JP2008248156A - ニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物、及びそれを用いたシート、成形品 - Google Patents

ニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物、及びそれを用いたシート、成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時にシート外観不良を発生させることなく、深絞り成形性及びトリミング時の抜き割れ防止性を向上させ、更に、二次成形時の低温成形性及び防曇剤塗布性に優れた二軸延伸スチレン系樹脂シート及びそれを用いた成形品及びこれらを構成する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】GPC-MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数が0.40〜2.50個であり、GPC-MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)が25万〜45万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.20〜3.00であり、且つ、GPC法により求められる重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が1.05〜1.28であり、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとを重合させた共重合樹脂を含有することを特徴とする二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、二軸延伸スチレン系樹脂シート及びそれを用いた成形品及びこれらを構成する樹脂組成物に関する。
二軸延伸スチレン系樹脂シートは、環境衛生、腰の強さ、シート外観(透明性、像鮮明性等)、成形性に優れている等の理由で食品包装容器やその他物品の包装容器に多く用いられている。その二次成形方法としては、接触加熱式圧空成形法、間接加熱式真空成形法、圧空成形法等が知られており、中でもシートと熱板とを接触加熱させ、軟化したシートを熱板からの加圧により金型へ押し付けて賦形させる、所謂、接触加熱式圧空成形法が一般的に用いられている。これらの方法で得られた成形品は、各種方法で打ち抜かれて使用される。しかし、成形品を重ねて打ち抜く際、成形品が割れる場合があり、この改善が求められている。これに加え、近年、シート外観を維持し、生産効率向上のために、特に成形サイクルの短縮(低温成形性や深絞り成形性)、防曇剤塗布性の更なる向上が求められている。
そこで、二次成形時の深絞り成形性を向上させ、かつ、抜き割れ防止性を向上させた二軸延伸スチレン系樹脂シートとして、内部潤滑剤を0.8〜2.5wt%含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、深絞り成形性の向上は図れるものの、抜き割れ防止性については満足する効果が得られない。さらに、内部潤滑剤を多く含むため、シート製膜時の溶融押出し工程で発生する該内部潤滑剤の揮発分がシート製造装置に凝集付着し、これがシートに転写することで外観不良を発生させる場合がある。更に、シート表面に内部潤滑剤がブリードアウトし、防曇剤の塗布性が低下する。
また、抜き割れ防止性向上のために、スチレン系樹脂にスチレン−ブタジエンブロック共重合体(以下SBブロック共重合体)をスチレン系樹脂に添加する方法(例えば、特許文献2参照)や、スチレン系樹脂にSBブロック共重合体と耐衝撃性ポリスチレン樹脂を添加する方法(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。
これらの方法では、透明性や像鮮明性の低下が問題となる。また、SBブロック共重合体は熱安定性に劣り、溶融押出し時にゲル状物質が発生し易く、シート外観や、シート製膜時の生産性に問題を発生させる場合がある。
更に、GPC法により求められた重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が1.3〜1.8であるスチレン系樹脂と可塑剤からなる樹脂組成物を用いた発泡シートが提案されている(特許文献4参照)。しかし、主成分であるスチレン系樹脂のMw/Mpが大きいため、高分子量スチレン系樹脂の比率が高まり、かかる樹脂組成物を用いて二軸延伸シートに成形すると、像鮮明性や可撓性が不充分であり、例えばフードパック等の外観と強度が重要視される成形品への用途には適さないものである。
一方、分岐状マクロモノマーを用いスチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体に分岐構造を導入した組成物が開示されている(特許文献5)。しかしながら、当該技術では、成形サイクルの短縮や、より高度なシート外観については検討されていない。
また、特許文献6には、特定の分子量分布を有する二軸延伸シートについて開示されている。しかし、当該技術では、成形サイクルの短縮や、より高度なシート外観については検討されていない。
更に、特定の分岐数と特定の分子量分布を有するスチレン系樹脂シートについて開示されている(特許文献7)。しかし、当該技術においても、成形サイクルの短縮や、より高度なシート外観については検討されていない。
特開平1−185333号公報 特開昭49−98857号公報 特開昭58−129038号公報 特開2003−49033号公報 特開2006−124498号公報 特開2005−179389号公報 特開2006−273914号公報
本発明が解決しようとする課題は、二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時にシート外観不良を発生させることなく、深絞り成形性及びトリミング時の抜き割れ防止性を向上させ、更に、二次成形時の低温成形性及び防曇剤塗布性に優れた二軸延伸スチレン系樹脂シート及びそれを用いた成形品及びこれらを構成する樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、GPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)、GPC法により求められる重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が特定の範囲であるスチレン系樹脂組成物を使用することにより、二軸延伸スチレン系樹脂シートの製膜時にシート外観不良を発生させず、また、深絞り成形性及びトリミング時の抜き割れ性を向上させることが出来ることを見出した。更に、本発明者等はスチレン系樹脂組成物を構成する樹脂として、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとを重合させた共重合樹脂を使用することにより、上記の効果に加え、二次成形時の低温成形性及び防曇剤塗布性も向上させることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、GPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数が0.40〜2.50個であり、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)が25〜45万であり、かつ、GPC法により求められる重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が1.05〜1.28でありスチレン系単量体とアクリル酸エステルとを重合させた共重合樹脂を含有することを特徴とする二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物により形成された二軸延伸スチレン系樹脂シート及び該シートを加熱成形した成形品を提供するものである。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、二軸延伸スチレン系樹脂シートを製膜する際にシート外観不良を発生せず、二次成形時に二軸延伸スチレン系樹脂シートの特徴であるシート外観(透明性、像鮮明性、平滑性等)を損なうことなく、深絞り成形性および抜き割れ防止性、更に低温成形性、防曇剤塗布性に優れており、それを用いて得られる成形品は、食品包装容器やその他物品の包装容器、又はそれらの部材として有用である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のニ軸延伸スチレン系樹脂シートを形成するスチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体は、GPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数が0.40〜2.50個であり、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)が25〜45万であり、かつ、重量平均分子量(Mw)ピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が1.05〜1.28である。
ここで、スチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体としては、GPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数が重要となる。このGPC―MALSより求められる分岐数は、例えば次の方法により算出される。
(i)高速液体クロマトグラフィー(Shodex社製HPLC、検出器:Wyatt Technolgy社製DAWN EOS,Shodex社製RI−101、カラム:Shodex社製KF−806L×2、溶媒:THF、流量:1.0ml/min)にて絶対分子量を測定し、Wyatt Technology社製解析ソフトASTRAにて重量平均慣性半径を求めた。
(ii)分岐したスチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体の重量平均慣性半径(RwB)と、直鎖状のスチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体の重量平均慣性半径(RwL)を式(1)に代入しgを算出し、次いで式(2)により1分子あたりの分岐数(n)を算出する。
式(1) g=(RwB)/(RwL)
式(2) g=(1/n)×ln(1+n)
そして、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体のGPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数は0.40〜2.50個、好ましくは0.50〜2.00個、さらに好ましくは0.55〜1.80個である。分岐数が0.40未満の場合、成形性及び二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度が不十分で、かつ二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の外観が低下する。また、分岐数が2.50を超える場合、ゲル状物質が生成され外観が損なわれる。
また、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体としては、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が重要となる。GPC−MALLS法による重量平均分子量及び分子量分布は、例えば分岐数を求める際に使用した機器を使用し、同条件にて測定でき、Wyatt社製解析ソフトにより解析できる。そしてスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の重量平均分子量と分子量分布は25万〜45万と1.90〜3.00であり、好ましくは27万〜43万と2.00〜2.80である。重量平均分子量が25万未満の場合、二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度が不十分であり、45万を超えると二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性に劣る。また、分子量分布が1.90未満であると二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性に劣り、分子量分布が3.00を超えると二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度が不十分となる。
さらに、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体としては、GPC法による重量平均分子量とピーク分子量との比が重要となる。GPC法による重量平均分子量とピーク分子量との比は、例えば次のような測定により求められる。高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製HLC−8220GPC、検出器:RI検出器、カラム:TSKgel G6000H×1+G5000H×1+G4000H×1+G3000H×1+TSKguard colummH×1−H、溶媒:THF、流量:1.0ml/min、温度40℃)を用いて、標準ポリスチレンにより標準校正曲線を作成し、溶出体積における重量分率と分子量より重量平均分子量(Mw)を求められる。一方、ピーク分子量は、クロマトグラムのピークに相当する直鎖スチレン換算分子量として求められる。そして本発明のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の重量平均分子量とピーク分子量との比は1.05〜1.28であり、好ましくは1.08〜1.24である。重量平均分子量とピーク分子量との比が1.05未満の場合、二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性に劣ると共に二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度が低下し、1.28を超えると二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の像鮮明度が不十分となる。
尚、本発明で使用されるスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体では、GPC−MALLS法により求められる数平均慣性半径(Rn)と、数平均慣性半径と重量平均慣性半径(Rw)の比(Rw/Rn)も必要により検討され得るものである。かかるGPC−MALLS法による数平均慣性半径と、数平均慣性半径と重量平均慣性半径の比は、例えば分岐数を求める際に使用した機器を使用し、同条件にて測定でき、Wyatt社製解析ソフトにより解析できる。そしてスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の数平均慣性半径は好ましくは10〜30nmであり、より好ましくは13〜25
nmである。また、数平均慣性半径と重量平均慣性半径の比(Rw/Rn)は1.0〜2.0であり、より好ましくは1.0〜1.8である。スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の数平均慣性半径が上記範囲であれば二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度がより高くなり、二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性に優れる。また、数平均慣性半径と重量平均慣性半径の比(Rw/Rn)が上記範囲であると二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性に優れ、二軸延伸スチレン系樹脂シートやそれを用いた成形品の強度がより向上する。
前記スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体は、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体、スチレン系単量体とアクリル酸エステル及びこれら単量体と共重合可能な共重合性ビニル単量体との共重合体などで構成する。前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、ターシャリーブチルスチレン、o−ブロムスチレン、m−ブロムスチレン、p−ブロムスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。好ましいスチレン系単量体には、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
また、アクリル酸エステルはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。中でもアクリル酸ブチルを用いることが好ましい。
スチレン系単量体とアクリル酸エステル及びこれら単量体と共重合可能な共重合性ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタアクリル酸n−エステル等のメタクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル等のビニル・シアン化合物類;メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸等の重合性不飽和脂肪酸;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−p−ブロモフェニルマレイミド、N−o−クロルフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等に代表される不飽和カルボン酸無水物類;アリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸−アミノプロピル等のアミノ基含有不飽和化合物類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等アクリルアミド系化合物があげられる。これらの共重合性ビニル単量体は単独または2種以上組み合わせてスチレン系単量体と共重合させても構わない。
本発明で使用されるスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体に上記の特定の分岐数及び分子量分布を達成するには、特に制限は無く、多官能重合開始剤、多官能連鎖移動剤、多官能モノマー、多分岐状マクロモノマーを用いる事ができるが、中でも、多官能重合開始剤及び多分岐状マクロモノマーを用いる事が好ましい。更に、ゲル化の観点から多分岐状マクロモノマーを用いることが好ましい。多官能重合開始剤においては、好ましくは4官能性重合開始剤が好ましい。例えば、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられるが、中でも2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが好ましい。
多分岐状マクロモノマーにおいては、複数の分岐を有し、且つその先端部に複数の重合性二重結合を有するものである。また、そのGPCによる質量平均分子量(Mw)が、好ましくは1000〜30000、より好ましくは2000〜10000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。また分子中のその重合性二重結合の含量が好ましくは1.0〜5.0mmol/g、より好ましくは1.5〜3.5mmol/gである。
尚、本発明では、多分岐状マクロモノマーをスチレン系単量体とアクリル酸エステルに対して好ましくは50ppm〜3000ppm、より好ましくは100ppm〜1500ppmの比率で用いるのが好適である。かかる比率であると、多分岐状ポリスチレンの生成が容易であり、ゲル化の抑止をすることが簡便である。
本発明のスチレン樹脂組成物に含まれる多分岐状ポリスチレンの分岐構造には、特に制限はないが、電子吸引基と該電子吸引基に結合する結合手以外の3つの結合手すべてが炭素原子に結合している飽和炭素原子とからなる分岐構造を含有するもの及びエーテル結合、エステル結合及びアミド結合から選ばれる繰り返し構造単位からなる分岐構造を含有するものが好ましい。
多分岐状ポリスチレンの分岐構造は、スチレン系単量体とアクリル酸エステルを共重合させる多分岐状マクロモノマーに由来するものである。本発明のスチレン樹脂組成物に含まれる多分岐状スチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体の分岐構造の電子吸引基含有量は多分岐状スチレン系単量体とアクリル酸エステル共重合体1g当たり2.5×10−4ミリモル〜5.0×10−1ミリモル、好ましくは5.0×10−4ミリモル〜5.0×10−2ミリモルである。
本発明において使用する多分岐状マクロモノマーには、多分岐鎖を有するモノマーであること以外には特に限定はないが、その好ましいものの一つとして1分子中に電子吸引基と該電子吸引基に結合する結合手以外の3つの結合手すべてが炭素原子に結合している飽和炭素原子とから成る分岐構造と、芳香環に直接結合した二重結合とを含有する多分岐状マクロモノマーがある。この多分岐状マクロモノマーは、AB型モノマーから誘導されるハイパーブランチマクロモノマーであり、図1に模式的に示すような分岐構造を有する。
このような分岐構造は、電子吸引基が結合した活性メチレン基の求核置換反応によって容易に得られる。電子吸引基としては、例えば、−CN、−NO、−CONH、−CON(R)、−SOCH、−P(=O)(OR)、などがあげられ、これらの電子吸引基が結合したメチレン基が芳香環またはカルボニル基に直接結合している場合は、メチレン基の活性はさらに高いものとなる。
本発明に用いる多分岐状マクロモノマーとしては、例えば、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する分岐鎖を有する多分岐状マクロモノマーが挙げられる。
一般式(1)
Figure 2008248156
[式中、Yは−CN、−NO、−CONH、−CON(R)、−SOCH、−P(=O)(OR)(ここでRはアルキル基またはアリール基を表す)から成る群から選ばれる電子吸引基であり、Yはアリーレン基、−O−CO−または−NH−CO−であり、Zは−(CHO−、−(CHCHO)−、−(CHCHCHO)−から成る群から選ばれる基であり、かつYが−O−CO−または−NH−CO−である場合はZは−(CH−、−(CHAr−、−(CHO−Ar−、−(CHCHO)−Ar−、または−(CHCHCHO)−Ar−(ここでArはアリール基である)を表す]
ここで、Yは例えば、
Figure 2008248156
から成る群から選ばれるアリーレン基である。なかでもYは−CN、Yはフェニレン基が好適である。Yがフェニレン基である場合は、Zの結合位置はo−位、m−位又はp−位のいずれであってもよく特に制限されるものではないが、p−位が好ましい。またZの繰り返し数nは特に制限されるものではないが、スチレンへの溶解性の点から1〜12が好ましく、更に好ましくは2〜10が好ましい。
上記分岐構造を有する多分岐状マクロモノマーは、塩基性化合物の存在下で、(1)1分子中に活性メチレン基と、活性メチレン基の求核置換反応における脱離基とを有するAB型モノマーを求核置換反応させて得られる多分岐状の自己縮合型重縮合体を前駆体として、
(2)該重縮合体中に残存する未反応の活性メチレン基またはメチン基を、1分子中に芳香環に直接結合した二重結合と活性メチレン基の求核置換反応における脱離基とを有する化合物と求核置換反応させることによって得られる。
ここで、活性メチレン基の求核置換反応における脱離基とは、いずれも飽和炭素原子に結合したハロゲン、−OS(=O)R(Rはアルキル基またはアリール基を表す)などであり、具体的には、臭素、塩素、メチルスルホニルオキシ基、トシルオキシ基などが挙げられる。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強アルカリが好適であり、反応に際しては水溶液として使用する。
1分子中に活性メチレン基と活性メチレン基の求核置換反応における脱離基とを有するAB型モノマーとしては、たとえばブロモエトキシ−フェニルアセトニトリル、クロロメチルベンジルオキシ−フェニルアセトニトリルなどのハロゲン化アルコキシ−フェニルアセトニトリル類、トシルオキシ−(エチレンオキシ)−フェニルアセトニトリル、トシルオキシ−ジ(エチレンオキシ)−フェニルアセトニトリルなどのトシルオキシ基を有するフェニルアセトニトリル類が挙げられる。
1分子中に芳香環に直接結合した二重結合と、活性メチレン基の求核置換反応における脱離基とを有する代表的な化合物としては、たとえば、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレンなどが挙げられる。
上記(1)は前駆体としての重縮合体を合成する反応であり、(2)は前駆体に芳香環に直接結合した二重結合を導入して多分岐状マクロモノマーを合成する反応である。(1)の反応と(2)の反応は、それぞれの反応を逐次的に行うことができるが、同一の反応系で同時に行うこともできる。多分岐状マクロモノマーの分子量は、単量体と塩基性化合物との配合比を変えることによって制御することができる。
本発明において使用する多分岐状マクロモノマーの好ましいものの他のものとして、好ましくはエステル結合、エーテル結合及びアミド結合から選ばれる繰り返し構造単位からなる分岐構造と、分岐末端のエチレン性二重結合とを含有する多分岐状マクロモノマーを挙げることができる。
エステル結合を繰り返し構造単位として有する多分岐状マクロモノマーは、分子鎖を形成するエステル結合のカルボニル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換されている分子鎖からなる多分岐ポリエステルポリオールに、ビニル基またはイソプロペニル基などのエチレン性二重結合を導入したものである。多分岐ポリエステルポリオールにエチレン性二重結合を導入する場合、エステル化反応や付加反応によって行なうことができる。
尚、上記多分岐ポリエステルポリオールとして、Perstorp社製「Boltorn H20、H30、H40」が市販されている。
上記多分岐ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一gにあらかじめエーテル結合やその他の結合によって置換基が導入されていてもよいし、また、そのヒドロキシ基の一gが酸化反応やその他の反応で変性されていてもよい。
また、多分岐ポリエステルポリオールは、そのヒドロキシ基の一gが、あらかじめエステル化されていてもよい。
かかる多分岐状マクロモノマーの代表的なものとしては、例えば水酸基を1個以上有する化合物に、カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換され、且つ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸を反応することにより多分岐状ポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基である水酸基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物などを反応させて得られるものが挙げられる。尚、エステル結合を繰り返し構造単位として有する多分岐状ポリマーについては、タマリア(Tamalia)氏等による「Angew.Chem.Int.Ed.Engl.29」p138〜177(1990)にも記載されている。
上記水酸基を1個以上有する化合物としては、a)脂肪族ジオール、脂環式ジオール、又は芳香族ジオール、b)トリオール、c)テトラオール、d)ソルビトール及びマンニトール等の糖アルコール、e)アンヒドロエンネア−ヘプチトール又はジペンタエリトリトール、f)α−メチルグリコシド等のα−アルキルグルコシド、g)エタノール、ヘキサノールなどの一官能性アルコール、h)分子量が多くとも8000であり、かつ、アルキレンオキシド或いはその誘導体と、上記a)〜g)のいずれかから選択されたアルコールの1種以上のヒドロキシル基とを反応させることにより生成された水酸基含有ポリマーなどを挙げることができる。
脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールとしては、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリテトラヒドロフラン、ジメチロールプロパン、ネオペンチルプロパン、2−プロピル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール;1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。
トリオールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、グリセロール、1,2,5−ヘキサントリオールなどが挙げられる。
テトラオールとしては、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ジトリメチロールエタンなどを挙げることができる。
芳香環に結合した水酸基を2個以上有する芳香族化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどを挙げることができる。
カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換され、且つ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸としては、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などがある。かかるモノカルボン酸を使用することにより、エステル分解反応が抑制され、多分岐ポリエステルポリオールを形成することができる。
また、かかる多分岐状ポリマーを製造する際に、触媒を使用するのが好ましく、かかる触媒としては、例えばジアルキルスズオキシド、ハロゲン化ジアルキルスズ、ジアルキルスズビスカルボキシレート、あるいはスタノキサンなどの有機錫化合物、テトラブチルチタネートなどのチタネート、ルイス酸、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸などが挙げられる。
エーテル結合を繰り返し構造単位として有する多分岐状マクロモノマーは、例えば水酸基を1個以上有する化合物に水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物を反応することにより多分岐状ポリマーとし、次いで該ポリマーの末端基である水酸基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和酸、イソシアネート基含有アクリル系化合物、4−クロロメチルスチレンなどのハロゲン化メチルスチレンを反応させて得られるものが挙げられる。また、多分岐状ポリマーの製法としては、Williamsonのエーテル合成法に基づいて、水酸基を1個以上有する化合物と、2個以上の水酸基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物とを反応する方法も有用である。
水酸基を1個以上有する化合物としては、前記するものが使用することができる。
水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物としては、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。
Williamsonのエーテル合成法に於いて使用される水酸基を1個以上有する化合物としては、前記したものでよいが、芳香環に結合した水酸基を2個以上有する芳香族化合物が好ましい。かかる化合物の代表的なものとしては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,4−キシリレンジメタノール、1−フェニル−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。
また、2個以上の水酸基とハロゲン原子、−OSOOCH又は−OSOCHを含有する化合物としては、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−エチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
なお、上記多分岐状ポリマーを製造する際には、通常触媒を使用するのが好ましく、かかる触媒としては例えばBFジエチルエーテル、FSOH、ClSOH、HClOなどを挙げることができる。
また、アミド結合を繰り返し構造単位として有する多分岐状マクロモノマーとしては、例えば分子中にアミド結合を窒素原子を介して繰り返し構造となったものがあり、Dentoritech社製のゼネレーション2.0(PAMAMデントリマー)が代表的なものである。
多分岐状マクロモノマーに導入される分子末端に結合された二重結合の数が多いほど、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体である多分岐状スチレン系単量体とアクリル酸エステルの分岐度が高くなる。本発明に用いる多分岐状マクロモノマーの分岐度(DB)は、下記の式(3)により定義され、分岐度(DB)の範囲は0.3〜0.8が好ましい。
式(3) DB=(D+L)/(D+T+L)
(式中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す)
なお、上記D、LおよびTは、13C−NMRにより測定できる活性メチレン基及びその反応に由来する第2、第3、第4炭素原子数により求めることができ、Dは第4炭素原子数に、Lは第3炭素原子数に、Tは第2炭素原子数に相当する。
多分岐状マクロモノマーに導入される芳香環に直接結合した二重結合の含有量は、多分岐状マクロモノマー1g当たり0.1ミリモル〜5.5ミリモルであることが好ましく、0.5ミリモル〜3.5ミリモルがなお好ましい。0.1ミリモルより少ない場合は、高分子量の多分岐状のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体が得られにくく、5.5ミリモルを超える場合は、多分岐状のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の分子量が過度に増大する。
重合反応での反応物の粘性を低下させるために、反応系に有機溶剤を添加してもよく、その有機溶剤は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン等が挙げられる。
特に多分岐状マクロモノマーの添加量を多くしたい場合には、ゲル化を抑制する観点からも有機溶剤を使用することが好ましい。これにより、先に示した多分岐状マクロモノマーの添加量を飛躍的に増量させることができ、ゲル化が生じない。
更にスチレン樹脂組成物の分子量が過度に大きくなりすぎないように連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、連鎖移動基を1つ有する単官能連鎖移動剤でも連鎖移動剤を複数有する多官能連鎖移動剤を使用できる。単官能連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等が挙げられる。
多官能連鎖移動剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したものが挙げられる。
本発明に用いるスチレン系樹脂組成物を製造するには、上述のように多分岐状マクロモノマーとスチレン系単量体及びアクリル酸エステルとを1段で重合させる方法の他に、予め別々に合成した線状のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体と多分岐状のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体とを混合し、任意の混合比を有するスチレン系樹脂組成物を製造してもよい。
本発明で使用されるスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体としては、二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性、低温成形性、防曇剤塗布性を向上させることから、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとを、スチレン系単量体/アクリル酸エステル=95/5〜99.4/0.6の質量比で重合させた樹脂が好ましい。より好ましくは、96/3〜99.2/0.8が好ましく、更に好ましくは、97.5/2.5〜99.0/1.0が好ましい。アクリル酸エステルが、0.3%未満の場合、分岐数が低く深絞り成形性、低温成形性が劣り、かつ防曇剤塗布性も劣り、5%を超える場合は、耐熱性が劣るものとなる。スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの質量比を上記の範囲にすることにより、本発明の組成物の低温成形性及び防曇剤塗布性が良好となる。アクリル酸エステルの存在は、ガラス転移温度を低温化できる効果以外に、分岐の導入を容易とし、多分岐マクロモノマー等による分岐効果と相まってゲル化することなく高い分岐度が得られ延伸に対する耐性が向上する。特にアクリル酸エステルは、少量の添加で分岐構造を導入する効果が高い。
防曇剤塗布性については、例えば、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物により形成された二軸延伸スチレン系樹脂シートの表面にシリコンエマルジョンをコーターで塗布し、乾燥処理を行い、その後、シート表面を顕微鏡にて拡大観察すると、防曇剤が均一に塗布されているのが確認できる。したがって、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物により形成された二軸延伸スチレン系樹脂シートを用いて食品を包装した場合、食品から蒸発する水蒸気によりシート表面が曇り、中身が視認し難くなることがない。
更に、二軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性、低温成形性を向上させることから、メタノール可溶分として抽出される低分子量成分や可塑剤等を一定量含有する事ができる。メタノール可溶分は、例えば次のような方法で求められる。
試料1gを100mlのトルエンに24時間溶解後、撹拌下のメタノール800mlに落とし、静置、沈降後グラスフィルターにてろ過後、真空乾燥器にて24時間乾燥する。試料重量、乾燥後の重量及び次式より、メタノール可溶分を算出できる。
メタノール可溶分(%)=((試料重量−乾燥後の重量)/試料重量)×100
これにより測定されるメタノール可溶分は、0.5〜2.0質量%を含有していることが好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。更に好ましくは、0.5〜1.0質量%であることが好ましい。0.5質量%未満の場合、深絞り成形性、低温成形性に劣り、2.0質量%を超える場合、二軸延伸スチレン系樹脂シートの製膜時や容器への成形時に油汚れ、防曇剤の塗布ムラを発生しやすく、生産性に劣るものとなる。
本発明で使用されるスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の製造方法としては、公知慣用のスチレンの重合方法を使用することができる。重合方式には特に限定はないが、塊状重合、懸濁重合、あるいは溶液重合が好ましい。また、重合に必要な懸濁剤や乳化剤などのような重合助剤は、通常のポリスチレンの製造に使用される慣用のものを使用できる。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートの厚みは、特に限定するものではないが、加熱成形性が良好となる0.01〜0.5mmが好ましい。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートにはアンチブロッキング効果を付与するために各種微粒子を添加することが出来る。前記微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂架橋粒子、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂架橋粒子、ポリウレタン系樹脂架橋粒子等の樹脂架橋粒子;シリカ、疎水化処理シリカ、球状シリカ、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の無機微粒子、スチレングラフトジエンゴム等のゴム微粒子等が挙げられる。特に、ニ軸延伸スチレン系樹脂シート及びそれを用いた成形品の強度とアンチブロッキング性並びに剥離性を向上させることから、スチレングラフトジエンゴムが特に好ましい。ここで、スチレングラフトジエンゴムとしては、二軸延伸スチレン系樹脂シートとそれを用いた成形品の強度と外観のバランスに優れたものが得られることから、平均粒子径が0.1〜5.0μmで、且つ、ジエン成分が0.05〜3.0質量%の範囲となるように二軸延伸スチレン系樹脂シートに含有したものが良い。より高い透明性を得るには、0.05〜0.5質量%を含有することが好ましい。
スチレングラフトジエンゴムの含有方法としては、上記スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の製造時にジエンゴムを溶解して重合する方法、及びジエンゴムを5〜12質量%含有したグラフト型ゴム変性ポリスチレン系樹脂と、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体、又は、スチレン系単量体とアクリル酸エステルと共重合可能な共重合性ビニル単量体との共重合体などで構成するスチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体を任意に混合する方法のいずれでも良い。グラフト型ゴム変性ポリスチレン系樹脂を混合する場合、平均粒子径が0.1〜5.0μmで、且つ、ジエン成分が0.05〜3.0質量%の範囲となるのであれば、それらを1種又は2種以上使用出来る。
また、ニ軸延伸スチレン系樹脂シート製膜時の延伸性と容器に成形する二次成形時の深絞り成形性、低温成形性を向上させることから、ミネラルオイルを含有してもよい。ただし、溶融押出し時に発生するミネラルオイルの揮発分がシート製造装置に凝集付着し、これがシートに転写することで二軸延伸スチレン系樹脂シートの外観不良を防止するため、0.5質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明で使用するミネラルオイルとしては、流動パラフィンや鉱油等とも呼称される飽和炭化水素化合物の混合物であって、ASTM D1160による2.5%留出温度が260℃以上のものであり、更に好ましくは280℃以上である。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来の延伸シートの製造において慣用されている方法で行えばよい。その一例は、樹脂を押出機に供給し、溶融混錬した後、Tダイ又はサーキュラーダイなどで連続して押出し、シートをテンター法、バブル法等で連続的に逐次又は同時に二軸延伸する方法である。
これらのシートの延伸倍率は、縦方向および横方向共に1.2〜7倍、好ましくは1.5〜7倍、更に好ましくは1.8〜5倍である。また、延伸温度はシートを構成する樹脂のビカット軟化点+5〜50℃、好ましくは+10〜35℃である。延伸倍率が1.2倍未満および/または延伸温度がビカット軟化点の+50℃より高い場合、延伸配向度が低くなり、二軸延伸スチレン系樹脂シートおよびそれを用いた容器の強度が十分ではない。また、延伸倍率が8倍を超えるおよび/または延伸温度がビカット軟化点の+5℃より低い場合、延伸時のシート切れや、容器に成形する二次成形時の深絞り成形性が低下する等の問題が発生する。
また、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートの配向度は、ASTM D−1504に準じて測定した配向緩和応力が、縦方向と横方向共に好ましくは0.3〜1.2MPa、好ましくは0.4〜1.0MPaの範囲にあるのがよい。配向緩和応力が0.3MPa未満の場合、トリミング時の抜き割れ防止性に劣り、また、1.2MPaを超えると深絞り成形性が劣る。
また、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、防曇剤又は離型剤を少なくとも片面又は両面に塗布することができる。防曇剤及び離型剤を併用しても良い。防曇剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体等のノニオン系界面活性剤等であり、これらを単独又は混合物で使用できる。離型剤としては、例えば、シリコーンオイルやそのエマルジョン等である。また、各種ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を帯電防止剤として塗布しても良い。これらの塗布方法としては、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、ローターダンプニングコーター、アプリケーター方式等が挙げられる。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、意匠性や機能性等を付与するため、シートの表面に印刷を施すことや、バリア性、抗菌性、ヒートシール性等の機能性を持つ樹脂をラミネートしてもよい。また、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートを発泡シートにラミネートする等、容器の一部として使用しても良い。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、直接加熱方式又は間接加熱方式によって加熱され、成形されて、本発明の成形品とすることが出来る。加熱成形の方法としては、特に限定されるものではなく、真空成形機、圧空成形機、熱板圧空成形機、圧空真空成形機等を用いて通常の方法により行うことが出来る。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないし、またこれらに限定するつもりもない。
なお、各特性値は以下の方法により測定・評価を行った。
(1)分岐数
高速液体クロマトグラフィー(Shodex社製HPLC、検出器:Wyatt Technolgy社製DAWN EOS,Shodex社製RI−101、カラム:Shodex社製KF−806L×2、溶媒:THF、流量:1.0ml/min)にて絶対分子量を測定し、Wyatt Technology社製解析ソフトASTRAにて重量平均慣性半径を求め、次いで分岐スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の重量平均慣性半径(RwB)と、直鎖スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体の重量平均慣性半径(RwL)を式(1)に代入しgを算出し、更に式(2)により1分子あたりの分岐数(n)を算出した。
式(1) g=(RwB)/(RwL)
式(2) g=(1/n)×ln(1+n)
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
上記の分岐数を求める際に使用した機器を使用し、同条件にて測定し、Wyatt社製解析ソフトにより解析した。
(3)重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)の比(Mw/Mp)
高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製HLC−8220GPC、検出器:RI検出器、カラム:TSKgel G6000H×1+G5000H×1+G4000H×1+G3000H×1+TSKguard colummH×1−H、溶媒:THF、流量:1.0ml/min、温度40℃)を用いて、標準ポリスチレンにより標準校正曲線を作成し、溶出体積における重量分率と分子量より重量平均分子量(Mw)を求めた。一方、ピーク分子量は、クロマトグラムのピークに相当する直鎖スチレン換算分子量として求めた。
(4)メタノール可溶分
試料1gを100mlのトルエンに24時間溶解後、撹拌下のメタノール800mlに落とし、静置、沈降後グラスフィルターにてろ過後、真空乾燥器にて24時間乾燥した。メタノール可溶分は次式で算出した。
メタノール可溶分(%)=((試料重量−乾燥後の重量)/試料重量)×100
(5)配向緩和応力
ASTM D−1504に準じて測定した。
(6)透明性
JIS K−7105に準じてヘーズ値を測定した。
(7)像鮮明性
JIS K−7105に準じて、クシ間隔0.5mmとして像鮮明度を測定した。
(8)抜き割れ防止性
評価用二軸延伸スチレン系樹脂シートを用いて単発式熱板圧空成形機(関西自動成型機(株)製)で、加熱温度123℃、加熱圧力0.1MPa、加熱時間2.0秒、成形圧力0.4MPa、成形時間2秒、金型温度60℃の条件にてフードパックを成形し、50枚重ねてプレス式打ち抜き機で打ち抜いて、成形品に割れが発生する割合により抜き割れ防止性を評価した。
◎:割れている割合0%
○:割れている割合2%未満
△:割れている割合2%以上10%未満
×:割れている割合10%以上
(9)深絞り成形性
評価用二軸延伸スチレン系樹脂シートを用いて単発式熱板圧空成形機(関西自動成型機(株)製)で、加熱温度117℃、加熱圧力0.1MPa、加熱時間2.0秒、成形圧力0.4MPa、成形時間2秒、金型温度60℃の条件にて成形し、成形品の口径と深さの比(絞り比)により深絞り成形性を評価した。絞り比が高い程、深絞り成形性が良好となる。
(10)低温成形性
評価用二軸延伸スチレン系樹脂シートを用いて単発式熱板圧空成形機(関西自動成型機(株)製)で、加熱圧力0.1MPa、加熱時間2.0秒、成形圧力0.4MPa、成形時間2秒、金型温度60℃の条件にて成形し、成形品(惣菜用容器蓋:縦×横×深さ=100×100×30mm)の嵌合部のR値が1.5mm(金型の嵌合部のR値:1.2mmに対し125%)となる加熱温度を測定した。加熱温度が低い程、深絞り成形性が良好となる。
(11)防曇剤塗布性
固形分濃度0.2質量%のシリコンエマルジョンをコーターで塗布後、乾燥処理を行い、シリコン塗布量が両面25mg/mの二軸延伸シートを得た後、シート表面を顕微鏡にて拡大観察し防曇剤の塗布状況を観察した。均一塗布:○、不均一塗布:×
[実施例1]
本実施例では、図1に示すように配列された装置を用いた。スチレン、アクリル酸ブチル及び溶媒などを含む混合溶液をプランジャーポンプ(1)により、撹拌式反応器(2)に供給した。その後、ギヤポンプ(3)により循環重合ライン(I)に供給した。循環重合ライン(I)は、入口から順に内径2.5インチ管状反応器(スイス国、ゲブリュー・ズルツァー社製SMXスタティックミキサー)(4)、(5)、(6)及び混合溶液を循環させるためのギヤポンプ(7)から構成されている。(4)〜(6)の反応容積は約20Lである。管状反応器(6)とギヤポンプ(7)の間には非循環重合ライン(II)に続く出口が設けられている。非循環重合ライン(II)には、入口から順に上記と同様の管状反応器(8)、(9)、(10)とギヤポンプ(11)が直列に連結されている。(8)〜(10)の反応容積は約16Lである。
スチレン99部、アクリル酸ブチル1部、エチルベンゼン8部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:9.0リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:130℃
循環重合ライン(I)での反応温度:130℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:155〜165℃
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物1を得た。
得られたスチレン系樹脂1は、分岐数0.40、GPC−MALLS法による重量平均分子量25.8万、分子量分布(Mw/Mn)2.27、数平均慣性半径16.3nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.44、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.07、メタノール可溶分1.1%であった。
スチレン系樹脂1を押出機に供給し、溶融混練後Tダイよりシート状に溶融押出しシートを得た。このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[実施例2]
スチレン98部、アクリル酸ブチル2部、エチルベンゼン8部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整した以外は、実施例1と同条件にて重合した。
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物2を得た。
得られたスチレン系樹脂2は、分岐数0.46、GPC−MALLS法による重量平均分子量26.6万、分子量分布(Mw/Mn)2.28、数平均慣性半径18.1nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.58、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.09、メタノール可溶分1.0%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
(参考例1)多分岐状マクロモノマーの合成
<メタクリロイル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエステルポリオールの合成>
7%酸素導入管、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター、および攪拌機を備えた反応容器に、「Boltorn H20」10g、ジブチル錫オキシド1.25g、官能基(B)としてイソプロペニル基を有するメチルメタクリレート100g、およびヒドロキノン0.05gを加え、混合溶液中に3ml/分の速度で7%酸素を吹き込みながら、撹拌下に加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり15〜20gになるように加熱量を調節し、1時間ごとにデカンター内の留出液を取り出し、これに相当する量のメチルメタクリレートを加えながら4時間反応させた。
反応終了後、メチルメタクリレートを減圧下で留去し、残っているヒドロキシ基をキャッピングするために無水酢酸10g、スルファミン酸2gを加えて室温下、10時間撹拌した。濾過でスルファミン酸を除去し、減圧下で無水酢酸および酢酸を留去した後に、残留物を酢酸エチル70gに溶解し、ヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液20gで4回洗浄した。さらに7%硫酸水溶液20gで2回、水20gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.0045gを加え、減圧下、7%酸素を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基およびアセチル基を有する多分岐ポリエステル11gを得た。得られた多分岐ポリエステルの質量平均分子量は3000、数平均分子量は2100であり、多分岐ポリエステルポリオール(A)へのイソプロペニル基およびアセチル基導入率は、それぞれ55%および36%であった。
[実施例3]
スチレン98部、アクリル酸ブチル2部、エチルベンゼン8部、参考例1の多分岐状マクロモノマーをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し100ppm、重合開始剤t−ブチルパーオキシベンゾエートをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:9.0リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:130℃
循環重合ライン(I)での反応温度:130℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:150〜155℃
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物3を得た。
得られたスチレン系樹脂3は、分岐数0.87、GPC−MALLS法による重量平均分子量29.0万、分子量分布(Mw/Mn)2.03、数平均慣性半径21.6nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.01、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.15、メタノール可溶分0.9%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[実施例4]
スチレン98部、アクリル酸ブチル2部、エチルベンゼン8部、参考例1の多分岐状マクロモノマーをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し200ppm、重合開始剤t−ブチルパーオキシベンゾエートをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整した以外は、実施例3と同条件にて重合した。
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物4を得た。
得られたスチレン系樹脂4は、分岐数1.29、GPC−MALLS法による重量平均分子量31.6万、分子量分布(Mw/Mn)2.08、数平均慣性半径23.4nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.10、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.23、メタノール可溶分0.9%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[実施例5]
スチレン95部、アクリル酸ブチル5部、エチルベンゼン8部、参考例1の多分岐状マクロモノマーをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し200ppm、重合開始剤t−ブチルパーオキシベンゾエートをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整した以外は、実施例3と同条件にて重合した。
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物5を得た。
得られたスチレン系樹脂5は、分岐数1.79、GPC−MALLS法による重量平均分子量33.8万、分子量分布(Mw/Mn)2.38、数平均慣性半径24.4nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.10、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.26、メタノール可溶分0.9%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[実施例6]
スチレン95部、アクリル酸ブチル5部、エチルベンゼン8部、参考例1の多分岐状マクロモノマーをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し500ppm、重合開始剤t−ブチルパーオキシベンゾエートをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppm、連鎖移動剤n−ドデシルメルカプタンをスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し100ppmからなる混合液を調整した以外は、実施例3と同条件にて重合した。
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物6を得た。
得られたスチレン系樹脂6は、分岐数2.40、GPC−MALLS法による重量平均分子量34.2万、分子量分布(Mw/Mn)2.41、数平均慣性半径24.7nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.15、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.25、メタノール可溶分1.0%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[実施例7]
スチレン系樹脂1を99.4質量%と平均粒子径0.3μmのスチレングラフトジエンゴムをジエン成分として10%含有したグラフト型ゴム変性ポリスチレン樹脂を0.6質量%ドライブレンド混合した後、押出機に供給し、溶融混練しシートを得た。このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[比較例1]
実施例1と同様の反応装置を用い、以下の組成、重合条件により、連続的に重合させた。
スチレン88部、エチルベンゼン12部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:6.52リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:室温
循環重合ライン(I)での反応温度:125℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:150〜160℃
重合して得られた混合溶液を250℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物8を得た。
得られたスチレン系樹脂8は、分岐数0.07、GPC−MALLS法による重量平均分子量29.2万、分子量分布(Mw/Mn)2.37、数平均慣性半径14.5nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.57、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.10、メタノール可溶分1.1%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[比較例2]
スチレン97部、アクリル酸ブチル3部、エチルベンゼン8部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンに対し150ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:6.52リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:室温
循環重合ライン(I)での反応温度:112℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:146〜156℃
重合して得られた混合溶液を250℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物9を得た。
得られたスチレン系樹脂9は、分岐数0.76、GPC−MALLS法による重量平均分子量45.6万、分子量分布(Mw/Mn)3.2、数平均慣性半径25.9nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.20、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.38、メタノール可溶分1.0%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[比較例3]
スチレン97部、アクリル酸ブチル3部、エチルベンゼン6部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンに対し250ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:6.52リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:室温
循環重合ライン(I)での反応温度:109℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:115〜130℃
重合して得られた混合溶液を250℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物10を得た。
得られたスチレン系樹脂10は、分岐数0.80、GPC−MALLS法による重量平均分子量47.6万、分子量分布(Mw/Mn)3.0、数平均慣性半径26.3nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.40、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.29、メタノール可溶分1.0%であった。
実施例1と同様の押出機を用いシートを得た後に、このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[比較例4]
スチレン99.5部、アクリル酸ブチル0.5部、エチルベンゼン8部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンとアクリル酸ブチルの合計100部に対し150ppmからなる混合液を調整し、図1に示す装置を用いて下記条件で、連続的に重合させた。
混合溶液の供給量:9.0リットル/時間
撹拌式反応器での反応温度:130℃
循環重合ライン(I)での反応温度:130℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:155〜165℃
重合して得られた混合溶液を260℃の熱交換器で加熱し、5kPaの減圧下で揮発性成分を除去後、ペレット化して本発明のスチレン系樹脂組成物11を得た。
得られたスチレン系樹脂11は、分岐数0.23、GPC−MALLS法による重量平均分子量25.0万、分子量分布(Mw/Mn)2.32、数平均慣性半径16.0nm、慣性半径分布(Rw/Rn)1.48、GPC法による平均重量平均分子量とピーク分子量の比1.07、メタノール可溶分1.1%であった。
スチレン系樹脂1を押出機に供給し、溶融混練後Tダイよりシート状に溶融押出しシートを得た。このシートを単発延伸機により縦横方向共に2.5倍に延伸した。延伸温度は縦横方向とも配向緩和応力が0.6MPaとなるよう設定した。
[比較例5]
スチレン97部、アクリル酸ブチル3部、エチルベンゼン6部、重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)をスチレンに対し700ppmからなる混合液を調整し、25mlのアンプルにて気相を窒素置換した後封管して重合した。重合条件は下記の通り重合した所、ゲル化した。
110℃で3時間重合した後、115℃1時間、130℃1.3時間で重合した。
比較例1は透明性、像鮮明性に優れるものであったが、抜き割れ防止性と深絞り成形性、低温成形性、防曇剤塗布性に劣るものであった。比較例2は透明性が比較的良好であるものの、像鮮明性が不十分で、かつ、抜き割れ防止性も劣るものであった。比較例3は透明性、像鮮明性に優れるものであったが、抜き割れ防止性が劣るものであった。比較例4は、透明性、像鮮明性に優れるものであったが、抜き割れ防止性と深絞り成形性、低温成形性に劣るものであった。比較例5は、分岐剤量を増量するため、重合開始剤を増量したがゲル化し、成形加工に供するものは得られなかった。
Figure 2008248156

Figure 2008248156
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物は、優れた外観、透明性を有し、低温成形性や深絞り成形性および抜き割れ防止性等の加工性に優れるため、食品包装容器用シートやその他物品の包装容器用シートの原料として有用である。
共重合樹脂の製造装置の模式図。
符号の説明
(1):プラジャーポンプ
(2):撹拌式反応器
(3):ギヤポンプ
(4):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(5):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(6):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(7):ギヤポンプ
(8):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(9):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(10):静的ミキシングエレメントを有する管状反応器
(11):ギヤポンプ
(I):循環重合ライン
(II):非循環重合ライン

Claims (10)

  1. GPC−MALLS法により求められる絶対分子量73.4万における1分子当たりの分岐数が0.40〜2.50個であり、GPC−MALLS法により求められる重量平均分子量(Mw)が25万〜45万であり、GPC法により求められた重量平均分子量(Mw)とピーク分子量(Mp)との比(Mw/Mp)が1.05〜1.28のスチレン系単量体とアクリル酸エステルとを重合させた共重合樹脂を含有することを特徴とする二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  2. 前記共重合樹脂が、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとを、スチレン系単量体/アクリル酸エステル=95/5〜99.7/0.3の質量比で重合させた樹脂である請求項1記載の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  3. 前記共重合樹脂が、メタノール可溶分を0.5〜2.0質量%含有する請求項1又は2記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  4. 前記共重合樹脂が、数平均慣性半径(Rn)10〜30nmであり、且つ数平均慣性半径と重量平均慣性半径(Rw)との比(Rw/Rn)が1.3〜2.0である請求項1乃至3のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  5. 前記アクリル酸エステルがアクリル酸ブチルである請求項1乃至4のいずれかに記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  6. 更に、平均粒子径0.1〜5.0μmのスチレングラフトジエンゴムをジエン成分として0.05〜3.0質量%含有する請求項1乃至5記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  7. 更に、ミネラルオイルを0.5質量%以下含有する請求項1乃至6のいずれかに記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂シート用樹脂組成物により形成された二軸延伸スチレン系樹脂シート。
  9. 防曇剤および/または離型剤を、片面または両面に塗布してなる請求項8記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シート。
  10. 請求項8又は9記載のニ軸延伸スチレン系樹脂シートを加熱成形した成形品。
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