JP2006247897A - 追記型光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層において、該記録層がB、P、Ga、As、Se、Tc、Pd、Ag、Sb、Te、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Po、At、Cdから選択される一種以上の元素Xを含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
【選択図】 なし
Description
この他、金属又は半金属の酸化物を記録層とした追記型光記録媒体としては、特許文献1〜2に高信頼性を有するTeOx−Pd記録膜が提案されている。これらの文献では、膜厚方向にTeOx−Pd記録膜の組成比を変えて保存安定性等の信頼性を高めている。また、TeOx−Pdからなる記録層としては、この他に非特許文献1〜2に記載があるが、信頼性改善の方法として酸化度の制御以外の記載はない。
しかしながら、これらの技術は、透光性、強磁性のアモルファス酸化物材料に関するものであって、用途は、光磁気記録媒体、磁気によって光を制御する機能素子、光磁気センサー、透明導電膜、圧電膜などである。また、これらの他社先行技術は、材料や製造方法に関する特許が主体であり、追記型光記録媒体への応用についての言及はない。
しかし、鋭意検討の結果、上記添加元素(本発明で言う元素Xに相当)以外にも、優れた記録再生特性と信頼性(再生安定性や保存安定性等)を有する添加元素が存在することが明らかになってきた。逆に言えば、自社先行技術では、ビスマスと酸素以外に添加できる好ましい添加元素を見出しているが、添加元素として必要な物性を明らかにするには至っていなかった。
そこで本発明では、構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層について、記録再生特性、信頼性を十分確保することができる、自社先行技術では見出されていなかった添加元素及び物性を探索し、特性の優れた追記型光記録媒体を提供することを目的とする。
1) 構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層を有し、該記録層が更にB、P、Ga、As、Se、Tc、Pd、Ag、Sb、Te、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Po、At、Cdから選択される一種以上の元素Xを含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 元素Xが、B、P、Ga、Se、Pd、Ag、Sb、Te、W、Pt、Auであることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) ビスマスに対する元素Xの総量の原子数比が1.25以下であることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
4) 基板上に、1)〜3)の何れかに記載の記録層、上引層、反射層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
5) 基板上に、下引層、1)〜3)の何れかに記載の記録層、上引層、反射層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
6) 基板上に、反射層、上引層、1)〜3)の何れかに記載の記録層、カバー層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
7) 基板上に、反射層、上引層、1)〜3)の何れかに記載の記録層、下引層、カバー層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
8) 下引層、及び/又は上引層が、ZnS、及び/又はSiO2を主成分とすることを特徴とする4)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 下引層、及び/又は上引層が、有機材料からなることを特徴とする4)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
10) 680nm以下のレーザ光により記録再生可能であることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
本発明の追記型光記録媒体の記録層は、構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有することを特徴とする。ビスマスは、金属ビスマス、ビスマス合金、ビスマス酸化物、ビスマス硫化物、ビスマス窒化物、ビスマス弗化物等の何れの状態で含有されていてもよいが、酸化ビスマス(ビスマス酸化物の1つ)は必ず含有されていなければならない。記録層中に酸化ビスマスを含有させることにより、記録層の熱伝導率を低くすることができ、高感度化や低ジッタ化を図ることができるし、記録層の複素屈折率虚部を小さくすることができるので、透過性に優れた記録層となり、多層化が容易になる。
更に本発明では、記録再生特性の改良のため、記録層中にビスマス以外の元素Xを添加することを特徴としている。
ビスマス及び元素Xは、安定性向上や熱伝導率の観点から、例えば、酸化状態で存在させることが望ましいが、完全に酸化させる必要はない。即ち、本発明の記録層がビスマス、元素X、酸素の3元素から構成される場合、ビスマス、ビスマス酸化物、元素X、元素Xの酸化物が含まれていても良い。
(イ)ビスマス酸化物ターゲットを用いてスパッタする方法
(ロ)ビスマスターゲットと、ビスマス酸化物のターゲットを用いてスパッタする方法
(共スパッタ法)
(ハ)ビスマスターゲットを用い、酸素導入を行ないながらスパッタする方法
(イ)の方法では、ターゲット中のビスマスが完全に酸化した状態となっているが、真空度やスパッタパワー等のスパッタ条件により、酸素が欠損し易いという現象を利用するものである。
更に、構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層では、記録によって、ビスマスの酸化物やビスマスが結晶化するが、この結晶や結晶粒の大きさを元素Xによって制御できる。したがって、元素Xによって記録部の結晶や結晶粒の大きさを制御することができ、ジッタ等の記録再生特性を大きく向上できる。これが記録層に元素Xを添加する、もう1つの理由である。
即ち、本発明者らは、記録層に添加する元素Xの必要要件を鋭意検討した結果、下記(I)〜(II)の条件が有効であることを見出した。
(I)Paulingの電気陰性度が1.80以上の元素
(II)Paulingの電気陰性度が1.65以上、かつ酸化物の標準生成エンタル
ピーΔHf 0が、−1000(kJ/mol)以上である、遷移金属を除く元素
この(I)〜(II)を満足する元素Xを用いることにより、ジッタ等の記録再生特性が良好で、かつ高い信頼性を有する追記型光記録媒体を実現できる。
構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層の信頼性が低下する主な原因は、酸化の進行、或いは酸化状態の変化(価数の変化等)である。この酸化の進行や酸化状態の変化が信頼性の低下を招く恐れがあるため、元素Xの物性値としてPaulingの電気陰性度と、酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0が重要になるのである。
信頼性を十分高めるためには、第一に、元素Xとして、Paulingの電気陰性度が1.80以上の元素を選ぶことが好ましい。これは、Paulingの電気陰性度が高い元素では、酸化が進行しにくいためであり、十分な信頼性を確保するためには、1.80以上のPaulingの電気陰性度を有する元素が有効であることによる。また、Paulingの電気陰性度が1.80以上であれば、酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0がどのような値をとっても構わない。
Paulingの電気陰性度が1.80以上の元素Xとしては、B、Si、P、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Ge、As、Se、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Po、Atが挙げられる。
電気陰性度とは、分子内に存在する原子が、電子をどれだけ自分自身に引きつけるかを表した尺度のことである。電気陰性度の値の決め方には、Paulingの電気陰性度、Mullikenの電気陰性度、Allred−Rochowの電気陰性度などがあるが、本発明では、Paulingの電気陰性度を用いて、元素Xとしての適正を判断する。
Paulingの電気陰性度は、分子ABの結合エネルギーE(AB)は、分子AAと分子BBの結合エネルギー〔各々E(AA)、E(BB)〕の平均よりも大きく、この差が各原子の電気陰性度(χA、χB)の差の二乗であると定義する。即ち、次式(1)のようになる。
E(AB)−〔E(AA)+E(BB)〕/2=96.48(χA−χ)2……(1)
Paulingの電気陰性度では、電子ボルトを使って電気陰性度の値を決めたため、式中には変換係数の96.48(1eV=96.48kJmol−1)が入る。
注目する元素が分子中でどのような原子価をとるかによって電気陰性度が異なるため、本発明では各元素のPaulingの電気陰性度を決めるにあたり、下記のような制限を加える。
即ち、1族元素は1価、2族元素は2価、3族元素は3価、4族〜10族元素は2価、11族元素は1価、12族元素は2価、13族元素は3価、14族元素は4価、15族元素は3価、16族元素は2価、17族元素は1価、18族元素は0価のそれぞれの原子価をとったときの値を、その元素のPaulingの電気陰性度とする。
これらの元素は、構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層に、複数添加することも可能である。
Paulingの電気陰性度を決めるにあたり、各族によって原子価を固定して考えたが、標準生成エンタルピーΔHf 0を決める場合にも同様の条件を課す。
即ち、1族元素は1価、2族元素は2価、3族元素は3価、4族〜10族元素は2価、11族元素は1価、12族元素は2価、13族元素は3価、14族元素は4価、15族元素は3価、16族元素は2価、17族元素は1価の原子価で酸化物を構成したときの値を、その元素の酸化物の標準生成エンタルピーをΔHf 0とする。但し、遷移金属の場合は、色々な原子価で酸化物を形成するため、酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0を簡単に決めることができない(酸化物を形成する元素の原子価が高まれば高まるほど、一般的には酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0が小さくなる)。
つまり、遷移金属の場合、酸化物を形成する原子価が種々存在するため、酸化物を形成し易いと考えられ、本発明では好ましい元素Xとならない。
この除外を明記したのが、本発明の元素Xへの条件(II)における「遷移金属を除く」という記述である。
一般に化学反応は、次のような化学反応式(2)によって表される。
H2(気体)+(1/2)O2(気体)=H2O(液体) ………(2)
左辺を原系、右辺を生成系という。分子についている係数は化学量論数と呼ばれる。
一定の温度で、系の化学反応に伴い出入りする熱を反応熱といい、定圧条件のもとでの反応熱を定圧反応熱という。
一般の実験条件で測定される反応熱は定圧の場合が殆どなので、一般に定圧反応熱がよく用いられる。定圧反応熱は生成系と原系のエンタルピー差「ΔH」に等しい。
ΔH>0のものは吸熱反応、ΔH<0のものは発熱反応という。
化合物がその構成元素の単体から生成するときの反応熱を生成熱又は生成エンタルピーといい、標準状態にある1モルの化合物が、標準状態にある成分元素の単体から生ずる時の反応熱を標準生成エンタルピーという。標準状態としては圧力0.1MPa(≒1気圧)の下である指定された温度(通常298K)で最も安定な物理的な状態をとり、その標準生成エンタルピーをΔHf 0で示す。また標準状態ではそれぞれの単体のエンタルピーはゼロであると約束する。
したがって、ある元素の酸化物の標準生成エンタルピーが小さな値(負の大きな値)であればあるほど、酸化物が安定で、その元素が酸化し易いと言える。
なお、標準生成エンタルピーの詳細な値は、例えば「第5版 電気化学便覧 電気化学会編(丸善)」に詳しく記載されている。
Paulingの電気陰性度が1.65以上、かつ酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0が−1000(kJ/mol)以上である元素としては、Zn、Cd、Inが挙げられる。本発明での規定によるPaulingの電気陰性度は、それぞれ、Zn(1.65)、Cd(1.69)、In(1.78)であり、本発明での規定による標準生成エンタルピーΔHf 0は、それぞれ、Zn(−348kJmol−1)、Cd(−258kJmol−1)、In(−925kJmol−1)である。このうち自社先行技術で見出されていなかった元素は、即ち本発明で提供される元素Xは、Cdである。
なお、ビスマスに対する元素Xの総量の原子数比は1.25以下であることが好ましい。
本発明の記録層は、構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有することを基本としているため、ビスマスに対する元素Xの総量の原子数比が1.25を超えると、本来の記録再生特性が得られない場合が生じるためである。
本発明の追記型光記録媒体は、下記のような構成とすることが好ましいが、これに限定される訳ではない。
(a) 基板/記録層/上引層/反射層
(b) 基板/下引層/記録層/上引層/反射層
(c) 基板/反射層/上引層/記録層/カバー層
(d) 基板/反射層/上引層/記録層/下引層/カバー層
更に、上記構造を基本として、多層化されても構わない。例えば、(a)の構成を基本として二層化される場合、基板/記録層/上引層/反射層(半透明層)/接着層/記録層/上引層/反射層/基板という構成とすることができる。
色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系、アゾ系、ホルマザン系各色素、及びこれらの金属錯体化合物などが挙げられる。
樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を用いることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類
などが挙げられる。
このような光反射性物質としては、例えばAl、Al−Ti、Al−In、Al−Nb、Au、Ag、Cu等の金属、半金属及びそれらの合金を挙げることができる。これらの物質は単独で用いても二種以上を組合せて用いてもよい。
合金により反射層を形成する場合は、合金をターゲット材料としたスパッタ法で作製することができが、これ以外に、チップオンターゲット方式(例えば、Agターゲット上にCuチップをのせて成膜)、共スパッタ法(例えば、AgターゲットとCuターゲットを使用)でも作製することができる。
金属以外の材料で低屈折率層と高屈折率層を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。反射層の好ましい膜厚は、5〜300nmである。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。
基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂は適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのまま又は適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。
これらの材料は単独で用いても混合して用いても良いし、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法、スパッタ法、化学蒸着法等が用いられるが、中でもスピンコート法が好ましい。
保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲であるが、本発明においては、3〜30μmが好ましい。
また、反射層或いは光透過層面に更に基板を貼り合わせてもよく、反射層や光透過層面相互を内面とし対向させ光学記録媒体2枚を貼り合わせても良い。
基板鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂層や、無機系層等を成膜してもよい。
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する層である光透過性の光透過層(カバー層)を設けるようにし、光透過層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射層を設け、その上に記録層を設け、更にこの上に光透過性を有する光透過層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。このようにすれば、光透過層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄い光透過層を設け、この光透過層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このような光透過層は、ポリカーボネートシートや、紫外線硬化型樹脂により形成されるのが一般的である。また、本発明で言う光透過層には、光透過層を接着するための層を含めてもよい。
ポリオレフィン基板(日本ゼオン製、ゼオノア)/構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層/断熱層/反射層という構成を選択し、各層の材料として下記のものを用いて追記型光記録媒体を作成した。
記録層は、Bi2O3と表1で示される元素Xの酸化物を2:1〜5:1の範囲で混合した原料を元にスパッタリングターゲットを作製し、このスパッタリングターゲットにより膜厚約7nmとなるように成膜した。
なお、記録層に添加した元素XのPaulingの電気陰性度と、元素Xの酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0を表1に示した(但し、何れの値も本発明の規定に基づく値である。また、Paulingの電気陰性度が1.80以上の場合は、元素Xの酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0は重要でないためΔHf 0を記していない元素もある)。前述したように、本発明では各族に対して原子価を固定して元素XのPaulingの電気陰性度と、元素Xの酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0を求めるため、本発明の規定による各元素の原子価を表1に合わせて記載した。
表1中の『タイプ』とは、「A」が本発明の規定(I)に該当する元素X、「B」が本発明の規定(II)に該当する元素Xであることを表す。
断熱層には、ZnS−SiO2(ZnS:SiO2=85:15モル%)を用い、その膜厚を15nmとした。
反射層には銀合金を用い、その膜厚を100nmとした。
なお、ポリオレフィン基板のトラックピッチは、0.437(μm)、厚さは0.6mmである。
その結果、表1に示すように非常に良好な記録再生特性(ジッタ)が実現できた。
<記録再生条件>
・変調方式 : 1−7変調
・記録線密度: 最短マーク長(2T)=0.204(μm)
・記録線速度: 6.6(m/s)
・波形等化 : リミットイコライザ
・再生パワー: 0.5(mW)
次いで、これらの追記型光記録媒体を80℃85%RHの条件下に100時間放置し、ジッタの変化量を測定した。なお、ジッタ変化量とは、(保存試験後のジッタ)−(初期ジッタ)で計算される値である。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の元素Xに対する要件(I)を満足する元素については、初期のジッタ値が良好で、保存試験によるジッタ劣化が少ないことが確認できた。
また、要件(I)を満足すれば、酸化物の標準生成エンタルピーΔHf 0がどのような値をとっても構わないことも確認できた。
また、本発明の元素Xに対する要件(II)を満足する元素についても、初期のジッタ値が良好で、保存試験によるジッタ劣化が少ないことが確認できた。
構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層に替えて、金属ビスマスターゲットを用いてスパッタ法で成膜したビスマスからなる記録層としたこと以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作成し、評価を行なった。
なお、この記録層をX線光電子分光法(XPS)により分析を行なった結果、基板と記録層の界面、及び記録層とZnS−SiO2界面以外には、ビスマスの酸化物は検出されなかった。したがって、本比較例の記録層は酸化ビスマスを含有しない記録層であることを確認した。
記録再生特性を測定した結果、初期ジッタは15%を越え、保存試験後にはジッタ計測が不可能であった。
この結果から、記録層として、構成元素の主成分がビスマスであるだけでなく、酸化ビスマスを含有することの重要性が確認された。
案内溝(溝深さ50nm、トラックピッチ0.40μm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法で膜厚65nmのZnS−SiO2層(下引層)と、膜厚15nmのBiPdO層(記録層)を順次積層した。なお、BiとPdの原子数比は約Bi:Pd=3:1である。
次いで、記録層の上に、下記〔化1〕で示される色素からなる有機材料層(上引層)をスピンコート法で平均膜厚が約30nm形成し、その上にスパッタ法で膜厚150nmのAgの反射層を成膜し、更に紫外線硬化型樹脂からなる膜厚約5μmの保護層をスピンコート法で設けて本発明の追記型光記録媒体を作成した。
なお、〔化1〕の色素は、従来のDVD±Rに用いられる材料であり、青色レーザ領域には吸収が殆どない材料である。
その結果、記録パワーが5.8mWでPRSNR 22という良好な値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
案内溝(溝深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法で、膜厚100nmのAgの反射層、膜厚16nmのZnS−SiO2層(上引層)、膜厚7nmのBiPdO層(記録層)を順次積層した。なお、BiとPdの原子数比は約Bi:Pd=3:1である。
次いで樹脂からなるカバー層(厚さ0.1mm)を接着し、本発明の追記型光記録媒体を作成した。
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置(波長:405nm、NA:0.85)を用いて、BD−Rに準拠した記録再生条件で、評価を行なった。
その結果、記録パワーが7.0mWで6.0%という良好なジッタ値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
記録層をBiBO層とした点以外は、実施例19と同様にして本発明の追記型光記録媒体を作成し、評価を行なった。なお、BiとBの原子数比は約Bi:B=2:1である。
その結果、記録パワーが5.6mWでPRSNR 23という良好な値が得られ、良好な記録再生特性を実現できることが確認された。
記録層をBiBO層とした点以外は、実施例20と同様にして本発明の追記型光記録媒体を作成し、評価を行なった。なお、BiとBの原子数比は約Bi:B=2:1である。
その結果、記録パワーが6.7mWで5.9%という良好なジッタ値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
案内溝(溝深さ50nm、トラックピッチ0.32μm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法で膜厚100nmのAgの反射層を形成し、更に〔化1〕で示される色素からなる有機材料層(上引層)をスピンコート法により平均膜厚約30nm形成し、その上に、スパッタ法で、膜厚15nmのBiBO層(記録層)、膜厚60nmのZnS−SiO2層(下引層)を順次積層した。なお、BiとBの原子数比は約Bi:B=2:1である。
次いで透明樹脂からなる厚さ100nmのカバー層を接着し、本発明の追記型光記録媒体を作成した。
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置(波長:405nm、NA:0.85)を用いて、BD−Rに準拠した記録再生条件で、評価を行なった。
その結果、記録パワーが4.8mWで6.5%という良好なジッタ値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
案内溝(溝深さ40nm、トラックピッチ0.74μm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法で、膜厚15nmのBiBO層(記録層)と、膜厚40nmのZnS−SiO2層(上引層)とを順次積層した。なお、BiとBの原子数比は約Bi:B=2:1である。
次いでスパッタ法で、膜厚100nmのAg反射層、紫外線硬化型樹脂からなる膜厚約5μmの保護層を設けて本発明の追記型光記録媒体を作成した。
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:660nm、NA:0.65)を用いて、DVD+Rに準拠した記録再生条件で、評価を行なった。
その結果、記録パワー12.0mW、ジッタ7.2%という値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
記録層にSbを添加した点以外は実施例24と同様にして、本発明の追記型光記録媒体を作成し評価を行なった。なお、BiとSbの原子数比は約Bi:Sb=4:1である。
その結果、記録パワー10.0mW、ジッタ7.6%という値が得られ、良好な記録再生特性を実現することができた。
案内溝(溝深さ20nm、トラックピッチ0.437μm)を有するポリカーボネート基板上に、膜厚5nmのBiPdO層(記録層)、膜厚15nmのZnS−SiO2層(上引層)を順次スパッタ法で積層した。次いで、その上にスパッタ法で膜厚100nmのAgの反射層を成膜し、更に紫外線硬化型樹脂からなる膜厚約5μmの保護層をスピンコート法で設けて本発明の追記型光記録媒体を作成した。
本実施例では、記録層中の、ビスマスに対するPdの総量の原子数比を変えてジッタを計測した。なお記録再生条件は、実施例1〜18と同様である。
その結果、図1に示すように、ビスマスに対するPdの総量の原子数比が1.25以下となる範囲で(図1の点線が1.25である)良好なジッタが得られることを確認した。また、Pd以外の本発明の元素であっても、同様な傾向があることを確認した。
Claims (10)
- 構成元素の主成分がビスマスであり、かつ酸化ビスマスを含有する記録層を有し、該記録層が更にB、P、Ga、As、Se、Tc、Pd、Ag、Sb、Te、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Po、At、Cdから選択される一種以上の元素Xを含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
- 元素Xが、B、P、Ga、Se、Pd、Ag、Sb、Te、W、Pt、Auであることを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- ビスマスに対する元素Xの総量の原子数比が1.25以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
- 基板上に、請求項1〜3の何れかに記載の記録層、上引層、反射層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
- 基板上に、下引層、請求項1〜3の何れかに記載の記録層、上引層、反射層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
- 基板上に、反射層、上引層、請求項1〜3の何れかに記載の記録層、カバー層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
- 基板上に、反射層、上引層、請求項1〜3の何れかに記載の記録層、下引層、カバー層が順次積層された構造を有することを特徴とする追記型光記録媒体。
- 下引層、及び/又は上引層が、ZnS、及び/又はSiO2を主成分とすることを特徴とする請求項項4〜7の何れかに追記型光記録媒体。
- 下引層、及び/又は上引層が、有機材料からなることを特徴とする請求項4〜7の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 680nm以下のレーザ光により記録再生可能であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の追記型光記録媒体。
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