JP2004319067A - 光記録媒体 - Google Patents

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成敏 福澤
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Abstract

【課題】 有機色素を主成分として含む記録層と、光透過層を備えた光記録媒体であって、記録感度などの記録特性およびジッタなどの再生信号の信号特性を改善することができる光記録媒体を提供する。
【解決手段】 支持基板11と、レーザビームLが入射する光入射面16側に形成された光透過層15と、支持基板と光透過層との間に、有機色素を主成分として含む記録層を備えた光記録媒体であって、光透過層15が、記録層側に位置し、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有する第一の光透過膜15aと、光入射面側に形成された第二の光透過膜15bとを備えていること。
【選択図】図3

Description

本発明は光記録媒体に関するものであり、さらに詳細には、有機色素を主成分として含む記録層と、光透過層を備えた光記録媒体であって、記録感度などの記録特性およびジッタなどの再生信号の信号特性を改善することができる光記録媒体に関するものである。
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録媒体が広く利用されている。これらの光記録媒体は、CD−ROMやDVD−ROMのように、データの追記や書き換えができないタイプの光記録媒体(ROM型光記録媒体)と、CD−RやDVD−Rのように、データの追記はできるが、データの書き換えができないタイプの光記録媒体(追記型光記録媒体)と、CD−RWやDVD−RWのように、データの書き換えが可能なタイプの光記録媒体(書き換え型光記録媒体)とに大別することができる。
広く知られているように、ROM型光記録媒体においては、製造段階において基板に形成されるプリピットにより、データが記録されることが一般的であり、書き換え型光記録媒体においては、たとえば、記録層の材料として相変化材料が用いられ、その相状態の変化に起因する光学特性の変化を利用して、データが記録されることが一般的である。
これに対し、追記型光記録媒体においては、記録層の材料としてシアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素等の有機色素が用いられ、その化学的変化(場合によっては化学的変化に加えて物理的変形を伴うことがある)に基づく光学特性の変化を利用してデータが記録されることが一般的である。
追記型光記録媒体は、書き換え型光記録媒体と異なり、記録したデータを消去したり、書き換えたりすることができないが、このことはデータの改竄ができないことを意味するため、データの改竄防止が要求される場合には、重要な役割を果たしている。
このような追記型光記録媒体にデータを記録する場合には、記録層に含まれる有機色素が化学的に変化するだけでなく、基板や、記録層に近い層が物理的に変形するのが通常である。その場合、有機色素を含む記録層を備えた追記型光記録媒体は、一般に、光入射面とは反対側に、記録層に隣接して、熱伝導性の大きい金属からなる反射層を備えているため、記録層に対して、光入射面側に位置する層や支持基板が、物理的に変形しやすく、これによって、再生信号の変調度や光記録媒体の記録感度が向上するが、過度の変形が生じると、再生信号が劣化したり、隣接するトラックに悪影響を及ぼすおそれがある。
一方、近年、データの記録密度が高められ、かつ、非常に高いデータ転送レートを実現可能な次世代型の光記録媒体が提案されている。
このような次世代型の光記録媒体においては、記録容量を高めるとともに、非常に高いデータ転送レートを実現するため、必然的に、データの記録・再生に用いるレーザビームのビームスポット径を非常に小さく絞ることが要求される。
レーザビームのビームスポット径を小さく絞るためには、レーザビームを集束するための対物レンズの開口数(NA)を0.7以上、たとえば、0.85程度まで大きくするとともに、レーザビームの波長λを450nm以下、たとえば、400nm程度まで、短くすることが必要になる。
すなわち、レーザビームの波長λと対物レンズの開口数NAとの比λ/NAを640nm以下にする必要がある。
しかしながら、レーザビームを集束するための対物レンズの開口数(NA)を高くすると、次式(1)で示されるように、光記録媒体に対するレーザビームの光軸の傾きに許される角度誤差、すなわち、チルトマージンTが非常に狭くなるという問題が生じる。
Figure 2004319067
(1)
式(1)において、λは、記録・再生に用いるレーザビームの波長であり、dは、レーザビームが透過する光透過層の厚さである。
式(1)から明らかなように、チルトマージンTは、対物レンズのNAが高いほど、小さくなり、光透過層の厚さdが薄いほど、大きくなる。したがって、チルトマージンTが小さくなることを防止するためには、光透過層の厚さdを小さくすることが効果的である。
一方、コマ収差を表わす波面収差係数Wは、次式(2)によって定義される。
Figure 2004319067
式(2)において、nは光透過層の屈折率であり、θはレーザビームの光軸の傾きである。
式(2)から明らかなように、コマ収差を抑制するためにも、記録・再生に用いるレーザビームが透過する光透過層の厚さdを小さくすることが非常に効果的である。
このような理由から、次世代型の光記録媒体においては、十分なチルトマージンを確保しつつ、コマ収差を抑制するために、光透過層の厚さを100μm程度まで薄くすることが提案されている。
そのため、次世代型の光記録媒体においては、CDやDVDなど、現行の光記録媒体のように、レーザビームが入射する光透過性を有する支持基板上に記録層などの層を形成することは困難であり、したがって、支持基板上に形成した記録層などの層上に、スピンコーティング法などによって、薄い樹脂層を、光透過層として、形成する方法が提案されている。
したがって、現行の光記録媒体においては、光入射面側から、順次、成膜が行われているが、次世代型の光記録媒体を作製する際には、光入射面とは反対側から、順次、成膜が行われることになる。
このような要請から、次世代型の光記録媒体の光透過層の材料としては、スピンコートに適した高い粘度を有し、硬化する際の収縮率が小さい紫外線硬化性樹脂などが提案されており、スピンコートに適した高い粘度を有し、硬化する際の収縮率が小さい好ましい紫外線硬化性樹脂としては、比較的分子量の大きなオリゴマー成分を有し、かつ、官能基の少ない紫外線硬化性樹脂が提案されている。
しかしながら、このような紫外線硬化性樹脂は、硬度が低いため、有機色素を含む記録層を備えた光記録媒体に、このような紫外線硬化性樹脂によって形成された光透過層を設けた場合には、光記録媒体にデータを記録する際に、光透過層が物理的に変形しやすく、記録感度などの記録特性およびジッタなどの再生信号の信号特性に大きな影響を与えるという問題があった。
したがって、本発明は、有機色素を主成分として含む記録層と、光透過層を備えた光記録媒体であって、記録感度などの記録特性およびジッタなどの再生信号の信号特性を改善することができる光記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明者は、本発明のかかる目的を達成するため、鋭意研究を重ねたところ、支持基板と、レーザビームが入射する光入射面側に形成され、少なくとも1層の光透過膜を備えた光透過層と、支持基板と光透過層との間に、有機色素を主成分として含む記録層を備えた光記録媒体において、光透過層の少なくとも1層の光透過膜が、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している場合には、光記録媒体の記録特性および再生信号の信号特性を同時に向上させることが可能になることを見出した。
ここに、ビッカース硬度は、JISZ2244およびJISR1610に規定されたダイヤモンドピラミッド硬度試験によって、200mgfの試験荷重を用いて、測定された硬度である。
すなわち、本発明者の研究によれば、図1に示されるように、少なくとも1層の光透過膜の硬度が高くなるにしたがって、光記録媒体から再生された信号のジッタは低下するが、少なくとも1層の光透過膜のビッカース硬度が30mgf/μmないし33mgf/μmに達すると、再生信号のジッタはほぼ一定になり、少なくとも1層の光透過膜のビッカース硬度がさらに高くなると、かえって、増大することが見出されている。
これは、少なくとも1層の光透過膜の硬度が高くなるほど、記録層の記録ピットが形成された領域に対応する光透過層の領域における過度の物理的な変形が抑制され、再生信号のジッタが低下するが、少なくとも1層の光透過膜のビッカース硬度が30mgf/μmないし33mgf/μmに達すると、記録層の記録ピットが形成された領域に対応する光透過層の領域における物理的な変形が小さくなって、ジッタを低減する効果がなくなり、少なくとも1層の光透過膜のビッカース硬度がさらに高くなると、記録層の記録ピットが形成された領域に対応する領域における光透過層が、物理的にほとんど変形しなくなり、データの記録前後における光路長変化が小さくなりすぎ、変調度の低下を招き、かえって、ジッタが悪化するためと考えられる。
したがって、光記録媒体から再生される信号のジッタを低下させるためには、少なくとも1層の光透過膜が、30mgf/μmないし33mgf/μm以上のビッカース硬度を有していることが好ましく、33mgf/μm以上のビッカース硬度を有していることが好ましい。
これに対して、本発明者の研究によれば、図1に示されるように、光記録媒体から再生した信号のジッタが最小になったときに、光記録媒体にデータを記録するのに用いたレーザビームの記録パワーとして定義されるレーザビームの最適記録パワーは、少なくとも1層の光透過膜の硬度が低くなるほど、低くなり、したがって、光記録媒体の記録感度が向上することが見出されている。
これは、少なくとも1層の光透過膜の硬度が低くなるほど、レーザビームが照射された光透過層の領域が物理的に変形しやすくなり、光記録媒体に照射されるレーザビームの記録パワーが低くても、記録層に記録ピットを形成し、対応する光記録層の領域を物理的に変形させることが可能になるからである。
したがって、光記録媒体の記録感度を向上させるためには、少なくとも1層の光透過膜の硬度が低いことが好ましい。
一方、硬度が高い材料は、一般に、モノマー同士の架橋密度を上げるため、重合をさせるための官能基(活性点)の数が多く、したがって、硬度が高い材料によって形成された少なくとも1層の光透過膜は、紫外線を照射して、硬化したときの収縮が大きい。さらに、紫外線を照射して、硬化させた後も、少なくとも1層の光透過膜には、重合していない未反応の官能基(活性点)が、数多く残っているため、光記録媒体を、高温下で保存した場合に、これらの未反応の官能基(活性点)は徐々に反応して、少なくとも1層の光透過膜が徐々に硬化し、収縮する。したがって、第一の光透過層を硬度が高い材料によって形成した場合には、少なくとも1層の光透過膜が硬化するときおよび光記録媒体を高温下で保存したときに、少なくとも1層の光透過膜が大きく収縮し、光記録媒体が反りやすくなり、場合によっては、光記録媒体にクラックが生じることがあり、光記録媒体の機械的精度が低下するという問題があった。
このように、光記録媒体の記録感度を向上させ、光記録媒体の機械的精度の低下を防止するためには、少なくとも1層の光透過膜の硬度が低いことが好ましく、一方、ジッタなどの光記録媒体から再生された信号の特性を向上させるためには、少なくとも1層の光透過膜の硬度が高いことが好ましいが、本発明者の研究によれば、少なくとも1層の光透過膜が、30mgf/μmないし50mgf/μmのビッカース硬度を有している場合には、光記録媒体の記録感度を向上させ、光記録媒体の機械的精度の低下を防止し、同時に、光記録媒体から再生された信号の特性を向上させることが可能になることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、本発明によれば、本発明の前記目的は、支持基板と、レーザビームが入射する光入射面側に形成され、少なくとも1層の光透過膜を備えた光透過層と、前記支持基板と前記光透過層との間に、有機色素を主成分として含む記録層を備えた光記録媒体であって、前記少なくとも1層の光透過膜が、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする光記録媒体によって達成される。
本発明の好ましい実施態様においては、前記少なくとも1層の光透過膜が、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記少なくとも1層の光透過膜が、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
本発明において、少なくとも1層の光透過膜は、0.5μmないし100μmの厚さを有するように形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、0.5μmないし50μmの厚さを有するように、形成されている。
少なくとも1層の光透過膜の厚さが0.5μm未満の場合には、光記録媒体の記録特性および光記録媒体から再生された信号の特性を向上させることが困難になり、その一方で、少なくとも1層の光透過膜の厚さが100μmを越えているときは、光記録媒体に反りやクラックが生じやすくなる。
本発明において、光透過層の厚さは、10μm以上、300μm以下であることが好ましく、10ないし150μmであることがより好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、少なくとも1層の光透過膜が、スピンコーティング法によって、樹脂溶液を塗布することによって形成されている。
本発明の好ましい実施態様においては、前記光透過層が、記録層側に位置し、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有する第一の光透過膜と、レーザビームが入射する光入射面側に形成された第二の光透過膜を備えている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第一の光透過膜が、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
本発明者の研究によれば、光透過層が、記録層側に位置する第一の光透過膜と、レーザビームが入射する光入射面側に形成された第二の光透過膜とによって、構成されている場合には、光記録媒体の記録感度などのデータ記録特性を向上させるためには、第一の光透過膜が硬度の低い材料によって形成されていることが好ましく、その一方で、光記録媒体のデータ再生特性を向上させ、光記録媒体の機械的精度を向上させるためには、第一の光透過膜が硬度の高い材料によって、形成されていることが好ましいことが見出されている。
したがって、本発明において、光透過層が、記録層側に位置する第一の光透過膜と、レーザビームが入射する光入射面側に形成された第二の光透過膜とによって、構成されている場合には、前記第一の光透過膜が、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることが好ましい。
本発明において、第一の光透過膜は、0.5μmないし100μmの厚さを有するように形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、0.5μmないし50μmの厚さを有するように、形成されている。
第一の光透過膜の厚さが0.5μm未満の場合には、光記録媒体の記録特性および光記録媒体から再生された信号の特性を向上させることが困難になり、その一方で、第一の光透過膜の厚さが100μmを越えているときは、光記録媒体に反りやクラックが生じやすくなる。
本発明において、光透過層が、記録層側に位置する第一の光透過膜と、レーザビームが入射する光入射面側に形成された第二の光透過膜とによって、構成されている場合には、第二の光透過膜が、第一の光透過膜よりも低い硬度を有していることが、光記録媒体に反りが生じることを防止し、光記録媒体の機械的精度を向上させるために、とくに好ましい。
その一方で、第二の光透過膜の表面に傷がつくことを防止する上では、第二の光透過膜が、高い硬度を有していることが好ましい。
したがって、具体的には、本発明において、第二の光透過膜は、0.2mgf/μmないし25mgf/μm程度のビッカース硬度を有していることが好ましい。
本発明において、第一の光透過膜および第二の光透過膜の総厚は、10μm以上、300μm以下であることが好ましく、10ないし150μmであることがより好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、第一の光透過膜および第二の光透過膜が、スピンコーティング法によって、樹脂溶液を塗布することによって形成されている。
本発明の別の好ましい実施態様においては、第一の光透過膜が光透過性接着剤によって形成された接着層によって構成され、第二の光透過膜が、光透過性樹脂シートを接着層に接着することによって形成されている。
本発明の好ましい実施態様においては、光記録媒体は、さらに、前記支持基板と前記記録層との間に、反射層を備えている。
本発明の好ましい実施態様によれば、反射層は、光記録媒体に入射したレーザビームを反射するだけでなく、データを記録する際に生じた熱を放熱する放熱層としても機能するから、支持基板の過度の変形を防止することが可能になる。
本発明の好ましい実施態様においては、光記録媒体は、さらに、前記光透過層と前記前記記録層との間に、キャップ層を備えている。
本発明の好ましい実施態様によれば、光透過層を記録層との間に、キャップ層が設けられており、光透過層が記録層に接していないから、第一の光透過膜を容易に形成することが可能になる。
本発明において、キャップ層は、誘電体材料または金属によって形成される。
本発明において、キャップ層を誘電体材料によって形成する場合には、キャップ層は、10nmないし150nmの厚さを有するように、形成されることが好ましい。
本発明において、キャップ層を金属によって形成する場合には、キャップ層は、10nmないし20nmの厚さを有するように、形成されることが好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、光記録媒体は、370nmないし425nmの波長を有するレーザビームを照射することによって、データが記録可能に構成されている。
本発明において、記録層に主成分として含まれる有機色素が、370nmないし425nmの波長を有するレーザビームに対して、1.2未満または1.9を越える屈折率を有し、0.1以上、1.0以下の消衰係数を有していることが好ましく、より好ましくは、記録層が、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素を主成分として含んでいる。
本発明によれば、有機色素を主成分として含む記録層と、光透過層を備えた光記録媒体であって、記録感度などの記録特性およびジッタなどの再生信号の信号特性を改善することができる光記録媒体を提供することが可能になる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図2は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略斜視図であり、図3は、図2のAで示された部分の略拡大断面図である。
図2に示されるように、本実施態様にかかる光記録媒体10は、円盤状に形成され、約120mmの外径と、約1.2mmの厚さを有している。
本実施態様にかかる光記録媒体10は、追記型光記録媒体として構成されており、図3に示されるように、支持基板11と、支持基板11の表面上に形成された反射層12と、反射層12の表面上に形成された記録層13と、記録層13の表面上に形成されたキャップ層14と、キャップ層14の表面上に形成された光透過層15とを、この順に備えている。
図3に示されるように、光透過層15は、第一の光透過膜15aと第二の光透過膜15bを備えている。
本実施態様にかかる光記録媒体10は、380nmないし450nmの波長λを有するレーザビームLが、光透過層15を介して、記録層13に照射されるように構成されており、第二の光透過膜15bの表面によって、光入射面16が構成されている。
レーザビームLを、光記録媒体10に照射するにあたっては、0.65以上の開口率NA、好ましくは、約0.85の開口率NAを有する対物レンズが用いられる。レーザビームの波長λと対物レンズの開口率NAは、λ/NAが640nm以下になるように、選択されることが好ましい。
支持基板11は、光記録媒体10に求められる機械的強度と約1.2mmの厚さを確保するための支持体として、機能する。
支持基板11を形成するための材料は、光記録媒体10の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではない。支持基板11は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂およびポリオレフィン樹脂がとくに好ましく、本実施態様においては、支持基板11は、ポリカーボネート樹脂によって形成されている。本実施態様においては、レーザビームLは、支持基板11とは反対側に位置する光透過層15を介して、記録層13に照射されるから、支持基板11が、光透過性を有していることは必要でない。
本実施態様においては、支持基板11は、約1.1mmの厚さを有している。
図3に示されるように、支持基板11の表面には、交互に、グルーブ11aおよびランド11bが形成されている。支持基板11の表面に形成されたグルーブ11aおよび/またはランド11bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザビームLのガイドトラックとして、機能する。
グルーブ11aの深さおよびピッチは、とくに限定されるものではないが、最適なプッシュプル信号を得るためには、グルーブ11aの深さは、20nmないし100nmに設定することが好ましく、グルーブ11aのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
反射層12は、光入射面16から入射されるレーザビームLを反射し、再び光入射面16から出射させる役割を果たすとともに、多重干渉効果により再生信号(C/N比)を高める役割を果たす。反射層12は、さらに、データを記録する際に生成される熱を速やかに放熱する機能も有している。
反射層12を形成するための材料は、レーザビームLを反射することができれば、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層12を形成することができる。また、誘電体材料によって、反射層12を形成することもでき、反射層12を形成するために用いられる誘電体材料としては、たとえば、ZnO、ZnS、GeN、GeCrN、CeO、SiO、SiO、Si、La、TaO、TiO、SiAlON(SiO,Al,SiおよびAlNの混合物)ならびにLaSiON(La,SiOおよびSiの混合物)など、Al、Si、Ce、Ti、Zn、Taなどの酸化物、窒化物、硫化物、炭化物あるいはそれらの混合物が挙げられる。高い反射率を有する反射層12を形成するためには、これらのうち、Al、Au、Ag、Cuなどの金属またはこれらの合金によって、反射層12を形成することが好ましく、AgあるいはAgを主成分とし、微量のIn、Sn、Zn、Cu、Pd、Biなどを添加物として含む合金によって、反射層12を形成することがとくに好ましい。
反射層12は、5ないし200nmの厚さに形成することが好ましく、10ないし100nmの厚さに形成することがより好ましい。
反射層12の厚さが5nm未満である場合には、反射層14による上述の効果を十分に得ることができなくなり、その一方で、反射層12の厚さが200nmを越えている場合には、反射層14の表面性が低くなるばかりでなく、成膜時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
記録層13は、データを記録する層であり、有機色素を主成分として含んでいる。
記録層13は、50重量%以上の有機色素を含んでいればよく、不可避的な不純物を除いて、有機色素のみによって、記録層13が形成されていてもよい。
記録層13に含まれる有機色素はとくに限定されるものではなく、記録層13に含まれる有機色素としては、フタロシアニン誘導体、アザポルフィリン誘導体、ポルフィセン誘導体、コロール誘導体、ポルフィリン誘導体などのピロール環を有する大環状色素;クマリン誘導体;含金属アザオキソノール誘導体;ベンゾトリアゾール誘導体;スチリル誘導体;ヘキサトリエン誘導体;シアニン誘導体など、データの記録に用いるレーザビームLの波長λの近傍で、大きな光吸収を有する色素が挙げられる。光学的、熱的な特性を調整するために、これらが混合されていてもよい。とくに好ましくは、記録層13は、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素あるいはトリメチンシアニン系色素を含んでいる。
本発明において、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素は、370ないし425nmの波長のレーザビームの波長における屈折率nが1.2未満あるいは1.9を越えており、370ないし425nmの波長のレーザビームを吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有していることが好ましい。
記録層13が、このようなポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素を主成分として含んでいる場合には、データの記録時において、色素が370ないし425nmの波長の記録時のレーザビームを吸収して、溶融または分解し、色素の屈折率nが1.2未満の場合には、370ないし425nmの波長領域において、低屈折率から高屈折率、たとえば、1.5への屈折率変化が生じ、色素の屈折率nが1.9を越えている場合には、高屈折率から低屈折率、たとえば、1.5への屈折率変化が生じる。このようにして、記録層13に記録ピットが形成され、データが記録される。こうして、記録ピットが形成された記録層13の領域の390ないし420nmの波長の再生時のレーザビームに対する反射率は、その周囲の記録層13の領域の反射率と大きく異なるから、記録ピットが形成された記録層13の領域とその周囲の記録層13の領域との反射率の差を利用して、390ないし420nmの記録時のレーザビームによる記録および390ないし420nmの再生時のレーザビームによる再生が行われる。より大きな屈折率変化を生じさせるためには、370ないし425nmの範囲における屈折率nが1.1未満あるいは2.0を越えていることが好ましく、1.0未満あるいは2.1を越えていることがより好ましい。屈折率nの下限値は、とくに限定されないが、約0.6であり、屈折率nの上限値は、とくに限定されないが、約3.0である。
また、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素の消衰係数k(複素屈折率の虚部)は、記録時のレーザー光の波長および再生時のレーザー光の波長のいずれにおいても、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
記録時のレーザー光の波長におけるポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素の消衰係数kが0.1以上であると、記録ピット形成部において、記録時のレーザー光を適度に吸収することができ、局所的に、温度が上昇し、溶融または分解による屈折率変化が生じやすい。また、色素の消衰係数kが0.3以上であると、より低いパワーのレーザビームLを用いて、記録層13にデータを記録することが可能になる。一方、記録時のレーザー光の波長における色素の消衰係数kが0.1未満である場合には、記録時のレーザー光の吸収率が低下し、通常の記録パワーでのデータの記録が困難となる。また、再生時のレーザー光の波長における色素の消衰係数kが0.1以上であると、データの未記録部において、所望の反射率が得られ、記録ピットと未記録部との間の反射率差を読み取りやすい。しかしながら、再生時のレーザー光の波長における色素の消衰係数kが大きくなりすぎると、反射率が低下してしまうので、再生時のレーザー光の波長における消衰係数kは1.0以下であることが好ましい。このような観点から、色素の消衰係数k(複素屈折率の虚部)は、記録時のレーザー光の波長および再生時のレーザー光の波長のいずれにおいても、0.1以上、1.0以下が好ましく、0.3以上、1.0以下がより好ましい。
本実施態様において、記録層13は、ランド11bの部分で、15nmないし150nmの膜厚を有するように形成され、好ましくは、20nmないし80nmの膜厚を有するように形成され、記録層5は、グルーブ11aの部分では、5nmないし100nm、好ましくは、10ないし70nmの膜厚を有するように形成される。記録層13の膜厚は、所望の反射率や変調度、隣接トラック、マークの熱干渉を考慮して、設計することが好ましい。これらに影響を与えるパラメータとしては、支持基板11の形状、色素の熱分解挙動や光学特性、隣接する層の光学特性や熱伝導性などが挙げられる。
キャップ層14は、主に、光透過層15を形成する際に、記録層13を形成するために用いられている材料と光透過層15を形成するために用いられている材料とが、界面で混合することを防止するとともに、光記録媒体10の光学特性を調整する役割を有している。したがって、記録層13を形成するために用いられている材料と光透過層15を形成するために用いられている材料とが相溶性がなく、光記録媒体10の光学特性を調整する必要がない場合には、キャップ層14を形成することは必ずしも必要でない。
キャップ層14を形成するための材料は、370nmないし425nmの波長を有するレーザビームLに対して、十分に高い光透過率を有する無機材料であれば、とくに限定されるものではなく、誘電体材料あるいは金属材料を用いて、キャップ層14を形成することができる。
キャップ層14は、たとえば、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、あるいは、これらの組み合わせを主成分とする誘電体材料によって形成することができ、キャップ層14の記録層13に対する保護特性を向上させるためには、Al、AlN、ZnO、ZnS、GeN、GeCrN、CeO、SiO、SiO、Si、SiC、La、TaO、TiO、SiAlON(SiO,Al,SiおよびAlNの混合物)ならびにLaSiON(La,SiOおよびSiの混合物)など、Al、Si、Ce、Ti、Zn、Taなどの酸化物、窒化物、硫化物、炭化物あるいはそれらの混合物によって、キャップ層14を形成することが好ましく、とくに、ZnSとSiOとの混合物によって、キャップ層14を形成することが好ましい。ZnSとSiOとの混合物によって、キャップ層14を形成する場合には、ZnSとSiOのモル比は、80:20であることが好ましい。キャップ相14は、複数の膜からなる多層構造であってもよい。
また、キャップ層14を金属によって形成する場合には、Al、Au、Ag、Cuまたはこれらの合金によって、キャップ層14を形成することが好ましく、AgあるいはAgを主成分とし、微量のIn、Sn、Zn、Cu、Pd、Biなどを添加物として含む合金によって、キャップ層14を形成することがとくに好ましい。
キャップ層14の厚さはとくに限定されるものではないが、キャップ層14を誘電体材料によって形成する場合には、10nmないし150nmの厚さを有するように形成することが好ましく、20nmないし70nmの厚さに形成することがより好ましい。
キャップ層14の厚さが10nm未満である場合には、光透過層15を形成するために用いられた材料が、キャップ層14内に浸透し、記録層13を侵すおそれがあり、一方、キャップ層14の厚さが150nmを越えている場合には、キャップ層14の熱伝導性が高くなりすぎて、記録層13に含まれている有機色素に光学的な変化を生じさせるために、大きなエネルギーが必要になり、光記録媒体10の記録感度が低下するおそれがある。
これに対して、キャップ層14を金属によって形成する場合には、高い光透過率を有するキャップ層14を形成するため、キャップ層14を、10nm以上、20nm以下の厚さを有するように、形成することが好ましい。
記録層13にデータを記録する際に、光透過層15が過度に物理的な変形を起こすと、光記録媒体10の記録特性や再生特性に悪影響があるため、記録層13にデータを記録する際に、キャップ層14が過度に物理的な変形を起こすことを防止することが必要であるが、本発明者の研究によれば、キャップ層14が誘電体材料によって形成されている場合に、キャップ層14の膜厚が150nm以下であるときは、キャップ層14が過度に物理的な変形を起こすことを防止することは困難であり、キャップ層14が金属によって形成されている場合には、キャップ層14の膜厚が20nm以下であるときは、キャップ層14が過度に物理的な変形を起こすことを防止することは困難であることが、確認されている。
光透過層15は、レーザビームLが透過する層であり、図3に示されるように、支持基板11側に形成された第一の光透過膜15aと、その表面によって、光入射面16が形成される第二の光透過膜15bを備えている。
有機色素を主成分として含む記録層を備えた追記型光記録媒体にデータを記録する場合には、通常、記録層に主成分として含まれる有機色素が化学的に変化するだけでなく、基板や、記録層に近い層が物理的に変形し、記録層に隣接して、金属からなる反射層が設けられている場合には、記録層に対して、キャップ層や光透過層などの光入射面側に位置する層が物理的に変形し、それによって、再生信号の変調度や光記録媒体の記録感度が向上することが知られており、その一方で、これらの層に過度の変形が生じると、再生信号が劣化したり、隣接するトラックに悪影響を及ぼすおそれがあることが知られている。
本発明者は、かかる問題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、支持基板11と、有機色素を主成分として含む記録層14と、記録層14側に位置する第一の光透過膜15aと、その一方の表面によって、レーザビームLが入射する光入射面16を構成する第二の光透過膜15bとを備えた光記録媒体10において、第一の光透過膜15aが、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している場合には、光記録媒体10の記録特性および再生信号の信号特性を同時に向上させることが可能になることを見出した。
すなわち、本発明者の研究によれば、図1に示されるように、記録層13側に位置する第一の光透過膜15aの硬度が高くなるにしたがって、光記録媒体10から再生された信号のジッタは低下するが、第一の光透過膜15aのビッカース硬度が30mgf/μmないし33mgf/μmに達すると、再生信号のジッタはほぼ一定になり、第一の光透過膜15aのビッカース硬度がさらに高くなると、かえって、増大することが見出されている。
これは、第一の光透過膜15aの硬度が高くなるほど、記録層13の記録ピットが形成された領域に対応する第一の光透過膜15aの領域における物理的な変形が抑制され、再生信号のジッタが低下するが、第一の光透過膜15aのビッカース硬度が30mgf/μmないし33mgf/μmに達すると、記録層13の記録ピットが形成された領域に対応する第一の光透過膜15aの領域における物理的な変形が小さくなって、ジッタを低減する効果がなくなり、第一の光透過膜15aのビッカース硬度がさらに高くなると、記録層13の記録ピットが形成された領域に対応する領域における第一の光透過膜15aだけでなく、支持基板11の領域も、物理的にほとんど変形しなくなり、ジッタが悪化するためと考えられる。
したがって、光記録媒体10から再生される信号のジッタを低下させるためには、第一の光透過膜15aが、30mgf/μmないし33mgf/μm以上のビッカース硬度を有していることが好ましく、33mgf/μm以上のビッカース硬度を有していることが好ましい。
これに対して、本発明者の研究によれば、図1に示されるように、光記録媒体10から再生した信号のジッタが最小になったときに、光記録媒体10にデータを記録するのに用いたレーザビームLの記録パワーとして定義されるレーザビームLの最適記録パワーは、第一の光透過膜15aの硬度が低くなるほど、低くなり、したがって、光記録媒体10の記録感度が向上することが見出されている。
これは、第一の光透過膜15aの硬度が低くなるほど、レーザビームLが照射された第一の光透過膜15aの領域が物理的に変形しやすくなり、光記録媒体10に照射されるレーザビームLの記録パワーが低くても、記録層13に記録ピットを形成し、対応する第一の光記録層15aの領域を物理的に変形させることが可能になるからである。
したがって、光記録媒体10の記録感度を向上させるためには、第一の光透過膜15aの硬度が低いことが好ましい。
一方、硬度が高い材料は、一般に、モノマー同士の架橋密度を上げるため、重合をさせるための官能基(活性点)の数が多く、したがって、硬度が高い材料によって形成された第一の光透過膜15aは、紫外線を照射して、硬化したときの収縮が大きい。さらに、紫外線を照射して、硬化させた後も、第一の光透過膜15aには、重合していない未反応の官能基(活性点)が、数多く残っているため、光記録媒体10を、高温下で保存した場合に、これらの未反応の官能基(活性点)は徐々に反応して、第一の光透過膜15aが徐々に硬化し、収縮する。したがって、第一の光透過膜15aを硬度が高い材料によって形成した場合には、第一の光透過膜15aが硬化するときおよび光記録媒体10を高温下で保存したときに、第一の光透過膜15aが収縮し、光記録媒体10が反りやすくなり、場合によっては、光記録媒体10にクラックが生じることがあり、光記録媒体10の機械的精度が低下するという問題があった。
このように、光記録媒体10の記録感度を向上させ、光記録媒体10の機械的精度の低下を防止するためには、第一の光透過膜15aの硬度が低いことが好ましく、一方、ジッタなどの光記録媒体10から再生された信号の特性を向上させるためには、第一の光透過膜15aの硬度が高いことが好ましいが、本発明者の研究によれば、第一の光透過膜15aが、30mgf/μmないし50mgf/μmのビッカース硬度を有している場合には、光記録媒体10の記録感度を向上させ、光記録媒体10の機械的精度の低下を防止し、同時に、光記録媒体10から再生された信号の特性を向上させることが可能になることを見出した。
したがって、本実施態様においては、第一の光透過膜15aは、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
通常、光透過層を形成するための材料のビッカース硬度は19mgf/μmないし22mgf/μm程度であるから、本実施態様にかかる光記録媒体10の第一の光透過膜15aは高いビッカース硬度を有している。
好ましくは、第一の光透過膜15aは、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有し、さらに好ましくは、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
一方、その表面が光反射面16を構成している第二の光透過膜15bの硬度はとくに限定されるものではないが、第二の光透過膜15bの形成を容易にするためには、第二の光透過膜15bが、第一の光透過膜15aよりも低い硬度を有していることが好ましい。具体的には、第二の光透過膜15bは、0.2mgf/μmないし25mgf/μm程度のビッカース硬度を有していることが好ましい。
第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bを形成するための材料は、370nmないし425nmのレーザビームに対して、十分に高い光透過率を有していれば、とくに限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを、第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bを形成するために使用することができ、好ましくは、第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bは、アクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化性樹脂によって形成される。
光透過層15は、第一の光透過膜15aと第二の光透過膜15bとの総厚が、10μmないし300μmになるように形成することが好ましく、第一の光透過膜15aと第二の光透過膜15bとの総厚が、10μmないし150μmになるように形成されていると、とくに好ましい。
第一の光透過膜15aの厚さはとくに限定されるものではないが、第一の光透過膜15aは、0.5μmないし100μmの厚さを有するように形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、0.5μmないし50μmの厚さを有するように、形成されている。
第一の光透過膜15aの厚さが0.5μm未満の場合には、光記録媒体10の記録特性および光記録媒体10から再生された信号の特性を向上させることが困難になり、その一方で、第一の光透過膜15aの厚さが100μmを越えているときは、光記録媒体10に反りやクラックが生じやすくなる。
一方、第二の光透過膜15bは、第一の光透過膜15aの厚さに応じた厚さを有していればよい。
以上のような構成を有する光記録媒体10は、たとえば、以下のようにして、製造される。
まず、スタンパ(図示せず)を用い、射出成形法によって、表面に、グルーブ11aおよびランド11bが形成された支持基板11を作製する。
支持基板11は、フォトポリマー(2P)法などによって作製することもできる。
さらに、グルーブ11aおよびランド11bが形成された支持基板11の表面上に、反射層12が形成される。
反射層12は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられるが、スパッタリング法を用いることが好ましい。
次いで、反射層12の表面上に、記録層13が形成される。
記録層13は、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素あるいはトリメチンシアニン系色素を溶媒に溶解して、塗布液を調製し、塗布液を、スピンコーティング法によって、反射層12上に塗布して、塗膜を形成し、塗布膜を乾燥することによって、形成されることが好ましい。
スピンコーティング法に代えて、スクリーン印刷法、ディップ塗布法などを用いて、記録層13を形成することもできる。
ポルフィリン系色素を主成分として含む記録層13を形成する場合には、炭素数5ないし7のケトン系溶剤に、ポルフィリン系色素を溶解して、塗布液を調製することが好ましい。ケトン系溶剤は、鎖状構造を有していても、環状構造を有していてもよいが、直鎖状および分岐状の構造を有するケトン系溶剤が好ましく使用される。炭素数が5ないし7の直鎖状および分岐状の構造を有するケトン形溶剤の具体例としては、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、3−ヘキサノン、2−ヘキサノン(ブチルメチルケトン)、4−ヘプタノン、2−ヘプタノンが挙げられる。さらに好ましくは、炭素数が6のケトン系溶剤、とくに、炭素数が6の直鎖状および分岐状の構造を有するケトン系溶剤が、ポルフィリン系色素を溶解するために用いられ、より好ましく用いられる炭素数が6の直鎖状および分岐状の構造を有するケトン系溶剤の具体例としては、メチルイソブチルケトン、3−ヘキサノン、2−ヘキサノン(ブチルメチルケトン)が挙げられる。
一方、モノメチンシアニン系色素を主成分として含む記録層13を形成する場合には、モノメチンシアニン系色素に応じて、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族系溶剤、フッ素アルコール溶剤、ハロゲン化アルキル系溶剤などから、溶剤を選択して、モノメチンシアニン系色素を溶解し、塗布液を調製することが好ましい。これらの中では、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールが、モノメチンシアニン系色素を溶解するための溶剤として、好ましく使用される。
これに対して、トリメチンシアニン系色素を主成分として含む記録層13を形成する場合には、トリメチンシアニン系色素に応じて、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族系溶剤、フッ素アルコール溶剤、ハロゲン化アルキル系溶剤などから、溶剤を選択して、トリメチンシアニン系色素を溶解し、塗布液を調製することが好ましい。これらの中では、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールが、トリメチンシアニン系色素を溶解するための溶剤として、好ましく使用される。
さらに、記録層13の表面上に、キャップ層14が形成される。
キャップ層14は、たとえば、キャップ層14の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられるが、スパッタリング法を用いることが好ましい。
次いで、キャップ層14の表面上に、第一の光透過膜15aが形成される。
第一の光透過膜15aは、たとえば、アクリル系紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系紫外線硬化性樹脂を溶剤に溶解して調製され、粘度調整された樹脂溶液を、スピンコーティング法を用いて、キャップ層14上に塗布して、塗膜を形成し、窒素ガス雰囲気中で、塗膜に紫外線を照射して、硬化させることによって、形成することができる。
さらに、第一の光透過膜15aの表面上に、第二の光透過膜15bが形成される。
第二の光透過膜15bは、たとえば、アクリル系紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系紫外線硬化性樹脂を溶剤に溶解して調製され、粘度調整された樹脂溶液を、スピンコーティング法を用いて、第一の光透過膜15a上に塗布して、塗膜を形成し、窒素ガス雰囲気中で、塗膜に紫外線を照射して、硬化させることによって、形成することができる。
スピンコーティング法を用いて、第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bを形成する代わりに、光透過性接着剤を、キャップ層14上に塗布して、接着層を形成し、接着層上に、光透過性を有する樹脂シートを接着することによって、接着層により、第一の光透過膜15aを形成し、光透過性樹脂シートにより、第二の光透過膜15bを形成することもできる。
以上のようにして、光記録媒体10が製造される。
本実施態様によれば、光透過層15が、第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bによって構成され、記録層14側に配置された第一の光透過膜15aが、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。したがって、光記録媒体10のデータ記録感度を向上させることが可能になるとともに、再生信号のジッタを低下させて、光記録媒体10のデータ再生特性を向上させることが可能になる。さらに、光記録媒体10に反りやひび割れが発生することを効果的に防止して、光記録媒体10の機械的精度を向上させることが可能になる。
図4は、本発明のさらに好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略断面図である。
図4に示されるように、本実施態様にかかる光記録媒体20は、その表面によって、レーザビームLが入射する光入射面26が形成される光透過層25が、単一の光透過膜によって構成されている点を除き、図2および図3に示された光記録媒体10と同様の構成を有している。
本実施態様において、光透過層25は、図2および図3に示された光記録媒体10の第一の光透過膜15aと同様に、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
本実施態様においても、光透過層25は、好ましくは、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有し、さらに好ましくは、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。
光透過層25を形成するための材料は、370nmないし425nmのレーザビームに対して、十分に高い光透過率を有していれば、とくに限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを、光透過層25を形成するために使用することができ、好ましくは、光透過層25は、アクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化性樹脂によって形成される。
光透過層25は、10μmないし300μmの厚さを有するように形成することが好ましく、とくに、10μmないし150μmの厚さを有するように形成されていることが好ましい。
光透過層25は、アクリル系紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系紫外線硬化性樹脂を、溶剤に溶解して調製された樹脂溶液を、スピンコーティング法を用いて、キャップ層14上に塗布して、塗膜を形成し、窒素ガス雰囲気中で、塗膜に紫外線を照射して、硬化させることによって、形成することが好ましい。
本実施態様によれば、光記録媒体20の光透過層25が、単一の光透過膜によって構成され、光透過層25が、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有している。したがって、光記録媒体20のデータ記録感度を向上させることが可能になるとともに、再生信号のジッタを低下させて、光記録媒体20のデータ再生特性を向上させることが可能になる。さらに、光記録媒体20に反りやひび割れが発生することを効果的に防止して、光記録媒体20の機械的精度を向上させることが可能になる。
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
実施例
以下のようにして、光記録媒体サンプル#1を作製した。
まず、射出成型法により、1.1mmの厚さと、120mmの直径を有し、その表面に、トラックピッチ(グルーブピッチ)が0.32μm、グルーブの深さが60nm、グルーブの半値幅が0.16μmとなるように、グルーブとランドが形成されたディスク状のポリカーボネート基板を作製した。
次いで、このポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面に、スパッタリング法を用いて、98原子%のAg、1原子%のNdおよび1原子%のCuよりなる合金によって、40nmの厚さを有する反射層を形成した。
さらに、その表面に、反射層が形成されたポリカーボネート基板を、スピンコーティング装置にセットし、下記構造式で示されるポルフィリン系色素をメチルイソブチルケトンに溶解して、調製した塗布液を、反射層上に、スピンコーティング法によって、ランド部における厚さが35nmとなるように、塗布して、記録層を形成した。
Figure 2004319067
ここに、405nmの波長のレーザビームに対するポルフィリン系色素の屈折率は0.80であり、消衰係数は0.87であった。
さらに、その表面に、反射層および記録層が形成されたポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、記録層の表面に、スパッタリング法を用いて、ZnSとSiOの混合物からなり、30nmの厚さを有するキャップ層を形成した。
キャップ層に含まれたZnSとSiOの混合物中のZnSとSiOのモル比率は、80:20であった。
次いで、その表面に、反射層、記録層およびキャップ層が形成されたポリカーボネート基板をスピンコーティング装置にセットし、キャップ層の表面に、スピンコーティング法を用いて、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)を塗布して、塗膜を形成し、窒素ガス雰囲気中で、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、15μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成した。
紫外線の照射積算光量は3170Jであり、第一の光透過膜のビッカース硬度は34mgf/μmであった。
次いで、第一の光透過膜の表面に、スピンコーティング法を用いて、60wt%の東亜合成化学工業株式会社製の2官能ウレタンアクリレートオリゴマー「アロニックスM−1100」(商品名)、20wt%の東亜合成化学工業株式会社製のトリメチロールプロパントリアクリレート「アロニックスM−309」(商品名)、17wt%の日立化成工業株式会社製のジシクロペンタニルアクリレート「FA−513A」(商品名)および3wt%のチバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「IRG184」(商品名)を混合した溶液を塗布して、塗膜を形成し、窒素ガス雰囲気中で、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させ、85μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した。
紫外線の照射積算光量は3170Jであり、第二の光透過膜のビッカース硬度は15mgf/μmであった。
こうして、光記録媒体サンプル#1を作製した。
次いで、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、東亜合成化学工業株式会社製の紫外線硬化性樹脂「UV3701」(商品名)を用いて、10μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、90μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体サンプル#2を作製した。
光記録媒体サンプル#2の第一の光透過膜のビッカース硬度は42mgf/μmであった。
さらに、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、47wt%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、23wt%の日産化学株式会社製のコロイダルシリカ、22wt%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6wt%のテトラヒドロフルフリルアクリレートおよび2wt%のチバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「IRG184」(商品名)を混合した樹脂溶液を用いて、5μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、95μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体サンプル#3を作製した。
光記録媒体サンプル#3の第一の光透過膜のビッカース硬度は49mgf/μmであった。
次いで、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「HOD3200」(商品名)を用いて、10μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、90μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体サンプル#4を作製した。
光記録媒体サンプル#4の第一の光透過膜のビッカース硬度は30mgf/μmであった。
さらに、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、48wt%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、21wt%の日産化学株式会社製のコロイダルシリカ、23wt%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6wt%のテトラヒドロフルフリルアクリレートおよび2wt%のチバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「IRG184」(商品名)を混合した樹脂溶液を用いて、5μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、95μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体比較サンプル#1を作製した。
光記録媒体比較サンプル#1の第一の光透過膜のビッカース硬度は51mgf/μmであった。
次いで、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「SPC850」(商品名)を用いて、第一の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体比較サンプル#2を作製した。
光記録媒体比較サンプル#2の第一の光透過膜のビッカース硬度は26mgf/μmであった。
さらに、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、長瀬産業株式会社製の紫外線硬化性樹脂「XNR5535」(商品名)を用いて、第一の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体比較サンプル#3を作製した。
光記録媒体比較サンプル#3の第一の光透過膜のビッカース硬度は21mgf/μmであった。
次いで、第一の光透過膜を形成することなく、キャップ層上に、100μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体比較サンプル#4を作製した。
光記録媒体比較サンプル#4の第二の光透過膜のビッカース硬度は15mgf/μmであった。
さらに、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、大日本インキ株式会社製の紫外線硬化性樹脂「SD318」(商品名)を用いて、第一の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1を作製したのと同様にして、光記録媒体比較サンプル#5を作製した。
光記録媒体比較サンプル#5の第一の光透過膜のビッカース硬度は29mgf/μmであった。
さらに、75μmの厚さを有する積水化学工業株式会社製のポリカーボネートシートの表面に、東洋インキ製造株式会社製のアクリル系粘着材「BPS5511」(商品名)を塗布して、25μmの厚さを有する接着剤層を形成し、減圧下において、光記録媒体サンプル#1と同様にして、ポリカーボネート基板上に形成したキャップ層の表面に、貼着し、第一の光透過膜が接着剤層によって形成され、第二の光透過膜がポリカーボネートシートによって形成された光記録媒体比較サンプル#6を作製した。
光記録媒体比較サンプル#6の第一の光透過膜のビッカース硬度は0.2mgf/μmであった。
次いで、日本化薬株式会社製の紫外線硬化性樹脂「MD450」(商品名)に代えて、96wt%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、1.6wt%の日産化学株式会社製のコロイダルシリカ、1.8wt%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、0.4wt%のテトラヒドロフルフリルアクリレート、0.2wt%のチバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「IRG184」(商品名)を混合した樹脂溶液を用いて、0.4μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、厚さ100μmの厚さを有する第二の光透過膜を形成した点を除き、光記録媒体サンプル#1と同様にして、光記録媒体比較サンプル#7を作製した。
光記録媒体比較サンプル#7の第一の光透過膜のビッカース硬度は45mgf/μmであった。
さらに、光記録媒体サンプル#3の第一の光透過膜を形成したのと同様にして、5μmの厚さを有する光透過性の膜を形成し、同じ操作を繰り返して、105μmの厚さを有する第一の光透過膜を形成し、第二の光透過膜を形成することなく、光記録媒体比較サンプル#8を作製した。
光記録媒体比較サンプル#8の第一の光透過膜のビッカース硬度は49.4mgf/μmであった。
ビッカース硬度は、ELIONIX株式会社製の超微小硬度計「ENT1100」(商品名)を用いて、荷重200mgf、負荷−保持(2秒)−除荷のサイクルで測定を行った。
光記録媒体サンプル#1ないし#4ならびに光記録媒体比較サンプル#1ないし#8を、それぞれ、パルステック工業株式会社製の光記録媒体評価装置「DDU1000」(商品名)にセットし、5.28m/secの線速度で回転させながら、405nmの波長を有するレーザビームを、開口数NAが0.85の対物レンズを用いて、光透過層を介して、記録層にフォーカスし、1,7RLL変調方式における2T信号ないし8T信号を含むランダム信号を記録した。
レーザビームの基底パワーは0.1mWに固定し、レーザビームの記録パワーは7.0mWに設定した。
ここに、2T信号の長さは、160nmであった。
次いで、光記録媒体サンプル#1ないし#4ならびに光記録媒体比較サンプル#1ないし#8を、それぞれ、上述の光記録媒体評価装置にセットし、5.28m/secの線速度で回転させながら、405nmの波長を有するレーザビームを、開口数NAが0.85の対物レンズを用いて、光透過層を介して、記録層に照射し、各サンプルに記録された信号を再生し、ジッタを測定した。
さらに、レーザビームの記録パワーを、0.2mWづつ、10.0mWまで、増大させて、上述したのと同様にして、光記録媒体サンプル#1ないし#4ならびに光記録媒体比較サンプル#1ないし#8のそれぞれに、2T信号ないし8T信号を含むランダム信号を記録し、上述したのと同様にして、各サンプルから再生した信号のジッタを測定した。
こうして測定したジッタから、最小のジッタを決定し、最小のジッタが得られたレーザビームの記録パワーを、レーザビームの最適記録パワーとして、決定した。
こうして決定された各サンプルのレーザビームの最適記録パワーは、表1に示されている。
次いで、光記録媒体サンプル#1ないし#4ならびに光記録媒体比較サンプル#1ないし#8を、それぞれ、80℃の温度下で、100時間にわたって、保存して、保存試験をおこない、コアーズ株式会社製の機械精度測定器「DC−1010C」(商品名)を用いて、各サンプルの機械精度を測定した。
測定結果は、表1に示されている。
表1において、保存試験後に、大きな反りが発生した場合に、そのサンプルの機械精度はBADであったと評価され、そうでない場合には、サンプルの機械精度はGOODであったと評価されている。
Figure 2004319067
表1に示されるように、第一の光透過層のビッカース硬度が、30mgf/μmないし50mgf/μmであった光記録媒体サンプル#1ないし#4においては、いずれも、再生信号のジッタが10%未満であり、最適記録パワーも12mW以下で、実用的な信号再生特性および記録感度を有するとともに、実用的な機械的精度を有しており、とくに、第一の光透過層のビッカース硬度が、33mgf/μmないし50mgf/μmであった光記録媒体サンプル#1ないし#3においては、再生信号のジッタが9.5%未満であり、優れた信号再生特性を有しており、さらに、第一の光透過層のビッカース硬度が、33mgf/μmないし42mgf/μmであった光記録媒体サンプル#1および#2においては、再生信号のジッタが9.5%未満で、かつ、最適記録パワーが11mW未満であり、優れた信号再生特性および記録感度を有していることが判明した。
これに対して、第一の光透過層のビッカース硬度が30mgf/μm未満であった光記録媒体比較サンプル#2、#3および#6ならびにキャップ層に隣り合った第二の光透過層のビッカース硬度が30mgf/μm未満であった光記録媒体比較サンプル#4においては、いずれも、再生信号のジッタが、11%以上で、信号再生特性が悪いことがわかった。
さらに、光記録媒体比較サンプル#7においては、第一の光透過層のビッカース硬度は30mgf/μmないし50mgf/μmであったが、第一の光透過層の厚さが0.5μm未満で、薄すぎたため、再生信号のジッタが14%を越え、信号再生特性が悪かった。
また、光記録媒体比較サンプル#8においては、第一の光透過層のビッカース硬度が30mgf/μmないし50mgf/μmであるため、実用的な信号再生特性および記録感度を有していたが、第一の光透過層の厚さが100μmを越え、厚すぎたため、保存試験後に、反りが発生し、保存信頼性が低下し、さらに、第一の光透過層のビッカース硬度が50mgf/μmを越えている光記録媒体比較サンプル#1においては、最適記録パワーが12mW以上で、記録感度が低く、さらには、保存試験後に、反りが発生し、保存信頼性が低下することがわかった。
本発明は、以上の実施態様および前記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
たとえば、図2および図3に示された実施態様においては、光記録媒体10は、第一の光透過膜15aおよび第二の光透過膜15bを有する光透過層15を備え、図3に示された実施態様においては、光記録媒体20は、単一の光透過膜によって構成された光透過層25を備えているが、記録層13に最も近接した光透過膜が、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有していれば、光透過層が3層以上の光透過膜によって構成されていてもよい。
また、前記実施態様においては、光記録媒体10、20は、単一の記録層13を備えているが、光記録媒体は、透明中間層を介して積層された複数の記録層を備え、透明中間層および光透過層あるいは光透過層の光入射面16、26に最も近接した記録層に最も近い光透過膜が、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有するように構成されていてもよい。
さらに、前記実施態様においては、光記録媒体10、20は、反射層12を備え、多重干渉効果によって、高い再生信号(C/N比)を得るためには、反射層12を備えていることが好ましいが、光記録媒体10、20が反射層12を備えていることは必ずしも必要でない。
また、図2および図3に示された実施態様においては、第二の光透過層15bの表面によって、光入射面16が構成され、図3に示された実施態様においては、光透過層25の表面によって、光入射面26が構成されているが、第二の光透過層15bあるいは光透過層25の表面に、ハードコート層を形成して、第二の光透過層15bあるいは光透過層25を保護するようにしてもよい。
図1は、光透過層のビッカース硬度が変化するのにともなって、光記録媒体から再生された信号のジッタおよびレーザビームの最適記録パワーがどのように変化するかを模式的に示すグラフである。 図2は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略斜視図である。 図3は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。 図4は、本発明のさらに好ましい実施態様にかかる光記録媒体の略断面図である。
符号の説明
10 光記録媒体
11 支持基板
11a グルーブ
11b ランド
12 反射層
13 記録層
14 キャップ層
15 光透過層
15a 第一の光透過膜
15b 第二の光透過膜
16 光入射面
20 光記録媒体
25 光透過層
26 光入射面

Claims (18)

  1. 支持基板と、レーザビームが入射する光入射面側に形成され、少なくとも1層の光透過膜を備えた光透過層と、前記支持基板と前記光透過層との間に、有機色素を主成分として含む記録層を備えた光記録媒体であって、前記少なくとも1層の光透過膜が、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記少なくとも1層の光透過膜が、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 前記少なくとも1層の光透過膜が、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体。
  4. 前記少なくとも1層の光透過膜が、0.5μm以上、100μm以下の厚さを有するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  5. 前記光透過層が、前記記録層側に位置し、200mgfの荷重に対して、30mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有する第一の光透過膜と、レーザビームが入射する光入射面側に形成された第二の光透過膜を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  6. 前記第一の光透過膜が、33mgf/μm以上、50mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする請求項5に記載の光記録媒体。
  7. 前記第一の光透過膜が、33mgf/μm以上、42mgf/μm以下のビッカース硬度を有していることを特徴とする請求項6に記載の光記録媒体。
  8. 前記第一の光透過膜が、0.5μmないし100μmの厚さを有するように形成されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  9. 前記第二の光透過膜が、前記第一の光透過膜よりも低い硬度を有していることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  10. 前記第一の光透過層および前記第二の光透過層が、スピンコーティング法によって、樹脂溶液を塗布することによって形成されていることを特徴とする請求項5ないし9のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  11. 第一の光透過層が光透過性接着剤によって形成された接着層によって構成され、第二の光透過層が、光透過性樹脂シートを接着層に接着することによって形成されていることを特徴とする請求項5ないし9のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  12. 前記光透過層が、10μm以上、300μm以下の厚さを有していることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  13. さらに、前記支持基板と前記記録層との間に、反射層を備えたことを特徴とする請求項1ない12のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  14. さらに、前記光透過層と前記前記記録層との間に、キャップ層を備えたことを特徴とする請求項1ない13のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  15. 前記キャップ層が、誘電体材料によって、10nmないし150nmの厚さを有するように、形成されたことを特徴とする請求項14に記載の光記録媒体。
  16. 前記キャップ層が、金属によって、10nmないし20nmの厚さを有するように、形成されたことを特徴とする請求項14に記載の光記録媒体。
  17. 前記記録層に主成分として含まれる前記有機色素が、370nmないし425nmの波長を有するレーザビームに対して、1.2未満または1.9を越える屈折率を有し、0.1以上、1.0以下の消衰係数を有していることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  18. 前記記録層が、ポルフィリン系色素、モノメチンシアニン系色素またはトリメチンシアニン系色素を主成分として含んでいることを特徴とする請求項17に記載の光記録媒体。
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