射率を高めること好ましいが、L1層30やL2層40については高い光透過率が要求されることから、L1層30及び/又はL2層40を再生専用の情報記録層とする場合には、対応する反射膜の膜厚を非常に薄く設定する必要がある。
また、L0層20、L1層30及び/又はL2層40がユーザによる書き込みが可能な情報記録層である場合、支持基板11、透明中間層12及び/又は透明中間層13の表面には螺旋状のグルーブが設けられるとともに、当該情報記録層には記録マークを形成可能な記録膜が設けられる。かかるグルーブは、データの記録時におけるレーザビームLのガイドトラックとしての役割を果たし、これに沿って強度変調されたレーザビームLを照射することにより、記録膜に不可逆的(追記型の場合)或いは可逆的(書き換え型の場合)な記録マークを形成する。
このような構造を有する光記録媒体10からデータを再生する場合、入射面19a側からレーザビームLが照射され、その焦点がL0層20、L1層30及びL2層40のいずれか一つに合わせられる。
図2は、光記録媒体10からデータを再生する場合のレーザビームLの光路を模式的に示す図であり、(a)はL2層40に記録されたデータを再生する場合、(b)はL1層30に記録されたデータを再生する場合、(c)はL0層20に記録されたデータを再生する場合を示している。
図2(a)に示すように、L2層40に記録されたデータを再生する場合には、L2層40においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御される。これにより、レーザビームLの反射光量は主にL2層40のビームスポット内の反射率の高低、すなわち記録マークの有無に依存するため、その変化を検出することによってL2層40に記録されているデータを再生することができる。この時、レーザビームLのビームスポットはL0層20及びL1層30にも形成されるため、L0層20及びL1層30内の反射率分布(記録マークの配列状態)がレーザビームLの反射光量に影響を与えてしまう。つまり、L0層20及びL1層30に記録されているデータがL2層40からの再生信号に漏れ込んでしまう。本明細書においては、このような再生対象ではない情報記録層からのデータの漏れ込みを「層間クロストーク」と呼ぶ。
層間クロストークは、再生対象ではない情報記録層に形成されるレーザビームLのビームスポットが小さく絞られているほど顕著となることから、L2層40に記録されたデータの再生においては、隣接するL1層30との間で中程度の層間クロストークが生じるとともに、L0層20との間で弱い層間クロストークが生じることになる。
また図2(b)に示すように、L1層30に記録されたデータを再生する場合には、L1層30においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御される。この時、レーザビームLのビームスポットはL0層20及びL2層40にも形成されるため、これら情報記録層との間で層間クロストークが生じる。この場合、L0層20及びL2層40はいずれもL1層30に隣接していることから、L1層30に記録されたデータの再生においては、L0層20及びL2層40との間で中程度の層間クロストークが生じることになる。
さらに図2(c)に示すように、L0層20に記録されたデータを再生する場合には、L0層20においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御される。この時、レーザビームLのビームスポットはL1層30及びL2層40にも形成されるため、これら情報記録層との間で層間クロストークが生じる。さらにこの場合、L1層30にて反射したレーザビームL’がL2層40又はその近傍で焦点を結ぶ。レーザビームL’は、L1層30にて反射した光であるためレーザビームLよりも強度はかなり低いものの、L2層40上におけるビームスポットは、レーザビームL(光入射面19aから支持基板11側へ向かう透過光)のビームスポットに比べて非常に小さく絞られる。このため、L1層30にて反射したレーザビームL’は、L2層40からL0層20へ顕著な層間クロストークをもたらす。したがって、L0層20に記録されたデータを再生する場合、隣接するL1層30との間で中程度の層間クロストークが生じるとともに、L2層40との間で大きな層間クロストークが生じることになる。
図3は、本実施態様にかかる光記録媒体10において、ある情報記録層から他の情報記録層に与える層間クロストークの程度をまとめた図である。図3を参照すれば、総合的に見て最も層間クロストークの影響を強く受けるのはL0層20であり、次にL1層30、そして最も層間クロストークの影響が小さいのはL2層40であることが分かる。
次に、このような層間クロストークを低減可能な構造について検討する。
まず、最も大きな層間クロストークである、L2層40からL0層20への層間クロストークを低減する方法について検討する。
L2層40からL0層20への層間クロストークが非常に大きい理由は、上述の通り、L1層30にて反射したレーザビームL’のビームスポットがL2層40上において非常に小さく絞られることによる。この影響を低減するためには、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとを異ならせ(Da≠Db)、これによってL2層40上におけるレーザビームL’のビームスポットを拡大すればよい。
図4は、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとを異ならせた場合におけるレーザビームL(L’)の光路を模式的に示す図であり、(a)はDa>Dbに設定した場合、(b)はDa<Dbに設定した場合を示している。図4(a)に示すように、Da>Dbとなるように設定すると、L1層30にて反射したレーザビームL’の焦点がL2層40から見て光入射面19a側(光透過層19)において焦点を結ぶことから、L2層40上におけるレーザビームL’のビームスポットが拡大される。また図4(b)に示すように、Da<Dbとなるように設定すると、L1層30にて反射したレーザビームL’の焦点がL2層40から見て支持基板11側(透明中間層13)において焦点を結ぶことから、やはり、L2層40上におけるレーザビームL’のビームスポットが拡大される。これにより、レーザビームL’によるL2層40からL0層20への層間クロストークを低減することができる。
ここで、レーザビームL’によるL2層40からL0層20への層間クロストークを十分に低減するためには、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの差が5%以上(薄い方の透明中間層の厚さを100%とした場合の値。以下同様)であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。但し、これらの差を大きくする場合、透明中間層12又は透明中間層13を薄くすると隣接する情報記録層間における層間クロストークが増大することを考えれば、透明中間層12及び透明中間層13の一方を厚くすることが必要となる。この場合、透明中間層12及び透明中間層13の一方を過度に厚くすると、現在実用化されている光記録媒体との互換性の確保が困難となるおそれが生じることから、この点をも考慮すれば、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの差は100%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。つまり、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの差は、5%〜100%であることが好ましく、10%〜70%であることがより好ましい。
次に、透明中間層12と透明中間層13のいずれを厚く設定すべきか検討する。
透明中間層12と透明中間層13のいずれを厚く設定すべきかは、L0層20が受ける層間クロストークとL2層40が受ける層間クロストークのいずれが顕著であるかに基づいて決定することができる。つまり、透明中間層12と透明中間層13の合計層厚(Da+Db)を固定して考えれば、透明中間層12の厚さDaに対して透明中間層13の厚さDbを大きく設定すればするほど、L0層20からL1層30への層間クロストークは増大し、L2層40からL1層30への層間クロストークは減少する。逆に、透明中間層12の厚さDaに対して透明中間層13の厚さDbを小さく設定すればするほど、L0層20からL1層30への層間クロストークは減少し、L2層40からL1層30への層間クロストークは増大する。すなわち、透明中間層12と透明中間層13の合計層厚(Da+Db)が一定である限り、L1層30が受ける全体的な層間クロストークはそれほど大きく変化しないと言える。
これに対し、レーザビームL(反射したレーザビームL’を除く)によってL0層20が受ける層間クロストークは、透明中間層13の厚さDbに対して透明中間層12の厚さDaを大きく設定すればするほど減少し、L2層40が受ける層間クロストークは、透明中間層12の厚さDaに対して透明中間層13の厚さDbを大きく設定すればするほど減少する。つまり、透明中間層12と透明中間層13の合計層厚(Da+Db)が一定である場合、L0層20が受ける層間クロストークとL2層40が受ける層間クロストークは、透明中間層12の厚さDa及び透明中間層13の厚さDbに関してトレードオフの関係となる。したがって、層間クロストークの影響が本質的に顕著である方を優先した決定を行えばよい。
そして、レーザビームL’による影響が加味される分、L2層40が受ける層間クロストークよりもL0層20が受ける層間クロストークの方が顕著であることを考慮すれば、透明中間層13の厚さDbよりも透明中間層12の厚さDaの方が厚い(Da>Db)ことが好ましいと言える。したがって、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの関係をこのように設定すれば、最も層間クロストークの影響を受けやすいL0層20において、これを効果的に抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施態様にかかる光記録媒体10は3つの情報記録層(L0層20、L1層30及びL2層40)を備え、L0層20とL1層30とを分離する透明中間層12の厚さDaと、L1層30とL2層40とを分離する透明中間層13の厚さDbとの関係が
Da≠Db
に設定されていることから、L1層30にて反射したレーザビームL’に起因するL2層40からL0層20への層間クロストークを低減することができる。
またDaとDbとの関係を
Da>Db
に設定すれば、最も層間クロストークの影響を受けやすいL0層20において、これを効果的に抑制することが可能となる。
以上、積層された3つの情報記録層を備える光記録媒体を例に説明したが、4層以上の情報記録層を有する光記録媒体に適用することも可能である。この場合には、隣り合う任意の透明中間層の厚みが互いに異なっていればよく、隣り合う全ての透明中間層の厚みが互いに異なっていることがより好ましい。次に、積層された4つの情報記録層を備える光記録媒体について説明する。
図5は、他の実施態様にかかる光記録媒体100の部分断面図である。本実施態様にかかる光記録媒体100の外観は、図1(a)に示した光記録媒体10と同様、外径が約120mm、厚みが約1.2mmである円盤状の光記録媒体であり、図5にはそのA部を拡大した状態が示されている。尚、光記録媒体100に含まれる構成要素のうち、上述した光記録媒体10と同じ構成要素については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
図5に示すように、本実施態様にかかる光記録媒体100は、支持基板11と、透明中間層12〜14と、光透過層(保護層)19と、支持基板11と透明中間層12との間に設けられたL0層20と、透明中間層12と透明中間層13との間に設けられたL1層30と、透明中間層13と透明中間層14との間に設けられたL2層40と、透明中間層14と光透過層19との間に設けられたL3層50とを備える。つまり、本実施態様にかかる光記録媒体100は、上述した光記録媒体10に対して透明中間層14及びL3層50が追加された構成を有しており、L3層50は光入射面19aに最も近い情報記録層を構成している。
したがって、L0層20に対してデータの記録/再生を行う場合には、L1層30、L2層40及びL3層50を介してレーザビームLを照射する必要があり、L1層30に対してデータの記録/再生を行う場合には、L2層40及びL3層50を介してレーザビームLを照射する必要があり、L2層40に対してデータの記録/再生を行う場合には、L3層50を介してレーザビームLを照射する必要がある。
透明中間層14は、L2層40とL3層50とを物理的及び光学的に十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面にはグルーブ又はピット列(いずれも図示せず)が設けられている。透明中間層14の材料としては、透明中間層12,13と同じ材料を用いればよい。本実施態様にかかる光記録媒体100では、透明中間層12の厚さDa、透明中間層13の厚さDb及び透明中間層14の厚さDcの関係については、
Da≠Db、及び
Db≠Dc
の少なくとも一方が満たされており、その両方が満たされていることが好ましい。
またL3層50は、L0層20、L1層30及びL2層40と同様、再生専用の情報記録層であっても良いし、ユーザによる書き込みが可能な情報記録層であっても良い。さらに、L0層20、L1層30、L2層40及びL3層50が互いに同じタイプの情報記録層であっても構わないし、その一部又は全部が互いに異なるタイプの情報記録層であっても構わない。
このような構造を有する光記録媒体100からデータを再生する場合、入射面19a側からレーザビームLが照射され、その焦点がL0層20、L1層30、L2層40及びL3層50のいずれか一つに合わせられる。
図6は、光記録媒体100からデータを再生する場合のレーザビームLの光路を模式的に示す図であり、(a)はL3層50に記録されたデータを再生する場合、(b)はL2層40に記録されたデータを再生する場合、(c)はL1層30に記録されたデータを再生する場合、(d)はL0層20に記録されたデータを再生する場合を示している。
図6(a)に示すように、L3層50に記録されたデータを再生する場合、L3層50においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御されるが、レーザビームLのビームスポットは他の情報記録層にも形成されるため、これら他の情報記録層との間で層間クロストークが生じる。上述の通り、層間クロストークは、再生対象ではない情報記録層に形成されるレーザビームLのビームスポットが小さく絞られているほど顕著となることから、L3層50に記録されたデータの再生においては、隣接するL2層40との間で中程度の層間クロストークが生じ、L1層30との間で弱い層間クロストークが生じ、L0層20との間で僅かな層間クロストークが生じることになる。
また図6(b)に示すように、L2層40に記録されたデータを再生する場合、L2層40においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御されるが、レーザビームLのビームスポットは他の情報記録層にも形成されるため、これら他の情報記録層との間で層間クロストークが生じる。この場合、L1層30及びL3層50はいずれもL2層40に隣接していることから、L2層40に記録されたデータの再生においては、隣接するL1層30及びL3層50との間で中程度の層間クロストークが生じるとともに、L0層20との間で弱い層間クロストークが生じることになる。
さらに図6(c)に示すように、L1層30に記録されたデータを再生する場合には、L1層30においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御されるが、レーザビームLのビームスポットは他の情報記録層にも形成されるため、これら他の情報記録層との間で層間クロストークが生じる。さらにこの場合、L2層40にて反射したレーザビームL’がL3層50又はその近傍で焦点を結ぶため、L3層50上におけるレーザビームL’のビームスポットは非常に小さく絞られる。このため、L2層40にて反射したレーザビームL’は、L3層50からL1層30へ顕著な層間クロストークをもたらす。したがって、L1層30に記録されたデータを再生する場合、隣接するL0層20及びL2層40との間で中程度の層間クロストークが生じるとともに、L3層50との間で大きな層間クロストークが生じることになる。
さらに図6(d)に示すように、L0層20に記録されたデータを再生する場合には、L0層20においてレーザビームLのビームスポットが実質的に最小となるようにフォーカス制御されるが、レーザビームLのビームスポットは他の情報記録層にも形成されるため、これら他の情報記録層との間で層間クロストークが生じる。さらにこの場合、L1層30にて反射したレーザビームL’がL2層40又はその近傍で焦点を結ぶため、L2層40上におけるレーザビームL’のビームスポットは非常に小さく絞られる。このため、L1層30にて反射したレーザビームL’は、L2層40からL0層20へ顕著な層間クロストークをもたらす。一方、レーザビームLはL2層40においても反射するが、反射したレーザビームL’の焦点はL3層50から比較的離れるため、レーザビームL’によるL3層50からL0層20へ層間クロストークの影響は僅かである。したがって、L0層20に記録されたデータを再生する場合、隣接するL1層30との間で中程度の層間クロストークが生じ、L2層40との間で大きな層間クロストークが生じ、L3層50との間で僅かな層間クロストークが生じることになる。
図7は、本実施態様にかかる光記録媒体100において、ある情報記録層から他の情報記録層に与える層間クロストークの程度をまとめた図である。図7を参照すれば、総合的に見て最も層間クロストークの影響を強く受けるのはL1層30であり、以下、L0層20、L2層40、L3層50の順であることが分かる。
このような層間クロストークを低減するためには、上述の通り、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとを異ならせることにより(Da≠Db)、L0層20からのデータ再生時においてL2層40上に形成されるレーザビームL’のビームスポットを拡大し、透明中間層13の厚さDbと透明中間層14の厚さDcとを異ならせることにより(Db≠Dc)、L1層30からのデータ再生時においてL3層50上に形成されるレーザビームL’のビームスポットを拡大すればよい。
図8は、透明中間層13の厚さDbと透明中間層14の厚さDcとを異ならせた場合におけるレーザビームL(L’)の光路を模式的に示す図であり、(a)はDb>Dcに設定した場合、(b)はDb<Dcに設定した場合を示している。尚、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとを異ならせた場合におけるレーザビームL(L’)の光路については、図4に示した通りである。
図8(a)に示すように、Db>Dcとなるように設定すると、L2層40にて反射したレーザビームL’の焦点がL3層50から見て光入射面19a側(光透過層19)において焦点を結ぶことから、L3層50上におけるレーザビームL’のビームスポットが拡大される。また、図8(b)に示すように、Db<Dcとなるように設定すると、L2層40にて反射したレーザビームL’の焦点がL3層50から見て支持基板11側(透明中間層14)において焦点を結ぶことから、やはり、L3層50上におけるレーザビームL’のビームスポットが拡大される。これにより、レーザビームL’によるL3層50からL1層30への層間クロストークを低減することができる。
また、レーザビームL(反射したレーザビームL’を除く)に起因する層間クロストークを効果的に抑制しつつ、これら透明中間層12〜14の厚さをDa≠Db、且つ、Db≠Dcに設定するためには、
Da<Db、且つ
Db>Dc
に設定することが好ましい。これによれば、レーザビームL(反射したレーザビームL’を除く)に起因する層間クロストークの影響を強く受けるL1層30及びL2層40においてこれを効果的に抑制することが可能となるばかりでなく、透明中間層12〜14の合計層厚(Da+Db+Dc)の増大を抑制することが可能となるので、現在実用化されている光記録媒体との互換性を確保しやすいという利点がある。
この場合、透明中間層12の厚さDaと透明中間層14の厚さDcの大小関係については特に限定されず、Da>Dc、Da<Dc、Da=Dcのいずれであっても構わないが、L3層50よりもL0層20の方が層間クロストークの影響が顕著である点を考慮すれば、透明中間層12の厚さDaと透明中間層14の厚さDcとの関係は、
Da>Dc
に設定することが好ましい。
したがって透明中間層12〜14の厚さ(Da,Db,Dc)の関係は、
Db>Da>Dc
に設定することが最も好ましい。このように設定すれば、各情報記録層間において生じる層間クロストークを最も効果的に抑制することができるとともに、透明中間層12〜14の合計層厚(Da+Db+Dc)の増大を抑制することが可能となるので、現在実用化されている光記録媒体との互換性を十分に確保することが可能となる。
尚、5層以上の情報記録層を有する光記録媒体の場合、連続する任意の3つの透明中間層の厚みが上記の関係を満たすように設定することが好ましい。さらに、5層以上の情報記録層を有する光記録媒体においては、図9に示すように、下層の情報記録層(L0層20)からデータを再生する場合、反射したレーザビームL’が4つ離れた上層の情報記録層(L4層60)又はその近傍において焦点を結ぶおそれがあることから、隣り合う2つの透明中間層の厚みが互いに異なるよう設定するのみならず、連続する任意の4つの透明中間層(透明中間層12〜15)のうち、支持基板11側に位置する2つの透明中間層(透明中間層12,13)の合計層厚(Da+Db)と光入射面19a側に位置する2つの透明中間層(透明中間層14,15)の合計層厚(Dc+Dd)が互いに異なるよう設定することがさらに好ましい。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記各実施態様にかかる光記録媒体10,100は、層厚の薄い光透過層19側からレーザビームLが入射される、いわゆる次世代型の光記録媒体であるが、本発明の適用が可能な光記録媒体がこのような次世代型の光記録媒体に限定されるものではなく、DVDのように基板側からレーザビームLが入射されるタイプの光記録媒体に対しても適用可能である。DVD型の光記録媒体では、支持基板11に相当する要素は厚さ約0.6mmの光透過性基板となり、光透過層19に相当する要素は厚さ約0.6mmのダミー基板となる。したがって、本発明において「基板」とは、DVD型の光記録媒体のようにその表面が光入射面となる場合には光透過性基板であることを意味し、光記録媒体10のようにその表面が光入射面とならない場合には支持基板であることを意味する。同様に、本発明において「保護層」とは、光記録媒体10のようにその表面が光入射面となる場合には光透過層であることを意味し、DVD型の光記録媒体のようにその表面が光入射面とならない場合には支持基板であることを意味する。
また本発明は、積層された3以上の情報記録層を備えた光記録媒体である限り、各情報記録層のタイプ(再生専用型、追記型、書き換え型)については特に限定されないが、積層された3以上の情報記録層を有する光記録媒体においては、最下層に位置する情報記録層(L0層)から見て上層の情報記録層(L1層,L2層・・・)には非常に高い光透過率が要求されるばかりでなく、記録の前後における反射率差が十分である必要もある。このような条件を満たすためには、上層の情報記録層を追記型とする場合、その記録膜の材料として、ZnSとSiO2の混合物又はLaSiON(La2O3,SiO2及びSi3N4の混合物)を主成分とする誘電体母材にマグネシウム(Mg)及び/又はアルミニウム(Al)が添加された材料を用いることが好ましい。このような材料は、青色波長領域(λ=380nm〜450nm)のレーザビームLに対する光透過率が非常に高いばかりでなく、記録の前後における反射率差も十分であり、上層の情報記録層を構成する記録膜の材料として好適である。
このような材料からなる記録膜に対する記録のメカニズムは、相変化を伴っている。すなわち、上記材料からなる記録膜の所定の部分にレーザビームLが照射されると、その熱によって当該部分の相状態が変化して記録マークとなる。このとき、記録膜において記録マークの形成された部分とそれ以外の部分(ブランク領域)とではレーザビームLに対する反射率が大きく異なるため、これを利用してデータの記録・再生を行うことができる。
ここで、誘電体母材に添加されるマグネシウム(Mg)及び/又はアルミニウム(Al)は誘電体母材に対する記録補助材としての役割を果たす。すなわち、上記誘電体母材はそれ単独でも相変化を起こすものの、これに記録補助材を添加すれば誘電体母材の相変化がより促進され、その結果、記録特性及び再生特性が大幅に向上する。さらに、記録補助材は誘電体母材の相変化に伴って自身が状態変化(例えば結晶成長)することがあり、この場合、この変化によってC/N比がいっそう向上する。
一方、最下層の情報記録層については光透過率は問題とならないものの、上層の情報記録層(L1層,L2層・・・)を介してレーザビームLが照射されることから非常に高い反射率が求められる。このような条件を満たすためには、最下層の情報記録層を追記型とする場合、その記録膜としては、上記の材料を用いることも可能であるが、少なくとも2つの無機反応膜からなる積層体を用いることがより好ましい。
この場合、一方の無機反応膜の材料としては、アルミニウム(Al),シリコン(Si),ゲルマニウム(Ge),炭素(C),錫(Sn),金(Au),亜鉛(Zn),銅(Cu),ホウ素(B),マグネシウム(Mg),チタン(Ti),マンガン(Mn),鉄(Fe),ガリウム(Ga),ジルコニウム(Zr),銀(Ag),ビスマス(Bi)及び白金(Pt)からなる群より選ばれた一の材料を主成分とし、他方の無機反応膜の材料としては上記群より選ばれた他の材料を主成分とすることが好ましい。特に、再生信号のノイズレベルをより低く抑えるためには、一方の無機反応膜の主成分を銅(Cu),アルミニウム(Al),亜鉛(Zn)又は銀(Ag)とし、他方の無機反応膜の主成分をシリコン(Si),ゲルマニウム(Ge)又は錫(Sn)とすることが好ましく、一方の無機反応膜の主成分を銅(Cu)とし他方の無機反応膜の主成分をシリコン(Si)とすることが最も好ましい。この場合、光透過層側に位置する無機反応膜の主成分がシリコン(Si)であり、支持基板側に位置する無機反応膜の主成分が銅(Cu)であることが好ましい。無機反応膜の材料としてこのような元素を主成分とする材料を用いることにより、再生信号のノイズレベルをより低く抑えることができるとともに、環境負荷を抑制することが可能となる。
また、一方の無機反応膜の主成分が銅(Cu)である場合には、これにアルミニウム(Al),亜鉛(Zn),錫(Sn),金(Au)又はマグネシウム(Mg)が添加されていることが好ましく、一方の無機反応膜の主成分がアルミニウム(Al)である場合には、これにマグネシウム(Mg),金(Au),チタン(Ti)又は銅(Cu)が添加されていることが好ましく、一方の無機反応膜の主成分が亜鉛(Zn)である場合には、これにマグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)又は銅(Cu)が添加されていることが好ましく、一方の無機反応膜の主成分が銀(Ag)である場合には、これに銅(Cu)又はパラジウム(Pd)が添加されていることが好ましい。このような元素を添加すれば、再生信号のノイズレベルがより低く抑えられるとともに、長期間の保存に対する信頼性を高めることが可能となる。
このような構造を持つ記録膜に対する記録のメカニズムは、各無機反応膜を構成する材料がレーザビームLの熱により溶融・混合することによる。このとき、各無機反応膜を構成する材料が混合された記録マーク部分と未混合の部分(ブランク領域)とではレーザビームLに対する反射率が大きく異なるため、これを利用してデータの記録・再生を行うことができる。
以下、実施例を用いて本発明について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[特性比較試験1]
特性比較試験1では、4層構造の情報記録層において、L3層50から他の情報記録層(L0層20、L1層30及びL2層40)へどの程度の層間クロストークが生じるのか調べた。
[サンプルの作製]
以下の方法により、図5に示す構造と同じ構造を有する4層構造の光記録媒体サンプル#1を作製した。
まず、射出成型法により、厚さ1.1mm、直径120mmであり、表面に螺旋状のグルーブ(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=0.32μm)が形成されたポリカーボネートからなるディスク状の支持基板11を作製した。
次に、この支持基板11をスパッタリング装置にセットし、グルーブが形成されている側の表面に銀(Ag)、パラジウム(Pd)及び銅(Cu)の合金からなる厚さ100nmの反射膜、ZnSとSiO2の混合物(モル比=80:20)からなる厚さ39nmの第2誘電体膜、銅(Cu)を主成分としこれにアルミニウム(Al)が23atm%添加され、金(Au)が13atm%添加された厚さ5nmの無機反応膜、シリコン(Si)からなる厚さ5nmの無機反応膜、ZnSとSiO2の混合物(モル比=80:20)からなる厚さ20nmの第1誘電体膜を順次スパッタ法により形成した。以上により、L0層20が完成した。
次に、L0層20が形成された支持基板11をスピンコート装置にセットし、回転させながら、L0層20上にアクリル系紫外線硬化性樹脂を滴下し、これをスピンコートした。次いで、スピンコートされた樹脂層の表面に螺旋状のグルーブパターンを有する透光性の樹脂性スタンパを載置し、このスタンパを介して樹脂溶液に紫外線を照射することによって樹脂溶液層を硬化させ、スタンパを剥離した。これにより、螺旋状のグルーブ(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=0.32μm)を有する厚さ10μmの透明中間層12(Da=10μm)が完成した。
次に、L0層20及び透明中間層12が形成された支持基板11をスパッタリング装置にセットし、ZnSとSiO2の混合ターゲット(モル比=80:20)とマグネシウム(Mg)からなるターゲットの両方を用いて、ZnSとSiO2の混合物とマグネシウム(Mg)との原子比が約50:50である厚さ32nmのL1記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L1層30が完成した。
次に、上記透明中間層12の形成と同じ方法を用いて、L1層30上に厚さ10μmの透明中間層13(Db=10μm)を形成した後、上記L1記録膜の形成と同じ方法を用いて、透明中間層13上に厚さ24nmのL2記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L2層40が完成した。
さらに、上記透明中間層12の形成と同じ方法を用いて、L2層40上に厚さ10μmの透明中間層14(Dc=10μm)を形成した後、上記L1記録膜の形成と同じ方法を用いて、透明中間層14上に厚さ18nmのL3記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L3層50が完成した。
そして、L3層50上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して厚さ85μmの光透過層19を形成した。
以上により、光記録媒体サンプル#1が完成した。
[サンプルの評価]
次に、上記光記録媒体サンプル#1を光ディスク評価装置(商品名:DDU1000、パルステック社製)にセットし、5.3m/secの線速度で回転させながら、開口数が0.85である対物レンズを介して波長が405nmであるレーザビームをL3層50に照射し、1,7RLL変調方式における8T単一信号を記録した。一方、L0層20、L1層30及びL2層40に対しては記録は行わなかった。そして、L0層20、L1層30、L2層40及びL3層50に対して、再生パワーPrに設定されたレーザビームLを照射し、得られる8T信号のC/N比を測定した。
測定の結果を図10に示す。図10に示すように、未記録であるL0層20、L1層30及びL2層40においても、L3層50に記録した8T信号が漏れ込んでいることが確認された。このような層間クロストークは、L1層30において最も大きく、以下L2層40、L0層20の順となったが、特に、L1層30への層間クロストークは、L2層40やL0層20への層間クロストークに比べて非常に大きかった。これは、透明中間層13の厚さDbと透明中間層14の厚さDcが一致しているため(Db=Dc=10μm)、L1層30にレーザビームLのフォーカスを合わせると、L2層40にて反射したレーザビームL’が8T信号が記録されているL3層50において焦点を結ぶためであると考えられる。尚、L2層40の方がL0層20に比べてL3層50からの層間クロストークが大きかったのは、L2層40の方がL3層50に近いためである。
[特性比較試験2]
特性比較試験2では、3層構造の光記録媒体において、2つの透明中間層の厚さの差と層間クロストークとの関係を調べた。
[サンプルの作製]
以下の方法により、図1に示す構造と同じ構造を有する3層構造の光記録媒体サンプル#2−1を作製した。
まず、射出成型法により、厚さ1.1mm、直径120mmであり、表面に螺旋状のグルーブ(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=0.32μm)が形成されたポリカーボネートからなるディスク状の支持基板11を作製した。
次に、この支持基板11をスパッタリング装置にセットし、グルーブ及びランドが形成されている側の表面にZnSとSiO2の混合ターゲット(モル比=80:20)とマグネシウム(Mg)からなるターゲットの両方を用いて、ZnSとSiO2の混合物とマグネシウム(Mg)との原子比が約50:50である厚さ32nmのL0記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L0層20が完成した。
次に、L0層20が形成された支持基板11をスピンコート装置にセットし、回転させながら、L0層20上にアクリル系紫外線硬化性樹脂を滴下し、これをスピンコートした。次いで、スピンコートされた樹脂層の表面に螺旋状のグルーブパターンを有する透光性の樹脂性スタンパを載置し、このスタンパを介して樹脂溶液に紫外線を照射することによって樹脂溶液層を硬化させ、スタンパを剥離した。これにより、螺旋状のグルーブ(トラックピッチ(グルーブのピッチ)=0.32μm)を有する厚さ13μmの透明中間層12(Da=13μm)が完成した。
次に、上記L0層20の形成と同じ方法を用いて、ZnSとSiO2の混合物とマグネシウム(Mg)との原子比が約50:50である厚さ24nmのL1記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L1層30が完成した。
次に、上記透明中間層12の形成と同じ方法を用いて、L1層30上に厚さ10μmの透明中間層13(Db=10μm)を形成した後、上記L1記録膜の形成と同じ方法を用いて、透明中間層13上に厚さ18nmのL2記録膜をスパッタリング法により成膜した。以上により、L2層40が完成した。
そして、L2層40上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂をスピンコート法によりコーティングし、これに紫外線を照射して厚さ88.5μmの光透過層19を形成した。
以上により、光記録媒体サンプル#2−1が完成した。
次に、透明中間層13の厚さ(Db)を13μmに設定し、光透過層19の厚さを87μmに設定した他は、光記録媒体サンプル#2−1と同様の方法を用いて光記録媒体サンプル#2−2を作製した。
さらに、透明中間層13の厚さ(Db)を15μmに設定し、光透過層19の厚さを86μmに設定した他は、光記録媒体サンプル#2−1と同様の方法を用いて光記録媒体サンプル#2−3を作製した。
そして、透明中間層13の厚さ(Db)を17μmに設定し、光透過層19の厚さを85μmに設定した他は、光記録媒体サンプル#2−1と同様の方法を用いて光記録媒体サンプル#2−4を作製した。
[サンプルの評価]
次に、上記光記録媒体サンプル#1におけるサンプルの評価と同じ条件の下、光記録媒体サンプル#2−1〜#2−4のL2層40に対しそれぞれ8T単一信号を記録した。各光記録媒体サンプルとも、L0層20及びL1層30に対しては記録は行わなかった。そして、各光記録媒体サンプルのL0層20に対して再生パワーPrに設定されたレーザビームLを照射し、層間クロストークによる8T信号の漏れ込みを測定した。L0層20は、L1層30にて反射したレーザビームL’の影響により、L2層40からの層間クロストークを顕著に受ける情報記録層である。
測定の結果を図11に示す。図11に示すように、L2層40からL0層20への層間クロストークは、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとが等しい光記録媒体サンプル#2−2(Da=Db=13μm)において最大となり、両者の差が大きいほど層間クロストークが減少することが確認された。これにより、隣り合う透明中間層の厚さを一致させると、2つ離れた情報記録層からの層間クロストークが顕著に発生することが確認された。
尚、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの差が2μmである光記録媒体サンプル#2−3よりも、これらの差が3μmである光記録媒体サンプル#2−1の方が層間クロストークが大きかったのは、光記録媒体サンプル#2−1の方がL0層20とL2層40との距離が近いためである。
[特性比較試験3]
特性比較試験3では、3層構造の光記録媒体において、2つの透明中間層の厚さを変えることにより各情報記録層の総合的な層間クロストークがどのように変化するのか調べた。
[サンプルの作製]
基本的に特性比較試験2におけるサンプルの作製と同様の方法を用い、透明中間層12と透明中間層13の合計層厚(Da+Db)が40μmとなるよう、それぞれの厚さを種々に設定して多数の光記録媒体サンプル#3を作製した。
[サンプルの評価]
次に、上記光記録媒体サンプル#1におけるサンプルの評価と同じ条件の下、各光記録媒体サンプル#3に含まれる2つの情報記録層に対し8T単一信号を記録し、残りの情報記録層に対しては記録は行わなかった。そして、各光記録媒体サンプルの情報記録層のうち、記録を行わなかった情報記録層に対して再生パワーPrに設定されたレーザビームLを照射し、信号が記録されている2つの情報記録層からの8T信号の漏れ込みを測定した。
測定の結果を図12に示す。
図12に示すように、L2層40への層間クロストークは、透明中間層13の厚さDbが大きくなるにつれて単調に減少する傾向が確認された。また、L1層30への層間クロストークは、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbが一致している場合(Da=Db=20μm)に最小となったが、各透明中間層の厚さに対して大きな依存性はなく、全体的に高い値を示した。
一方、L0層20への層間クロストークは、透明中間層12の厚さDaが大きくなるにつれて減少する傾向が確認されたが、かかる減少傾向は透明中間層12の厚さDaが20μm以下の範囲においては緩やかである一方、透明中間層12の厚さDaが20μmを超える範囲においては急激となった。
ここで、透明中間層12の厚さDaが20μm以下の範囲において、透明中間層12の厚さDaの増大によるL0層20への層間クロストークの減少が緩やかであったのは、この範囲では透明中間層12の厚さDaが大きくなるにつれてL1層30からの層間クロストークの影響が減少する一方、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbの差が小さくなることから、L2層40からの層間クロストークが増大したためであると考えられる。一方、透明中間層12の厚さDaが20μmを超える範囲において、透明中間層12の厚さDaの増大によるL0層20への層間クロストークの減少が急激であったのは、この範囲では透明中間層12の厚さDaが大きくなるにつれてL1層30からの層間クロストークの影響が減少するのみならず、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbの差が大きくなることから、L2層40からの層間クロストークについても減少したためであると考えられる。
これにより、3層構造の光記録媒体においては、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの関係をDa>Dbに設定することにより、全体的な層間クロストークを最も効果的に抑制できることが確認された。
[特性比較試験4]
特性比較試験4では、4層構造の光記録媒体において、3つの透明中間層の厚さを変えることにより各情報記録層の総合的な層間クロストークがどのように変化するのか調べた。
[サンプルの作製]
基本的に特性比較試験1におけるサンプルの作製と同様の方法を用い、透明中間層12、透明中間層13及び透明中間層14の合計層厚(Da+Db+Dc)が60μmとなるよう、それぞれの厚さを種々に設定して多数の光記録媒体サンプル#4を作製した。
[サンプルの評価]
まず、上記光記録媒体サンプル#1におけるサンプルの評価と同じ条件の下、光記録媒体サンプル#4のうち、透明中間層12、透明中間層13及び透明中間層14の層厚が等しいサンプル(Da=Db=Dc=20μm、以下、「基本サンプル」と呼ぶ)を4枚準備し、それぞれ異なる3つの情報記録層に対し8T単一信号を記録し、残りの情報記録層に対しては記録は行わなかった。そして、この4枚の基本サンプルに含まれる情報記録層のうち、記録を行わなかった情報記録層に対して再生パワーPrに設定されたレーザビームLを照射し、信号が記録されている3つの情報記録層からの8T信号の漏れ込みを測定した。
その結果、L0層20、L1層30、L2層40及びL3層50への層間クロストークは、それぞれ20.6dB、23.3dB、19.8dB及び13.1dBであり、基本サンプル(Da=Db=Dc=20μm)では、L1層30への層間クロストークが最も大きく、以下、L0層20、L2層40、L3層50の順であった。
次に、残りの光記録媒体サンプル#4についても、上記と同様にして8T単一信号の記録及び層間クロストークの測定を行い、基本サンプル(Da=Db=Dc=20μm)に対する層間クロストークの改善値を三元図にプロットした。ここで改善値とは、基本サンプルの最も大きなクロストーク(CE1)と、残りの光記録媒体サンプル#4の最も大きなクロストーク(CE2)との差(CE2−CE1)によって定義される。例えば、ある光記録媒体サンプル#4において、L0層20、L1層30、L2層40及びL3層50についての層間クロストークがそれぞれ20.6dB、21.3dB、20.6dB及び16.1dBであるとすれば、本光記録媒体サンプル#4の改善値は−2dB(=21.3dB−23.3dB)である。
測定の結果を図13に示す。図13に示すように、透明中間層12の厚さDaが合計層厚の20%〜40%、透明中間層13の厚さDbが合計層厚の35%〜60%、透明中間層14の厚さDcが合計層厚の20%〜40%である光記録媒体サンプル#4において高い改善率がみられ、透明中間層12の厚さDaが合計層厚の22%〜36%、透明中間層13の厚さDbが合計層厚の36%〜55%、透明中間層14の厚さDcが合計層厚の22%〜32%である光記録媒体サンプル#4において特に高い改善率がみられた。
これにより、4層構造の光記録媒体においては、透明中間層12の厚さDaと透明中間層13の厚さDbとの関係をDa<Dbに設定するとともに、透明中間層13の厚さDbと透明中間層14の厚さDcとの関係をDb>Dcに設定することにより、全体的な層間クロストークを効果的に抑制できることが確認された。
また、図13に示すように、Da<Db、且つ、Db>Dcの領域内においては、Da>Dcの領域の方がDa<Dcの領域よりも全体的にやや改善率が高い傾向が見られる。これにより、4層構造の光記録媒体においては、透明中間層12の厚さDa、透明中間層13の厚さDb及び透明中間層14の厚さDcの関係をDb>Da>Dcに設定することにより、全体的な層間クロストークを最も効果的に抑制できることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、3以上の情報記録層を備える光記録媒体において生じる層間クロストークを効果的に低減することができる。