JP2008262859A - 非水電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

非水電解液及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】初期容量をほとんど低下させることなく、高温環境下での容量維持率を向上させることができる非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供すること。
【解決手段】非水溶媒中に、F元素を含有するリチウム塩を溶解してなる非水電解液である。この非水電解液は、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する。また、正極2、負極3、及び非水電解液を少なくとも備えたリチウムイオン二次電池1である。リチウムイオン二次電池1は、非水電解液中及び/又は非水電解液と接触する部分に、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液、及び非水電解液を含有するリチウムイオン二次電池に関する。
近年、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液を含有するリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の自動車用電源として期待されている。リチウムイオン二次電池には、さらなる大容量化及び高出力化と共に、長寿命化が要求されている。
一般に、リチウムイオン二次電池においては、例えば正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物等が用いられ、負極活物質として炭素材料等が用いられている。また、リチウム塩としては、電気伝導率の向上、電気化学的な安定性、及び安全性等の観点からLiPF6等のF元素を含有するリチウム塩が用いられている。
しかし、このような構成のリチウムイオン二次電池においては、充放電を繰り返し行うと放電容量が低下し易いという問題があった。特に高温環境下では、放電容量の低下が顕著になるという問題があった。
この理由については明確にはなっていないが、次のように考えられている。
即ち、リチウムイオン二次電池においては、その製造時又は使用中に、外部から水分が混入するおそれがある。そして、この水分と電解液中のF元素を含有するリチウム塩とが反応するとフッ酸が生成する。このフッ酸が、リチウム遷移金属複合化合物中の遷移金属に作用すると、リチウム遷移金属複合化合物から遷移金属イオンが溶出し、その結果、上記のごとく、リチウムイオン二次電池の放電容量が低下すると考えられる。
また、フッ酸は、負極上でフッ化リチウムを生成させ、負極の放電容量をも低下させるおそれがある。一般に、リチウムイオン二次電池においては、放電容量の上限を規制する制限極が負極となっているため、負極の放電容量が低下すると、リチウムイオン二次電池の放電容量も低下してしまうと考えられる。
このような問題を解決するために、正極や電解液等にハイドロタルサイト類化合物等のマグネシウム含有金属酸化物を添加した非水二次電池が提案されている(特許文献1)。
ハイドロタルサイト類化合物の非水二次電池における機能は、明確にはなっていないが、次のように作用すると考えられる。
即ち、ハイドロタルサイト類化合物は、層状構造の化合物であり、吸湿性及び陰イオン交換性能を有する。そして、このハイドロタルサイト類化合物は、その層状構造の層間に、電解液中の水分を吸収して電解液中の水分を除去することができる。その結果、フッ酸の生成を抑制し、リチウム遷移金属複合化合物からの遷移金属イオンの溶出を防止することができる。さらに、フッ酸が生成しても、ハイドロタルサイト類化合物の陰イオン交換能によって、フッ酸はハイドロタルサイト類化合物に中和・吸着されて電解液中から除去される。そのため、正極に対するフッ酸の影響のみならず、負極上における上述のフッ化リチウムの生成をも抑制することができる。その結果、充放電を繰り返したときの放電容量の低下を抑制し、優れた容量維持率を向上させることができる。
しかしながら、上記従来の方法においては、リチウム含有複合酸化物をフッ酸の作用から十分に防御するために、ハイドロタルサイト類化合物を多量に添加する必要があった。そのため、リチウムイオン二次電池の初期放電容量が低下するという問題があった。また、電気伝導性が著しく低いハイドロタルサイト類化合物を大量に添加するため、電池抵抗が高くなり、出力が低下するおそれがあった。さらに、ハイドロタルサイト類化合物は、吸水性も高いため、水分を電池内に持ち込む原因となってしまうという問題もあった。
特開平11−73999号公報
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、初期容量をほとんど低下させることなく、高温環境下での容量維持率を向上させることができる非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供しようとするものである。
第1の発明は、非水溶媒中に、F元素を含有するリチウム塩を溶解してなる非水電解液において、
該非水電解液は、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有することを特徴とする非水電解液にある(請求項1)。
上記第1の発明の非水電解液において最も注目すべき点は、F元素を含有するリチウム塩を非水溶媒中に溶解してなる非水電解液中に、さらに上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する点にある。
そのため、上記非水電解液を例えばリチウムイオン二次電池及びキャパシタ等の蓄電装置に適用するとき、及びその使用時等に、上記非水電解液中に水分が混入しても、蓄電装置の容量が徐々に低下していくことを抑制することができる。
即ち、一般に、F元素を含有するリチウム塩を含有する非水電解液においては、水分が混入するとフッ酸が生成し、このフッ酸は、リチウムイオン二次電池及びキャパシタ等の蓄電装置の構成部材に悪影響を及ぼしやすい。本発明の非水電解液は、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有し、該有機化ハイドロタルサイト類化合物が、その結晶構造の層間に、上記非水電解液中に混入した水分を吸収することができる。そのため、上記非水電解液から水分を除去し、フッ酸の発生を抑制することができる。また、フッ酸が発生しても、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、その陰イオン交換能により発生したフッ酸を中和及び吸着することができる。そのため、非水電解液中からフッ酸を除去することができる。それ故、フッ酸が蓄電装置の構成部材に悪影響を及ぼし、容量を低下させることを抑制することができる。
また、上記非水電解液は、上記のごとく、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有しており、該有機化ハイドロタルサイト類化合物は、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物に比べて上記非水溶媒との親和性が向上している。そのため、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、比較的添加量が少なくても、上記非水電解液中で水分の除去性能及び陰イオン交換性能を充分に発揮することができる。それ故、上記非水電解液は、リチウムイオン二次電池及びキャパシタ等の蓄電装置の初期容量をほとんど低下させることなく、高温環境下においても容量維持率を向上させることができる。また、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、有機化により、層状構造の層間距離がハイドロタルサイト類化合物に比べて大きくなっている。そのため、上記非水電解液中の水分及びフッ酸を吸着し易くなっている。そのため、上記非水電解液中から水分及びフッ酸を充分に吸着除去することができ、蓄電装置の容量維持率を充分に向上させることができる。
第2の発明は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能なリチウム遷移金属複合化合物を正極活物質とする正極と、上記正極活物質よりも低い電位でリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な物質を負極活物質とする負極と、非水溶媒中にF元素を含有するリチウム塩を溶解してなる非水電解液とを少なくとも備えたリチウムイオン二次電池において、
該リチウムイオン二次電池は、上記非水電解液中及び/又は上記非水電解液と接触する部分に、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池にある(請求項4)。
上記第2の発明のリチウムイオン二次電池においては、F元素を含有する上記リチウム塩を上記非水溶媒中に溶解してなる上記非水電解液中に、さらに上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有している。
そのため、上記リチウムイオン二次電池においては、充放電を繰り返し行ったときの容量の低下が抑制され、優れた容量維持率を示すことができる。
即ち、一般に、上記リチウム遷移金属複合化合物を正極活物質とする正極、F元素を含有するリチウム塩を含有する非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池においては、非水電解液中に水分が混入するとフッ酸が生成し、このフッ酸は、上記リチウム遷移金属複合化合物から遷移金属イオンを溶出させ、正極活物質の容量を低下させてしまうおそれがある。また、フッ酸は、負極においてもフッ化リチウムを生成し、その容量を低下させてしまうおそれがある。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、上記非水電解液中に含まれる上記有機化ハイドロタルサイト類化合物が、その結晶構造の層間に、上記非水電解液中に混入した水分を吸収することができる。そのため、上記非水電解液から水分を除去し、フッ酸の発生を抑制することができる。また、フッ酸が発生しても、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、その陰イオン交換能により発生したフッ酸を中和及び吸着することができる。そのため、上記リチウムイオン二次電池においては、上記非水電解液中からフッ酸を除去することができ、高温環境下においてフッ酸によって上記正極活物質及び上記負極活物質が劣化し、充放電を繰り返したときにおける放電容量の低下を抑制することができる。
また、上記非水電解液は、上記第1の発明と同様に、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有しており、該有機化ハイドロタルサイト類化合物は、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物に比べて上記非水溶媒との親和性が向上している。そのため、上記リチウムイオン二次電池においては、上記非水電解液中の上記有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が比較的少なくても、水分及びフッ酸を上記非水電解液中から充分に除去することができる。それ故、上記リチウムイオン二次電池においては、初期容量をほとんど低下させることなく、容量維持率を向上させることができる。また、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、有機化により、層状構造の層間距離がハイドロタルサイト類化合物に比べて大きくなっている。そのため、上記非水電解液中の水分及びフッ酸を吸着し易くなっている。そのため、上記リチウムイオン二次電池においては、上記非水電解液中から水分及びフッ酸を充分に吸着除去し、容量維持率を向上させることができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明において、上記非水電解液は、上記非水溶媒中に、F元素を含有するリチウム塩を溶解してなる。
上記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC25SO3、LiC49SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiC(CF3SO2)3、及びLiPF2{(COO)2}2から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(請求項2、請求項11)。
この場合には、上記非水電解液は、優れた導電性を示すことができる。
また、上記リチウム塩を溶解させる非水溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。具体的には、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、リン酸エチレンメチル、リン酸エチルエチレン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等を使用することができる。これらの有機溶媒は、1種類だけを選択して使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記非水電解液は、ハイドロタルサイト類化合物を有機化させてなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する。
ハイドロタルサイト類化合物は、一般式[M2+ 1-x3+ x(OH)2]x+[An- x/n・mH2O]x-(ただし、0<x≦0.33、M2+は、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、及びZn2+等の2価の金属、M3+は、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、及びIn3+等の3価の金属、An-は、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3 -、CO3 -、SO4 2-、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオン等のn価の金属)で表される層状構造の化合物である。具体的には、例えば[Mg1-xAlx(OH)2]x+[(CO3)x/2・mH2O]x-等が挙げられる。その構造は、正に帯電したMg(OH)2に類似する基本層[Mg1-xAlx(OH)2]x+と、負に帯電した[(CO3)x/2・mH2O]x-とからなる層状構造を備える。CO3 2-は、イオン交換性であり、他のイオンと容易に交換されうる。
ハイドロタルサイト類化合物は、層状交換の層間に、可逆的に水を吸着及び脱離することができる。ハイドロタルサイト類化合物を温度500〜700℃で焼成すると、結晶水が脱離して、MgO−Al23系固溶体が得られる。この固溶体は、ハイドロタルサイト類化合物と同様に水分、陰イオン等を吸着することができ、これらを吸着することで容易にハイドロタルサイト類化合物に戻ることができる。
ハイドロタルサイト類化合物の有機化は、例えば次のようにして行うことができる。
まず、ハイドロタルサイト類化合物を水中に分散させ、その分散液中に、有機物の水溶液を添加し、有機物をハイドロタルサイト類化合物の層間にインターカーレートさせる。その後、乾燥させることにより、ハイドロタルサイト類化合物が有機化された有機化ハイドロタルサイト類化合物を得ることができる。
ハイドロタルサイト類化合物を有機化するために用いられる上記有機物としては、水中で陰イオンを呈する有機物を用いることができる。例えば、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシアルキレン基等の有機置換基と、カルボン酸基及びスルフォン酸基等の陰イオンを形成しうる官能基とから構成される有機物を用いることができる。具体的には、例えばステアリン酸及びその塩等を用いることができる。
上記非水電解液は、上記ハイドロタルサイト類化合物を0.5重量%〜20重量%含有することが好ましい(請求項3及び請求項6)。
上記ハイドロタルサイト類化合物の含有量が0.5重量%未満の場合には、上記非水電解液中の水分及びフッ酸を充分に吸着することができなくなるおそれがある。一方、20重量%を超える場合には、初期容量を低下させてしまうおそれがある。より好ましくは、上記非水電解液中の有機化ハイドロタルサイト類化合物の濃度は、1重量%〜15重量%がよく、さらに好ましくは、1〜10重量%がよい。
次に、上記第2の発明において、上記リチウムイオン二次電池は、正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極と、非水溶媒に電解質を溶解してなる非水電解液とを有する。
上記リチウムイオン二次電池は、上記正極及び負極と、これらの正極と負極との間に狭装されるセパレータと、正極と負極との間でリチウムを移動させる上記非水電解液等を主要構成要素として構成することができる。
上記第2の発明において、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記非水電解液中に含有されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、例えば正極、負極、セパレータ、及び電池ケース等の電池の構成要素に付着してリチウムイオン二次電池内に持ち込まれ、上記非水電解液中に混入した水分をより確実に除去することができる。また、使用中に上記非水電解液中に発生したフッ酸をより確実に除去することができる。
正極としては、例えば上記正極活物質に導電材及び結着材を混合し、必要に応じて適当な溶剤を加えてスラリー状又はペースト状の正極合材としたものを金属箔製の正極集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮形成したシート電極等を用いることができる。溶剤を用いた場合には、乾燥により溶剤を除去することが好ましい。正極合材の正極集電体への塗布は、正極合材がスラリー状である場合には、ドクターブレード法等により行うことができる。また、正極合材がペースト状の場合には、ローラーコーティング等によって行うことができる。
このようにして得られる正極は、正極集電体と、該正極集電体上に配設された正極合材層とからなり、該正極合材層は、正極活物質、導電材、及びバインダー等を含有する。また、上記正極としては、上記正極合材をプレス成形して得られるペレット電極等を用いることもできる。
上記正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム遷移金属複合化合物を用いることができる。具体的には、例えばリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。また、例えばリチウム鉄リン酸等のリチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。これらの正極活物質は、1種類だけを選択してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記導電材は、電気伝導性を確保するためのものであり、金属や非金属のものを用いることができる。金属の導電材としては、例えばCuやNi等の金属材料を用いることができる。また、非金属の導電材としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料を用いることができる。
上記結着剤は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、電極製造時に用いられる溶剤や上記非水電解液に対して安定な材料を採用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、シンジオタチック1、2−ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等を用いることができる。
また、結着材としては、例えばリチウムイオン等のアルカリ金属イオン伝導性を有する高分子組成物を用いることもできる。具体的には、例えば高分子化合物にリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩を複合させた材料、あるいはこの材料にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の誘電率の高い有機化合物を配合した材料を用いることができる。高分子化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテルの架橋高分子化合物、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等を用いることができる。
これら活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
また、上記正極集電体としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ハフニウム、ビスマス、及びこれらの合金等からなる集電体を用いることができる。これらの金属からなる正極集電体は、上記非水電解液中で酸化されて表面に不動態皮膜を形成することができる。そのため、上記正極集電体と上記非水電解液との接触部分で電解質(リチウム塩)が酸化分解することを抑制することができる。それ故、上記リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
また、上記正極活物質の上記リチウム遷移金属複合化合物中から遷移金属の溶出をより充分に抑制することができるという観点から、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記正極中に含有されていることが好ましい(請求項7)。
また、上記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に配設された上記正極活物質、導電材、バインダー、及び上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する正極合材層とを有し、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記正極合材層中に0.5重量%〜20重量%含有されていることが好ましい(請求項8)。
上記正極合材層中の上記有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が0.5重量%未満の場合には、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物が水分及びフッ酸を充分に吸着することができなくなるおそれがある。そのため、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物による上記リチウムイオン二次電池の充放電維持率の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、20重量%を超える場合には、上記リチウムイオン二次電池の充放電初期の放電容量が低下するおそれがある。より好ましくは、上記正極活物質層中の上記有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量は、1重量%〜15重量%がよく、さらに好ましくは1〜10重量%がよい。
次に、負極としては、上記正極の場合と同様に、例えば負極活物質に導電材及び結着材を混合し、必要に応じて適当な溶剤を加えてスラリー状又はペースト状の負極合材としたものを金属箔製の負極集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮形成したシート電極等を用いることができる。このようにして得られる負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配設された負極合材層とからなり、該負極合材層は、正極活物質、導電材、及びバインダー等を含有する。また、上記負極としては、上記負極合材をプレス成形して得られるペレット電極等を用いることもできる。
上記負極活物質としては、上記正極活物質よりも低い電位でリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。このような物質は、サイクリックボルタンメトリー測定によって調べることができる。具体的には、例えば次のようにして調べることができる。
即ち、まず、正極活物質又は負極活物質の候補となる所望の物質と導電材と結着剤とを混合して混合粉末を作製し、SUSメッシュ上に圧着して試料極を作製する。次いで、飽和LiNO3水溶液等の評価用の電解液、銀塩化銀電極等の参照極、白金ワイヤー等(φ0.3×5;コイル状)の対極を用いて、サイクリックボルタンメトリーを行う。測定は3極式のビーカーセルを用いて、一定のスキャン速度で行うことができる。得られるサイクリックボルタモグラムにおいて、上記正極活物質よりも低電位で可逆性を示す物質を負極活物質として採用することができる。
具体的には、上記負極活物質としては、例えばリチウム金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、及びリチウム−錫合金等のリチウム合金、Li5(LiN3)等の窒化リチウム、黒鉛、コークス、及び有機物焼成体等の炭素材料、WO2、MoO2、SnO2、SnO、TiO2、NbO3等の遷移金属酸化物を用いることができる。これらの負極活物質は、1種類だけを選択して用いることもできるが、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
また、負極に用いられる、上記導電材、上記結着材、及び上記溶剤としては、上記正極と同様のものを用いることができる。また、上記負極活物質として、導電性を有する炭素材料を用いた場合には、上記導電材を使用しなくてもよい。
また、上記負極集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる集電体を用いることができる。
また、フッ酸によって負極上にフッ化リチウムが生成することをより充分に抑制できるという観点から、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記負極中に含有されていることが好ましい(請求項9)。
上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配設された上記負極活物質、導電材、バインダー、及び上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する負極合材層とを有し、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記負極合材層中に0.5重量%〜20重量%含有されていることが好ましい(請求項10)。
上記負極合材層中の上記有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が0.5重量%未満の場合には、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物がフッ酸を充分に吸着することができなくなるおそれがある。そのため、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物による充放電維持率の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、20重量%を超える場合には、上記リチウムイオン二次電池の充放電初期の放電容量が低下するおそれがある。より好ましくは、上記負極合材層中の上記有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が1重量%〜15重量%がよく、さらに好ましくは1重量%〜10重量%がよい。
また、上記セパレータとしては、例えば絶縁性のポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布等を用いることができる。
また、上記リチウムイオン二次電池の形状としては、例えばコイン型、円筒型、角型等がある。正極、負極、セパレータ及び非水系電解液等を収容する電池ケースとしては、これらの形状に対応したものを用いることができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図1を用いて説明する。
本例においては、リチウム塩と、有機化ハイドロタルサイト類化合物とを含有する非水電解液を作製し、該非水電解液を用いてリチウムイオン二次電池を作製する。
図1に示すごとく、本例のリチウムイオン二次電池1は、正極2と負極3と非水電解液とを備える。正極2は、正極活物質としてスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を含有する。負極3は、負極活物質として炭素材料を含有する。また、非水電解液は、非水溶媒中にリチウム塩と有機化ハイドロタルサイト類化合物を溶解してなる。
非水電解液は、非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒を含有する。また、リチウム塩としてはLiPF6を含有し、有機化ハイドロタルサイト類化合物としては、ハイドロタルサイト類化合物[Mg0.7Al0.3(OH)2][Cl0.3・mH2O]をステアリン酸ナトリウムで有機化した物質を含有する。
以下、本例のリチウムイオン二次電池1につき、図1を用いて詳細に説明する。
図1に示すごとく、本例のリチウムイオン二次電池1は、正極2、負極3、セパレータ4、ガスケット5、及び電池ケース6等よりなっている。電池ケース6は、18650型の円筒形状の電池ケースであり、キャップ61及び外装缶62よりなる。電池ケース6内には、シート状の正極2及び負極3が、該正極2及び負極3の間に挟んだセパレータ4と共に捲回した状態で配置されている。
また、電池ケース6のキャップ61の内側には、ガスケット5が配置されており、電池ケース6の内部には、非水電解液が注入されている。
また、正極2は、正極活物質としてスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を含有し、負極3は負極活物質として炭素材料を含有している。
正極2及び負極3には、それぞれ正極集電リード28及び負極集電リード38が熔接により設けられている。正極集電リード28は、キャップ61側に配置された正極集電タブ285に熔接により接続されている。また、負極集電リード38は、外装缶62の底に配置された負極集電タブ385に熔接により接続されている。
また、非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを含有する非水溶媒に、LiPF6及び上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を溶解してなり、電池ケース6内に注入されている。
次に、本例のリチウムイオン二次電池1の製造方法につき、図1を用いて説明する。
まず、以下のようにして、上記非水電解液を準備した。
即ち、まずハイドロタルサイト類化合物[Mg0.7Al0.3(OH)2][Cl0.3・mH2O](協和化学工業株式会社製のKW−2000)を水中に充分に分散させた。次いで分散液中にステアリン酸ナトリウム水溶液を加え、充分に撹拌して混合した。その後、濾過を行って乾燥させることにより、有機化ハイドロタルサイト類化合物を得た。
次いで、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒を準備した。次いで、この非水溶媒にLiPF6を濃度1.0mol/1で添加し、さらに有機化ハイドロタルサイト類化合物を濃度5重量%で添加して非水電解液を作製した。
次に、以下のようにして、正極2及び負極3を作製した。
正極2の作製にあたっては、まず正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物を準備し、該正極活物質90重量部と、導電材としてのアセチレンブラック5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン5重量部とを混合し、分散材としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の正極合材を作製した。
次いで、上記のようにして得られた正極合材を、厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布して乾燥させた。その後、厚み100μmとなるようにロールプレスで圧縮成形し、シート状の正極2を作製した。
一方、負極3の作製にあたっては、まず、負極活物質としての炭素材料90重量部と結着材としてのポリフッ化ビニリデン10重量部とを混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の負極合材を得た。
次いで、上記のようにして得られた負極合材を、厚さ10μmの銅箔集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた。その後、ロールプレスで厚み100μmになるように圧縮成形し、シート状の負極3を作製した。
次に、図1に示すごとく、上記のようにして得られたシート状の正極2及び負極3に、それぞれ正極集電リード28及び負極集電リード38を熔接した。これらの正極2及び負極3を、これらの間に厚さ25μmの微多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータ4を挟んだ状態で捲回し、ロール状の電極体を作製した。
続いて、このロール状の電極体を、キャップ61及び外装缶62よりなる18650型の円筒状の電池ケース6に挿入した。このとき、電池ケース6のキャップ61側に配置した正極集電タブ285に、正極集電リード28を熔接により接続すると共に、外装缶62の底に配置した負極集電タブ385に負極集電リード38を熔接により接続した。
次に、電池ケース6内に上記のようにして作製した非水電解液を含浸させた。そしてキャップ61の内側にガスケット5を配置すると共に、このキャップ61を外装缶62の開口部に配置した。続いて、キャップ61にかしめ加工を施すことにより電池ケース6を密閉し、リチウムイオン二次電池1を作製した。これを電池E1とした。
また、本例においては、有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が異なる非水電解液を用いてさらに2種類のリチウムイオン二次電池(電池E2及び電池E3)を作製した。
電池E2は、非水電解液中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を濃度1重量%で加えた点を除いては上記電池E1と同様にして作製した。
また、電池E3は、非水電解液中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を濃度10重量%で加えた点を除いては上記電池E1と同様にして作製した。
このようにして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を非水電解液中に含有する3種類のリチウムイオン二次電池(電池E1〜電池E3)を作製した。
(実施例2)
本例は、有機化ハイドロタルサイト類化合物を正極に含有するリチウムイオン二次電池を作製する例である。
その作製にあたっては、まず、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物を準備し、該正極活物質85重量部と、導電材としてのアセチレンブラック5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン5重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物5重量部とを混合し、分散材としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の正極合材を作製した。
次いで、上記のようにして得られた正極合材を、実施例1と同様に、厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布して乾燥させた後、厚み100μmとなるようにロールプレスで圧縮成形し、シート状の正極を作製した。このようにして得られた正極は、正極集電体と、その上に配設された正極合材層とからなり、該正極合材層中には、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有している。
次に、負極を作製した。負極は、実施例1と同様にして作製した。
また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を濃度1.0mol/lで添加して非水電解液を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池E4とする。
また、本例においては、正極合材中の有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が異なる2種類のリチウムイオン二次電池(電池E5及び電池E6)を作製した。
電池E5は、正極合材中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を1重量%加えた点を除いては上記電池E4と同様にして作製した。具体的には、電池E5においては、正極活物質としてのリチウムマンガン複合酸化物89重量部と、導電材としてのアセチレンブラック5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン5重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物1重量部とを混合して作製したスラリー状の正極合材を用いた点を除いては上記電池E4と同様にして作製した。
また、電池E6は、正極合材中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を10重量%で加えた点を除いては上記電池E4と同様にして作製した。具体的には、電池E6においては、正極活物質としてのリチウムマンガン複合酸化物80重量部と、導電材としてのアセチレンブラック5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン5重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物10重量部とを混合して作製したスラリー状の正極合材を用いた点を除いては上記電池E4と同様にして作製した。
このようにして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を正極中に含有する3種類のリチウムイオン二次電池(電池E4〜電池E6)を作製した。
(実施例3)
本例は、有機化ハイドロタルサイト類化合物を負極に含有するリチウムイオン二次電池を作製する例である。
その作製にあたっては、まず、負極活物質として炭素材料を準備し、該炭素材料85重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン10重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物5重量部とを混合し、分散材としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の負極合材を作製した。
次いで、上記のようにして得られた負極合材を、実施例1と同様に、厚さ10μmの銅箔集電体の両面に均一に塗布して乾燥させた後、厚み100μmとなるようにロールプレスで圧縮成形し、シート状の負極を作製した。このようにして得られた負極は、負極集電体と、その上に配設された負極合材層とからなり、該負極合材層中には、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有している。
次に、正極を作製した。正極は、実施例1と同様にして作製した。
また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を濃度1.0mol/lで添加して非水電解液を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池E7とする。
また、本例においては、負極合材中の有機化ハイドロタルサイト類化合物の含有量が異なる2種類のリチウムイオン二次電池(電池E8及び電池E9)を作製した。
電池E8は、負極合材中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を1重量%加えた点を除いては上記電池E7と同様にして作製した。具体的には、電池E8においては、負極活物質としての炭素材料89重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン10重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物1重量部とを混合して作製したスラリー状の負極合材を用いた点を除いては上記電池E7と同様にして作製した。
また、電池E9は、負極合材中に有機化ハイドロタルサイト類化合物を10重量%で加えた点を除いては上記電池E7と同様にして作製した。具体的には、電池E9においては、負極活物質としての炭素材料80重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン10重量部と、実施例1と同様の有機化ハイドロタルサイト類化合物10重量部とを混合して作製したスラリー状の負極合材を用いた点を除いては上記電池E7と同様にして作製した。
このようにして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を負極中に含有する3種類のリチウムイオン二次電池(電池E7〜電池E9)を作製した。
(比較例)
本例は、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有するリチウムイオン二次電池の比較用として、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有していないリチウムイオン二次電池を作製する例である。
その作製にあたっては、まず、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を濃度1.0mol/lで添加して非水電解液を作製した。この非水電解液は、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有していない。
また、実施例1と同様にして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有していない正極及び負極を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池C1とする。電池C1は、電池内に有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有していない電池である。
また、本例においては、実施例1及び2の有機化ハイドロタルサイト類化合物の代わりに有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する3種類のリチウムイオン二次電池(電池C2〜電池C4)を作製した。
電池C2は、非水電解液中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
その作製にあたっては、まず、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒を準備した。次いで、この非水溶媒にLiPF6を濃度1.0mol/lで添加し、さらにハイドロタルサイト類化合物[Mg0.7Al0.3(OH)2][Cl0.3・mH2O](協和化学工業株式会社製のKW−2000)を濃度10重量%で添加して非水電解液を作製した。この非水電解液は、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する。
次いで、実施例1と同様にして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有していない正極及び負極を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池C2とする。この電池C2は、非水電解液中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
次に、電池C3は、正極中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
その作製にあたっては、まず、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物を準備し、該正極活物質80重量部と、導電材としてのアセチレンブラック5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン5重量部と、上記電池C2と同様のハイドロタルサイト類化合物(協和化学工業株式会社製のKW−2000)10重量部とを混合し、分散材としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の正極合材を作製した。
次いで、上記のようにして得られた正極合材を、実施例1と同様に、厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布して乾燥させた後、厚み100μmとなるようにロールプレスで圧縮成形し、シート状の正極を作製した。このようにして得られた正極は、正極集電体と、その上に配設された正極合材層とからなり、該正極合材層中には、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有している。
次に、負極を作製した。負極は、実施例1と同様にして作製した。
また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を濃度1.0mol/lで添加して非水電解液を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池C3とする。この電池C3は、正極中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
次に、電池C4は、負極中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
その作製にあたっては、まず、負極活物質としての炭素材料80重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン10重量部と、上記電池C2と同様のハイドロタルサイト類化合物(協和化学工業株式会社製のKW−2000)10重量部とを混合し、分散材としてのN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の負極合材を作製した。
次いで、上記のようにして得られた負極合材を、実施例1と同様に、厚さ10μmの銅箔集電体の両面に均一に塗布して乾燥させた後、厚み100μmとなるようにロールプレスで圧縮成形し、シート状の負極を作製した。このようにして得られた負極は、負極集電体と、その上に配設された負極合材層とからなり、該負極合材層中には、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有している。
次に、正極を作製した。正極は、実施例1と同様にして作製した。
また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをそれぞれ1:2という体積比で混合した非水溶媒に、LiPF6を濃度1.0mol/lで添加して非水電解液を作製した。
このようにして作製した正極、負極、及び非水電解液を用い、その他は実施例1と同様にして、ロール状電極体を有する18650型のリチウムイオン二次電池を作製した。これを電池C4とする。この電池C4は、負極中に有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を含有する電池である。
以上のようにして、有機化ハイドロタルサイト類化合物を電池内に含有していないリチウムイオン二次電池(電池C1〜電池C4)を作製した。
(実験例)
本例は、実施例1〜実施例3及び比較例において作製した13種類のリチウムイオン二次電池(電池E1〜電池E9及び電池C1〜電池C4)の容量及び容量維持率を評価する例である。
具体的には、まず、各電池(電池E1〜電池E9及び電池C1〜電池C4)をそれぞれ温度20℃の恒温槽内で、100mAの電流で充電終止電圧4.1Vまで充電し、さらに4.1Vの定電圧で充電した。これにより合計7時間の充電を行った。その後、100mAの電流で、放電終止電圧3.0Vまで放電させ、このときの放電容量(初期放電容量)を測定した。放電容量は、放電電流値(mA)を測定し、この放電電流値に放電に要した時間(hr)を乗じて得られた値を、電池内の正極活物質の重量(g)で除することにより得た。その結果を表1(電池E1〜電池E9)及び表2(電池C1〜電池C4)に示す。
次に、各電池を温度60℃の恒温槽内で2mA/cm2という電流密度で、作動電圧4.1V〜3.0Vで充放電を繰り返す充放電サイクル試験を行った。充放電サイクルを100サイクル行った後、電池を20℃の恒温槽に戻した。次いで、この20℃の恒温槽内で、各電池を100mAの電流で充電終止電圧4.1Vまで充電し、さらに4.1Vの定電圧で充電した。これにより合計7時間の充電を行った。その後、100mAの電流で、放電終止電圧3.0Vまで放電させ、このときの放電容量(サイクル試験後の放電容量)を測定した。この放電容量は、上述の初期放電容量と同様の方法によって測定した。そして、「容量維持率(%)=サイクル試験後の放電容量(mAh/g)/初期放電容量(mAh/g)×100」という式に基づいて、各電池の容量維持率を算出した。その結果を表1(電池E1〜電池E9)及び表2(電池C1〜電池C4)に示す。
Figure 2008262859
Figure 2008262859
表1及び表2より知られるごとく、有機化ハイドロタルサイト類化合物を電池内に含有する電池E1〜電池E9は、50%以上の容量維持率を示したが、電池C1は、41%という低い容量維持率を示した。これは、電池E1〜電池E9においては、有機化ハイドロタルサイト類化合物によって、非水電解液中に混入した水分及び、水分とLiPF6との反応によって生成したフッ酸がトラップされ、フッ酸によって正極中に含まれるリチウムマンガン複合酸化物からマンガンが溶出したり、負極でフッ化リチウムが生成することが抑制されたためであると考えられる。
また、有機化ハイドロタルサイト類化合物を非水電解液中に10重量%含有する電池E3と、有機化されていないハイドロタルサイト類化合物を非水電解液中に10重量%含有する電池C2とを比較すると、電池E3は電池C2よりも12%程度容量維持率が向上していた。これは、有機化ハイドロタルサイト類化合物が、ハイドロタルサイト類化合物よりも効果的に非水電解液中の水分及びフッ酸をトラップできるためであると考えられる。有機化ハイドロタルサイト類化合物とハイドロタルサイト類化合物の含有量が同じ電池E6と電池C3及び電池E9と電池C4とをそれぞれ比較した場合も同様のことがいえる(表1及び表2参照)。
また、表1及び表2から知られるごとく、ハイドロタルサイト類化合物を添加した電池(電池C2〜電池C4)に比べて、有機化ハイドロタルサイト類化合物を添加した電池(電池E3、電池E6、電池E9)は、初期放電容量の低下を抑制できることがわかる。
このように、有機化ハイドロタルサイト類化合物を非水電解液、正極、及び負極等の電池内に添加することにより、初期放電容量の低下を抑制しつつ、充放電維持率を向上させることができる。
実施例1にかかる、リチウムイオン二次電池の構成を示す説明図。
符号の説明
1 リチウムイオン二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ

Claims (11)

  1. 非水溶媒中に、F元素を含有するリチウム塩を溶解してなる非水電解液において、
    該非水電解液は、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有することを特徴とする非水電解液。
  2. 請求項1において、上記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC25SO3、LiC49SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiC(CF3SO2)3、及びLiPF2{(COO)2}2から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする非水電解液。
  3. 請求項1又は2において、上記非水電解液は、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を0.5重量%〜20重量%含有することを特徴とする非水電解液。
  4. リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能なリチウム遷移金属複合化合物を正極活物質とする正極と、上記正極活物質よりも低い電位でリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な物質を負極活物質とする負極と、非水溶媒中にF元素を含有するリチウム塩を溶解してなる非水電解液とを少なくとも備えたリチウムイオン二次電池において、
    該リチウムイオン二次電池は、上記非水電解液中及び/又は上記非水電解液と接触する部分に、ハイドロタルサイト類化合物を有機化してなる有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項4において、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記非水電解液中に含有されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  6. 請求項5において、上記非水電解液は、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を0.5重量%〜20重量%含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項において、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記正極中に含有されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  8. 請求項7において、上記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に配設された上記正極活物質、導電材、バインダー、及び上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する正極合材層とを有し、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記正極合材層中に0.5重量%〜20重量%含有されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  9. 請求項4〜8のいずれか一項において、上記有機化ハイドロタルサイト類化合物は、上記負極中に含有されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  10. 請求項9において、上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配設された上記負極活物質、導電材、バインダー、及び上記有機化ハイドロタルサイト類化合物を含有する負極合材層とを有し、上記ハイドロタルサイト類化合物は、上記負極合材層中に0.5重量%〜20重量%含有されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  11. 請求項4〜10のいずれか一項において、上記リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC25SO3、LiC49SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiC(CF3SO2)3、及びLiPF2{(COO)2}2から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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