JP2014019587A - ペースト組成物及びモルタル組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できるペースト組成物を提供すること。
【解決手段】 セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、収縮低減剤と、無機質微粉末と、高張力繊維とを含み、セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉、砕石粉及びスラグ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粉末を含有し、無機質微粉末を混合したときに、その混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を86〜100質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を70質量%以上含有する、ペースト組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、ペースト組成物及びモルタル組成物に関する。
近年、構造部材の軽量化、鉄筋使用量の削減などの要求に伴い、150N/mm以上の圧縮強度を発現し、しかも曲げ強度の高い超高強度コンクリートが提案されている。これらのコンクリートでは、セメント、ポゾラン質微粉末、骨材、高性能減水剤、金属繊維が使用され、熱養生によって超高強度化が図られている(特許文献1及び2参照)。また、引張応力下で擬似ひずみ硬化(初期ひびわれ発生後に引張応力が上昇する挙動)を示し、変形が増大してもひび割れ幅の抑制機能を有する、高じん性の繊維補強セメント複合材料が提案されている(特許文献3参照)。このセメント複合材料では、ポリビニルアルコール等の有機短繊維によって、高じん性化が図られている。
特開2001−181004号公報 特開2006−298679号公報 特開2007−126317号公報
しかしながら、超高強度コンクリートを熱養生する場合は、工場で型枠を使用して製造するため、建設現場までの製品の運搬が必要である。また、コンクリート製品の形状や大きさは、使用する型枠や養生装置の形状により制約を受けるため、超高強度コンクリートの設計の自由度が制限される。一方、擬似ひずみ硬化特性を示す高じん性セメント系材料は、現場施工が可能であるが、圧縮及び引張強度は通常のコンクリートと同程度である。このため、熱養生が不要であり、現場施工が可能な、高じん性かつ高強度の材料が求められている。また、構造物の耐久性、長寿命化、高品質化などの観点から、コンクリートの収縮は小さいほうが望ましい。そのため、上記材料には、自己収縮によるひずみを低減することが求められている。
そこで本発明は、高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できる、ペースト組成物及びモルタル組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の鉱物組成及び粒度分布を有するセメントと特定の粒度を有する無機質微粉末を、シリカフューム、水、減水剤、消泡剤、収縮低減剤及び高張力繊維と組み合わせることにより、高じん性を有しつつ、熱養生しなくともペースト組成物及びモルタル組成物の強度を向上でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、収縮低減剤と、無機質微粉末と、高張力繊維とを含み、セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉、砕石粉及びスラグ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粉末を含有し、無機質微粉末を混合したときに、その混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を86〜100質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を70質量%以上含有する、ペースト組成物を提供する。このようなペースト組成物は、高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できる。
無機質微粉末のブレーン比表面積が3000〜5000cm/gであると、ペースト組成物の流動性を向上できる。また、本発明のペースト組成物は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、無機質微粉末を10〜60質量部含むことにより、組成物の流動性が更に向上し、施工性により優れたものとなる。
シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmであると、ペースト組成物の強度を更に向上できる。そして、本発明のペースト組成物は、セメント及びシリカフュームの合計量を基準として、シリカフュームを3〜30質量%含むことが好ましい。
本発明のペースト組成物は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、水を10〜25質量部、減水剤を0.5〜6.0質量部含むことが好ましい。これにより、ペースト組成物の強度がより一層向上する。
本発明のペースト組成物において、高張力繊維は、引張強度が100〜10000N/mm、アスペクト比が40〜250であり、ペースト組成物に対する含有率が外割りで0.3〜5.0体積%であることによって、高いじん性と高い圧縮強度及び引張強度を得やすくなる。また、上記高張力繊維は、金属繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維であると、ペースト組成物の強度をより一層向上することができる。
収縮低減剤の含有量は、5〜40kg/mであれば、ペースト組成物の自己収縮をより低減しやすくなる。
また、本発明は、上述したペースト組成物と、細骨材とを含むモルタル組成物を提供する。このようなモルタル組成物も、高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できる。
本発明によれば、高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できる、ペースト組成物及びモルタル組成物を提供することができる。
実施例1〜9及び比較例1〜3の材齢182日後における自己収縮ひずみを表すグラフである。
以下、本発明に係るペースト組成物及びモルタル組成物の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(ペースト組成物)
本実施形態のペースト組成物は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、収縮低減剤と、無機質微粉末と、高張力繊維とを含むものである。
セメントの鉱物組成は、CS量が40.0〜75.0質量%であり、CA量が2.7質量%未満である。セメントのCS量は、好ましくは45.0〜73.0質量%、より好ましくは48.0〜70.0質量%であり、更に好ましくは50.0〜68.0質量%である。CA量は好ましくは2.3質量%未満であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、更に好ましくは1.9質量%未満である。CS量が40.0質量%未満では圧縮強度が低くなる傾向があり、75.0質量%を超えるとセメントの焼成自体が困難となる傾向がある。また、CA量が2.7質量%以上では流動性が悪くなる。なお、CA量の下限値は特に限定されないが、0.1質量%程度である。
また、セメントのCS量は好ましくは9.5〜40.0質量%であり、より好ましくは10.0〜35.0質量%であり、更に好ましくは12.0〜30.0質量%である。CAF量は好ましくは9.0〜18.0質量%、より好ましくは10.0〜15.0質量%であり、更に好ましくは11.0〜15.0質量%である。このようなセメントの鉱物組成の範囲であれば、ペースト組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保しやすくなる。
また、セメントの粒度は、45μmふるい残分が、上限で25.0質量%であり、好ましくは20.0質量%であり、より好ましくは18.0質量%であり、更に好ましくは15.0質量%である。45μmふるい残分の下限は0.0質量%であり、好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは2.0質量%であり、更に好ましくは3.0質量%である。セメントの粒度がこの範囲であれば、高い圧縮強度を確保でき、また、このセメントを使用して調製したスラリーは適度な粘性があるため、繊維を添加した場合には、十分な分散性が確保できる。
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4800cm/g、より好ましくは2800〜4000cm/g、更に好ましくは3000〜3600cm/gであり、特に好ましくは3200〜3500cm/gである。セメントのブレーン比表面積が2500cm/g未満ではペースト組成物の強度が低くなる傾向があり、4800cm/gを超えると低水セメント比での流動性が低下する傾向にある。
本実施形態に係るセメントの製造にあたっては、通常のセメントと特に異なる操作を行う必要はない。上記セメントは、石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、高炉ダスト等の原料の調合を目標とする鉱物組成に応じて変え、実機キルンで焼成した後、得られたクリンカーに石膏を加えて所定の粒度に粉砕することによって製造することができる。焼成するキルンには、一般的なNSPキルンやSPキルン等を使用することができ、粉砕には一般的なボールミル等の粉砕機が使用可能である。また、必要に応じて、2種以上のセメントを混合することもできる。
シリカフュームは、金属シリコン、フェロシリコン、電融ジルコニア等を製造する際に発生する排ガス中のダストを集塵して得られる副産物であり、主成分は、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiOである。シリカフュームの平均粒子径は、好ましくは0.05〜2.0μm、より好ましくは0.10〜1.5μm、更に好ましくは0.18〜0.28μm、特に好ましくは0.20〜0.28μmである。このようなシリカフュームを用いることで、ペースト組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保しやすくなる。
本実施形態のペースト組成物において、セメント及びシリカフュームの合計量を基準として、シリカフュームを、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは10〜18質量%、特に好ましくは10〜15質量%含む。また、ペースト組成物1m当たりのシリカフュームの単位量は、好ましくは36〜360kg/m、より好ましくは61〜242kg/m、更に好ましくは121〜218kg/mである。
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性確保の観点から、減水剤として、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。本実施形態に係るペースト組成物は、セメントとシリカフュームの合量100質量部に対して、減水剤を好ましくは0.5〜6.0質量部、より好ましくは1.0〜4.0質量部、更に好ましくは1.8〜3.0質量部、特に好ましくは2.0〜3.0質量部含む。また、ペースト組成物1m当たりの減水剤の単位量は、好ましくは6〜83kg/m、より好ましくは13〜55kg/m、更に好ましくは18〜42kg/mである。
消泡剤としては、特殊非イオン配合型界面活性剤、ポリアルキレン誘導体、疎水性シリカ、ポリエーテル系等が挙げられる。この場合、セメントとシリカフュームの合量100質量部に対して、消泡剤を好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.02〜1.5質量部、更に好ましくは0.03〜1.0質量部含む。また、ペースト組成物1m当たりの消泡剤の単位量は、好ましくは0.10〜28kg/m、より好ましくは0.20〜21kg/m、更に好ましくは0.40〜14kg/mである。
収縮低減剤としては、ポリオキシアルキレン誘導体を含むアルキレン類の重合体をエーテル化した有機系収縮低減剤を使用することができる。収縮低減剤の含有量は、ペースト組成物1m当たり、好ましくは5〜40kg、より好ましくは10〜30kg、更に好ましくは15〜30kg、特に好ましくは15〜25kgである。含有量が上記範囲より少ないと収縮低減への寄与が小さくなる傾向にあり、含有量が上記範囲より多いと強度発現性が低下し、収縮低減効果が頭打ちになると共に、経済的ではなくなる傾向にある。
無機質微粉末としては、石灰石粉、珪石粉、砕石粉、スラグ粉等の微粉末を使用することができる。無機質微粉末は、石灰石粉、珪石粉、砕石粉、スラグ粉等をブレーン比表面積が2500cm/g以上となるまで粉砕又は分級した微粉末であり、ペースト組成物の流動性を改善することできる。無機質微粉末のブレーン比表面積は3000〜5000cm/gであることが好ましく、3200〜4500cm/gであることがより好ましく、3400〜4300cm/gであることが更に好ましく、3600〜4300cm/gであることが特に好ましい。
本実施形態に係る無機質微粉末を混合したときに、その混合物は、粒径0.15mm以上の粒群を86〜100質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を70質量%以上含有する。粒径0.15mm以下の粒群は、好ましくは88〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは92〜100質量%含まれる。粒径0.15mm以下の粒群が85質量%より少ないと、繊維が絡みやすく、均一に分散せず、硬化体が不均一になるおそれがある。また、粒径0.075mm以下の粒群は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含まれる。粒径0.075mm以下の粒群が70質量%より少ないと、繊維が絡みやすくファイバーボールができやすくなる恐れがある。
本実施形態に係る無機質微粉末は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、10〜60質量部含むことが好ましく、より好ましくは20〜60質量部、更に好ましくは30〜60質量部、特に好ましくは40〜60質量部である。セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対し、無機質微粉末が10質量部未満又は60質量部より多いと、流動性が悪くなる傾向にある。
高張力繊維としては、金属繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。金属繊維として、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス合金繊維等を使用することができる。高張力繊維の繊維径は0.05〜1.20mmが好ましく、0.08〜0.70mmがより好ましく、0.10〜0.35mmが更に好ましく、0.12〜0.20mmが特に好ましい。高張力繊維の繊維長は3〜60mmが好ましく、5〜35mmがより好ましく、7〜20mmが更に好ましく、9〜15mmが特に好ましい。高張力繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は40〜250が好ましく、50〜200がより好ましく、60〜170が更に好ましく、70〜140が特に好ましい。高張力繊維の引張強度は100〜10000N/mmが好ましく、500〜5000N/mmより好ましく、2000〜3000N/mmが更に好ましく、1500〜2500N/mmが特に好ましい。高張力繊維の密度は、1〜20g/cmが好ましく、3〜15g/cmがより好ましく、5〜10g/cmが更に好ましい。このような高張力繊維を用いることで、ペースト組成物に高いじん性、高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を付与しやすくなる。
本実施形態に係るペースト組成物は、ペースト組成物に対して外割りで(すなわち、ペースト組成物における、高張力繊維を除いた組成物100体積%に対して)高張力繊維を好ましくは0.3〜5.0体積%、より好ましくは0.5〜4.0体積%、更に好ましくは1.0〜2.5体積%、特に好ましくは1.5〜2.5体積%含むことによって、高いじん性が得られやすくなる。なお、5.0体積%を超えるとペースト組成物の練混ぜが困難になる場合がある。また、ペースト組成物1mに対する高張力繊維の配合量は、好ましくは23〜393kg、より好ましくは39〜314kg、更に好ましくは79〜196kgである。
また、本実施形態に係るペースト組成物は、セメントとシリカフュームの合量100質量部に対して、水を好ましくは10〜25質量部、より好ましくは12〜20質量部、更に好ましくは13〜18質量部、特に好ましくは15〜18質量部含む。ペースト組成物1m当たりの単位水量は、好ましくは137〜344kg/m、より好ましくは165〜275kg/m、更に好ましくは178〜248kg/mである。
本実施形態に係るペースト組成物には、必要に応じて、膨張材、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ガラス繊維、合成樹脂粉末、ポリマーエマルジョン、ポリマーディスパージョン等を1種以上添加してもよい。
(モルタル組成物)
本実施形態のモルタル組成物は、上述した本実施形態のペースト組成物と細骨材を含むものである。
細骨材としては、特に制限されないが、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。なお、細骨材の粒度は、10mmふるいを全部通り、5mmふるいを85質量%以上通過するものが好ましい。
細骨材と無機質微粉末の混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40〜80質量%、好ましくは45〜80質量%含み、より好ましくは50〜75質量%含む。また、上記混合物は、粒径0.075mm以下の粒群を30〜80質量%、好ましくは35〜70質量%含み、より好ましくは40〜65質量%含む。無機質微粉末の含有量が30質量%以下では、スラリーの粘性が低すぎるため高張力繊維が十分に分散しない恐れがある。
細骨材と無機質微粉末の混合物は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、細骨材を10〜60質量部、無機質微粉末を10〜60質量部含むことが好ましく、細骨材を15〜30質量部、無機質微粉末を15〜30質量部含むことがより好ましく、細骨材を20〜30質量部、無機質微粉末を20〜30質量部含むことが更に好ましい。また、モルタル組成物1m当たりの細骨材及び無機質微粉末の混合物の単位量は、好ましくは140〜980kg/m、より好ましくは300〜900kg/m、更に好ましくは600〜900kg/mである。
さらに、上記本実施形態に係るモルタル組成物に、粗骨材を適量組み合わせることにより、コンクリートを調製してもよい。粗骨材の量や、水の量は、目標圧縮強度、じん性、目標スランプに応じて適時変えればよい。粗骨材としては、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。また、5mmの篩いに85質量%以上留まる粗骨材がより好ましい。
本実施形態に係るペースト組成物又はモルタル組成物の製造方法は、特に限定されないが、水、減水剤及び高張力繊維(有機繊維を配合する場合は有機繊維も)以外の材料の一部又は全部を予め混合しておき、次に、水、減水剤を添加してミキサに入れて練り混ぜることによって製造することが好ましい。また、繊維材料は、ペースト組成物又はモルタル組成物を製造した後にミキサに添加し、更に練り混ぜることが好ましい。モルタル組成物の練混ぜに使用するミキサは特に限定されず、モルタル用ミキサ、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、グラウトミキサ等を使用することができる。
上記実施形態におけるペースト組成物又はモルタル組成物は、高強度が求められるPC梁、高耐久性パネル、ブロック耐震壁などに有効である。また、高張力繊維を添加することによって、橋梁等の鉄筋量を減らすことが可能となる。さらに、橋梁の補修・補強等にも有効である。
以上、本実施形態のペースト組成物及びモルタル組成物によれば、高じん性を有しつつ、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現でき、かつ、自己収縮ひずみを低減できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[使用材料の準備]
実施例及び比較例のペースト組成物又はモルタル組成物を作製するために、以下に示す材料を準備した。
(1)セメント(C):
石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、銅ガラミ等の原料を調合し、キルンで焼成した後、石膏を加えて粉砕することにより、ポルトランドセメントを調製した。得られたセメントの化学成分を、JIS R 5202‐2010「セメントの化学分析方法」に従って測定し、鉱物組成を下記のボーグ式により算出した。得られたセメントの鉱物組成を表1に示す。
S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe)−(2.85×SO
S量=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
A量=(2.65×Al)−(1.69×Fe
AF量=3.04×Fe
また、得られたセメントの45μmふるい残分を、セメント協会標準試験方法 JCAS K−02「45μm網ふるいによるセメントの粉末度試験方法」に準じて測定した。また、ブレーン比表面積をJIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。結果を表1に示す。
Figure 2014019587
(2)シリカフューム(SF):平均粒子径0.24μm
シリカフュームの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、商品名「LA−950V2」)を用いて測定した粒子径分布より、粒子径−通過分積算%曲線を算出し、粒子径−通過分積算%曲線より通過分積算が50体積%となる粒子径を求めた。試料分散媒は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、測定前に出力600Wのホモジナイザーにて10分間分散処理した。粒度分布の演算はMie散乱理論に従った。粒子屈折率は1.45−0.00i、溶媒屈折率は1.333とした。各粒度の通過分積算(体積%)を表2に示す。
Figure 2014019587
(3)無機質微粉末
(A)珪石粉:密度2.62g/cm、ブレーン比表面積3820cm/g
(B)石灰石微粉末:密度2.71g/cm、ブレーン比表面積4280cm/g
(4)細骨材
砕砂:密度2.62g/cm、粗粒率2.80
上記無機質微粉末及び細骨材の粒度を、JIS A 1102−2006「骨材のふるい分け試験方法」を参考として測定した。次いで、無機質微粉末、又は無機質微粉末と細骨材を混合して所定の粒度になるように調整した。結果を表3に示す。
Figure 2014019587
(5)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤(固形分濃度25質量%)
(6)消泡剤:特殊非イオン配合型界面活性剤
消泡剤中のPOP、POE及びアルキル鎖の構造単位のモル比を表4に示す。
Figure 2014019587
(7)収縮低減剤:市販3銘柄(A:低級アルコール系収縮低減剤、B:ポリエーテル系収縮低減剤、C:グリコールエーテル系収縮低減剤)を使用した。なお、銘柄Aは(商品名;「テトラガードAS21」,太平洋マテリアル社製)、銘柄Bは(商品名;「ヒビダンB」,竹本油脂社製)、銘柄Cは(商品名;「ヒビガード」,フローリック社製)である。
(8)高張力繊維:鋼繊維(東京製綱社製、商品名「CW9416」)、密度:7.87g/cm、繊維径0.16mm、繊維長13mm、アスペクト比81.25、引張強度2200N/mm
(9)練混ぜ水(W):上水道水
[ペースト組成物又はモルタル組成物の作製]
ペースト組成物又はモルタル組成物の作製を、表5の配合組成に基づき、以下の通りに行った。
セメント、シリカフューム、消泡剤、無機質微粉末及び細骨材をコンクリート用二軸ミキサに加え、30秒間撹拌した。次に、減水剤及び収縮低減剤を含む練混ぜ水をミキサ内に投入して10分間撹拌し、さらに、鋼繊維を投入して3分間撹拌し、実施例1〜6及び比較例1〜2のペースト組成物、並びに、実施例7〜9及び比較例3のモルタル組成物を作製した。
Figure 2014019587
[ペースト組成物又はモルタル組成物の評価]
(1)フレッシュ性状
(試験方法)
実施例1〜6及び比較例1〜2のペースト組成物、並びに、実施例7〜9及び比較例3のモルタル組成物を用いて、スランプフローを測定した。スランプフローは、JIS A 1150−2007「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じ、測定した。
(2)強度試験
実施例1〜6及び比較例1〜2のペースト組成物、並びに、実施例7〜9及び比較例3のモルタル組成物を用いて、JIS A 1132−2006「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準じて5cm×10cmの円柱供試体を作製し、JIS A 1108−2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて圧縮強度試験を行った。供試体は試験材齢まで20℃で水中養生した。
(3)自己収縮
実施例1〜6及び比較例1〜2のペースト組成物、並びに、実施例7〜9及び比較例3のモルタル組成物を、埋込型ゲージ(東京測器研究所製)を中心に配した10×10×40cm型枠(鋼製)に打設し、自己収縮ひずみを計測した。なお、型枠面内側にはスチレンボードとポリテトラフルオロエチレンシートを配し、ペーストまたはモルタルが拘束を受けない状態で測定を行い、測定終了までは封緘状態を保った。
(評価結果)
表6に、スランプフロー試験、圧縮強度試験及び自己収縮測定の結果を示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜2のペースト組成物、並びに、実施例7〜9及び比較例3のモルタル組成物の材齢182日後における自己収縮ひずみを図1に示す。
Figure 2014019587
表6に示すとおり、実施例1〜9では、スランプフロー及び圧縮強度が良好であり、自己収縮ひずみも小さくなった。
これに対し、比較例1〜3では、自己収縮ひずみが大きくなった。

Claims (10)

  1. セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、収縮低減剤と、無機質微粉末と、高張力繊維とを含むペースト組成物であって、
    前記セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、
    前記無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉、砕石粉及びスラグ粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粉末を含有し、
    前記無機質微粉末を混合したときに、その混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を86〜100質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を70質量%以上含有する、ペースト組成物。
  2. 前記無機質微粉末のブレーン比表面積が3000〜5000cm/gである、請求項1に記載のペースト組成物。
  3. 前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、前記無機質微粉末を10〜60質量部含む、請求項1又は2に記載のペースト組成物。
  4. 前記シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  5. 前記セメント及び前記シリカフュームの合計量を基準として、前記シリカフュームを3〜30質量%含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  6. 前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、前記水を10〜25質量部、前記減水剤を0.5〜6.0質量部含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  7. 前記高張力繊維は、引張強度が100〜10000N/mm、アスペクト比が40〜250であり、前記ペースト組成物に対する含有率が0.3〜5.0体積%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  8. 前記高張力繊維は、金属繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  9. 前記収縮低減剤の含有量が5〜40kg/mである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のペースト組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のペースト組成物と、細骨材とを含むモルタル組成物。

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