以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体について説明する。電子写真感光体1の層構成は、図1、図2及び図3で示すような公知のいかなる層構成であってもよいが、これらの中では、図1で示す層構成であることが好ましい。図1、図2及び図3中、aは導電性支持体、bは感光層、cは電荷発生層、dは電荷輸送層、eは電荷発生物質を示す。
以下に、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型有機感光体について、その作製方法を述べる。
支持体としての材質は、導電性を有するものであればよい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、バナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、インジウム、金や白金などが挙げられる。また、これらの金属または合金を真空蒸着法によって被膜形成したプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びアクリル樹脂など)などを用いることもできる。また、導電性粒子(例えば、カーボンブラック及び銀粒子など)を適当な結着樹脂と共に上記プラスチック、金属または合金上に被覆した支持体、あるいは、導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体などを用いることもできる。
導電性支持体上には、支持体のムラや欠陥の被覆、干渉縞防止を目的とした導電層を設けてもよい。
導電層は、カーボンブラック、金属粒子及び金属酸化物などの導電性粉体を、結着樹脂中に分散して形成することができる。導電層の膜厚は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、特には1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの支持体表面を、ホーニング加工、センターレス研削もしくは切削などの粗面化処理を行って用いてもよい。さらにこれら粗面化処理により支持体表面を適当な粗さに設計することができ干渉縞対策を実施できる。支持体表面の十点平均粗さRzjisは、0.05μm以上が好ましく、特に0.1μm以上が好ましい。
十点平均粗さRzjisの測定は、JIS B0601(2001)に基づき、サーフコーダーSE−3500(小坂研究所製)にて、カットオフを0.8mm、測定長さを8mmとして行った。
導電性支持体上または導電層上には、バリア機能と接着機能を持つ中間層を設けてもよい。
中間層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、にかわ及びゼラチンなどが用いられる。これらは、適当な溶剤に溶解して支持体上に塗布される。中間層の膜厚は、0.2μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
導電性支持体上、導電層上または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
電荷発生層は、電荷発生物質を適当な溶剤中で結着樹脂と共に分散した液を、導電性支持体上、導電層上または中間層上に公知の方法によって塗布し、乾燥することによって形成される。
電荷発生物質としては、本発明に係る下記一般式(1)で示される有機残基を有するアゾ顔料が用いられる。
一般式(1)
一般式(1)中、R1及びR2は同一または異なって、水素原子、無置換あるいは置換基を有するアルキル基、無置換あるいは置換基を有するアラルキル基、無置換あるいは置換基を有するアリール基、無置換あるいは置換基を有する複素環基を表す。またはR1とR2が結合して形成される窒素原子を環内に含む環状アミノ基を表す。
上記一般式(1)中のR1及びR2のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピルなどの基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチルなどの基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アンスリルなどの基が挙げられる。複素環基としては、例えば、ピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリルなどの基が挙げられる。環状アミノ基としては、例えば、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン、フェノキサジンなどの基が挙げられる。
これらの基が有してもよい置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基や、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基や、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。また、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどのジアルキルアミノ基や、水酸基や、ニトロ基や、シアノ基や、アセチル基や、フェニルカルバモイル基や、ハロメチル基や、ハロメトキシ基などが挙げられる。
上記各基の中でも、上記一般式(1)中のR1は水素原子であることが好ましい。R2は無置換あるいは置換基を有するフェニル基であることが好ましく、R2が置換フェニル基の場合の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アセチル基及びシアノ基が好ましい。
また、本発明に係る前記一般式(1)で示される有機残基を有するアゾ顔料は、同時に他のフェノール性有機残基を共存させることができる。
他のフェノール性有機残基の例としては下記式(7)〜(10)が挙げられる。
式(7)
式(7)中、Xは、ベンゼン環と縮合して、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環または置換若しくは無置換の芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表す。ベンゼン環と縮合した置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環または置換若しくは無置換の芳香族複素環としては、ナフタレン環、アントラセン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ベンゾナフトフラン環、フルオレノン環が挙げられる。Xに係る置換基としては、メチル、エチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のようなハロゲン原子、トリフルオロメチルのようなハロメチル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。式(7)中のR3及びR4は、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基または置換若しくは無置換の複素環基を表す。また、R3とR4とは、式(7)中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよい。Z1は、酸素原子または硫黄原子を表し、m1は、0または1を表す。R3及びR4のアルキル基としては、メチル、エチル及びプロピルのような基が挙げられ、アリール基としては、フェニル、ナフチル及びアンスリルのような基が挙げられる。また、R3及びR4の複素環基としては、ピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルのような基が挙げられる。また、R3とR4とで形成される、窒素原子を環内に含む環状アミノ基としては、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン及びフェノキサジンが挙げられる。これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子。ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基、フェニルカルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチルのようなハロメチル基。なお、このフェニルカルバモイル基のフェニル基は、上述のような置換基をさらに有してもよい。
式(8)
式(8)中、Yは、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基または置換若しくは無置換の2価の含窒素複素環基を表す。Yに係る2価の芳香族炭化水素環基及び含窒素複素環基としては、下記の2価の基が挙げられる。o−フェニレン、o−ナフチレン、ペリナフチレン、1,2−アンスリル、3,4−ピラゾールジイル、2,3−ピリジンジイル、4,5−ピリジンジイル、6,7−イミダゾールジイル及び6,7−キノリンジイル。Yが有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子。ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロメチル基。なかでも、Yは、無置換のo−フェニレンであることが好ましい。
式(9)
式(9)中、R5は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはニトロ基を表す。R6は、置換若しくは無置換のアルキル基または置換若しくは無置換のアリール基を表す。R7は、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。lは、0以上2以下の整数を表し、lが2であるとき、R7は、相異なる基であってもよい。R5、R6及びR7のハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基としては、下記のものが挙げられる。塩素及び臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルのようなアルコキシカルボニル基、カルバモイル及びフェニルカルバモイルのようなカルバモイル基。メチル、エチル及びプロピルのようなアルキル基、メトキシ及びエトキシのようなアルコキシ基、フェニル、ナフチル及びアンスリルのようなアリール基。これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子。ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロメチル基。
式(10)
式(10)中、R8及びR9は、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基または置換若しくは無置換の複素環基を表す。また、R8とR9とは、式(10)中の窒素原子を介して環状アミノ基を形成してもよい。Z2は、酸素原子または硫黄原子を表し、m2は、0または1を表す。R8及びR9のアルキル基、アリール基、複素環基、及び窒素原子を環内に含む環状アミノ基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル及びプロピルのようなアルキル基、フェニル、ナフチル及びアンスリルのようなアリール基、ピリジル、チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルのような複素環基。ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン及びフェノキサジンのような窒素原子を環内に含む環状アミノ基。これらの基が有してもよい置換基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル及びブチルのようなアルキル基、メトキシ、エトキシ及びプロポキシのようなアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子のようなハロゲン原子。ジメチルアミノ及びジエチルアミノのようなジアルキルアミノ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、フェニルカルバモイル基、ハロメチル基、ハロメトキシ基。式(10)において、R8が水素原子であり、R9が置換または無置換のフェニル基であり、かつZ2が酸素原子であることが好ましい。このフェニル基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基及びフェニルカルバモイル基が挙げられる。なお、このフェニルカルバモイル基のフェニル基は、上述のような置換基をさらに有していてもよい。さらに、式(10)において、m2は、1であることがより好ましい。
また、電荷発生物質としては、本発明に係る下記一般式(2)で示されるアゾ顔料も用いることができる。
一般式(2)
一般式(2)中、R1及びR2は同一または異なって、水素原子、無置換あるいは置換基を有するアルキル基、無置換あるいは置換基を有するアラルキル基、無置換あるいは置換基を有するアリール基、無置換あるいは置換基を有する複素環基を表す。またはR1とR2が結合して形成される窒素原子を環内に含む環状アミノ基を表す。Arは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を含む基を表し、nは1、2、3または4の整数を表す。
一般式(2)中、Arとしては、下記のものが挙げられる。ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナンスレン、アンスラセン、ピレン等の炭化水素系芳香環。フラン、チオフェン、ピリジン、インドール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、アクリドン、ジベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、オキサジアゾール、チアゾール等の複素系芳香環。さらに上記芳香環を直接あるいは芳香族性基または非芳香族性基で結合したもの、例えばトリフェニルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルジフェニルアミン、ビフェニル、ターフェニル、ビナフチル、フルオレノン、フェナンスレンキノン。また、例えばアンスラキノン、ベンズアントロン、ジフェニルオキサジアゾール、フェニルベンゾオキサゾール、ジフェニルメタン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、スチルベン、ジスチリルベンゼン。また、例えばテトラフェニル−p−フェニレンジアミン、テトラフェニルベンジジン。Arの置換基としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等のジアルキルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ハロメチル基。
Arとして好ましくは、下記式(3)〜(6)が挙げられる。
式(3)
式(4)
式(5)
式(6)
また、本発明によるアゾ顔料の結晶形は、結晶質であっても非晶質であってもよい。
以下に、本発明に用いられる、アゾ顔料の好ましい化合物例を例示化合物1〜21に列挙するが、これらに限定されるものではない。
上記アゾ顔料は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。さらに必要に応じて、ピリリウム系染料、チアピリリウム系染料、アズレニウム系染料、チアシアニン系染料及びキノシアニン系染料などのカチオン染料などの電荷発生物質を混ぜて用いてもよい。また、スクエアリウム塩系染料、アントアントロン系顔料、ジベンズピレンキノン系顔料及びピラントロン系顔料などの多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料などの電荷発生物質を混ぜて用いてもよい。
電荷発生層を形成するための結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂あるいは有機光導電性ポリマーから選択される。その中でもポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタンなどやこれら2つ以上の共重合体等が好ましい。これらの樹脂は、置換基を有してもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル基などが好ましい。また、結着樹脂の使用量は、電荷発生層全質量に対して80質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることがより好ましい。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂及び溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、10:1以下1:4以上(質量比)の範囲が好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択され、例えば下記のものが挙げられる。テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテルや、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ペンタノンなどのケトンや、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミンや、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル。トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族や、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコールや、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素。
電荷発生層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
また、電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増粘剤などを必要に応じて添加することもできる。
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
電荷輸送層は、電界の存在下にて電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は、電荷輸送物質を必要に応じて適当な結着樹脂と共に溶剤中に溶解した塗布液を塗布することによって形成される。その膜厚は、3μm以上40μm以下であることが好ましく、さらに4μm以上30μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質がある。
電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル及びテトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性材料やこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
正孔輸送物質としては、例えば下記のものが挙げられる。ピレン及びアントラセンなどの多環芳香族化合物。カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系及びトリアゾール系化合物などの複素環化合物。ヒドラゾン系化合物、スチリル系化合物、ベンジジン系化合物、トリアリールメタン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ビスシクロヘキシルアミン系化合物、トリフェニルアミン系化合物。
また、これらの電荷輸送物質は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。電荷輸送物質が成膜性を有していない場合には、適当な結着樹脂を用いることができる。
電荷輸送層の結着樹脂としては、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素化ゴムなどの絶縁性樹脂などが挙げられる。あるいはポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリビニルアントラセンなどの有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
また、上記電荷輸送物質から誘導される基を主鎖または側鎖に有する高分子(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンなど)などの電荷輸送物質と結着樹脂の機能を兼ね備えた光導電性樹脂を用いてもよい。
ただし、図1に示すように、感光層が支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した層構成の電子写真感光体に使用する場合は、使用するイメージ露光光源に対して透過性が高い電荷輸送物質や結着樹脂を選択する必要がある。
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタンなどのエーテル、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが用いられる。また、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのアルキルシクロヘキサン、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などが用いられる。
電荷輸送層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フィラーなどを必要に応じて添加することもできる。
また、感光層が単層型である場合、該単層型感光層は、上記電荷発生物質及び上記電荷輸送物質を上記結着樹脂及び上記溶剤と共に分散して得られる単層型感光層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
感光層上には、該感光層を機械的外力や化学的外力などから保護することを目的として、また、転写性やクリーニング性の向上を目的として、保護層を設けてもよい。
保護層は、以下の樹脂を有機溶剤によって溶解して得られる保護層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーなどの樹脂。
また、保護層に電荷輸送能を併せ持たせるために、電荷輸送能を有するモノマー材料や高分子型の電荷輸送物質を種々の架橋反応を用いて硬化させることによって保護層を形成してもよい。硬化させる反応としては、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法、光CVD法などが挙げられる。
さらに、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤、及び耐摩耗性改良剤などを含ませてもよい。導電性粒子としては、例えば、酸化錫粒子などの金属酸化物が好ましい。耐摩耗性改良剤としてはフッ素系樹脂微粉末、アルミナ、シリカなどが好ましい。
保護層の膜厚は0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、特には1μm以上10μm以下であることが好ましい。
有機感光体の表面層とは、図1では電荷輸送層、図2では電荷発生層、図3では感光層を意味し、また、これらに保護層を設けた場合は保護層が表面層となる。
次に本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略断面図の一例を図4に示す。図4に示すフルカラー用電子写真装置は、上部にデジタルフルカラー画像リーダー部、下部にデジタルフルカラー画像プリンター部を有する。
リーダー部において、原稿30を原稿台ガラス31上に載せ、露光ランプ32により露光走査することにより、原稿30からの反射光像を、レンズ33によりフルカラーセンサー34に集光し、フルカラー色分解画像信号を得る。フルカラー色分解画像信号は、増幅回路(不図示)を経て、ビデオ処理ユニット(不図示)にて処理を施され、プリンター部に送出される。
プリンター部において、1は電子写真感光体であり、矢印方向に回転自在に担持され、電子写真感光体1の周りに前露光ランプ11(除電手段)、コロナ帯電器2(帯電手段)、レーザー露光光学系3(露光手段)、電位センサー12を配置する。また、色の異なる4個の現像器4y、4c、4m、4Bk(現像手段)、電子写真感光体上の光量検知手段13、転写手段5、クリーニング器6(クリーニング手段)を配置する。
レーザー露光光学系3には半導体レーザーが搭載されている。半導体レーザーの発振波長としては、高解像度な画像出力が可能なレーザースポット径の小径化と感光体の分光感度域の観点から380nm以上550nm以下が好ましい。レーザー露光出力に関しては、1mW以上が好ましく、3mW以上がより好ましく、5mW以上が特に好ましい。
レーザー露光光学系3において、リーダー部からの画像信号は、レーザー出力部(不図示)にてイメージスキャン露光の光信号に変換される。変換されたレーザー光がポリゴンミラー3aで反射され、レンズ3b及びミラー3cを通って、電子写真感光体1の面に投影される。書き込みピッチは400dpi以上2400dpi以下程度、ビームスポット径は15μm以上50μm以下程度である。
プリンター部画像形成時には、電子写真感光体1を矢印方向に回転させ、前露光ランプ11で除電した後の電子写真感光体1を帯電器2によりマイナスに一様に帯電させて、各分解色ごとに光像Eを照射し、静電潜像を形成する。
次に、所定の現像器を動作させて、電子写真感光体1上の静電潜像を現像し、電子写真感光体1上に樹脂を基体とした一成分トナーまたは二成分現像剤(何れもネガトナー)による現像像を形成する。現像器は、偏心カム24y、24c、24m、24Bkの動作により、各分解色に応じて択一的に電子写真感光体1に接近するようにしている。
さらに、電子写真感光体1上の現像像を、転写材である紙が収められた転写材カセット7より搬送系及び転写手段5を介して電子写真感光体1と対向した位置に供給された紙(転写材)に転写する。転写手段5は、本例では、転写ドラム5a、転写帯電器5b、紙(転写材)を静電吸着させるための吸着帯電器5cと対向する吸着ローラー5g、内側帯電器5d、外側帯電器5eとを有する。さらに、回転駆動されるように軸支された転写ドラム5aの周面開口域には誘電体からなる転写材担持シート5fを円筒状に一体的に張設している。転写材担持シート5fはポリカーボネートフィルムなどの誘電体シートを使用している。
転写ドラム5aを回転させるにしたがって、電子写真感光体上の現像像は転写帯電器5bにより転写材担持シート5fに担持された紙(転写材)上に転写する。
このように転写材担持シート5fに吸着搬送される紙(転写材)には所望数の色画像が転写され、フルカラー画像を形成する。
フルカラー画像を形成する場合、このようにして4色の現像像の転写を終了すると、紙(転写材)を転写ドラム5aから分離爪8a、分離押し上げコロ8b及び分離帯電器5hの作用によって分離し、熱ローラー定着器9を介してトレイ10に排紙する。
一方、転写後の電子写真感光体1は、表面の残留トナーをクリーニング器6で清掃した後、再度画像形成工程に供される。
紙(転写材)の両面に画像を形成する場合には、定着器9を排出後、すぐに搬送パス切替ガイド19を駆動し、搬送縦パス20を経て、反転パス21aに一旦導く。次いで、反転ローラー21bの逆転により、送り込まれた際の後端を先頭にして送り込まれた方向と反対向きに退出させ、中間トレイ22に収納する。その後、再び上述した画像形成工程によってもう一方の面に画像を形成する。
また、転写ドラム5aの転写材担持シート5f上の粉体の飛散付着、紙(転写材)上のオイルの付着などを防止するために、ファーブラシ14と転写材担持シート5fを介して該ブラシ14に対向するバックアップブラシ15の作用により清掃を行う。また、オイル除去ローラー16と転写材担持シート5fを介して、該オイル除去ローラー16に対向するバックアップブラシ17の作用により清掃を行う。このような清掃は画像形成前もしくは後に行い、また、ジャム(紙詰まり)発生時には随時行う。
また、本例においては、所望のタイミングで偏心カム25を動作させ、転写ドラム5aと一体化しているカムフォロワ5iを作動させることにより、転写材担持シート5fと電子写真感光体1とのギャップを任意に設定可能な構成としている。例えば、スタンバイ中または電源オフ時には、転写ドラムと電子写真感光体の間隔を離す。
次に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジの概略断面図の一例を図5に示す。
図5に示す装置では、少なくとも電子写真感光体1、コロナ帯電器2及び現像手段4を一体に支持して(容器35に納めて)プロセスカートリッジとする。そして、そのプロセスカートリッジを電子写真装置本体のレールなどの案内手段34iを用いて電子写真装置本体に着脱自在に構成している。クリーニング手段6は、容器35内に配置しても配置しなくてもよい。
また、図6及び図7に示すように、帯電手段として接触帯電部材2aを用い、電圧印加された接触帯電部材2aを電子写真感光体1に接触させることにより電子写真感光体1の帯電を行ってもよい(この帯電方法を、以下、接触帯電という)。図6及び図7に示す装置では、電子写真感光体1上のトナー像も接触転写手段5jで転写材7aに転写される。即ち、電圧印加された接触転写手段5jを転写材7aに接触させることにより電子写真感光体1上のトナー像を転写材7aに転写させる。
さらに、図7に示す装置では、少なくとも電子写真感光体1及び接触帯電部材2aを一体に支持して(第1の容器36に納めて)第1のプロセスカートリッジとする。また、少なくとも現像手段4を第2の容器37に納めて第2のプロセスカートリッジとする。これら第1のプロセスカートリッジと、第2のプロセスカートリッジとを電子写真装置本体に着脱自在に構成している。クリーニング手段6は、容器36内に配置しても配置しなくてもよい。
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる現像剤(トナー)について説明する。
本発明に用いられるトナーは特定な粒度分布をもつことが好ましい。粒径が5μm以下のトナー粒子が17個数%未満であると、消費量が増加する傾向にある。さらに、体積平均粒径(Dv[μm])が8μm以上であり、重量平均粒径(D4[μm])が9μm以上であると、100μm以下のドット解像性において低下傾向にある。また、本発明において達成可能である15μm以上40μm以下のドット解像性においてはさらに顕著に低下する。この際、他の現像条件の無理な設計によって現像しようとしても、ライン太りやトナーの飛び散りを生じやすく、また、トナーの消費量が増大するなど安定した現像性が得ることが難しい。一方、粒径が5μm以下のトナー粒子が90個数%を超えると、現像を安定にすることが難しく、画像濃度が低下するなどの弊害を生じることがある。さらに解像力を向上させるためには、3.0μm≦Dv≦6.0μm、3.5μm≦D4<6.5μmの微粒径トナーであることが好ましい。さらには、3.2μm≦Dv≦5.8μm、3.6μm≦D4≦6.3μmであることがより好ましい。
トナーに使用される結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系単または共重合体などが挙げられる。また、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
定着時の定着部材からの離型性の向上、定着性の向上の点から、次のようなワックス類をトナー中に含有させることも好ましい。パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体などである。誘導体としては、酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合体、グラフト変性物などが挙げられる。その他、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、酸アミド化合物、エステル化合物、ケトン化合物、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタムなども利用できる。
トナーに用いられる着色剤としては、従来知られている無機顔料、有機染料、有機顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーなどが挙げられる。これらは通常、結着樹脂100質量部に対し0.5質量部以上20質量部以下使用される。
トナーの構成成分として磁性体を用いてもよい。磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含む磁性金属酸化物が挙げられる。それらの中でも、四三酸化鉄、γ−酸化鉄のような磁性酸化鉄を主成分とするものが好ましい。
トナーの帯電制御の目的で、ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、サリチル酸金属錯体、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属錯体、サリチル酸、アセチルアセトンなどを用いることができる。
本発明の電子写真感光体に用いられるトナーは、トナー粒子表面上に無機微粉体を有していることが好ましく、現像効率、静電潜像の再現性及び転写効率を向上させ、カブリを減少させる効果がある。
無機微粉体としては、例えば、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムなどで形成された微粉体が挙げられる。また、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどで形成された微粉体が挙げられる。これらのものを1種類あるいは2種類以上を混合して使用することができる。それらの中でも、チタニア、アルミナ、シリカのような酸化物あるいは複酸化物の微粉体が好ましい。
また、これらの無機微粉体は疎水化されていることが好ましい。特に、無機微粉体はシランカップリング剤またはシリコーンオイルで表面処理されていることが好ましい。このような疎水化処理方法としては、無機微粉体と反応あるいは物理吸着するシランカップリング剤、チタンカップリング剤のような有機金属化合物で処理する方法が挙げられる。もしくは、シランカップリング剤で処理した後、あるいは、シランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、特には50m2/g以上400m2/g以下の範囲のものが好ましい。疎水化処理された無機微粉体の使用量は、トナー粒子100質量部に対して0.01質量部以上8質量部以下であることが好ましく、さらには0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。特には0.2質量部以上3質量部以下であることがより一層好ましい。
トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で、さらに他の添加剤を加えてもよい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末や、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末のような研磨剤などが挙げられる。また、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末のような流動性付与剤や、ケーキング防止剤や、カーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末のような導電性付与剤や、トナーとは逆極性の有機微粒子及び無機微粒子のような現像性向上剤などが挙げられる。
トナーを作製するには、公知の方法が用いられる。例えば、結着樹脂、ワックス、金属塩または金属錯体、着色剤としての顔料、染料、または、磁性体、必要に応じて荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合器により十分混合する。次いで、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶させた中に、金属化合物、顔料、染料、磁性体を分散または溶解させ、冷却固化後、粉砕、分級を厳密に行ってトナーを得ることができる。分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
重合性モノマーと着色剤などを水系溶媒中に懸濁し、重合を行い、直接トナー粒子を製造する方法、乳化重合方法などにより得られた重合体微粒子を水系媒体中に分散し、着色剤と共に会合融着する方法で製造することもできる。
さらに、トナーは、磁性一成分系現像剤あるいは非磁性一成分現像剤として用いてもよいし、キャリア粒子と混合して二成分現像剤として用いてもよい。
本発明の電子写真感光体の現像方式としては、トナーを含む現像剤と電子写真感光体表面とが接触し、反転現像方式が好ましい。トナーと磁性キャリアとを使用する磁気ブラシ現像方法を用いる場合は、磁性キャリアとして、例えば、磁性フェライト、マグネタイト、鉄粉、あるいは、それらをアクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂のような樹脂でコーティングしたものが用いられる。
以下に、本願発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本願発明を限定するものではない。
(合成例)(例示化合物1の合成)
<カプラーの合成>
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸10g(0.053mol)を無水酢酸70mlに添加し室温で攪拌した。その後、酢酸ナトリウム3水和物14.5g(0.107mol)を滴下した後、50℃で90分間攪拌し、室温まで冷却後濾過し濾物を得た。濾物をトルエン、希塩酸、水の順に洗浄、濾過を繰返し減圧乾燥を経て6−アセトキシ−2−ナフトエ酸8.5gを得た(収率69.5%)。
上記で得た6−アセトキシ−2−ナフトエ酸2.3g(0.01mol)をトルエン50mlに添加し室温で攪拌した。その後ピリジン0.95g(0.013mol)を滴下した。さらに塩化チオニル1.43gをトルエン4mlに添加した液を滴下し、室温で30分攪拌した。その後50℃に加熱し、塩化チオニル1.47g(0.012mol)を添加した後90分攪拌した。活性炭1gを加えた後、濾過し濾液を溶媒留去して下記式(11)で示される酸クロライドの白色結晶2.35gを得た(収率94.6%)。
式(11)
下記式(12)で示される尿素類3.02g(0.0177mol)をトルエン50mlに添加し、上記と同様にして得た酸クロライド4.0g(0.0161mol)、ピリジン1.4g(0.0177mol)をそれぞれゆっくり滴下した。
式(12)
その後90℃で180分攪拌した。室温まで冷却後に濾過、濾物のメタノール洗浄を経て下記式(13)と下記式(14)で示される2つの混合物3.1gを得た。
式(13)
式(14)
上記で得た上記式(13)と上記式(14)で示される2つの混合物3.0gを6Nの塩酸160mlとアセトン225mlの混合液中で4時間攪拌後濾過し、下記式(15)と下記式(16)で示される2つの混合物2.2gを得た。
式(15)
式(16)
上記式(15)と上記式(16)で示される2つの混合物をシリカゲルカラム(展開液:トルエン:酢酸エチル=3:1)で分離精製を実施し、上記式(16)の化合物のみを得た。この化合物の元素分析値を示す。
元素分析値(C19H14N3O4Cl)
実測値 計算値
C 59.29 59.46
H 3.79 3.68
N 10.99 10.95
(ガスクロマトグラフ)
測定装置:メーカー:(株)島津製作所、形式:GCMS−QP2000
m/z=383
(IRスペクトル)
測定装置:メーカー:日本分光、形式:FT/IR−420
測定法:KBr法
cm−1=3331、3262、1697、1654、1485、1440、1270、1207、889、748、684、561
<アゾ顔料の合成>
2リットルビーカーに、イオン交換水(電導度1×10−4S/m以下、以下同様)700ml、濃塩酸102.5ml(1.13mol)及び4,4’−ジアミノベンゾフェノン30.0g(0.14mol)を入れて0℃まで冷却した。これに、亜硝酸ナトリウム20.48g(0.30mol)をイオン交換水51mlに溶かした液を液温0℃以上5℃以下に保ちながら23分間で液中滴下した。滴下後、60分間撹拌し、次いで活性炭3.2gを加えて5分間攪拌した後、吸引濾過した。得られた濾液を0℃以上5℃以下に保ったまま、これに、撹拌下、ホウフッ化ナトリウム108.6g(0.99mol)をイオン交換水320mlに溶解した液を20分かけて滴下した後、60分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過した。次に、濾過物を5%のホウフッ化ナトリウム水溶液1リットルで0℃以上5℃以下に保ったまま60分間分散洗浄した後、吸引濾過した。得られた濾過物をアセトニトリル180ml及びイソプロピルエーテル480mlの混合液で0℃以上5℃以下に保ったまま60分間分散洗浄し、その後、吸引濾過した。次に、イソプロピルエーテル300mlで2回濾過器洗浄を行った後、室温下、濾過物の減圧乾燥を行うことによって、ホウフッ化塩を得た(収量49.5g、収率85.5%)。
次に、300ミリリットルビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド100mlを入れた。次いで、前述の式(16)の化合物2.948g(7.687mmol)を溶解し、液温0℃に冷却した後、これに上記ホウフッ化塩1.5g(3.661mmol)を添加し、次いでN−メチルモルホリン0.85g(8.416mmol)を2分間で滴下した。その後、0℃以上5℃以下で2時間撹拌し、さらに室温で3時間攪拌した後、吸引濾過した。次に、N,N−ジメチルホルムアミド1000mlで濾過器洗浄を2回行った。
取り出した濾過物を、N,N−ジメチルホルムアミド120mlで2時間の分散洗浄及び濾過を3回繰り返し行った。さらにイオン交換水100mlで2時間の分散洗浄及び濾過を3回繰り返し行った後、凍結乾燥を行うことによって、アゾ顔料(例示化合物1)を得た(収量2.777g、収率75.7%)。質量分析及びIR分析の結果は、下記の通りである。なお、以上の製造工程は全て黄色光下で実施した。
(質量分析スペクトル)
測定装置:メーカー:BRUKER、形式:REFLEXIII−TOF
測定モード:NEGA
分散溶剤:シクロヘキサノン
m/z=1000.6
(IRスペクトル)
測定装置:メーカー:日本分光、形式:FT/IR−420
測定法:KBr法
cm−1=3210、1722、1598、1551、1475、1442、1268、1218、1148、987、926、854、762
また、例示化合物1のUV吸収スペクトルを図8に示す(λmax=489nm)。UV吸収スペクトルは、試料をシクロヘキサノン中で超音波分散し、λmaxの吸光度(Abs)が1.0以下になるように希釈調製した後、日本分光(株)製V−570型を用いて測定した。
他の構造のアゾ顔料も、その構造に対応する原料を用いることによって、上記合成例と同様にして合成することができる。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部。これらとシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、数平均分子量3000)0.002部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で、2時間分散して導電層用塗料を調製した。
アルミニウム素管(ED管)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ357.5mm、Rzjis=0.8μm)上に、上記導電層用塗料をディッピング塗工し、140℃で30分間乾燥して、膜厚15μmの導電層を形成した。
次に、メトキシメチル化ナイロン樹脂(数平均分子量32000)30部と、アルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(数平均分子量29000)10部を、メタノール260部、ブタノール40部の混合溶媒中に溶解して中間層用溶液を調製した。この中間層用溶液を上記導電層上にディッピング塗工し、100℃で10分間乾燥して、膜厚0.6μmの中間層を形成した。
次に、上記合成例で得られたアゾ顔料(例示化合物1)20部をシクロヘキサノン215部に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20℃で20時間前分散した。さらに、ビニルアセテート−ビニルアルコール−ビニルベンザール共重合体(ベンザール化度80mol%、重量平均分子量83000)10部をシクロヘキサノン45部に溶解した溶液を添加し、サンドミル装置で20℃で2時間分散した。次いで、これに160部のシクロヘキサノンと160部のメチルエチルケトンを添加、希釈して電荷発生層用塗料を作製し、この塗料を中間層上にディッピング塗工し、80℃で10分間乾燥して、膜厚0.23μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質10部、
ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、モノクロルベンゼン70部とメチラール5部に溶解した電荷輸送層用溶液を調製した。この電荷輸送層用溶液を電荷発生層上にディッピング塗工し、100℃で1時間乾燥して、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
次に、この電子写真感光体にギア、フランジを取り付けモノクロ複写機(GP−215、キヤノン(株)製)に装着した。露光手段のレーザー露光光学系には、発振波長が470nm、出力5mWのGaN系チップを搭載しビームスポット径が45μmとなるように改造した。23℃、55%の環境下で帯電(Vd)−700Vに設定した際の明電位(Vl)−200Vにおける光量を感度Δ500(V・cm2/μJ)とした結果、360(V・cm2/μJ)となり、高感度な電子写真感光体が得られた。
(実施例2〜13)
実施例1に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のアゾ顔料を表1に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様に感度Δ500(V・cm2/μJ)を求めた。その結果、表1に示すように高感度な電子写真感光体が得られた。
(比較例1)
実施例1に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のアゾ顔料として下記式で示される特許文献1記載の比較化合物Aを用いた以外は実施例1と同様にして比較用電子写真感光体を作製した。作製した比較用電子写真感光体について実施例1と同様にしてΔ500(V・cm2/μJ)を求めた結果、表1に示すように低感度な電子写真感光体しか得られなかった。
(実施例14)
アルミニウム素管(ED)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ370mm、Rzjis=0.8μm)を液体ホーニング処理したシリンダー(Rzjis=1.5μm)を用意した。この上に、6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体樹脂5部をメタノール70部とブタノール25部の混合溶媒に溶解した溶液をディッピング塗工し、100℃で10分間乾燥して0.6μmの中間層を設けた。
次に、中間層上に実施例1と同様にして電荷発生層を形成した。次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質7部、
ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、モノクロルベンゼン70部に溶解した電荷輸送層用溶液を調製し、電荷発生層上にディッピング塗工した。次いで、100℃で30分間乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質36部、
及びポリテトラフルオロエチレン樹脂微粉末(ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製)4部をn−プロピルアルコール60部に混合した後に超高圧分散機にて分散混合し、表面保護層用塗料を調製した。この塗料を用いて、前記電荷輸送層上に保護層を塗布したのち、窒素中において加速電圧60KV、線量0.8Mradの条件で電子線を照射した後、引き続いて感光体の温度が150℃になる条件で5分間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は20ppmであった。さらに、感光体を大気中で120℃で1時間後処理を行って、膜厚5μmの保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
このようにして作製した電子写真感光体にギア、フランジを取り付けフルカラー複写機(IRC3200、キヤノン(株)製)に装着した。露光手段のレーザー露光光学系には、発振波長が475nm、出力5mWのGaN系チップを搭載しビームスポット径が48μmとなるように改造した。20℃、60%の環境下において、帯電(Vd)−500V、明電位(Vl)−200V、現像バイアス(Vbis)−350Vになるように設定し、1ドット1スペースの画像と文字(5ポイント)画像の出力を実施した。5000枚後の帯電(Vd=−490V)と明電位(Vl=−220V)を測定し、初期から5000枚後までのVd、Vlの変動量(ΔVd=−10V、ΔVl=+20Vと表記、以下同様)を求めた。その結果、ΔVd、ΔVLは小さく耐久電位変動は良好であった。また、画像5000枚目のドット再現性や文字再現性の画像目視評価を行った結果、耐久を通じてドット再現性や文字再現性に優れ、高解像度なフルカラー画像が得られた。
(実施例15〜19)
実施例14に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のアゾ顔料を表2に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例14と同様にΔVdとΔVlの測定と画像目視評価を実施した。その結果、表2に示すように実施例14と同様に耐久電位変動が小さく、高解像度なフルカラー画像が得られた。
(比較例2)
実施例14に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のアゾ顔料を前記比較化合物Aに変更したこと以外は実施例14と同様にして比較用電子写真感光体を作製し、実施例14と同様にΔVdとΔVlの測定と画像目視評価を実施した。その結果、表2に示すように、比較例2は耐久電位変動が大きく、耐久を通じて高解像度なフルカラー画像を得ることができなかった。
(実施例20)
アルミシート上にメトキシメチル化ナイロン樹脂(数平均分子量32000)5部と、アルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(数平均分子量29000)10部を、メタノール180部、ブタノール90部の混合溶媒中に溶解した中間層用溶液を調製した。この中間層用溶液をマイヤーバーで塗布し、100℃で10分間乾燥して、膜厚0.6μmの中間層を形成した。
次に、実施例1と同様の電荷発生層用塗料をマイヤーバーで塗布し80℃で10分間乾燥して、膜厚0.25μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質(C)7部、
とポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部をクロロベンゼン350部に溶解し、この溶液を電荷発生層上にマイヤーバーで塗布した。次いで120℃で60分間乾燥して膜厚が27μmの電荷輸送層を形成し電子写真感光体を得た。
作製した電子写真感光体を川口電機(株)製静電複写紙試験装置(EPA−8100)を用いて−5KVのコロナ放電で負に帯電させた。次いで、ハロゲンランプを用いて照度10ルックスの光で露光し、表面電位が初期表面電位の半分に減衰するために必要な露光量を求めた。このようにして求めた半減露光量(E1/2)は2.4 lx・sで高感度であった。
次に、前記静電複写紙試験装置を用いて帯電(Vd)及び明電位(Vl)をそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、ハロゲンランプを用いて帯電、露光を1000回繰り返した。その結果、Vdが−695V、Vlが−210V(変動量ΔVd=−5V、ΔVl=+10V)で耐久電位変動が小さかった。
(実施例21〜23)
実施例20に使用した電子写真感光体中の電荷発生層中のアゾ顔料を表3に示す例示化合物にそれぞれ変更したこと以外は実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体について実施例20と同様にしてE1/2、ΔVd、ΔVlを求め、その結果を表3に示す。表3から明らかなように、何れも高感度かつ耐久電位変動が小さいことがわかる。