JP4803363B2 - 位相差制御機能を有する光学素子およびこれを備える液晶表示装置 - Google Patents
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Description
(1)光透過性を有する基材と、該基材面上に配向膜材料(日産化学社製、商品名SE−5291(商標))からなる配向膜を介して形成され重合性液晶モノマーがハイブリッド配向した状態で重合して固定されてなる構造を有する位相差制御層と、を有し、
重合した重合性液晶モノマーの配向した状態が、基材界面側から空気界面側に向かって立ち上がるハイブリッド配向であって、
前記基材界面側の重合性液晶モノマーの光軸と基材界面とのなすプレチルト角が5度であり、前記空気界面側の重合性液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角が20度乃至90度であり、
重合性液晶モノマーが、下記一般式(1)で表される重合性ネマチック液晶モノマーである、ことを特徴とする光学素子、を要旨とする。
(2)位相差制御層がλ/4板の機能を有する上記(1)に記載の光学素子;
(3)色パターンを配列した着色層を有する上記(1)または(2)に記載の光学素子;
を要旨とし、また、本発明にかかる液晶表示装置は、
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の光学素子と、駆動用液晶層とを有する液晶表示装置;
(5)駆動用液晶層の両面側にそれぞれ前記光学素子を備えることを特徴とする上記(4)に記載の液晶表示装置;
を要旨とする。さらに、本発明にかかる光学素子は、
(6)重合型のネマチック液晶モノマーが、紫外線重合型のサーモトロピック型液晶モノマーである上記(1)に記載の光学素子;
であっても本発明の目的を達成することができる。
図1は、本発明の光学素子10を示す概念図である。光学素子10は、光透過性を有するガラス基板12などの基材と、その一方の面に形成された配向膜13と、配向膜13の上に塗工された重合性液晶モノマー(以下、液晶モノマーと略記することがある。)14が重合固定された位相差制御層15とからなる。配向膜13には、液晶モノマー14が塗工される側にラビング処理16が施されている。また、配向膜13に塗工された液晶モノマー14は、位相差制御層15の厚さ方向にその光軸の傾きが徐々に変化するハイブリッド配向をなしている。同図では厚さ方向に5層の液晶モノマーがハイブリッド配向した状態を図示しているが、当然これに限られるものではない。
位相差制御層15を構成する液晶モノマー14の光軸と基材表面とのなす角をチルト角という。また特に基材界面側の液晶モノマー14のチルト角(αB)をプレチルト角といい、基材と反対側の最表面に位置する液晶モノマー14のチルト角(αA)を空気界面側チルト角という。
一方、上記透明有機材料としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロへキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。特に、フィルムとしては、1軸延伸または2軸延伸したフィルムや、面内にリタデーションを有さないTACフィルム等を用いることができる。基材の厚みは特に限定されないが、用途に応じ5μm〜3mm程度とすることが一般的である。
さらに、本発明にかかる光学素子をLCDに組み合わせた場合、視野角に対するグレースケールの表示安定性に優れ、カラー表示の色味の変化が少ないという観点から、ネマチック型の液晶モノマーを用いることが好適である。
X1およびX2は、直接結合のほか、エーテル基、エステル基もしくはカーボネート基、またはこれらの少なくとも一つを含む基であり、互いに同一でも相違してもよい。
また、一般式(1)の中央部のメソゲンを構成する各ベンゼン環には、3個以下の同一または相違する以下の置換基を有していてもよい。該置換基としては、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、C1〜C20のアルコキシカルボニル基、C1〜C20のモノアルキルアミノカルボニル基、C1〜C20のアルキルカルボニル基、C1〜C20のアルキルカルボニルオキシ基、C1〜C20のアルキルカルボニルアミノ基、ホルミル基、フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基、ヒドロキシ基またはニトロ基を挙げることができる。
ここで、上記化合物(I)乃至(III)に例示される液晶モノマーを水平配向させてAプレートを得る場合は、樹脂組成物に陰イオン性界面活性剤やシリコーン系界面活性剤などのレベリング剤を混合することで液晶モノマーを均一に水平配向させることが一般的であるが、本発明においては、かかるレベリング剤の添加をしない、または添加をする場合もこれを微量に調整することにより、空気界面における表面自由エネルギーの影響を液晶モノマーに与え、配向膜側と空気界面側の表面自由エネルギーの差によってこれを立ち上がらせ、大きな空気界面側チルト角が得られるという知見に想到した。
プレチルト角が5度を下回る場合、後述のように、基材から液晶モノマーの立ち上がる向きが逆転するリバースドメインの発生する虞がある。またプレチルト角が15度を上回る場合、かかる大きなプレチルト角にて液晶モノマーを均一にハイブリッド配向させることが困難となる場合がある。
また上記範囲の空気界面側チルト角をもつことにより、ハイブリッドネマチック配向型LCDの駆動液晶分子の立ち上がりの不足に起因する光漏れを好適に光学補償することができる。
かかるチルト角αをもつk番目の層では、下記(数1)にて表されるSchefferの式に基づき、位相差Rek(nm)が発生する。位相差Rekは上記αと、入射角ψ(rad)の関数である。
(有機溶媒)
有機溶媒としては、上記の重合性液晶モノマーを溶解可能であり、基材の配向性能を阻害しない材料であれば特に限定せずに用いることができる。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリンなどの炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶剤;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類、などが1種、または2種以上を混合して使用可能である。
紫外線重合型の液晶モノマーを紫外線照射により固定化するに際しては、液晶の配向を大きく損なわない範囲で光重合開始剤を添加するとよい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を使用することができる。ラジカル重合性開始剤は、たとえば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントンまたはチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物またはクロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれもチバスペシャリティケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)などのケトン類またはビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。
これらの開始剤を1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするとよい。なお、光重合開始剤のほかに増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的に液晶モノマーの重量に対して0.01〜15重量%(wt%)、好ましくは0.1〜12wt%、より好ましくは0.5〜10wt%の範囲で添加することができる。
重合禁止剤には、例えばp−ベンゾキノン、ナフトキノン、パラ−キシロキノン、パラ−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアエロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル・パラクレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、アセトアニジンアセテートなどを用いることができる。
重合禁止剤の添加量は、液晶モノマーの重量に対して好ましくは0.001〜3wt%、より好ましくは0.01〜2wt%である。上記範囲を下回ると、光散乱等による低い露光量でも硬化してしまい、またこれを超えると紫外線露光感度が低下する。
なお、上記水平配向膜13は、ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の樹脂を溶解した溶液を基材上に塗布し、これを乾燥させて塗膜形成し、次いで上記塗膜の上面から布を巻き付けたローラ等により所定の方向に摩擦するラビング処理を行うことにより形成することができる。このほか、基材に塗工した樹脂表面を光配向処理する方法や、基板に酸化ケイ素を斜め蒸着する方法などによっても配向膜を得ることができる。上記水平配向膜13の厚みは特に限定されるものではないが、0.01μm〜0.08μmとすることが一般的である。
具体的には、例えば日産化学(株)製の配向膜材料(サンエバー)、日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)製の配向膜材料(QL,LXシリーズ)、JSR(株)製の配向膜材料(ALシリーズ)、チッソ(株)製の配向剤(リクソンアライナー)などを用いることができる。
空気界面側チルト角の小さなハイブリッド配向状態を得るために微量添加するレベリング剤には、非イオン性またはイオン性の界面活性剤を用いることができる。具体的には、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤、または脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボンサン型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
ハイブリッド配向した位相差制御層15のプレチルト角を上記5乃至15度の範囲で任意に調整するにあたっては、水平配向膜13の配向特性や液晶モノマーに対するアンカリングエネルギーを変化させるか、または水平配向膜13に紫外線重合型の液晶モノマーを塗布した後に所定の温度および時間にてプリベイクすることでこれを好適に行うことができる。
すなわち水平配向膜13のアンカリングエネルギーを小さくすることにより、配向膜界面側の液晶モノマーの一端が表面自由エネルギーによって液晶層内に引き込まれ、より大きなプレチルト角にて立ち上がろうとする。また、液晶モノマーを常温以上に加熱することでその分子運動が活性化されるため、アンカリングエネルギーに抗ってより大きなプレチルト角にて分子が立ち上がることを可能にする。
またプリベイクを行う温度については、液晶相温度または等方相温度の中から選択可能である。プレチルト角を5乃至15度の範囲内でより大きなものとする場合、等方相転移温度以上かつ重合温度以下の温度、さらに具体的には90℃乃至150℃にてプリベイクするとよい。一方、プレチルト角を上記範囲内で小さくする場合は、液晶相温度、さらに具体的には50℃乃至90℃でプリベイクするとよい。
またプリベイクを行う時間を十分に長くとることにより、配向膜界面側の表面自由エネルギーによって液晶層内に引き込まれる液晶モノマーの立ち上がりを十分に促すことができ、液晶モノマーのプレチルト角をより大きくすることができる。したがって同一温度に加熱してプリベイクする場合も、その時間を調整することでプレチルト角を所定の範囲内で増減させることができる。
この他、樹脂の塗膜に対する光配向処理や基材への酸化ケイ素の蒸着によって水平配向膜13を得る場合は、照射光の角度や蒸着の角度を調整することにより、液晶モノマーのプレチルト角を増減させることができる。
ハイブリッド配向した位相差制御層15の空気界面側チルト角を20乃至90度の範囲で任意に調整するにあたっては、重合性液晶組成物に対する後述のレベリング剤の添加量(添加しない場合を含む)、または、重合性液晶組成物を基材に塗工した後に、これを液晶モノマーの液晶相温度乃至等方相温度でプリベイクする時間(プリベイクしない場合を含む)によってこれを行うことができる。さらに、上記に例示する重合性ネマチック液晶モノマーのうち、分子量のより小さなものを選択することにより、空気界面側チルト角をより大きなものとすることができる。
なお、一般に紫外線重合型の液晶モノマーの反応性不飽和二重結合は、熱によっても重合する。したがって、プリベイクを行う際は液晶モノマーの重合温度以下で行うことが好ましい。
本発明においては、プリベイク温度を等方相転移温度プラス40℃乃至プラス80℃、かつ重合温度マイナス70℃乃至マイナス10℃の範囲から選択することで、特に大きな空気界面側チルト角を得ることができる。
一方、加熱温度が高いほど液晶モノマーの重合反応速度は速くなるが、260℃を超える領域では液晶モノマー自身の分解反応が生じ、位相差制御層自体の劣化が顕著となる。特に両端に反応性不飽和二重結合を有する液晶モノマーの場合、260℃を超える温度に加熱すると、重合した液晶モノマーが熱摂動により配向変化して位相差量が変動し、また重合した位相差制御層15が分解する虞がある。このため本発明においては、ポストベイクの温度は液晶モノマーの種類によらず170℃以上260℃以下の範囲で設定することが好ましい。
着色層17は、これを構成するマイクロカラーフィルタ(着色画素)の色、サイズまたは配置形態によって各種を採り得る。マイクロカラーフィルタは、色毎にパターニングして配置され、各色の色パターンを形成する。マイクロカラーフィルタが透過する色については、赤(R)、緑(G)、青(B)からなる3原色系が一般的であるが、必ずしもこれらに限るものではなく、減色(CMY)系、または2色以上のマイクロカラーフィルタからなるものであればそれらの色は限定されない。マイクロカラーフィルタの配置形態については、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型などが代表的である。
このうち、上側ガラス基板12、着色層17、水平配向膜13a、上側位相差制御層15の四層がこの順に積層された積層体が、図3に示したカラーフィルタ18に相当する。
駆動用液晶層22は、駆動用のネマチック型液晶分子(駆動用液晶分子)24が水平配向して構成されている。駆動用液晶分子24は、上側/下側透明電極層20,20’に電圧が印加されることによって、その電場を受けて立ち上がるよう駆動される。
上側/下側透明電極層20,20’は、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:以下「ITO」と略記する。)などを焼成してなる。
カラーフィルタ18の表面には、ITOを焼成して上側透明電極層20を形成し、その表面にポリイミド樹脂等をラビング処理した水平配向膜13bを形成しておく。
一方、下側ガラス基板12’には、アクリル系樹脂等からなるスペーサー25および反射板23をマスキングにより積層形成し、その上にITOを焼成して下側透明電極層20’を形成する。さらにその表面に水平配向膜13cを形成し、水平配向膜13bと13cとの間に駆動用液晶分子24を封入することで駆動用液晶層22を得る。なお、下側ガラス基板12’には、駆動用液晶層22の反対側に水平配向膜13dと、液晶モノマーをハイブリッド配向させてなる下側位相差制御層15’とを形成しておく。これにより、駆動用液晶層22を含む積層体が得られる。
さらに、上記積層体の上下面に上側直線偏光板21と下側直線偏光板21’とをそれぞれ接着接合し、バックライト30とあわせることで、本実施の形態にかかるLCD40を得ることができる。
位相差制御層15のネマチック液晶モノマー14は、図中下方がプレチルト角αBの基材界面側、上方がチルト角αAの空気界面側であり、その光軸はいずれも紙面前後方向に伸びる立面と平行である。
一方、駆動用液晶分子24は図中上下方向に電圧を負荷され、立ち上がる方向に駆動された状態にある。駆動用液晶分子24の光軸はいずれも紙面と平行である。駆動用液晶層22の厚さ方向の中央近傍においては、駆動用液晶分子24は水平配向膜13に対して垂直に立ち上がっている。これに対し、水平配向膜13の近傍では、配向膜とのアンカリングエネルギーにより、駆動用液晶分子24は十分に立ち上がることができない。すなわち、電圧負荷時の駆動用液晶分子24は、基材界面側では水平に近い状態に寝て、厚さ方向の中央部に向かって次第に立ち上がるハイブリッド配向状態となる。このハイブリッド配向状態が、視野角をゼロ度から変化させた場合にリターデーションを発生させる原因となる。
また、上下二枚の水平配向膜13の間に駆動用液晶分子24を封入してなる駆動用液晶層22では、両配向膜の近傍において駆動用液晶分子24の立ち上がりの不足が発生する。したがって、本発明にかかるLCD40においては、駆動用液晶分子24の上下両面に位相差制御層15(15’)を設けることが好適である。
これにより、位相差制御層15においては駆動用液晶層22の光学補償の機能とともに、例えばλ/4位相差板の機能を同時に実現することができる。
さらに、レベリング剤の混合を行わず、かつ液晶モノマー14を塗布した後に150℃程度の温度で十分な時間にわたってプリベイクを行い、空気界面側チルト角を90度に近づけることで、位相差制御層15において同時に正のCプレートの機能を実現することもできる。
位相差制御層15のこれらの機能は、本発明にかかる光学素子が、重合性ネマチック液晶モノマーを自在に選択した上でこれをハイブリッド配向させ、さらにかかる配向状態を重合固定して位相差制御層15を形成してなることによってもたらされるものである。
すなわち、図6に示すように、水平配向膜上のネマチック液晶モノマーのもつプレチルト角が0度の場合、該モノマーの光軸は基材に対して完全に水平となるため、液晶分子の両端のいずれを上にして空気界面側にかけて立ち上がるかはランダムとなる。このため、立ち上がり方の逆転する液晶モノマー同士の間には、位相差制御機能の不十分なディスクリネーションライン50が形成される。これに対し、上述のように配向膜の材料の選択やフッ素原子の導入等によるアンカリングエネルギーの調整や、ラビング時のラビングロールの回転速度またはラビングロールと基板とのギャップの制御、および/または塗工後の液晶モノマーに対する所定のプリベイク処理などによってプレチルト角を5度以上に調整することができる。かかる大きなプレチルト角をとることにより、水平配向膜上に塗工された液晶モノマーはあらかじめ一端が立ち上がった状態にあることから、水平配向膜上の場所によらず均一な向きで空気界面にかけて立ち上がることとなる。
プレチルト角を5度以上と設定することによりリバースドメインの発生を劇的に抑えることができる上記の効果は、以下の実施例および参考例を対比することにより明らかとなろう。
(1)基板の前処理
適当な洗浄処理を施し、清浄とした基板として、100mm四方、0.7mm厚さのガラス基板(1737材、コーニング社製)を用意した。
ブラックマトリクス及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)着色画素の着色材料には顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合したものである。その組成を下記に示す。尚、分散機としては、ペイントシェーカーを用いた。
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
・赤顔料・・・・・3.5重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・0.6重量部
(C.I.PY139(BASF社製パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・81.9重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・緑顔料・・・・・3.7重量部
(C.I.PG7(大日精化製セイカファストグリーン5316P))
・黄顔料・・・・・2.3重量部
(C.I.PY139(BASF社製パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・青顔料・・・・・4.6重量部
(C.I.PB15:6(BASF社製ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫顔料・・・・・1.4重量部
(C.I.PV23(クラリアント社製フォスタパームRL−NF))
・顔料誘導体・・・・・0.6重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・2.4重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
前処理により洗浄したガラス基板上面に、上述で調製したBM用フォトレジストをスピンコート法で1.2μmの厚さに塗布し、90℃、3分間の条件でプリベイクし、所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベイクし、線幅6μmのBMを有するBM基板を作製した。
次に、赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM基板上にスピンコート法で塗布し、80℃、5分間の条件でプリベイクし、所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、アライメント露光(300mJ/cm2)した。露光には大日本科研製アライナーMA6700を利用した。この際、赤色着色画素の端部が隣り合うBMに乗り上げる量を1.5μmとなるように予め設計したフォトマスクを用いた。引き続き0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベイクし、BMパターンに対して所定の位置に膜厚2.8μmの赤色(R)着色画素パターンを形成した。
続いて、上記赤色(R)着色画素パターンの形成方法と同様の方法及び条件で、膜厚2.6μmの緑色(G)着色画素パターンを形成した。
さらに、上記赤色(R)着色画素パターンの形成方法と同様の方法及び条件で、膜厚2.3μmの青色(B)着色画素パターンを形成した。
以上により、基板上に、BM、赤色着色画素、緑色着色画素、及び青色着色画素から構成される着色層を形成した。上記着色層では、赤色着色画素、緑色着色画素及び青色着色画素の端部がBM上に乗り上げて形成されており、且つ該BM上で隣り合う各着色画素が、オーバーラップすることなく形成されていた。従って着色層上面において、BM上における各着色画素のオーバーラップに起因する段差は発生していなかった。
Oプレートを構成する重合性ネマチック液晶モノマー(メルク社製:商品名「RMM34」)を49重量部、光重合開始剤としてイルガキュアIrg184(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1重量部、溶剤としてトルエン50重量部を混合して樹脂組成物を調製した。
上記基板上に積層形成された着色層の上に、Oプレートの機能を有する位相差制御機能層を作製した。まず配向膜材料としてSE−5291(日産化学社製)を用い、上記着色層の上面に、これをスピンコート法により塗布し、80℃で15分、さらに180℃で60分加熱し、厚さ700Åの配向膜を形成した。次いでこの配向膜にラビング処理を施して水平配向膜を得た。次に、上記配向膜上面に、上記調整した樹脂組成物をスピンコート法により厚さ2.4μmとなるように塗布した。続いて、樹脂組成物が塗布された基板をホットプレート上で100℃、5分間加熱し、残存溶剤を除去するとともに樹脂組成物に含有される液晶モノマーをハイブリッド配向させた。かかる条件で得られる液晶モノマーのハイブリッド配向は、プレチルト角が5度、空気界面側チルト角が40度であった。
続いて、10J/cm2、365nmの条件で紫外線照射を行い、上記ハイブリッド配向した液晶モノマーを重合固定化して位相差制御層を作製した。さらに180℃のホットプレート上で60分間加熱して完全に硬化反応を終了させ、本実施例にかかるカラーフィルタを得た。
上記実施例にて用いた配向膜材料をSE−7992(日産化学社製)に替え、同一の条件によりカラーフィルタを得た。かかる条件で得られる液晶モノマーのハイブリッド配向は、プレチルト角が4.5度、空気界面側チルト角が40度であった。かかるカラーフィルタをクロスニコル下にて顕微鏡で観察した結果を図7(b)に示す。
これにより、0.5度というわずかなプレチルト角の相違によりリバースドメインの発生が劇的に抑えられ、プレチルト角を5度とする本実施例にかかるカラーフィルタでは参考例に比してさらに高い光学補償機能が得られることがわかる。
12、12’ ガラス基板
13 配向膜
14 液晶モノマー
15、15’ 位相差制御層
16 ラビング処理
17 着色層
18 カラーフィルタ
19 ブラックマトリックス
20、20’ 透明電極層
21、21’ 直線偏光板
22 駆動用液晶層
24 駆動用液晶分子
40 LCD
50 ディスクリネーションライン
Claims (5)
- 光透過性を有する基材と、該基材面上に配向膜材料(日産化学社製、商品名SE−5291(商標))からなる配向膜を介して形成され重合性液晶モノマーがハイブリッド配向した状態で重合して固定されてなる構造を有する位相差制御層と、を有し、
重合した重合性液晶モノマーの配向した状態が、基材界面側から空気界面側に向かって立ち上がるハイブリッド配向であって、
前記基材界面側の重合性液晶モノマーの光軸と基材界面とのなすプレチルト角が5度であり、前記空気界面側の重合性液晶モノマーの光軸と空気界面とのなすチルト角が20度乃至90度であり、
重合性液晶モノマーが、下記一般式(1)で表される重合性ネマチック液晶モノマーである、ことを特徴とする光学素子。
(ただし、Y1とY2のいずれかまたは両方は、この基を介して重合を引き起こすことのできる反応性不飽和二重結合を含む基であり、X1およびX2は、直接結合、エーテル基、エステル基もしくはカーボネート基、またはこれらの少なくとも一つを含む基である。) - 位相差制御層がλ/4板の機能を有する請求項1に記載の光学素子。
- 色パターンを配列した着色層を有する請求項1または2に記載の光学素子。
- 請求項1から3のいずれかに記載の光学素子と、駆動用液晶層とを有する液晶表示装置。
- 駆動用液晶層の両面側にそれぞれ前記光学素子を備えることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
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