JP7025998B2 - 二軸延伸シートおよびその成形品 - Google Patents
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Description
(1)スチレン単量体単位とメタクリル酸単量体単位を84/16~94/6の質量比で含有し、重量平均分子量が12万~25万であるスチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)、重量平均分子量が35万~55万である多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)およびゴム成分を含有する耐衝撃性スチレン系樹脂(C)を含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、前記スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)と前記多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)の質量比(A)/(B)が70/30~95/5であり、前記二軸延伸シート中のゴム成分の含有量が0.05~0.3質量%であり、前記二軸延伸シート中のゴム成分が形成するゴム粒子の平均粒子径が1.2~12μmである二軸延伸シート。
(2)MD方向とTD方向の配向緩和応力がいずれも0.8~2.0MPaの範囲であり、かつMD方向とTD方向の引張弾性率がいずれも2800~3400MPaである前記(1)に記載の二軸延伸シート。
(3)MD向とTD方向の延伸倍率がいずれも2.0~4.5倍である前記(1)または前記(2)に記載の二軸延伸シート。
(4)厚みが0.01mm~0.7mmである前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(5)ゲル含有量が1.0質量%以下である前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(6)スチレン単量体の含有量が1000ppm以下であり、かつスチレンオリゴマーの総含有量が10000ppm以下である前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
(7)前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の二軸延伸シートからなる成形品。
(8)食品包装容器である前記(7)に記載の成形品。
(スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A))
スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)において、スチレンとメタクリル酸の共重合比率は、所望とする耐熱性と機械的強度等によって種々設定可能である。耐熱性、機械的強度、シートにしたときの透明性のバランスに優れた樹脂が容易に得られる点から、スチレン単量体単位とメタクリル酸単量体単位の合計量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位とメタクリル酸単量体単位を84/16~94/6の質量比で含有することが必要である。メタクリル酸単量体単位の含有量が6質量%未満であると、耐熱性が不足し、また電子レンジ加熱時に穴あき、変形が起こりやすくなる。メタクリル酸単量体単位の含有量は、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上である。一方、メタクリル酸単量体単位の含有量が16質量%を超えると、流動性の低下による製膜性の低下、二次成形時の賦型性の低下などの加工性の低下に加え、ゲル発生によるシート外観の低下が起こりやすくなる。メタクリル酸単量体単位の含有量は、好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。また、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)は、必要に応じて、発明の効果を損なわない限りにおいて、スチレンとメタクリル酸以外の他の単量体を適宜、共重合させてもよい。他の単量体の含有率は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5%質量以下、さらに好ましくは3質量%以下である。他の単量体の含有率が10質量%を超えると、スチレンまたはメタクリル酸の比率が低下し、十分な透明性、機械的強度及び耐熱性が得られない場合がある。
機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)とは、スチレンを含むビニル系モノマーと、溶剤可溶性多官能ビニル化合物共重合体(以下、「多官能ビニル共重合体」と記載する。)とを共重合させた樹脂である。多官能ビニル共重合体とは、多官能ビニルモノマーと単官能ビニルモノマーとの共重合体である。多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)をスチレン系樹脂組成物に含有させることによって、スチレン系樹脂組成物に、二軸延伸シート製膜時または容器成形時に分子の絡み合い作用を向上させることができ、歪硬化性を発現させることができる。その結果、シートの強度を向上させ、成形時の厚み偏肉を低減させて容器としての強度を向上させることができる。
また、多官能ビニル共重合体は、溶剤可溶性である。ここで、溶剤とは、多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)を重合する際に使用される溶剤であり、具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等である。多官能ビニル共重合体の重量平均分子量は、5000~7万であることが好ましい。多官能ビニル共重合体の重量平均分子量が前記数値範囲内にあると、上記溶剤に可溶となる。
前記多官能ビニル共重合体は、重合溶剤等に溶解した状態で、必要に応じて上記の反応器の途中から添加することもできる。
耐衝撃性スチレン系樹脂(C)とは、いわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)である。耐衝撃性スチレン系樹脂(C)としては、ゴム成分が含まれるスチレン系樹脂であれば良く、スチレンの単独重合体中にゴム成分が含まれているもの、ゴム成分にポリスチレンがグラフト重合しているもの等、いずれも好適に用いることができる。ゴム成分は、マトリックス樹脂となるポリスチレン中に、独立して粒子状になって分散していてもよいし、ゴム成分にポリスチレンがグラフト重合して粒子状に分散しているものであってもよい。耐衝撃性スチレン系樹脂(C)中のゴム成分の含有量は、5~30質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましい。
平均粒子径=Σni(Di)4/Σni(Di)3
ここで、niは測定個数、Diは測定した粒子径を示す。
スチレン系樹脂組成物において、前記スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)と前記多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)の質量比(A)/(B)は、70/30~95/5であり、80/20~90/10であることが好ましい。前記多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)の質量比が30を超えると、製膜時の厚みムラ、ダイラインなどの製膜性の低下が発生し易くなり、シート外観が低下し、耐熱性が低下する恐れがある。一方、前記多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)の質量比が5を下回ると容器成形時の賦型性が低下し、容器強度も低下する恐れがある。また、スチレン系樹脂組成物における耐衝撃性スチレン系樹脂(C)の含有量は、前記した耐衝撃性スチレン系樹脂(C)に由来するゴム成分の含有量が二軸延伸シート中のゴム成分の含有量として0.05~0.3質量%となるように、適宜調整して設定される。耐衝撃性スチレン系樹脂(C)の含有量は、通常は、スチレン系樹脂組成物に対して0.5~3.0質量%である。
上記添加剤の添加量に制限はないが、スチレン系樹脂組成物のシートの透明性を損なわない範囲で添加することが好ましい。
本実施形態の二軸延伸シートは、前記のスチレン系樹脂組成物を二軸延伸加工して得られるものである。二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれであってもよい。
延伸倍率(倍)=100/L
装置名:GC-12A(島津製作所社製)
カラム:ガラスカラム φ3[mm]×3[m]
定量法:内部標準法(シクロペンタノール)
ガスクロマトグラフ:HP-5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:DB-1(ht) 0.25mm×30m 膜厚0.1μm
インジェクション温度:250℃
カラム温度:100-300℃
検出器温度:300℃
スプリット比:50/1
内部標準物質:n-エイコサン
キャリアーガス:窒素
二軸延伸シートの製造に用いる原料となる樹脂は、以下に記載する方法で調製した。
(実験例1)
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビニルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン72.0kg、メタクリル酸4.0kgおよびt-ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。また、4.0kgのメタクリル酸を、重合温度が110℃に達した時点から2時間かけて、均等に追加添加した(ステップ2)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ3)。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、押出し、表1に記載のペレット状のスチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は、90/10であった。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、7万、18万、35万であった。
(実験例2)
ジビニルベンゼン160g、エチルビニルベンゼン94g、スチレン223g、2-フェノキシエチルメタクリレート633g、トルエン1080gを3Lの反応容器に投入し、50℃で57gの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、6時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回、油層を洗浄し、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、多官能ビニル共重合体(α)を得た。
(実験例3)
ゴム状重合体として3.4質量%のローシスポリブタジエンゴム(旭化成製、商品名ジエン55AS)を使用し、91.6質量%のスチレンと、溶剤として5.0質量%のエチルベンゼンに溶解して重合原料とした。また、ゴムの酸化防止剤(チバガイギー製、商品名イルガノックス1076)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径0.285mの錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R-01)に12.5kg/hrで供給した。反応温度は140℃、回転数は2.17sec-1で反応させた。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R-02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120~140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R-03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130~160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5torrの脱揮槽に送られ、未反応単量体、溶剤を分離・回収した。その後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽を通してペレット化し、耐衝撃性スチレン系樹脂(C)を得た。得られた樹脂の樹脂率は70%であった。ここで、樹脂率とは、下記式によって算出される。
樹脂率(%)=100×(ポリマー量)/{(仕込んだモノマー量)+(溶剤量)}
また、得られた樹脂中のゴム成分含有量は10.0質量%、ゴム粒子の平均粒子径は5μmであった。
(実施例1)
スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)(Mw=18万)90質量部、多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)(Mw=45万)10質量部、また、耐衝撃性スチレン系樹脂(C)(ゴム成分含有量10.0質量%、ゴム粒子の平均粒子径5μm)1質量部の各ペレットをハンドブレンドした。ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機TEM35B(東芝機械製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、ベント脱揮圧力-760mmHgにてダイプレートを通してストランドとした。その後、水槽にて冷却したのち、ペレタイザーを通してペレット化し、スチレン系樹脂組成物を得た。なお、ベント脱揮圧力は、常圧に対する差圧値として示した。上記スチレン系樹脂組成物をシート押出機(Tダイ幅500mm、リップ開度1.5mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチック機械社製))を用い、押出温度230℃、吐出量20kg/hにて未延伸シートを得た。このシートをバッチ式二軸延伸機(東洋精機社製)を用いて予熱し、延伸温度128℃、歪み速度0.1/secで、MD3.5倍、TD3.5倍に延伸し、厚み0.25mmの二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートの配向緩和応力(MD/TD)は1.00MPa/1.00MPa、引張弾性率(MD/TD)は3100MPa/3100MPaであった。また、二軸延伸シート中のゴム成分含有量は0.1質量%、ゴム粒子の平均粒子径は5μm、ゲル含有量は0.8質量%であり、スチレン単量体の含有量は500ppm、スチレンオリゴマーの総含有量は5000ppmであった。
(実施例2~13、比較例1~12)
(実施例14~17)
(実施例18~21)
(実施例22~25)
(実施例26)
(実施例27)
(実施例28)
未延伸シートにMD方向およびTD方向に20mm間隔で直線を5本ずつ格子状に引いた時の交点25点についてマイクロゲージを用いて厚みを測定し、その標準偏差σを下記基準で評価した。
◎:σが0.03mm未満
○:σが0.03mm以上、0.05mm未満
△:σが0.05mm以上、0.07mm未満
×:σが0.07mm以上
二軸延伸シート350mm×350mmの範囲について、1)面積100mm2以上のロール付着跡、2)面積10mm2以上の気泡、3)透明および不透明異物、4)付着欠陥、5)幅3mm以上のダイライン(製膜時にTダイ出口で発生するシート流れ方向に走る欠陥)を欠点とし、欠点の個数を下記基準で評価した。
◎:0個
○:0個(但し、面積10mm2未満の気泡、幅3mm未満のダイラインは有り)
△:1~2個
×:3個以上
JIS K-7361-1に従って、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)を用いて、二軸延伸シートのヘーズを測定した。
◎:ヘーズ2.0%未満
○:ヘーズ2.0%以上、3.0%未満
△:ヘーズ3.0%以上、5.0%未満
×:ヘーズ5.0%以上
弁当容器の本体(寸法:縦163×横223×深さ30mm)に500gの錘を入れ、後記する弁当蓋を嵌合させた弁当容器を5段重ね、24時間静置後の蓋材の変形状態を確認した。
◎:形状変化なし。
○:撓むが、荷重を外すと元に戻る。
△:変形有り。
×:割れ有り。
ASTM D2176に従って、シート押出方向(MD方向)とそれに垂直な方向(TD方向)の耐折曲げ強さを測定し、最小値を求め、以下のように評価した。
◎:7回以上
○:5回以上、7回未満
△:2回以上、5回未満
×:2回未満
熱板成形機HPT?400A(脇坂エンジニアリング社製)にて、熱板温度150℃、加熱時間2.0秒の条件で、弁当蓋(寸法 蓋:縦165×横225×高さ26mm)を成形し、賦型性を下記基準にて評価した。
◎:良好
○:コーナー部に僅かな形状不良、但し、目視では目立たないレベル
△:コーナー部にやや形状不良
×:寸法と異なる形状またはコーナー部に著しい形状不良
上記弁当蓋の成形時、金型等の汚れの転写を下記基準にて評価した。
◎:転写なし(透明、白濁なし)
○:僅かに転写あり(不透明、表面が若干白濁)
△:一部に転写あり(不透明、表面が白濁)
×:全体に転写あり(不透明、表面が白濁)
上記成形条件で得られた弁当蓋を110℃に設定した熱風乾燥機に60分間入れた後、容器の変形を目視で観察した。
◎:変形なし
○:軽微な変形、
△:外寸変化5%未満
×:大変形、外寸変化5%以上
上記成形条件で得られた弁当蓋を、本体容器に嵌合させ、上部より均等に面荷重をかけて10mm押し込んだ後、荷重を外した後の蓋の状態について評価した。
◎:変形無し。
○:僅かな変形。
△:外寸の変化率が5%未満の変形。
×:大変形、外寸の変化率が5%以上。
Claims (8)
- スチレン単量体単位とメタクリル酸単量体単位を84/16~94/6の質量比で含有し、重量平均分子量が12万~25万であるスチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)、
重量平均分子量が35万~55万である多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)および
ゴム成分を含有する耐衝撃性スチレン系樹脂(C)
を含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、
前記スチレン-メタクリル酸共重合樹脂(A)と前記多分岐型スチレン系共重合樹脂(B)の質量比(A)/(B)が70/30~95/5であり、
前記二軸延伸シート中のゴム成分の含有量が0.05~0.3質量%であり、
前記二軸延伸シート中のゴム成分が形成するゴム粒子の平均粒子径が1.2~12μmである二軸延伸シート。 - MD方向とTD方向の配向緩和応力がいずれも0.8~2.0MPaの範囲であり、かつMD方向とTD方向の引張弾性率がいずれも2800~3400MPaである請求項1に記載の二軸延伸シート。
- MD向とTD方向の延伸倍率がいずれも2.0~4.5倍である請求項1または請求項2に記載の二軸延伸シート。
- 厚みが0.01mm~0.7mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
- ゲル含有量が1.0質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
- スチレン単量体の含有量が1000ppm以下であり、かつスチレンオリゴマーの総含有量が10000ppm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の二軸延伸シートからなる成形品。
- 食品包装容器である請求項7に記載の成形品。
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