JP2008260046A - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳造時における鋳型本体の温度変化の検出精度の向上を図ることができ、鋳造速度の高速化にも対応可能な連続鋳造用鋳型を提供する。
【解決手段】上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体10を有し、空間部へ供給された溶鋼を鋳型本体10で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、鋳型本体10を構成する冷却板14には、上下方向または左右方向に渡って挿通穴11が形成され、挿通穴11に、保護管24で保護され、温度変化による光の波長変化を検出可能な1または2箇所以上の熱感知部25を備える光ファイバーセンサー12を挿入して配置した。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶鋼を冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型に関する。
従来、鋳片は、上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体を有する連続鋳造用鋳型を使用し、この空間部へ供給された溶鋼を鋳型本体で冷却しながら凝固させて製造している。
鋳片の製造に際しては、鋳型本体内で形成される凝固シェルの成長を確実に行う必要があるが、凝固シェルの成長が不安定な場合、凝固シェルが破れ、未凝固の溶鋼が流出するブレークアウトが発生し、例えば、鋳造作業の中断、または長時間の休止、更には設備損傷のような事故を招く恐れがある。
そこで、このブレークアウトの発生を予知する方法として、鋳型本体に複数の熱電対を埋設し、これら熱電対の温度変化等を検出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−284503号公報
しかしながら、近年の製品の生産性向上のため、鋳造速度の高速化が図られているなかでは、熱電対による温度変化の検出時間の更なる短縮を図るには限界がある。また、熱電対で複数箇所の温度測定を実施しようとすれば、その全ての箇所に熱電対設置用の加工を施さなければならず、作業性が悪く、しかも経済的でない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋳造時における鋳型本体の温度変化の検出精度の向上を図ることができ、鋳造速度の高速化にも対応可能な連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る連続鋳造用鋳型は、上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体を有し、該空間部へ供給された溶鋼を前記鋳型本体で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
前記鋳型本体を構成する冷却板には、上下方向または左右方向に渡って挿通穴が形成され、該挿通穴に、保護管で保護され、温度変化による光の波長変化を検出可能な1または2箇所以上の熱感知部を備える光ファイバーセンサーを挿入して配置した。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記保護管と前記挿通穴との隙間に金属を充填したことが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記金属は溶融状態の金属を充填して凝固させたことが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記金属は低融点金属であり、前記鋳型本体で溶鋼を冷却する際には溶融状態であることが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記金属は粉末状であることが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記保護管には、その長手方向に渡ってガイド棒が取付けられ、前記保護管を前記鋳型本体の溶鋼接触面側に配置していることが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記保護管には、前記熱感知部が位置する領域にある前記保護管を、前記鋳型本体の溶鋼接触面側の前記挿通穴内面に接触させるための押圧部材が設けられていることが好ましい。
第1の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記押圧部材を、前記保護管が嵌入する溝を有する熱伝導性が良好な検知精度向上部材を介して配置し、前記光ファイバーセンサーの測定精度を向上させていることが好ましい。
前記目的に沿う第2の発明に係る連続鋳造用鋳型は、上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体を有し、該空間部へ供給された溶鋼を前記鋳型本体で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
前記鋳型本体を構成する冷却板の溶鋼接触面側または冷却面側には、凹部が形成され、該凹部に、保護管で保護され、温度変化による光の波長変化を検出可能な1または2箇所以上の熱感知部を備える光ファイバーセンサーを配置して金属で覆った。
第2の発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記金属はめっきまたは溶射により付着させたことが好ましい。
請求項1〜10記載の連続鋳造用鋳型は、鋳型本体に、温度変化による光の波長変化を検出する光ファイバーセンサーを設けるので、例えば、熱電対を使用する場合と比較して、鋳型本体からの熱の応答性を向上でき、鋳型本体の温度変化を容易に捉えることができる。これにより、凝固遅れに伴うブレークアウトを未然に防止でき、効率的に生産性よく鋳片を製造できる。
また、光ファイバーセンサーは、1または2箇所以上の熱感知部を備えているので、1つの光ファイバーセンサーで複数箇所の温度測定を実施できる。これにより、熱電対を使用する場合とは異なり、測定箇所の全ての箇所に光ファイバーセンサー設置用の加工を施す必要がなく、作業性が良好であり、しかも経済的である。
特に、請求項2記載の連続鋳造用鋳型は、保護管と挿通穴との隙間に金属を充填するので、隙間の存在による熱感知の応答性低下を抑制できる。
請求項3記載の連続鋳造用鋳型は、保護管と挿通穴との隙間に金属を充填するので、隙間の存在による熱感知の応答性低下を抑制でき、しかも保護管の位置を固定できる。
請求項4記載の連続鋳造用鋳型は、保護管と挿通穴との隙間に充填した金属が低融点金属であり、鋳型本体で溶鋼を冷却する際には溶融状態であるので、充填した金属が凝固時に収縮してできる隙間の発生を抑制することができ、隙間の存在による熱感知の応答性低下を抑制できる。
請求項5記載の連続鋳造用鋳型は、金属が粉末状なので、隙間への充填作業を、作業性よく短時間に実施でき、またこの金属の粒径を調整することで、金属の隙間への充填密度を向上できる。
請求項6記載の連続鋳造用鋳型は、保護管にガイド棒が取付けられるので、細長の保護管の破損を防止しながら、挿通穴への光ファイバーセンサーの挿入作業を容易にできる。また、保護管を鋳型本体の溶鋼接触面側に配置できるので、熱感知部による鋳型本体の温度変化の検出精度を高めることができる。
請求項7記載の連続鋳造用鋳型は、熱感知部が位置する領域にある保護管に押圧部材を設けるので、熱感知部を鋳型本体の溶鋼接触面側へ押し付けることができ、鋳型本体から熱感知部への熱の移動量(接触熱伝達率)を向上できる。これにより、鋳型本体の温度変化の検出精度を更に高めることができる。
請求項8記載の連続鋳造用鋳型は、押圧部材を熱伝導性が良好な検知精度向上部材を介して配置するので、鋳型本体から熱感知部への熱の移動量を向上できる。これにより、光ファイバーセンサーの測定精度を更に向上させることができる。
請求項10記載の連続鋳造用鋳型は、金属をめっきまたは溶射により付着させているので、空隙の生成を抑制しながら、保護管を埋設することができるので、鋳型本体から熱感知部への熱の応答性を良好にできる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)は本発明の第1の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型を構成する鋳型本体の短片部材の冷却板の裏面図、(B)は図1(A)のa−a矢視断面図、(C)は図1(A)のb−b矢視断面図、図2は同短片部材の冷却板に光ファイバーセンサーを設けたときの側断面図、図3(A)は同短片部材の冷却板に設けられた光ファイバーセンサーの熱感知部近傍の部分拡大図、(B)は図3(A)のc−c矢視断面図、(C)は図3(A)のd−d矢視断面図、図4(A)、(B)はそれぞれ第1、第2の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図、図5(A)は第3の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図、(B)は図5(A)のe−e矢視断面図、(C)は図5(A)のf−f矢視断面図、図6は第4の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図、図7(A)は本発明の第2の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型を構成する鋳型本体の長片部材の冷却板の裏面図、(B)は図7(A)のg−g矢視断面図、(C)は同連続鋳造用鋳型の変形例に係る鋳型本体の長片部材の冷却板の裏面図、(D)は図7(C)のh−h矢視断面図である。
図1〜図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型は、上下方向に貫通する空間部(図示しない)が内側に形成された鋳型本体10を有し、空間部へ供給された溶鋼を鋳型本体10で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する鋳型であり、鋳型本体10に形成された挿通穴11に光ファイバーセンサー12を挿入して配置したものである。以下、詳しく説明する。
図1(A)〜(C)に示すように、連続鋳造用鋳型は、間隔を有して対向配置される一対の幅狭の短片部材13と、この短片部材13を挟み込むようにして対向配置される一対の幅広の長片部材(図示しない)とを有する四組鋳型である。なお、短片部材13と長片部材は、従来公知のものであり、例えば、短片部材13(長片部材も同様)は、溶鋼と接触する銅または銅合金で構成された冷却板14と、その背後にボルト15によって取付け固定された冷却水を流すステンレス製またはスチール製のバックプレート(図示しない)とを有している。
上記した、一対の短片部材13の冷却板14と、一対の長片部材の冷却板とで、鋳型本体10が構成されている。
図1(B)、(C)に示すように、冷却板14の裏面側には、その上下方向に渡って冷却水を流すための導水溝17〜20が、冷却板14の幅方向に同等のピッチで設けられている。
冷却板14の幅方向両側を除く導水溝18〜20は、その底面位置が、冷却板14の溶鋼接触面から、例えば、10〜30mmの範囲内に配置されている。なお、冷却板14の幅方向両側の導水溝17の底面位置は、図1(B)に示すように、各導水溝18〜20よりも、冷却板14の溶鋼接触面側に位置している。
ここで、冷却板14の下側を除く部分で、この冷却板14の裏面側には、ステンレス製の板材21がボルト22によって固定され、各導水溝17〜20を冷却板14の下側よりも、冷却板14の溶鋼接触面側へ配置している。なお、板材を配置することなく、各導水溝の底面位置を、冷却板の上下方向に渡って同一位置に設定してもよい。
図1(B)〜(C)、図2に示すように、冷却板14の幅方向両側に配置される導水溝17よりも更に外側(冷却板14の側面から5mm以上35mm以下の範囲内)には、光ファイバーセンサー12を配置するための挿通穴11が形成されている。この挿通穴11の形成位置は、冷却板14の溶鋼接触面から1mm以上35mm以下の範囲内である。
挿通穴11は、冷却板14の上面から、冷却板14の上下方向に渡って形成された有底のものであるが、貫通孔を形成した後、その底部に蓋を設けてもよい。また、挿通穴の形成は、底面から行ってもよく、更に上下両面から行ってもよい。なお、挿通穴は、冷却板の側面から左右方向に形成することも可能である。
この挿通穴11は、冷却板14の幅方向両側に配置されているが、冷却板14の幅方向中央部(ここでは、冷却板14の上下方向に熱電対23が配置されている位置)に設置することもでき、また冷却板14の幅方向に所定のピッチで複数本配置することもできる。
この挿通穴11の内幅(ここでは、内径)は、例えば、0.5mm以上15mm以下程度である。
この挿通穴11に、保護管24で保護された光ファイバーセンサー12を挿入して配置する。
保護管24は、例えば、Cu、Cu合金(例えば、Cr−Zr−Cu合金)、ステンレス、または鉄で構成されており、その外径が挿通穴11の内幅より小さく、例えば、0.4mm以上6mm以下程度であり、その内径は、例えば、0.2mm以上6mm以下程度である。
図3(A)〜(C)に示すように、光ファイバーセンサー12は、鋳型本体10の温度変化による光の波長変化を検出可能な熱感知部(グレーティング部ともいう)25を備える光ファイバーグレーティングセンサー(FBG:Fiber Bragg Grating)と呼ばれるものである。この光ファイバーセンサー12は、従来公知のものであり、例えば、特開2001−311610号公報に開示されたものを使用できる。
光ファイバーセンサー12は、例えば、純度の高い石英で構成されたクラッドと、その中央部に設けられGe(ゲルマニウム)をドープした石英で構成されたコアと、クラッドの周囲を覆って機械的な補強と耐水性を確保するための例えば、ポリイミド樹脂製または紫外線硬化樹脂製の樹脂部材とで構成されている。
熱感知部25は、結晶化されたものであり、光ファイバーセンサー12の長さ(繊維)方向途中位置に、光ファイバーセンサー12の長さ方向に渡って、例えば10mm以上30mm以下程度設けられている。なお、熱感知部25は、光ファイバーセンサー12の長さ方向に1箇所設けられているが、光ファイバーセンサー12の長さ方向に間隔を有して複数設けてもよい。
この熱感知部25を、冷却板14の温度を測定したい位置に合わせて設置することで、熱感知部25を中心として10mm範囲内でのスポット測温が可能となり、鋳型本体10からの熱の応答性も向上する。また、測定したい箇所へ熱感知部25を配置することで、任意に温度測定と歪測定が可能となる。
上記した光ファイバーセンサー12を保護管24内に挿入した後、これを挿通穴11内に挿入する。このとき、保護管24と挿通穴11との間に形成される隙間に、溶融状態の金属(以下、単に溶融金属ともいう)を充填して凝固させ、保護管24を挿通穴11内に固定することが好ましい。この溶融金属としては、例えば、低融点(例えば、300〜700℃程度)の銀鑞またははんだ(鉛フリー)を使用できる。
なお、隙間に充填する金属としては、溶融金属を使用することなく、固体(凝固)状態の金属を使用することもできる。この固体状態の金属を使用する場合、特に粉末状(例えば、粒径が、0.01〜1mm程度)の金属を使用することが好ましい。
更に、金属を低融点金属とし、鋳型本体10で溶鋼を冷却する際には溶融状態にさせることが好ましい。この低融点金属としては、その融点が、溶鋼の冷却の際の鋳型本体10の温度未満(例えば、200℃以下)の金属、例えば、In(インジウム)52質量%−Sn(スズ)48質量%(融点:117℃)合金を使用できる。なお、下限値は規定していないが、現実的には100℃程度である。
挿通穴11内への保護管24の挿入に際しては、図3(A)〜(C)に示すように、保護管24に、その長手方向に渡ってガイド棒26を取付ける。このガイド棒26としては、熱伝導性が良好な銅または銅合金製で、その長手方向に渡って溝27が設けられたものを使用できる。そして、この溝27部分に保護管24を配置することで、挿通穴11内での保護管24の動きを抑制できる。なお、溝27は断面視して外側に開口し、溝27に保護管24を嵌入させた場合、その保護管24の一部(ここでは、断面視して半分)が露出しているが、保護管24が溝27内に入り込んでもよい。
このとき、保護管24を冷却板14の溶鋼接触面側に配置することで、熱感知部25による熱の検出精度を高めることができる。
更に、ガイド棒26には、熱感知部25が位置する領域にある保護管24を、冷却板14の溶鋼接触面側の挿通穴11内面に接触させるための押圧部材28が設けられている。
この押圧部材28は、保護管24の外径より大きく、保護管24を挿通穴11内面に押圧できれば、例えば、保護管24と同一の材質で構成されたもの、セラミックス、またはシリコーンのような耐熱材料で構成できる。
なお、ここでは、保護管24と押圧部材28とは、同一の材質で構成されているため、一体構造としているが、材質が異なれば、例えば、溶接または貼り付けにより、押圧部材を保護管に取付けてもよい。
この押圧部材は、図4(A)に示すように、ボルト29で構成してもよい。この場合、冷却板14の裏面側(バックプレート側、即ち冷却面側)から挿通穴11に連通するボルト孔を形成し、このボルト孔にボルト29をねじ込むことで、熱感知部25が位置する領域にある保護管24を、冷却板14の溶鋼接触面側の挿通穴11内面に接触させることができる。また、図4(B)に示すように、先側が前記した耐熱材料30で構成されたボルト31を使用することもできる。なお、図4(A)、(B)の32は、挿通穴11の底部である。
なお、ここでは、挿通穴内へ保護管を挿入にするに際し、保護管にガイド棒を取付けたり、更に押圧部材を取付けたりした場合について説明したが、保護管にガイド棒のみ、または保護管に押圧部材のみを取付けた後に、保護管を挿通穴内へ挿入してもよい。
また、図5(A)〜(C)に示すように、保護管24に設けるガイド棒として、熱感知部25に対応した位置で、長手方向に分断したガイド棒33を使用することもできる。このガイド棒33は、分断したこと以外、前記したガイド棒26と同様の構成のものであり、熱伝導性が良好な銅または銅合金製で構成され、その長手方向に渡って溝34が設けられている。
保護管24の熱感知部25が位置する領域には、ガイド棒33より幅狭となった検知精度向上部材35が設けられている。この検知精度向上部材35は、熱伝導性が良好な金属(例えば、銅、銅合金、または銀)で構成されており、挿通穴11内面形状の一部(ここでは、円弧状)をその外面形状とする曲部36を有し、この曲部36に保護管24を取付ける(嵌入する)ための溝37が形成されている。
なお、ガイド棒33と検知精度向上部材35とは、溶接により一体的に接合されているが、接合しなくてもよい。
また、検知精度向上部材35の曲部36が形成される側と反対側には、平坦部38が形成されており、この平坦部38には、自由状態では長手方向中央部が外側へ向けて膨出するばね材(押圧部材の一例)39が取付けられている。
このように、保護管24とばね材39との間に、検知精度向上部材35を設け、使用時にはばね材39の膨出部分の中央が凹んでその形状がM字状となることで、検知精度向上部材35を保護管24とともに挿通穴11内面へ押し付けることができる。
これにより、保護管24の熱感知部25が位置する領域と、挿通穴11内面との接触面積が高められ、光ファイバーセンサー12の測定精度を向上させることができる。
また、図6に示すように、検知精度向上部材35の平坦部38には、ばね材39の代わりに弾性力を備えたシリコーン(押圧部材の一例)40を使用することもできる。
なお、図6の41は、挿通穴11の底部である。
金属間の熱移動は、接触面積と接触圧力に大きく左右され、接触面積が大きいほど、また接触圧力が高いほど、熱移動量(接触熱伝達率)が向上する。
本発明では、冷却板14の挿通穴11と保護管24との接触面積を向上させるため、まず保護管24に、例えば、熱電導性が良好な銅製のピース(即ち、検知精度向上部材35)をろう付けにより接合したうえで、接触させている。
また、挿通穴11内面へのピースの接触圧力を向上させるため、このピースをばね材39またはシリコーン40を用いて押し付ける。
これにより、熱感知精度および応答性に大きく影響を与える保護管24と挿通穴11内面との接触熱伝達を、必要な部位のみ確実に向上させることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型について、図7(A)、(B)を参照しながら説明する。
連続鋳造溶鋳型は、前記した長片部材と同様の構成となった長片部材50の冷却板の溶鋼接触面側に、長片部材50の幅方向に渡って凹部51が形成され、この凹部51内に、保護管52で保護された光ファイバーセンサー(前記した光ファイバーセンサー12と同様の構成)が配置されている。なお、凹部51の深さは、保護管52の配置位置が、前記した保護管24の深さ位置と同一レベル位置である。
この保護管52は、正面視して環状に形成され、長片部材50の幅方向に渡って配置されており、しかもその基部と先部が同一位置(長片部材50の側部)に配置されている。
そして、凹部51内に保護管52を配置した後に金属53で覆う。この金属53としては、銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金を使用でき、その施工方法としては、例えば、めっきまたは溶射を適用できる。
このように、金属53により、凹部51内に保護管52を埋設した後に、金属53の表面と、長片部材50の他の溶鋼接触面とを、例えば機械加工により、同一レベルに調整し、必要に応じて、更にめっき処理することもできる。
なお、連続鋳造用鋳型は、図7(C)、(D)に示すように、長片部材55の溶鋼接触面側に、長片部材55の幅方向に渡って、しかも保護管52で保護された光ファイバーセンサーの配置位置に沿って、凹部56を形成した後に、金属57(金属53と同様の構成)で覆ってもよい。
また、前記した凹部は、長片部材の冷却板の冷却面(裏面)側に設けてもよい。このとき、形成する凹部の深さは、従来使用されている熱電対が配置される深さ位置に調整する。
更に、上記した方法で、短片部材の冷却板に凹部を形成し、光ファイバーセンサーを配置してもよい。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
低炭素アルミキルド鋼の鋼種の溶鋼を使用し、厚み250mmのスラブを鋳造速度0.8m/分にて鋳造している最中に、鋳型内溶鋼の湯面レベルを鋳型内の温度センサー位置より下方まで一旦低下させた後、湯面レベルを再度鋳型内の温度センサー位置より上方まで上昇させる方法により、設置した温度センサーの熱応答性を比較検討した。
図8に、温度センサーとして光ファイバーセンサーを使用した結果を示す。ここで、図8に示す金属充填とは、In52質量%−Sn48質量%合金を隙間内に充填した結果である。また、押圧部材設置とは、図5に示した押圧部材を使用した結果である。そして、金属粉末充填とは、隙間内に銅粉を充填した結果である。更に、隙間ありとは、隙間内に何も充填しない場合の結果である。
なお、従来使用されている熱電対の熱応答性は、挿通穴内に光ファイバーセンサーを挿入して隙間が形成されている場合よりも悪かった(例えば、光ファイバーセンサーを使用した場合の1/3〜1/2程度)ため、ここでは図示していない。
また、Pbフリーはんだなどのように、鋳造中の鋳型本体の温度よりも融点が高く、鋳造中も溶融しない金属を隙間内に充填した場合の熱応答性は、In52質量%−Sn48質量%(融点:117℃)合金を充填したものと、押圧部材を設置した場合の中間程度であった。また、押圧部材を設置することなく、ガイド棒だけを使用した場合の熱応答性は、金属粉末を充填した場合とほぼ同じであった。そして、冷却板の溶鋼接触面側に凹部を形成し、この凹部内に光ファイバーセンサーを設置してめっきまたは溶射により金属を付着させた場合の熱応答性は、押圧部材を設置した場合とほぼ同じ結果であった。
上記したように、温度センサーとして光ファイバーセンサーを使用し、更に形成される隙間の領域を減少させることで、隙間内に何も充填しない場合よりも、熱応答性が格段によくなる結果が得られた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部または全部を組合せて本発明の連続鋳造用鋳型を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、鋳型本体の短片部材の冷却板にのみ挿通穴を形成して光ファイバーセンサーを挿入した場合について説明したが、短片部材と長片部材の双方の冷却板に挿通穴を形成して光ファイバーセンサーを設置することもでき、また長片部材の冷却板にのみ挿通穴を形成して光ファイバーセンサーを設置することもできる。
そして、前記実施の形態においては、鋳片の一例であるスラブを製造する鋳型の構成について説明したが、形状と寸法の異なる他の鋳片、例えば、ビレット(例えば、幅および厚みが100〜200mm程度)、ブルーム(例えば、幅および厚みが200〜400mm程度)、またはビームブランク(H型鋼用に使用)を製造する鋳型、更には、鍛造または鍛造した銅ブロックに導水孔を穿孔したブロック鋳型に、本願発明を適用することも勿論可能である。
更に、前記実施の形態においては、空間部の平断面形状が、実質的に長方形となった鋳型について説明したが、空間部の断面形状を、例えば、凸形、凹形、多角形(例えば、長方形、六角形、または八角形)とすることも可能である。
(A)は本発明の第1の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型を構成する鋳型本体の短片部材の冷却板の裏面図、(B)は図1(A)のa−a矢視断面図、(C)は図1(A)のb−b矢視断面図である。 同短片部材の冷却板に光ファイバーセンサーを設けたときの側断面図である。 (A)は同短片部材の冷却板に設けられた光ファイバーセンサーの熱感知部近傍の部分拡大図、(B)は図3(A)のc−c矢視断面図、(C)は図3(A)のd−d矢視断面図である。 (A)、(B)はそれぞれ第1、第2の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図である。 (A)は第3の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図、(B)は図5(A)のe−e矢視断面図、(C)は図5(A)のf−f矢視断面図である。 第4の変形例に係る保護管の熱感知部近傍の部分拡大図である。 (A)は本発明の第2の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型を構成する鋳型本体の長片部材の冷却板の裏面図、(B)は図7(A)のg−g矢視断面図、(C)は同連続鋳造用鋳型の変形例に係る鋳型本体の長片部材の冷却板の裏面図、(D)は図7(C)のh−h矢視断面図である。 鋳型本体の熱負荷が上昇したときの温度センサーの設置方法の違いによる熱応答性を比較した結果の説明図である。
符号の説明
10:鋳型本体、11:挿通穴、12:光ファイバーセンサー、13:短片部材、14:冷却板、15:ボルト、17〜20:導水溝、21:板材、22:ボルト、23:熱電対、24:保護管、25:熱感知部、26:ガイド棒、27:溝、28:押圧部材、29:ボルト、30:耐熱材料、31:ボルト、32:底部、33:ガイド棒、34:溝、35:検知精度向上部材、36:曲部、37:溝、38:平坦部、39:ばね材(押圧部材)、40:シリコーン(押圧部材)、41:底部、50:長片部材、51:凹部、52:保護管、53:金属、55:長片部材、56:凹部、57:金属

Claims (10)

  1. 上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体を有し、該空間部へ供給された溶鋼を前記鋳型本体で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
    前記鋳型本体を構成する冷却板には、上下方向または左右方向に渡って挿通穴が形成され、該挿通穴に、保護管で保護され、温度変化による光の波長変化を検出可能な1または2箇所以上の熱感知部を備える光ファイバーセンサーを挿入して配置したことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、前記保護管と前記挿通穴との隙間に金属を充填したことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  3. 請求項2記載の連続鋳造用鋳型において、前記金属は溶融状態の金属を充填して凝固させたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  4. 請求項2記載の連続鋳造用鋳型において、前記金属は低融点金属であり、前記鋳型本体で溶鋼を冷却する際には溶融状態であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  5. 請求項2記載の連続鋳造用鋳型において、前記金属は粉末状であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、前記保護管には、その長手方向に渡ってガイド棒が取付けられ、前記保護管を前記鋳型本体の溶鋼接触面側に配置していることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、前記保護管には、前記熱感知部が位置する領域にある前記保護管を、前記鋳型本体の溶鋼接触面側の前記挿通穴内面に接触させるための押圧部材が設けられていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  8. 請求項7記載の連続鋳造用鋳型において、前記押圧部材を、前記保護管が嵌入する溝を有する熱伝導性が良好な検知精度向上部材を介して配置し、前記光ファイバーセンサーの測定精度を向上させたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  9. 上下方向に貫通する空間部が内側に形成された鋳型本体を有し、該空間部へ供給された溶鋼を前記鋳型本体で冷却しながら凝固させて鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
    前記鋳型本体を構成する冷却板の溶鋼接触面側または冷却面側には、凹部が形成され、該凹部に、保護管で保護され、温度変化による光の波長変化を検出可能な1または2箇所以上の熱感知部を備える光ファイバーセンサーを配置して金属で覆ったことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  10. 請求項9記載の連続鋳造用鋳型において、前記金属はめっきまたは溶射により付着させたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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