JP5079354B2 - ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法および画像形成装置 - Google Patents

ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法および画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、コピー機やプリンタ等の画像形成装置に配備される、ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法、および画像形成装置に関する。
従来から、電子写真装置において、シームレスベルトが部材として用いられている。特に近年のフルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を、一旦中間転写ベルト上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルトとして、このシームレスベルトが用いられている。
また、ベルト状の搬送装置(転写搬送ベルトなどと呼ばれる)により、記録用紙を搬送しながら像担持体上に形成したトナー像を用紙に転写するように構成された画像形成装置もよく知られている。
このような画像形成装置の方式としては、高速プリントを行うために、感光体を4色分並べて各色を連続して紙に転写する、4連タンデム方式が用いられている。
中間転写ベルト方式では、まず中間転写ベルト上に4色分の画像を転写した後、一括して転写材に転写を行う。また、転写搬送ベルト方式では、搬送ベルトで転写材を搬送し、転写材上に直接4色分の転写を行う。
このようなベルトでは、環境によってベルトの状態が変動するため、上記方式では各色画像を重ねる際の位置精度を合せることが非常に難しく、色ずれ画像などの不具合を引き起こすという問題点があった。
このような方式に使用されるベルトに要求される特性として、特に、位置精度の要求があり、このような位置精度の要求から、ベルトの環境変動を抑制することが求められている。ベルトの環境変動としては、温度や湿度の変動が挙げられ、これらの環境変動によっても、ベルトの周長や軸方向の長さが変動したりするのをできるだけ抑制することが求められている。
そのために、周方向や軸方向の熱線膨張率と吸湿線膨張率が低い材料が望まれている。
また、周方向の線膨張率が大きいと、ベルトの走行不良が発生したり、また、例えば周方向や軸方向の線膨張率があまり大きく異なると、ベルトの平面性が損なわれ、特に端部にソリが発生したりするなどの不具合が発生するという問題点が生じる。
このような中間転写ベルト或いは転写搬送ベルトに使用される材料は、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ETFE(エチレン-テトラフロロエチレン)が使用されているが、近年難燃性、高強度、熱特性に極めて優れるポリイミド材料(ポリアミドイミド等のイミド結合を有するポリマーも含む)が多く使用されてきている。
例えばこのようなポリイミド材料等を用いたベルトとしては、カーボンブラック含有量と表面抵抗を規定したポリイミド系中間転写体(特許文献1参照)や導電性微粉末を含有し体積抵抗を規定した遠心成形法により得られるシームレスベルト(特許文献2参照)などが例として挙げられる。
しかし、ポリイミドは耐熱性に優れるものの、吸湿性の点で若干劣ることが従来から指摘されており、さらなる吸湿線膨張率の改良が望まれている。
従来、電子写真用ポリイミドベルトの吸湿線膨張率を改善した例として、ベルト周方向の吸湿線膨張率と(熱)線膨張率を所定の関係に制御し、寸法安定性の改良を図った例(特許文献3参照)、吸湿線膨張係数と引裂強度を同時に制御し、寸法安定性とベルト端部の割れを改良した例(特許文献4参照)が、挙げられる。
また、周方向および軸方向の吸湿または熱線膨張率の関係を規定(周方向の線膨張率が軸方向の90%以上)した例(特許文献4参照)等が挙げられるが、上記いずれの例も走行性とソリを、十分に、かつ、同時に改善するものではなかった。
また、ポリイミドが使用されるもう一つの理由として、抵抗制御材と親和性が良いことが挙げられる。最も代表的な抵抗制御材であるカーボンブラックは、一般的な樹脂に添加した場合、いわゆる中抵抗領域(代表的には体積抵抗で108Ω・cm〜1012Ω・cm程度の領域)での抵抗均一性・安定性を得ることが難しく、大きな技術課題を含んでいた。なおポリイミドに添加した場合の抵抗均一性・安定性は優れており、ますますポリイミド製エンドレスシームレスベルトの重要度は増し、特に吸湿線膨張率が改良され、電気特性が制御されたベルトが望まれている。
特許第2560727号公報 特許第3116143号公報 特開2005−266493号公報 特開2005−250139号公報 特開2005−014440号公報
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて成されたものであって、中間転写ベルトあるいは転写搬送ベルトを用いた画像形成装置において、環境が異なっても安定したベルトの走行性と端部のソリが発生しない、ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、ベルトの走行性と端部のソリが発生せず、かつ、均一な電気特性を有する、ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、吸湿線膨張率の測定条件として、高湿条件35℃/85%(相対湿度)かつ低湿条件35℃/35%(相対湿度)で測定されるベルト周方向吸湿線膨張率(TD)とベルト軸方向吸湿線膨張率(MD)の比(TD/MD)が下記一般式(1)の範囲にあり、
0.9≦吸湿線膨張率比(TD/MD)≦1.1・・・・・・(1)
かつ、前記ベルト周方向吸湿線膨張率(TD)が30.8〜37.6(ppm/%)であることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、揮発分が0.4〜25重量%、一次粒子径10〜30nm、比表面積30〜300m2/g、吸油量30〜300cm3/100g、pH4以下の、表面に酸性基を有するカーボンブラックが含有されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、体積抵抗が108Ω・cm以上1012Ω・cm以下の範囲にあることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド製エンドレスシームレスベルトを、ロールコート工法によって製造することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、像担持体上に各色に応じた現像材を用いてトナー像を形成する現像装置と、トナー像を無端状に走行する中間転写体上に順次重ね合わせて一時転写し、該中間転写体上の一時転写画像を転写材に一括して二次転写する中間転写装置と、転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を転写材上に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、中間転写装置に使用されるシームレスベルトとして、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド製エンドレスシームレスベルトを搭載することを特徴とする。
請求項6記載の発明は、少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、像担持体上に各色に応じた現像材を用いてトナー像を形成する現像装置と、トナー像を無端状に走行する転写搬送体上の転写材上に順次重ね合わせて転写する転写搬送装置と、転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を転写材上に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、転写搬送装置に使用されるシームレスベルトとして、請求項1から3のいずれか1項に記載したポリイミド製エンドレスシームレスベルトを搭載することを特徴とする。
本発明によれば、環境が異なっても安定したベルトの走行性と端部のソリが発生しない、ポリイミド製エンドレスシームレスベルト、その製造方法および画像形成装置を実現することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明のシームレスベルトは、電子写真装置等の画像形成装置用ポリイミドエンドレスシームレスベルトに好ましく適用することができる。
このような本発明のシームレスベルトについて、まずベルトの構成材料について説明する。
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。すなわち、ポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を持つため、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンから、まず有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、またはポリアミド酸)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行われ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとする。反応の概略を下記に示す。
Figure 0005079354
上記化学式1において、Ar1は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Ar2は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。なお、ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系またはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独または混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種または複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、またはスラリー状に分散させる。この溶液に前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物、またはその誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらに、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
このような例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
合成または入手したポリアミック酸溶液に、充填剤を混合・分散して塗工液が調製される。塗工液を後述のように支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。
ポリアミック酸は、加熱する方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を例えば200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。なお、ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが好ましい。
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行われているイミド化率の測定手法により評価することができる。このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフ−リエ変換赤外分光法(FT−IR法)は最も一般的な方法である。
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)では、イミド化率を、例えば、次のように定義する。すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、以下の式により表される。
イミド化率(%)=[(A)/(B)]×100
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の各吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm-1との吸光度比
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm-1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1とアミド基の特性吸収1,670cm-1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
また、3000〜3300cm-1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
上記ポリイミド前駆体溶液への充填剤の分散は、ビーズミル、ボールミル、ナノマイザー、ペイントシェーカー、ジェットミルなどの分散器を用いて作製する。
次に、上記ポリイミド前駆体を含む塗工液を用いてシームレスベルトを製造する方法について説明する。
まずポリイミドベルトの最も代表的な製造方法の一つである遠心成形について説明する。ただし以下の説明は一例であり、条件などこれに限定されるものではない。
シームレスベルトを製造する場合、概略次の工程を含むことにより達成できる。
すなわち、当該塗工液を支持体(成形用の型)に塗布・流延する塗布工程(ステップ1)、支持体に塗布・流延された塗膜中の溶媒を加熱により除去する除去工程(ステップ2)、昇温加熱して塗膜中に含まれる前駆体のイミド化を促進する促進工程(ステップ3)、形成された薄膜を支持体から離型し、シームレスベルトとする離型工程(ステップ4)により製造することができる。
まず、支持体(成形用の型)として遠心成型を用いた場合を例として説明する。なお以下の説明は、一例であり条件(設定条件)などは、これに限定されるものではない。
遠心成型は円筒状の回転体から構成されるものであり、この円筒状の回転体をゆっくりと回転させながら塗工液を円筒の内面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。
そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が得られたところで常温に戻し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250℃〜450℃程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体のイミド化またはポリアミドイミド化を行う。
イミド化等が完了後、徐冷して薄膜を型から剥離する。このようにしてシームレスベルトが形成される。なお、型には、剥離しやすいように予め、離型剤または離型層を形成しておくことが好ましい。本成型方法により、押し出し成形などでは困難である比較的薄い膜厚のものも作製が可能となる。
遠心成型の場合、金型が高速回転するため、ポリイミドの配向度が上がり、周方向と軸方向の物性が異なる傾向があるという欠点がある。この欠点を解消したポリイミド製シームレスエンドレスベルトの製造方法としてロールコート工法が挙げられる。
次に、図1に基づいて、ロールコート工法について説明する。
図1に示すように、Aは塗料である脱泡したポリアミック酸を貯留するための塗料パンであり、Cは塗料パンAから塗料を連続的に汲み上げるための金属ローラであり、Dは連続的に汲み上げられた塗料の厚みを金属ローラCとの隙間で調節して所定厚さにするための偏芯ローラであり、Eは所定厚みにした塗料(塗膜)を金属ローラCから転移させて付着させるためのワーク(金型)である。
このような製造装置を用いたロールコート法において、例えば下記条件下に、製造を行う。
〔製造条件〕
金属ローラ周速:40mm/s
ワーク周速:55mm/s
金属ローラギャップ:0.4mm
偏芯ローラ隙間:0.3mm
ワーク上Wet膜厚:約180μm
上記した条件の下に、予め十分に脱泡されたポリアミック酸塗料を塗料パンに流し込む。金属ローラの下部を塗料中に浸漬し、例えば40mm/sの非常にゆっくりとした速度で金属ローラ表面に塗料を付着、上方に汲み上げていく。その後、金属ローラ上部に設置され、金属ローラと任意の隙間を調整することが出来る偏芯ローラにより、金属ローラ上の塗料厚を調整する。次に金属ローラCとの隙間を、偏芯ローラDを用いて、例えば0.4mmに調整し、金属ローラCと同方向(図1に示す方向では「時計回り方向」)に回転するワーク(金型)E上に金型ローラCからの塗料を転移させ、金型E上に所定膜厚の塗料が付着される。
この後の工程は前述した遠心成型工法と同様に、支持体に塗布・流延された塗膜中の溶媒を加熱により除去する除去工程(ステップ2)、昇温加熱して塗膜中に含まれる前駆体のイミド化を促進する促進工程(ステップ3)、形成された薄膜を支持体から離型し、シームレスベルトとする離型工程(ステップ4)により製造することができる。
また、厚膜ベルトや複層ベルトを製造する場合、除去工程(ステップ2)の後、塗工装置に戻し、さらに塗料を塗布することで任意の膜厚や層構成を有するベルトを製造することが出来る。
ロールコート工法は遠心成型工法に比べて、塗工時の金型回転速度が非常に緩やかなため、ポリイミドの配向性が少なく、周方向と軸方向の物性差が生じにくく、本発明はロールコート工法により周方向と軸方向の吸湿線膨張率の差をなくすことが出来る。
本発明のシームレスベルトの吸湿線膨張率を測定することで、ベルトの走行性や端部ソリを評価することが出来る。
このような吸湿線膨張率の測定方法を、図2を用いて説明する。
まず、図2に示す測定装置について説明する。a、a’はそれぞれ上部および下部アームであり、下部アームa’には所定荷重をサンプルに負荷させるための錘bが付着し、この錘bの下部は平坦(水平)となっている。たとえば錘下部は鏡面仕上げなどの平坦であってもよい。この錘の略鉛直下方向に、たとえば錘下部との距離を測定するレーザマイクロゲージを配置させて構成されている。このゲージにより、たとえば光学的に錘戸の距離を測定して膨張率などを測定する。これら上部および下部アームにサンプル(ベルト)を装着して、線膨張率の測定がたとえば光学的に測定される。
〔線膨張率係数の測定方法〕
上記したような図2に示す測定装置のアームa、a’に、シームレスベルトの中央部周方向、軸方向から所定形状(巾10mm、長さ70mm)に切断したサンプルのポリイミドシートを装着し、Al製錘bの重量を調整してサンプルにかかる線圧が150g/cmになるように調整する。錘bの下部には反射型のレーザマイクロゲージcを測定装置にセットし、錘bの下部との距離を測定するようにする。
この伸び測定装置を恒温恒湿槽に入れ、35℃/35%(RH:相対湿度)及び35℃/85%(RH:相対湿度)の両環境での伸び量(ΔL)を測定し、次式を用いて吸湿線膨張率を算出した。
吸湿線膨張率(ppm/%)=(ΔL/50mm)/50%
検討した結果、周方向と軸方向の吸湿線膨張率比(TD/MD)が、下記式(1)式
0.9≦吸湿線膨張率比(TD/MD)≦1.1・・・・・・(1)
を満足すると、ベルト端部ソリを低減できることが分かった。
次にベルト端部ソリの測定方法について説明する。
〔端部ソリの測定方法〕
図3に示すように、40φ(直径40mmの)丸棒2本をシームレスベルト内部に入れ3kgの荷重をかけ張架する。丸棒に張架されたベルトの左右の端部において、ベルトの中央部の巾をノギスで測定し、40mmとの差を算出し、左右端部の差の合計を端部ソリと定義した。
次に本発明のベルトに好適に使用されるポリイミド材料以外の材料について、以下に説明する。
本発明は、カーボンブラックを抵抗制御剤に用いても良い。
カーボンブラックは、少なくとも揮発分が0.4〜25%、一次粒子径10〜30nm、比表面積30〜300m2/g、吸油量30〜300cm3/100g、pH4以下の表面に酸性基を有するカーボンブラックを用いることが好ましい。このようなカーボンブラックの使用によって、抵抗均一性が高く(換言すれば抵抗のばらつきが少なく)、しかも分散安定性が良好な成膜液組成物を作成できることを見出した。分散安定性が良好なことで回転成型時遠心力による配向が抑えられ、周方向、軸方向の物性の差が低減していくものと推定される。
本明細書中における「酸性カーボンブラック」とは、その表面に酸性基を有するカーボンブラックを意味し、その中でもとりわけpHが4以下のカーボンブラックで揮発分が0.4〜25%のカーボンブラックを用いることが好ましい。
カーボンブラックのpHが4以下であると抵抗均一性が高くなる理由は定かでないが、推測するところでは、このようなカーボンブラックではpHを左右する表面酸性基が多く存在するため、顔料粒子自体の成膜液溶媒への親和性が上がり、このために微分散が可能になり、その結果、抵抗均一性が上がると思われる。
また、本発明で使用されるカーボンブラックの揮発分が0.4重量%以上であると抵抗均一性が高くなる理由は定かでないが、推測するところでは、このようなカーボンブラックでは表面酸性基が多く存在するため、顔料粒子自体の成膜液溶媒への親和性が上がり、そのために微分散が可能になり、その結果、抵抗均一性が上がると思われる。
ここで、本発明で言う「カーボンブラックのpH」とは、以下の測定法によって得られる値を意味する。
即ち、カーボンブラック試料1〜10gをビーカーに秤量し、試料1gにつき10mlの割合で水を加え、時計皿で覆い、15分間煮沸する(試料をぬれやすくするため、エタノールなど数滴を加えてもよい)。煮沸後室温まで冷却し、傾斜法または遠心分離法によって上澄み液を除去して、泥状物を残す。この泥状物中にガラス電極pH計の電極を入れ、JISZ8802(pH測定法)によってpHを測定する。この場合、電極の挿入位置により測定値が変化することがあるから、ビーカーを動かして電極の位置を変えて電極面の泥状面が十分に接触するように注意して量り、pH値が一定になったときの値を読む。
また、本発明では、とりわけ揮発分が0.4%〜25%の範囲、より好ましくは15%〜20%の範囲のカーボンブラックを用いて本発明に使用される成膜液(図1の塗料パンに使用される塗料液)を調整し、中間転写体を作成すると電気抵抗均一性の高い中間転写体が得られる。
さらに、成膜液を遠心成型法等で中間転写体に成型加工する方法にあっては、揮発分が25重量%を超えるカーボンブラックで成膜液を作成しても、抵抗均一性はこれ以上高くならないので、揮発分が0.4〜25%の範囲にあるカーボンブラックを用いることが特に望ましい。これは、揮発成分が余り多いとカーボンブラックの分散性の阻害の原因となるためであると考えられる。
本明細書中で言う「カーボンブラックの揮発分」とは、以下の測定方法によって得られる値を意味する。
カーボンブラックの乾燥試料を白金るつぼまたはそれと同形、同容量のふた付き磁器るつぼに、ふた下2mmを超えない程度まで打振して詰め、その質量を量る。これにふたをして電気炉に入れ、脱酸素気流中(窒素気流中)において、950±25℃で正確に7分間加熱した後に取り出し、デジケーター中で室温になるまで放冷して加熱後の質量を量り、次の式によって揮発分を算出する。
V=(WD−WR)/WD×100
上記式において、
V:揮発分(%)
WD:乾燥試料の質量(g)
WR:加熱後の試料の質量(g)
である。
このような酸性カーボンブラックは、例えば、MA7、MA8、#2200B(以上三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、MOGUL L(キヤボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex U、Special Black4(デグサ社製)等の市販品が使用でき、さらに、上記したような性能を有するカーボンブラックなど、本目的のために新たに製造されたものでも使用可能である。
酸性カーボンブラックの製造方法は、カーボンブラックは一般にチャンネルブラック法、ファーネスブラック法などを用いて行われる。チャンネルブラック法は天然ガス、タウンガスや炭化水素を原料として部分燃焼させて冷たい面に衝突させる。ファーネスブラック法は天然ガスや石油留分を原料として高温雰囲気に保たれ密閉式反応炉中に原料を噴霧し、熱分解する。さらに、これらのカーボンブラックを硝酸等で酸化処理を行い所望の酸性度を得ることができる。
本発明のベルトの原料で用いられるカーボンブラックは、分散安定性に優れるため、体積抵抗が、108Ω・cm以上1012Ω・cm以下の範囲、いわゆる中抵抗領域にベルトの電気特性を容易に制御することのできるものを用いることが好ましい。
また、本発明のベルトで使用するカーボンブラックの量は、重量比で10〜25重量%の範囲で用いることが望ましい。
添加量が10重量%未満だと抵抗を均一に制御するのが難しく、25重量%を超えるとベルトの機械特性が悪化してくる虞がある。
次に、本発明のシームレスベルトが搭載される画像形成装置について説明する。
図4に示す画像形成装置は、中間転写方式を採用した画像形成装置の構成の一例を示したものである。
〔中間転写方式〕
図4において、プリンタ本体10は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部17、画像形成部13、給紙部14、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部17に送信する。画像書込部12は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部13の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)21BK、21M、21Y、21Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
画像形成部13は、黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体21BK、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体21BK、21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置、上記画像書込部17からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置20Bk、20M、20Y、20C、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ23Bk、23M、23Y、23C、クリーニング装置(図示略)、及び、図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置20Bk、20M、20Y、20Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。
ベルト構成部である中間転写ベルト24は、各感光体21BK、21M、21Y、21Cと、各1次転写バイアスローラ23Bk、23M、23Y、23Cとの間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
一方、転写紙Pは、給紙部14から給紙された後、レジストローラ16を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト50に担持される。そして、中間転写ベルト24と転写搬送ベルト50とが接触するところで、上記中間転写ベルト24上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ51により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙P上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙Pは、転写搬送ベルト50により定着装置15に搬送され、この定着装置15により転写された画像が定着された後、プリンタ本体10外に排出される。
〔転写搬送方式〕
図5は、電子写真方式を使用して画像を形成する画像形成装置であり、この画像形成装置は、転写搬送方式を採用したものの一例を示している。図5に示すように、本装置は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの異なる色の画像を形成する像担持体である感光体ドラム11Y、11M、11C、11K(以下、特定しない場合には単に感光体ドラム11という)を、転写ベルト装置6の転写搬送ベルト60の移動方向である矢印A方向に沿って間隔を置いてそれぞれ配置した4連タンデム構成の直接転写式の画像形成装置である。
そして、その4つの感光体ドラム11は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成する各トナー像形成部1Y、1M、1C、1K(以下、特定しない場合には単にトナー像形成部1という)に設けられている。
そのトナー像形成部1Y、1M、1C、1Kは、各感光体ドラム11に対応した現像ユニット12をそれぞれ備えている。そして、その各トナー像形成部1の位置は、各感光体ドラム11の回転軸が互いに平行になり、かつ用紙移動方向(矢印しA方向)に所定の等ピッチになるようにしてある。
また、このカラーレーザプリンタは、光書込ユニット2と、給紙カセット3,4と、レジストローラ対5と、転写紙(用紙)Pを担持した状態でその転写紙Pを各トナー像形成部1に順次搬送してそれを定着ユニット7に搬送する転写ベルト装置6とを設けている。なお、この実施例では、この転写ベルト装置6が転写ユニットとしても機能する。
さらに、このカラーレーザプリンタは、排紙トレイ8と、給紙部(手差しトレイ)14と、トナー補給容器22等も備えている。
光書込ユニット2は、光源,ポリゴンミラー,fθレンズ,反射ミラー等を備えており、画像データに基づいて各感光体ドラム11の表面に、それぞれの色の画像に対応するレーザ光を照射して走査し、そこに各潜像を形成する。なお、定着ユニット7は、ベルト定着方式による定着装置である。
転写ベルト装置6は、駆動ローラ63を含む複数の支持ローラ54、61、62、65、66により張架されて矢印A方向に回動する転写ベルトである転写搬送ベルト60と、その転写搬送ベルト60のベルト面(この例ではベルト外面)をクリーニングするベルトクリーニング装置85とを備えており、駆動ローラ63は図示しない駆動源により矢印方向に回転される。
そして、この転写搬送ベルト60は、画像が転写される転写材である転写紙をベルト面に吸着させて搬送する直接転写搬送ベルトである。
ベルトクリーニング装置85は、図5に示すように転写搬送ベルト60の駆動ローラ63に巻き掛けられたベルト部分(領域L)の駆動ローラ63と接する面と反対側の面(外面)にそれぞれ接する回転ブラシ(図示せず)とブレード(図示せず)とを備えていて、回転ブラシの回転速度と転写搬送ベルト60の移動速度との間に相対速度差を設けている。
転写搬送ベルト60は、ベルト面に用紙を吸着し、その用紙上にトナー像が順次重ね合わせ状態に転写されていく転写紙を搬送する。
この転写搬送ベルト60は、複数の支持ローラ54、61、62、65、66間に張架されているが、その支持ローラのうち、転写紙移動方向上流側の入口部分の支持ローラ61には、図示しない電源から所定電圧が印加されたが対向するように転写搬送ベルト60の外周面に配置されている。
その支持ローラ61と静電吸着ローラ80の間に送り込まれた転写紙は、帯電された状態にある転写搬送ベルト60上に静電吸着され、それが各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kにそれぞれ接触対向する各転写位置で、各色のトナー像が重ね合わせ状態に順次転写されていく。
各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kにそれぞれ対応する各転写位置には、それぞれ転写電界を形成する転写電界形成手段として、ローラ状の転写バイアス印加部材27Y、27M、27C、27Kを、それぞれ転写搬送ベルト60の裏面に接触するように設けている。
その転写バイアス印加部材27Y、27M、27C、27Kは、それぞれスポンジ等を外周に設けたバイアスローラであり、そこには各転写バイアス電源9Y、9M、9C、9K(図示せず)からローラの芯金に転写バイアスが印加される。そして、その印加された転写バイアスの作用により、転写搬送ベルト60に転写電荷が付与され、4つの各転写位置において転写搬送ベルト60と各感光体ドラム11の表面との間に所定強度の転写電界が形成される。なお、上記各転写位置において、最良の転写ニップを得るために転写紙と各感光体ドラム11との接触を最適な状態に保つため、各転写位置の近傍にバックアップローラ68をそれぞれ設けている。
転写バイアス印加部材27Y、27M、27Cと、それらに対応する3つの各バックアップローラ68は、図示しない揺動ブラケットにそれぞれ回転可能に保持されていて、その揺動ブラケットは回動軸(図示せず)を中心として回動可能になっている。
その揺動ブラケットは、カム軸(図示せず)に固定されたカム(図示せず)が回転することにより回動される。
また、入口側の支持ローラ61と静電吸着ローラ80は、共にローラブラケット(図示せず)に回転可能に支持されている。
一方、転写バイアス印加部材27Kとそれに対応するバックアップローラ68は、出口ブラケット(図示せず)に、軸(図示せず)を中心として回転可能に支持されている。
この出口ブラケットは、転写ベルト装置6を本体に対し着脱する際に、図示しないハンドルを操作することにより時計回り方向に回動し、それにより転写バイアス印加部材27Kとそれに対応するバックアップローラ68が、ブラック画像用の感光体ドラム11Kから離間する。
駆動ローラ63に対して、転写搬送ベルト60の移動方向下流側には、転写搬送ベルト60の外周面を押し込む支持ローラ54を設け、駆動ローラ63に対する転写搬送ベルト60の巻きつけ角を最適な角度にしている。
その支持ローラ54のさらに下流側には、バネ59により押圧付勢されるテンション用の支持ローラ65を転写搬送ベルト60の内面に接触状態に設け、それにより転写搬送ベルト60に所定のテンションを与えるようにしている。
転写紙Pは、トナー像形成部1Y、1M、1C、1Kの各転写ニップを通過する際に、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上に形成されている各色のトナー像が、転写電界やニップ圧の作用により、順次重ね合わせ状態に転写されていく。それにより、転写紙P上にフルカラーのトナー像が形成される。
このトナー像を転写紙Pへ転写した後は、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面が各クリーニング装置によりクリーニングされると共に除電され、次の静電潜像の形成に備えられる。
フルカラーのトナー像が形成された転写紙Pは、定着ユニット7でそのトナー像が定着された後、切換ガイド21の切り換え位置に応じて、矢印Bの第1の排紙方向、あるいは矢印Cの第2の排紙方向に向かう。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載によって限定されて解釈されることはなく、明細書、図面に開示された範囲で解釈される。
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
〔塗工液の調製〕
ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを各等モルで、N−メチルピロリドン溶媒中で重合反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液に、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(キャボット製BP−L)分散液を、カーボン含有率がポリアミック酸固形分の17重量%になるように調合し、よく攪拌混合して塗工液を作製した。
〔シームレスベルトAの作製〕
次に、内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を150rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、120℃まで徐々に昇温して30分加熱した。その後回転を停止し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、350℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。
所定時間処理して加熱を停止した後、常温まで徐冷してから型を取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚60μmのポリイミド製シームレスベルトAを得た。
〔シームレスベルトB〜Dの作製〕
回転数150rpmを、200rpm(B)、100rpm(C)、90rpm(D)にした以外は同様に行い、シームレスベルトBを得た。
〔シームレスベルトEの作製〕
シームレスベルトAの作製で用いた金属製円筒を図1に示すロールコート塗工装置のワークとして取り付けた。同様の塗工液をパンに流し込み、金属ローラの回転速度40mm/secで塗料を汲み上げ、偏芯ローラギャップ0.3mmで金属ローラ上の塗料厚みを制御した。金型ワークを35mm/secに制御して、金属ローラギャップ0.1mmで塗料を均一に金型上に塗布した後、熱風循環乾燥機に投入して、90℃まで徐々に昇温して30分加熱した。その後金型を取り出し、常温まで冷却後再度上記と同様に塗料を塗工した後、熱風循環乾燥機に投入して、130℃まで徐々に昇温して40分加熱した。その後、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、350℃まで昇温して30分加熱処理(焼成)した。シームレスベルトAと同様に円筒内面から剥離し、膜厚60μmのポリイミド製シームレスベルトEを得た。
シームレスベルトA〜Eの端部ソリを測定した後、図4に示す中間転写ベルトユニットに装着し走行性を評価した。(100hr空回し試験)その後周方向と軸方向の吸湿線膨張率を測定した。なお、端部ソリの許容巾は±6mmである。以下の表1に実施例1〜3および比較例1〜2の評価結果を示す。
Figure 0005079354
[実施例4〜5]
〔塗工液の調製〕
実施例1および3で用いたカーボンブラックの代わりにSpecial Black4(デグサ社製)を用い、カーボンブラック含有率を16.5重量%にした以外は同様に塗工液を調整した。
〔シームレスベルトFの作製〕
シームレスベルトEと同様にロールコート工法でシームレスベルトFを作製した。
シームレスベルトE,Fの周方向4ヶ所、軸方向3ヶ所の体積抵抗を測定し、合計12ヶ所の体積抵抗値のMax−Minを偏差とした。中間転写ベルト、転写搬送ベルトとしては、偏差1桁以内が好ましく、0.5桁以内が最も好ましい。実施例4〜5の評価結果を表2に示す。
Figure 0005079354
[実施例6〜7]
実施例5のシームレスベルトFを図4および図5に示したような画像形成装置にそれぞれ装着し、中間転写ベルト及び転写搬送ベルトとして、10万枚通紙試験を行った。両者共に、ベルト走行性、画質(均一性)に問題は無かった。
以上の結果から、本発明の構成とすることによって、ベルトの走行性と端部のソリが発生せずかつ均一な電気特性を有する中間転写ベルトあるいは転写搬送ベルトおよびそれらを用いた画像形成装置を提供できる。
以上、本発明について説明したが、上記記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
本発明のシームレスベルトの製造方法に使用される装置構成を示す図である。 本発明のシームレスベルトの線膨張係数を測定するための測定装置の構成を示す図である。 本発明のシームレスベルトのそりを測定するための説明図である。 中間転写方式を採用した画像形成装置の構成例を示す図である。 転写搬送方式を採用した画像形成装置の構成例を示す図である。
符号の説明
A 塗料パン
B 塗料(ポリアミック酸塗布液)
C 金属ローラ
D 偏芯ローラ
E ワーク(金型)
P 紙(転写紙)
a 上部
a’ 下部
b 錘
c 計測手段(レーザマイクロゲージ)
1C、1Y、1M、1K トナー像形成部
2 光書込ユニット
3、4 給紙カセット
5 レジストローラ対
6 転写ベルト装置
7 定着ユニット
8 排紙トレイ
10 画像形成装置(プリンタ)本体
11C、11Y、11M、11K、21C、21Y、21M、21BK 感光体ドラム(像担持体)
12 現像ユニット
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
17 画像書込部
20C、20Y、20M、20Bk 現像装置
21 切換ガイド
22 トナー補給容器
24 中間転写ベルト
23C、23Y、23M、23Bk バイアスローラ
27C、27Y、27M、27K 転写バイアス印加部材
50 転写搬送ベルト
51 2次転写バイアスローラ
59 バネ
60 転写搬送ベルト
54、61、62、65、66 支持ローラ
63 駆動ローラ
68 バックアップローラ
80 静電吸着ローラ
85 クリーニング装置

Claims (5)

  1. ロールコート工法によって製造されたポリイミド製エンドレスシームレスベルトであって、吸湿線膨張率の測定条件として、高湿条件35℃/85%(相対湿度)かつ低湿条件35℃/35%(相対湿度)で測定されるベルト周方向吸湿線膨張率(TD)とベルト軸方向吸湿線膨張率(MD)の比(TD/MD)が下記一般式(1)の範囲にあり、
    0.9≦吸湿線膨張率比(TD/MD)≦1.1・・・・・・(1)
    かつ、前記ベルト周方向吸湿線膨張率(TD)が30.8〜37.6(ppm/%)であることを特徴とするポリイミド製エンドレスシームレスベルト。
  2. 揮発分が0.4〜25重量%、一次粒子径10〜30nm、比表面積30〜300m2/g、吸油量30〜300cm3/100g、pH4以下の、表面に酸性基を有するカーボンブラックが含有されていることを特徴とする請求項1記載のポリイミド製エンドレスシームレスベルト。
  3. 体積抵抗が108Ω・cm以上1012Ω・cm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載のポリイミド製エンドレスシームレスベルト。
  4. 少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、像担持体上に各色に応じた現像材を用いてトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を無端状に走行する中間転写体上に順次重ね合わせて一時転写し、該中間転写体上の一時転写画像を転写材に一括して二次転写する中間転写装置と、前記転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を前記転写材上に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、
    前記中間転写装置に使用されるシームレスベルトとして、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド製エンドレスシームレスベルトを搭載することを特徴とする画像形成装置。
  5. 少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、像担持体上に各色に応じた現像材を用いてトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を無端状に走行する転写搬送体上の転写材上に順次重ね合わせて転写する転写搬送装置と、前記転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を前記転写材上に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、
    前記転写搬送装置に使用されるシームレスベルトとして、請求項1から3のいずれか1項に記載したポリイミド製エンドレスシームレスベルトを搭載することを特徴とする画像形成装置。
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