JP4311571B2 - 重金属捕捉用キレート剤 - Google Patents

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Description

本発明は、重金属捕捉用のキレート剤に関する。より詳しくは、底泥や土壌中の重金属除去処理に適するキレート剤に関する。
河川、湖沼、内湾などの水域における底泥の浚渫工事は、水質浄化や水深確保などの目的で行われることが多い。当該工事の過程で発生する浚渫土は、従来、凝集剤処理を行って脱水した後、遊休地や埋め立て地に廃棄されることが多かったが、近年では、浚渫土の廃棄用地の確保が困難となっていることや地下水汚染の問題が顕在化しているため、浚渫土を資源として再利用することが検討されている。
浚渫土などの底泥には、水銀(Hg)、砒素(As)、カドミニューム(Cd)、クロム(Cr)などの有害重金属が底泥中の鉱物や腐植物質と結合等して底泥粒子に捕捉された状態で含まれている。従って、浚渫土などの底泥を資源として再利用するためには、これらの有害物質を底泥粒子から溶離させて、確実に回収することが必要である。
浚渫土などの土壌中に含まれる有害重金属を除去する技術として、キレート剤を用いた洗浄方法が提案されている(非特許文献1、特許文献1〜5)。キレート剤は、溶出した重金属と錯体を形成して吸着する。このキレート剤を用いた重金属処理方法は、中性付近での抽出が可能で土壌損傷が少ないという利点があるが、既存の合成キレート剤が高価であり、生分解性も低いので、大量の汚染土壌を処理する場合への適用は難しい。
Wasay S.A.et al,Remediation of Soils Polluted by Heavy Metals Using Salts of Organic Acids and Chelating Agents.Environ.Technol.,19,369-380(1998). 特開2004−066129号公報。 特開2002−173665号公報。 特開2004−351288号公報。 特開2004−314007号公報。 特開2004−089809号公報。
近年、浚渫された底泥などの土壌を再利用(資源化)するために、当該対象土壌を酸化焼成処理することによってセラミックスやゼオライトを製造する方法が注目されている。
この方法では、土壌中のセラミックスやゼオライトの有効成分となるケイ素やアルミニウムなどの溶出を極力抑制しながら有害重金属を溶出させることができることが重要である。特に、クロム(Cr)を大量に含有する土壌に酸化焼成処理を施して資源化する場合は、この酸化焼成の過程で三価クロム(Cr(III))からより毒性の強い六価クロム(Cr(VI))へ変化するという問題が起こる。加えて、このような三価クロム(Cr(III))から六価クロム(Cr(VI))への変化は、地上に置かれた浚渫土の酸化還元電位が上昇するときにも発生する問題である。従って、三価、六価を問わずクロム(Cr)の除去は、浚渫土の資源化における重要な技術的課題となっている。さらに、浚渫土の重金属除去に用いるキレート剤は、処理対象の浚渫土の量に照らし、大量使用が見込まれため、安価であることが望まれている。
そこで、本発明は、底泥や土壌に含まれている重金属、特にクロム(Cr)を効率よく捕捉できる安価なキレート剤を提供することを主な目的とする。
本発明では、まず、窒素型リガンドを有する第1高分子と、酸素型リガンドを有し、かつ、ゲル化可能な第2高分子と、を備え、不溶性担体に固定化された重金属捕捉用キレート剤を提供する。なお、本発明において「窒素型リガンド」とは、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得る窒素原子含有基(例えば、アミノ基、イミンなど)を広く意味し、「酸素型リガンド」とは、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得る酸素原子含有基(例えば、イミノジアセテート、カルボキシル基など)を広く意味する。
本発明に係る重金属捕捉用キレート剤は、窒素型リガンド(第1高分子由来)と酸素型リガンド(第2高分子由来)の両方を有するハイブリッド型キレート剤であることが第一の特徴であって、この構成によって特にクロム(Cr)の捕捉に有効である。
より詳しくは、pH領域に応じた各リガンドの帯電状態に基づいて、三価クロム(Cr(III))や六価クロム(Cr(VI))の捕捉を行う。例えば、pH>3の領域では、窒素型リガンドのキレート作用により、また負に帯電した酸素型リガンド(例えば、−O)はキレート作用と共に陽イオンである三価クロム(Cr(III)をイオン結合によって捕捉し、pH<2の領域では、窒素型リガンドがプロトン化(正帯電)することによって、陰イオンであるCrO 2-(即ち、六価クロムの陰イオン状態)をイオン結合によって有効に捕捉する。従って、本発明に係る重金属捕捉用キレート剤は、処理対象の重金属含有土壌のpHおよび酸化還元電位の変化に応じて、三価クロム(Cr(III))や六価クロム(Cr(VI))を有効に捕捉することができる。
また、本発明に係る重金属捕捉用キレート剤は、不溶性担体に固定化されているため、該キレート剤に捕捉された重金属を水溶液中から回収することが容易である。さらには、重金属捕捉用キレート剤を乾燥処理することによって、カラム容器(充填塔)への充填量を増加させ、重金属捕捉効率を高めることができる。
ここで、前記第1高分子は、窒素型リガンドを備える高分子であればよいが、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)やキトサンを採用でき、前記第2高分子は、酸素型リガンドを備える化合物であればよいが、例えば、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジュランガムなどを採用することができる。不溶性担体は、採用された第1高分子や第2高分子と結合等することによって、キレート剤の固定化に適した物質であれば特に限定されないが、一例を挙げると、塩化カルシウムをゲル化剤として調整したアルギン酸カルシウムなどを採用できる。
本発明に係る重金属捕捉用キレート剤は、底泥や土壌中の重金属の捕捉に有効であり、特にクロム(Cr)については、処理水のpH領域に応じて三価クロム(Cr(III))とCrO 2-(即ち、六価クロム)をそれぞれ捕捉することができる。また、本キレート剤は、不溶性担体に固定化されているので、重金属を捕捉させた後に水溶液中から容易に回収することができる。さらに、本キレート剤は安価であるので、浚渫土の重金属処理などの大量土壌処理に適している。
以下、本発明に係る重金属捕捉用キレート剤の好適な実施形態について説明する。
本発明に係る重金属捕捉用キレート剤(以下、単に「キレート剤」)は、二種類の高分子(第1高分子と、第2高分子)から構成され、かつ不溶性担体に固定化された構成を備えている。不溶性担体に固定する理由は、水溶液中からのキレート剤の回収を容易化するためである。
第1高分子は、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得る「窒素型リガンド」を備えており、一方の第2高分子は、同様に、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得る「酸素型リガンド」を備え、かつゲル化可能なものである。
第1高分子の「窒素型リガンド」は、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得るアミノ基、イミン基のような窒素原子含有基であり、第2高分子の「酸素型リガンド」は、重金属とキレート錯体(chelate complex)を形成し得るイミノジアセテート、カルボキシル基のような酸素原子含有基である。
第1高分子は、例えば、次の化学式1で示すポリエチレンイミンやキトサン、などを採用することができる。第2高分子は、例えば、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジュランガムなどを採用することができる。
Figure 0004311571
不溶性担体は、第1高分子、あるいは第2高分子に結合等してキレート剤を固定化、とりわけこれら高分子の官能基が自由に反応活性を発揮できる包括固定化が可能な物質が望ましい。例えば、アルギン酸カルシウムゲルなどを利用できる。このアルギン酸カルシウムゲルは、ポリエチレンイミン(第1高分子)のイミン基やアルギン酸のカルボキシル基が重金属と反応する場を提供すると共に、アルギン酸のゲル化特性による包括固定作用によって、キレート剤の固定化担体としても機能する。本発明に係るキレート剤は、不溶性担体に固定化されているため、該キレート剤に捕捉された重金属を水溶液中から回収することが容易である。
固定化担体としてアルギン酸カルシウム(CA)ゲルを採用し、第1高分子にポリエチレンイミン(PEI)を採用した場合は、アルギン酸カルシウムゲルに対するポリエチレンイミンの固定化率を高めるために、2万ダルトン以上、より好ましくは7万ダルトン以上の分子量のポリエチレンイミンを用いることが望ましい。
ここで、上記構成のキレート剤は、好適には、該キレート剤を固定したビーズ(例えば、アルギン酸カルシウムビーズ)群をカラム容器(又はカラム塔)に詰めた状態で使用する。より具体的には、重金属を含む底泥や土壌について、該重金属を水溶液に溶出させる前処理(例えば、酸処理)を行なった後、この処理水溶液を前記カラム容器に流し入れることによって、キレート剤で重金属を捕捉するという方法が採用される。
また、本発明では、キレート剤を乾燥処理することによって、該キレート剤中の水分容積を減少させることにより、カラム容器に対するキレート剤充填量を増加させて、重金属捕捉の能力又は効率を高めるように工夫することができる。
ここで、本発明に係るキレート剤は、クロム、カドミウム、銅、ニッケル、鉛、亜鉛などの有害重金属の捕捉に有効であるが、処理対象の重金属含有水溶液の pH 領域に応じた各リガンドの帯電状態に基づいて、三価クロム(Cr(III))や六価クロム(Cr(VI))の捕捉を行うことができるという特徴を有している。
例えば、pH2を超える領域では、窒素型リガンドのキレート作用と、負に帯電した酸素型リガンド(例えば、−O)がキレート作用と共に陽イオンである三価クロム(Cr(III))をイオン結合で捕捉し、pH2以下の領域では、窒素型リガンドがプロトン化(正帯電)することによって、陰イオンである CrO 2-(即ち、六価クロムの陰イオン状態)を有効にイオン結合で捕捉することができる。
本発明に係るキレート剤の三価クロム(Cr(III))捕捉(吸着)効果検証試験を実施した。比較例として、ポリエチレンイミン(PEI)を含まないアルギン酸カルシウム(CA)ビーズを用いた。本発明で使用したキレート剤の調整方法は、次の通りである。
(1)アルギン酸カルシュームビーズ(CA)の調整:3%アルギン酸ナトリウムを蒸留水で調整し、これを20%のCaCl溶液にペリスターポンプによって滴下させ、一昼夜放置させてゲル化させた。形成されたビーズは蒸留水中で保存した。
(2)本発明に係るキレート剤(CA-PEI)の調整:3%アルギン酸ナトリウム水溶液に分子量70,000のポリエチレンイミンを1%の濃度になるように添加して混合溶液を作製し、これを20%CaCl溶液に滴下し、一昼夜放置してゲル化させた。形成されたCA-PEIビーズは蒸留水中で保存した。
実験方法:80mg/Lの三価クロム水溶液20mLに、上記アルギン酸カルシウムビーズとCA-PEIビーズをそれぞれ、0〜2g添加し、30時間振とう機に掛けて吸着させた。吸着剤への吸着量は、三価クロム水溶液の初期濃度と吸着終了後の濃度差より算出した。なお、三価クロムはpH>4において沈殿を生じるため、三価クロム水溶液の調整には燐酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)を用いた。
本実験の結果を図1に示した。この図1の三価クロム(Cr(III))に対する吸着等温曲線に示されているように、本発明に係るキレート剤(図1中、CA-PEI)は、カルシウム-アルギン酸ビーズ(図1中、Ca-Alginate)と比較して、低濃度領域の三価クロム(Cr(III))を効率良く捕捉(吸着)できることを検証することができた。また、窒素型リガンド、酸素型リガンド共に三価クロム(Cr(III))の捕捉能力を有していることも明らかである。
本発明に係るキレート剤の低pH領域(<pH2)における六価クロム(Cr(VI))捕捉(吸着)効果検証試験を実施した。比較例として、カルシウム-アルギン酸ビーズを用いた。なお、本実験で使用したキレート剤は、実施例1と同様である。
実験方法:重クロム酸カリを用いて六価クロム(Cr(VI))濃度を10mg/Lに調整した水溶液(pH<2)に、実施例1と同様の方法で調整したアルギン酸カルシウムビーズおよびCA-PEIビーズを添加し、吸着に伴う水溶液中の六価クロム(Cr(VI))の濃度変化を測定した。
本実験の結果を図2に示した。この図2の吸着経時曲線に示されているように、本発明に係るキレート剤(図2中、CA-PEI)は、六価クロム(Cr(VI))を短時間で効率良く捕捉(吸着)できることを検証できた。一方、カルシウム-アルギン酸ビーズ(図2中、Ca-Alginate)にはこの捕捉能力の無いことが明らかになった。
これは、低pH領域においてポリエチレンイミンのアミノ基(窒素リガンド)はプロトン化して、陰イオンである六価クロムイオン(CrO 2−)をイオン結合で捕捉するが、一方のカルシウム-アルギン酸の酸素リガンドは負に帯電しているため六価クロムイオン(CrO 2−)を捕捉できなかったものと推定できる。
このような吸着機構を模式的に図3に示す。この図3に示すように、キレート剤(CA-PEI)は、低いpH領域(pH<2)ではイオン結合によって六価クロム(Cr(VI))を吸着し、またpH2以上のpH領域では三価クロム(Cr(III))をキレート結合によって吸着する。
本発明に係るキレート剤の各種重金属に対する捕捉(吸着)効果検証試験を実施した。比較例として、カルシウム-アルギン酸ビーズを用いた。
実験方法:本発明に係るキレート剤およびカルシウム-アルギン酸ビーズの調整方法は前述のとおりである。重炭酸ソーダー緩衝液(pH4)を用いてクロム(Cr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)がほぼ10mg/Lになるように試料液を調整した。80mg/Lの試料液20mLに、アルギン酸カルシウムビーズおよびCA-PEIビーズをそれぞれ2g添加し、30時間振とう機に掛けて吸着させた。吸着剤への吸着量は、試料液中の各種重金属の初期濃度と吸着終了後の濃度差より算出した。
本実験の結果を図4に示した。この図4のグラフに示された結果から明らかなように、本発明に係るキレート剤(CA-PEI)は、クロム(Cr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)に対する広範な捕捉(吸着)能力を発揮することが明らかになった。
充填塔における重金属吸着実験。
(1)試料の調整:茨城県霞ヶ浦の底泥を酸処理によって重金属を溶出して重金属分析を実施し、濃度の低い重金属については添加してそれぞれの初濃度をほぼ10mg/Lになるように調整した。なお、この水溶液のpHは1.8であった。
(2)吸着カラムの調整:本発明に係るキレート剤(CA-PEI)20gを充填した3本のカラムを直列に連結し、カラム最上部より試料液を流速0.5ml/minの下降流で供給した。各カラムの容積は20mLであり、1カラム当たりの液滞留時間は40である。また、各カラムの連結部分には試料採取部を設けて、吸着実験時の濃度変化を求めた。
この実験で得られた各重金属 (Cr, Cd, Cu, Ni, Pb, Zn)の破過曲線を図5〜図10にそれぞれ示した。なお、図5〜10の横軸は破過時間、縦軸はカラム出口濃度と入り口濃度の比(cf/Ci)である。破過時間を、カラム出口濃度と入り口濃度の比(cf/Ci)が0.1に達した時間とすると、おおむね10〜12時間である。なお、底泥から大量に溶出するアルミニウム(Al)、鉄(Fe)の初濃度はそれぞれ317,263mg/Lであったが、これらの破過時間はそれぞれ13時間、16時間以上と良好に吸着された。
比較例であるキトサンを基材とした重金属キレート剤との六価クロム(Cr(VI))吸着性能の比較(回分実験)。
比較対象のキトサンを基材とした重金属キレート剤(以下、「比較例キレート剤」と称する。)として、市販のキレート剤キトパールCS-03を選択した。なお、このキトパールCS-03は、キトサンを基材とした優れた重金属キレート剤として知られている。この市販キレート剤と本発明に係るCA-PEIキレート剤の六価クロム(Cr(VI))吸着性能を比較検討することにより、本発明に係るCA-PEIキレート剤の特徴をさらに明らかにした。
CA-PEIキレート剤と比較例キレート剤0.15gをそれぞれpH2、初濃度 10mg/Lの六価クロム(Cr(VI))水溶液150mLに添加し、振とう機にかけて回分吸着実験を行い、ICP分析によって全クロム(Cr)を、またdiphenyl carbazide法によって六価クロム(Cr(VI))の経時変化を測定した。CA-PEIキレート剤の調整に際しては、アルギン酸の濃度を1.5,2.0,2.5,3.0%と変え、滴下法によって直径2〜3mmのゲルビーズと、2%アルギン酸でスプレイ法によって直径0.5mm程度の微小ゲルビーズを作製した。
両キレート剤の実験結果を図11に示した。この図11から明らかなように、滴下法で調整したCA-PEIキレート剤の吸着速度は、アルギン酸濃度の影響を顕著に受け、1.5%アルギン酸の場合にキトパールの吸着速度と同等の値を示した。アルギン酸濃度の減少に伴ってゲルビーズの孔径が大きくなり、内部拡散抵抗が減少するためと考えられる。
また、スプレイ法で調整した2%アルギン酸CA-PEIキレート剤の吸着速度もキトパールと同等の吸着速度を示し、微小化の効果の大きいことを示している。CA-PEIキレート剤の吸着速度は、アルギン酸濃度とビーズの粒子径を選択することによって、市販の比較例キレート剤に匹敵するものを調整できることが明らかである。
一方、この図11より、本発明に係るCA-PEIキレート剤は、市販の比較例キレート剤に無い機能を有することも明らかとなった。市販の比較例キレート剤を用いた場合、吸着によって全クロム(Cr)の濃度は急激に減少するが、時間の経過に伴って再び増加している。一方、本発明に係るCA-PEIキレート剤では、このような“より戻し現象”は見られず、吸着された六価クロム(Cr(VI))は確実に捕捉されている。
この“より戻し現象”は、比較例キレート剤(キトパールCS-03)に吸着された六価クロム(Cr(VI))が三価クロム(Cr(III))に還元されて溶出したことに起因している。“より戻り”後の水中には、六価クロム(Cr(VI))は存在せず、全クロム(Cr)は三価クロム(Cr(III))であること、またこの吸着実験中における比較例キレート剤(キトパールCS-03)の色の変化からもこのことが容易に推定される。
即ち、未使用の比較例キレート剤(キトパールCS-03)は白色であるが、六価クロム(Cr(VI))の吸着によって黄色に変化し、時間の経過によって色が消失した。一方、本発明に係るCA-PEIキレート剤においても吸着した六価クロム(Cr(VI))の三価クロム(Cr(III))への変化は起こるが、この陽イオンである三価クロム(Cr(III))はアルギン酸のカルボキシル基によって捕捉され、水中に溶出することは無い。
これらの様子はゲルビーズの色の変化によっても観察できる。即ち、六価クロム(Cr(VI))の吸着によって一旦は黄色に変化し、ついで三価クロム(Cr(III))の緑色に変わる。これらの事実は、アミノ基を有する窒素型キレート剤は、低pH領域ではアミノ基がプロトン化されており陰イオンの六価クロム(Cr(VI))をイオン結合で捕捉するが、還元によって生じる陽イオンの三価クロム(Cr(III))に対しては全く無力である。窒素型―酸素型ハイブリッド型の本発明に係るキレート剤では、酸素型リガンドが低pH領域においても陽イオンの捕捉能力を保持しており、窒素型リガンドの欠点を補っている。
市販の比較例キレート剤(キトパールCS-03)との六価クロム(Cr(VI))性能の比較実験(カラム吸着実験)。
湿潤タイプの比較例キレート剤(キトパールCS-03)と本発明に係るCA-PEIキレート剤20gをそれぞれ内径16mm、充填容積5mLのカラム3本に充填し、六価クロム(Cr(VI))水溶液(濃度5mg/L、pH2)を15mL/h(滞留時間1時間)で流入させ、カラム出口での全クロム(Cr)、六価クロム(Cr(VI))を測定した。なお、420mLを供給した後(28時間後)から、供給速度を30mL/h(滞留時間30分)に増加させた。
これらの破過曲線を図12に示した。回分実験(実施例5)で明らかになった本発明に係るキレート剤(CA-PEI)の優位性は、この破過曲線にも顕著に現れている。本発明に係るキレート剤は、キレート剤容積の100倍の六価クロム(Cr(VI))水溶液を処理しても未だ破過には至らず、市販の比較例キレート剤よりも優れた性能を示した。
本発明に係るキレート剤が充填塔で利用されることを想定して、乾燥処理を施した本発明に係るキレート剤の重金属捕捉能力が向上するか否かについての検証実験を行った。
当該キレート吸着剤の実際的な利用は、一般は充填塔で行われる。この充填塔の単位容積あたりの吸着能力を高めるためには、吸着剤の容積を下げることが極めて有効であると考えられる。そこで、ポリエチレンイミン(PEI)をアルギン酸カルシウム(CA)で固定化したビーズ容積の大半は水であるため、これを乾燥させることによって充填塔単位容積あたりの吸着能を高めることを試みた。その結果、減圧乾燥によって前記ビーズ容積は87.5%に、質量では90%の減少が達成された。
続いで、乾燥させたキレート剤(PEI-CA)の吸着量および吸着速度特性を明らかにするため下記の実験をさらに実施した。六価クロム(Cr(VI))10.4mg/L、pH1.8の水溶液を25℃、50℃に調整し、これに湿潤基準で0.1、0.25、0.5gの湿潤CA-PEI及び乾燥CA-PEIを添加して、2時間の懸濁吸着処理を行った。その結果を図13に示した。
この図13(表)に示された結果から、乾燥CA-PEIは、湿潤 CA-PEIと同等の吸着能を有しており、さらに50℃においても膨潤することなく安定した形状を維持した。このことから、乾燥CA-PEIを充填したカラムの吸着容量は、湿潤CA-PEIを充填した場合に比して8倍に増大される。また、吸着速度は、図14で示されるように、乾燥によって担体内部の拡散抵抗が増加して若干の低下は見られたが実用的に大きな問題ではないものと考えられる。
本発明に係る重金属捕捉用キレート剤は、大量の土壌(例えば、浚渫土)の重金属処理に特に適している。特に、乾燥処理を施したものは、カラム充填塔における利用に好適である。
実施例1に係る実験結果を示す図(ハイブリッド吸着剤 (CA-PEI) とアルギン酸CaのCr(III)に対する吸着等温吸着曲線)である。 実施例2に係る実験結果を示す図(低pH領域(<pH2)におけるハイブリッド吸着剤(CA-PEI)によるCr(VI)の吸着、初期六価クロムCr(VI) 濃度:10mg/L)である。 低pH領域における六価クロム(Cr(VI))の吸着機構を示す図(低pH領域においてポリエチレンイミンの六価クロムイオン(CrO72−)の吸着機構、及びカルシウム-アルギン酸が六価クロムイオン(CrO72−)を捕捉できない機構を模式的に示す図)である。 実施例3(本発明に係るキレート剤の各種重金属に対する捕捉(吸着)効果検証実験)に係る実験結果を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られたクロム(Cr)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られたカドミウム(Cd)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られた銅(Cu)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られたニッケル(Ni)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られた鉛(Pb)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例4に係る実験で得られた亜鉛(Zn)の破過曲線を示す図(グラフ)である。 実施例5に係る実験(比較例であるキトサンを基材とした重金属キレート剤との六価クロム(Cr(VI))吸着性能の比較回分実験)の結果を示す図(グラフ)である。 実施例6に係る実験(市販の比較例キレート剤(キトパールCS-03)との六価クロム(Cr(VI))性能の比較実験(カラム吸着実験))の結果を示す図(グラフ)である。 実施例7に係る実験(乾燥処理を施した本発明に係るキレート剤の重金属捕捉能力向上を検証する実験)の結果を示す図(表)である。 実施例7に係る実験(湿潤Ca-PEI(●dried resin)と乾燥Ca-PEI(◆dried resin)による六価クロム(Cr(VI))の吸着速度比較実験)の結果を示す図(グラフ)である。

Claims (4)

  1. 窒素型リガンドを有する第1高分子の存在下で、酸素型リガンドを有し、かつ、ゲル化可能な第2高分子をゲル化することにより得られ、不溶性担体に前記窒素型リガンドと前記酸素型リガンドとが固定化された構成の重金属捕捉用キレート剤。
  2. 前記第1高分子はポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1記載の重金属捕捉用キレート剤。
  3. 前記第2高分子はアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の重金属捕捉用キレート剤。
  4. 乾燥処理されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の重金属捕捉用キレート剤。
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