以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の一形態は、円筒状金型の内周面または外周面にポリアミド酸および導電性フィラーを含む塗布液を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を加熱することを含むポリイミドシームレスベルト(以下、単に「シームレスベルト」とも記載する)の製造方法であって、前記熱イミド化処理は、前記円筒状金型の前記回転軸方向の塗膜の任意の位置の、前記回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置との距離が等しくなるよう配置される加熱手段により、塗膜形成面とは反対の面側から前記円筒状金型を加熱して昇温し、平均温度300℃以上、かつ前記平均温度に対する面内温度分布の割合が2%以下の状態で行うことを含む、ポリイミドシームレスベルトの製造方法である。上記構成を有する製造方法によれば、製造されるポリイミドシームレスベルトの外観不良の発生および長期間使用時のベルト表面の不均一性の発現を低減することができる。
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
本発明では、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置との距離が等しくなるよう配置される加熱手段を用いる。
塗膜を円筒状金型ごと加熱炉中の高温雰囲気下に置く方法や、円筒状金型上の塗膜に一定の方向から熱風を吹き付ける方法等の従来一般的に用いられる加熱手段では、塗膜に均一に熱を伝えることは難しい。よって、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を含む塗膜を加熱してイミド化を進行させる場合、特に300℃以上の高温で加熱を行うときは、円筒状金型の回転軸方向や回転方向に温度分布が発生していた。ここで、円筒状金型上の位置による温度分布が存在すると、塗膜上にも温度分布が生じることとなり、場所によって熱イミド化反応の進行状況が異なることとなる。また、熱イミド化反応は、脱水反応を含むため、水の発生を伴う。ここで、位置によって熱イミド化反応の進行状況が異なることから、急速に反応が進行する位置では塗膜中で局所的に大量の水が発生し、蒸発することとなる。この際、この部分が膨れ形状となり、そのままイミド化が進行して塗膜が硬化されることで、製造されるシームレスベルトの外観不良が発生する。また、外観不良のような顕著な変形以外にも、水の発生に起因して目視で確認されない微細な変形が発生することで、シームレスベルト内に残留応力が生じ、長期使用によるベルト表面の不均一性が発現する。しかしながら、本発明では、上記のような加熱手段を用いることで、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置を均等に加熱する。そして、かような加熱手段は、塗膜全体に均一に熱を伝えることが可能であることから、300℃以上の高温で加熱を行う際にも円筒状金型上の位置による温度分布の発生が低減される。その結果、熱イミド化反応時の水の発生および蒸発が塗膜上で均一となり、塗膜の膨れの発生が抑制されることで、シームレスベルトの外観不良の発生が低減される。また、目視で確認されないベルト表面の微細な変形の発生も低減されることで、シームレスベルト内の残留応力が低減し、長期使用によるベルト表面の不均一性の発現も低減される。これにより、ポリイミドシームレスベルトを中間転写ベルトとして使用した際にハーフトーン出力画像の色ムラの発生が抑制される。
また、本発明では、円筒状金型の塗膜形成面とは反対の面側から加熱を行うことで、円筒状金型の表面側から塗膜のイミド化を進行させる。
従来の加熱方法では、円筒状金型上の塗膜形成面側から加熱を行うことで塗膜のイミド化を進行させることが一般的であり、この加熱方法は、加熱装置の加熱部を円筒状金型の塗膜形成面側に配置することで実現される。特に、加熱炉や熱風等を用いる空気を介した加熱手段では、この加熱方法は、塗膜とより高温の空気とが直接接触することで、より早い乾燥速度、より短い乾燥時間を実現できることから好適であるとされてきた。この方法では、円筒状金型側とは反対の面側、例えば、空気界面側から塗膜に熱が伝わることから、この部分からイミド化が進行し、先行して硬化することとなる。よって、その後、塗膜内のより円筒状金型に近い側で反応が進行して発生する水は、塗膜の先に硬化した部分により蒸発が妨げられることとなる。この際、前述のような塗膜の膨れや、水の発生に起因するベルト表面の微細な変形の発生が促進され、外観不良の発生や長期使用によるベルト表面の不均一性の発現がより顕著となる。しかしながら、本発明では、円筒状金型の塗膜形成面とは反対の面側から加熱を行うことで、熱イミド化反応時の水の蒸発が塗膜上で均一となり、塗膜の膨れの発生が抑制されることで、シームレスベルトの外観不良の発生が低減される。また、目視で確認されないベルト表面の微細な変形の発生も低減されることで、シームレスベルト内の残留応力が低減し、長期使用によるベルト表面の不均一性の発現も低減される。これにより、ポリイミドシームレスベルトを中間転写ベルトとして使用した際にハーフトーン出力画像の色ムラの発生が抑制される。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
<塗布液の調製>
ポリアミド酸および導電性フィラーを含む塗布液(以下、単に塗布液とも称する)は、塗布により塗膜を形成し、塗膜を熱イミド化処理が可能な温度で加熱することでポリイミド成形体を得ることができる塗布液である。
塗布液の調製方法は、ポリアミド酸および導電性フィラーを混合することができれば特に制限されず、公知の方法を用いることができる。ポリアミド酸、導電性フィラーおよび後述する任意に添加されうる他の添加成分の混合に際しては、これら単体を用いてもよいし、これらの溶液または分散液を用いてもよい。これらの成分や任意に用いられる溶媒の添加順序も特に制限されるものではない。また、添加、混合の方法および条件も特に制限されるものではない。
塗布液の調製方法としては、生産性の観点から、ポリアミド酸溶液に導電性フィラーを添加し、混合することを含む方法が好ましく、その後、溶媒を添加して粘度を調製することをさらに含むことがより好ましい。
塗布液中の溶質(本明細書では、塗布液中のポリアミド酸、導電性フィラーおよび後述する他の添加成分を表す)の添加量は、特に制限されないが、塗布をより良好に行うことができる粘度が得られる量であることが好ましい。ここで、塗膜の生産性および品質等の観点から、塗布液の粘度は、1Pa・s以上100Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましく、20Pa・s以上30Pa・s以下がさらに好ましい。
混合方法としては、特に制限されないが、例えば、ディゾルバ型の攪拌機で混合することが挙げられる。
また、塗布液は、自転公転式ミキサー等で脱泡しておくことが好ましい。
(ポリアミド酸)
ポリアミド酸(ポリアミック酸)は、ポリイミド前駆体の一種であり、ポリアミド酸を加熱し、熱イミド化処理することにより、ポリイミドを得ることができる。
ポリアミド酸は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。中でも、酸二無水物とジアミンとを重合して得られるものであることが好ましい。
前記酸二無水物としては、特に制限されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、またはエチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これら酸二無水物は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
これら酸二無水物の中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
前記ジアミンとしては、特に制限されないが、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2OCH2NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、またはH2N(CH2)3N(CH2)2(CH2)3NH2等が挙げられる。これらジアミンは、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
これらジアミンの中でも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンが好ましい。
ポリアミド酸の製造方法は、特に制限されないが、例えば、有機極性溶媒中に、酸二無水物とジアミンとを溶解し重合を行う方法が挙げられる。有機極性溶媒中におけるポリアミド酸の重合方法は、特に制限されないが、一例としては、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種または2種以上のジアミンを有機極性溶媒に溶解し、この溶液に少なくとも1種の酸二無水物を添加する方法が挙げられる。当該方法においては、ジアミンと酸二無水物との間で発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミド酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常、−20〜100℃の範囲内が好ましく、−20〜60℃にすることがより好ましい。反応時間は、30分間〜12時間の範囲内が好ましい。
なお、上記添加手順に限らず、例えば、まず、酸二無水物を有機極性溶媒にスラリー状態に分散させておき、この溶液中にジアミンを添加させても良い。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機極性溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でも良い。また、酸二無水物とジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加反応させても良く、酸二無水物と、ジアミンとの混合順序は限定されない。
有機極性溶媒は、極性を有する有機物の溶媒である。ポリアミド酸の重合に使用可能な有機極性溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、又はヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。これら有機極性溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
これらの有機極性溶媒の中でも、スルホキシド系溶媒、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがさらに好ましい。
また、ポリアミド酸は、上述のようにして合成したものを使用することができるが、簡便には有機極性溶媒にポリアミド酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを使用することができる。このような市販品としては、例えば、U−ワニス−A、U−ワニス−S(宇部興産株式会社製)、リカコート(登録商標)(新日本理化株式会社製)、オプトマー(登録商標)(JSR株式会社製)、SE812(日産化学工業株式会社製)等が代表的なものとして挙げられる。
ポリアミド酸の重量平均分子量は、特に制限されないが、1万以上200万以下であることが好ましい。重量平均分子量が1万以上であると、シームレスベルトの引張破断強度より大きくすることができる。一方、重量平均分子量が200万以下であると、樹脂の分子間相互作用が小さく、導電性フィラーの樹脂中への分散性が改善する。そのため、導電性フィラーの添加量をより少なくすることができ、引張破断伸度等の機械的特性が向上する。同様の観点から、重量平均分子量は、3.5万以上8万以下であることが好ましく、5万以上8万以下であることがより好ましい。
なお、シームレスベルトを形成するポリイミドの分子量は、その前駆体であるポリアミド酸の分子量と同等の範囲にある。したがって、ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、1万以上200万以下であることが好ましく、3.5万以上8万以下であることがより好ましく、5万以上8万以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド酸およびポリイミドの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。より具体的には、以下に記載の測定機器および測定条件により測定することができる。
(導電性フィラー)
導電性フィラーは、ポリイミド中に分散し、シームレスベルトの電気抵抗を調整する機能を有する。
導電剤は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。中でも、カーボンナノファイバー(CNF)、金属酸化物、カーボンブラックが好ましい。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。また、カーボンブラックとしては、特に制限されないが、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。これら導電性フィラーの中でも、カーボンブラックであることが好ましい。
導電性フィラーは、市販品を使用してもよい。このような市販品としては、特に制限されないが、例えば、Degussa製のSPECIAL BLACK 4等が挙げられる。
これら導電性フィラーは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
導電性フィラーの添加量は、特に制限されないが、樹脂成分(ポリアミド酸および任意に含まれうる高分子成分)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましい。添加量が0.1質量部以上であると、電気伝導経路の形成が良好となり、電導性がより良好となる。一方、30質量部以下であると、シームレスベルトの引張破断伸度等の機械的特性がより向上する。同様の観点から、導電性フィラーの添加量は、樹脂成分100質量部に対して、10〜30質量部であることがより好ましく、15〜25質量部であることがさらに好ましい。
また、製造されるシームレスベルト中に含まれる導電性フィラーの添加量は、シームレスベルト中のポリイミド樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましく、15〜25質量部であることがさらに好ましい。
(溶媒)
塗布液は、溶媒をさらに含むことが好ましい。
溶媒は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。中でも、ポリアミド酸を良好に溶解することができること、ポリアミド酸の重合により得られたポリアミド酸溶液をそのまま使用できることなどから、有機極性溶媒が好ましい。
有機極性溶媒は、特に制限されないが、例えば、前記のポリアミド酸の重合に使用可能な有機極性溶媒と同様のものが挙げられる。これら有機極性溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
これらの有機極性溶媒の中でも、スルホキシド系溶媒、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがさらに好ましい。
(他の添加成分)
塗布液は、上記の成分以外に、例えば、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、レベリング剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の他の添加成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
<塗布>
本発明に係るシームレスベルトの製造方法は、ポリアミド酸および導電性フィラーを含む塗布液を円筒状金型上に塗布し、塗膜を形成することを含む。
円筒状金型としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。塗布液を円筒状金型の内周面に塗布する場合は、中空円筒状である必要があるが、塗布液を円筒状金型の外周面に塗布する場合は、金型は中空円筒状であっても、そうでなくてもよい。
円筒状金型の材質としては、特に制限されず、公知のものを用いることができ、例えば、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、鉄等が挙げられる。これらの中でも、ステンレスが好ましい。好ましいステンレスの種類としては、例えば、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレスが挙げられる。
円筒状金型の外周面に塗布する場合、円筒状金型の外径は、所望のシームレスベルトのサイズよって適宜選択すればよく、特に制限されない。ただし、円筒状金型の外径(円筒状金型の塗布面の直径)は、生産効率や乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点から、100mm以上1000mm以下であることが好ましく、200mm以上900mm以下であることがより好ましく、300mm以上800mm以下であることがさらに好ましい。
円筒状金型の内周面に塗布する場合、円筒状金型の内径は、所望のシームレスベルトのサイズよって適宜選択すればよく、特に制限されない。ただし、円筒状金型の内径(円筒状金型の塗布面の直径)は、生産効率や乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点から、100mm以上1000mm以下であることが好ましく、200mm以上900mm以下であることがより好ましく、300mm以上800mm以下であることがさらに好ましい。
円筒状金型の幅(回転軸方向の長さ)は、所望のシームレスベルトのサイズによって適宜選択すればよく、特に制限されない。ただし、円筒状金型の幅は、生産効率や乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点からは、200mm以上2000mm以下であることが好ましく、250mm以上1500mm以下であることがより好ましく、300mm以上1000mm以下であることがさらに好ましい。
塗布液を円筒状金型の外周面に塗布する場合は、中空円筒状ではない円筒状金型、すなわち塗布可能な面が外周面のみである円筒状金型であることが好ましい。かような円筒状金型としては、特に制限されないが、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置との距離が等しくなるよう配置される加熱手段を内部に有するものがより好ましい。ここで、加熱手段としては、公知の加熱手段を用いることができる。これらの中でも、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置をより均等に加熱するとの観点から、誘導加熱手段であることが好ましい。したがって、かような円筒状金型としては、後述する誘導加熱ロールを用いることが好ましい。
なお、円筒状金型の塗膜形成面には、あらかじめ、剥離しやすいように離型剤を塗布しておくことが好ましい。
塗布方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。これらの中でも、円筒状金型を回転させながら、塗布液をノズル、ニードル、スプレーやディスペンサーのような液供給装置によって、内周面全体または外周面全体に塗布する方法が好ましい。塗膜の均一化のため、塗布後、塗布時よりも高速で円筒状金型を回転させて塗膜を押し広げることをさらに行っていてもよい。
本発明の一形態に係る製造方法は、塗膜の形成において、円筒状金型を回転させながら塗布液をノズルにより連続的に供給し、ノズルを円筒状金型の回転軸方向に移動させることにより、塗布液をらせん状に塗布して塗膜を形成することが好ましい。
図1は、かような塗布方法の一例を示す模式図である。図1Aは、円筒状金型100の外周面100Aに塗膜を形成する場合の模式図であり、図1Bは、円筒状金型100の内周面100Bに塗膜を形成する場合の模式図である。塗膜の形成において、円筒状金型100を所定速度で回転させながら、塗布液Tは、ノズル101等を使用して円筒状金型100の外周面100A全体または内周面100B全体に均一になるように塗布される。
ノズル内径φは、特に制限されないが、0.01mm以上10mm以下であることが好ましく、0.2mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上2mm以下であることがさらに好ましい。
ノズル送り速度は、特に制限されないが、0.01mm/s以上100mm/s以下であることが好ましく、0.02mm/s以上50mm/s以下であることがより好ましく、0.1mm/s以上10mm/s以下であることがさらに好ましい。
塗布液の吐出流量は、特に制限されないが、1cc/min以上1000cc/min以下であることが好ましく、5cc/min以上200cc/min以下であることがより好ましく、10cc/min以上100cc/min以下であることがさらに好ましい。
塗布時の円筒状金型の回転数は、特に制限されないが、3rpm以上300rpm以下が好ましく、20rpm以上200rpm以下がより好ましく、10rpm以上100rpm以下がさらに好ましい。
円筒状金型上の塗膜の塗布幅、すなわち円筒状金型上に塗膜が存在する幅は、生産効率や乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点から、円筒状金型の幅に対して40%以上85%以下であることが好ましく、45%以上75%以下であることがより好ましく、50%以上75%以下であることがさらに好ましい。なお、加熱手段として誘導加熱手段を用いる場合は、乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点から、円筒状金型上の塗膜の塗布幅は、誘導加熱コイルのコイル幅よりも小さいことが好ましい。
<乾燥・熱イミド化処理>
本発明に係るシームレスベルトの製造方法は、塗膜を加熱し、熱イミド化処理をすることを含む。また、塗膜の形成後、熱イミド化処理前に、塗膜の乾燥がさらに行われることが好ましい。
加熱は、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、前記回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置との距離が等しくなるよう配置される加熱手段を用いて行う。かような加熱手段を用いることで、塗膜に均一に熱を伝えることが可能となり、300℃以上の高温で加熱を行う際にも円筒状金型上の位置による温度分布の発生が低減される。その結果、シームレスベルトの外観不良の発生および長期使用によるベルト表面の不均一性の発現が低減される。
また、加熱は、加熱手段により、円筒状金型の塗膜形成面とは反対の面側から加熱して昇温することによって行う。円筒状金型の塗膜形成面とは反対側の面から加熱することで、シームレスベルトの外観不良の発生および長期使用によるベルト表面の不均一性の発現が低減される。これらの中でも、本発明の効果をより良好に得るとの観点から、塗膜の形成において、円筒状金型の外周面に塗膜を形成し、円筒状金型の加熱において、円筒状金型の内周面から加熱することが好ましい。
塗膜の乾燥条件としては、特に制限されず、公知の条件を用いることができる。乾燥時の平均温度は、塗布液の種類によっても異なるが、50℃以上250℃以下であることが好ましく、100℃以上200℃以下であることがより好ましく、100℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
塗膜の乾燥時間は、塗布液の種類によっても異なるが、5分以上180分以下であることが好ましく、10分以上90分以下であることがより好ましく、10分以上60分以下であることがさらに好ましい。
塗膜の乾燥は、回転軸を中心として円筒状金型を回転させつつ行うことが好ましい。乾燥時の金型回転数は、特に制限されないが、1rpm以上100rpm以下が好ましく、5rpm以上80rpm以下がより好ましく、10rpm以上40rpm以下がさらに好ましい。
熱イミド化処理時の平均温度は、300℃以上であることが必要である。平均温度が300℃未満であると、イミド化率が不足し、シームレスベルトとして十分な機械的強度を得ることができない。また、熱イミド化処理時の平均温度は、生産効率および製造中のシームレスベルトの熱劣化抑制の観点から、450℃以下であることが好ましい。
本明細書において、平均温度とは、円筒状金型の中心における円周上全体に対して等間隔の4点(円周上の特定の点を0°に対応する点としたときの、0°、90°、180°、270°に対応する4点)に対応する位置について、それぞれ塗膜幅全体に対して等間隔に5点(両端2点およびその内側3点の5点)として選択する、計20点の平均温度である。平均温度は、円筒状金型に内蔵された温度センサを用いて円筒状金型の温度を測定し、または放射型温度計 FT−H20(株式会社キーエンス製)を用いて塗膜面の温度を測定し、その結果より算出することができる。
また乾燥時間および熱イミド化処理時間とは、それぞれ、上記平均温度が所望の温度に達した後、当該平均温度を維持したまま経時させた時間である。
さらに、塗膜の熱イミド化処理条件としては、熱イミド化処理時の面内温度分布は、平均温度に対する面内温度分布の割合が2%以下であることが必要である。平均温度に対する熱イミド化処理時の面内温度分布の割合が2%超であると、外観不良の発生および長期間使用時のベルト表面の不均一性の発現が顕著となる。同様の観点から、平均温度に対する熱イミド化処理時の面内温度分布の割合が1.8%以下であることが好ましい。一方、熱イミド化処理時の面内温度分布は、値が小さいほど好ましく、熱イミド化処理時の面内温度分布が存在しないこと、すなわち平均温度に対する熱イミド化処理時の面内温度分布の割合が0%であることが最も好ましい。ただし、生産効率の観点からは、平均温度に対する熱イミド化処理時の面内温度分布の割合が0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。
本明細書において、面内温度分布(%)とは、以下のように求める値である。まず、平均温度が所望の温度に達した時点から、所望の加熱時間を経過した時点までの間、一定の時間間隔ごとに各時点での平均温度を求める。時間間隔は任意で設定すればよいが、1分間隔であることが好ましい。また、各平均温度の測定に用いた測定値20点について、それぞれ最大値(Tmax)(℃)と最小値(Tmin)(℃)とを求める。次いで、これらの値と平均温度(Tave)の値とを用いて、下記式に従って各時点における面内温度分布(%)を算出する;
面内温度分布(%)=(Tmax(℃)−Tmin(℃))/Tave(℃)×100
本発明においては、各時点の平均温度に対する面内温度分布はすべて2%以下となる。面内温度分布は、円筒状金型に内蔵された温度センサを用いて円筒状金型の温度を測定し、または放射型温度計 FT−H20(株式会社キーエンス製)を用いて塗膜面の温度を測定し、その結果より算出することができる。
熱イミド化処理の時間は、ポリアミド酸、導電性フィラー、他の添加成分、およびこれらの組み合わせの種類、含有量、含有量比等によっても異なるが、5分以上180分以下であることが好ましく、10分以上90分以下であることがより好ましく、10分以上60分以下であることがさらに好ましい。
塗膜の熱イミド化処理は、回転軸を中心として円筒状金型を回転させつつ行うことが好ましい。熱イミド化処理時の金型回転数は、特に制限されないが、1rpm以上100rpm以下が好ましく、5rpm以上80rpm以下がより好ましく、10rpm以上40rpm以下がさらに好ましい。
乾燥および熱イミド化処理における加熱手段としては、特に制限されず、公知の加熱手段を用いることができる。これらの中でも、熱イミド化処理時の面内温度分布をより低減するとの観点から、誘導加熱手段であることが好ましい。
誘導加熱手段としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。好ましくは、円筒状金型の回転軸方向の塗膜の任意の位置の、回転軸方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置からの距離が等しくなるよう、回転軸を中心としてらせん状に巻かれたコイル(誘導加熱コイル)を用いた誘導加熱手段であることが好ましい。
図2は、かような誘導加熱手段における、円筒状金型と、塗膜と、誘導加熱コイルとの位置関係を示す模式図である。図2Aは、誘導加熱コイル203が、円筒状金型の回転軸202方向に沿って、円筒状金型200の中空部内に配置される場合の模式図を表す。図2Bは、誘導加熱コイル203が、円筒状金型の回転軸202方向に沿って、円筒状金型200の外部周辺位置に配置される場合の模式図を表す。図2Aでは、塗膜201が円筒状金型の外周面200A上に形成されており、加熱の際に、加熱手段である誘導加熱コイル203が円筒状金型の内周面側、すなわち円筒状金型の塗膜形成面とは反対側を加熱する。また、図2Bでは塗膜201が円筒状金型の内周面200B上に形成されており、加熱の際に、加熱手段である誘導加熱コイル203が円筒状金型の外周面側、すなわち円筒状金型の塗膜形成面とは反対側を加熱する。ここで、円筒状金型200の断面に注目すると、誘導加熱コイル203は、円筒状金型200の回転軸を中心とした円として表すことができる。そして、円筒状金型200の回転軸202方向の塗膜の幅204の任意の位置の、誘導加熱コイル203と、回転軸202方向と直交する平面上における、前記塗膜形成面(外周面200Aまたは外周面200B)の断面円周上の任意の位置との距離が等しくなる。これより、誘導加熱コイル203は、回転軸202方向と直交する平面上における、塗膜形成面の断面円周上の任意の位置を均等に加熱することができる。
誘導加熱手段としては、例えば、円筒状金型の外周面を塗膜形成面とする場合は、回転する円筒状金型(ロール)の回転軸方向に沿って、鉄心等の軸心に誘導加熱コイルを巻回した磁気発生機構を円筒状金型の内部中空内に配置した誘導加熱ロールが挙げられる。誘導加熱ロールは、誘導加熱コイルに交流電圧を印加した際に、この印加によって発生する交番磁束により円筒状金型の表面を内周面側から加熱することができる。当該構成を有する円筒状金型は、架台に対して軸受によって回転可能に支持され、回転源によって回転駆動されうる。ロールの肉厚部分には気体、液体または気液二相等の熱媒体が封入された密閉室を有していてもよい。また、回転軸方向に沿って軸心に巻装された誘導加熱ロッドを支持する支持ロッドは、軸受を介してロールにつらなるジャーナルの内部に指示されうる。なお、支持ロッドは中空であり、誘導加熱コイルのリード線は、支持ロッド内を通って外部に導出され、外部の交流電源に接続されうる。
誘導加熱ロールは、特に制限されず、特開平1−265486号公報、特開平7−183079号公報、特開2005−108474号公報、特開2005−332654号公報等の公知のものを用いてもよい。
また、誘導加熱ロールは、市販品を用いてもよく、市販品としては、トクデン株式会社製の誘導発熱ジャケットロール(登録商標)や、ハイデック株式会社製の低周波誘導加熱ロール(SHR)内部加熱型等を用いてもよい。
また、誘導加熱手段としては、例えば、円筒状金型の内周面を塗膜形成面とする場合は、回転する円筒状金型(ロール)の回転軸方向に沿って、誘導加熱コイルを巻回した磁気発生機構を円筒状金型の外部周囲に配置したものを用いてもよい。誘導加熱コイルに交流電圧を印加した際に、この印加によって発生する交番磁束により円筒状金型を外周面側から加熱することができる。
誘導加熱手段において、誘導加熱コイルのコイル幅、すなわち円筒状金型の回転軸方向にコイルが存在する幅は、生産効率や乾燥および熱イミド化処理時の温度分布低減の観点から、円筒状金型の幅に対して50%以上99%以下であることが好ましく、60%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上90%以下であることがさらに好ましい。
これらの誘導加熱手段の中でも、誘導加熱ロールを用いることが好ましい。誘導加熱ロールは、空気を介さずに直接円筒状金型を加熱することができため、300℃以上の高温で加熱を行う際の円筒状金型上の位置による温度分布の発生のさらなる低減を可能とすることができる。また、円筒状金型の塗膜形成面とは反対の面側からの加熱をより確実に行うことができる。これより、誘導加熱ロールを用いることで、シームレスベルトの外観不良の発生および長期使用によるベルト表面の不均一性の発現がより低減されうる。
また、熱イミド化処理時の面内温度分布をより低減するとの観点から、円筒状金型周辺への送風や、円筒状金型と加熱手段とを密閉容器内への設置等を行うことが好ましい。
なお、本発明の一形態に係るシームレスベルトの製造方法は、塗膜の形成から熱イミド化処理までの工程を同一の円筒状金型上で実施することが好ましい。
<剥離>
本発明の一形態に係るポリイミドシームレスベルトの製造方法は、最後に、塗膜の熱イミド化処理後の製造物を室温まで冷却した後、回転体から取り外すことを含むことが好ましい。
製造されるポリイミドシームレスベルトの厚さは、特に制限されないが、例えば、50μm以上200μm以下とすることが好ましく、50μm以上150μm以下とすることがより好ましく、50μm以上100μm以下とすることがさらに好ましい。
<画像形成装置>
本発明の一形態に係るポリイミドシームレスベルトの製造方法においては、ポリイミドシームレスベルトが中間転写ベルトであることが好ましい。以下では、上述のようにして得られたポリイミドシームレスベルトを、電子写真方式の画像形成装置の中間転写ベルトとして用いる例について説明する。ただし、本発明の一形態に係る製造方法で製造されたポリイミドシームレスベルトの用途はこれに限定されるものではない。
以下、添付した図4を参照しながら、本発明の一形態を説明する。図4は、画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。なお、図4では、フルカラー画像形成装置の場合を示している。
画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としてのシームレスベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送するシームレスベルト状の給紙搬送手段21、および定着手段としてのベルト式定着装置24と、を備えている。画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の一つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yと、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Yと、露光手段3Yと、現像剤担持体4Y1を有する現像手段4Yと、一次転写手段としての一次転写ローラー5Yと、クリーニング手段6Yと、を有する。
また、別の異なる色のトナー像の一つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Mと、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2Mと、露光手段3Mと、現像剤担持体4M1を有する現像手段4Mと、一次転写手段としての一次転写ローラー5Mと、クリーニング手段6Mと、を有する。
また、さらに別の異なる色のトナー像の一つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Cと、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2Cと、露光手段3Cと、現像剤担持体4C1を有する現像手段4Cと、一次転写手段としての一次転写ローラー5Cと、クリーニング手段6Cと、を有する。
また、さらに他の異なる色のトナー像の一つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Kと、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2Kと、露光手段3Kと、現像剤担持体4K1を有する現像手段4Kと、一次転写手段としての一次転写ローラー5Kと、クリーニング手段6Kと、を有する。
シームレスベルト状中間転写体形成ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として、シームレスの中間転写ベルト70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kにより、回動するシームレスの中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
給紙カセット20内に収容された用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22Dおよびレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
カラー画像が転写された記録媒体Pは、熱ローラー定着器270が装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、二次転写ローラー5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離したシームレスの中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラー5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
二次転写ローラー5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、シームレスの中間転写ベルト70に圧接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、シームレスベルト状中間転写体形成ユニット7と、を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方にはシームレスベルト状中間転写体形成ユニット7が配置されている。シームレスベルト状中間転写体形成ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76を巻回して回動可能なシームレスの中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kおよびクリーニング手段6Aを有している。
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、シームレスベルト状中間転写体形成ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
このように感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、シームレスの中間転写ベルト70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧および加熱により固定して定着する。
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
上記画像形成装置1では、中間転写ベルト70をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。また、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。以下の実施例においては、特記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
(参考例1)
<ポリイミドシームレスベルトの製造>
[塗布液の調製]
ポリアミド酸溶液であるポリイミドワニス(U−ワニス−S、宇部興産株式会社製)の樹脂成分(ポリアミド酸)100質量部に対して導電性フィラーであるカーボンブラック(SPECIAL BLACK 4、Degussa製)21質量部を添加し、ミキサーで充分に混合した後、NMPで希釈して塗布に適した粘度(26Pa・s)に調整することで、塗布液を調製した。
[塗布]
内部に回転軸芯を中心にらせん状にコイルを巻いた誘導加熱手段を配した円筒状金型と、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型としては、温度センサを内蔵したトクデン株式会社製の誘導加熱ロール 誘導発熱ジャケットロール(登録商標)を用いた。また、円筒状金型部分は、SUS304製で、外径339.3mm、幅700mmであり、誘導加熱手段は、円筒状金型の中空内部における、回転軸方向のコイル幅600mmであった。
円筒状金型を、回転軸を中心に回転数60rpmで回転させ、かつノズルを回転軸方向にノズル送り速度1mm/sで移動させつつ、ノズルから上記調製した塗布液を吐出流量32cc/minで吐出して円筒状金型の外周面上にらせん状に塗布した。塗膜は、らせん状の塗布による塗膜部分同士がつながり、隙間が生じないよう形成した。ここで、塗膜は幅400mmとして形成し、円筒状金型の幅方向における塗膜形成位置は、円筒状金型の幅およびコイル幅の内側とした。
[乾燥]
塗布の後、円筒状金型を、回転軸を中心に回転数20rpmで回転させつつ、誘導加熱手段により塗膜を平均温度100℃で1時間加熱し、塗膜中の溶剤を揮発させた。なお、加熱時間(乾燥時間)は、上記平均温度が所望の温度に達した後、当該平均温度を維持したまま経時させた時間とした。
[熱イミド化処理]
乾燥の後、円筒状金型を、回転軸を中心に回転数20rpmで回転させつつ、誘導加熱手段により塗膜を平均温度300℃で1時間加熱し、熱イミド化を施した。なお、加熱時間(熱イミド化処理時間)は、上記平均温度が所望の温度に達した後、当該平均温度を維持したまま経時させた時間とした。
[剥離]
熱イミド化処理の後、円筒状金型を室温(25℃)に戻し、製造物を円筒状金型から剥離することでポリイミドシームレスベルト(厚さ60μm)を得た。
(参考例2および3)
参考例1において、熱イミド化処理時の平均温度を下記表2に記載の各温度に変更した以外は同様にして、各ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
(実施例4)
参考例1において、塗布方法を下記の方法へと変更し、下記表2に記載の塗布面と加熱手段の設置位置との関係、加熱方式、加熱手段および熱イミド化処理温度へと変更した以外は同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
[塗布]
中空状の円筒状金型と、円筒状金型の外側周囲に設置した円筒状金型の回転軸芯を中心にらせん状に巻かれたコイルを有する誘導加熱手段と、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、内径339.3mm、幅700mmであった。また、誘導加熱手段は、円筒状金型の外部周囲における、回転軸方向のコイル幅600mmであった。
円筒状金型を、回転軸を中心に回転数60rpmで回転させ、かつノズルを回転軸方向にノズル送り速度1mm/sで移動させつつ、ノズルから上記調整した塗布液を吐出流量32cc/minで吐出して円筒状金型内周面上にらせん状に塗布した。塗膜は、らせん状の塗布による塗膜部分同士がつながり、隙間が生じないよう形成した。ここで、塗膜は幅400mmとして形成し、円筒状金型の幅方向における塗膜形成位置は、円筒状金型の幅およびコイル幅の内側とした。
(比較例1および比較例2)
中空状の円筒状金型と、中空状の円筒状金型内部に回転軸芯を中心に配置されたハロゲンヒーターと、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、外径339.3mm、幅700mmであった。
加熱手段を上記のものへと変更し、下記表2に記載の加熱方式および熱イミド化処理温度へと変更した以外は参考例1と同様にして、各ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
(比較例3)
中空状の円筒状金型と、円筒状金型の外側下部に設置された、円筒状金型の回転軸と平行な軸に沿って設置されたハロゲンヒーターと、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、内径339.3mm、幅700mmであった。
円筒状金型および加熱手段を上記のものへと変更し、下記表2に記載の加熱方式および熱イミド化処理温度へと変更した以外は実施例4と同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
(比較例4)
参考例1において、塗布方法を下記の方法へと変更し、下記表2に記載の様に塗布面と加熱手段の設置位置との関係、加熱方式、加熱手段および熱イミド化処理温度へと変更した以外は同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
[塗布]
中空状の円筒状金型と、中空状の円筒状金型内部に回転軸芯を中心に配置されたハロゲンヒーターと、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、内径339.3mm、幅700mmであった。
円筒状金型を、回転軸を中心に回転数60rpmで回転させ、かつノズルを回転軸方向にノズル送り速度1mm/sで移動させつつ、ノズルから上記調整した塗布液を吐出流量32cc/minで吐出して円筒状金型内周面上にらせん状に塗布した。塗膜は、らせん状の塗布による塗膜部分同士がつながり、隙間が生じないよう形成した。ここで、塗膜は、幅400mmとして形成した。
(比較例5)
中空状の円筒状金型と、中空状の円筒状金型内部に中空部分へ熱風を吹き付ける送風装置と、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、外径339.3mm、幅700mmであった。
加熱手段を上記のものへと変更し、下記表2に記載の加熱方式および熱イミド化処理温度へと変更した以外は参考例1と同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
(比較例6)
中空の円筒状金型と、円筒状金型の外側下部に設置した円筒状金型の回転軸と平行な軸を中心にらせん状に巻かれたコイルを有する誘導加熱手段と、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。ここで、円筒状金型は、SUS304製で、内径339.3mm、幅700mmであった。また、誘導加熱手段は、回転軸方向のコイル幅600mmであった。
加熱手段を上記のものへと変更し、下記表2に記載の加熱方式および熱イミド化処理温度へと変更した以外は実施例4と同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。なお、本製造における熱イミド化処理時の円筒状金型と、塗膜と、誘導加熱コイルとの位置関係を表す模式図を図3として示す。図3では、円筒状金型を300、円筒状金型の内周面を300B、塗膜を301、円筒状金型の回転軸を302、誘導加熱コイルを303、円筒状金型の回転軸と平行な軸を305としてそれぞれ表す。
(比較例7)
比較例6において、熱イミド化処理時の平均温度を下記表2に記載の温度に変更した以外は同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。
(比較例8)
参考例1において、塗布方法を下記の方法へと変更し、下記表2に記載の塗布面と加熱手段の設置位置との関係、熱イミド化処理温度へと変更した以外は同様にして、ポリイミドシームレスベルトの製造を行った。ここで、乾燥および熱イミド化処理における加熱は、円筒状金型が内部に有する誘導加熱手段ではなく、円筒状金型の外側周囲に設置した誘導加熱手段を用いて行った。また、平均温度および温度分布は、円筒状金型に内蔵された温度センサを用いて測定を行った。
[塗布]
参考例1と同様の円筒状金型と、らせん状に巻かれたコイルを有する誘導加熱手段と、φ1mm内径のノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。
円筒状金型を、回転軸を中心に回転数60rpmで回転させ、かつノズルを回転軸方向にノズル送り速度1mm/sで移動させつつ、ノズルから上記調整した塗布液を吐出流量32cc/minで吐出して円筒状金型の外周面上にらせん状に塗布した。塗膜は、らせん状の塗布による塗膜部分同士がつながり、隙間が生じないよう形成した。ここで、塗膜は幅400mmとして形成した。
次いで、円筒状金型の外部周囲に、回転軸方向のコイル幅600mm、回転軸芯を中心に円筒状金型の外側周囲にらせん状に巻かれた構成として、また円筒状金型の幅方向における塗膜形成位置がコイル幅の内側となるよう誘導加熱手段を設置した。
(平均温度および面内温度分布の測定方法)
平均温度および面内分布の測定は、参考例1〜3および比較例8に係るシームレスベルトの製造では円筒状金型に内蔵された温度センサを用いて行った。また、温度センサが内蔵されていない円筒状金型を用いた実施例4および比較例1〜7に係るシームレスベルトの製造では、放射型温度計 FT−H20(株式会社キーエンス製)を用いて塗膜面を測定することで行った。なお、本測定の前に、塗膜面の測定において、塗膜面の温度と、円筒状金型の塗膜形成面の温度とが実質的に同一となることは事前に確認している。
平均温度は、円筒状金型の中心における円周上全体に対して等間隔の4点(円周上の特定の点を0°に対応する点としたときの、0°、90°、180°、270°に対応する4点)に対応する位置について、それぞれ塗膜幅全体に対して等間隔に5点(両端2点およびその内側3点の5点)として選択した、計20点の温度を測定し、その平均値を算出することから求めた。
また、面内温度分布(%)は、以下のように求めた。まず、平均温度の測定に用いた各点について、平均温度が所望の温度に達した時点から、所望の加熱時間を経過した時点までの間、1分間隔で各時点での平均温度を求めた。また、各平均温度の測定に用いた測定値20点について、それぞれの最大値(Tmax)(℃)と最小値(Tmin)(℃)とを求めた。次いで、これらの値と各平均温度(Tave)の値とを用いて、下記式に従って各時点における面内温度分布(%)をそれぞれ算出した;
面内温度分布(%)=(Tmax(℃)−Tmin(℃))/Tave(℃)×100
平均温度および面内温度分布の結果を下記表2に示す。ここで、面内温度分布は、平均温度が所望の温度に達した時点から所望の加熱時間を経過した時点までの間での最大値を示し、面内温度分布の列の左欄は、面内温度分布の算出における測定温度の最大値(Tmax)と最小値(Tmin)との差分の値(℃)を示す。
<ポリイミドシームレスベルトの評価>
(膨れ形状の個数評価)
各シームレスベルト製造直後に、シームレスベルト(周長1066mm×幅361mm)の両面全体を目視で観察し、確認できる膨れ形状の数をカウントした。
本評価では、膨れ形状が確認されない場合は外観が良好であるとした。各シームレスベルトの評価結果を表2に示す。
(黒色のハーフトーン画像の画質評価)
画像形成装置bizhub PRESS(登録商標) C1100(コニカミノルタ株式会社製)のに各ポリイミドシームレスベルトを中間転写ベルトとしてセットして、露光量等を適正化し、20℃、50%RHで、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(Bk)の各色の印字率が2.5%の画像を、記録材である中性紙に100万枚印刷した。その後、A3中性紙の一面全面に黒色のハーフトーン画像(階調120)を出力する操作を実施し、得られた可視画像を目視にて確認して、局所的に色が薄い色ムラとなっている画像不良箇所の個数をカウントした。
本評価では、画像不良個所が確認されない場合は長期使用による均一性が良好であるとした。各シームレスベルトの評価結果を表2に示す。
上記の結果より、本発明に係る製造方法で製造したポリイミドシームレスベルトは、比較例に係る製造方法で製造したポリイミドシームレスベルトと比較して、外観不良の発生および長期使用によるベルト表面の不均一性の発現が顕著に低減することが確認された。