JP2008248259A - 樹脂組成物、その成形体及び成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、その成形体及び成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、耐溶剤性、成形性に優れる成形体用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】次の(A)〜(C)成分を含有してなる樹脂組成物を提供する。
(A)メチルメタクリレートを50重量%を超える量で含有する単官能不飽和単量体を50重量%を超え95重量%以下、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体を5重量%以上〜50重量%未満含有する不飽和単量体混合物を30〜60重量部
(B)メチルメタクリレートを50重量%以上含有する不飽和単量体の重合体であって、20〜100重量%の部分的に架橋した樹脂粒子と0〜80重量%の非架橋の樹脂粒子からなり、平均粒子径が1〜32μmの樹脂粒子を40〜70重量部
(C)ラジカル重合開始剤を成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部
【選択図】なし

Description

本発明は耐熱性、耐溶剤性、成形性に優れる成形体用樹脂組成物及びその成形体に関する。
メチルメタクリレートを主成分とするメタクリル系樹脂は、透明性、表面光沢、耐候性、機械的性質などに優れているため、照明器具、自動車用部品、看板、建材など各種用途に広く利用されている。
一般的なメタクリル系樹脂は、有機溶剤に対する耐溶剤性は必ずしも充分ではなく、有機溶剤に接触した際に白化やひび割れを発生することがある。そのため、耐溶剤性を付与するために種々の方法が提案されている。
耐溶剤性を付与する方法として、メタクリル系樹脂を重合する際に1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体を添加して架橋重合体とする方法がある。しかし、この方法で得られた架橋重合体は高温で溶融しなくなるため、射出成形などの成形方法を適用することは出来ない。
また、他の方法として、例えば、特開平10−45809号公報(特許文献1)にはメタクリル酸メチル60〜100重量%と他の共重合可能なビニル系モノマー40〜0重量%からなる樹脂成分100重量部と、サリチル酸0.001〜0.03重量部およびサリチル酸ナトリウム0.001〜0.03重量部とから製造されるメタクリル樹脂注型重合品が開示されている。
特開平10−45810号公報(特許文献2)には、メタクリル酸メチル60〜100重量%と他の共重合可能なビニル系モノマー40〜0重量%からなる樹脂成分100重量部と、特定構造で示されるカテコール及びその誘導体から選ばれる一種以上の成分とから製造されるメタクリル樹脂注型重合品が開示されている。
特開平10−45809号公報 特開平10−45810号公報
特開平10−45809号公報、特開平10−45810号公報に記載の方法はいずれも注型重合で、原料液を型内に注入できる粘度にする必要がある。そのため、必然的に未反応の不飽和単量体の含有量は多くなり、3次元成形品の製造にはおいては重合収縮によるヒケやクラックなどの欠陥の発生が問題となる。また、注型重合であるため硬化に要する時間は一般的に長時間を要し、工業的には不利である。
本発明者はかかる事情に鑑み、耐熱性が高く、耐溶剤性に優れた樹脂成形体を安定的に容易に製造する方法を鋭意検討した結果、
(A)メチルメタクリレートを50重量%を超える量で含有する単官能不飽和単量体を50重量%を超え95重量%以下、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体を5重量%以上〜50重量%未満含有する不飽和単量体混合物を30〜60重量部、(B)メチルメタクリレートを50重量%以上含有する不飽和単量体の重合体であって、20〜100重量%の部分的に架橋した樹脂粒子と0〜80重量%の非架橋の樹脂粒子からなり、平均粒子径が1〜32μmの樹脂粒子を40〜70重量部、(C)ラジカル重合開始剤を成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部を用いることによって、耐熱性が高く、耐溶剤性に優れたメタクリル系樹脂成形体を安定的に容易に製造できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は次のとおりである。
(1)次の成分(A)〜(C)を含有してなる樹脂組成物。
(A)メチルメタクリレートを50重量%を超える量で含有する単官能不飽和単量体を50重量%を超え95重量%以下、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体を5重量%以上〜50重量%未満含有する不飽和単量体混合物を30〜60重量部
(B)メチルメタクリレートを50重量%以上含有する不飽和単量体の重合体であって、20〜100重量%の部分的に架橋した樹脂粒子と0〜80重量%の非架橋の樹脂粒子からなり、平均粒子径が1〜32μmの樹脂粒子を40〜70重量部
(C)ラジカル重合開始剤を成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部
(2)前記(1)項記載の樹脂組成物を重合硬化してなる成形体。
(3)前記(1)項に記載の成分(A)〜(C)を混合して成形材料とし、ついでこの成形材料を加熱硬化することを特徴とする成形体の製造方法。
本発明によって、耐熱性、耐溶剤性に優れた成形体を安定的に容易に製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
メチルメタクリレートを主体とする不飽和単量体とは、メチルメタクリレートと他の共重合可能な単官能不飽和単量体の混合物をいい、メチルメタクリレートの含有量が50重量%を超えるものを言う。
ここでいう共重合可能な単官能不飽和単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのメタクリル酸又はアクリル酸と脂肪族、芳香族、脂環族アルコールとのエステル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類等の(メタ)アクリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル,無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、酢酸ビニル等の単官能不飽和単量体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらは単独もしくは2種以上混合して使用することが出来る。
メチルメタクリレートを主体とする不飽和単量体中のメチルメタクリレートの含有量は50%を超える量であるが、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体(多官能不飽和単量体)としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これは単独で又は2種以上を併用して使用される。
また、上記のメチルメタクリレートを主体とする不飽和単量体と1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体は、前者を50重量%を超え95重量%以下、後者を5重量%以上〜50重量%未満とすることが好ましい。
より好ましくは、前者を50重量%を超え90重量%以下、後者を10重量%以上〜50重量%未満の量とし、さらに好ましくは、前者を55重量%〜85重量%、後者を15重量%〜45重量%とする。
1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体の含有量が5重量%より少ないと、耐熱性や耐溶剤性が不充分であり、また逆に50重量%より多いと衝撃強度や機械的強度などの低下を招くことがあるため好ましくない。
成分(A)の不飽和単量体混合物は、成分(A)と(B)の合計100重量部のうち約30〜60重量部の範囲で用いる。約30重量部より少ないと樹脂組成物を成形する際に充分な流動性が得られない。逆に約60重量部より多い場合には、樹脂組成物混練後の表面のべとつきなどが大きく、また、形状維持も困難になるなど、取扱いが悪くなり、好ましくない。また、成形時の重合による収縮が大きくなり表面の平滑な成形体を得るのが困難になる。
成分(B)のメチルメタクリレートを主体とする不飽和単量体の重合体からなる樹脂粒子とは、メチルメタクリレートと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体の樹脂粒子をいい、その構成成分のうちメチルメタクリレートが50重量%以上を占めるものをいう。
ここでいうメチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体としては、上記の多官能不飽和単量体や単官能不飽和単量体が挙げられる。
多官能不飽和単量体としては、上記したものと同様のもの挙げられ、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、メチルメタクリレートと共重合が可能な単量体であれば良く、これらに限定されるものではない。
単官能不飽和単量体としては、上記したものと同様のもの挙げられ、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのメタクリル酸又はアクリル酸と脂肪族、芳香族、脂環族アルコールとのエステル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類等の(メタ)アクリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル,無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、酢酸ビニル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
樹脂粒子として、例えば、乳化重合、懸濁重合、分散重合などの重合で得られる樹脂粒子が用いられる。また、他の重合方法で得られた重合体を粉砕した樹脂粒子も用いることができる。
樹脂粒子の大きさとしては、通常、約1〜100μmのものが好適に用いられる。約1μmより小さい樹脂粒子を使用した場合には、成分(A)の不飽和単量体混合物との混合、混練が困難となりやすく、また逆に約100μmを越える大きさの樹脂粒子を使用した場合には、成形後に粒子形状が目立つことがあるために好ましくない。
なお、この樹脂粒子のうち、約20〜100重量%は部分的に架橋した樹脂粒子を、約0〜80重量%は非架橋の樹脂粒子を用いる。樹脂粒子のうち、部分的に架橋した樹脂粒子の占める割合が約20重量%より少なくなると、樹脂組成物を混合、混練した後に得られる成形材料の取扱性が悪くなるため好ましくない。
ここでいう部分的に架橋した樹脂粒子とは、アセトンなどのように、一般的にメチルメタクリレートを溶解することができる溶媒に対して、膨潤はするが、完全に溶解しない樹脂粒子である。
このような樹脂粒子は、メチルメタクリレートを約50重量%以上含有し、これと共重合可能な不飽和単量体との混合物を重合して樹脂粒子又は重合体を作製する際に、多官能不飽和単量体を添加することによって得ることができる。
成分(B)の樹脂粒子は、成分(A)及び(B)の合計100重量部のうち、約40〜70重量部の範囲で用いられる。約40重量部より少ないと樹脂組成物を混合、混練した後に得られる成形材料の混合物のべとつきが大きくなり、取扱性が悪くなり、約70重量%より多い場合には均一な混合、混練が困難となり好ましくない。
この樹脂粒子には必要に応じて、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、離型剤、染料、顔料、無機系充填剤類などを添加することもできる。
本発明では、成分(A)の不飽和単量体混合物を重合硬化させるためにラジカル重合開始剤を添加する。
ラジカル重合開始剤としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンテン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2−シアノ−2−プロピラゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシ−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ化合物;ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどのジアシル、ジアルキルパーオキサイド系開始剤;t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、などのパーオキシエステル系開始剤;t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、などのパーカーボネイト系開始剤;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール系開始剤などが挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は単独で又は2種類以上を併用して用いられる。
これらの重合開始剤は、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して約0.1〜5重量部を用いる。約0.1重量部より少ないとラジカル重合を行うのに長時間かかり、また、約5重量部を越えた場合には成分(A)の不飽和単量体混合物を安定して重合できなくなるため好ましくない。
本発明の樹脂組成物には、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強剤などを添加することもできる。
次にこの樹脂組成物を成形する方法について説明する。
本発明における成形体の製造は、混練・熟成する工程と重合・硬化する工程の2工程からなる。
まず、混練・熟成する工程では、成分(A)〜(C)を混合し、最終的に均質な混合物が得られればよい。
具体的な方法として、例えば、成分(A)〜(C)を混合してスラリー状の樹脂組成物を得、これを適当な容器内で熟成する方法がある。
容器の形状は特に限定されない。また容器として、少なくとも2枚の平板と周囲をシールするシール材とから構成されるセルなども用いることができる。
容器の材質は、不飽和単量体混合物に溶解したり、浸食されないもので有れば特に制限はされない。
成分(A)〜(C)を混合後、容器に注入し、約20℃〜100℃、好ましくはこのましくは約30℃〜80℃、より好ましくは約30℃〜70℃にて熟成を行う。熟成工程中に不飽和単量体混合物(A)は樹脂粒子(B)内に含浸し、また、樹脂粒子(B)に非架橋粒子を使用した場合には非架橋粒子は(A)により溶解される。混合物の外観は、熟成工程中にスラリー状から粘土状もしくは粉末状に変化し、成形材料が得られる。
熟成時に約100℃を越えて加熱した場合には、添加したラジカル重合開始剤による重合、硬化反応が開始するため、好ましくない。また、約20℃より低い温度では熟成に長時間を要するため好ましくない。従って、熟成温度としては約20℃〜100℃の範囲が望ましい。
熟成の条件は使用する樹脂粒子、不飽和単量体混合物の組成、使用する重合開始剤の種類等によって適宜選択されるが、上記の熟成温度として、好ましくは、30〜80℃、より好ましくは、30〜70℃とするのが良い。
また、別の方法として例えば、成分(A)〜(C)を混合、混練する際に適当な温度を選択し、熟成も同時に行うことができる。その際には、混練のための装置として2軸押出機や万能混合機、ニーダー、バンバリーミキサーなど公知の混練装置を使用することが出来る。
次に重合・硬化する工程にて、種々の形状の成形型内に上記の粘土状の成形材料を投入し、加圧、加熱して賦型及び硬化反応を行い、種々の形状の成形体を得る。
本発明に適用できる成形方法としては、圧縮成形、射出成形、移送成形などが適用できる。また、加圧、加熱して賦型及び硬化反応を行う成形方法であれば、適用可能な成形方法はこれらに限定されるものではない。
ラジカル重合による硬化反応を行うには、約80〜200℃の温度に加熱して行う。約80℃を下回る場合には、硬化反応に長時間を要することとなり、工業的には不利となる。逆に約200℃を越えた温度で加熱した場合には分解や着色が起こることがある。
硬化反応の際の温度は樹脂組成物に使用するラジカル重合開始剤の種類や量、あるいは不飽和単量体の種類によって適宜選択されるが、好ましくは90〜150℃、さらに好ましくは90〜130℃の範囲とするのが良い。
本発明によって得られる樹脂組成物は、液晶表示の前面カバー、ディスプレイや各種モニターの前面カバー、各種機械カバー、フレネルレンズや時計レンズ、めがねレンズなどの各種レンズ類、コンパクトディスクやデジタルビデオディスクなどのディスク基板、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、メーターパネル、各種窓ガラス、ミラーなどの自動車関連部品、窓ガラス、間仕切りなどの建材部材、バスタブや洗面台あるいは流し台等の表層材、樹脂食器類、オーブンレンジの窓等の水周り関連部品、太陽エネルギー利用温水器カバー、各種表示板等の用途に利用できる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、評価方法は次のとおりである。
(1)成形材料の取扱性:
ポリエチレン製手袋を着用して触れた際のべとつきの程度により判断した。
(2)成形材料の成形性:
250×40mmの長方形平板成形型内に55gの成形材料を投入し、温度120℃、型締め圧力70kg/cm の条件で10分間加圧加熱して成形体を作製し、その外観から評価を行った。
(3)成形体の耐熱性:
JIS K7206により、針が1mm浸入したときの温度を耐熱性の指標とした。測定は180℃まで実施し、180℃の時点での浸入が1mm未満の場合は、浸入した量を求めた。
(4)成形体の耐溶剤性:
成形体より大きさ40×40mm、厚さ4mmの試験片を切り出した。試験片を50℃のエアーオーブン中で加熱し、30分間経過後、即座にエタノール(25℃)中に投入し、1分間保持した。続いてエタノールより取り出し、10分間風乾し、表面の変化やクラックの発生などを調べた。変化が見られない場合は再度、同じ操作を繰り返し行った。加熱、エタノール浸漬、風乾のサイクルは10サイクルまで実施した。
実施例1
500mlのポリカップにメチルメタクリレート40重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(FA−125M(日立化成工業(株)製))5重量部、懸濁重合で作成した部分的に架橋した樹脂粒子(メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート=99/1、クロロホルム不溶分80%、平均粒子径8μm)55重量部、重合開始剤(t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.29重量部を入れ、撹拌、混合してスラリー状の樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物をポリエチレン製の袋に注入し、密閉してから50℃の熱風乾燥炉に1時間放置して熟成した。室温まで冷却した後、袋から粉末状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取り扱い性を示した。また、成形体は透明で良好な外観を有していた。1mm浸入するときの温度は128.7℃であった。また、耐溶剤性テストでは10サイクル経過後も変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
実施例2
メチルメタクリレートを30重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレートに代えて、エチレングリコールジメタクリレート(NKエステル2G(新中村化学(株)製))15重量部を用い、また重合開始剤として(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.31重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、粉末状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取り扱い性を示した。また、成形体は透明で良好な外観を有していた。耐熱性は180℃で0.943mm浸入した。
また、耐溶剤性テストでは10サイクル経過後も変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
実施例3
500mlのポリカップにメチルメタクリレート25重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(FA−125M(日立化成工業(株)製))20重量部、懸濁重合で作成した部分的に架橋した樹脂粒子(メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート=99/1、クロロホルム不溶分80%、平均粒子径8μm)45重量部、ポリメチルメタクリレート(スミペックスMHF 住友化学工業(株)製)10重量部、重合開始剤(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.31重量部を入れ、撹拌、混合してスラリー状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレン製の袋に注入し、密封してから60℃の熱風乾燥炉に7時間放置して熟成した。室温まで冷却した後、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で40rpmの回転数で1分間混合し、ゴム状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取扱性を示した。また、成形体は透明で良好な外観を有していた。1mm浸入するときの温度は164.5℃であった。また、耐溶剤性テストでは10サイクル経過後も変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
実施例4
500mlのポリカップにメチルメタクリレート20重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(FA−125M(日立化成工業(株)製))15重量部、部分的に架橋した樹脂粒子(スミペックスXC−1A、クロロホルム不溶分70%、平均粒子径32μm)65重量部、重合開始剤(t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.29重量部を入れ、撹拌、混合してスラリー状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレン製の袋に注入し、密封して50℃の熱風乾燥炉に1時間放置して熟成した。室温まで冷却した後、ゴム状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取扱性を示した。また、成形体は透明で良好な外観を有していた。1mm浸入するときの温度は138.7℃であった。また、耐溶剤性テストでは10サイクル経過後も変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
比較例1
ネオペンチルグリコールジメタクリレートの代わりにメチルメタクリレートを用い、メチルメタクリレートを合計45重量部とした以外は実施例1と同様にして、粉末状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取り扱い性を示した。また、成形体は透明だが表面に多数のヒケを発生し、凸凹であった。1mm浸入するときの温度は118.3℃であった。また、耐溶剤性テストでは2サイクル経過後に表面に白化が見られた。これらの結果を表1に示す。
比較例2
メチルメタクリレートを60重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを20重量部、部分的に架橋した樹脂粒子を20重量部とする他は実施例2と同様にして混合を行った。
得られた成形材料は液状でべとつきが著しいものであった。また、成形を試みたが金型の隙間より成形材料が溢れ出し、所定の成形体を得ることは出来なかった。これらの結果を表1に示す。
比較例3
メチルメタクリレートを15重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを5重量部、部分的に架橋した樹脂粒子を80重量部とする他は実施例3と同様にして粉末状の成形材料を得た。
この成形材料はべとつきも少なく良好な取り扱い性を示した。成形体は透明だが金型表面をきれいに転写することが出来ず、表面に多数の凸凹を発生した。
1mm浸入するときの温度は126.2℃であった。また、耐溶剤性テストでは2サイクル経過後に表面に白化が見られた。これらの結果を表1に示す。
Figure 2008248259

Claims (3)

  1. 次の成分(A)〜(C)を含有してなる樹脂組成物。
    (A)メチルメタクリレートを50重量%を超える量で含有する単官能不飽和単量体を50重量%を超え95重量%以下、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有する不飽和単量体を5重量%以上〜50重量%未満含有する不飽和単量体混合物を30〜60重量部
    (B)メチルメタクリレートを50重量%以上含有する不飽和単量体の重合体であって、20〜100重量%の部分的に架橋した樹脂粒子と0〜80重量%の非架橋の樹脂粒子からなり、平均粒子径が1〜32μmの樹脂粒子を40〜70重量部
    (C)ラジカル重合開始剤を成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部
  2. 請求項1記載の樹脂組成物を重合硬化してなる成形体。
  3. 請求項1に記載の成分(A)〜(C)を混合して成形材料とし、ついでこの成形材料を加熱硬化することを特徴とする成形体の製造方法。
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