JP2008214147A - 高流動性コンクリート用セメント組成物および高流動性コンクリート組成物 - Google Patents

高流動性コンクリート用セメント組成物および高流動性コンクリート組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】高流動性コンクリート用セメント組成物を提供する。
【解決手段】CSが58質量%以上、CAが2質量%以下、CAFが11質量%以上、石膏半水化率が70質量%以上であること、およびさらに、粒度分布を示すRosin−Rammler式におけるn値が1.1未満であり、45μm網ふるい残分が16〜28質量%である、高流動性コンクリート用セメント組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高流動性コンクリート用セメント組成物、およびそれを用いた高流動性コンクリート組成物に関する。より詳細には、本発明は、セメントの鉱物組成、石膏半水化率および粒度分布を適正化した高流動性コンクリート用セメント組成物、ならびにそれを用いた低水セメント比の高流動性コンクリート組成物に関する。
従来、高流動性コンクリートにおいては、使用材料の観点から、主としてセメント組成物あるいは高性能AE減水剤に関する多くの技術が開示されている。このうち、セメント組成物に関しては、クリンカー鉱物量や半水石膏量等を限定し、それによってコンクリートの流動性およびその経時変化の制御を図っている(特許文献1〜3)。
特許文献1〜3に記載されているように、高流動性コンクリートにおいては、セメントの鉱物組成、特に、CS量を高めたセメント組成物の使用に関する技術が多く開示されている。その一方で、少量成分あるいは石膏形態とその含有量等がコンクリートの流動性に複雑に関係していると考えられるが、コンクリートの部材厚や打設層厚の相違もあって、高流動性コンクリート用セメント組成物およびそれを用いるコンクリート組成物について、必ずしも普遍的な適正条件・範囲が得られていないのが現状である。
特開2000−302518号公報 特開2006−298678号公報 特開2005−225759号公報
本発明は、コンクリートの優れた流動性を確保するとともに、高い材料分離抵抗性および初期から中期の材齢で高強度を発現するセメント組成物の鉱物組成、石膏半水化率、粒度分布等の適正製造条件を明らかにし、高流動性コンクリート用セメント組成物およびそれを用いた高流動性コンクリート組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、コンクリートの流動性および材料不分離性に優れたセメントは、その鉱物組成に加えて、石膏半水化率、さらには粒度分布等の粉砕条件の制御が極めて重要であるとの知見を得た。
すなわち、本発明の高流動性コンクリート用セメント組成物は、CS量が58質量%以上、CA量が2質量%以下、CAF量が11質量%以上であり、残部が主としてCSからなる鉱物組成を有し、かつ、セメント中の添加石膏の半水化率が70質量%以上である。本発明の高流動性コンクリート用セメント組成物は、さらに、セメントの粒度分布Rosin−Rammler式におけるn値が1.1未満であり、45μm網ふるい残分が16〜28質量%を満たすことが好ましい。
本発明はさらに、本発明の高流動性コンクリート用セメント組成物を含むコンクリート組成物であって、高性能AE減水剤を併用する際に、水セメント比25〜35%において高流動性の効果をより発揮する高流動性コンクリート組成物である。本発明はさらにまた、高性能AE減水剤をさらに含む高流動性コンクリート組成物、高性能AE減水剤がポリカルボン酸エーテル系化合物と分子間架橋ポリマーとの複合体である高流動性コンクリート組成物、および細骨材および粗骨材を含む、請求項4または5記載の高流動性コンクリート組成物である。
本発明の高流動性コンクリート用セメント組成物は、流動性を有するとともに、強度発現性に優れ、コンクリートに良好な圧縮強さを付与することができるという効果を奏する。また、本発明のセメント組成物を用いた高流動性コンクリート組成物は、所定のスランプフローを得るための高性能AE減水剤の添加率が少なくてすみ、かつ低水セメント比領域でも粘性を低くすることができるので、従来、高流動性コンクリートにおいて苦慮していたポンプ圧送性の改善およびより均質な打設が可能となる。加えて、高性能AE減水剤の添加率が少ないので、経済的に優れる。さらに、本発明の高流動性コンクリート組成物は、低水セメント比領域における、例えば材齢7日で代表される初期から中期の材齢における強度発現性に優れるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
高流動性コンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材、高性能AE減水剤および練り混ぜ水で構成される。
ここで、本発明のセメントの鉱物組成は、通常の方法、つまりセメントの化学組成であるSiO、Al、Fe、CaOおよびSOの含有量を用いて、化学量論的にBogue式によって計算し、表現される。ちなみに、本発明のようにセメント組成物を対象とする場合、CS(3CaO・SiO)量の計算は、石膏(CaSO)に由来するCaO量を減じて修正したものである。本発明のセメント中に最も多く含有されるCS(3CaO・SiO)量は58質量%以上が必要である。部材厚さや打設厚さが小さい二次製品や構造物では、他の鉱物組成、石膏形態、セメントの粒度分布等との相互作用により、CS(2CaO・SiO)よりもCSが多い方がより有効である。但し、セメントクリンカー中の遊離石灰量およびクリンカー焼成時の熱原単位抑制の観点から、CS量の上限は概ね70質量%である。間隙相としては、CA(3CaO・Al)量は2質量%以下が好ましく、CAF(4CaO・Al・Fe)量は11質量%以上16質量%以下が好ましい。このCAF量は、上記のような高CS型セメントクリンカーの焼成において、遊離石灰含有量を経済的に低減するためにも必要不可欠な条件ともなっている。クリンカー鉱物の残部は基本的にCSとなる。なお、本発明のセメントは、上記のセメント鉱物組成を満足すれば、鉱物組成の異なる二種以上のセメントクリンカーの混合物であっても良い。
さらに、本発明は、セメント組成物の全石膏(二水石膏および半水石膏の総量)に対する半水石膏の割合が70質量%以上であることが必要である。通常、セメント中のCA量が多くなると半水石膏量を多くする必要があるといわれている。しかし、本発明のようにCA量が少ない場合においても、CSが非常に多い鉱物組成のセメントにおいては石膏の半水化率を高くすることが高流動化の点から必要である。半水化率を70質量%以上にするには、クリンカーの粉砕温度を高め、セメント仕上げミルのミル出口温度を100℃以上に調整することによって行う。なお、本発明においては、全石膏量は、SO基準で1.85〜2.15質量%の範囲にあることが好ましい。
ここで石膏の半水化率の測定は、まず、半水石膏量および二水石膏量を、示差熱重量分析(TG−DTA)によって定量する。具体的には、示差熱重量分析装置TG−DTA6200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、直径20μmの孔を有する容量30μLのセル(アルミ製)に、試料を約30mg入れ、昇温速度5℃/minで室温から300℃まで昇温する。図1に示すように、まず重量減少曲線(図1のTG)を微分した曲線(図1のDTG)から、DTGピークAの立ち上がり温度(約125℃)、半水石膏の脱水に伴うDTGピークBの立ち上がり温度(約155℃)、ピークBの終局点(約195℃)を求める。次に、二水石膏の脱水に伴う125〜155℃附近の減量(a質量%)と、半水石膏の脱水に伴う155〜195℃附近の減量(b質量%)とを求め、式(1)および式(2)を用いて、セメント組成物の石膏中の二水石膏量(質量%)および半水石膏量(質量%)を算出する。これらより、半水石膏の割合(質量%)は式(3)を用いて算出する。なお、リファレンスとしてはアルミ板を用いる。
二水石膏量(質量%)=減量a(質量%)×172(二水石膏の分子量)÷(1.5×18(HOの分子量)) (1)
半水石膏量(質量%)=(減量b(質量%)−減量a(質量%)÷3)×145(半水石膏の分子量)÷(0.5×18(HOの分子量)) (2)
半水石膏割合(質量%)=半水石膏量÷(半水石膏量+二水石膏量)×100 (3)
本発明のセメント組成物は、比較的大きなセメント粒子を含有することが好ましい。具体的には、(4)式で示されるRosin‐Rammler式におけるn値が1.1未満であることが好ましい。
ln ln(100/R)=n(ln x一ln x) (4)
ここで、Rは粒径xより大きい粒子の質量割合、xおよびnは粒度分布を表す定数である。本発明でのn値は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器((株)セイシン企業社製LMS−30型)による粒径1.0〜192μmにおけるR値から最小二乗方法によって求めることができる。この値が大きい程セメントの粒度分布の幅が一般に狭いことを意味する。すなわち、本発明においては、セメント組成物の粒度分布の幅が相対的に広いことが好ましい。
さらに、粒度分布の他の指標でもある45μm網ふるい残分(セメント協会標準試験方法(JCAS K−02:1981の試験方法による)が16〜28質量%、より好ましくは18〜25質量%である。
本発明においては、n値が1.1より大きくなるか、45μm網ふるい残分が少なくなり過ぎると、コンクリートの流動性が低下するので好ましくない。
粒度分布をこのような範囲に制御するために、本発明においては、粉砕方式(閉回路方式ミルまたは開回路方式ミル)の選択、戻り粉(粗粉)量、粉砕媒体(ボール)の寸法および割合、粉砕助剤の添加量の調整を行う。
なお、セメントの粒度特性は粉末度(ブレーン比表面積)でも表すことができる。本発明で規定する本発明のセメント組成物の上記の粒度分布は、ブレーン比表面積がおおむね2800〜3800cm/gの範囲となる。
本発明における上記の粒度分布の適正範囲を確保するために、本発明のセメント組成物では、セメント混合材(高炉スラグ、フライアッシュ、ポゾラン、石灰石粉等)を少量に制御し、好ましくは約5質量%以下に制御する。
以上のように、高流動コンクリート用セメント組成物は、高CS型であるがゆえに、セメント鉱物組成、石膏の半水化率および粒度分布等を適正範囲に制御することにより、それらの相互作用によって初めて効果を奏するものである。
本発明の高流動性コンクリート組成物は、スランプフローが約550〜650mmの範囲のものを対象とする。コンクリートに使用する骨材や化学混和剤の銘柄は特に限定されるものではないが、本発明の高流動性セメント組成物を使用するコンクリート組成物は、水セメント比が、25%以上35%以下の低水セメント比の領域で特に高流動性の効果を発揮する。このため、水セメント比がこの範囲において、高性能AE減水剤の添加率を一般的に使用される平均添加率より少なくすることができるので、本発明のセメント組成物と本発明以外のセメント組成物との間で影響が大きく現われることになる。水セメント比が35%を超えると、材料分離が起こりやすくなるので好ましくない。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<使用材料>
(1)ポルトランドセメント
ポルトランドセメントとしては、セメント鉱物組成(CS、CS、CA、CAF)、石膏中の半水化率、粉末度(ブレーン比表面積)および粒度分布の異なる工場製造品4種(セメントA〜D)を使用した。これらセメントの化学的性質および物理的性質を表1に示す。ここで、セメントAは本発明の鉱物組成、石膏半水化率および粒度分布を有する高流動性コンクリート用セメント組成物であり、粉砕助剤を使用せず、開回路方式ミルにより粉砕し、製造した。一方、セメントB〜Dは、鉱物組成、石膏半水化率および粒度分布が本発明の範囲を満たさないものであり、通常の方法でセメント組成物を製造した。
(2)細骨材
細骨材としては、海砂(表乾密度2.56g/cm、吸水率2.15%、粗粒率3.03)、砕砂(表乾密度2.70g/cm、吸水率1.50%、粗粒率2.80)を用いた。海砂と砕砂の割合は、7:3とした。また、細骨材の量は780〜870kg/mの範囲とした。
(3)粗骨材
粗骨材としては、砕石2015(表乾密度2.70g/cm、吸水率0.47%、粗粒率7.03)、砕石1505(表乾密度2.69g/cm、吸水率0.56%、粗粒率6.29)を用いた。各粗骨材の使用割合は5:5であり、粗骨材の量は800〜840kg/mの範囲とした。
(4)化学混和剤
化学混和剤として、高性能AE減水剤(エヌエムビー社製 レオビルドSP8SB−S X4、ポリカルボン酸エーテル系化合物と分子間架橋ポリマーの複合体)および空気量調整剤(エヌエムビー社製 マイクロエア775S、変性アルキルカルボン酸化合物系陰イオン界面活性剤)を用いた。
(5)練混ぜ水
練混ぜ水としては、水道水を用いた。
Figure 2008214147
実施例1〜3、比較例1〜7
以下のようにして高流動性コンクリートを作製した。
まず、20℃の恒温室において表1に示した各セメント組成物および細骨材を容量50リットルの二軸強制練りミキサに投入し、30秒間練混ぜ、混和剤を含む水(すなわち、混和剤+水)を投入し、60秒間練混ぜ、粗骨材を投入し120秒間練混ぜ、その後5分間静置した後、再び15秒間練混ぜてコンクリートを作製した。またコンクリートのスランプフローは、JIS A 1150−2001「コンクリートのスランプフロー試験方法」に記載された方法に従い、フローが600±50mmとなるように混和剤添加量を調整した。コンクリート組成物の配合を表2、表3に示す。
上記のようにして得られたコンクリートをJIS A 1150−2001「コンクリートのスランプフロー試験方法」、JSCE−F512−1999「高流動コンクリートの漏斗を用いた流下試験方法(案)」およびJSCE−F511−1999「高流動コンクリートの充てん装置を用いた間げき通過性試験方法(案)」に規定されている方法に準じて、スランプフロー、スランプフロー500mm到達時間、O漏斗流下時間、U型充てん高さを測定した。なおU型充てん試験に用いる流動障害は障害R2を用いた。また、強度試験用供試体寸法はφ10×20cmの円柱供試体とし、JIS A 1132(1999)「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準拠して作製した。その後、材齢7日まで20±1℃の水中で養生し、JIS A 1108(1999)「コンクリートの圧縮試験方法」に準拠して圧縮試験を行った。その結果を表3に示す。
ちなみに、各試験における評価は下記のとおりである。高性能AE減水剤の添加率を除き、何れも「高流動コンクリート施工指針」(平成10年7月20日、土木学会)の「粉体系高流動コンクリートの配合設計」の「自己充てん性のランク2」の評価値から判断した。
1)高性能AE減水剤添加率:〇印は各水セメント比におけるAE減水剤の平均添加率以下の添加率を示すコンクリート組成物である。
2)スランプフロー500mm到達時間:〇印は500mm到達時間が3〜15秒を示すものである。
3)O漏斗流下時間:○印は流下時間が7〜13秒を示すものである。
4)U型充てん高さ:〇印は充てん高さが300mm以上を示すものである。
Figure 2008214147
Figure 2008214147
表3の実施例1〜3および比較例1〜7から判るように、本発明のセメントAを使用した場合、いずれの水セメント比においても、所定のスランプフローを得るための高性能AE減水剤の所要添加率が少なくて済み、かつスランプフロー500mmへの到達時間、O漏斗流下時間およびU型充てん高さが適正であり、自己充てん性に優れた高流動性コンクリートが得られる。また、このようなコンクリートの流動性に及ぼすセメントの種類(化学的および物理的特性)の影響は、水セメント比が25〜35%のように、相対的に低水セメント領域において現われやすいことが判る。
加えて、表3の実施例1、3および比較例2、6から判るように、本発明のセメントAを使用した場合、材齢7日の圧縮強さは、セメントCを使用した場合のそれよりも著しく上昇し、初期から中期の材齢での強度発現性に優れていることが判る。また、この傾向は、水セメント比が約25%のような低い水セメント比領域において特に顕著にあらわれる。
示差熱重量分析(TG−DTA)を用い、セメント組成物中の半水石膏量を測定した例を示す図である。

Claims (6)

  1. Sが58質量%以上、CAが2質量%以下、CAFが11質量%以上、石膏半水化率が70質量%以上であることを特徴とする高流動性コンクリート用セメント組成物。
  2. 粒度分布を示すRosin−Rammler式におけるn値が1.1未満であり、45μm網ふるい残分が16〜28質量%である、請求項1記載の高流動性コンクリート用セメント組成物。
  3. 請求項1又は2記載の高流動性コンクリート用セメント組成物を含み、水セメント比が25〜35%である、高流動性コンクリート組成物。
  4. 高性能AE減水剤をさらに含む、請求項3記載の高流動性コンクリート組成物。
  5. 高性能AE減水剤がポリカルボン酸エーテル系化合物と分子間架橋ポリマーとの複合体である、請求項4記載の高流動性コンクリート組成物。
  6. 細骨材および粗骨材を含む、請求項4または5記載の高流動性コンクリート組成物。
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