JP2009259314A - 光記録媒体の再生光耐久性評価方法 - Google Patents

光記録媒体の再生光耐久性評価方法 Download PDF

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登 笹
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浩子 大倉
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久光 亀崎
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Abstract

【課題】再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を、効率良く(簡便でかつ、短時間で精度良く)評価する方法の提供。
【解決手段】再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を評価する方法であって、下記の測定工程と推定工程とを備えたことを特徴とする光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
・測定工程:記録前の反射率を測定すると共に、所定の記録パワーで記録した後の反射率を測定する工程
・推定工程:測定した記録前の反射率及び記録後の反射率に基づいて、再生光耐久性を推定する工程
【選択図】図6

Description

本発明は、光記録媒体の再生光耐久性を評価する方法に関するものである。
光記録媒体の中には、再生光の照射により記録層が劣化するものがある。本発明者等が開発を進めてきた、ビスマス酸化物を主成分とする記録層を備えた青色レーザ波長領域で記録再生が可能な追記型光記録媒体も、その一種であることが分かってきた。このような光記録媒体は、再生を繰り返した場合の記録層の安定性(再生光耐久性)を評価する必要がある。
再生光耐久性を評価する方法としては、通常の再生パワーよりも高い再生パワーで再生光耐久性を複数点調べ、その結果を用いて、再生光耐久回数の常用対数と再生パワーの関係式を最小二乗法を使って一次の近似式として求め、この近似式から任意の再生パワーにおける再生光耐久回数を推定する方法が知られている(特許文献1参照)。
しかし、この方法は、例えば100万回の再生光耐久性を評価したい場合、100万回よりも少ない再生回数で評価可能ではあるが、長時間に亘って多数回の再生を行う必要があることは従前と変わりないため、より効率良く再生光耐久性を評価できる方法が求められていた。
特開2003−006941
本発明は、再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を、効率良く(簡便でかつ、短時間で精度良く)評価する方法の提供を目的とする。
上記課題は次の1)〜3)の発明(以下、本発明1〜3という)によって解決される。
1) 再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を評価する方法であって、下記の測定工程と推定工程とを備えたことを特徴とする光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
・測定工程:記録前の反射率を測定すると共に、所定の記録パワーで記録した後の反射率を測定する工程
・推定工程:測定した記録前の反射率及び記録後の反射率に基づいて、再生光耐久性を推定する工程
2) 前記測定工程と推定工程を下記のようにして行うことを特徴とする1)に記載の光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
・測定工程: 記録前の反射率を測定すると共に、最適記録パワーに対して所定割合の複数の記録パワーでそれぞれ記録した後の反射率を測定する。
・推定工程: 次の(A)〜(C)の手順で行う。
(A)記録前の反射率に対する記録後の反射率の割合を、各記録パワー毎に求める。
(B)最適記録パワーに対する各記録パワーの割合と、(A)で求めた反射率の割合
との関係を表わす一次の近似式を求める。
(C)一次の近似式の直線の傾きに基づいて、再生光耐久性を推定する。
3) 前記記録層が、ビスマス酸化物を含むことを特徴とする1)又は2)に記載の光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体を対象とする。その例としては、本発明者等が開発を進めてきた、ビスマス酸化物を主成分とする記録層を備えた青色レーザ波長領域で記録再生が可能な追記型光記録媒体が挙げられる。
上記追記型光記録媒体は、再生を行ったとき、記録マーク部分は比較的安定であるが、記録マーク間のスペース部分が不安定であること、即ち、繰り返し再生光の照射により、段階的にスペース部分の記録後の反射レベル(Blu−ray Diskの場合、I8Hレベル)が低下していくという問題があった。この低下量は媒体特有であり、媒体の層構成や記録層材料に依存する。
本発明者等は、上記の問題について検討した結果、所定の記録パワーで記録した時の、記録後の反射率R8H(%)を記録前の反射率Rgv(%)で割った値(R8H/Rgv)と、多数回(例えば100万回)の再生光耐久性試験を実施した時の反射レベルの低下量(ΔI8H)との間に相関があることを見出した。即ち、上記R8H/Rgvの値が小さいほど、換言すれば、記録前の反射率に対する記録後の反射率の変動(低下)が大きいほど、ΔI8Hが大きいことを見出した。
この事実は、100万回の再生光耐久性試験を実施しなくても、所定の記録パワーで記録したときのR8H/Rgvの値から再生光耐久性を推定できることを意味している。
なお、記録パワーは、最適記録パワー(ジッターが最小となる記録パワー)に限られるわけではなく、再生光耐久性を適正に推定することができる記録パワーであればよい。つまり、ある記録パワーで記録した場合に、上述したように、記録前の反射率に対する記録後の反射率の変動(低下)が大きいほど、多数回の再生光耐久性試験を実施した時の反射レベルの低下量が大きくなることを予め確認しておき、そのような記録パワーに設定して記録を行えばよい。
また、本発明者等は、繰り返し再生光の照射による反射レベルの低下量(ΔI8H)は、前記R8H/Rgvの記録パワーに対する変化率と関係があることを見出した。例えば、最適記録パワーから記録パワーを上げて(又は下げて)記録したときに、記録前の反射率に対する記録後の反射率の割合が大きく変化する光記録媒体は、繰り返し再生光の照射による反射レベルの低下が大きく、他方、同様にして記録したときに、記録前の反射率に対する記録後の反射率の割合の変化が小さい光記録媒体は、繰り返し再生光の照射による反射レベルの低下が小さく、再生光耐久性に優れていることが分かった。
従って、記録前の反射率、及び最適記録パワーに対して所定割合の複数の記録パワーでそれぞれ記録した後の反射率を測定すれば、再生光耐久性を推定できることになる。この方法は、より正確な推定を行うことができるので好ましい。
具体的な手法の例としては、最適記録パワーに対して所定割合の複数の記録パワーにおける、記録前の反射率に対する記録後の反射率の割合を測定し、最適記録パワーに対する各記録パワーの割合の変化と、記録前後の反射率の割合との関係について、最小二乗法などを使って一次の近似式を求めることにより、近似式の直線の傾きから再生光耐久性を推定することができる。この傾きが0に近いほど、光記録媒体の再生光耐久性が優れていることになる。
上記所定割合の複数の記録パワーは、通常、最適記録パワーに対して±20%以内とするが、必要に応じて適宜選択可能であり、±10%以内、5〜20%などの範囲であってもよい。つまり、ある記録パワーの範囲で記録した場合に、記録前後の反射率の割合に対して、最適記録パワーに対する各記録パワーの割合の変化量(一次式の傾き)が大きいほど、多数回の再生光耐久性試験を実施した時の反射レベルの低下量が大きくなることを予め確認しておき、そのような記録パワーの範囲に設定して記録を行えばよい。但し、複数の記録パワーの一つとして最適記録パワーを含むことが好ましい。
本発明の評価方法に適した光記録媒体としては、下記の構成の追記型光記録媒体が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
(a)基板/ビスマス酸化物を含む記録層/上部保護層/反射層
(b)基板/下部保護層/ビスマス酸化物を含む記録層/上部保護層/反射層
(c)カバー層/ビスマス酸化物を含む記録層/上部保護層/反射層/基板
(d)カバー層/下部保護層/ビスマス酸化物を含む記録層/上部保護層/反射層/基板
更に、上記構成を基本として、多層化した構造でも構わない。
例えば、上記(a)の構成を基本として多層化した場合、次のような構成とすることができる。
基板/ビスマス酸化物を含む記録層/上引層/反射層(半透明層)/接着層/ビスマス酸化物を含む記録層/上引層/反射層/基板
なお、光記録媒体の両面に基板と保護基板を設けた構造とすることもできる。
図1は、追記型光記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図であり、基板6上に、反射層5、上部保護層4、記録層3、下部保護層2、カバー層1が順次設けられている。記録層3はビスマス酸化物を含有するものである。
次に、各構成層について説明する。
基板の素材としては、熱的、機械的に優れた特性を有し、基板側から(基板を通して)記録・再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば特別な制限はない。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。なお、基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。基板の表面に、トラッキング用の案内溝や案内ピット、更にアドレス信号等のプレフォーマットが形成されていてもよい。
保護基板は、この保護基板側からレーザ光を照射する場合には使用レーザ光に対し透明でなくてはならないが、単なる保護板として用いる場合には透明性は問わない。使用可能な保護基板材料は、前記の基板材料と全く同じである。
追記型光記録媒体の記録層は、再生光の照射により記録層が劣化するものであれば何でもよいが、例えばビスマス酸化物を含むものを用いることができる。ビスマス酸化物を含む記録層としては、例えば、スパッタ法により、BiOxをターゲット組成として形成されるBiO系薄膜、BiFeをターゲット組成として形成されるBiFeO、BiBOをターゲット組成として形成されるBiBO、BiAlOをターゲット組成として形成されるBiAlO系薄膜、BiBGeOxをターゲット組成として形成されるBiBGeOなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのビスマス酸化物は、青色レーザ対応の記録層材料として非常に有効であり、熱伝導率が低く、耐久性が良好であり、高反射率化や高透過率化が実現しやすい(複素屈折率に起因する)という特徴がある。なお、ビスマス酸化物を含む記録層とは、単に添加物としてビスマス酸化物を含む記録層ではなく、ビスマス酸化物系の記録層を意味し、その記録原理は、ビスマス酸化物が金属ビスマスとビスマス酸化物とに相分離することで記録がなされると考えられている。
記録層の膜厚は、5〜30nmの範囲に設定することが好ましく、5〜15nmが更に好ましい。膜厚が5nm未満では、青色レーザ波長で良好な記録感度及び記録特性を確保することが難しく、膜厚が30nmを超えると、追記型光記録媒体としての反射率が急激に低下し、また追記型光記録媒体としての熱伝導率が高くなり過ぎ、トラック間の干渉によるクロストークの増大や記録再生特性が劣化する可能性がある。
下部保護層及び上部保護層の材料としては、Nb、Sm、Ce、Al、MgO、BeO、ZrO、UO、ThOなどの単純酸化物系の酸化物;SiO、2MgO・SiO、MgO・SiO、CaO・SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、2MgO・2Al・5SiO、LiO・Al・4SiOなどのケイ酸塩系の酸化物;AlTiO、MgAl、Ca10(PO(OH)、BaTiO、LiNbO、PZT〔Pb(Zr,Ti)O〕、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、BC、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB、TiB、ZrBなどのホウ化物系の非酸化物;ZnS、CdS、MoSなどの硫化物系の非酸化物;MoSiなどのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物等を用いることができる。あるいは、ZnS・SiOなどの非酸化物と酸化物との混合系を用いることもできる。
更に、下部保護層及び上部保護層の材料として、色素や樹脂などの有機材料を使用することもできる。
色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系、アゾ系、ホルマザン系各色素、及びこれらの金属錯体化合物などが挙げられる。
樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
有機材料を用いた下部保護層及び上部保護層は、蒸着、スパッタリング、CVD、溶剤塗布などの通常の手段によって形成することができる。
塗布法を用いる場合には、上記有機材料などを有機溶剤に溶解し、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法で行なうことができる。用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
下部保護層は、主に記録層の保存信頼性を確保するために用いられる。即ち、基板やカバー層を透過してくる酸素、水分、その他のガスから記録層を守る働きをする。よって、その機能を十分に果たすためには、膜厚を15nm以上とすることが好ましい。一方、生産性の観点から、膜厚を150nm以下に設定することが好ましい。
上部保護層は、膜厚が薄くなり過ぎると、記録層で発生した熱が必要以上に反射層から放熱されるため好ましくなく、10nm以上の膜厚に設定することが好ましい。逆に膜厚が厚くなると、記録層で発生した熱が反射層から放熱されにくくなり、記録マーク間の熱干渉が大きくなるため、50nm以下の膜厚に設定することが好ましい。
また、上部保護層材料に硫化物を用いた場合、反射層の劣化が問題になるが、上部保護層と反射層との間に、非硫化物材料、例えば上記、上下保護層材料の際に挙げた酸化物材料や窒化物材料からなる界面層を設けることにより反射層の劣化を防ぐことができる。
反射層には、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質が使用される。このような光反射性物質としては、例えば、Al、Al−Ti、Al−In、Al−Nb、Au、Ag、Cu等の金属、半金属、及び合金を挙げることができる。これらの物質は単独で用いても二種以上を組合せて用いてもよい。
合金により反射層を形成する場合には、合金をターゲット材料としたスパッタ法で作製することができるが、これ以外に、チップオンターゲット方式(例えば、Agターゲット上にCuチップを乗せて成膜)、共スパッタ法(例えば、AgターゲットとCuターゲットを使用)によっても作製することができる。
また、金属以外の材料を用い、低屈折率層と高屈折率層を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
反射層の好ましい膜厚は、5〜150nmである。
反射層や光透過層等の上に形成する保護層、カバー層、オーバーコート層の材料としては、反射層や光透過層等を外力から保護するものであれば特に限定されず、種々の有機材料や無機材料が用いられる。有機材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等が挙げられる。また、無機材料としては、SiO、Si、MgF、SnO等が挙げられる。
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法、スパッタ法、化学蒸着法等が用いられるが、中でもスピンコート法が好ましい。
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いて保護層、カバー層、オーバーコート層を形成する場合には、これらの樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布した後、乾燥することにより形成することができる。
紫外線硬化性樹脂は、樹脂原料をそのまま塗布するか、あるいは適当な溶剤に溶解して塗布した後、紫外線を照射して硬化させることにより形成することができる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。
これらの材料は単独で用いても混合して用いてもよいし、多層膜にして用いてもよい。
保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲であるが、3〜30μmが好ましい。
また、反射層面又は光透過層面に更に基板を貼り合わせてもよく、反射層面や光透過層面相互を内面として対向させ、光学記録媒体2枚を貼り合わせた構成としてもよい。
更に、基板鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂層や無機材料層等を成膜してもよい。
接着層は、光記録媒体の構成層、例えば、オーバーコート層とダミー基板、反射層と記録層などの接着の役割を担うものであり、光記録媒体として要求される特性に障害を与えない材料であれば特に制約はないが、生産性を考えると紫外線硬化型接着剤から構成されるものが好ましい。
本発明によれば、再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を、効率良く(簡便でかつ、短時間で精度良く)評価する方法を提供できる。
即ち、多数回の再生を行わなくても、記録前後の反射率を求めることで、再生光耐久性を効率良く評価することができる。
更に、一次の近似式を求めれば、さほど手間をかけることなく、より正確に再生光耐久性を評価することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような構成の追記型光記録媒体を次のようにして作製した。
厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上に、スパッタリング法により、Ag−Bi合金(99.5:0.5重量%)からなる膜厚60nmの反射層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚20nmの上部保護層、Biからなる膜厚13nmの記録層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚60nmの下部保護層を順次積層した。なお、スパッタリング装置には、Oerlikon(エリコン)社製DVD Sprinterを用いた。記録層のスパッタ時のAr流量は10sccmとした。
次いで、下部保護層上に、紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 R28)からなる厚さ0.1mmのカバー層をスピンコーティング法により形成し、厚さ1.2mmの追記型光記録媒体を得た。
(実施例2)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を16nmに変え、上部保護層と記録層の間に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚4nmの界面層を設けた点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例3)
反射層の材料をCu−Mo合金(99.0:1.0重量%)に、膜厚を60nmに変えた点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例4)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を20nmに変えた点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を得た。
上記実施例1〜4の追記型光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.85)を用いて記録再生評価を行った。なお、BD−R規格(System Dscription Blu−ray Disc Recordable Format Part1 Basic Format Specifications Version 1.2)に準拠した記録方法を用い、記録線速は9.84m/s(2倍速記録に相当)とした。
再生光耐久性の評価は図2に示す手順に従って行った。
まず、光記録媒体へ記録する際の最適記録パワー(Pwo)を求めた。ここでは最適記録パワーはジッタが最小となる値とした(工程1)。
次に、最適記録パワーから±20%の範囲の各記録パワー(Pw)における、記録後の反射率:R8H(%)を記録前の反射率:Rgv(%)で割った値(R8H/Rgv)を求めた(工程2)。即ち、記録前の反射率(Rgv)を求めると共に、各記録パワー(Pw)で記録を行い、各記録パワー(Pw)について記録後の反射率(R8H)を求め、各記録パワー(Pw)における記録後の反射率を記録前の反射率で割った値(R8H/Rgv)を求めた。なお、ここでは波長405nmで反射率を測定したが、再生光耐久性を評価可能な程度に反射率を測定できれば波長は特に限定されない。また、参考のため図3に、最適記録パワーから±20%の範囲の記録パワーにおけるジッタの変化を示す。
次に、最適記録パワーに対する記録パワーの割合(Pw/Pwo)と、R8H/Rgvとの関係について、最小二乗法を使って一次の近似式を求めた(工程3、図4参照)。
次に、該近似式の直線の傾きに基づいて再生光耐久性との関係を求めた(工程4)。
図5に、実施例1〜4の光記録媒体の再生光耐久性試験の結果を示す。この試験では、Blu−ray Disk規格に基づき、記録速度19.68m/s(4倍速に相当)で光記録媒体を回転させ、再生パワー0.6mW(高周波重畳あり)で100万回再生試験をした時の反射レベルの低下量「ΔI8H(mV)」を測定した。
図6に、直線の傾き(α)の値と、反射レベルの低下量(ΔI8H)の関係をみるためプロットして示すが、両者の間には明らかに相関が見られ、本発明の効果を確認することが出来た。
つまり、100万回の再生光耐久性試験を実施しなくても、図2に示したような手順で直線の傾き(α)を求めれば、光記録媒体の再生光耐久性を推定することが出来ることが分かる。
なお、ここでは、最適記録パワーに対して±20%の範囲の記録パワーで記録をしたが、図4に示した記録パワーの範囲であれば、記録前後の反射率の割合に対して、最適記録パワーに対する各記録パワーの割合の変化量(一次式の傾き)が大きいほど、100万回の再生光耐久性試験を実施した時の反射レベルの低下量が大きくなることが確認されるため、他の範囲(例えば±10%の範囲)に設定することも可能である。
(実施例5)
図1に示すような構成の追記型光記録媒体を次のようにして作製した。
厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上に、スパッタリング法により、Ag−Bi合金(99.5:0.5重量%)からなる膜厚60nmの反射層、In−ZnO−SnO−Ta(7.5:22.5:60.0:10.0モル%)からなる膜厚20nmの上部保護層、Biからなる膜厚13nmの記録層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚60nmの下部保護層を順次積層した。なお、スパッタリング装置には、Oerlikon(エリコン)社製DVD Sprinterを用いた。記録層のスパッタ時のAr流量は10sccmとした。
次いで、下部保護層上に、紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 R28)からなる厚さ0.1mmのカバー層をスピンコーティング法により形成し、厚さ1.2mmの追記型光記録媒体を得た。
(実施例6)
上部保護層の材料をNbに変えた点以外は、実施例5と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例7)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を18nmに変え、上部保護層と記録層の間に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚2nmの界面層を設けた点以外は、実施例5と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例8)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を13nmに変え、上部保護層と記録層の間に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚7nmの界面層を設けた点以外は、実施例5と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例9)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を10nmに変え、上部保護層と記録層の間に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚10nmの界面層を設けた点以外は、実施例5と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例10)
上部保護層の材料をZnO−Al(98.0:2.0重量%)に、膜厚を7nmに変え、上部保護層と記録層の間に、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚13nmの界面層を設けた点以外は、実施例5と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例11)
記録層のスパッタ時のAr流量を30sccmとした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を得た。
(実施例12)
記録層のスパッタ時のAr流量を50sccmとした点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を得た。
上記実施例5〜12に実施例1〜4を加えた合計12枚の追記型光記録媒体について、実施例1〜4と同様にして記録再生評価を行った。
表1に、実施例1〜12の追記型光記録媒体に対し、最適記録パワーで記録した時の、記録後の反射率R8H(%)を記録前の反射率Rgv(%)で割った値(R8H/Rgv)、及び100万回の再生光耐久性試験を実施した時の反射レベルの低下量(ΔI8H)を示す。なお、最適記録パワーはジッタが最小となる値とした。再生光耐久性試験の方法は、前述した実施例1〜4の場合と同様である。
表1から、最適記録パワーで記録したときのR8H/Rgvの値が小さいほど、即ち、記録前の反射率に対する記録後の反射率の変動(低下)が大きいほど、100万回再生後の反射レベルの低下量(ΔI8H)が大きいことが分かる。
この結果は、100万回の再生光耐久性試験を実施しなくても、最適記録パワーで記録したときのR8H/Rgvの値から追記型光記録媒体の再生光耐久性を、上記の方法に比べてより簡易に推定できることを示しており、本発明の効果を確認することが出来た。
なお、ここでは、最適記録パワーで記録をしたが、図4に示した記録パワーの範囲であれば、最適記録パワー以外の記録パワーで記録した場合でも、記録前の反射率に対する記録後の反射率の変動(低下)が大きいほど、100万回再生後の反射レベルの低下量が大きいことが確認されるため、最適記録パワー以外の記録パワーに設定することも可能である。
また、表1には、初期のクロックジッタに対する100万回再生後のクロックジッタの変化量(%)についても記した。この結果から分かるように、クロックジッタの変化量もR8H/Rgvと相関があるから、本評価方法が適切であることが分かる。
上部保護層の材料としてZnS−SiOを用いた実施例1の再生光耐久性が、ZnO−Al、In−ZnO−SnO−Ta、Nbを用いた実施例4〜6に比べて悪くなったのは、入射奥側で記録層と接する上部保護層のZnS−SiOが、再生光により記録層材料と混ざったためであると考えられる。
また、実施例10、9、8、2、7の順に再生光耐久性が良くなったのは、入射奥側で記録層と接する上部保護層の膜厚は薄い方が良いためであると考えられる。
また、実施例1、11、12の順に再生耐久性が悪くなったのは、記録層をスパッタリングする際のAr流量が10sccm、30sccm、50sccmと増えたことにより、記録層中のビスマス酸化物の酸化度が低くなったためであると考えられる。即ち、ビスマス酸化物を主成分とする記録層では酸化度が低いほど記録感度が向上するが、再生安定性は悪化する傾向にある。
Figure 2009259314
追記型光記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図。 再生光耐久性の評価手順を示す図。 最適記録パワーから±20%の範囲の記録パワーにおけるジッタの変化を示す図。 最適記録パワーに対する記録パワーの変化の割合(Pw/Pwo)と、R8H/Rgvとの関係について、最小二乗法により求めた一次の近似式、及びその直線の傾き(α)を算出した結果を示す図。 実施例1〜4の光記録媒体の再生光耐久性の結果を示す図。 直線の傾き(α)の値と、再生光耐久性試験から得られた100万回再生試験後の反射レベルの低下量(ΔI8H)の関係をみるためプロットした図。
符号の説明
1 カバー層
2 下部保護層
3 記録層
4 上部保護層
5 反射層
6 基板

Claims (3)

  1. 再生光の照射により記録層が劣化する光記録媒体の再生光耐久性を評価する方法であって、下記の測定工程と推定工程とを備えたことを特徴とする光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
    ・測定工程: 記録前の反射率を測定すると共に、所定の記録パワーで記録した後の反射率を測定する工程
    ・推定工程: 測定した記録前の反射率及び記録後の反射率に基づいて、再生光耐久性を推定する工程
  2. 前記測定工程と推定工程を下記のようにして行うことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
    ・測定工程: 記録前の反射率を測定すると共に、最適記録パワーに対して所定割合の複数の記録パワーでそれぞれ記録した後の反射率を測定する。
    ・推定工程: 次の(A)〜(C)の手順で行う。
    (A)記録前の反射率に対する記録後の反射率の割合を、各記録パワー毎に求める。
    (B)最適記録パワーに対する各記録パワーの割合と、(A)で求めた反射率の割合
    との関係を表わす一次の近似式を求める。
    (C)一次の近似式の直線の傾きに基づいて、再生光耐久性を推定する。
  3. 前記記録層が、ビスマス酸化物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録媒体の再生光耐久性評価方法。
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