JP2008200939A - シームレスベルトの製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明の目的は、円筒状金型の内面に展開された溶液樹脂を均一に加温して、表面抵抗値のばらつきを抑えることができるシームレスベルトの製造方法を提供することにある。
【解決手段】円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、当該金型を誘導加熱により加熱することで当該樹脂溶液を加熱成型するシームレスベルトの製造方法であって、金型の外面及び内面に磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、加熱成形によって製造されるシームレスベルトの製造方法に関する。このシームレスベルトは、電子写真複写機、プリンタ等の画像形成装置に用いる搬送ベルトや転写ベルト等の機能性ベルトに有用である。
近年、電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置に用いられる転写搬送ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルト、感光体ベルトには、高速化・高画質化が要求されるため、これら機能性ベルトにはシームレス化が望まれている。シームレスベルトの製造は、筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、回転成形および加熱成形を行い、前記金型を誘導加熱により加湿することにより行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
また、従来より、シームレスベルトの材料としては、成形性が良いこと、軽量であること等の理由からプラスチック材料が使用され、このプラスチック材料としては、耐熱性、機械的強度、耐環境特性に優れることから、ポリイミド系樹脂を使用したポリイミド系シームレスベルトの検討がなされている。また静電的な転写方式に用いられるベルト材料に要求される特性としては、表面抵抗値が10〜1013Ω・cm程度の、いわゆる中抵抗を有することが挙げられる。そこで、ポリイミド樹脂中に多量のカーボンブラックを含有せしめる手法が一般的に用いられている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004‐181731号公報 特開平10‐63115号公報
しかしながら、上記の従来技術で述べた製造方法では、以下のような課題がある。すなわち、ポリイミド樹脂の合成、成膜は複雑な工程を経るため、このカーボンブラックの凝集による不具合が生じ、その結果、抵抗率のバラツキや使用中の電気的負荷による電気抵抗値が低下する問題がある。このような電気抵抗値の低下は転写時にベルトに過大な電流を流すため、該ベルトを中間転写ベルトに用いた場合、一度転写したトナーが再転写する等の画像上の不具合を発生させる。
また、本発明者らは、円筒状金型の内面に展開された溶液樹脂に均一に加温が行われないために、乾燥皮膜の表面抵抗率が不均一になることを発見し、この問題の解決を望んでいた。
そこで、本発明の目的は、円筒状金型の内面に展開された溶液樹脂を均一に加温して、表面抵抗率のばらつきを抑えることができるシームレスベルトの製造方法を提供することにある。
そこで、本発明は、上記目的を達成すべく、半導電性シームレスベルトの製造方法について鋭意研究したところ、以下の製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のシームレスベルトの製造方法は、円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、当該金型を誘導加熱により加熱することで当該樹脂溶液を加熱成形するシームレスベルトの製造方法であって、
前記金型の外面及び内面に磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されていることを特徴とする。
上記構成の作用効果は以下のとおりである。シームレスベルトの原料の樹脂には、導電性を付与する導電性フィラーが配合されている。この樹脂溶液は円筒状金型の内面に塗布され、内面に展開される。次いで、金型の回転による塗膜の均一化がなされる。次いで、金型を誘導加熱によって加熱する。誘導加熱の方法は、例えば、公知の誘導加熱装置が適用できる。金型が誘導加熱によって加熱されると、当該金型に展開された樹脂溶液が加温される。ここで、均一に加温させるために、金型または誘導加熱装置を回転させ、金型が均一に加熱されるように制御される。この結果、部分的に加熱時間が長くなったり、部分的に加熱温度が高くなるようなことがないので好ましい。
そして、金型の外周面及び内周面には、磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されている。これによって、より金型が均一に加温されることになる。メッキ処理によって、金型の加熱温度が均一となり、部分的に加熱温度が高くまたは低くなるようなことがない。
その結果、金型に塗布された樹脂膜の厚み方向に対しても均一な加熱を行え、均一に分散された導電性フィラーがベルト成膜されるまで、著しい凝集を起こすことがなく、表面抵抗率のバラツキや電気抵抗値の低下が抑えられたシームレスベルトを製造することができる。得られたシームレスベルトは、画像形成装置に用いる中間転写ベルトに有用であり、本発明のシームレスベルトの製造方法は、画像形成装置に用いる中間転写ベルトの製造方法として有用である。
また、本発明の好適な実施形態として、金型に施されたメッキの層の厚みバラツキは、メッキの層の厚み平均値の±20%以内である。メッキの層のばらつきが小さいほど、金型を均一に加熱することができて好ましい。
また、本発明は、特に熱硬化性で高粘度樹脂に対し好適であるとともに、用途面からも耐熱性、機械的強度、化学的安定性などに優れた特性を生かすことができるポリイミド樹脂を、短時間で乾燥、成形しつつ、かつ表面抵抗率の均一性に優れたシームレスベルトに仕上げるのに非常に適した製造方法といえる。本発明の製造方法によって得られるシームレスベルトは、複写機、プリンタ等の転写搬送ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルト、感光体ベルトなど、機能性ベルトとして優れており、その他広範囲な分野への用途展開も可能である。
また、本発明の好適な実施形態として、記金型と加熱用誘導コイルとの距離を調整可能とすることを特徴とする。
これによって、ベルトの厚みや金型の管径といった、製造工程で変更される種々の条件設定に対し、任意に最適加熱配置が可能とすることで容易に対応できるとともに、1つの工程内での条件変更にも対応を可能とすることで、より微妙な調整をすることができる。
また、本発明の方法の好適な実施形態の一例として、
シームレスベルトを製造するための円筒状金型と、
前記円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開する手段と、
前記円筒状金型を誘導加熱により加熱することで当該樹脂溶液を加熱成形する手段と、を備えるシームレスベルトの製造装置であって、
前記円筒状金型の外面及び内面に磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されていることを特徴とする。
この構成の作用効果は、上記記載の作用効果と同様である。
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を用いて説明する。
本発明は、メッキ処理を施した円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、回転成形、加熱成形を行うシームレスベルトの製造方法およびその製造装置である。そして、金型を誘導加熱により加熱することで、樹脂皮膜を加温し、均一性の高いシームレスベルトを製造する。
本発明は、被加熱体(樹脂皮膜)に直接接することなく加熱が可能で、かつ直接被加熱体に電気エネルギーを投入できるとともに、温度制御が容易で迅速であるという利点を有する「誘導加熱」によって、回転する金型自体を非接触で均等に加熱する。そして、金型に塗布された樹脂被膜の厚み方向に対しても均一な加熱を行うことで、その厚みの均一性が高いシームレスベルトを確保することができることを見出したものである。
また、上記工程からなる半導電性シームレスベルト製造方法によると、均一に分散された導電性フィラーがベルト成膜されるまで、著しい凝集を起こすことがない。このため、表面抵抗率のバラツキや電気抵抗値の低下が抑えられる。また、例えば、イミド化促進剤の使用で、温度や環境の可撓性と表面平滑性に優れたシームレスベルトを提供できる。
また、本発明の製造方法によって、表面抵抗率の均一性に優れたシームレスベルトの製造が可能であり、画像形成装置に用いる中間転写ベルトなどに有用となる。
<金型>
円筒状金型の材料としては、ステンレス鋼(SUS)・アルミニウム(AI)・炭素鋼などの耐熱性材料が使用される。円筒状金型のサイズ(内径、外径、高さ)は、特に制限されず、シームレスベルトのサイズに依存して設定できる。
(メッキ処理)
円筒状金型に施すメッキの材料としては、例えば、亜鉛、ニッケル、ニッケルとクロムの複合物、硬質クロム、テフロン(登録商標)、アルマイト(金型材料がアルミ、アルミ合金の場合)等が例示でき、特に、磁性体の無電解ニッケルメッキ、非磁性体のクロムなどが好適に適用できる。金型の全面にメッキ処理を施すことが好ましく、少なくとも、内周面に、又は内周面及び外周面に施すことが好ましい。メッキ処理の方法は、メッキ層の厚みのばらつきを抑えることが要求され、これを実現できる公知の処理方法が適用できる。
また、円筒状金型に施すメッキの厚みは、例えば磁性体材料では100μm以下、非磁性体材料では金型材料と当該非磁性体の透磁率により異なるが10〜30μm程度が好ましい。例えば炭素鋼では透磁率3.142×10−3(H/m)、硬質クロムでは透磁率1.257×10−6(H/m)である。また、メッキの厚みバラツキは厚み平均値の±20%以内、好ましくは±10%以内、特に好ましくは、±5%以内である。
<製造方法・装置>
(誘導加熱方法・装置)
図1は、本発明の一例を示す製造方法・装置の概要を示す説明図である。樹脂溶液を内面に展開する円筒状金型1に対して所定の距離をおいて加熱用誘導コイル2が設置されている。高周波電源4から加熱用誘導コイル2に高周波電流が印加されると、円筒状金型1に誘導電流が生じて内部抵抗によって発熱つまり円筒状金型1自体が加熱されることとなる。このとき、印加する電流値を変えると発生する誘導電流も変化し発熱量も変化するため、加熱量も可変できることとなる。円筒状金型1は、図1の下部に示すように、該金型1と接設する回転ローラ3によって所定の回転数に回動することができ、内面に展開された樹脂の製造工程に即した稼動状態(つまり、停止、高速回転(例えば、5〜100rpm程度、100rpm以上等)、低速回転(例えば、高速回転が5rpm以上であれば低速回転は5rp未満)など)を実現している。
また、金型と加熱用誘導コイル2との距離を調整可能とすることが好適である。つまり、上記のように、図1における円筒状金型1の加熱量は誘導電流によって制御できるが、円筒状金型1に対して加熱用誘導コイル2が設置される距離を調整可能とすることで、さらにこうした制御幅を拡大することができ、多様な使用に適用することができる。つまり、金型の形状・材質によっては、誘導電流による制御範囲に限界が生じることがあり、本発明はかかる場合に非常に有効な手段となりうる。同様に、ベルトの厚みや金型の管径といった、製造工程で変更される種々の条件設定に対し、任意に最適加熱配置が可能とすることで容易に対応できるとともに、1つの工程内での条件変更にも対応を可能とすることで、より微妙な調整をすることができる。
(電磁加熱用誘導コイル)
加熱用誘導コイル2は、電磁誘導機能を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、面焼形コイル、角形コイル、円筒加熱用コイル等が例示され、円筒状金型の軸方向に沿って加熱させる場合、角形コイル、面焼形コイルが好ましい。また、円筒状金型の内面全面を加熱する場合、円筒状加熱用コイルが好ましい。
(塗布方法・装置)
円筒状金型の内面に樹脂皮膜を形成する方法・手段としては、特に制限されず、従来公知の方法・手段が適用でき、例えば、弾丸状走行体を用いて自重走行により速度20mm/分で金型内面を走行させ、樹脂皮膜を金型内周面に塗布する方法・手段、塗布装置によって内周面に塗布する方法等が例示される。
次いで、金型の内面に樹脂溶液を塗布後、内周面に樹脂皮膜の厚みを均一に展開するために、金型を所定時間(例えば、数分から数十分)、高速回転(例えば、100rpmから5000rpmの回転速度)させる。金型の回転速度、回転時間は、樹脂溶液の粘度等に依存して設定される。次いで、金型を低速(例えば、0rpmより大きく5rpm〜100rpm未満程度の範囲(上記高速回転より小さい範囲)で)回転させながら、誘導加熱による金型の加熱を行なう。この金型の加熱によって、金型が樹脂皮膜を加温することになる。
誘導加熱を用いることで円筒金型が加熱され、溶液が蒸発し、従来の方法よりも熱効率が向上するために短時間で乾燥皮膜化を実現できる。特に、厚みばらつきを抑えて均一にメッキが施されていることで金型面から樹脂溶液に伝わる熱量が金型軸方向で均一となり乾燥皮膜の表面抵抗率がバラつかないという効果が得られる。
(導電性フィラー)
本発明に用いるカーボンブラックは、平均粒子径が5〜100nmであり、好ましくは10〜70nmであり、より好ましくは15〜60nmである。平均粒子径が5nm未満のものは、実質的に入手することが困難であり、平均粒子径が100nmを越える場合、該カーボンブラックを含有したポリイミド樹脂組成物の表面粗さ、機械的強度及び電気抵抗制御性等の観点から実用上満足できるものが得られ難いからである。
前記平均粒子径は、電子顕微鏡などで測定された一次粒子径に基づく平均粒子径を示す。また、前記カーボンブラックは、粒子表面にポリマーをグラフト化させたり、絶縁材を被覆したりすることで電気抵抗を制御してもよく、カーボンブラック粒子表面に酸化処理を施してもよい。本発明に用いるカーボンブラックとしては、例えばファーネスプラック、チャンネルブラック等が挙げられる。具体的には、ファーネスブラックとして、デグサ・ヒュルス社製の「SpecialBlack550」、「SpecialBlack350」、「SpecialBlack250」、「SpecialBlack100」、「Printex 35」、「Printex 25」、三菱化学社製の「MA7」、「MA77」、「MA8」、「MA11」、「MA100」、「MA100R」、「MA220」、「MA230」、キャボット社製、「MONARCH 1300」、「MONARCH 1100」、「MONARCH 1000」、「MONARCH 900」、「MONARCH 880」、「MONARCH 800」、「MONARCH 700」、「MOGUL L」、「REGAL 400R」、「VULCAN XC−72R」等が挙げられ、チャンネルブラックとしてデグサ・ヒュルス社製の「Color B1ack FW200」、「Color B1ack FW2」、「Color B1ack FW2V」、「Color B1ack FW1」、「Color B1ack FW18」、「SpecialBlack6」、「ColorBlackS170」、「ColorBlackS160」、「SpecialBlack5」、「SpecialBlack4」、「SpecialBlack 4A」、「Printex 150T」、「Printex U」、「Printex V」、「Printex 140U」、「Printex 140V」等が挙げられ、単独及び複数種類のカーボンブラックを併用してもよい。
(樹脂溶液原料)
本発明に用いる有機極性溶媒は、導電性フィラー、特にカーボンブラックの分散性を高めるものであれば特に制限されないが、N,N−ジアルキルアミド類が有用であり、例えば低分子量のものとしてN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらは、蒸発、置換又は拡散によりポリアミド酸及びポリアミド酸成形品から容易に除去することができる。また、上記以外の有機極性溶媒として、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、分散方法としては公知の方法が適用でき、ポールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
次に、半導電性ポリアミド酸溶液を調製するためには、有機極性溶媒中にジアミンと酸二無水物を溶解し、重合反応後得られたポリアミド酸溶液中に該カーボンブラック分散液を添加し混合・攪拌する方法、該カーボンブラック分散液中にジアミン及び酸二無水物を溶解し、重合反応する方法等が挙げられるが、カーボンブラックの分散性を均一にするためには、後者の方法が好ましい。
酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−t−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへブタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピベラジン、HN(CH),O(CHOCHNH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
これらの酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては適宜なものを用いうるが、溶解性等の点から有機極性溶媒が好ましく用いられ、カーボンブラックの分散用と重合反応の溶媒用とを兼用できるものがより好ましい。
各原料の配合量に関しては、最終的に得られるポリイミド樹脂組成物の目的とする用途により、これに適合した組成を実験的に検討する必要がある。例えば、表面抵抗率の常用対数値が8〜13(logΩ/□)である半導電性ポリイミドベルトを得るためのカーボンブラックの添加量は、ポリイミド樹脂固形分に対し10〜40重量%程度が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。前記抵抗領域を発現するためには高導電性カーポンブラックを用いる必要があり、このような高導電性カーボンブラックを10重量%より少ない低添加量で加えると、安定した抵抗を再現よく製造するのが困難となる場合がある。一方、40重量%より多いと、ポリイミド樹脂本来の高い機械特性が損なわれ、脆性が発現
し、ベルトを複数の駆動ローラ等により駆動する際にベルト端面に亀裂を生じることがある。
前記半導電性ポリアミド酸溶液のモノマー濃度(溶媒中の酸二無水物成分とジアミン成分の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、5〜30重量%が好ましい。また、重合反応は窒素雰囲気下で行い、反応温度は60℃以下に設定することが好ましく、反応時間は0.5〜10時間程度が好ましい。半導電性ポリアミド酸溶液は、重合反応の進行に従い、溶液粘度が増大するため、粘度を調整することができる。また、溶媒の添加等でモノマー濃度を下げることによって、粘度の調整も可能である。本発明における半導電性ポリアミド酸溶液の粘度は、通常、1〜1000Pa・sである。
なお、半導電性ポリアミド酸溶液を得る方法として、カーボンブラックを高分子分散剤の存在下で有機極性溶媒中に分散させてカーボンブラック分散液とし、該カーボンブラック分散液中でポリアミド酸を重合させた半導電性ポリアミド酸溶液に、イミド化促進剤を添加し、混合・攪拌することによって均一な半導電性ポリアミド酸溶液を得る方法やカーボンブラックを高分子分散剤の存在下で有機極性溶媒中に分散させてカーボンブラック分散液とし、該カーボンブラック分散液とポリアミド酸を混合させた半導電性ポリアミド酸溶液に、イミド転化触媒を添加し、混合・攪拌することによって均一な溶液を得る方法があるが、本発明の製造方法によれば、こうした方法より一層、機械的な強度・弾性を満たし、かつ温度や環境の可撓性と表面平滑性に優れたシームレスベルトを提供することができる。つまり、本発明の製造方法によって、混合・攪拌時間や方法による混合ムラや泡の混入の発生を大きく軽減することができ、カーボンブラックの分散の均一性を向上させるとともに、ベルト表面での窪みや突起が発生を防止し、高い膜厚精度を確保することができる。
以上の製造方法によって得られるシームレスベルトは、複写機、プリンタ等の転写搬送ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルト、感光体ベルトなど、機能性ベルトとして優れておりその他広範囲な分野への用途展開も可能である。また、本発明の乾燥方法およびは上記用途のシームレスベルトに限らずあらゆる分野に用いられるベルトに適用でき、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
<実施例>
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。なお、本発明がかかる実施例、評価方法に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)表面抵抗率とそのバラツキ
ハイレスタUP、MCP−HTP16(三菱化学社製、プローブ:UR−100)にて印加電圧100V、10秒後、測定条件25℃、60%RHでの表面抵抗率を調べ、その表面抵抗率を常用対数値にて示した。各サンプルにつき12箇所(周方向に4箇所とし軸方向に3点=12箇所)を測定して、周方向及び軸方向の夫々の最大値と最小値の偏差(最大値÷最小値値)により表面抵抗率のバラツキを評価した。なお平均値も算出してある。
(2)メッキの厚みとそのバラツキ
電磁式デジタル膜厚計(SDM−3000、(株)サンコウ電子研究所)にて、金型にメッキされた厚みの平均値と、厚みのばらつき(%)を評価した。厚みばらつきは、(最大値―平均値)÷平均値×100で算出される。
<実施例>
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1687gとイソキノリン163gの混合溶液中にカーボンブラック(MA1O0、三菱化学社製、ファーネスブラック、一次粒子に基づく平均粒子径22nm)200gとポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)100gを添加した。ボールミルを用いて、12時間、室温で攪拌することにより分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過しカーボン濃度10%のカーボン分散液を得た。このカーボン分散液1923.39gを5000mlの4つ口フラスコに移し、N−メチル−2−ピロリドン2040.13gとp−フェニレンジアミン227.09g(2.1モル)を仕込み、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物617.86g(2.1モル)を添加し、温度20℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱しながら攪拌することにより、B型粘度計による溶液粘度が150Pa・sのカーボンブラック含有ポリイミド前駆体溶液(固形分濃度20wt%、カーボンブラックの添加量樹脂に対して25部)を得た。このカーボンブラック含有ポリイミド前駆体溶液を#800のステンレスメッシュを用いてろ過し、半導電性ポリイミドベルト形成用ワニスとした。次に、前記半導電性ポリイミドベルト形成用ワニスをディスペンサーにより、外径320mm、長さ1200mm、硬質クロムメッキ厚み平均値14.1μm、最大メッキ厚みバラツキ4.3%(内周面及び外周面にメッキ処理済み)の金属製円筒状金型の内周面に厚みが600μmになるように塗布した。次に、回転成形機にて1500rpmで10分間回転させて均一厚の展開層としたのち、10rpmで回転させながら、誘導加熱により金型を345℃まで加熱し溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化を行った。その後室温に戻し、厚さ77〜78μmのシームレスの半導電性ベルトを得た。
<比較例1>
実施例の金属製円筒状金型を硬質クロムメッキ厚み平均値24.6μm、最大メッキ厚みバラツキ36.7%の金型に代えて行った。
<比較例2>
実施例の金属製円筒状金型を硬質クロムメッキ厚み平均値280μm、最大メッキ厚みバラツキ12.6%の金型に代えて行った。
それぞれの金型を用いた場合の比較を表1に示した。
Figure 2008200939
表1の結果より、実施例は、比較例1,2と比較して、メッキ厚み(平均値)が薄く、厚みばらつきが小さい金型を用いて誘導加熱方式を用いることで、表面抵抗率のばらつきが小さいポリイミド樹脂製のシームレスベルトが得られた。
以上によれば、本発明の製造方法は、熱硬化性で高粘度樹脂に対し好適であり、特に、樹脂溶液がボリアミド酸溶液を主成分とする溶液である場合に好適である。用途面からも耐熱性、機械的強度、化学的安定性などに優れた特性を生かすことができるポリイミド樹脂を、短時間で乾燥、成形しつつ、かつ表面抵抗率のバラツキのないシームレスベルトに仕上げるのに非常に適した製造方法といえる。
このようにして得られるシームレスベルトは、複写機、プリンタ等の転写搬送ベルト、中間転写ベルト、転写定着ベルト、感光体ベルトなど、機能性ベルトとして優れておりその他広範囲な分野への用途展開も可能である。
本発明に係る方法を実施するための装置の一例を示す説明図
符号の説明
1 円筒状金型
2 加熱用誘導コイル
3 回転ローラ
4 高周波電源

Claims (5)

  1. 円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、当該金型を誘導加熱により加熱することで当該樹脂溶液を加熱成形するシームレスベルトの製造方法であって、
    前記金型の外面及び内面に磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されていることを特徴とするシームレスベルトの製造方法。
  2. 前記金型に施されたメッキの層の厚みバラツキが厚み平均値の±20%以内であることを特徴とする請求項1に記載のシームレスベルトの製造方法。
  3. 前記樹脂溶液がポリアミド酸溶液を主成分とする溶液であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシームレスベルトの製造方法。
  4. 前記金型と加熱用誘導コイルとの距離を調整可能とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシームレスベルトの製造方法。
  5. シームレスベルトを製造するための円筒状金型と、
    前記円筒状金型の内面に樹脂溶液を展開する手段と、
    前記円筒状金型を誘導加熱により加熱することで当該樹脂溶液を加熱成形する手段と、を備えるシームレスベルトの製造装置であって、
    前記円筒状金型の外面及び内面に磁性体または非磁性体材料のメッキ処理が施されていることを特徴とするシームレスベルトの製造装置。
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