JP2008256750A - 光学素子とその製造方法、および半透過半反射型液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透過光に位相差を生じさせる液晶相領域が光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子を製造する方法であって、(i)重合性の液晶分子を含む塗工液を前記基材上に塗布して塗膜を形成する塗布工程、(ii)前記液晶分子を液晶相状態にしてこれを配向させる配向工程、(iii)前記液晶相状態の液晶分子に、短波長カットフィルタおよびフォトマスクを介して活性放射線をパターン照射することにより、当該照射された液晶分子同士を重合硬化させて前記液晶相領域をパターン形成する光照射工程、を含む光学素子の製造方法。
【選択図】図3
Description
図1および図2は、下記特許文献1に記載の半透過半反射型液晶表示装置(以下断りなき場合、液晶表示装置と略記する。)30の断面模式図である。本発明の光学素子1が好適に適用される液晶表示装置の一例としてもこれらを挙げることができる。
液晶表示装置30は半透過半反射層24を備え、観察者側(図中上方)から入射した可視光が同層の反射部24aで反射されて観察者に視認される反射表示領域17と、背面側(図中下方)に設けられたバックライト20から放射された可視光が同層の開口部24bを通過して観察者に至る透過表示領域16とが形成されていることを特徴とする。
半透過半反射層24は、アルミニウム、銀、またはこれらの合金等の反射率の高い金属膜からなる反射膜に微細な開口をパターニングすることで、反射部24aと開口部24bとを画素ごとに形成してなることが一般的である。
具体的には、図1,2に示す液晶表示装置30の場合、反射表示領域17に光学等方性のギャップ制御層25をパターン配置することにより、透過表示領域16における駆動液晶層13の厚さは、反射表示領域17における厚さの2倍に構成され、これを透過する可視光に対し、電圧無印加時には透過表示領域16で1/2波長、反射表示領域17で1/4波長の位相差が与えられるよう設計されている。また電圧印加時には駆動液晶分子28が駆動して、透過光に与えられる位相差がともにゼロとなることにより、かかる透過光が直線偏光板10を観察者に向かって通過して観察者に視認される明表示と、通過できずに吸光されて観察者に至らない暗表示とが切り替えられる。
一方、観察者側のガラス基板11の内面側には、遮光性のブラックマトリクス(BM)29によって有効表示領域や各画素が区画形成されている。
またBM29上には、有効表示領域を埋めるように、R(赤)G(緑)B(青)などの異なる色の着色領域が画素幅で微細に配列されて透過光を色ごとに分光する着色層12や、ITO等の透明導電膜からなる透明電極層14aなどが積層形成されている。また透明電極層14aを覆うように、駆動液晶分子28を所望に配向させるための配向膜(図示せず)が形成されている。
すなわち、位相差制御層15を通過する可視光に対して、理想的には液晶相領域15aにおいては所定量の(1/4波長の)位相差が与えられ、光学的等方領域15bにおいては一切位相差が与えられないことが好ましいところ、上記従来の製造方法による場合、液晶相領域15aと光学的等方領域15bとの境界には、上記所定量に満たない中間の位相差が与えられてしまう境界領域が幅広に形成される。
これは境界領域が透過表示領域16に差し掛かって形成された場合も同様である。透過表示領域16を通過する可視光には本来位相差が与えられないところ、境界領域を通過した可視光には位相差ズレが生じてしまうため、明表示においては光量が不足し、暗表示においては光漏れが生じる。
(1)透過光に位相差を生じさせる液晶相領域が光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子を製造する方法であって、
(i)重合性の液晶分子を含む塗工液を前記基材上に塗布して塗膜を形成する塗布工程、
(ii)前記液晶分子を液晶相状態にしてこれを配向させる配向工程、
(iii)前記液晶相状態の液晶分子に、短波長カットフィルタおよびフォトマスクを介して活性放射線をパターン照射することにより、当該照射された液晶分子同士を重合硬化させて前記液晶相領域をパターン形成する光照射工程、
を含む光学素子の製造方法;
(2)高圧水銀灯または超高圧水銀灯を前記活性放射線の照射装置として用いるとともに、前記短波長カットフィルタにより少なくとも320nm以下の波長の光を実質的にカットすることを特徴とする上記(1)に記載の光学素子の製造方法;
(3)透過光に位相差を生じさせる液晶相領域が光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子を製造する方法であって、
(i)重合性の液晶分子と、光重合開始剤とを含む塗工液を前記基材上に塗布して塗膜を形成する塗布工程、
(ii)前記液晶分子を液晶相状態にしてこれを配向させる配向工程、
(iii)前記液晶相状態の液晶分子に、フォトマスクを介して活性放射線をパターン照射することにより、当該照射された液晶分子同士を重合硬化させて前記液晶相領域をパターン形成する光照射工程、
を含み、かつ、
前記光照射工程でパターン照射する活性放射線に実質的に含まれる光の波長が、前記光重合開始剤の極大吸収波長よりも長いことを特徴とする、光学素子の製造方法;
(4)前記パターン照射される活性放射線に実質的に含まれる最も短い波長の光に対する前記光重合開始剤の吸光度が、前記極大吸収波長の光に対する吸光度の50%以下である上記(3)に記載の光学素子の製造方法;
(5)透過光に位相差を生じさせない等方相領域が、前記液晶相領域とともに前記基材上にパターニングされてなる光学素子を製造するための上記(1)から(4)のいずれかに記載の方法であって、
前記光照射工程(iii)の後に、
(iv-1)前記液晶相領域がパターン形成された塗膜を加熱して、未硬化の液晶分子を等方相状態にする等方相転移工程、および
(v)当該等方相の液晶分子同士を熱重合させることにより前記等方相領域を形成する焼成工程、
を行うことを特徴とする、光学素子の製造方法;
(6)前記光照射工程(iii)の後に、
(iv-2)前記液晶相領域がパターン形成された塗膜より、未硬化の液晶分子を除去する除去工程
を行うことを特徴とする、上記(1)から(4)のいずれかに記載の光学素子の製造方法;
(7)前記塗工液が、更に熱重合開始剤を含んでなる、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学素子の製造方法;
を要旨とする。
(8)透過光に所定量の位相差を生じさせる液晶相領域と、透過光に位相差を生じさせない光学的等方領域とが、光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子であって、
前記液晶相領域と光学的等方領域との境界に形成された、前記所定量に満たない位相差を透過光に実質的に生じさせる境界領域の幅が10μm以下であることを特徴とする光学素子;
を要旨とする。
(9)透過表示領域と反射表示領域とを共に備える画素が複数配列された半透過半反射型液晶表示装置であって、
異なる色の可視光をそれぞれ透過する複数色の着色領域が配列された着色層を前記基材上に更に備える上記(8)に記載の光学素子が、前記液晶相領域と前記反射表示領域とが対向するように組み付けられてなる半透過半反射型液晶表示装置;
を要旨とする。
また「等方相」とは液晶分子の向きに規則性が無い状態を意味するものであり、液晶分子のランダムな向きに数学的な厳密さまでを求めるものではない。同様に、等方相領域が透過光に位相差を生じさせないとは、クロスニコルに組み合わせた一対の直線偏光板で挟んだ状態で、当該等方相領域を透過する可視光に対して、有意な光漏れが観察者に視認できない状態を意味するものである。
また「光学的等方領域」とは、上記の等方相領域のほか、アクリル系樹脂などの光学等方性かつ光透過性の樹脂材料や、空気などの気相によって構成され、上記と同様にクロスニコルに組み合わせた一対の直線偏光板で挟んだ状態で、これを透過する可視光に有意な光漏れが観察者に視認できない状態が実現された領域をいう。
また「活性放射線」とは、紫外線や電離放射線など、高いエネルギーをもった電磁波や粒子線を意味する。
また「基材上」に層が形成されているとは、基材の一方面に接して直接に、または他の層を介して間接に、当該層が形成されていることを意味するものであり、基材と当該層との上下位置関係が重力方向に対する上下左右方向のいずれであるかを問うものではない。
またパターン照射される活性放射線から所定の波長の光を「実質的にカットする」とは、カット後の活性放射線に含まれる当該波長の光が液晶分子の光重合に寄与しないことを意味し、具体的にはカットにより当該波長光の照射強度が20%以下に低減されていることを意味する。同様に、パターン照射される活性放射線に「実質的に含まれる」光とは、液晶分子の光重合に寄与する光を意味し、具体的には、パターン照射される活性放射線に含まれるもっとも照射強度の高い光の当該強度を1とした場合に、0.06を超える照射強度をもつ波長の光を意味する。
また「所定量に満たない位相差を透過光に実質的に生じさせる境界領域の幅」とは、クロスニコル状態の直線偏光板で挟んで明表示位置とした光学素子を偏光顕微鏡により観察した際に、目視により透過光が有意に観察され、かつ当該透過光強度が、液晶相領域で観察される透過光強度に対して目視により劣ることが有意に観察される領域の幅をいう。
上記本発明による光学素子およびその製造方法は、位相差制御層の液晶相領域と光学的等方領域とを高解像度で得るものである。かかる光学的等方領域としては大別して、(a)光学等方性かつ光透過性の材料を固定化して得る場合と、(b)材料を固定化せず空気などの気相によって光学等方性を得る場合の2つのケースが考えられる。また前者(a)の場合はさらに、(a−1)重合性の液晶分子を等方相転移させた状態で互いに重合させた等方相領域を設ける場合と、(a−2)光学等方性のある非液晶性の樹脂材料を重合させて固定化する場合と、を採ることができる。
図4各図は上記第二のケース(b)にかかる光学素子1の製造方法を示す模式図である。同図(4)に示すように、基材2上に液晶相領域15aをパターニングして固定することにより、その間に光学的等方領域15bとしての気相領域15dが配置されてなる位相差制御層15を形成することで光学素子1が作製される。
両製造方法のうち、図3,4の(1)〜(3)までは共通の工程であり、また両製造方法に用いる材料もまた共通する。本発明の光学素子の作製に好適に用いられる具体的な材料については後記に詳述する。
図3,4のそれぞれ(1)に示すように、配向能を有する光透過性の基材2の上に直接または間接に、重合性の液晶分子を含む塗工液を塗布して、塗膜4を形成する。塗工液は、上記液晶分子を溶媒に溶解し、各種の添加剤を混合したものである。
塗布法としては、公知の技術を用いることができる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スピンコート法、浸漬法、またはインクジェット法等により、基材2上に塗工液を塗布することができる。
基材2に配向能を与えるため、塗布面には、液晶分子を所望の向きに配向させるための配向膜3を形成してもよい。例えば配向膜3を水平配向膜とする場合は、ポリイミド樹脂材料を基材2に塗工した上でこれに所定方向へのラビング処理を施して得ることができる。また液晶分子を垂直配向(ホメオトロピック配向)させる場合は、配向膜3として公知の垂直配向膜を形成するほか、UV−オゾン洗浄処理などによって基材2表面の濡れ性を向上して液晶分子の垂直配向性を補助することも好適である。
次に、基材2上に形成した塗膜4を減圧乾燥して溶媒を減じた上、液晶分子が液晶構造を発現する所定の温度(液晶相温度)に保持してこれを配向させる。液晶分子の配向は、水平配向のほか、垂直配向、ツイスト配向、ベンド配向、ハイブリッド配向などいずれでもよい。ただし本発明の光学素子1を半透過半反射型液晶表示装置の表示側基板として用い、位相差制御層15によって可視光に1/4波長の位相差を与える場合は、液晶分子を水平配向させるとよい。
塗膜4に含まれる液晶分子の全体を所望の向きに配向させて液晶相状態とした図3,4(1)の状態から、各図(2)に示すようにフォトマスク5を介して活性放射線をパターン照射する。遮光性のフォトマスク5には、のちに液晶相領域15aとなる位置に対応して開口部5aが設けられており、当該領域に存在する液晶分子のみ、活性放射線の露光によって互いに重合硬化させることができる。
フォトマスク5のマスクパターンは特に限定されるものではない。本実施形態では、紙面奥行き方向に伸びる短冊状の液晶相領域15aと光学的等方領域15bとが横並びに繰り返されるよう、ストライプ状のマスクパターンとしている。
露光量については、液晶分子の種類にもよるが50〜500mJ/cm2程度とすることが好ましい。
また以下の説明においてもネガ型のフォトリソグラフィー法による場合を例に説明するが、これをポジ型で行う場合についても当業者であれば容易に適用可能であろう。
本発明ではこれを、上記パターン露光する活性放射線の波長を限定することにより実現している。
上記特許文献1に例示される従来の光学素子の製造方法にあっては、200〜450nmの紫外線を広く用いることが一般的であったところ、本発明者らの知見によれば、下記の理由により、具体的には313nmを超える波長、好ましくは320nm以上の波長に活性放射線を実質的に限定することで、フォトリソグラフィー法による液晶相領域15aの解像度を大幅に高められることが明らかとなった。
なお活性放射線の上限の波長は特に限定されるものではなく、液晶分子に光重合を生じさせるのに十分なエネルギーのフォトンを有するという観点から、従来と同様に450nm程度までの光であれば好適に用いることができる。なお、当該工程で照射する活性放射線にこれ以上の波長の光が混合していることを排除するものではない。
また液晶相領域の解像度を高める本発明においては、液晶分子の光重合に実質的に貢献しない程度に低い照射強度の光をも、パターン露光する活性放射線から排除しなければならないものではない。したがって以下の説明において、照射光を所定以上の波長光に限定する、または短波長カットフィルタにより照射光より所定以下の短波長光をカットすると表現した際には、当該所定以下の短波長光を完全にカットする場合のほか、実質的にこれをカットする状態を含む。
なお、フォトマスク5と塗膜4とを接触させて露光することでかかるテーパーを減ずることができるが、塗膜4が未硬化の液晶相状態で露光が行われるため、塗膜表面の保護やゴミの付着防止などの観点から、プロキシミティー露光(近接露光)を行うことが好ましく、したがってかかるテーパーの発生が大きな問題となる。
(イ)短波長の活性放射線が有するフォトンは高エネルギーであるため、ラジカルの発生確率が高く、ひいてはその発生量が多くなり、塗膜4の露光領域から沁み出して液晶分子の重合が起こることから、図5(b)に示すように、硬化する液晶相領域15aの端面が乱れて幅W2の境界領域が形成される。
(ウ)光重合開始剤は、一般に300nmまたはそれ以下の波長領域に吸収波長の極大値を有しているところ、かかる極大吸収波長の活性放射線を露光した場合も、上記(イ)と同様に液晶分子の重合が急激に開始され、同図に示すように液晶相領域15aの端面が乱れて幅広の境界領域が形成される。したがって極大吸収波長の近傍をさけ、具体的には極大吸収波長の光に対する吸光度の50%以下の吸光度となる波長の活性放射線のみを含むことが好ましい。
したがって高圧水銀灯や超高圧水銀灯を照射装置として用いる場合、光照射工程(iii)で塗膜4に照射する光を、313nmを超える波長、好ましくは320nm以上、さらに好ましくは325nm以上の波長に限定することが好適といえる。
また特に極大吸収波長が280nm以上かつ320nm未満である光重合開始剤を用いる場合については、320nm以上、好ましくは325nm以上の波長の光に限定して照射することが特に好適である。
また例えば313nm以下や320nm以下の光をカットする短波長カットフィルタを作製する場合は、活性放射線を透過または反射する薄膜を多層に積層して薄膜干渉によって特定の波長をカットする光カットフィルタにおいて、薄膜の厚さを調整することで所望の短波長カットフィルタが得られる。
また上記(い)の方法については、紫外用蛍光灯や、複写用高圧水銀灯を液晶分子の光重合用の露光機に転用することで実現可能である。これらの露光機は市販されている。
次に、活性放射線が照射されなかった部分、すなわち液晶分子が硬化していない未露光領域6を光学的等方領域15bとする工程をおこなう。上記第一または第二のケース、すなわち光学的等方領域15bを等方相領域15cなどの固相で形成するか、または気相領域15dで形成するかによって本工程は相違する。
光学等方性材料を固定化して光学的等方領域15bを得る上記第一のケース(a)のうち、液晶分子を用いて等方相領域15cをパターン形成する上記ケース(a−1)の場合、図3(4)に示すように、活性放射線照射後の塗膜4全体を加熱することで未露光領域6に含まれる未重合の液晶分子を等方相に転移させる。すなわち未露光領域6を含む塗膜4を等方相転移温度以上に加熱することで、すでに硬化している液晶相領域15aは相転移せず、未露光領域6のみが等方相に転移する。なお、未露光領域6が液晶相から等方相に相転移したことは、DSC等の測定装置や偏光顕微鏡観察によって確認できる。
材料を固定化せず空気などの気相領域15dによって光学的等方領域15bを得る上記第二のケース(b)の場合、図4(4)に示すように、溶剤を用いて未露光領域6をエッチング除去する。溶剤としては、重合性液晶を溶解できる溶液、特に有機溶媒を用いることができる。
また光学等方性の非液晶性材料で光学的等方領域15bを固定形成する上記ケース(a−2)の場合は、エッチング除去後の未露光領域6を、アクリル系やウレタン系などの光学等方性かつ光透過性の樹脂材料で充填すればよい。
上記ケース(a−1)の場合、図3(5)に示すように、等方相に転移した未露光領域6をさらに高温に加熱焼成して、当該領域に含まれる液晶分子同士を重合硬化させることにより等方相状態を固定化する。このとき、光重合により固定化された液晶相領域15aについても液晶分子同士の三次元架橋重合反応がさらに進行し、強固な位相差制御層15が得られる。
したがって塗工液には、後記に列挙するような熱重合開始剤を添加しておくことが好ましい。
なお本発明においては、上記(iv-1)の等方相転移工程と、上記(v)の焼成工程とを同時に、すなわち一工程にて行ってもよい。
以上により、液晶相領域15aと等方相領域15cとがパターニングして固定された位相差制御層15が基材2上に形成され、もって光学素子1が作製される。
以上により、液晶相領域15aをパターニングして固定した位相差制御層15を基材2上に形成した光学素子1が作製される。
次に、本発明の製造方法において使用する各材料について説明する。
本発明においては、基材上に塗布した重合性液晶分子に液晶相が発現するように、配向能を備えた基材を使用する必要がある。このような配向能を有する基材としては、基材そのものが配向能を有するものである場合と、透明基板上に配向膜が形成されて配向能を有する基材として機能するものとを挙げることができる。
本発明において使用される重合性の液晶分子としては、ネマチック規則性、スメクチック規則性、を有する液晶相を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、ネマチック液晶材料を好適に使用できる。ネマチック液晶材料のなかでも、液晶分子中に2つ以上の重合性基を有するネマチック液晶を好適に使用できる。具体的には、特表平11−513019号公報に開示されているような重合性液晶を使用できる。
位相差制御層15を得るために用いられる重合性液晶分子としては、架橋重合性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などをあげることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶分子として、より具体的には、下記化1〜12で表される化合物のうちの1種または複数種を混合して用いることができる。
本発明においては、重合性液晶を含む塗工液が光重合開始剤を含んでなることが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を好適に使用できる。ラジカル重合性開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げることができる。本発明においては、市販の光重合開始剤を使用することもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物や、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物を好適に使用できる。
(数1)
Δn=|nX−nY|
が、0.03〜0.20程度が好ましく、0.05〜0.15程度がより好ましい。Δnが0.03以下になると、所望のリタデーション量を得るために膜厚を厚くする必要があり、液晶相層の配向性が悪くなる。一方、Δnが0.20を超えると、液晶相層が薄くなりすぎ、膜厚の制御が困難になる。なお、複屈折率の測定は、リタデーション値と光学素子の膜厚を測定することにより算出できる。
本発明による製造方法により得られた光学素子1を半透過半反射型の液晶表示装置30に組み込み、位相差制御層15を液晶セル23のインセル側に配置した例を図1,2に模式的に示す。
図1,2では、着色層12を構成する赤色パターン12R,緑色パターン12G,青色パターン12Bと、位相差制御層15を構成する液晶相領域15a,光学的等方領域15bと、半透過半反射層24を構成する反射部24a,開口部24bとが、説明の都合上、いずれも紙面左右方向に横並びに配置されるようストライプ状に図示されているが、このうち着色層12については、図6に示すように実際は位相差制御層15や半透過半反射層24のストライプパターンとは直交して配置されている。これにより、図6に示すように液晶セル23の幅方向(図中左右方向)には、短冊状の色パターンを同方向に所望の画素数に相当する本数だけストライプ状に配置し、奥行方向には、短冊状の液晶相領域15a、光学的等方領域15bおよび反射部24a、開口部24bを、同方向に所望の画素数に相当するペア数だけストライプ状に繰り返し形成することで、半透過半反射型液晶表示装置を構成することができる。
図1,2に示す本実施形態の液晶表示装置30においては、BM29は位相差制御層15を構成する液晶相領域15aと光学的等方領域15bとの間の境界領域を被覆するように、すなわち透過表示領域16と反射表示領域17との境目に形成されている。
またBM29は、一般的に10μm程度の線幅で形成される。したがって液晶相領域15aと光学的等方領域15bとの間に形成される境界領域の線幅が10μm以下である場合、当該領域をBM29にて掩覆することができ、境界領域で生じる色シフトや光漏れが観察者に視認されないこととなる。また境界領域の線幅を5μm以下とすることにより、BM29と位相差制御層15との間にパターニング位置精度上の誤差が生じた場合も境界領域をBM29にて好適に掩覆することができる。さらに境界領域の線幅を3μm以下とすることにより、上記のように光学素子1がBM29を備えない場合についても人間の目視により色シフトや光漏れが視認されづらくなるという利点がある。
また図2に示す液晶表示装置30では、位相差制御層15が背面側のガラス基板18上に半透過半反射層24を介して設けられている。
いずれの場合も、光学素子1を構成する液晶相領域15aが反射表示領域17に対応するように、そして光学的等方領域15bが透過表示領域16に対応するように、光学素子1は配置される。
なお図示の各構成は上述のように従来の液晶表示装置30と同様であるため、上記と共通する説明は省略する。
また背面側に設けられた直線偏光板(第二偏光板)19の透過軸と、第一偏光板10の透過軸とは直交し、すなわち第一および第二偏光板10,19はクロスニコル状態を構成している。
電圧印加状態では、先ず、観察者側から反射表示領域17に入射した可視光(外光)は、第一偏光板10を透過して直線偏光になると、着色層12で所定の色(所定の波長の可視光)に分光されたのち、光学素子1の液晶相領域15aを透過する際に1/4波長の位相差が与えられて円偏光となって駆動液晶層13に入射する。電圧印加時には駆動液晶層13では位相差が生じないため、円偏光はそのまま駆動液晶層13を通過する。
円偏光は、反射部24aの表面で反射すると偏光方向が反転し、表示側に向かって再度駆動液晶層13を透過する。液晶相領域15aで再び1/4波長の位相差が与えられて直線偏光に変換されると、当該直線偏光は、第一偏光板10と垂直な偏光軸を有しているため、第一偏光板10に吸収されて観察者側へは出射されず、暗表示となる。
電圧印加状態では、先ず、観察者側から反射表示領域17に入射した可視光(外光)は、第一偏光板10を透過して直線偏光になると、着色層12で所定の色(所定の波長の可視光)に分光されたのち、駆動液晶層13を通過する。
そして直線偏光は、光学素子1の液晶相領域15aを透過する際に1/4波長の位相差が付与されて円偏光に変換される。次いで、この円偏光が反射部24aの表面で反射すると偏光方向が反転する。偏光方向が反転した円偏光が、液晶相領域15aを再度透過すると、直線偏光に変換され、その状態で液晶セル23を透過する。この直線偏光は、第一偏光板10と垂直な偏光軸を有しているため、第一偏光板10に吸収されて観察者側へは出射されず、暗表示となる。
具体的には、光透過性の光硬化性または熱硬化性樹脂組成物であるアクリル系やウレタン系の樹脂や、アクリル系やウレタン系のモノマーを混合した材料などを位相差制御層15の上に塗布し、これをフォトリソグラフィー法によって反射表示領域17において重合固定化し、透過表示領域16においてエッチング除去して作製することができる。
またギャップ制御層25の上面に透明電極層14aが形成され、背面側のガラス基板18上に形成された透明電極層14bとともに駆動液晶分子28のスイッチング駆動用の電圧負荷を与える。
(1)光学素子の作製
基材として、ガラス基板上に配向膜を設けたものを使用した。具体的には、100×100mmのガラス基板上にJSR株式会社製の配向膜(AL1254)を、スピンコーターを用いて膜厚が0.065μmになるように塗布し、230℃のオーブン内で1時間焼成した。次いで、ラビング装置を用いて、ガラス基板上の配向膜に配向処理を施した。
<塗工液組成>
液晶分子(上記(化11)の化合物) 23.75重量部
光重合開始剤(イルガキュア907) 1.25重量部
溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル) 75重量部
なお、上記光重合開始剤の極大吸収波長は300nmである。
紫外線照射量は、200mJ/cm2とした。ただし上記の露光量は365nm(i線)の照度から測定したものである。また365nm波長の紫外線をカットする参考例1の場合は、短波長カットフィルタを通過する前の照射光の照度を意味する。このようにして、基材上にパターニングされた液晶相層を形成した。
基材および塗膜を230℃のオーブンに30分間保持し焼成を行うことにより、未硬化の液晶分子を等方相状態で重合させて硬化させた。このようにして、液晶相領域と等方相領域とがストライプ形状に交互にパターニングされた光学素子を得た(図3を参照)。
基材および塗膜を有機溶剤(メチルエチルケトン)に浸漬することで、未硬化の状態にある液晶分子をエッチング除去し、さらに230℃のオーブンに30分間保持し焼成した。このようにして、液晶相領域のみがストライプ形状にパターニングされた光学素子を得た(図4を参照)。
得られた光学素子に対し、液晶相領域の位相差(リタデーション)を、光学材料検査装置(RETS−1250VA:大塚電子(株)製)を用いて550nmの測定波長にて測定した。
観察は、(i)まず上記フィルタをすべて開いて光量を最大とした状態で、光学素子をその法線まわりに回転させて、液晶相領域から透過する光がもっとも少なくなる角度位置を消光位、すなわち暗表示位置と定めて顕微鏡写真を撮影した。つぎに、(ii)消光位から法線まわりに45度だけ光学素子を回転した角度位置を明表示位置と定め、上記フィルタを閉じて光量を抑えた上で顕微鏡写真を撮影した。
本発明においては、上記方法により定められた第一,第三,第四階調の領域の合計幅を、所定量に満たない位相差を透過光に実質的に生じさせる境界領域の幅とする。
上記評価結果を下記の表1にまとめる。
実施例1aの暗表示位置と明表示位置におけるグレースケール画像を図9,10にそれぞれ示す。同様に実施例1bの暗表示位置と明表示位置におけるグレースケール画像を図11,12にそれぞれ示す。また実施例1bの明表示位置における白黒5階調画像を図13に示す。同図より、実施例1bの場合、偏光顕微鏡で観察された境界領域の幅は1μm以下であった。
また比較例1a,1bおよび2a,2bについては、いずれも約300nmと十分なリタデーションは得られたものの、境界領域が幅広に形成され、解像性が不良となった。
比較例2aの暗表示位置と明表示位置におけるグレースケール画像を図14,15にそれぞれ示す。同様に比較例2bの暗表示位置と明表示位置におけるグレースケール画像を図16,17にそれぞれ示す。また比較例2bの明表示位置における白黒5階調画像を図18に示す。同図より、比較例2bの場合、偏光顕微鏡による観察により約26μm幅の境界領域が認められた。
2 基材
3 配向膜
4 塗膜
5 フォトマスク
6 未露光領域
11,18 ガラス基板
15 位相差制御層
15a 液晶相領域
15b 光学的等方領域
15c 等方相領域
15d 気相領域
16 透過表示領域
17 反射表示領域
23 液晶セル
24 半透過半反射層
24a 反射部
24b 開口部
30 半透過半反射型液晶表示装置
Claims (9)
- 透過光に位相差を生じさせる液晶相領域が光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子を製造する方法であって、
(i)重合性の液晶分子を含む塗工液を前記基材上に塗布して塗膜を形成する塗布工程、
(ii)前記液晶分子を液晶相状態にしてこれを配向させる配向工程、
(iii)前記液晶相状態の液晶分子に、短波長カットフィルタおよびフォトマスクを介して活性放射線をパターン照射することにより、当該照射された液晶分子同士を重合硬化させて前記液晶相領域をパターン形成する光照射工程、
を含む光学素子の製造方法。 - 高圧水銀灯または超高圧水銀灯を前記活性放射線の照射装置として用いるとともに、前記短波長カットフィルタにより少なくとも320nm以下の波長の光を実質的にカットすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
- 透過光に位相差を生じさせる液晶相領域が光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子を製造する方法であって、
(i)重合性の液晶分子と、光重合開始剤とを含む塗工液を前記基材上に塗布して塗膜を形成する塗布工程、
(ii)前記液晶分子を液晶相状態にしてこれを配向させる配向工程、
(iii)前記液晶相状態の液晶分子に、フォトマスクを介して活性放射線をパターン照射することにより、当該照射された液晶分子同士を重合硬化させて前記液晶相領域をパターン形成する光照射工程、
を含み、かつ、
前記光照射工程でパターン照射する活性放射線に実質的に含まれる光の波長が、前記光重合開始剤の極大吸収波長よりも長いことを特徴とする、光学素子の製造方法。 - 前記パターン照射される活性放射線に実質的に含まれる最も短い波長の光に対する前記光重合開始剤の吸光度が、前記極大吸収波長の光に対する吸光度の50%以下である請求項3に記載の光学素子の製造方法。
- 透過光に位相差を生じさせない等方相領域が、前記液晶相領域とともに前記基材上にパターニングされてなる光学素子を製造するための請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記光照射工程(iii)の後に、
(iv-1)前記液晶相領域がパターン形成された塗膜を加熱して、未硬化の液晶分子を等方相状態にする等方相転移工程、および
(v)当該等方相の液晶分子同士を熱重合させることにより前記等方相領域を形成する焼成工程、
を行うことを特徴とする、光学素子の製造方法。 - 前記光照射工程(iii)の後に、
(iv-2)前記液晶相領域がパターン形成された塗膜より、未硬化の液晶分子を除去する除去工程
を行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の光学素子の製造方法。 - 前記塗工液が、更に熱重合開始剤を含んでなる、請求項1〜6のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
- 透過光に所定量の位相差を生じさせる液晶相領域と、透過光に位相差を生じさせない光学的等方領域とが、光透過性の基材上にパターニングされてなる光学素子であって、
前記液晶相領域と光学的等方領域との境界に形成された、前記所定量に満たない位相差を透過光に実質的に生じさせる境界領域の幅が10μm以下であることを特徴とする光学素子。 - 透過表示領域と反射表示領域とを共に備える画素が複数配列された半透過半反射型液晶表示装置であって、
異なる色の可視光をそれぞれ透過する複数色の着色領域が配列された着色層を前記基材上に更に備える請求項8に記載の光学素子が、前記液晶相領域と前記反射表示領域とが対向するように組み付けられてなる半透過半反射型液晶表示装置。
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