JP4528699B2 - 追記型光記録媒体 - Google Patents
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Description
その他、本発明と類似した、Bi(ビスマス)やBiの酸化物を含有する材料に関しては、特許文献9〜12に次のような技術が開示されている。
即ち、特許文献9には、一般式Ax(MmOn)y(Fe2O3)zにおいて、Aの各種酸化物、Mの各種元素、及びx、y、zの各種割合を規定した非晶質強磁性酸化物に関する技術が、特許文献10には、一般式(Bi2O3)x(MmOn)y(Fe2O3)zにおいて、MmOnの酸化物及びx、y、zの割合を規定した非晶質相を50%以上含む金属酸化物とその製法に関する技術が、特許文献11には、一般式(B2O3)x(Bi2O3)1−xの組成を有する非晶質化合物における組成xの範囲、及び急冷方法に関する技術が、特許文献12には、(Bi2O3)1−x(Fe2O3)x(但し、0.90≧x>0)なる組成を有するBi−鉄系非晶質化合物材料に関する技術が、それぞれ開示されているが、何れも透光性、強磁性のアモルファス酸化物材料に関するものであって、用途は、光磁気記録媒体、磁気によって光を制御する機能素子、光磁気センサー、透明導電膜、圧電膜などである。
また、上記特許文献9〜12は、材料や製造方法に関する発明が主体であり、追記型光記録媒体への応用についての言及はなく、特許文献10〜12には金属Biについての言及もない。
即ち、先願発明においては、酸化Biを記録層とし、酸化Biには酸素欠損があってもよいこと(即ち金属Biが存在してもよいこと)、及び記録マーク部が金属Biの結晶部を含有してもよいことは記載されているが、
・金属Biをどのような状態で存在させるか
・金属BiとBiの酸化物をどのような状態で存在させるか
・Biの酸化物以外の可能性
等への言及はなかった。
そこで、本発明では、赤色レーザ波長以下、特に青色レーザ波長領域以下でも高密度記録を高信頼性で行なうことが可能であり、優れた記録再生特性を実現できる最適構造の記録層を備えた追記型光記録媒体、及び、その最適構造に適した材料の提供を目的とする。
1) 基板上に、金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を含有するグラニュラー構造からなり、未記録部における金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子の大きさが5nm未満である記録層が設けられていることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) Bi合金が、Bi−Cd、Bi−Ce、Bi−Cu、Bi−Fe、Bi−Ga、Bi−Ge、Bi−Hg、Bi−In、Bi−K、Bi−Li、Bi−Mg、Bi−Mn、Bi−Na、Bi−Ni、Bi−Pb、Bi−Sb、Bi−Se、Bi−Sn、Bi−Te、Bi−Tl、Bi−Znから選択された少なくとも一種のBi二元合金であることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機酸化物材料を主成分とすることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
4) グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機窒化物材料を主成分とすることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
5) グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機弗化物材料を主成分とすることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
6) グラニュラー構造のマトリックス材料が、有機高分子材料を主成分とすることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
7) 情報の記録により、大きさ5nm以上の金属Bi及び/又はBi合金の結晶部を含有する記録マーク部が形成されることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 波長450nm以下のレーザ光により記録再生が可能であることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
本発明者等は、追記型光記録媒体の記録層を、金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を含有するグラニュラー構造とすることにより、優れたジッタ特性、記録感度等が実現できることを見出した。
グラニュラー構造とは、マトリックス中にナノスケールの微小な金属粒子や合金粒子が分散した状態をいう。
本発明における記録層は、例えば、アモルファスな無機酸化物中に、大きさが5nm未満のBi微粒子(ナノ粒子)がランダムに分散したグラニュラー構造を有する。前記先願発明との違い、及び本発明の新規性を纏めると以下の通りである。
(a)Bi及び/又はBi合金の状態を、金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子とした点(グラニュラー構造とした点)
(b)金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を、マトリックス材料中に分散させた点(グラニュラー構造とした点)
(c)マトリックス材料として、無機酸化物だけでなく、無機窒化物、無機弗化物、有機高分子を使用できる点
(d)マトリックス材料中に分散された金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子が光吸収機能を担う点
(e)マトリックス材料中に分散された金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を、記録光の照射によって、凝集又は結晶成長させる点
(f)記録光の照射による、金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子の凝集又は結晶成長を、マトリックス材料が、ある程度以下に抑制する点(ジッタやクロストークの低減)
金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子は、記録光を吸収し、自ら凝集、結晶化・成長し、記録マーク部を形成する役割を担う。
一方、マトリックス材料は、記録層の反射率特性、透過特性を向上させ、記録による金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子の凝集、結晶化・成長を抑制する働き(ジッタやクロストークの低減が実現できる)を担う。
グラニュラー構造とすることで、透明性が高いマトリックス材料を使用することができるため、高い光透過特性を得ることが可能となり、多層化には非常に有利となる。また、マトリックス材料中に金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を分散させるため、記録層の複素屈折率実部を高めることができ、高反射率を有する追記型光記録媒体が提供できる。
従来から用いられる金属又は合金のみからなる記録層では、高い複素屈折率実部を得ることができるものの、複素屈折率虚部も非常に大きくなるため、高反射率の追記型光記録媒体や、多層化を実現するための高透過性を有する追記型光記録媒体を実現しにくい。
また、前記先願発明では、主に酸化物の利用しか考えられていなかったが、本発明では記録層をグラニュラー構造としたことにより(機能を分離したことにより)、選択できるマトリックス材料の幅を大きく広げることが可能となった。
また、金属Bi又はBi合金を、低熱伝導率である無機酸化物材料、無機弗化物材料、無機窒化物材料、有機高分子材料等のマトリックス材料中に分散させることにより、記録光の吸収により発生する熱の広がりを抑制することができるため、低ジッタ化、高感度化を実現できる。
一方、無機酸化物材料、無機窒化物材料、無機弗化物材料、有機高分子材料等のマトリックス材料だけを用いた場合(即ち、金属微粒子や合金微粒子が存在しない場合)には、透明性が高くなりすぎ、記録感度が著しく低下する恐れがあるが、該マトリックス材料中に金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を分散させたグラニュラー構造とすることで、記録感度を大幅に改善することができる。
・優れたジッタ特性、PRSNR特性を実現できる。
・記録時のクロストークを低減できる。
・記録感度を高めることができる。
・変調度を十分確保することができる。
・高い反射率を有する追記型光記録媒体を実現できる。
・高い透過性も有するため、高反射率で、かつ高記録感度を有する多層追記型光記録媒体を実現できる。
なお、PRSNRとは、HD DVD−R規格に基づく信号品質を表す指標で、Partial Response Signal to Noize Ratio(パーシャル・レスポンス・シグナル・ツー・ノイズ・レシオ)のことである。
更に、マトリックス材料として複数の材料を用いる場合には、上記の形成方法を組合わせることも可能である。
例えば、マトリックス材料として無機酸化物材料と無機窒化物材料を用いる場合、Biの酸化物と無機酸化物の混合物(焼結体)からなるターゲットと、無機窒化物のターゲットを用いた共スパッタ法で作製することもできる。
例えば、Bi合金としては、Bi−Cd、Bi−Ce、Bi−Cu、Bi−Fe、Bi−Ga、Bi−Ge、Bi−Hg、Bi−In、Bi−K、Bi−Li、Bi−Mg、Bi−Mn、Bi−Na、Bi−Ni、Bi−Pb、Bi−Sb、Bi−Se、Bi−Sn、Bi−Te、Bi−Tl、Bi−Zn等が挙げられ、これらの中から選択された少なくとも一種の合金を記録層中に微粒子として存在させることができる。
また、本発明で使用できる合金微粒子としては、三元以上の多元合金を利用することも可能である。
記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及びイオン注入法等の物理的蒸着法(PVD法)、化学的蒸着法(CVD法)等を挙げることができるが、組成制御が容易である点で、スパッタリング法が特に好ましい。
また、マトリックス材料として有機高分子材料を用いる場合は、スピンコート法を用いることもできる。しかし、有機高分子材料を用いる場合でも、スピンコート法に限定される訳ではなく、上記各種成膜方法を用いることが可能である。
また、本発明における金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子は、未記録状態において(成膜直後において)、その大きさが5nm未満であるようにする。
未記録状態における金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子の大きさが5nm以上でも記録は問題なく行なえるが、特に青色レーザ波長以下で記録再生を行なう場合は、S/N比が低下する恐れがあるため、5nm未満とする。
一方、記録部は、高い変調度を得るために、大きさ5nm以上の金属Bi又はBi合金の結晶部を含有することが好ましい。但し、現段階で、記録部が5nm以上の大きさの金属Bi又はBi合金の結晶部を含有する場合に、非常に良好な記録再生特性が得られることを確認しているということであって、大きさが5nm未満の結晶部を含有する場合を否定するものではない。
上記マトリックス材料は2種以上混合して複合材料として用いてもよい。マトリックス材料を複数の材料から構成することにより、熱伝導率や複素屈折率を容易に制御できるので、本発明でも好ましい例として挙げることができる
無機酸化物材料としては、例えば、Si−O、Al−O、Ti−O、Ta−O、Zr−O、Cr−O等の酸化物を挙げることができる。
無機窒化物材料としては、例えば、Ge−N、Cr−N、Si−N、Al−N、Nb−N、Mo−N、Ti−N、Zr−N、Ta−N等の窒化物を挙げることができる。
無機弗化物材料としては、例えば、Si−F、Al−F、Mg−F、Ca−F、La−F等の弗化物を挙げることができる。
また、複合材料としては、例えば、Ge−O−N、Cr−O−N、Si−O−N、Al−O−N、Nb−O−N、Mo−O−N、Ti−O−N、Zr−O−N、Ta−O−N等の窒酸化物等も利用することが可能である。
有機高分子材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
(a)基板/記録層/断熱層/反射層
(b)基板/下引層/記録層/断熱層/反射層
(c)基板/反射層/断熱層/記録層/カバー層
(d)基板/反射層/断熱層/記録層/上引層/カバー層
更に、上記構造を基本として、多層化しても構わない。
例えば、(a)の構成を基本として二層化する場合、基板/記録層/断熱層/反射層(半透明層)/接着層/記録層/断熱層/反射層/基板という構成とすることができる。
基板の材料としては、熱的、機械的に優れた特性を有し、基板側から(基板を通して)記録再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好適である。
基板の厚さは、用途により適宜設定することができ、特に限定されない。
(1)Nb2O5、Sm2O3、Ce2O3、Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、UO2、ThO2などの単純酸化物系の酸化物
(2)SiO2、2MgO・SiO2、MgO・SiO2、CaO・SiO3、ZrO2・SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、Li2O・Al2O3・4SiO2などのケイ酸塩系の酸化物
(3)Al2TiO5、MgAl2O4、Ca10(PO4)6(OH)2、BaTiO3、LiNbO3、PZT〔Pb(Zr,Ti)O3〕、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O3〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物
(4)Si3N4、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物
(5)SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物
(6)LaB6、TiB2、ZrB2などのホウ化物系の非酸化物
(7)ZnS、CdS、MoS2などの硫化物系の非酸化物
(8)MoSi2などのケイ化物系の非酸化物
(9)アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物
このような光反射性物質としては、例えばAl、Al−Ti、Al−In、Al−Nb、Au、Ag、Cu等の金属及び半金属を挙げることができる。これらの物質は単独で用いても二種以上を組合せて用いてもよい。また、合金として用いてもよい。
合金により反射層を形成する場合は、合金をターゲット材料としたスパッタ法で成膜することができるが、これ以外に、チップオンターゲット方式(例えば、Agターゲット上にCuチップをのせて成膜)、共スパッタ法(例えば、AgターゲットとCuターゲットを使用)でも成膜することができる。
また、反射層上や、その他の構成層間に適宜保護層を設けてもよい。
保護層の材料としては、外力から保護する機能を有するものであれば、従来公知の有機材料や無機材料を適宜使用できる。
保護層用の有機材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂が挙げられる。また、無機材料としては、SiO2、SiN4、MgF2、SnO2等が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂からなる保護層は、これらの樹脂を適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し乾燥することにより形成できる。また、紫外線硬化性樹脂からなる保護層は、該樹脂をそのまま又は適当な溶剤に溶解した塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより形成できる。
上記の材料は単独で用いても混合して用いても良いし、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法、スパッタ法、化学蒸着法等が用いられるが、特にスピンコート法が好ましい。
保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲とするが、特に、3〜30μmが好ましい。
更に、基板鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂層や無機系薄膜等を成膜してもよい。
また、本発明の追記型光記録媒体は、基板側のみから光を照射して記録再生する構成に限られず、構成層上に所定のカバー層を設け、このカバー層側から光を照射して記録再生するようにしてもよい。薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することにより、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成されるのが一般的である。また、本発明で言うカバー層には、カバー層を接着するための層を含めてもよい。
本発明の具体的なメリットは下記の通りである。
・優れたジッタ特性、PRSNR特性を実現できる。
・記録時のクロストークを低減できる。
・記録感度を高めることができる。
・変調度を十分確保することができる。
・高い反射率を有する追記型光記録媒体を実現できる。
・高い透過性をも有するため、高反射率で、かつ高記録感度を有する多層追記型光記録媒体を実現できる。
ポリカーボネート基板上に、Bi2O3とFe2O3を5:2の割合で混合、焼結したターゲットを用いて、膜厚が約5nmの記録層を成膜した。
まず、このサンプルの記録層がどのような構造を有するかについて、透過型電子顕微鏡(TEM)による分析を行なった。
図1に、未記録状態(未記録部)のTEM像を示した。このTEM像では、グラニュラー構造に特有な、非常に微小な微粒子が分散された状態が観察された。図1の状態を分かり易くするため、図2に、図1の模式図を示した。
この図1〜図2で観察された状態は、次の(1)〜(6)の何れかであると推測される。なお、酸化Biとは、例えばBi2O3であり、酸化鉄とは、例えばFe2O3である。
(1)金属微粒子:Bi マトリックス:酸化Bi+酸化鉄
(2)金属微粒子:Fe マトリックス:酸化Bi+酸化鉄
(3)金属微粒子:Bi+Fe マトリックス:酸化Bi+酸化鉄
(4)合金微粒子:BiFe合金 マトリックス:酸化Bi+酸化鉄
(5)金属微粒子:Bi マトリックス:酸化鉄
(6)金属微粒子:Fe マトリックス:酸化Bi
更に本サンプルの記録層がグラニュラー構造を有することを確認するため、上記(1)〜(6)のうち、どのような状態であるのかについて検討した。
本サンプル作製時には、スパッタリングターゲットとして無機酸化物ターゲットを用いたので、マトリックス材料として無機酸化物材料が存在することは、ほぼ確かであるが、グラニュラー構造をなすための微小な金属粒子が存在するか否かを確認する必要がある。具体的には、本サンプル中に微小な金属粒子と無機酸化物材料が存在することを確認するため、X線光電子分光法(XPS)による分析を行なった。
なお、XPSによる分析条件は、下記の通りである。
<XPS分析条件>
・測定装置 : AXIS−ULTRA(Kratos社製)
・X線源 : Alモノクロメータ使用
・X線パワー : 40W
・測定領域 : 110μφ
・測定核 : Bi_4f
・エネルギー分解能: wide scan(ワイドスキャン)=1.0eV
narrow scan(ナロースキャン)=0.1eV
・入射角 : 45°
・取り出し角 : 90°
一般に、分析サンプルが空気に触れる時間を可能な限り短くしても、表面に厚さ1nm程度の空気酸化層が見られるケースが多いので、Bi0とBiOの定量を確認するため、深さ方向分析をBi_4fについて実施した(図4参照)。
Bi_4fの深さ方向分析において、表面の空気酸化層の影響を調べるため、1Å程度のエッチングステップの設定を用いた。
図4から得られたBi0とBiOの比を図5に纏めた(定量にはBi_4f 7/2を使用した)。
表面近傍にBiOが偏在している可能性もあるが、図5の結果から、試料が表面酸化された部分の膜厚が12Å(1.2nm)程度である(図の左端の空気層との界面から12Å程度離れたところまで)ことから、空気酸化の影響である可能性が高いと考えられる。そこで、空気酸化の影響を排除して正しい組成を求めるため、Biに関して、深さ15Åから19Åの範囲の平均をとったところ、Bi0が57%、BiOが43%の比で存在していることが分かった。
・金属Bi(Bi0)が単独で存在する
・酸化Bi(BiO)が存在する
・鉄は酸化物として存在する(金属としては存在しない)
ことが明らかになり、Bi0とBiOが個別に検出されていることから、両者はお互いに独立で存在していると考えられるので、アモルファス構造となっているマトリックス材料(酸化Bi+酸化鉄)中の金属Bi微粒子は、酸化Biや酸化鉄と均一混合せず分散した状態であると結論づけることができる。
即ち、本サンプルの記録層はグラニュラー構造を有することが確認できた。また、未記録状態における金属Bi微粒子の大きさは5nm未満であることが確認できた。
ポリカーボネート基板上に、次の実施例2〜5の各組成を有するターゲットを用いて、膜厚が約10nmの記録層を成膜した。
・実施例2 : Bi2O3ターゲット
・実施例3 : Bi2O3とFe2O3を3:5で混合し焼結したターゲット
・実施例4 : Bi2O3とBOを2:1で混合し焼結したターゲット
・実施例5 : Bi2O3とSiO2を5:1で混合し焼結したターゲット
この実施例2〜5に対しても、実施例1と同様の分析を行なった。
その結果、実施例2〜5の各記録層はグラニュラー構造となっていることが確認でき、金属Bi微粒子の大きさは5nm未満であることも確認した。
青色レーザ対応の追記型光記録媒体として、現在規格化が進行しているHD DVD−Rに対応した追記型光記録媒体を作製した。
具体的には、ポリカーボネート基板/金属Biを含有するグラニュラー構造からなる記録層/断熱層/反射層/保護層からなる追記型光記録媒体を、記録層の種類を変えて7種類作製した(参考例6〜12)。
なお、記録層の膜厚は5nmとし、断熱層には膜厚90nmのZnS−SiO2、反射層には膜厚80nmの銀合金(三菱マテリアル社製)、保護層には膜厚5μmの紫外線硬化型樹脂を用いた。
更に、もう1つの青色レーザ対応の追記型光記録媒体として規格化が進んでいる、Blu−ray Rに対応した追記型光記録媒体を作製した。
具体的には、ポリカーボネート基板/反射層/断熱層/金属Biを含有するグラニュラー構造からなる記録層/接着層/カバー層からなる追記型光記録媒体を、記録層の種類を変えて7種類作製した(参考例13〜19)。
なお、記録層の膜厚は5nmとし、断熱層には膜厚90nmのZnS−SiO2、反射層には膜厚80nmの銀合金(三菱マテリアル社製)を用い、紫外線硬化型樹脂からなる接着層とカバー層の厚さはBlu−ray R規格に準拠する膜厚に調整した。
それぞれの参考例で用いたターゲットは下記の通りである。
・参考例6、13 :Bi2O3ターゲット
・参考例7、14 :BiターゲットとFe2O3ターゲットを用いた共スパッタ法
・参考例8、15 :Bi2O3とFe2O3を2:1で混合し焼結したターゲット
・参考例9、16 :Bi2O3とPdOを3:1で混合し焼結したターゲット
・参考例10、17:Bi2O3とLaF3を5:1で混合し焼結したターゲット
・参考例11、18:Biターゲットとフッ素樹脂ターゲットを用いた共スパッタ法
・参考例12、19:Biターゲット、Fe2O3ターゲット、及びSi3N4ター
ゲットを用いた共スパッタ法
参考例6〜12の結果は表1に示す通りであり、参考例13〜19の結果は、それぞれ用いたターゲットが同じである参考例6〜12と同様であった。
また、各追記型光記録媒体の記録膜が、図1〜図2のようなグラニュラー構造を形成していることをTEM像により確認した。
次いで、各追記型光記録媒体に対して、HD DVD−Rの場合はパルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用い、Blu−ray Rの場合はパルステック工業社製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.85)を用いて、それぞれの規格に準拠した条件で、記録再生実験を行った。参考例6〜12の結果は表1に示す通りである。
なお、PRSNRは、前述したように、HD DVD−R規格に基づく信号品質を表す指標である。
また、参考例13〜19について、ジッタ(Blu−ray R規格に基づく信号品質を表す指標)を評価したところ、何れの参考例においても、Blu−ray R規格の記録パワーの上限である5.2mW以下で記録でき、参考例13が5.8%、参考例14が5.7%、参考例15が5.4%、参考例16が6.0%、参考例17が5.9%、参考例18が6.0%、参考例19が5.6%であった。
更に、参考例6〜12において、HD DVD−Rとして作製した追記型光記録媒体の記録部をTEMにより観察した。
図6は、参考例6の追記型光記録媒体の記録部(最短マーク)を観察した結果であり、大きさ5nm以上の金属Biの結晶部を含有することが確認できた。参考例7〜12についても同様に、その記録部(最短マーク)は、大きさ5nm以上の金属Bi又はBi合金の結晶部を含有すること確認した。
記録層を金属Biとした点(Biターゲットを使用)以外は、参考例6〜12と同様にして比較例1の追記型光記録媒体を作製し、また、参考例13〜19と同様にして比較例3の追記型光記録媒体を作製して、それらの記録再生特性を評価した。
これらの比較例の記録層は明らかにグラニュラー構造ではなかった。また、記録再生特性は、比較例1では、表1に示す通り、変調度が十分でなく記録感度も大幅に悪化した。比較例3では、ジッタ特性が非常に悪化し15.0を超えてしまった。
記録層をBi2O3とし(Bi2O3ターゲットを使用)、スパッタ時に酸素を5sccm導入した点以外は、参考例6〜12と同様にして比較例2の追記型光記録媒体を作製し、また、参考例13〜19と同様にして比較例4の追記型光記録媒体を作製して、それらの記録再生特性を評価した。
これらの比較例の記録層を実施例1と同様にXPSで分析した結果、金属Biを明確に検出することができず、Biはほぼ完全に酸化していることを確認した。
この結果から、これらの比較例の記録層は、明らかにグラニュラー構造をなしていないと言える。記録再生特性は、比較例2では、表1に示す通り、記録感度が大幅に悪化した。比較例4では、ジッタ6.1%という良好な値が得られたが、最適記録パワーは、Blu−ray R規格の記録パワーの上限である5.2mWを超えてしまった。
Claims (8)
- 基板上に、金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子を含有するグラニュラー構造からなり、未記録部における金属Bi微粒子及び/又はBi合金微粒子の大きさが5nm未満である記録層が設けられていることを特徴とする追記型光記録媒体。
- Bi合金が、Bi−Cd、Bi−Ce、Bi−Cu、Bi−Fe、Bi−Ga、Bi−Ge、Bi−Hg、Bi−In、Bi−K、Bi−Li、Bi−Mg、Bi−Mn、Bi−Na、Bi−Ni、Bi−Pb、Bi−Sb、Bi−Se、Bi−Sn、Bi−Te、Bi−Tl、Bi−Znから選択された少なくとも一種のBi二元合金であることを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機酸化物材料を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
- グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機窒化物材料を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
- グラニュラー構造のマトリックス材料が、無機弗化物材料を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
- グラニュラー構造のマトリックス材料が、有機高分子材料を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
- 情報の記録により、大きさ5nm以上の金属Bi及び/又はBi合金の結晶部を含有する記録マーク部が形成されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 波長450nm以下のレーザ光により記録再生が可能であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の追記型光記録媒体。
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