JP2008200651A - 有害イオンの回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】回収効率に優れ、また種々の有害イオンを捕捉することができ自在性に優れ、また酸・塩基等に浸漬しても崩壊し難く処理を繰り返し行うことができ作業性に優れ、また高分子網目単位重量当たりの有害イオンの捕捉量が大きいため、汚染地域が遠隔地であっても処理施設までの搬送性に優れており、さらに簡単な操作で捕捉した有害イオンを容易に解離させて回収できる有害イオンの回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、有害イオンを含有する水性溶液に、三次元網目構造を有する親水性重合体と、前記親水性重合体から分岐し前記有害イオンと結合するキレート形成鎖と、を有する有機高分子ゲルを接触させ、前記有機高分子ゲルに前記有害イオンを捕捉させる溶液接触工程と、前記有害イオンを捕捉した前記有機高分子ゲルを脱着剤に接触させ、前記脱着剤に前記有害イオンを溶出させる脱着剤接触工程と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、水性溶液中に存在する重金属イオンやシアン化物イオン等の有害イオンを捕捉して回収する有害イオンの回収方法に関するものである。
従来より、鉛,銅,カドミウムイオン等の有害重金属陽イオンや、シアン化物,アジ化物等の有害陰イオン等を含有する化学系研究施設や工場等からの廃液は、特殊廃液処理施設等で処理された後、有害物質含有量や環境・人体に与える影響等の基準により分別され、最終処分場において大半が埋め立て処分されている。しかし、酸性雨等によって最終処分場から重金属イオン等が滲出し、漏洩して環境を汚染する問題が懸念されており、流出した有害イオンの回収方法に関する技術開発は社会的急務である。
また、人体に直接悪影響を及ぼすことはないが、海や湖沼の富栄養化によるアオコやプランクトンの大発生を引き起こすリン酸イオンも、環境汚染を引き起こす有害イオンであり、リン酸イオンの対策も海洋環境や水辺環境の改善のため強く要請されている。
このような有害イオンを吸着・除去するために本発明者らが開発した技術として、(特許文献1)に「架橋による三次元網目構造を有するとともに、網目を形成する主鎖が、末端に正の電荷を有するイオン性の官能基をもつ側鎖を派生した有害陰イオン吸着有機高分子ゲル」が開示されている。
また、環境中から有害金属を除去するための技術として、(特許文献2)には「放射線橋かけによって得られるキトサン誘導体、キチン誘導体又はその混合物のハイドロゲルからなる金属又は腐敗物質の浄化剤」が開示されている。
特開2005−177557号公報 特開2004−358292号公報
しかしながら上記従来の技術において、(特許文献1)では、以下のような要望があった。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、有害陰イオンを吸着するためには好適な材料であるが、重金属イオン等の有害陽イオンには適用できないため、鉛,銅,カドミウムイオン等の有害重金属陽イオンを捕捉させる技術が要望されていた。
(2)有害重金属陽イオンを捕捉させた後、再び資源として有効に利用するため、捕捉させた有害重金属イオン等を脱着させ回収する技術も要望されていた。
また、上記従来の技術において、(特許文献2)では、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献2)に開示の技術は、カニやエビの甲羅から作られるキチンやキトサンを原料として、放射線を照射してハイドロゲルからなる洗浄剤を製造するので量産性に欠けるという課題を有していた。そのため、環境浄化等のために大量に洗浄剤を量産するのが困難であるという課題を有していた。
(2)生体由来物質であるキチンやキトサンを用いているので、保管状態が悪い場合は腐敗して分解し易いため取扱性に欠けるという課題を有していた。また、捕捉した有害イオンの脱着や再生を繰り返すことによって劣化し易く、繰り返し利用性に乏しいという課題を有していた。
本発明は上記の要望や従来の課題を解決するもので、捕捉できる有害イオン量が多く水性溶液からの有害イオンの回収効率に優れ、また種々の有害イオンを捕捉することができ自在性に優れ、また酸・塩基等に浸漬しても崩壊し難く処理を繰り返し行うことができ作業性に優れ、また高分子網目単位重量当たりの有害イオンの捕捉量が大きいため、汚染地域が遠隔地であっても処理施設までの搬送性に優れており有害イオンを捕捉回収処理でき、さらに簡単な操作で捕捉した有害イオンを容易に解離させて回収できる有害イオンの回収方法を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明の有害イオンの回収方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の有害イオンの回収方法は、有害イオンを含有する水性溶液に、三次元網目構造を有する親水性重合体と、前記親水性重合体から分岐し前記有害イオンと結合するキレート形成鎖と、を有する有機高分子ゲルを接触させ、前記有機高分子ゲルに前記有害イオンを捕捉させる溶液接触工程と、前記有害イオンを捕捉した前記有機高分子ゲルを脱着剤に接触させ、前記脱着剤に前記有害イオンを溶出させる脱着剤接触工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)三次元網目構造を有する親水性重合体と、親水性重合体から分岐し有害イオンと結合するキレート形成鎖とを有する有機高分子ゲルは、三次元網目構造を形成しているので有害イオンを含有する水性溶液との接触面積が大きく、また分子レベルの間隔で分岐したキレート形成鎖が存在しており、イオン交換樹脂の場合とは異なり、親水性重合体が水性溶液中で比較的自由に動くことができるため、親水性重合体から分岐したキレート形成鎖が有害イオンを取り囲むように配位し分子内キレート橋かけを形成するので、捕捉できる有害イオン量が多く、水性溶液からの有害イオンの回収効率に優れている。
(2)溶液接触工程において、水性溶液中の特定の有害イオンがキレート形成鎖と配位結合による相互作用を起こし捕捉されるので、キレート形成鎖を選択することで種々の有害イオンを捕捉することができ自在性に優れる。
(3)有機高分子ゲルは、主として共有結合によって網目が形成されているので安定性に優れ、酸・塩基等の脱着剤に浸漬しても崩壊し難く、溶液接触工程と脱着剤接触工程を繰り返し行うことができ作業性に優れる。
(4)有機高分子ゲルは、高分子網目単位重量当たりの有害イオンの捕捉量が大きいため、汚染地域で有害イオンを捕捉した有機高分子ゲルを処理施設まで運搬するときの搬送性にも優れる。
(5)脱着剤接触工程において、捕捉された有害イオンに比べて吸着性の高いイオンを含む脱着剤に有機高分子ゲルを接触させるという簡単な操作で、キレート形成鎖から有害イオンを容易に解離させることができ、脱着剤に有害イオンを溶出させた後、公知の方法で有害イオンを回収することができるため作業性に優れる。
ここで、有機高分子ゲルのキレート形成鎖の種類によって、有害陽イオン、有害陰イオンのいずれの有害イオンも捕捉させることができる。
有害陽イオンとしては、クロム,マンガン,鉄,コバルト、ニッケル、銅,亜鉛,鉛,カドミウム,水銀等の重金属イオン等を用いることができる。
有害陰イオンとしては、シアン化物,アジ化物,ヒ酸,亜ヒ酸,クロム酸,重クロム酸,マンガン酸、過マンガン酸、セレン酸,リン酸等の陰イオンが用いられる。
水性溶液としては、水、水とアルコール等の有機溶媒との混合溶液等が用いられる。このような水性溶液としては、水道水、浄水、河川水、湖沼水、地下水、雨水、排水、汽水、海水等が用いられる。なお、アルコール等の有機溶媒との混合溶液を用いる場合は、有機溶媒が10%未満の混合溶液が好ましい。有機溶媒の混合量が多くなると捕捉能が低下するからである。
親水性重合体としては、親水性不飽和単量体を架橋することによって三次元網目構造が形成された結果得られる重合体であれば特に制限なく用いられる。このような親水性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アルギン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、スルホエトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の酸基含有の親水性不飽和単量体及びその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロプル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等のノニオン性の親水性不飽和単量体;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその四級塩等のカチオン性の親水性不飽和単量体等を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種乃至は複数種を使用できる。また、親水性重合体としては、ポリエチレンオキサイド、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ハイドロキシエチルセルロース等の水溶性ポリマーも用いることができる。
有機高分子ゲルは、公知の方法、例えばラジカル重合法、レドックス重合法、リビングラジカル重合法、放射線又は電子線を照射する方法、光増感剤の存在下に光照射する方法等を用いて、親水性重合体を架橋させ製造することができる。
有機高分子ゲルを得る際に用いる架橋剤としては、水溶性不飽和単量体や水溶性ポリマーと共重合可能な水溶性化合物、例えば、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、N,N´−メチレンビスメタクリルアミド等のビスアクリルアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の長鎖ジアクリレート類;ジビニルベンゼン等が好適に用いられる。これらは、単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、有機高分子ゲルを得る際の開始剤としては、水溶性のものであれば特に制限されず用いることができる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロパーオキサイド等;亜硫酸塩,亜硫酸水素塩,硝酸第二セリウムアンモニウム等のレドックス系開始剤;2,2´−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2´−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリルやその塩等のアゾ化合物等を用いることができる。これらの開始剤は、単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機高分子ゲルの親水性重合体から分岐したキレート形成鎖は、有害イオンが含まれる水性溶液のpH、有害イオンの極性によって、適宜選択する。
水性溶液のpHが7より大きな高pH領域の場合であって、有害陽イオンを捕捉する場合は、キレート形成鎖にカルボキシル基を有する有機高分子ゲルを使用することができる。このような有機高分子ゲルは、アクリル酸,アルギン酸ナトリウム,カルボキシメチルセルロースナトリウム等の酸基含有の親水性不飽和単量体及びその塩、カルボキシル基を有する水溶性ポリマーを架橋して得ることができる。また、有害陰イオンを捕捉する場合は、キレート形成鎖に第4級アンモニア塩残基を有する有機高分子ゲルを使用することができる。このような有機高分子ゲルは、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル,ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル等のカチオン性の親水性不飽和単量体を架橋して得ることができる。
水性溶液のpHが7より小さな低pH領域の場合であって、有害陽イオンを捕捉する場合は、キレート形成鎖にスルホン酸基を有する有機高分子ゲルを用いることができる。このような有機高分子ゲルは、スチレンスルホン酸等の酸基含有の親水性不飽和単量体を架橋して得ることができる。また、有害陰イオンを捕捉する場合は、キレート形成鎖に第3級アミン残基を有する有機高分子ゲルを使用することができる。このような有機高分子ゲルは、ジメチルアミノエチルアクリレート等のカチオン性の親水性不飽和単量体を架橋して得ることができる。
有機高分子ゲルは、ボールミル,万能ミル,クラッシャ等の粉砕機や切断機で粉砕乃至は切断し粒状にしたものを用いるのが好ましい。有機高分子ゲルの比表面積を大きくして有害イオンの捕捉効率を高めることができるからである。なお、有機高分子ゲルの重合反応時に、水溶液をホモミキサー,プロペラ撹拌機等を用いて撹拌したり乳化重合させたりして粒状にすることもできる。
粒状の有機高分子ゲルの平均粒子径としては、1mm〜10mm程度が好適である。有害イオンの捕捉や脱着を素早く行うことができるからである。粒状の有機高分子ゲルの平均粒子径が1mmより小さくなると取扱性が低下する傾向がみられ、10mmより大きくなると比表面積が小さくなり有害イオンの捕捉能が低下するため好ましくない。なお、粒状の有機高分子ゲルは、球状だけでなく、種々の形状をしたものを用いることができる。
脱着剤接触工程において、有害イオンを捕捉した有機高分子ゲルに接触させる脱着剤としては、有機高分子ゲルが陽イオンを捕捉している場合は塩酸等の酸性水溶液が用いられ、有機高分子ゲルが陰イオンを捕捉している場合は水酸化ナトリウム等の塩基性水溶液が用いられる。これにより、捕捉された有害イオンに比べて選択性の高いイオンを含む脱着剤に有機高分子ゲルを接触させるので、キレート形成鎖から有害イオンが解離されて脱着剤に有害イオンが溶出される。
なかでも、脱着剤としては、塩酸,硝酸等の酸や水酸化ナトリウムが好適に用いられる。有機高分子ゲルの劣化を引き起こし難いからである。
脱着剤に溶出した有害イオンを脱着剤から分離して回収する方法としては、例えば、析出、濃縮、沈殿等の公知の方法を用いることができる。
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の有害イオンの回収方法であって、前記脱着剤に接触させた前記有機高分子ゲルを再生剤に接触させる再生剤接触工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)再生剤接触工程を備えているので、再生剤に接触した有機高分子ゲルのキレート形成鎖の有害イオンの捕捉能を再生させることができる。
(2)有機高分子ゲルは、共有結合によって網目が形成されているので安定性に優れ、酸・塩基の再生剤に接触しても崩壊し難く、何度も繰り返して再生させることができる。
ここで、再生剤としては、陽イオンを捕捉した有機高分子ゲルの場合には水酸化ナトリウム水溶液等の塩基が用いられ、陰イオンを捕捉した有機高分子ゲルの場合には塩酸や硝酸等の酸が用いられる。再生剤の濃度は、再生した有機高分子ゲルの吸着性や化学耐久性を考慮して、適宜設定することができる。
なお、脱着剤接触工程の後、再生剤接触工程の前には、有機高分子ゲルを水洗しておく。有機高分子ゲルに脱着剤が残っていると、再生剤が中和されてしまい再生効果が低下するからである。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の有害イオンの回収方法であって、前記溶液接触工程において、前記水性溶液に錯体形成剤(錯形成剤)を加える構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)水性溶液のpH等が変動して水性溶液中の有害イオンに比べてキレート形成鎖の選択性が低くならない場合があり、この場合は有害イオンの捕捉能が低下する。このような場合に水性溶液に錯体形成剤を加えると、極性分子やイオン等の配位子が水性溶液中の金属イオンに配位結合して錯体が形成され、極性が反転する等の大きな電荷の変化を示すので、有害イオンをキレート形成鎖に捕捉させ易くすることができる。
ここで、錯体形成剤としては、アンモニア、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いることができる。
水性溶液にアンモニアを加えることによって、銅,ニッケル,コバルト,銀,亜鉛等の金属イオンがアンミン錯イオンを形成する。塩酸を加えることによって、銅,銀,鉛,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛等の金属イオンがクロロ錯陰イオンを形成する。水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、アルミニウム,亜鉛,鉛,スズ等の両性元素の酸化物や水酸化物がヒドロキソ錯陰イオンを形成する。多くの重金属イオンはクロロ錯体を形成するため、塩酸を錯体形成剤として用いるのが好ましい。
水性溶液に加える錯体形成剤の量としては、水性溶液中の金属イオンと配位結合して錯体を形成するだけの充分量があればよい。
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の有害イオンの回収方法であって、前記キレート形成鎖が、カルボキシル基、スルホン酸基、第3級アミン残基、第4級アンモニア塩残基の内のいずれかを有した構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)キレート形成鎖が、カルボキシル基、スルホン酸基、第3級アミン残基、第4級アンモニア塩残基の内のいずれかを有しているので、水性溶液のpHが高い場合や低い場合、有害イオンの極性によって、最適なキレート形成鎖を有する有機高分子ゲルを選択して有害イオンを捕捉することができるため自在性に優れる。
以上のように、本発明の有害イオンの回収方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)親水性重合体から分岐したキレート形成鎖が有害イオンを取り囲むように配位し分子内キレート橋かけを形成するので、捕捉できる有害イオン量が多く水溶液からの有害イオンの回収効率に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
(2)水性溶液中の特定の有害イオンがキレート形成鎖と配位結合による相互作用を起こし捕捉されるので、キレート形成鎖を選択することで種々の有害イオンを捕捉することができ自在性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
(3)有機高分子ゲルは、共有結合によって網目が形成されているので安定性に優れ、酸・塩基等の脱着剤に浸漬しても崩壊し難く、溶液接触工程と脱着剤接触工程を繰り返し行うことができ、作業性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
(4)有機高分子ゲルは、高分子網目単位重量当たりの有害イオンの捕捉量が大きいため、汚染地域で有害イオンを捕捉した有機高分子ゲルを処理施設まで運搬するときの搬送性に優れており、汚染地域が遠隔地であっても有害イオンを捕捉回収処理できる有害イオンの回収方法を提供できる。
(5)簡単な操作でキレート形成鎖から有害イオンを容易に解離させることができ、脱着剤に有害イオンを溶出させ、回収することができるため作業性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)再生剤に接触した有機高分子ゲルのキレート形成鎖の有害イオンの捕捉能を再生させることができ、有機高分子ゲルを繰り返し使用することができ、省資源性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)水性溶液のpH等の条件が変動しても捕捉能が変動し難い安定性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)水性溶液のpHが高い場合や低い場合、有害イオンの極性によって、最適なキレート形成鎖を有する有機高分子ゲルを選択して有害イオンを捕捉することができるため自在性に優れた有害イオンの回収方法を提供できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態における有害イオンの回収方法を示すフローチャートである。
始めに、溶液接触工程において、三次元網目構造を有する親水性重合体と、親水性重合体から分岐したキレート形成鎖と、を有する有機高分子ゲルと、メッキ廃液等の水性溶液とを接触させ、有機高分子ゲルのキレート形成鎖に水性溶液中の有害イオンを捕捉させる(S1)。
次いで、脱着剤接触工程において、有害イオンを捕捉した有機高分子ゲルを、塩酸や水酸化ナトリウム等の脱着剤に接触させ、脱着剤に有害イオンを溶出させる(S2)。脱着剤に溶出させた有害イオンは、析出、濃縮、沈殿等の公知の方法を用いて回収し、残りは排液として処理する(S3)。
有機高分子ゲルを水洗した後、再生剤接触工程において、有機高分子ゲルを水酸化ナトリウム水溶液や塩酸等の再生剤に接触させ、有機高分子ゲルを再生する(S4)。再生された有機高分子ゲルは、有害イオンを捕捉させるために繰り返し利用できる。
以上のような本発明の実施の形態における有害イオンの回収方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)三次元網目構造を有する親水性重合体と、親水性重合体から分岐し有害イオンと結合するキレート形成鎖とを有する有機高分子ゲルは、三次元網目構造を形成しているので有害イオンを含有する水性溶液との接触面積が大きく、また分子レベルの間隔で分岐したキレート形成鎖が存在しており、イオン交換樹脂の場合とは異なり、親水性重合体が水性溶液中で比較的自由に動くことができるため、親水性重合体から分岐したキレート形成鎖が有害イオンを取り囲むように配位し分子内キレート橋かけを形成するので、捕捉できる有害イオン量が多く、水性溶液からの有害イオンの回収効率に優れている。
(2)再生剤接触工程を備えているので、再生剤に接触した有機高分子ゲルのキレート形成鎖の有害イオンの捕捉能を再生させることができる。
(3)有機高分子ゲルは、共有結合によって網目が形成されているので安定性に優れ、酸・塩基の再生剤に接触しても崩壊し難く、何度も繰り返して再生させることができる。
なお、溶液接触工程において、水性溶液のpH等が変動して水性溶液中の有害イオンに比べてキレート形成鎖の選択性が低くならない場合があり、この場合は、有機高分子ゲルによる有害イオンの捕捉能が低下する。このような場合に、水性溶液にアンモニア、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等の錯体形成剤を加えると、極性分子やイオン等の配位子が水性溶液中の金属イオンに配位結合して錯体が形成され、極性が反転する等の大きな電荷の変化を示すので、有害イオンをキレート形成鎖に捕捉させ易くすることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アクリルアミド(和光純薬工業(株)製)1.4Mと、アクリル酸ナトリウム(ARDRICH製)3.5Mとを含む水溶液を調製し、これに架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)86.3mMと、開始剤として過硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)17mMを加えて撹拌した後、60℃で6時間静置することによって、キレート形成鎖にカルボキシル基を有する有機高分子ゲル(アクリル酸ゲル)を作成した。
得られた有機高分子ゲルを平均粒子径1mmに破砕して、実施例1の有機高分子ゲルを得た。
(実験例1)
実施例1の有機高分子ゲル2gに、それぞれ100,200,300mMのNiCl水溶液(20mL)(pH=3.64)を加えて10分間静置した。NiCl水溶液の水温は20℃であった。
10分経過後、NiCl水溶液から有機高分子ゲルを分離したところ、有機高分子ゲルは膨潤して、いずれも緑色に着色されていた。残った水溶液中のNiイオン濃度を原子吸光分析法によって測定することにより、Niイオンの有機高分子ゲルへの吸着量を算出した。
次に、有機高分子ゲルに0.6MのHCl水溶液(20mL)(脱着剤)を加えて30分間静置し、有機高分子ゲルに吸着したニッケルイオンを脱着させ、次いで、有機高分子ゲルを40mLの蒸留水に入れ振とうして洗浄した。有機高分子ゲルを分離したHCl水溶液及び洗浄後の蒸留水のNiイオン濃度を原子吸光分析法によって測定することにより、Niイオンの有機高分子ゲルからの脱着量を算出した。先に求めた吸着量に対する脱着量の比率(脱着率)を算出した。
表1はNiCl水溶液の濃度(mM)、Niイオンの有機高分子ゲルへの吸着量(mg)、有機高分子ゲルからのNiイオンの脱着率(%)を示す一覧表である。なお、吸着量の誤差範囲は±10mgであり、脱着率の誤差範囲は±5%である。
Figure 2008200651
以上の実験結果から、Niイオン等の陽イオンを短時間で捕捉することができ回収効率に優れ、また簡単な操作で捕捉した陽イオンをほぼ100%脱着させることができることが確認された。NiCl水溶液の濃度から水溶液中のNi量の理論値(mg)を求め、水溶液中のNi量(mg)に対する吸着量(mg)の比率(吸着率)を計算したところ、95〜73%程度であった。使用する有機高分子ゲルの重量を増やすことにより、吸着率をほぼ100%まで上げることができた。
(実験例2)
脱着剤に浸漬し、蒸留水で洗浄した実験例1の有機高分子ゲルを、1M水酸化ナトリウム水溶液(再生剤)に30分浸漬した。30分経過後の有機高分子ゲルは膨潤し、脱着剤に浸漬する前の状態に再生された。
再生した有機高分子ゲルを蒸留水に10分間浸漬した後、この有機高分子ゲルをNiCl水溶液(20mL)に浸漬し10分間静置したところ、有機高分子ゲルが緑色に着色したことを確認した。有機高分子ゲルがNiイオンを捕捉したことを示している。
以上のように本実施例によれば、重金属イオン等の陽イオンを短時間で捕捉することができ回収効率に優れ、また簡単な操作で捕捉した陽イオンをほぼ100%脱着させることができ作業性に優れ、さらに再生させることも容易で、繰り返して使用することができ省資源性と環境面に優れていることが明らかである。
(実施例2)
アクリルアミド(和光純薬工業(株)製)1.4Mと、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)3.5Mとを含む水溶液を調製し、これに架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)24.7mMと、開始剤として過硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)5mMを加えて撹拌した後、60℃で6時間静置することによって、キレート形成鎖に第3級アミン残基を有する有機高分子ゲルを作成した。
得られた有機高分子ゲルを平均粒子径1mmに破砕して、実施例2の有機高分子ゲルを得た。
(実験例3)
実施例2の有機高分子ゲル1gに、それぞれ100,200,300mMのCrO水溶液(20mL)(pH=0.37)を加えて10分間静置した。CrO水溶液の水温は20℃であった。
10分経過後、CrO水溶液から有機高分子ゲルを分離したところ、有機高分子ゲルは膨潤して、いずれも橙乃至は褐色に着色されていた。残った水溶液中のCrイオン濃度を原子吸光分析法によって測定することにより、重クロム酸イオンの有機高分子ゲルへの吸着量を算出した。
次に、有機高分子ゲルに3Mの水酸化ナトリウム水溶液(20mL)(脱着剤)を加えて30分間静置し、有機高分子ゲルに吸着した重クロム酸イオンを脱着させ、次いで、有機高分子ゲルを40mLの蒸留水に入れ振とうして洗浄した。有機高分子ゲルを分離した水酸化ナトリウム水溶液及び洗浄後の蒸留水のCrイオン濃度を原子吸光分析法によって測定することにより、重クロム酸イオンの有機高分子ゲルからの脱着量を算出した。先に求めた吸着量に対する脱着量の比率(脱着率)を算出した。
表2はCrO水溶液の濃度(mM)、重クロム酸イオンの有機高分子ゲルへの吸着量(mg)、有機高分子ゲルからの重クロム酸イオンの脱着率(%)を示す一覧表である。なお、吸着量の誤差範囲は±10mgであり、脱着率の誤差範囲は±5%である。
Figure 2008200651
以上の実験結果から、重クロム酸イオン等の陰イオンを短時間で捕捉することができ回収効率に優れ、また簡単な操作で捕捉した陰イオンをほぼ100%脱着させることができることが確認された。
(実験例4)
脱着剤に浸漬し蒸留水で洗浄した実験例1の有機高分子ゲルを、4M塩酸(再生剤)に30分浸漬した。30分経過後の有機高分子ゲルは膨潤し、脱着剤に浸漬する前の状態に再生された。
再生した有機高分子ゲルを蒸留水に10分間浸漬した後、この有機高分子ゲルをCrO水溶液(20mL)に浸漬し10分間静置したところ、有機高分子ゲルが橙色に着色したことを確認した。有機高分子ゲルが重クロム酸イオンを捕捉したことを示している。
以上のように本実施例によれば、重クロム酸イオン等の陰イオンを短時間で捕捉することができ回収効率に優れ、また簡単な操作で捕捉した陰イオンをほぼ100%脱着させることができ作業性に優れ、さらに再生させることも容易で、繰り返して使用することができ省資源性にも優れていることが明らかである。
本発明は、水性溶液中に存在する重金属イオンやシアン化物等の有害イオンを捕捉して回収する有害イオンの回収方法に関し、捕捉できる有害イオン量が多く水性溶液からの有害イオンの回収効率に優れ、また種々の有害イオンを捕捉することができ自在性に優れ、また酸・塩基等に浸漬しても崩壊し難く処理を繰り返し行うことができ作業性に優れ、また高分子網目単位重量当たりの有害イオンの捕捉量が大きいため、汚染地域が遠隔地であっても処理施設までの搬送性に優れており有害イオンを捕捉回収処理でき、さらに簡単な操作で捕捉した有害イオンを容易に解離させて回収できる有害イオンの回収方法を提供することができる。
本発明の実施の形態における有害イオンの回収方法を示すフローチャート

Claims (4)

  1. 有害イオンを含有する水性溶液に、三次元網目構造を有する親水性重合体と、前記親水性重合体から分岐し前記有害イオンと結合するキレート形成鎖と、を有する有機高分子ゲルを接触させ、前記有機高分子ゲルに前記有害イオンを捕捉させる溶液接触工程と、
    前記有害イオンを捕捉した前記有機高分子ゲルを脱着剤に接触させ、前記脱着剤に前記有害イオンを溶出させる脱着剤接触工程と、
    を備えていることを特徴とする有害イオンの回収方法。
  2. 前記脱着剤に接触させた前記有機高分子ゲルを再生剤に接触させる再生剤接触工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載の有害イオンの回収方法。
  3. 前記溶液接触工程において、前記水性溶液に錯体形成剤を加えることを特徴とする請求項1又は2に記載の有害イオンの回収方法。
  4. 前記キレート形成鎖が、カルボキシル基、スルホン酸基、第3級アミン残基、第4級アンモニア塩残基の内のいずれかを有していることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の有害イオンの回収方法。
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