JP2004345898A - グラウト組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた水平流動性とひび割れ抵抗性を有するグラウト材が得られる、グラウト組成物を提供すること。
【解決手段】セメント30〜60部、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末10〜30部、無機質粉末20〜40部、膨張材3〜15部からなるセメント系無機粉体100部に対して、粒径1.2mm以下の細骨材50〜150部と減水剤0.05〜1.5部と発泡剤0.001〜0.1部からなるグラウト組成物とすることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建築分野における耐震補強工事、補修工事、一体化工事等に使用されるグラウト組成物に関する。なお、本発明の部は特に規定のない限り質量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、土木建築分野における耐震補強工事、補修工事、一体化工事等には、流動性に優れ、ブリーディングや沈下現象のないグラウト材料が用いられており、このようなグラウト材料は、セメント、膨張材、細骨材、減水剤、発泡剤からなることが広く知られている。(最新・コンクリート混和剤の技術と応用、シーエムシー出版等)
【0003】しかしながら、施工現場によっては水平流動性が不充分で間隙充填性に問題が生じたり、施工後にひび割れが生じたりする課題があった。
【0004】そこで、本発明者らは、水平流動性と耐ひび割れ性能に優れるグラウト材料を得るべく鋭意研究した結果、グラウト組成物の配合を特定することによって所望のグラウト組成物が得られるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、セメント30〜60部、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末10〜30部、無機質粉末20〜40部、膨張材3〜15部からなるセメント系無機粉体100部に対して、粒径1.2mm以下の細骨材50〜150部と減水剤0.05〜1.5部と発泡剤0.001〜0.1部であることを特徴とするグラウト組成物である。
【0006】
【発明の実施形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】本発明に使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低発熱、耐硫酸塩若しくは白色の各種ポルトランドセメントが使用可能である。セメントの使用量は、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部中、30〜60部が好ましい。30部未満では強度発現性が低下し、60部を超えると硬化後に温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れが生じ易くなる。
【0008】本発明に使用する高炉スラグ微粉末としては、高炉スラグを急冷し、ブレーン粉末度6000cm/g以上に微粉砕したものが好ましい。ブレーン粉末度6000cm/g未満では、流動性や初期強度発現性が低下する。高炉スラグ微粉末の配合量としては、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部中、10〜30部が好ましい。10部未満では流動性が低下し、30部を超えると硬化後の乾燥収縮、自己収縮が卓越し、ひび割れが発生し易くなる。
【0009】本発明に使用する膨張材としては、アウイン系、生石灰系、石膏系、生石灰―石膏系等の膨張材が挙げられる。膨張材の使用量としては、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部中、3〜15部が好ましい。3部未満ではグラウト材の乾燥収縮を充分に補償することができず、15部を超えると硬化後も膨張が続き、強度低下若しくは硬化体の膨張破壊を生じる。
【0010】本発明での無機質粉末としては、石灰石微粉末、フライアッシュ、珪石粉等が挙げられ、石灰石微粉末の使用がより好ましい。フライアッシュは、石炭火力発電所等において微粉炭を焼成する際に溶融された灰分が冷却されて球状となったものを、電気集塵機などで捕集した副産物である。フライアッシュの品質は、JIS A6201に規定される品質のものが好ましい。石灰石微粉末は、石灰鉱物を含有した石灰石をボールミル等の粉砕機でブレーン粉末度2000cm/g以上に微粉砕したものであって、CaCOの純度が90%以上、セメントの水和に有害な有機不純物含有量の少ないものが好ましい。
【0011】本発明で無機質粉末に石灰石微粉末を用いることは、高温施工時の流動性を保持する面から好ましい。また、グラウト材の流動性を向上でき、セメント量を増加させなくともグラウトの粘性を向上でき、水和発熱を抑制して温度ひび割れを防止する効果も有する。
【0012】無機質粉末の配合割合としては、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部中、20〜40部が好ましい。20部未満では流動性や温度ひび割れ防止効果が低下する。40部を超えると強度発現性が低下する。
【0013】本発明での細骨材としては、珪砂、石灰石砂、高炉スラグ細骨材等のうちの一種または二種以上を使用することができる。中でも、経済性の面から高炉スラグ細骨材の使用がより好ましい。また、水平流動性、間隙充填性に優れたグラウト材とするためには、細骨材の最大寸法は1.2mm以下であることが好ましい。1.2mmを超えると水平流動中に細骨材が沈降し易くなり、粒子の凝集によるロッキング作用を受けるため水平流動性が低下する。この場合、水平距離の長い間隙への充填は困難である。細骨材の配合割合としては、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部に対して50〜150部が好ましく、60〜100部がより好ましい。50部未満では温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れが発生し易く、150部を超えると水平流動性や強度発現性が低下する。
【0014】本発明での減水剤は特に限定されるものではなく、例えばナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩、リグニンスルホン酸塩およびポリカルボン酸塩等を主成分とするものが挙げられる。中でも高い減水性と優れた流動保持性を有するポリカルボン酸塩を主成分とするものが、より好ましい。また、減水剤は粉末状、液状のいずれも使用可能であるが、施工時に混合や混練が簡素化できる面から、粉末状の減水剤の使用が好ましい。減水剤の使用量としては、使用する減水剤の種類によって異なり、一義的には決定できないが、通常、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部に対して、0.05〜1.5部が好ましい。0.05部未満では流動性が充分に得られない場合があり、1.5部を超えると材料分離が生じ易く、均一な硬化体を得られない。
【0015】本発明での発泡剤は、グラウト材の打ち込み初期の沈下現象を発泡剤による体積膨張で補償し、構造物との一体化を図る目的で使用される。発泡剤の具体例としては、アルミニウム粉末等の金属粉末や過酸化物質等が挙げられる。発泡剤の使用量としては、セメント系無機粉体の配合や発泡剤の種類により異なり、一義的には決定できないが、通常、セメント、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末、無機質粉末、膨張材からなるセメント系無機粉体100部に対して、0.001〜0.1部が好ましい。0.001部未満では充分な初期膨張が得られない場合があり、0.1部を超えると過膨張を起こす場合がある。
【0016】さらに、本発明では、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤、高分子エマルション、アルカリ金属炭酸塩等の凝結調整剤、防錆剤、防凍剤、有機短繊維等のうちの一種または二種以上を、本発明を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0017】本発明のグラウト組成物の使用に際しては、イオン交換水、蒸留水、水道水等を添加してグラウト材を調製する。
【0018】上記グラウト材の製造における各種構成材料の混練は、例えばハンドミキサ、グラウトミキサ等の従来から使用されている混合装置を使用すればよい。この場合、混合装置への各種構成材料の添加順序等は特に限定されない。
【0019】上記グラウト材の施工は、ポンプ圧送等で行えばよい。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0021】実施例1セメント47部、高炉スラグ微粉末13部、膨張材7部、無機質粉末33部からなるセメント系無機粉体に対して、細骨材67部、減水剤0.08部、発泡剤0.003部、増粘剤0.02部、消泡剤0.05部、再乳化形粉末樹脂1部、凝結調整剤0.1部のグラウト組成物に、グラウト組成物100部に対して20〜23部の水とを混合してグラウト材を調製した。
【0022】実施例2セメント56部、高炉スラグ微粉末16部、膨張材8部、無機質粉末20部からなるセメント系無機粉体に対して、細骨材100部、減水剤0.1部、発泡剤0.002部、増粘剤0.01部、消泡剤0.1部、再乳化形粉末樹脂3部、収縮低減剤2部、有機短繊維0.2部のグラウト組成物に、グラウト組成物100部に対して16〜18部の水とを混合してグラウト材を調製した。
【0023】<使用材料>セメント:市販普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末:実施例1はブレーン粉末度6000cm/g、実施例2は8000cm/g、膨張材:市販アウイン系、無機質粉末:ブレーン粉末度4500cm/gの石灰石微粉末、細骨材:最大寸法1.2mmのスラグ細骨材、減水剤:市販ポリカルボン酸系粉末減水剤、発泡剤:市販アルミニウム粉末、増粘剤:市販セルロースエーテル、消泡剤:市販シリコーン系粉末消泡剤、再乳化形粉末樹脂:市販酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、凝結調整剤:市販工業用炭酸リチウム、収縮低減剤:市販グリコール系固体収縮低減剤、有機短繊維:市販ポリプロピレン繊維、繊維長6mm
【0024】比較例1市販プレミックス型グラウト用無収縮材100部に対して16〜18部の水とを混合してグラウト材を調製した。
【0025】試験例1上記実施例1、2および比較例1のグラウト材のコンシステンシーについて試験を行った。
【0026】<試験方法>J14ロート流下時間:日本道路公団規格JHS312−1992「無収縮モルタル品質管理試験方法」に準じて測定した。フロー値:JIS R5201に規定されるフロー試験で、15回の落下を行わない引抜きフロー値を測定した。ここで、相対フロー面積比と相対ロート速度比を次式により算出した。(相対フロー面積比)=(F/Fo)−1、(相対ロート速度比)=10/t、ここにF:フロー値(mm)、Fo:フローコーンの直径(100mm)、t:ロート流下時間(秒)
【0027】試験結果を図1に示す。
【0028】【図1】
【0029】図1より、実施例1、2および比較例1の相対フロー面積比と相対ロート速度比はそれぞれ原点を通る直線で近似することができた。直線の傾きはフロー値に対するロート流下時間の比を表しており、傾きが小さいほど同一ロート流下時間に対するフロー値が大きい。したがって、実施例1、2のグラウト材は、比較例1に比べ同一ロート流下時間に対するフロー値が大きく、水平流動性に優れていた。
【0030】試験例2実施例1、2および比較例1で調製したグラウト材のうち、実施例1は水21.5部、実施例2および比較例1は水18部で調製したグラウト材について、各種物性を測定した。
【0031】<試験方法>J14ロート流下時間、ブリーディング率、圧縮強度、凝結時間:日本道路公団規格JHS312−1992「無収縮モルタル品質管理試験方法」に準じて測定。初期膨張率:ASTM C−827に準じて測定。グラウト材の調製および養生は20℃および10℃とした。曲げ強度:JIS R5201に準じて測定。引張強度:JIS A1113に準じて測定。長さ変化率:JIS A1129に準じて測定。供試体の養生条件は20℃湿度60%とし、翌日脱型後を基長とした。ひび割れ抵抗性:直径15cmのモルタル透水試験用型枠に4インチの鋼製円筒管を中心にセットし、隙間にグラウトを流し込み、翌日に脱型後20℃湿度60%の養生条件でひび割れ発生の観察を行った。
【0032】試験結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 2004345898
【0034】表1から明らかなように、実施例1、2のグラウト材は乾燥収縮が小さく、ひび割れ抵抗性にも優れていた。また、水平流動性、ひび割れ抵抗性以外の各種物性値については、比較例1と同等であった。
【0035】
【発明の効果】本発明のグラウト組成物を使用することにより、優れた水平流動性とひび割れ抵抗性を有し、その他の各種物性値についても従来と同等のグラウト材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】相対フロー面積比と相対ロート速度比との関係を示した図である。

Claims (1)

  1. セメント30〜60部、ブレーン粉末度6000cm/g以上の高炉スラグ微粉末10〜30部、無機質粉末20〜40部、膨張材3〜15部からなるセメント系無機粉体100部に対して、粒径1.2mm以下の細骨材50〜150部と減水剤0.05〜1.5部と発泡剤0.001〜0.1部であるグラウト組成物
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