JP2008254937A - 目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法 - Google Patents

目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法 Download PDF

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修生 大矢
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Abstract

【課題】 本発明は、複雑な形状や穴あき形状など所定の大きさかつ所定の形状の炭素質フィルムを容易にしかも多量に製造できる方法を提供することを課題とした。
【解決手段】 本発明は、所定形状の前駆体フィルム(a2)から目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得るための製法に関するものであり、
前駆体フィルム(a1)の少なくとも2方向の長さ(A1,A2,・・・)を測定する工程(2)、
工程(3):前駆体フィルム(a1)を炭化させて炭素質フィルム(b1)を製造する工程(3)、
工程(4):炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2,・・・)を前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,A2)を測定した位置で測定し、数式(1)より収縮度(X1,X2,・・・)を求める工程(4)、
工程(5):目的とする形状の炭素質フィルム(b2)に収縮度(X1,X2,・・・)を乗じてできる、炭素質フィルム(b2)と相似形状の前駆体フィルム(a2)を作製する工程(5)、
工程(6):前駆体フィルム(a2)を工程(3)と略同じ条件で炭化させて目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得る工程(6)、
とを有することを特徴とする目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミドフィルムなどの前駆体フィルムから所定形状の炭素質フィルムを製造する方法、及びこれらの製法から得られる所定形状の炭素質フィルムを提供することである。
炭素質フィルムとしては、特許文献1には、引張り強さが5.0kgf/mm以上、引張り伸度が1.0%以上で、且つ炭素含有率が99重量%以上の黒鉛質フィルムが開示され、さらに炭素質素材で出来た立体物の製造例が開示されています。
特開平8−143307号公報
ポリイミドフィルムなどより得られる炭素質フィルムは、優れた耐熱性、耐薬品性、電気伝導性等から、電極材料、発熱体、断熱材等の構造材等の工業用材料に幅広く使用されています。
しかし炭素質フィルムは、折り曲げ加工や切断加工などの加工時に割れや欠けが発生しやすく加工特性が悪く利用しにくいフィルム素材であります。
本発明は、複雑な形状や穴あき形状など所定の大きさかつ所定の形状の炭素質フィルムを容易にしかも多量に製造できる方法を提供することを課題とした。
本発明は、所定形状の前駆体フィルム(a2)から目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得るための製法に関するものであり、
目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)と略同じ又は相似形状の前駆体フィルム(a1)を作製する工程(1)、
前駆体フィルム(a1)の少なくとも2方向の長さ(A1,A2,・・・)を測定する工程(2)、
前駆体フィルム(a1)を炭化させて炭素質フィルム(b1)を製造する工程(3)、
炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2,・・・)を前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,A2)を測定した位置で測定し、数式(1)より収縮度(X1,X2,・・・)を求める工程(4)、
目的とする形状の炭素質フィルム(b2)に収縮度(X1,X2,・・・)を乗じてできる、炭素質フィルム(b2)と相似形状の前駆体フィルム(a2)を作製する工程(5)、
前駆体フィルム(a2)を工程(3)と略同じ条件で炭化させて目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得る工程(6)、
とを有することを特徴とする目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法に関する。
Figure 2008254937
上記数式(1)において、
2本の長さを測定した場合はX1及びX2を算出し、
3本の長さを測定した場合はX1,X2及びX3を算出し、
4本以上では、X1=A1/B1の式に基づいて、X4、・・・を算出することが出来る。
本発明の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法の好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)工程(2)において、少なくとも直交している2方向の長さを測定すること。
2)相似形状保持率Sが、1.00〜1.10の範囲であること。
相似形状保持率Sは、数式(2)により算出することが出来る。
Figure 2008254937
3)前駆体フィルムは、ガラス転移温度が250℃以上の高分子を主成分とすること、好ましくは多孔質状であること。
4)前駆体フィルムは、ポリイミドを主成分とすること、好ましくは前駆体フィルムは、sBPDA及びPMDAより選ばれる成分を少なくとも1つ以上を含む酸性分と、PPD及びDADEより選ばれる成分を少なくとも1つ以上を含むジアミン成分とを含む成分より得られるポリイミドであること。
5) 前記工程(3)及び工程(6)は、
前駆体フィルムを最高温度700〜3200℃の範囲で炭化させて炭素質フィルムを製造する工程、であること、
好ましくは、少なくとも600〜1000℃の温度範囲において、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向の応力が0〜2×10−3MPaの範囲であること、
さらに好ましくは、前駆体フィルムを最高温度700〜3200℃の範囲で処理して炭化させ、
かつ少なくとも600〜1000℃の温度範囲において、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向の応力が0〜2×10−3MPaの範囲で行い、あること。
6)前記工程(3)及び工程(6)は、0.1℃〜40℃/分の昇温速度範囲で行なうこと。
本発明は、上記の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法より製造された炭素質フィルムに関する。
本発明は、所定形状に切断する操作、穴あけ操作及び削り操作などの加工操作を炭素質フィルムに行なうことなく得られる所定形状の炭素質フィルムに関する。
本発明により、複雑な形状や穴あき形状など所定の大きさかつ所定の形状の炭素質フィルムを容易にしかも多量に製造できる。
本発明により、炭素質フィルムより所定形状に切断する操作や穴あけ操作、削り操作などの加工が不要になり生産効率が向上する。
本発明の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法は、所定形状の前駆体フィルム(a2)から目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得るための製法に関するものであり、
目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)と略同じ又は相似形状の前駆体フィルム(a1)を作製する工程(1)、
前駆体フィルム(a1)の少なくとも2方向の長さ(A1,A2,・・・)を測定する工程(2)、
前駆体フィルム(a1)を炭化させて炭素質フィルム(b1)を製造する工程(3)、
炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2,・・・)を前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,A2)を測定した位置で測定し、数式(1)より収縮度(X1,X2,・・・)を求める工程(4)、
目的とする形状の炭素質フィルム(b2)に収縮度(X1,X2,・・・)を乗じてできる、炭素質フィルム(b2)と相似形状の前駆体フィルム(a2)を作製する工程(5)、
前駆体フィルム(a2)を工程(3)と略同じ条件で炭化させて目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得る工程(6)、
とを有することを特徴とする目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法である。
Figure 2008254937
本発明の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法の一例を、工程別に説明する。
目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)と略同じ又は相似形状の前駆体フィルム(a1)を作製する工程(1)について説明する。
前駆体フィルム(a1)は、目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)と略同じ又は相似形状とすること、好ましくは目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)よりも大きな相似形状とすること、さらに好ましくは5%以上、さらに10%以上、特に20%以上大きな相似形状とすることにより、精度が向上する。
まず、前駆体フィルム(a1)を、目的とする形状の炭素質フィルム(b2)と同じ大きさ(ほぼ同じ大きさを含む)かそれよりも大きい形状(ほぼ相似形を含む)にカッター、はさみ、切断部を有する型などのフィルムを切断可能な器具を用いて、1枚、又は複数枚を逐次に或いは同時に切断する。フィルムを複数枚重ねて同時に切断することにより、精度が向上する。
前駆体フィルム(a1)の2方向の長さ(A1,A2)を測定する工程(2)について詳しく記載する。
工程(1)で得られるフィルムを平らな所に置き、定規、ノギスなどの長さを測定可能な器具を用いて、少なくとも2方向の長さを測定する。長さを測定する方向は任意でいいが、最初に測定した方向に対して、2番目は30°〜90°の方向、好ましくは45°〜90°の方向、さらに好ましくは60°〜90°の方向、特に75°〜90°の方向に対して行なうこと、特に直交していることが、精度が向上するために好ましい。
またフィルムの長さを測定する場合には、フィルムの長い所を選択して行なうことが好ましいが、形状により測定のしやすい方向でなるべく長さの長い方向を測定することにより精度を向上させることができる。
前駆体フィルムの長さ(A1、A2)は、1枚の場合はそのまま、複数の場合にはその平均値とする。前駆体フィルム(a)は、好ましくは2枚以上、さらに3枚以上、特に5枚以上を用いることが精度を向上させるために好ましい。
前駆体フィルム(a1)の長さを3方向以上を測定した場合には、上記(A1,A2)に、A3、・・を追加すればよい。
図1(a)から図1(f)に、前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,A2)又は(A1,A2,A3,A4)を測定する方法の一例を示す。
図1(a)は、円の2方向の長さの測定の一例を示している。長さは円の中心を通るようにして測定することがよい。
図1(b)及び図1(c)は、四角形の2つの長さの測定の一例を示している。正方形、長方形及びひし形などの正多角形状では、長さは重心を通るようにして測定することがよい。
図1(d)及び図1(e)は、四角形の穴が開いた四角形に4方向の長さの測定の一例を示している。図1(d)及び図1(e)では、外周部を2方向、内周部を2方向測定している。正方形、長方形及びひし形などの正多角形状では、長さは重心を通るようにして測定することがよい。
図1(d)及び図1(e)はなどの内部に穴が開いている場合には、外周部の長さを少なくとも2方向以上測定し、内周部又は複数の穴が開いている場合には各穴全てについて少なくとも2方向以上測定することが精度を向上させるために好ましい。
図1(f)は、星型の2つの長さの測定の一例を示している。
図1(a)から図1(f)の長さ方向(A1)と長さ方向(A2)とは直交している。また図1(d)と図1(e)の長さ方向(A3)と長さ方向(A4)とは直交している。
前駆体フィルム(a)を炭化させて炭素質フィルム(b1)を製造する工程(3)について詳しく記載する。
工程(3)の前駆体フィルム(a)の炭化方法は、前駆体フィルムを平滑な炭素板に挟み、不活性ガス雰囲気下、0.1℃〜40℃/分、好ましくは0.5℃〜20℃/分、さらに好ましくは0.8℃〜10℃/分、特に好ましくは1℃/分〜10℃/分の昇温速度で、700〜3200℃の温度範囲で行なう。特に前駆体フィルム(a2)の熱分解反応が著しく進行する600℃から1000℃までの温度範囲では、昇温速度は0.1℃〜10℃/分、さらに0.5℃〜8℃/分、特に1℃〜6℃/分が望ましく、割れや切れが発生しがたい炭素質フィルムを得るために好適である。
特に、600〜1000℃の温度範囲では、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向に、熱分解に伴うフィルムの体積収縮を阻害しない又は阻害しにくい応力をかけることにより、平滑性を保持し割れや切れが発生し難い炭素質フィルムを得ることのために好ましく、また熱分解に伴いフィルムが体積収縮する際にフィルムを挟む板との摩擦が大きくなりすぎることに起因してフィルムがひび割れを起こす危険性があるので好ましくない。
特に、600〜1000℃の温度範囲では、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向にかける応力としては、例えば、好ましくは2×10−3MPa以下、より好ましくは1×10−4MPa以下、さらに好ましくは1×10−7MPa以上から1×10−5MPa以下、特に好ましくは5×10−7MPa以上から1×10−5MPa以下の範囲で行なうことが、平滑性を保持し割れや切れが発生し難い炭素質フィルムを得ることのために好ましく、上記範囲を超える応力では、熱分解に伴いフィルムが体積収縮する際にフィルムを挟む板との摩擦が大きくなりすぎることに起因してフィルムがひび割れを起こす危険性があるので好ましくない。
炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2)を前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,B2)を測定した位置で測定し、数式(1)より収縮度(X1,X2)を求める工程(4)では、炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2)の測定は、工程(1)の(A1,A2)と同様にして行なう。炭素質フィルム(b1)の長さB1は、前駆体フィルム(a1)のA1測定したところで行い、炭素質フィルム(b1)の長さB2は、前駆体フィルム(a1)のA2測定したところで行う必要がある。
相似形状保持率Sが、1.00〜1.10、好ましくは1.00〜1.08、より好ましくは1.00〜1.05、さらに好ましくは1.00〜1.02の範囲であることが、形状精度のよい炭素質フィルム(b2)を得ることができるために好ましい。
相似形状保持率Sは、数式(2)により算出することができる。
Figure 2008254937
工程(5)は、目的とする形状の炭素質フィルム(b2)の大きさに収縮度(X1,X2)を乗じてできる炭素質フィルム(b2)と相似形状の前駆体フィルム(a2)を作製する。
目的とする形状の炭素質フィルム(b2)にB1及びB2を測定した方向に、B1方向には収縮度(X1)を乗じ、B2方向には収縮度(X2)を乗じて、前駆体フィルム(a2)を作成する。
工程(6)の炭化条件は、工程(3)と同じ条件で行う。つまり工程(3)で前駆体フィルム(a)を炭化したと同じ条件で、前駆体フィルム(b)を炭化することが好ましい。その結果、目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を容易に得ることが出来る。
一度、工程1〜4によって収縮度を求めれば、以降は工程5、6を繰り返すことで所望の炭素質フィルムを容易に再現良く大量に作製することが出来る。
本発明の製造方法では、炭素質フィルム(b2)の形状に特に制限は無く、例えば、円、楕円などの円形状、三角、四角などの多角形状、少なくとも1箇所穴の開いているもの、鋭角な部分(鋭角とは、角度50°以下、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下、さらに好ましくは30°以下の部分)を有するもの、など任意形状のものを製造することが出来る。
本発明における炭素質フィルムとは、構成元素の80%以上が炭素元素からなる物質であり、かつ不活性ガス雰囲気下で少なくとも600℃以下の温度では、物理的化学的変化を起こさずに安定したフィルム状もしくはシート状の炭素材料をいう。
本発明における炭素質フィルムの前駆体フィルムの素材には、工程(1)〜(6)の処理を行なうことで相似形状の炭素質フィルムが得られれば特に制限は無いが、その工程の特徴から、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは270℃以上、好ましくは280℃以上、好ましくは300℃以上、好ましくは320℃以上、好ましくは330℃以上、さらに好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上、特に450℃以上である熱可塑性高分子や熱硬化性高分子などの素材が主成分であることが好ましい。また、明確な融点を有さずに固相で炭素化が可能な熱可塑性高分子や熱硬化性高分子などの素材が特に好ましい。
素材として、特にポリイミドを好適に挙げることができる。
前駆体フィルムの素材のガラス転移温度が上記の温度未満であると、熱分解開始前に、フィルムが軟化して形状が変化してしまい相似形状が保持できなくなる可能性があり、また再現性も損なわれる為に好ましくない。
前駆体フィルムの厚みは、特に制限は無いが、熱分解時に発生する各種分解ガスがフィルムの外に速やかに放出される厚みであることが好ましい。分解ガスが速やかにフィルムの外に放出されない厚みであると、放出ガスがフィルム内部に溜まることによりフィルムが内部から変形、破壊する場合がある。この観点から、フィルムが物質透過性を有する多孔質フィルムであれば速やかに分解ガスが放出されるので特に好ましい形態である。
前駆体フィルムの厚みは、例えば1×10−3〜20mm、好ましくは5×10−3〜10mm、さらに5×10−3〜1mm、特に好ましくは1×10−2〜100μmの範囲のものを用いることが出来る。
前駆体フィルムは、通常のフィルム形状であればよく、多孔質フィルムなどを用いることが出来る。多孔質フィルムとしては、特開平11−310658号公報、特開2003−138057号公報など公知の方法で得ることが出来る。
多孔質フィルムとしては、両表面に緻密層がなく、表面に多数の孔を有し、断面が均質な多孔膜を好ましく用いることができる。
本発明における炭素質フィルムの前駆体フィルムの素材としては、芳香族ポリイミドなどのポリイミド、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどのポリフェニレン類、ポリエーテルケトン、などの熱可塑性高分子、特に芳香族ポリイミドなどのポリイミド、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどのポリフェニレン類、ポリエーテルケトンなど、ガラス転移温度が250℃以上の熱可塑性高分子を挙げることが出来る。
前駆体フィルムの素材として用いるポリイミドとしては、公知のポリイミド、好ましくはガラス転移温度が250℃以上のポリイミド、さらに好ましくはガラス転移温度が250℃以上の芳香族ポリイミドを用いることが出来る。
ポリイミドの合成原料であるテトラカルボン酸ニ無水物としては、一般式(3)に示す芳香族テトラカルボン酸ニ無水物、好ましくは一般式(3’)に示す芳香族テトラカルボン酸ニ無水物を主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で一般式(3)に示す芳香族テトラカルボン酸ニ無水物を除く公知のテトラカルボン酸ニ無水物を用いることが出来、好ましくはテトラカルボン酸ニ無水物中、一般式(3)に示す芳香族テトラカルボン酸ニ無水物、好ましくは一般式(3’)に示す芳香族テトラカルボン酸ニ無水物を50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を用いることが好ましい。
Figure 2008254937
(但し、一般式(3)において、Xは一般式(4)で示す群から選択された4価の基を示す。)
Figure 2008254937
(但し、一般式(3)において、Rは、一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。)
Figure 2008254937
Figure 2008254937
(但し、一般式(3’)において、Xは一般式(4’)で示す群から選択された4価の基を示す。)
Figure 2008254937
芳香族テトラカルボン酸ニ無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン―3,4,3’,4’―テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙ることができる。これらは単独でも、2種以上混合しても用いることができる。
テトラカルボン酸ニ無水物としては、一般式(3)に示す化合物以外に、脂肪族や脂環式或いはシリコン含有のテトラカルボン酸ニ無水物を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
ジアミンは、ベンゼン環を1〜4個有する芳香族ジアミン化合物を好適に用いることができ、一般式(1)に示す芳香族ジアミン、好ましくは一般式(1’)に示す芳香族ジアミンを主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で一般式(1)に示す芳香族ジアミンを除く公知のジアミンを用いることが出来、好ましくはジアミン中、一般式(1)に示す芳香族ジアミン、好ましくは一般式(1’)に示す芳香族ジアミンを50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を用いることができる。
Figure 2008254937
(但し、一般式(1)において、Yは一般式(2)で示す群から選択された2価の基を示す。)
Figure 2008254937
(但し、一般式(2)において、R、R、R及びRは、直結、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−CH−,−C(CH−及び−C(CF−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−H,−F,−Cl,−Br,−I,−CN,−OCH3,−OH,−COOH,−CH,−C,又は、−CFを示す。
、R、R及びR5は、それぞれ独立して、同一であっても、異なってもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なってもよい。)
Figure 2008254937
(但し、一般式(1’)において、Yは一般式(2’)で示す群から選択された2価の基を示す。)
Figure 2008254937
(但し、一般式(2’)において、Rは、直結、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、は、−H、−CH又は、−OCHを示す。Rは、それぞれ独立して、同一であっても、異なってもよい。
ジアミンの具体例として、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2−メチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
ジアミンとしては、一般式(3)に示す化合物以外に、脂肪族や脂環式或いはシリコン含有のジアミンを、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
前駆体フィルムの素材としては、上記一般式(1)、好ましくは一般式(1’)のジアミンと上記一般式(3)、好ましくは一般式(3’)の酸二無水物とから得られるガラス転移温度250℃以上、好ましくは280℃以上の芳香族ポリイミドを主成分とするフィルムが好ましく、特に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記する。)及び/又はピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと略記する)を酸成分の主成分とするポリイミドは、s−BPDAやPMDAの剛直性を反映して熱分解時の形状保持性に優れるので好ましい。さらに、s−BPDA及びPMDAから選ばれる酸成分とp−フェニレンジアミン(以下、PPDと略記する)及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADEと略記する)から選ばれるジアミン成分を主成分として得られるポリイミドのフィルムは、ポリイミド分子同士が配向する為にベンゼン環が平行に積層された秩序構造の比率が高いことから、炭素化した際の重量収率が高く、さらにガラス転移温度が高く、ガラス転移温度と熱分解温度が近接しているために特に好ましい。
前駆体フィルムとして用いることができるポリイミドは、テトラカルボン酸ニ無水物とジアミンを用いて公知の方法により反応させたポリイミド、或いはテトラカルボン酸ニ無水物、ジアミンを用いて公知の方法により反応させて得ることが可能である。
ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミド酸、又はポリイミドのモノマー成分としては、テトラカルボン酸ニ無水物としてピロメリット酸ニ無水物(以下、PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物等が代表として挙げられる。芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン(以下、PPD)、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、o−トルイジン、4、4‘−ジアミノジフェニルメタン、4、4‘−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
ポリイミドは、ポリイミド前駆体より、化学的或いは熱的にイミド化して製造することができ、またテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから直接ポリイミド溶液を得ることも出来る。
ポリイミド前駆体の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、実質的に等モル量を有機溶媒中に溶解させて反応させ、制御された温度条件下で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重合反応が(ほぼ)完了するまで攪拌することによって製造することができる。これらのポリイミド前駆体溶液は通常1〜35wt%、好ましくは5〜30wt%、さらに7〜25wt%の濃度で得ることができ、この範囲の濃度では、適当な分子量と適当な溶液粘度を得ることができる。
ポリイミド前駆体の重合方法としては公知の方法を用いることができる。
ポリイミド前駆体を与えるジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを、それぞれ有機溶媒中で0〜100℃、好ましくは5〜50℃の温度で重合させてポリイミド前駆体の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)とし、必要ならポリイミド前駆体の溶液を複数混合して、ポリイミド前駆体溶液を塗膜化或いはフィルム化し、乾燥・イミド化・加熱乾燥(キュア)することによって、ポリイミドを製造することができる。この加熱乾燥の最高加熱処理温度は、200〜600℃、さらに250〜550℃、特に300〜500℃の範囲であることが好ましい。
ポリイミド前駆体を製造する方法としては、公知の方法を用いることができ、その一例として、
1)有機溶媒中で、カルボン酸二無水物成分とジアミン成分とをそれぞれ等モル量反応させる方法、場合によっては酸過剰又はジアミン過剰にしてもよい、
2)有機溶媒中でカルボン酸二無水物成分と一般式(1)で示すジアミン成分とをそれぞれ略等モル量反応させポリイミド前駆体溶液Aを製造し、有機溶媒中でカルボン酸二無水物成分と一般式(1)で示すジアミン以外のジアミン成分とをそれぞれ略等モル量反応させポリイミド前駆体溶液Bを製造し、ポリイミド前駆体溶液Aとポリイミド前駆体溶液Bとを混合する方法、必要に応じて成さらに重合させてもよく、場合によってはどちらかを酸過剰にし、他方をジアミン過剰にしてもよい、
などを挙げることができる。
ポリイミド前駆体のアミン末端を封止する必要がある場合には、ジカルボン酸無水物、例えば無水フタル酸及びその置換体(例えば3−メチル又は4−メチルフタル酸無水物)、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその置換体、無水コハク酸及びその置換体など、例えば無水フタル酸の少量を添加してもよい。
またポリイミド前駆体溶液は、イミド化促進の目的で、溶液中にイミド化剤を添加することができる。例えば、イミダゾ−ル、1−メチルイミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリイミド前駆体に対して0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%の割合で使用することができる。これらにより比較的低温でイミド化を完了することができる。
本発明のポリイミドにおいて、カルボン酸二無水物成分と特定のジアミン成分とがブロック的な構造を有してもよいし、ランダムな構造を有してもよい。
ポリイミド前駆体を製造に使用する有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタムなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前駆体フィルムとして用いることができるポリイミドは、多孔質フィルムを用いることができる。
ポリイミドの多孔質フィルムとしては、上記ポリイミドと同じ組成のものを用いることができる。
芳香族ジアミンとしては具体的には、パラフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADE)、3、3’−ジメチル−4、4‘−ジアミノフェニルエーテル等が挙げられる。芳香族ジアミン成分としては、ジアミノピリジンであってもよく、具体的には2,6−ジアミノピリジン、3,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン等が挙げられる。 テトラカルボン酸ニ無水物としては、好適にはビフェニルテトラカルボン酸成分が挙げられ、例えば、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物(以下、s−BPDA)が好ましいが、2,3,3’、4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(以下、a−BPDA)又は2,3,3’、4−又は3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、或いは2,3,3’、4’−又は3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の塩またはそれらのエステル化誘導体であってもよい。ビフェニルテトラカルボン酸成分は、上記の各ビフェニルテトラカルボン酸類の混合物であってもよい。また、上記のテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル、ブタンテトラカルボン酸であってもよい。或いはそれらの酸無水物、塩又はエステル化誘導体等のテトラカルボン酸類を、全テトラカルボン酸成分に対して10モル%以下、特に5モル%以下の割合で置き換えてもよい。
ポリイミド前駆体の重合溶媒として用いる有機溶媒は、パラクロロフェノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノ−ル、クレゾ−ルなどが挙げられる。前記のポリイミド前駆体は、前記有機溶媒に0.3〜60重量%、好ましくは1%〜30重量%の割合で溶解してポリイミド前駆体溶液に調製される(重合溶液をそのまま用いても良い)。ポリイミド前駆体の割合が0.3重量%より小さいと多孔質膜を作製した際のフィルム強度が低下するので適当でなく、60重量%より大きいと均一な溶液になりにくいため、上記範囲の割合が好適である。また、調製されたポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は10〜10000ポイズ、好ましくは40〜3000ポイズである。溶液粘度が10ポイズより小さいと原料溶液を流延した後に塗布厚みの斑が生じるので好ましくなく、10000ポイズより大きいと原料溶液をフィルム状に流延することが困難となるので、上記範囲が好適である。
以下に、上記方法で得られたポリイミド前駆体またはポリイミド溶液を用いて多孔質膜を得る方法の一例を示す。
ポリイミド前駆体またはポリイミドのポリマ−溶液を基板の上に流延し、流延物上に可溶性溶媒もしくは非溶媒からなる保護溶媒層を積層し、ポリマ−溶液と保護溶媒層とが完全には混じり合わずに濃度勾配を有する状態を保ちつつ、積層溶液物を凝固液に浸漬する。前記のポリマ−溶液を流延する基板としては、ガラス基板、ステンレス基板などの平滑な基板が挙げられる。前記の流延物上に積層する保護溶媒層としては、ポリイミド前駆体またはポリイミドの溶媒であってもよく非溶媒であってもよい。
例えば、保護溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジグライム、トリグライムまたはそのいずれかの混合物を主成分とする溶媒から適宜選ぶことができる。前記の方法におけるポリマ−溶液と保護溶媒層とが完全には混じり合わずに濃度勾配を有した状態を保ちつつ、積層液を凝固液に浸漬するためには、積層液を、流延物上に保護溶媒層を積層した後0.5秒以上600秒以内に凝固液に浸漬することが好ましい。
前記の凝固液としては、ポリイミド前駆体またはポリイミドの非溶媒であれば特に制限はなく、たとえば水、メタノール、イソプロパノールなどが好適である。
前記の方法において、基板上に積層された流延物と保護溶媒層を積層した一体物を基板ごと凝固液に浸漬してポリアミック酸またはポリイミドを析出させることが好ましい。
次いで、基板と一緒に水中に浸漬し、基板上に析出したポリアミック酸またはポリイミド膜を基板から剥離し、乾燥した後、熱処理してポリイミド多孔質膜を得ることができる。
前記の熱処理は、熱イミド化の場合、乾燥されたポリイミド前駆体を280〜500℃に昇温して熱イミド化を行うことが好ましい。昇温は、段階的に昇温してもよいし、一段で所定の温度に昇温されてもいい。大気中、好ましくは、不活性雰囲気中で、280〜500℃で5〜240分間保持すればよい。その後、室温にまで降温して、ポリイミド多孔質膜を得ることができる。
上記の方法によれば、両面に空孔を有し、その少なくとも片方の面の表面開口率が50%以上であり、膜の表面から裏面までの貫通パスの径の平均値が0.01〜0.5μm、好適には0.03〜0.2μmであるポリイミド多孔質膜が得られる。
本発明の製造法より得られる炭素質フィルムは、電極材料、導電材料、発熱体、構造材、断熱材、耐熱シール材、X線用部品、音響材料、電磁波シールド材料、生体適合材料、触媒、電子材料等に広く使用でき、工業的用途は多く有用なものである。
本発明の製造方法を用いることにより、炭素質フィルムより所定形状に切断する操作、穴あけ操作、削り操作などの炭素質フィルムの加工操作を行なうことなく、直接炭化前の前駆体フィルムより、所定形状の炭素質フィルムを製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
[測定・評価]
1)寸法変化の測定:
前駆体フィルム及び炭素質フィルム各々について、図1に示す部位の長さを測定した。測定は平滑な板状に置かれた試料片に定規をあて目盛りを読み取ることで測定した。測定は5個以上のフィルムについて行い、平均値を算出して測定値とした。
2)ガラス転移温度の測定:
前駆体フィルムの固体動的粘弾性を測定し、得られる損失正接曲線の極大点をガラス転移温度とした。
3)ガーレー値:
JIS・P8117に準じて測定した。測定装置としてB型ガーレーデンソメ−タ−(東洋精機社製)を使用した。試料の膜を直径28.6mm、面積645mmの円孔に締付け、内筒重量567gにより、筒内の空気を試験円孔部から、筒外へ通過させる。空気100ccが通過する時間を測定し、透気度(ガーレー値)とした。測定は5個以上のフィルムについて行い、平均値を算出して測定値とした。
[ガラス転移温度]
・参考例1、参考例4のポリイミド:340℃以上。
・参考例2、参考例5のポリイミド:、285℃〜290℃。
・参考例3のポリイミド:、280℃。
・参考例6のポリイミド:340℃以上。
・参考例7のポリイミド:340℃以上。
・参考例8のポリイミド:340℃以上。
・参考例9のポリイミド:350℃。
[参考例1]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてPPDを用い、PPDに対するs−BPDAのモル比が0.999で且つ該モノマ−成分の合計重量が7重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は750ポイズであった。鏡面研磨したSUS板に前駆体溶液を一定の厚みで流延塗布し、その後、トリグライム5ccを表面に均一に塗布した。アセトンが貯められた凝固液槽中に前駆体溶液塗布面が下向きとなる様にSUS板を進入させ、約20分間保持した。引き続き、液面が上向きとなる様に水槽に差し入れ、約15分間浸漬させた。SUS基板上に析出して得られたポリイミド前駆体多孔質膜をSUS板から剥離することでポリイミド前駆体多孔質膜を得た。その後、ヘキサン溶媒槽に約2時間浸漬させた後、空気乾燥させた。
ポリイミド前駆体多孔質膜は、膜を支えるに十分な間隔で並ぶピンテンタ−により固定して幅方向と長尺方向の収縮を抑制するようにして、温度100℃の乾燥槽に5分間放置し、続いて400℃の熱処理炉に30分間保持することで熱イミド化を行い両表面に緻密層のない、断面が均質なポリイミド多孔質膜を得た。膜厚みは平均120μm、ガーレー値は306秒/空気100ccであった。
[実施例1]
参考例1で得られたポリイミド多孔質膜をカッターなどで切断し、一辺30mmの正四角片5枚、直径39mmの円型片5枚、図1に示されるようなA1=38mm、A2=28mmの星型片5枚、一辺30mm且つ一辺10mmのくり抜き四角片5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に挟む。このとき、フィルム片同士は重ならない様各フィルム片を配置し、表面が平滑な炭素板(360×260×5mm、重量約850g)を1枚載せる。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaである。窒素ガス雰囲気下で室温より10℃/分で1400℃まで昇温させた後、この温度で1時間保持させた。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、5つのフィルムの大きさは目視で同じであった。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム50mm角片を作製するために、参考例1で得られたポリイミド多孔質膜をカッターで切断する。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺60mmの正方形片5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置する。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaである。実施例1に記載の焼成条件に従い、炭素質フィルムを作製した。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、5つのフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺50mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例2]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてDADEを用い、DADEに対するs−BPDAのモル比が0.999で且つ該モノマ−成分の合計重量が7重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は700ポイズであった。研磨したSUS板に流延塗布し、更にトリグライム5ccを表面に均一に塗布した。メタノールが貯められた凝固液槽中に前駆体溶液塗布面が下向きとなる様にSUS板を進入させ、約20分間保持した。引き続き、液面が上向きとなる様に水槽に差し入れ、約15分間浸漬させた。SUS基板上に析出して得られたポリイミド前駆体多孔質膜をSUS板から剥離することでポリイミド前駆体多孔質膜を得た。その後、ヘキサン溶媒槽に約2時間浸漬させた後、空気乾燥させた。ポリイミド前駆体多孔質膜は、膜を支えるに十分な間隔で並ぶピンテンタ−により固定して幅方向と長尺方向の収縮を抑制するようにして、温度100℃の乾燥槽に5分間放置し、続いて320℃の熱処理槽に30分間入れ、熱イミド化をおこない平面性の優れた両表面に緻密層のない、断面が均質なポリイミド多孔質膜を得た。膜厚みは平均90μmであった。ガーレー値は264秒/空気100ccであった。
[実施例2]
参考例2で得られたポリイミド多孔質膜を実施例1と同様の形状、寸法に切断した。
フィルム片を炭素板に挟み、電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。
炉内より取り出した炭素質フィルムは、外観上は前駆体フィルムと相似の形状を保持していた。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム直径40mm丸型片を作製するために、参考例2で得られたポリイミド多孔質膜をカッターで切断する。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、直径48mm丸型片5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置する。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せる。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaである。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムの内、3枚は割れていた。残り2枚はいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、その2枚のフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、直径40mmの丸形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例3]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分として1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE−Q)を用い、TPE−Qに対するs−BPDAのモル比が0.999で且つ該モノマ−成分の合計重量が7重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は600ポイズであった。以下、参考例2と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。膜厚みは平均40μm、ガーレー値は35秒/空気100ccであった。
[実施例3]
得られたポリイミド多孔質膜から実施例1と同様の操作を行い丸型及び四角のフィルム片を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に挟み、実施例1と同様の処理を施すことで炭素質フィルムを得た。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺40mm正方形片を作製するために、参考例3で得られたポリイミド多孔質膜をカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.3、X2=1.3であることを利用し、一辺52mm正方形片のポリイミド多孔質膜5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムの内、3枚は割れていた。残り2枚はいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、その2枚のフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺40mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例4]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてPPDを用い、PPDに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1600ポイズであった。ガラス板に流延塗布した。真空脱砲後、80℃10分、100℃10分、115℃5分、130℃10分それぞれ熱処理を行い、室温まで冷却後、ガラス板より剥がし、ポリイミド前駆体フィルムを得た。
次いで得られたポリイミド前駆体フィルムは、膜を支えるに十分な間隔で並ぶピンテンタ−により固定して幅方向と長尺方向の収縮を抑制するようにして、150℃10分、250℃10分、350℃10分それぞれ加熱し、400℃まで昇温させた後、室温まで冷却させて、熱イミド化をおこない平面性の優れた膜厚みが平均50μmのポリイミドフィルムを得た。
[実施例4]
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、一辺30mmの四角片5枚、直径39mmの円型片5枚、図1に示されるようなA1=38mm、A2=28mmの星型片5枚、一辺30mm且つ一辺10mmのくり抜き四角片5枚を準備した。
各フィルム片を炭素板に挟み、電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は2×10−4MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で1400℃まで昇温させた後、この温度で1時間保持させた。続いて室温まで徐冷させた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定した。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。四角片5枚はいずれも25mm四角片、円型片5枚はいずれも32mm、星型は図1の形式に従い、B1=32mm、B2=24mmが得られ、くり抜き四角片5枚は一辺25mm且つ一辺8.3mmであった。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺55mm正方形片を作製するために、参考例4で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺66mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約2×10−4MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で1400℃まで昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、いずれのフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺50mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例5]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてDADEを用い、DADEに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1300ポイズであった。ガラス板に流延塗布した。真空脱砲後、80℃30分、100℃15分、130℃12分それぞれ熱処理を行い、室温まで冷却後、ガラス板より剥がし、ポリイミド前駆体フィルムを得る。
次いで得られたポリイミド前駆体フィルムは、膜を支えるに十分な間隔で並ぶピンテンタ−により固定して幅方向と長尺方向の収縮を抑制するようにして、150℃10分、250℃10分、350℃10分それぞれ加熱し、室温まで冷却させて、熱イミド化をおこない平面性の優れた膜厚みが平均80μmのポリイミドフィルムを得た。
[実施例5]
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、一辺30mmの四角片5枚、図1に示されるようなA1=37mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
各フィルム片を炭素板に挟み、電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は8×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温させた後、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持させた。続いて室温まで徐冷させた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。四角片5枚はいずれも24mm四角片、星型は図1の形式に従い、B1=29mm、B2=21mmが得られた。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。
炭素質フィルム一辺44mm正方形片を作製するために、参考例5で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.3、X2=1.3であることを利用し、一辺57mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約8×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺44mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例6]
テトラカルボン酸成分としてPMDAを、ジアミン成分としてDADEを用い、DADEに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1400ポイズであった。ガラス板に流延塗布した。真空脱砲後、80℃30分、100℃15分、130℃12分それぞれ熱処理を行い、室温まで冷却後、ガラス板より剥がし、ポリイミド前駆体フィルムを得る。
次いで得られたポリイミド前駆体フィルムは、膜を支えるに十分な間隔で並ぶピンテンタ−により固定して幅方向と長尺方向の収縮を抑制するようにして、150℃10分、250℃10分、350℃10分それぞれ加熱し、400℃まで昇温させた後、室温まで冷却させて、熱イミド化をおこない平面性の優れた膜厚みが平均80μmのポリイミドフィルムを得た。
[実施例6]
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、図1に示されるようなA1=37mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
各フィルム片を炭素板に挟み、電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温させた後、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持させた。続いて室温まで徐冷させた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。炭化後の星型の寸法は図1の形式に従い、B1=29mm、B2=21mmであった。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺36mm正方形片を作製するために、参考例6で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.3、X2=1.3であることを利用し、一辺47mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺36mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例7]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分として2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン(以下、DPX)を用い、DPXに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1400ポイズであった。参考例6と同様の製法で平面性の優れたポリイミドフィルムを得た。膜厚みは平均40μmであった。
〔実施例7〕
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、図1に示されるようなA1=36mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
焼成条件は実施例6に従い、該炭素質フィルムを得た。5枚のうち、2枚がひび割れていた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。炭化後の星型の寸法は図1の形式に従い、B1=29mm、B2=21mmであった。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。
炭素質フィルム一辺40mm正方形片を作製するために、参考例7で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺48mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺40mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例8]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分として3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(以下、o−tol)を用い、o−tolに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1400ポイズであった。実施例6と同様の製法で平面性の優れたポリイミドフィルムを得た。膜厚みは平均60μmであった。
[実施例8]
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、図1に示されるようなA1=37mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
焼成条件は実施例6に従い、該炭素質フィルムを得た。5枚のうち、1枚がひび割れていた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。炭化後の星型の寸法は図1の形式に従い、B1=30mm、B2=22mmであった。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺35mm正方形片を作製するために、参考例7で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺42mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺35mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[参考例9]
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてメタフェニレンジアミン(以下、mPDA)を用い、mPDAに対するs−BPDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1400ポイズであった。実施例5に従い、平面性の優れたポリイミドフィルムを得た。膜厚みは平均20μmであった。
[実施例9]
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、図1に示されるようなA1=37mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
焼成条件は実施例8に従い、該炭素質フィルムを得た。5枚のうち、3枚が割れていた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。炭化後の星型の寸法は図1の形式に従い、B1=30mm、B2=22mmであった。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺40mm正方形片を作製するために、参考例9で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺48mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約9×10−5MPaであった。窒素ガス雰囲気下、室温より10℃/分で300℃まで昇温させた後、1000℃まで5℃/分で昇温を行い、1400℃まで10℃/分で昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺40mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
[実施例10]
参考例1に従い、ポリイミド多孔質フィルムを得た。Tgは400℃以上に相当する温度であった。膜厚みは平均150μm、ガーレー値は491秒/空気100ccであった。
得られたポリイミド多孔質フィルムをカッターなどで切断し、101×100mmの四角片5枚を準備した。
各フィルム片を炭素板に挟み、電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は3×10−4MPaであった。アルゴンガス雰囲気下、室温より10℃/分で2100℃まで昇温させた後、この温度で1時間保持させた。続いて室温まで徐冷させた。
炉内より取り出した炭素質フィルム片の寸法を測定する。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定。四角片5枚はいずれも82×81mm四角片であった。いずれもX値の揃った炭素質フィルムが得られた。ガーレー値は475秒/空気100ccであった。得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
炭素質フィルム一辺60mm正方形片を作製するために、参考例1で得られたポリイミドフィルムをカッターで切断した。このとき、表1に記載のとおり、収縮度X1=1.2、X2=1.2であることを利用し、一辺72mm正方形片のポリイミドフィルム5枚を準備した。
各フィルム片を表面が平滑な炭素板に重ならない様配置した。次いで表面が平滑な炭素板を1枚載せた。電気炉内に導入した。フィルム片にかかる面圧は約3×10−4MPaであった。アルゴンガス雰囲気下、室温より10℃/分で2100℃まで昇温後、この温度で1時間保持した。続いて室温まで徐冷させた。炉内より取り出した炭素質フィルムはいずれも平滑で、目視で前駆体フィルムの相似形状を保持していた。また、得られたフィルムの大きさは目視で同じであった。前駆体フィルムで測定した位置で、得られた炭素質フィルムの寸法を測定し、一辺60mmの正方形片が得られた。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表2に示す。
得られた炭素質フィルムの寸法,重量及びガーレー値及び前駆体フィルムのガーレー値を表1に示す。
[比較例1]
テトラカルボン酸成分として4,4‘−オキシジフタル酸二無水物(以下、ETDA)を、ジアミン成分としてDADEを用い、DADEに対するETDAのモル比が0.996で且つ該モノマ−成分の合計重量が10重量%になるようにNMPに溶解し、温度30℃、24時間重合をおこなってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は1500ポイズであった。実施例5に従い、平面性の優れたポリイミドフィルムを得た。Tgは270℃であった。
得られたポリイミドフィルムをカッターなどで切断し、図1に示されるようなA1=37mm、A2=27mmの星型片5枚を準備した。
焼成条件は実施例5に従ったが、該炭素質フィルム片は得られず、粉々に割れていた。
[比較例2]
東洋濾紙社製ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)多孔質フィルム(孔径0.1μm、直径47mm)5枚を実施例6に従い、焼成した。炭素質フィルムは得られなかった。
[比較例3]
参考例1で得られたポリイミド多孔質膜を用いて、フィルム片にかかる面圧を約3×10−2MPaとした以外は、実施例1と同様の処理を行い、炭素質フィルムを得た。炭素質フィルムはいずれも平滑であったが、ひび割れが多数発生しバラバラに破壊されていた。
[比較例4]
窒素ガス雰囲気下、室温より1400℃までの昇温速度を60℃/分に変更した以外は実施例4と同様の処理を行なって炭素質フィルムを得た。炭素質フィルムはひび割れが多数発生しバラバラに破壊されていた。また、フィルムの表面には破裂したような破壊された箇所が幾つか観察された。
Figure 2008254937
Figure 2008254937
フィルムの2方向又は4芳香の長さを測定する方向を示す一例の概略を示す模式図である。

Claims (13)

  1. 所定形状の前駆体フィルム(a2)から目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得るための製法に関するものであり、
    目的とする所定形状の炭素質フィルム(b2)と略同じ又は相似形状の前駆体フィルム(a1)を作製する工程(1)、
    前駆体フィルム(a1)の少なくとも2方向の長さ(A1,A2,・・・)を測定する工程(2)、
    前駆体フィルム(a1)を炭化させて炭素質フィルム(b1)を製造する工程(3)、
    炭素質フィルム(b1)の長さ(B1,B2,・・・)を前駆体フィルム(a1)の長さ(A1,A2)を測定した位置で測定し、数式(1)より収縮度(X1,X2,・・・)を求める工程(4)、
    目的とする形状の炭素質フィルム(b2)に収縮度(X1,X2,・・・)を乗じてできる、炭素質フィルム(b2)と相似形状の前駆体フィルム(a2)を作製する工程(5)、
    前駆体フィルム(a2)を工程(3)と略同じ条件で炭化させて目的とする形状の炭素質フィルム(b2)を得る工程(6)、
    とを有することを特徴とする目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
    Figure 2008254937
  2. 工程(2)は、少なくとも直交している2方向の長さを測定することを特徴とする請求項1に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  3. 数式(2)により算出される相似形状保持率Sが、1.00〜1.10の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
    Figure 2008254937
  4. 前駆体フィルムは、ガラス転移温度が250℃以上の高分子を主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  5. 前駆体フィルムは、ポリイミドを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  6. 前駆体フィルムは、sBPDA及びPMDAより選ばれる成分を少なくとも1つ以上を含む酸性分と、PPD及びDADEより選ばれる成分を少なくとも1つ以上を含むジアミン成分とを含む成分より得られるポリイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  7. 前駆体フィルムは、多孔質状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  8. 前記工程(3)及び工程(6)は、
    前駆体フィルムを最高温度700〜3200℃の範囲で炭化させて炭素質フィルムを製造する工程、であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  9. 前記工程(3)及び工程(6)は、
    少なくとも400〜1000℃の温度範囲において、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向の応力が0〜2×10−3MPaの範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  10. 前記工程(3)及び工程(6)は、
    前駆体フィルムを最高温度700〜3200℃の範囲で処理して炭化させ、
    かつ少なくとも400〜1000℃の温度範囲において、前駆体フィルムのフィルム面に対する垂直方向の応力が0〜2×10−3MPaの範囲で行い、あることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  11. 前記工程(3)及び工程(6)は、
    0.1℃〜40℃/分の昇温速度範囲で行なうことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項の目的とする形状の炭素質フィルムを得るための製造方法より製造された炭素質フィルム。
  13. 所定形状に切断する操作、穴あけ操作及び削り操作の加工操作を炭素質フィルムに行なうことなく得られることを特徴とする所定形状の炭素質フィルム。
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