本発明に係る欠陥検査装置の実施例1を図1から図25に示す。図1に本実施例における欠陥検査装置1000の構成を示す。ディスク基板1は回転ステージ2に固定される。回転ステージ2は回転ステージ制御系3により回転数を制御するとともに、回転方向の位置検出が可能である。回転ステージ2はステージ4により水平方向に移動可能である。ステージ4は直線ステージ制御系5により水平方向の移動量が制御されるとともに、半径方向の位置検出が可能である。このようにディスク基板1を載置して回転させると共に一軸方向に移動させるテーブル手段は、回転ステージ制御系3により制御される回転ステージ2と直線ステージ制御系5により制御されるステージ4とによって構成される。
そして、上記ディスク基板1に対して第一の俯角方向から第一のレーザ光が第一の照明装置6により照射される。該照射される照明の上方側に設置された第一の散乱光検出手段を構成するレンズ7a及び上方検出器(第一の検出器)8aは、ディスク基板1から第一の仰角方向に発生する散乱光を検出可能に構成される。さらに、第二の散乱光検出手段を構成するレンズ7b及び側方検出器8bは、上方検出器8aで検出できる範囲以外である低い角度(第二の仰角方向)に発生した散乱光を検出可能に構成される。
また、同様にディスク基板1に対して第二の俯角方向から第二のレーザ光が第二の照明装置9により照射される。そして、該レーザ光の照射方向の正反射側に設置された正反射光検出手段を構成する検出器10は、ディスク基板1で正反射した光を検出可能に構成される。さらに、検出器10で検出された信号は、演算回路11により処理される。
ところで、上記検出器8a、8bとしては光電変換素子あるいは光電子増倍管やカメラが用いられる。同様に上記検出器10も光電変換素子あるいは光電子増倍管やカメラが用いられる。
なお、ディスク基板1に対して斜め方向からレーザ光を照射する照明手段は、上記第一の照明装置6及び第二の照明装置9によって構成される。第一の照明装置6による第一の俯角方向の角度は、ディスク基板1に対して水平(ディスク基板1の円周方向)以外の角度とする。本実施例では、垂線から20度程度に設定した。また、第二の照明装置9による第二の俯角方向の角度は、ディスク基板1の垂線およびディスク基板1に対して水平方向(垂線から90度)以外の方向とする。本実施例では、60度程度に設定した。検出器8bの設定角度(第二の仰角方向)は、検出器8aで検出できる範囲以外である低い角度とするため、本実施例では、垂線から80度程度に設定した。
制御部12は、基板上の欠陥を検出する信号処理手段を有し、検出器8a、8bの検出信号を処理して異物やスクラッチ(傷)等の欠陥を検出する第一欠陥判定ユニット50と、検出器10の検出信号を処理した演算回路11の波形を処理し、波形形状を判定する検出波形判定ユニット51と、検出波形判定ユニット51で判定した結果より、検出波形を分割する検出波形分割ユニット52と、検出波形分割ユニット52で分割した波形を処理してピット/バンプ等の欠陥を検出する第二欠陥検出ユニット53と、回転ステージ制御系3と直線ステージ制御系5で検出した位置から座標を求める位置情報検出ユニット54と、回転及び直線移動ステージの回転数や検出位置への移動を制御するステージ制御ユニット55と、第一欠陥判定ユニット50での欠陥判定結果と第二欠陥判定ユニット52での欠陥判定結果とその欠陥判定結果に対応する位置情報ユニット54の結果(各種欠陥の位置座標)とを記憶する記憶ユニット56と、記憶ユニット56で記憶した結果から、欠陥の種別を判定する欠陥種別判定ユニット57と、これらを通信、制御するMPU58と、バス59とで構成される。
入力装置13は、しきい値などの検査条件や検査に必要な項目などを入力するものである。モニタ14は、検出した欠陥の表示、入力時の支援画面を表示可能である。プリンタ15は、欠陥座標、マップなどが出力可能である。
ここで、ハードディスク装置に用いられるディスク基板の製造工程を図2により説明する。工程全体は、磁性体を蒸着する前のサブストレート製造工程と、磁性膜を施したメディアを製造する工程に分かれる。サブストレートは、ガラスあるいはアルミ合金などの素材から、外径、内径を加工する形状加工100、両面を平坦に可能するポリッシング101、付着した異物を除去する洗浄102、完成したサブストレートの表面状態を検査する検査103を経て製作される。メディアは、サブストレートの表面にテクスチャを施すテクスチャ加工104、洗浄105、スパッタなどにより磁性膜を蒸着する磁性体成膜106、潤滑層成膜107、ポリッシングやバニッシングなどでメディアの表面を平坦化するために研磨加工する研磨108、完成したメディアの表面状態を検査する検査109を経て製作される。
図3にはハードディスク装置における記録方法とディスク基板の断面を示し、図4にはディスク基板の主な欠陥の種類を示す。図3において、磁気ヘッド部70の先端に形成されたヘッド(磁気素子)71によりディスク基板1とヘッド71は非接触の状態で磁気の読み書きを行う。読み書き時のディスク基板1とヘッド71のすきまは浮上量あるいはフライングハイトと呼び、近年では10nm以下まで接近している。ディスク基板1上の欠陥は、この浮上量より小さいものは問題とならないが、浮上量より大きい場合はヘッド71を欠落させる恐れがある。
図4はディスク基板を上面から見た図である。図2で説明したように、各製造工程により種々様々な欠陥が発生する。異物72はディスク基板1の表面に付着するため、ヘッド71と干渉する恐れがあるが、ハードディスクに組み込む前に洗浄を行うことで大半は洗い流され、問題とならない場合が多い。ディスク基板1の表面から膨らんだバンプ欠陥73や、ディスク基板1の表面から凹んだピット欠陥74などは、ディスク表面上に大きな面積(1mm程度)でかつ薄い(数nmから数十nm程度)欠陥であることが多く、なだらかな凹凸の欠陥であり、ヘッド71は追従しやすいが、磁性体などを蒸着する工程において蒸着不良が発生しやすくなり、記録不良などの大きな要因となる。スクラッチ75は、基板の表面を平坦化する研磨工程において、研磨剤などの脱落により発生する欠陥であり、長いすじ状や短い傷のような形状となり、へこみと突起が複合した欠陥である。このような急激な突起となっている欠陥は、ヘッド71と干渉するため、致命的な故障となりうる。そのため、検査装置により、これらの欠陥を早期工程で検出し、不良品として排除する必要がある。それぞれの欠陥の断面は大まかには、図3に示すようになっている。
次に、各部の動作を説明する。先ず、図1に示した構成において、回転ステージ2に載置されたディスク基板1の表面に対して、照明手段を構成する第一の照明装置6と第二の照明装置9は同時にレーザ光を照明する。この状態で、ディスク基板1を載置した回転ステージ2は、回転ステージ制御ユニット3で回転数を制御されて回転し、直線ステージ制御ユニット5により水平方向の移動量を制御したステージ4が水平方向に移動する。ステージ4の移動は、回転ステージ2の一回転毎に、照明光のスポット幅量だけ移動する。この回転しているディスク基板1の表面に対して斜方から、第一の照明装置6と第二の照明装置9での照明がディスク基板1に照射される。ディスク基板1の表面に欠陥が存在した場合、欠陥から反射光や散乱光が発生し、その散乱光の上方への一部が第一の散乱光検出手段を構成するレンズ7aで集光されて上方検出器8aで検出され、上記散乱光の側方への一部が第二の散乱光検出手段を構成するレンズ7bで集光されて側方検出器8bで検出される。また、正反射光検出手段を構成する検出器10によってディスク基板1の表面の上下変動が検出可能である。それぞれの検出器の信号が制御ユニット12に入力され、欠陥判定と欠陥種別の判定が行われ、その結果をモニタ14に表示される。
図5乃至図8は斜方から照明した場合における各種欠陥からの散乱光の発生状態を示す図である。図5はディスク基板の表面に存在する異物等の凸状の欠陥72からの散乱光の発生状態を示す図であり、同図(a)は左側から斜方照明した場合を示し、同図(b)は(a)に示す照明方向に対して直角の方向(照明光60の入射方向に対向する側)から見たときの状態を示す。照明光60がディスク基板1に対して斜めから照明されると異物72からは、散乱光61a、61bのような分布で発生する。このように、異物のような突起物からは、図5(b)に示すように左右対称に散乱する分布が多く見られる。但し、例外的に照明条件、異物の大きさによっては左右対称にならない場合もある。
図6はディスク基板の表面に存在するスクラッチ75などの傷欠陥からの散乱光の発生状態を示す図であり、同図(a)は左側から斜方照明した場合を示し、同図(b)は(a)に示す照明方向に対して直角の方向(照明光60の入射方向に対向する側)から見たときの状態を示す。照明光60がディスク基板1に対して斜めから照明されるとスクラッチ75からは、散乱光62a、62bのような分布で発生する。傷の直角方向には反射、散乱光の発生は大きいが、同図(b)に示すように、傷方向(長手方向、スクラッチ75の底辺を点線で示す)には反射、散乱光の発生が小さくなる。
図7は凹み状のピット欠陥74、図8は膨らみ状のバンプ欠陥73からの散乱光の発生状態を示す。照明光60がディスク基板1に対して斜めから照明されるとピット欠陥74やバンプ欠陥73からは、わずかながら散乱光63、64が発生するが、これらの欠陥は幅が大きく、深さ(高さ)が非常に小さいため、緩やかな傾斜となりエッジ部からの散乱光の発生はほとんどない。そのため、異物やスクラッチなどは散乱光を検出することで欠陥検出は可能であるが、緩やかな傾斜があるピット欠陥やバンプ欠陥は散乱光による欠陥の検出は困難であることが分かる。
次に、ピット欠陥やバンプ欠陥を検査する一実施例を説明する。図9はあるピット欠陥やバンプ欠陥を検査する一実施例である。照明光80はディスク基板1の斜方から照明される。ディスク基板1からの正反射光81を検出器10で検出する。検出器10は例えば2分割センサを用いる。図9(a)に示すようにディスク基板1の高さが基準高さと一致している場合、ディスク基板1の反射スポット82は、検出器10の上部センサ10aと下部センサ10bの中間に集光される。演算回路11は、検出器10の上部センサ10aの出力と下部センサ10bの出力の差分を算出するものとする。すなわち、反射スポット82が検出器10の中心に照射されると、演算回路11の差分出力は、波形83に示すように出力が0となる。図9(b)において、ディスク基板1が基準高さより下方に移動した場合、正反射光84は下部センサ10b側にずれることになり、波形85は差分出力がマイナス側に変化する。図9(c)において、ディスク基板1が基準高さより上方に移動した場合、正反射光86は上部センサ10a側にずれることになり、波形87は出力がプラス側に変化する。この原理により、ディスク基板1の表面がフラットな平面であるため、緩やかな傾斜がある欠陥においては、ディスク基板1の高さが変動する状態と同じことになるため、正反射光の変化を検出することで、凹み状のピット欠陥74、膨らみ状のバンプ欠陥73が検出可能となる。
図9においては、検出器10に2分割センサを用いた場合について説明したが、図10(a)、(b)に示すようにポジションセンサ17でも同様の効果が得られる。すなわち、図10(a)に示すようにポジションセンサ17上で反射スポット82が矢印で示した方向、すなわち上下方向に移動することにより、ポジションセンサ17の出力バランスが変化し、図10(b)に示すように処理回路18から出力される波形88が矢印で示したように上下に変動する。
さらに、図11(a)、(b)に示すように、検出器10としてCCDセンサ19を用いた場合でも同様の効果が得られる。すなわち、図11(a)に示すようにCCDセンサ19の面上で反射スポット82が矢印で示したように上下方向に移動してCCDセンサ19上の位置が変化することで、図11(b)に示すように処理回路20から出力される波形89のピーク位置が矢印で示したように左右方向(画素方向)に変化することになる。さらにCCDセンサ19の代わりに2次元カメラを用いても同様の効果が得られる。
次に、本実施例による表面欠陥検査装置の検出波形について説明する。図12はディスク基板1を表面から観察した図である。本図においては、紙面の最上部を0度として、右回りに検出角度として記す。最下部が180度であり、360度は0度と同じとなる。図12は、ディスク基板1の中心から等距離にあるライン90の上に、スクラッチ欠陥(幅が300nm程度、深さが10nm程度)75、小さな異物(粒径が100nm程度)72a、バンプ欠陥(幅が1mm程度、高さが数nm程度の膨らみ)73、大きな異物(粒径が300nm程度)72b、ピット欠陥(幅が1mm程度、深さが数nm程度の凹み)74が配置された状態を示す。
図13は、図12においてディスク基板1の中心から等距離にあるライン90(検査位置)に沿った断面図を示している。このようにライン90(検査位置)上に種々の欠陥が存在するディスク基板1を検出した実施例を図14から図15に示す。図14(a)、(b)は、ディスク基板1を第一の照明装置6により照明し、ディスク基板1からの反射光(散乱光)を上方検出器8aおよび側方検出器8bで検出したときの信号波形の一実施例を示す。
図14(a)は、上方検出器8aで検出した信号波形91を示す。横軸は検出角度(図12参照)、縦軸は検出器8aの出力を示す。検出信号波形91において、それぞれの欠陥部を検出した部分には信号のピークが現れており、92aがスクラッチ欠陥75に対応し、93aが小さな異物72aに対応し、94aが大きな異物72bに対応する。一方、図13に示したバンプ欠陥73とピット欠陥74に対応するピークは、検出信号波形91に現れていない。従って、制御部12の第一欠陥判定ユニット50において、この検出信号波形91に対して欠陥を判定するためのしきい値95を設定することによってスクラッチ欠陥75、小さな異物72a、大きな異物72bを判定することが可能となる。
図14(b)には、側方検出器8bで検出した信号波形を示す。図14(a)と同様に、検出信号波形96において、それぞれの欠陥部を検出した部分には信号のピークが現れており、93bが小さな異物72aに対応し、94bが大きな異物72bに対応する。一方、図13に示したスクラッチ欠陥75、バンプ欠陥73とピット欠陥74に対応するピークは、検出信号波形96に現れていない。従って、制御部12の第一欠陥判定ユニット50において、図14(a)の場合と同様に、この信号波形96に対して、欠陥を判定するためのしきい値97を設定することによって小さな異物72a、大きな異物72bを判定することが可能となる。
図5から図8で説明したように、異物からの散乱光は、上方および側方に散乱光が発生するため、上方検出器8aと側方検出器8bの双方で検出できる。また、スクラッチ欠陥75は上方への散乱光量は多いが側方への散乱光量は少ないため、側方検出器8bでは検出できない。さらに、エッジがない緩やかな傾斜であるバンプ欠陥73やピット欠陥74は散乱光の発生が少なく、上方検出器8aおよび側方検出器8bからの出力信号が小さいため、上方検出器8aおよび側方検出器8bの出力信号からこれらの欠陥を検出することは難しい。
図15は、ディスク基板1の表面を第二の照明装置9で照明したときのディスク基板1からの正反射光を検出器10で検出して得られる信号波形200の一実施例を示す。ここで、検出器10として、図9(a)〜(c)に示したような2分割センサを用いた場合の例を示す。信号波形200は、検出器10(2分割センサ)の出力を演算回路11で演算した結果を示す。横軸は検出角度(図12参照)、縦軸は演算回路11の差分出力を示す。信号波形200において、それぞれの出力ピークは、信号203がバンプ欠陥73、信号204がピット欠陥74に対応している。しかしながら、上方検出器8aと側方検出器8bで検出された異物72a、72b、スクラッチ75に対応する差分信号のピークは見られないことがわかる。この差分信号波形に対して、差分出力の正、負側に同様にしきい値201、202を設定し、これ以上の出力を欠陥と判定する。このように、エッジがない緩やかな傾斜があるバンプ欠陥73やピット欠陥74は、ディスク表面からの反射光の検出位置の変化により、正反射光が変化することから、検出器10により検出が可能となる。
以上のことから、散乱光と正反射光を同時に検出することで、異物のような表面上に付着した欠陥、スクラッチのような傷、バンプ欠陥やピット欠陥のような面積が大きく薄い欠陥をすべて網羅することが可能である。
ところで、実際のディスク基板1は、製造状態において数ミクロン程度のそり生じており、また、検査装置にディスク基板1を固定する場合にも応力変動によりディスクランナウトのようにそりが発生する場合がある。そのため、ディスク基板1からの正反射光を検出器10で検出する場合に、ディスク基板1のそりによる出力の変動が発生する場合がある。
図16はその状態を示した図である。図16(a)は表面に反りが生じているディスク基板1aに対して照明光80で照明し、ディスク基板1aの表面の反りに応じた正反射光81の変位を検出器10で検出する状態を示し、図16(b)は検出器10で検出して演算回路11から正反射光81の変位を示す差分信号として出力された出力信号波形205を示す。即ち、検出器10で検出される正反射光81は、反ったディスク基板1aの表面のうねりの状態に追従するため、演算回路11から正反射光81の変位として出力される信号波形205にも大きなうねりを生じた波形となる。
出力信号波形205において、局所的にみれば、バンプ欠陥73に対応する信号203a、ピット欠陥74に対応する信号204aが検出されているが、しきい値を検出波形の外側に設定しなければならないため、しきい値201a、202aとすると、それぞれの欠陥73、74は検出不可能となる。
本発明では、ディスク基板1表面のうねりの影響を受けることなくディスク基板1表面の種々の欠陥を検出することを可能にする表面欠陥検査方法及びその装置を実現するものである。
図17から図22に、うねりのあるディスク基板1aの表面を照明光80で照明した時にディスク基板1a表面からの正反射光81を検出して演算回路11から出力される出力信号波形からバンプ欠陥73やピット欠陥74を検出する場合に、ディスク基板1aの表面のうねりの影響を低減する方法について説明する。
図17は、うねりの影響を低減する方法のフローチャートである。まず、このフローは、検出波形判定ユニット51において検出波形判定を行う処理フロー500と検出波形分割ユニット52において検出波形分割処理を行う処理フロー505とで構成される。
検出波形判定を行う処理フロー500においては、うねり情報取得用波形処理501において、検出器10で検出して演算回路11から出力された検出信号波形を取得する。次に、取得した検出信号波形において検出角度を基準にした検出光量の平均値処理502を行い、その平均値処理した信号波形に対してローパスフィルタ処理503を行う。さらに、そのローパスフィルタ処理を行った信号波形に対して多項式演算処理504を行い、うねり情報のみを持った信号波形を生成する。
次に、検出波形分割処理を行う処理フロー505においては、うねり情報を持った信号波形に対して、しきい値処理506を数段階に設定(本実施例では3種類)して検出波形の分割数判定と検査不可の判定を行い、その判定に従って、検出波形分割処理507により波形の分割を行う。
図18から図22に示すうねりの影響を低減する処理の詳細について説明する。
図18には、検出波形判定ユニット51において検出波形判定を行う処理フロー500の実施例を示す。図18(a)はディスク基板1を表面から見た図であり、内径付近1a、中央付近1b、外周付近1cの検出位置を示す。図18(b)は、うねり情報取得用波形処理501においてそれぞれの検出位置で取得した波形508(内径付近1aに対応)、509(中央付近1bに対応)、510(外周付近1cに対応)を示す。横軸は検出角度、縦軸は検出光量である。
次に、平均値処理502においては、それぞれの検出位置で取得した波形508、509、510に対して図18(c)に示すように検出角度を基準に検出光量の平均値を求めて波形511を生成する。次に、波形511に対してローパスフィルタ処理503を行い、図18(d)に示すような波形512を生成する。次に、多項式演算処理504では波形512に対して多項式演算処理を行い、図18(e)に示すようなうねり情報のみを持った信号波形513を生成する。この信号波形513がディスク基板のうねりの状態を示している。ローパスフィルタ処理および多項式演算処理方法については、一般的な手法を用いることで実現可能である。また、多項式演算処理としては、曲線近似を用いてもよい。
次に、検出波形分割ユニット52において検出波形分割処理を行う処理フロー505について説明する。図19は、うねりの状態に対するしきい値処理506を示した図である。図19では、しきい値処理506において、3種類のしきい値を設定した実施例を示しており、それぞれ第一のしきい値514、第二のしきい値515、第三のしきい値516である。多項式演算処理504により求めたうねり波形が、波形517の場合は、第一のしきい値514以下であるため、図17で示したフローチャートから波形を分割しない判定となる。波形518の場合は、第一のしきい値514以上で第二のしきい値515以下であるため6分割、波形519の場合は、第二のしきい値以上で第三のしきい値516以下であるため12分割、波形520の場合は、第三のしきい値516以上であるため測定不可の判定となる。なお、分割数においては、6分割、12分割として説明したが、もちろんユーザが任意に設定してもかまわない。
次に、検出波形分割処理507について説明する。図20は波形の6分割、図21は波形の12分割を説明する図である。それぞれにおいて、横軸は検出角度、縦軸はセンサ出力である。分割は、検出角度方向に行う。6分割の場合は波形521を60度ごとに、12分割の場合は波形522を30度ごとに波形を切り出す。
図22に波形521を6分割に切り出したときの検出角度60度から120度までの波形521bを示す。この切り出した波形521bに対する処理方法について説明する。
まず、波形521bに対して直線近似演算を行って基準線522を算出する。この直線近似演算は、切り出した波形それぞれで行い、それぞれで基準線を算出する。あらかじめ設定したしきい値523、524(基準線522の各検出角度位置における変動許容値の上限及び加減となる値を結んだ線)を基準線522の上下に設定する。このしきい値以上である部分525が制御部12の第二欠陥判定ユニット53においてピット欠陥24或いはバンプ欠陥23として認識される。それぞれの分割波形でこの処理を行うことで、波形全体でしきい値を設定することなく、うねりの影響を低減したしきい値処理が可能となる。図21に示した12分割の場合も同様な処理を行う。
次に、それぞれの検出器で検出した欠陥種の分類方法について説明する。図23は欠陥種を分類するフローチャートである。検査装置1000の制御部12の欠陥種別判定ユニット57は、記憶ユニット56に蓄積された検出器8a、8b、10で検出した信号を用いて第一欠陥判定ユニット50及び第二欠陥判定ユニット53の各々で判定された検出結果情報(欠陥判定結果に対応する位置情報ユニット54から得られる各種欠陥の位置座標も含む)を基に欠陥種を分類する。まず、第一欠陥判定ユニット50は、ステップS2301において検出器8aでの検出結果を判定する。図14で説明したように、検出器8aは欠陥からの散乱光を検出しているため、検出器8aで検出される欠陥は異物あるいは傷である。一方、ピット欠陥あるいはバンプ欠陥は検出器8aでは検出されない。次に、第一欠陥判定ユニット50は、ステップS2302において検出器8bでの検出結果を判定する。即ち、第一欠陥判定ユニット50は、図14で説明したように、傷による散乱光は周辺に出にくいため、検出器8aで検出された欠陥のうち検出器8bでも検出されれば異物、検出器8bでは検出されなければ傷として判定する。
次に、第二欠陥判定ユニット53は、ステップS2303において検出器10での検出結果を判定する。即ち、第二欠陥判定ユニット53は、図15で説明したように、検出器10ではディスク基板1からの正反射光の位置を検出することによりピット欠陥あるいはバンプ欠陥を検出する。ピット欠陥、バンプ欠陥の判定は、検出器10からの出力を演算回路11で演算した結果の信号の正負で判定する。
なお、欠陥種別の判定は、記憶ユニット56に記憶された情報を用いて第一欠陥判定ユニット50及び第二欠陥判定ユニット53の各々で実行してもよい。
以上の説明に基づく検査のフローについて図24を用いて説明する。まず、S2401でディスク基板を装置に投入し、検査を開始する。次に、S2402で、しきい値、検査範囲などの検査条件を入力し、S2403でディスクを検査位置に移動し、S2404で検査を開始する。検査終了後欠陥種別判定ユニット57はステップS2405において欠陥種別を判定し、必要に応じてS2406で検査結果をモニタ14やプリンタ15等を用いて出力する。S2407で次のディスクの有無を判断し、次のディスクがある場合は、S2403からS2407までを繰返すことで連続して検査を行う。すべてのディスクが検査を終了すればS2408でディスクを検査装置外に取り出してS2409で検査を終了する。
次に、検査条件を入力する実施例について説明する。検査条件の入力は入力装置13により行い、その入力結果はモニタ14に表示される。図25はモニタ画面の表示の一実施例である。ディスクを表面から見た状態で表示する欠陥マップ表示部221、欠陥種別、欠陥個数を表示する検査結果表示部222、欠陥種別と個数は、記号により欠陥マップ221に表示が可能である。しきい値、検査範囲、検査ロット、枚数、モニタ表示の有無などの条件を入力装置13で入力し、入力した結果を表示する検査条件表示部223、検査の開始表示224、検査終了表示225、欠陥検出結果の座標、検出出力、検出器の種類などの詳細を表示する検査結果表示部226などを表示可能である。これらの表示は、必ずしも同一の画面に表示する必要はなく、必用に応じてその一部を別画面で表示しても良い。また、それぞれの表示部の部分的な拡大、消去、及びリアルタイムでの表示などは、入力装置13での設定で自由に設定可能である。また、それぞれの情報はプリンタ15により出力可能である。
上記の説明はハードディスク装置で使用されるディスク基板で説明したが、半導体ウェハにおいても同様の効果が得られることはいうまでもない。一般に表面が平坦に加工された半導体ウェハ(例えば、ベアウェハの状態、CMP(Chemical Mechanical Polishing)加工後のウェハ)の表面欠陥検査においては、表面の異物や、スクラッチ傷、洗浄後に発生するウオータマークなどの薄い欠陥などが発生する。半導体ウェハにおいても表面のうねりが発生する場合もある。その場合において、本実施例におけるうねりの影響を除去することで欠陥検出の高精度化が可能となる効果がある。
さらに、うねりが生じる可能性のある円板状の対象であればどのようなものでも、同様に効果が得られる。
1…ディスク基板、2…回転ステージ、3…回転ステージ制御系、4…ステージ、5…直進ステージ制御系、6…第一の照明装置、7a、7b…レンズ、8a…上方検出器(第一の検出器)、8b…側方検出器、9…第二の照明装置、10…検出器、11…演算回路、12…制御系、13…入力装置、14…モニタ、15…プリンタ、50…第一欠陥判定ユニット、51…検出波形判定ユニット、52…検出波形分割ユニット、53…第二欠陥判定ユニット、54…位置情報検出ユニット、55…ステージ制御ユニット、56…記憶ユニット、57…欠陥種別判定ユニット、220…モニタ表示結果、221…欠陥マップ、222…欠陥検出結果、223…しきい値設定、226…検査結果表示部、1000…表面欠陥検査装置、1001…表面欠陥検査装置、1002…レンズ、1003…マスク、1004…第一の検出器、1005…表面欠陥検査装置、1006…ハーフミラー。