JP5283573B2 - 光情報記録媒体用色素及びそれを用いた光情報記録媒体 - Google Patents
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Description
また、特許文献3には、450nm以下の短波長のレーザ光によって、Low to High記録を行う光記録媒体において、記録前における記録層の複素屈折率の実部(n)が1.2〜1.5であり、記録した後の記録層の複素屈折率の実部が1.7〜1.9であるものが記載されており、該記録層には、トリメチンオキソノールをアニオンとし、金属錯体をカチオンとする色素化合物が用いられている。
しかしながら、これまでこのような有機BD−Rでは、40%以上の十分に大きな変調度を実現することは非常に困難であった。
その理由は、大容量の記録を行う有機BD−Rは、記録ピットのサイズが従来のCD−RやDVD−R/+Rと比較して極めて微小であることにある。すなわち、記録ピット形成のためのレーザ光のスポットサイズは小さく、かつ記録におけるレーザ光の照射時間が短い。これは記録において照射されるレーザ光のエネルギー量が小さいことを指しており、記録ピットがCD−RやDVD−R/+Rと比べて形成されにくく、記録信号すなわち記録前後の反射率の大きな変化が得られにくいことを意味する。
特許文献1および特許文献2に開示された色素は、こうした大容量の記録を行う、Low to High記録に適したものであり、基本的にはHD DVD−Rと有機BD−Rの両方に使用できる色素であるが、有機BD−R特有の課題については何ら記載されていない。
[1]基板の一方の主面上に、少なくとも、光反射層と、有機色素を含有する光記録層と、保護層と、25℃における弾性率が40MPa以上の硬化性樹脂で形成された光透過層と、がこの順に形成された光情報記録媒体において、前記光記録層は、レーザ光により記録した後の反射率が記録する前の反射率よりも高くなる光学特性を有し、吸収スペクトルのピーク波長λmaxが370〜425nmであり、かつ記録前の、記録再生波長である波長405nmにおける屈折率の実部(n)が1.65以上であることを特徴とする光情報記録媒体。
[2]前記光記録層は、記録前の、記録再生波長である波長405nmにおける屈折率の実部(n)が1.70〜2.10であることを特徴とする前記[1]の光情報記録媒体。
図1は、本発明のブルーレーザ光を用いる光情報記録媒体の一つの実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すとおり、本発明の光情報記録媒体11は、基板2と、この基板2上に形成した光反射層3と、この光反射層3の上に形成した光吸収層すなわち光記録層4と、この光記録層4の上に形成した保護層5と、この保護層5の上に形成されたカバー層すなわち光透過層6とを有するものである。
記録後の反射率が大きくなるLow to High型の記録特性を有する光情報記録媒体では、未記録時の反射率をできるだけ小さくした方が、記録前後の反射率の変化である変調度を大きく取ることができる。記録層の膜厚が一定である場合、未記録時の記録層の複素屈折率の実部nが大きいほど未記録時の反射率は小さくなる。そしてレーザ光の照射部分すなわち記録部分はnの値が小さくなって反射率が大きくなる。そのため、できるだけnの値を大きくすることが好ましい。また、吸収スペクトルのピーク波長λmaxを370〜425nmとすることにより、405nmにおける光吸収を大きくすることができる。これにより、未記録時の反射率をより小さくすることができる。
なお、変調度は、8Tピットの反射率Rにより以下の式で定義される。
変調度=(R8T_top−R8T_bottom)/R8T_top
図2は、その説明図である。上記の式から、R8T_bottomすなわち未記録時の反射率を小さくすると、R8T_top−R8T_bottomの値が大きくなるため、変調度は大きくなる。なお、R8T_bottomの値が小さくなるとともにR8T_topの値も小さくなることがあるが、この場合、上記の式の分母が小さくなるので、変調度は大きくなる。
図3は、後述する本発明の実施例1で用いた(色素1)の薄膜の複素屈折率の実部nと虚部kのスペクトル形状を示す。該図では、nのスペクトルは、340nm付近で極小値を有し、420nm付近で極大値を有する。一方、kのスペクトルは、385nm付近に最大値を有し、nの極大波長と極小波長との中間付近にkが最大となる波長を有する。このようなnおよびkのスペクトル形状は理論的な説明が行われている(例えば、「光物性入門」 著者:小林浩一、出版社:裳華房)
kは消衰係数であることから、kが最大となる波長およびkのスペクトル形状は、吸収スペクトルと対応する。nのスペクトルのピーク波長が約420nm付近であることから、吸収スペクトルの吸収ピークの波長λmaxが長波長化すると、nは減少する。一方、λmaxが短波長化すると、nのピーク波長がレーザ光の波長405nmよりも長短波長であるときにはnは増加していき、nのピーク波長が405nmにおいてnは最大となり、さらにnのピーク波長がより長波長になると減少していく。
このように吸収スペクトルのλmaxを適切な範囲に設定することにより、nを適切な数値とすることができる。
環Aは例えば、以下の(化3)に示すものが挙げられるが限定されるものではない。
環Bは例えば、以下の(化6)に示すものから選ばれる。
(基板)
基板2は、レーザ光に対する屈折率がたとえば1.5〜1.7程度の範囲内の透明度の高い材料で、耐衝撃性に優れた主として樹脂により形成したもの、たとえばポリカーボネート、ガラス板、アクリル板、エポキシ板等を用いる。
基板2には、ピッチ0.32μmからなるスパイラル状の案内溝が形成される。トラッキングの誘導をするソフト等の変更を伴えば、溝はリング状の溝でも使用が可能となる。この案内溝は溝幅W1が160nm〜200nm、溝深さD1が32nm〜45nmが好ましい。ここで溝幅W1は、図1に示すように、溝深さD1の半分の深さの位置での幅すなわち半値幅で測定される。この案内溝上に反射膜3が構成される。
光反射層3は、熱伝導率および光反射性の高い金属膜であり、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金を、蒸着法、スパッタ法等の手段により形成する。
反射膜3の厚さは40nm〜65nmが好ましい。なお、反射膜3は案内溝内にも形成されるため、案内溝の寸法は反射膜の厚さ分変化する。反射膜を形成後の溝3’は、溝幅W2が150nm〜190nm、溝深さD2は32nm〜45nmが好ましい。
保護層5は、カバー層6の成膜時における記録層4に含まれる色素のカバー層6への拡散や、カバー層6の形成用の硬化樹脂の溶剤等の記録層4への浸透などの混和現象を防止するためのものである。この保護層5を構成する材料は、酸化珪素、特に二酸化珪素や、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム等の酸化物;硫化亜鉛、硫化イットリウムなどの硫化物;窒化珪素などの窒化物、炭化珪素;酸化物と硫黄化合物との混合物などが挙げられる。この保護層6はスパッタリング等の方法で形成される。
本発明の光情報記録媒体11においては、光透過層6を通してレーザ光7を照射し、光記録層4が照射されたレーザ光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換し、光記録層4の分解あるいは変性などを生じさせ、記録ピットを形成し、記録部分および未記録部分の光反射率などによるコントラストを電気信号(変調度)として読み取っている。
したがって、光透過層6は、レーザ光を透過する材料、例えばアクリル系樹脂,ポリオレフィン系樹脂等の硬化性樹脂で形成されている。
また、光透過層6は、光反射層3や光記録層4を外部の衝撃から保護するとともに、これら各層3,4が湿気等の腐食因子と接触するのを防止する保護層としても機能する。
この光透過層6は、紫外線または放射線によって硬化する硬化性樹脂をスピンコート法等によって厚さ0.1mmに形成される。この光透過層6の光透過性は、硬化後の厚み0.1mmで、405nmの波長の光にて分光光度計で測定したときに70%以上好ましくは80%以上である。また、この光透過層6は、25℃における弾性率が40MPa以上である。ここで、25℃における弾性率は、ナノインデンテーション法(神戸製鋼技報/Vol.52 No.2(Sep.2002)P74〜P77)によって測定される。
(実施例1)
中心部分に貫通孔を有し、かつトラックピッチ0.32μm、溝幅180nm、溝深さ32nmの案内溝を有する外径120mm、厚さ1.1mmの円板状のポリカーボネート製の基板を、射出成形によって作成した。この基板の案内溝が形成された面にAg合金をスパッタリングして60nmの厚さの反射層を形成した。その後、下記の(化8)に示す化学式で表される有機色素(色素1:n=1.85)をTFP溶剤に溶かした色素溶液をスピンコート法により塗布し、温度80℃で10分乾燥後、吸収最大波長(λmax=379nm)でのOD値が0.25となるように光吸収層すなわち光記録層4を形成した。その後、更に光記録層3の上面にZnS−SiO2材料からなる透明な保護層5を20nmの厚さになるようにスパッタリングした。それからUV硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、UV光照射により硬化させることにより厚さ0.1mmのカバー層すなわち光透過層6を形成し、有機BD−R11の追記型の光情報記録媒体の試料を得た。なお、光透過層6の弾性率は、ナノインデンテーション法により試験荷重0.1mNで25℃の室温下で弾性率を求めたところ、40MPa以上であった。
その後、上記記録機を用いて、レーザ出力を0.35mWにし、記録信号を再生したところ、このときの変調度は45%であり、記録感度が高く、変調度が大きいという良好な記録特性が得られた。
表1に光透過層6の25℃での弾性率、最大吸収波長(λmax)、n、k、OD値、記録パワー、変調度を測定した結果を示す。
実施例1において、(色素1)の代わりに、それぞれλmaxが425nm以下、n=1.70以上である下記の(化8)〜(化18)に示す化学式で表される色素2〜11を用いたこと、および光透過層6として弾性率の異なる硬化性樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機BD−R 11を得た。
実施例1と同様にして測定した結果は表1の実施例2〜11のそれぞれの欄に示した通り、いずれも変調度40%以上が得られた。
実施例1において、色素1の代わりに、それぞれλmaxが426nm以上、n=1.70未満である下記の比較色素1〜6を用いたこと以外は同様にして有機BD−R 11を得た。なお、硬化性樹脂は、それぞれ実施例1、実施例5、実施例4、実施例6、実施例4、実施例1と同じ硬化性樹脂を用いた。実施例1と同様にして測定した結果は表1の比較例1〜6のそれぞれの欄に示した通り、いずれも変調度40%未満であった。
3:光反射層
4:光記録層(光吸収層)
5:保護層
6:光透過層(カバー層)
7:レーザ光(記録、再生)
11:本発明の追記型光ディスク(有機BD―R)
Claims (2)
- 基板の一方の主面上に、少なくとも、光反射層と、有機色素を含有する光記録層と、保護層と、25℃における弾性率が40MPa以上の硬化性樹脂で形成された光透過層と、がこの順に形成された光情報記録媒体において、前記光記録層は、レーザ光により記録した後の反射率が記録する前の反射率よりも高くなる光学特性を有し、吸収スペクトルのピーク波長λmaxが370〜425nmであり、かつ記録前の、記録再生波長である405nmにおける複素屈折率の実部(n)が1.65以上であることを特徴とする光情報記録媒体。
- 前記光記録層は、記録前の、記録再生波長である波長405nmにおける複素屈折率の実部(n)が1.70〜2.10であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
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