JP2008198447A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒金属の劣化に起因する電池性能の低下が少ない固体高分子型燃料電池を提供すること。
【解決手段】電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、前記膜電極接合体のいずれか1以上の部分に含まれる、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩とを備えた固体高分子型燃料電池。電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、前記電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部とイオン交換されたCsイオンとを備えた固体高分子型燃料電池。
【選択図】なし
【解決手段】電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、前記膜電極接合体のいずれか1以上の部分に含まれる、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩とを備えた固体高分子型燃料電池。電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、前記電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部とイオン交換されたCsイオンとを備えた固体高分子型燃料電池。
【選択図】なし
Description
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等として好適な固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた全フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含まない電解質。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。
また、全フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含み、C−F結合を含まない電解質)、又は、部分フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む電解質)の使用も検討されている。
また、全フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含み、C−F結合を含まない電解質)、又は、部分フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む電解質)の使用も検討されている。
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として実用化するためには、解決すべき課題が残されている。例えば、固体高分子型燃料電池を低コスト化するためには、白金等の高価な貴金属触媒の使用量を低減する必要があり、そのためには、微細な触媒粒子を均一に分散させる必要がある。しかしながら、貴金属触媒は、担体表面において凝集しやすいという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、白金を担持したカーボン粉末にニッケル及びコバルトの化合物を担持させ、熱処理によってこれらを合金化させ、酸処理によって合金化していないニッケル及びコバルトを溶解抽出させ、不活性ガス中で加熱乾燥させる白金合金触媒の製造方法が開示されている。同文献には、酸処理によって白金と合金化していないニッケル等が除去されるので、長時間、安定した電位を保つことができる点が記載されている。
例えば、特許文献1には、白金を担持したカーボン粉末にニッケル及びコバルトの化合物を担持させ、熱処理によってこれらを合金化させ、酸処理によって合金化していないニッケル及びコバルトを溶解抽出させ、不活性ガス中で加熱乾燥させる白金合金触媒の製造方法が開示されている。同文献には、酸処理によって白金と合金化していないニッケル等が除去されるので、長時間、安定した電位を保つことができる点が記載されている。
また、特許文献2には、導電性担体に担持された白金系貴金属触媒を空気中50〜90℃でアニール処理することにより得られる固体高分子型燃料電池用電極触媒が開示されている。同文献には、アニール処理によって白金系貴金属触媒の表面に、所定量の酸素が保持・固定されるので、触媒の耐久性が向上する点が記載されている。
さらに、特許文献3には、白金とコバルトの合金よりなり、白金の割合が原子比で67%以上75%であるリン酸型燃料電池用カソード触媒が開示されている。同文献には、白金とコバルトを合金化させることによって合金相が安定化するので、触媒の耐久性が向上する点が記載されている。
一般に、燃料電池の空気極の触媒として使用される白金族元素(例えば、Pt)は、運転中に溶出あるいは粒成長をきたし、電池性能が低下することが知られている。また、燃料極の触媒として使用されるPt−Ru合金においても、PtやRuの溶出あるいは粒成長により、電池性能が低下すると言われている。これらの電極の劣化は、運転電位の変動で促進されることが知られている。
これらによる電池性能低下を防止するために、特許文献1〜3に記載されるような対策が考えられているが、十分ではない。
これらによる電池性能低下を防止するために、特許文献1〜3に記載されるような対策が考えられているが、十分ではない。
本発明が解決しようとする課題は、触媒金属の劣化に起因する電池性能の低下が少ない固体高分子型燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る固体高分子型燃料電池は、
電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のいずれか1以上の部分に含まれる、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩と
を備えている。
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池の2番目は、
電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部とイオン交換されたCsイオンと
を備えている。
電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のいずれか1以上の部分に含まれる、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩と
を備えている。
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池の2番目は、
電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部とイオン交換されたCsイオンと
を備えている。
電池性能の低下の原因の一つに、ハロゲンイオン、特に、Cl-イオンの影響が考えられている。Cl-イオンは、MEAの製造工程において不純物としてはじめから存在するものと、運転中に空気極側から大気の塵埃(海水飛沫、融雪塩等)や雨水から燃料電池内部にフィルターを通過して混入するものとがある。MEA中にCl-イオンが存在すると、白金族元素がイオン(例えば、Ptの場合は、PtCl4 2-やPtCl6 2-など)となって溶解し、触媒層から失われる。
これに対し、製造されたMEAをCs+イオンと接触させると、MEA中に不純物として存在するCl-イオンがCs2PtCl6のような難溶性塩として固定される。また、Cs+イオンを徐々に放出する程度の難溶性を持つCs塩(例えば、CsAl2F5など)を予めMEAのいずれかの部分に固定し、及び/又は、電解質の酸基のプロトンの一部をCs+イオンでイオン交換しておくと、Cs塩から除々に放出されたCs+イオン又は酸基と結合しているCs+イオンが、MEAに予め存在し又は外部から侵入したCl-イオンをCs2PtCl6のような難溶性塩として固定する。そのため、Cl-イオンに起因する電池性能の低下を抑制することができる。
これに対し、製造されたMEAをCs+イオンと接触させると、MEA中に不純物として存在するCl-イオンがCs2PtCl6のような難溶性塩として固定される。また、Cs+イオンを徐々に放出する程度の難溶性を持つCs塩(例えば、CsAl2F5など)を予めMEAのいずれかの部分に固定し、及び/又は、電解質の酸基のプロトンの一部をCs+イオンでイオン交換しておくと、Cs塩から除々に放出されたCs+イオン又は酸基と結合しているCs+イオンが、MEAに予め存在し又は外部から侵入したCl-イオンをCs2PtCl6のような難溶性塩として固定する。そのため、Cl-イオンに起因する電池性能の低下を抑制することができる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を備えている。また、固体高分子型燃料電池は、通常、このようなMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを複数個積層したものからなる。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を備えている。また、固体高分子型燃料電池は、通常、このようなMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを複数個積層したものからなる。
本発明において、固体高分子電解質膜の材質は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。
すなわち、固体高分子電解質膜の材質は、高分子鎖内にC−H結合を含み、かつC−F結合を含まない炭化水素系電解質、及び高分子鎖内にC−F結合を含むフッ素系電解質のいずれであっても良い。また、フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む部分フッ素系電解質であっても良く、あるいは、高分子鎖内にC−F結合を含み、かつC−H結合を含まない全フッ素系電解質であっても良い。
なお、フッ素系電解質は、フルオロカーボン構造(−CF2−、−CFCl−)の他、クロロカーボン構造(−CCl2−)や、その他の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基)を備えていてもよい。また、固体高分子電解質膜を構成する高分子の分子構造は、特に限定されるものではなく、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良く、あるいは環状構造を備えていても良い。
すなわち、固体高分子電解質膜の材質は、高分子鎖内にC−H結合を含み、かつC−F結合を含まない炭化水素系電解質、及び高分子鎖内にC−F結合を含むフッ素系電解質のいずれであっても良い。また、フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む部分フッ素系電解質であっても良く、あるいは、高分子鎖内にC−F結合を含み、かつC−H結合を含まない全フッ素系電解質であっても良い。
なお、フッ素系電解質は、フルオロカーボン構造(−CF2−、−CFCl−)の他、クロロカーボン構造(−CCl2−)や、その他の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基)を備えていてもよい。また、固体高分子電解質膜を構成する高分子の分子構造は、特に限定されるものではなく、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良く、あるいは環状構造を備えていても良い。
また、固体高分子電解質に備えられる酸基の種類についても、特に限定されるものではない。酸基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基等がある。固体高分子電解質には、これらの酸基の内、いずれか1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。さらに、これらの酸基は、直鎖状固体高分子化合物に直接結合していても良く、あるいは、分枝状固体高分子化合物の主鎖又は側鎖のいずれかに結合していても良い。
炭化水素系電解質としては、具体的には、
(1)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテル等、及びこれらの誘導体(脂肪族炭化水素系電解質)、
(2)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン、芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等、及びこれらの誘導体(部分芳香族炭化水素系電解質)、
(3)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等、及びこれらの誘導体(全芳香族炭化水素系電解質)、
等が好適な一例として挙げられる。
(1)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテル等、及びこれらの誘導体(脂肪族炭化水素系電解質)、
(2)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン、芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等、及びこれらの誘導体(部分芳香族炭化水素系電解質)、
(3)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等、及びこれらの誘導体(全芳香族炭化水素系電解質)、
等が好適な一例として挙げられる。
また、部分フッ素系電解質としては、具体的には、高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(以下、これを「PS−g−ETFE」という。)、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
また、全フッ素系電解質としては、具体的には、デュポン社製ナフィオン(登録商標)、旭化成(株)製アシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)製フレミオン(登録商標)等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
また、全フッ素系電解質としては、具体的には、デュポン社製ナフィオン(登録商標)、旭化成(株)製アシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)製フレミオン(登録商標)等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
さらに、本発明において、MEAを構成する固体高分子電解質膜は、固体高分子電解質のみからなるものであっても良く、あるいは、多孔質材料、長繊維材料、短繊維材料等からなる補強材を含む複合体であっても良い。
これらの中でも、フッ素系電解質、特に全フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−F結合を有しており、耐酸化性に優れているので、これに対して本発明を適用すれば、耐酸化性及び耐久性に優れた固体高分子型燃料電池が得られる。
MEAを構成する電極は、通常、触媒層と拡散層の二層構造を取るが、触媒層のみによって構成される場合もある。電極が触媒層と拡散層の二層構造を取る場合、電極は、触媒層を介して電解質膜に接合される。
触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、電極触媒又は電極触媒を担持した担体と、その周囲を被覆する触媒層内電解質とを備えている。一般に、電極触媒には、MEAの使用目的、使用条件等に応じて最適なものが用いられる。固体高分子型燃料電池の場合、電極触媒には、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等若しくはこれらの合金、又は、Pt等の貴金属とコバルト、鉄、ニッケル等の遷移金属元素との合金が用いられる。触媒層に含まれる電極触媒の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
触媒担体は、微粒の電極触媒を担持すると同時に、触媒層における電子の授受を行うためのものである。触媒担体には、一般に、カーボン、活性炭、フラーレン、カーボンナノフォーン、カーボンナノチューブ等が用いられる。触媒担体表面への電極触媒の担持量は、電極触媒及び触媒担体の材質、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な担持量が選択される。
触媒層内電解質は、固体高分子電解質膜と電極との間でプロトンの授受を行うためのものである。触媒層内電解質には、通常、固体高分子電解質膜を構成する材料と同一の材料が用いられるが、異なる材料を用いても良い。触媒層内電解質の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
拡散層は、触媒層との間で電子の授受を行うと同時に、反応ガスを触媒層に供給するためのものである。拡散層には、一般に、カーボンペーパ、カーボンクロス等が用いられる。また、撥水性を高めるために、カーボンペーパ等の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性高分子の粉末とカーボンの粉末との混合物(撥水層)をコーティングしたものを拡散層として用いても良い。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、MEAのいずれかの部分にCl-イオンに起因する白金族元素の溶出を抑制する溶出抑制手段を備えていることを特徴とする。
Cl-イオンに起因する電池性能低下を防ぐには、
(1) Clを材料から除去する、
(2) Clをイオンとして溶出させないように、難溶性化合物として固定する、
のいずれかの施策が考えられる。本発明は、上記(2)に関する。
溶出抑制手段は、具体的には、以下のようなものがある。これらの溶出抑制手段は、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
Cl-イオンに起因する電池性能低下を防ぐには、
(1) Clを材料から除去する、
(2) Clをイオンとして溶出させないように、難溶性化合物として固定する、
のいずれかの施策が考えられる。本発明は、上記(2)に関する。
溶出抑制手段は、具体的には、以下のようなものがある。これらの溶出抑制手段は、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[1. 難溶性塩(1)]
溶出抑制手段の第1の具体例は、MEAのいずれか1以上の部分に添加された、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩であって、MEAに予め存在するCl-イオンを難溶性化合物として固定するものである。
Csは、一般的に溶解度の高い化合物を形成する。しかしながら、Csを含む錯塩の中には難溶性であるものが知られている。従って、MEAに予め含まれるCl-イオンを、強酸性環境下においても溶解度が極めて小さい難溶性の錯塩として固定することができれば、Cl-イオンに起因する電池性能の低下を抑制することができる。
溶出抑制手段の第1の具体例は、MEAのいずれか1以上の部分に添加された、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩であって、MEAに予め存在するCl-イオンを難溶性化合物として固定するものである。
Csは、一般的に溶解度の高い化合物を形成する。しかしながら、Csを含む錯塩の中には難溶性であるものが知られている。従って、MEAに予め含まれるCl-イオンを、強酸性環境下においても溶解度が極めて小さい難溶性の錯塩として固定することができれば、Cl-イオンに起因する電池性能の低下を抑制することができる。
強酸性環境下においても溶解度が極めて小さい難溶性塩としては、具体的には、Csと、塩素と、白金族元素とを含むもの(以下、これを「塩素系錯塩」という)などがある。また、塩素系錯塩としては、具体的には、Cs2PtCl6、Cs2PdCl2、Cs2IrCl6、Cs2RhCl6などがある。MEAに予め含まれるCl-イオンは、これらのいずれか1つの錯塩として固定されていても良く、あるいは、2種以上の錯塩により固定されていても良い。
白金族元素は、Cl-イオンが共存する環境下では、Cs+イオンと極めて難溶性の高い錯塩を形成する。例えば、白金族元素がPtである場合、Cl-イオンが存在する環境下で微量のCs+イオンがPtの近傍に存在すると、次の(a)式に従って難溶性のCs2PtCl6が形成される。そのため、PtがPtCl6 2-となって沖合に拡散・溶解するのを防止することができる。他の白金族元素も同様である。
2Cs+ + 6Cl- + Pt4+ → Cs2PtCl6↓ ・・・(a)
2Cs+ + 6Cl- + Pt4+ → Cs2PtCl6↓ ・・・(a)
塩素系錯塩などの難溶性塩をMEAに固定する場合、難溶性塩は、電解質膜又は電極のいずれか一方にのみ固定されていても良く、あるいは、双方に固定されていても良い。また、電極が触媒層と拡散層の2層構造をとる場合、難溶性塩は、触媒層又は拡散層のいずれか一方にのみ固定されていても良く、あるいは、双方に固定されていても良い。
さらに、難溶性塩を拡散層に固定する場合、難溶性塩は、拡散層表面に形成される撥水層に固定されていても良く、あるいは、撥水層以外の場所に固定されていても良い。
さらに、難溶性塩を拡散層に固定する場合、難溶性塩は、拡散層表面に形成される撥水層に固定されていても良く、あるいは、撥水層以外の場所に固定されていても良い。
難溶性塩の固定量は、固定場所、MEAに予め不純物として含まれるCl-イオン量等に応じて、最適な量を選択する。一般に、製造直後にMEAに不純物として含まれるすべてのCl-イオンを難溶性塩として固定するのが好ましい。
[2. 難溶性塩(2)]
溶出抑制手段の第2の具体例は、MEAのいずれか1以上の部分に添加された、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩であって、MEAの外部から侵入するCl-イオンを難溶性化合物として固定するものである。
上述した塩素系錯塩は、強酸中において極めて安定であるので、MEA中において塩素系錯塩がイオンに分解する割合は、極めて小さい。一方、Csを含む錯塩であって、塩素系錯塩以外のものの中には、難溶性ではあるが、強酸に僅かに溶解するものがある。従って、このような難溶性塩を、Cs+イオン供給源としてMEAのいずれかに固定すれば、MEAに予め存在し又はMEAの外部から侵入するCl-イオンに起因する触媒金属の溶出を抑制することができる。
溶出抑制手段の第2の具体例は、MEAのいずれか1以上の部分に添加された、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩であって、MEAの外部から侵入するCl-イオンを難溶性化合物として固定するものである。
上述した塩素系錯塩は、強酸中において極めて安定であるので、MEA中において塩素系錯塩がイオンに分解する割合は、極めて小さい。一方、Csを含む錯塩であって、塩素系錯塩以外のものの中には、難溶性ではあるが、強酸に僅かに溶解するものがある。従って、このような難溶性塩を、Cs+イオン供給源としてMEAのいずれかに固定すれば、MEAに予め存在し又はMEAの外部から侵入するCl-イオンに起因する触媒金属の溶出を抑制することができる。
強酸性環境下においてCs+イオンを除々に放出するCs+イオン供給源となりうる難溶性塩としては、具体的には、Csと、フッ素と、白金族元素以外の金属元素とを含むもの(以下、これを「フッ素系錯塩」という)などがある。白金族元素以外の金属元素としては、具体的には、Al、Ga、Cr、Cu、Co、Ti、Zr、Ce、Laなどがある。これらは、単独で含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
また、フッ素系錯塩としては、具体的には、CsAl2F5、CsAl3F10、CsAlF4、Cs3AlF6、CsAlF4、CsAlF4・2H2O、Cs2AlF5・H2O、CsGaF4、CsGaF4・2H2O、Cs2CrF5・H2O、CsCrF6、Cs2CuF4、CsTiF4、Cs2TiF6、CsCeF5、CsCe2F7などがある。MEAには、これらのいずれか1つの錯塩が固定されていても良く、あるいは、2種以上の錯塩が固定されていても良い。
また、フッ素系錯塩としては、具体的には、CsAl2F5、CsAl3F10、CsAlF4、Cs3AlF6、CsAlF4、CsAlF4・2H2O、Cs2AlF5・H2O、CsGaF4、CsGaF4・2H2O、Cs2CrF5・H2O、CsCrF6、Cs2CuF4、CsTiF4、Cs2TiF6、CsCeF5、CsCe2F7などがある。MEAには、これらのいずれか1つの錯塩が固定されていても良く、あるいは、2種以上の錯塩が固定されていても良い。
MEAのいずれかの部分にフッ素系錯塩などの難溶性塩を固定すると、使用中にCs+イオンが徐々に微量溶出する。この時、MEAに予め存在し又はMEAの外部からCl-イオンが侵入すると、白金族元素を含む触媒金属表面において、Cs+イオンと、Cl-イオンと触媒金属に含まれる白金族元素とが反応し、触媒金属表面に塩素系錯塩が形成される。触媒金属表面に形成された塩素系錯塩は、Ptの溶出を阻止する一種の不働態被膜として機能する。その結果、白金族元素の溶出に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
なお、Cs+イオン放出源として機能する難溶性塩をMEAに添加すると、残存イオンとしてのF-やAlF4 -等の陰イオンが溶出し、悪影響を及ぼすおそれがある。従って、このような場合には、MEAのいずれかに、これらの陰イオンを固定するための無機イオン交換体を固定しておくことが好ましい。このような無機イオン交換体としては、具体的には、Ceの水和酸化物Ce(OH)3・nH2OやCeの酸化物CeO2などがある。
なお、Cs+イオン放出源として機能する難溶性塩をMEAに添加すると、残存イオンとしてのF-やAlF4 -等の陰イオンが溶出し、悪影響を及ぼすおそれがある。従って、このような場合には、MEAのいずれかに、これらの陰イオンを固定するための無機イオン交換体を固定しておくことが好ましい。このような無機イオン交換体としては、具体的には、Ceの水和酸化物Ce(OH)3・nH2OやCeの酸化物CeO2などがある。
フッ素系錯塩などの難溶性塩をMEAに固定する場合、難溶性塩は、電解質膜又は電極のいずれか一方にのみ固定されていても良く、あるいは、双方に固定されていても良い。また、電極が触媒層と拡散層の2層構造をとる場合、難溶性塩は、触媒層又は拡散層のいずれか一方にのみ固定されていても良く、あるいは、双方に固定されていても良い。
さらに、難溶性塩を拡散層に固定する場合、難溶性塩は、拡散層表面に形成される撥水層に固定されていても良く、あるいは、撥水層以外の場所に固定されていても良い。
さらに、難溶性塩を拡散層に固定する場合、難溶性塩は、拡散層表面に形成される撥水層に固定されていても良く、あるいは、撥水層以外の場所に固定されていても良い。
難溶性塩の固定量は、固定場所、MEAに予め存在し又は外部から侵入するCl-イオン量等に応じて、最適な量を選択する。一般に、難溶性塩の固定量が少なすぎると、十分な効果が得られない。一方、難溶性塩の固定量が過剰になると、電池性能が低下する。
例えば、電解質膜に難溶性塩を固定する場合、難溶性塩の添加量が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、電解質膜への難溶性塩の添加量は、Csとして0.01wt%以上が好ましい。
一方、電解質膜への難溶性塩の添加量が過剰になると、プロトン伝導性の阻害が大きく、電池性能を低下させる。また、膜の機械的性質が著しく低下し、膜が脆化する。従って、電解質膜への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0wt%以下が好ましい。
一方、電解質膜への難溶性塩の添加量が過剰になると、プロトン伝導性の阻害が大きく、電池性能を低下させる。また、膜の機械的性質が著しく低下し、膜が脆化する。従って、電解質膜への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0wt%以下が好ましい。
また、例えば、触媒層に難溶性塩を固定する場合、難溶性塩の添加量が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、触媒層への難溶性塩の添加量は、Csとして0.01wt%以上が好ましい。
一方、触媒層への難溶性塩の添加量が過剰になると、電池性能の低下が大きくなる。従って、触媒層への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0wt%以下が好ましい。
一方、触媒層への難溶性塩の添加量が過剰になると、電池性能の低下が大きくなる。従って、触媒層への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0wt%以下が好ましい。
また、例えば、電極が触媒層と拡散層の二層構造を取り、拡散層に難溶性塩を固定する場合、難溶性塩の固定量が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、拡散層への難溶性塩の添加量は、Csとして0.01mg/cm2以上が好ましい。
一方、拡散層への難溶性塩の添加量が過剰になると、Cs+イオンが触媒層の白金族元素と過剰に反応して、電池性能を低下させる場合がある。従って、拡散層への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0mg/cm2以下が好ましい。
一方、拡散層への難溶性塩の添加量が過剰になると、Cs+イオンが触媒層の白金族元素と過剰に反応して、電池性能を低下させる場合がある。従って、拡散層への難溶性塩の添加量は、Csとして1.0mg/cm2以下が好ましい。
[3. イオン交換]
溶出抑制手段の第3の具体例は、電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部をCsイオンとイオン交換することである。
MEAに予め不純物として存在しているCl-イオン、又は、外部から侵入したCl-イオンは、白金族元素と反応して錯イオンを形成する。この場合、電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部をCs+イオンとイオン交換しておくと、白金族元素を含む錯イオンが難溶性の錯塩として固定される。そのため、白金族元素の溶出を抑制することができる。
溶出抑制手段の第3の具体例は、電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部をCsイオンとイオン交換することである。
MEAに予め不純物として存在しているCl-イオン、又は、外部から侵入したCl-イオンは、白金族元素と反応して錯イオンを形成する。この場合、電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部をCs+イオンとイオン交換しておくと、白金族元素を含む錯イオンが難溶性の錯塩として固定される。そのため、白金族元素の溶出を抑制することができる。
イオン交換割合は、固定場所、MEAに予め不純物として存在するCl-イオン量、外部から侵入するCl-イオン量等に応じて、最適な量を選択する。一般に、イオン交換割合が少なすぎると、十分な効果が得られない。一方、イオン交換割合が過剰になると、電池性能が低下する。
ここで、「イオン交換割合」とは、電解質膜又は触媒層内電解質に含まれる酸基の数に対するイオン交換された酸基の数の割合(%)をいう。
ここで、「イオン交換割合」とは、電解質膜又は触媒層内電解質に含まれる酸基の数に対するイオン交換された酸基の数の割合(%)をいう。
例えば、電解質膜をイオン交換する場合、イオン交換割合が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、イオン交換割合は、0.1%以上が好ましい。
一方、電解質膜のイオン交換割合が高すぎると、プロトン伝導性を阻害し、電池性能が大きく低下する。従って、イオン交換割合は、40%以下が好ましい。
同様に、触媒層内電解質をイオン交換する場合、イオン交換割合が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、イオン交換割合は、0.1%以上が好ましい。
一方、触媒層内電解質のイオン交換割合が高すぎると、プロトン伝導性を阻害し、電池性能が大きく低下する。従って、イオン交換割合は、40%以下が好ましい。
一方、電解質膜のイオン交換割合が高すぎると、プロトン伝導性を阻害し、電池性能が大きく低下する。従って、イオン交換割合は、40%以下が好ましい。
同様に、触媒層内電解質をイオン交換する場合、イオン交換割合が少なすぎると、耐久性向上の効果が見られない。従って、イオン交換割合は、0.1%以上が好ましい。
一方、触媒層内電解質のイオン交換割合が高すぎると、プロトン伝導性を阻害し、電池性能が大きく低下する。従って、イオン交換割合は、40%以下が好ましい。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池の製造方法について説明する。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、以下のような方法により製造することができる。なお、以下の方法は、それぞれ、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、以下のような方法により製造することができる。なお、以下の方法は、それぞれ、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[1. 粉体添加法]
第1の方法は、Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体を合成し、これをMEAのいずれかの部分に固定する方法である。
Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体は、難溶性塩を構成する元素を含む単純化合物を水溶液中において反応させることにより合成することができる。例えば、CsAl2F5のようなフッ素系錯塩は、水酸化アルミニウムをHF水溶液に溶かし、これにCs2CO3を添加することにより合成することができる。
第1の方法は、Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体を合成し、これをMEAのいずれかの部分に固定する方法である。
Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体は、難溶性塩を構成する元素を含む単純化合物を水溶液中において反応させることにより合成することができる。例えば、CsAl2F5のようなフッ素系錯塩は、水酸化アルミニウムをHF水溶液に溶かし、これにCs2CO3を添加することにより合成することができる。
Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体を含む電解質膜は、
(1) 難溶性塩を固体高分子電解質又はその前駆体(例えば、ナフィオン(登録商標)のスルホニルフルオライド体)に加えて湿式又は乾式で混練し、膜化する第1の方法(キャスト法)、
(2) 難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを電解質膜又はその前駆体の表面に、散布、噴霧又は塗布(ドクターブレードを含む。以下同じ。)する第2の方法、
(3) 補強材の表面に、上述した第2の方法を用いて難溶性塩を固定し、この補強材と固体高分子電解質又はその前駆体とを湿式又は乾式で複合化させる第3の方法、
(4) これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
(1) 難溶性塩を固体高分子電解質又はその前駆体(例えば、ナフィオン(登録商標)のスルホニルフルオライド体)に加えて湿式又は乾式で混練し、膜化する第1の方法(キャスト法)、
(2) 難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを電解質膜又はその前駆体の表面に、散布、噴霧又は塗布(ドクターブレードを含む。以下同じ。)する第2の方法、
(3) 補強材の表面に、上述した第2の方法を用いて難溶性塩を固定し、この補強材と固体高分子電解質又はその前駆体とを湿式又は乾式で複合化させる第3の方法、
(4) これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体を含む触媒層は、
(1) 電極触媒又は電極触媒を担持させた担体と、触媒層内電解質とを含む溶液(以下、これを「触媒インク」という)に難溶性塩を加え、ポリテトラフルオロエチレンシート等の高分子材料からなる基体の表面に噴霧又は塗布する第1の方法(触媒スラリー添加法)、
(2) 電解質膜表面又は拡散層の表面に、直接、難溶性塩を含む触媒インクを噴霧又は塗布する第2の方法(触媒スラリー添加法)、
(3) 難溶性塩を含まない触媒インクを用いて触媒層を形成し、難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを触媒層の表面に散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4) これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
(1) 電極触媒又は電極触媒を担持させた担体と、触媒層内電解質とを含む溶液(以下、これを「触媒インク」という)に難溶性塩を加え、ポリテトラフルオロエチレンシート等の高分子材料からなる基体の表面に噴霧又は塗布する第1の方法(触媒スラリー添加法)、
(2) 電解質膜表面又は拡散層の表面に、直接、難溶性塩を含む触媒インクを噴霧又は塗布する第2の方法(触媒スラリー添加法)、
(3) 難溶性塩を含まない触媒インクを用いて触媒層を形成し、難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを触媒層の表面に散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4) これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
Cs+イオン供給源となる難溶性塩の粉体を含む拡散層は、
(1) 難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを、カーボンペーパー等の表面に、散布、噴霧又は塗布する第1の方法、
(2) 炭素粒子、撥水性粉末(例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末)、及び、難溶性塩を含むスラリーをカーボンペーパー等の表面に噴霧又は塗布し、難溶性塩を含む撥水層を形成する第2の方法(撥水スラリー添加法)、
(3) カーボンペーパー等の表面に難溶性塩を含まない撥水層を形成し、難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを撥水層の表面に、散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4)これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
(1) 難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを、カーボンペーパー等の表面に、散布、噴霧又は塗布する第1の方法、
(2) 炭素粒子、撥水性粉末(例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末)、及び、難溶性塩を含むスラリーをカーボンペーパー等の表面に噴霧又は塗布し、難溶性塩を含む撥水層を形成する第2の方法(撥水スラリー添加法)、
(3) カーボンペーパー等の表面に難溶性塩を含まない撥水層を形成し、難溶性塩又はこれを分散させたスラリーを撥水層の表面に、散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4)これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
[2. イオン交換法]
第2の方法は、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、Cs+イオンを含む溶液と接触させる方法である。
この方法により、
(1) MEAに予め含まれるCl-イオンを難溶性塩として固定し、
(2) MEAに予め含まれる不純物イオンをCs+イオン供給源となる難溶性塩として固定し、又は、
(3) 電解質膜若しくは触媒層内電解質内の酸基のプロトンの一部をCs+イオンでイオン交換する、
ことができる。
第2の方法は、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、Cs+イオンを含む溶液と接触させる方法である。
この方法により、
(1) MEAに予め含まれるCl-イオンを難溶性塩として固定し、
(2) MEAに予め含まれる不純物イオンをCs+イオン供給源となる難溶性塩として固定し、又は、
(3) 電解質膜若しくは触媒層内電解質内の酸基のプロトンの一部をCs+イオンでイオン交換する、
ことができる。
MEAには、出発原料や製造工程に起因するCl-イオンが不純物として含まれている場合がある。従って、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、これらをCs+イオンを含む溶液と接触させると、例えば上述の(a)式に示すように、Cl-イオンを塩素系錯塩として固定することができる。
また、MEAには、Cl-イオン以外にも、Cs+イオン供給源となる難溶性塩を構成する不純物イオン(例えば、Al3+イオン)が含まれる場合がある。従って、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、これらをCs+イオンを含む溶液と接触させると、例えば次の(b)式に示すように、不純物イオン(Al3+イオン)をフッ素系錯塩として固定することができる。
3Cs+ + Al3+ + 6F- → Cs3AlF6↓ ・・・(b)
また、MEAには、Cl-イオン以外にも、Cs+イオン供給源となる難溶性塩を構成する不純物イオン(例えば、Al3+イオン)が含まれる場合がある。従って、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、これらをCs+イオンを含む溶液と接触させると、例えば次の(b)式に示すように、不純物イオン(Al3+イオン)をフッ素系錯塩として固定することができる。
3Cs+ + Al3+ + 6F- → Cs3AlF6↓ ・・・(b)
電解質膜、触媒層又はMEAをCs+イオンを含む溶液と接触させると、電解質膜又は触媒層に含まれる酸基のプロトンの全部又は一部がCs+イオンで置換される。従って、溶液中に含まれるCs+イオン濃度を最適化すれば、不純物イオンを塩素系錯塩又はフッ素系錯塩として固定すると同時に、電解質膜及び/又は触媒層に含まれる酸基のプロトンの一部をCs+イオンとイオン交換することができる。
また、Cs+イオンを含む溶液と接触させた後、酸洗等によりCs+イオンをほぼ完全に除去すれば、塩素系錯塩及び/又はフッ素系錯塩のみが固定されたMEAが得られる。
さらに、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、酸洗等により不純物イオンを除去した後、Cs+イオンを含む溶液と接触させると、実質的に塩素系錯塩及び/又はフッ素系錯塩を含まず、かつ、電解質の酸基のプロトンの一部がCs+イオンで置換されたMEAが得られる。
また、Cs+イオンを含む溶液と接触させた後、酸洗等によりCs+イオンをほぼ完全に除去すれば、塩素系錯塩及び/又はフッ素系錯塩のみが固定されたMEAが得られる。
さらに、電解質膜、触媒層若しくは拡散層を単独で、又は、MEAの状態で、酸洗等により不純物イオンを除去した後、Cs+イオンを含む溶液と接触させると、実質的に塩素系錯塩及び/又はフッ素系錯塩を含まず、かつ、電解質の酸基のプロトンの一部がCs+イオンで置換されたMEAが得られる。
所定量のCs+イオンを含む溶液と電解質膜等との接触は、浸漬、スプレー塗布、スピンコート等の方法により行うことができる。
Cs+イオンを含む溶液は、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、酸性フッ化セシウム、ヨウ化セシウム、臭素化セシウム等の水溶性塩を水に溶解することにより得られる。塩化セシウムは、塩素を含んでいるために使用は勧められない。また、Al3+イオンのような不純物イオンをCs+イオン供給源となる難溶性塩として固定する場合には、フッ化セシウム溶液を用いるのが好ましい。
Cs+イオンを含む溶液は、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、酸性フッ化セシウム、ヨウ化セシウム、臭素化セシウム等の水溶性塩を水に溶解することにより得られる。塩化セシウムは、塩素を含んでいるために使用は勧められない。また、Al3+イオンのような不純物イオンをCs+イオン供給源となる難溶性塩として固定する場合には、フッ化セシウム溶液を用いるのが好ましい。
不純物を難溶性塩として固定することに代えて、又は、これに加えて、電解質をイオン交換する場合、イオン交換処理に要する時間は、室温ではプロトンがCs+イオンにほぼ100%交換されるためには8hr以上を必要とする。一方、40℃以上の温度に加温すると、2〜4hr程度でイオン交換が進行する。従って、イオン交換は、加温して行うことが望ましい。
微量のCs+イオンを交換する場合には、処理液に含まれる対アニオンは微量であるため、電池性能を阻害することはなく、特に水洗を必要としない。但し、1%以上のCsイオン交換をする場合には、対アニオンの電極被毒が無視できず、また、凝縮水のイオン伝導度が増加し、配管等が腐食するおそれが生じる。このような高濃度のCs+イオン交換を行う場合には、処理液との接触後、十分に温水洗浄して、余剰のアニオンを除去することが好ましい。
微量のCs+イオンを交換する場合には、処理液に含まれる対アニオンは微量であるため、電池性能を阻害することはなく、特に水洗を必要としない。但し、1%以上のCsイオン交換をする場合には、対アニオンの電極被毒が無視できず、また、凝縮水のイオン伝導度が増加し、配管等が腐食するおそれが生じる。このような高濃度のCs+イオン交換を行う場合には、処理液との接触後、十分に温水洗浄して、余剰のアニオンを除去することが好ましい。
なお、電解質膜又は触媒層をイオン交換することに代えて、液状の電解質(例えば、ナフィオン(登録商標)ソルーション)の状態でイオン交換することもできる。しかしながら、この場合には、イオン交換後の水洗が困難であるので、イオン交換後にアニオン交換樹脂を通して、対アニオンを除去しておくことが好ましい。
また、液状の電解質には、通常、不純物有機物も含まれている。従って、対アニオンを除去すると同時に活性炭ろ過を行い、不純物有機物を除去するのが好ましい。不純物有機物を除去すると、不純物有機物の吸着による電池性能の低下を抑制することができる。
また、液状の電解質には、通常、不純物有機物も含まれている。従って、対アニオンを除去すると同時に活性炭ろ過を行い、不純物有機物を除去するのが好ましい。不純物有機物を除去すると、不純物有機物の吸着による電池性能の低下を抑制することができる。
[3. 電解法]
第3の方法は、MEAや拡散層(触媒層を形成してあるが、電解質膜が未接合の状態のもの)を陽極として、Csイオンを含む処理液中で電解する方法である。この方法により、MEAに予め含まれている不純物イオン(Cl-イオン、Al3+イオンなど)を難溶性塩として固定することができる。
対極は、同一の材料、あるいは、Ti、炭素材料、白金族のような不溶性材料で構成すればよい。通電方法は、少なくともPtがPt2+として溶出する電位(pH=0で1.0V以上)になるようにアノード分極することが必要である。また、さらにPt4+として溶出する高電位までアノード分極することが好ましい。このアノード分極の際に、難溶性Cs錯塩が形成される。
第3の方法は、MEAや拡散層(触媒層を形成してあるが、電解質膜が未接合の状態のもの)を陽極として、Csイオンを含む処理液中で電解する方法である。この方法により、MEAに予め含まれている不純物イオン(Cl-イオン、Al3+イオンなど)を難溶性塩として固定することができる。
対極は、同一の材料、あるいは、Ti、炭素材料、白金族のような不溶性材料で構成すればよい。通電方法は、少なくともPtがPt2+として溶出する電位(pH=0で1.0V以上)になるようにアノード分極することが必要である。また、さらにPt4+として溶出する高電位までアノード分極することが好ましい。このアノード分極の際に、難溶性Cs錯塩が形成される。
電極における難溶性Cs錯塩の必要量は、白金族表面を僅かに被覆する極微量でよいため、長時間の大電流密度の電解は不要である。通常、見かけの電極面積に対して、電流密度0.1〜10mA/cm2、時間1〜10分で十分な耐久向上効果が得られる。但し、電極細孔内部まで処理できるように、超音波振動や減圧処理を行い、処理液に付着した気泡を追い出した後、電解処理を行うことが望ましい。処理後に不要のイオンを除去するため、十分に加温水洗することが好ましい。
[4. 沈殿法]
第4の方法は、膜あるいは触媒層内電解質(処理基体)をイオン交換して酸体に変換する際に沈殿を生成させる方法(沈殿法)である。処理基体をCs+イオンと他のイオン(Al3+、Ga3+、Cr3+、Cu2+、Ti3+、Ce3+、Ce4+)の一種以上を含む溶液でイオン交換処理を行い、水洗後にフッ化水素酸と接触させ、水洗して酸体とすれば良い。例えば、他のイオンとしてAl3+を用いた場合の反応の一例は、
2Cs+ + Al3+ + 5HF + 2H2O → Cs2AlF5・H2O↓ + 5H+
と表せる。
第4の方法は、膜あるいは触媒層内電解質(処理基体)をイオン交換して酸体に変換する際に沈殿を生成させる方法(沈殿法)である。処理基体をCs+イオンと他のイオン(Al3+、Ga3+、Cr3+、Cu2+、Ti3+、Ce3+、Ce4+)の一種以上を含む溶液でイオン交換処理を行い、水洗後にフッ化水素酸と接触させ、水洗して酸体とすれば良い。例えば、他のイオンとしてAl3+を用いた場合の反応の一例は、
2Cs+ + Al3+ + 5HF + 2H2O → Cs2AlF5・H2O↓ + 5H+
と表せる。
[5. 支持体形成法]
第5の方法は、PTFE等の膜支持体に形成する方法(支持体形成法)である。これら支持体上に難溶性Cs錯塩の粉末をスラリーとして塗布・乾燥させるか、これら粉末のスパッタ等による物理的形成方法によっても良い。
第5の方法は、PTFE等の膜支持体に形成する方法(支持体形成法)である。これら支持体上に難溶性Cs錯塩の粉末をスラリーとして塗布・乾燥させるか、これら粉末のスパッタ等による物理的形成方法によっても良い。
[6. Csイオン接触法]
第6の方法は、Csイオンを含む溶液と接触させて、沈殿反応を起こさせ、拡散層と触媒層上に固定する方法(Csイオン接触法)である。難溶性Cs錯塩を形成するイオン(例えば、Cs+イオン、Ce3+イオン、F-イオン)を含む溶液と拡散層及び/又は触媒層と接触させればよい。
第6の方法は、Csイオンを含む溶液と接触させて、沈殿反応を起こさせ、拡散層と触媒層上に固定する方法(Csイオン接触法)である。難溶性Cs錯塩を形成するイオン(例えば、Cs+イオン、Ce3+イオン、F-イオン)を含む溶液と拡散層及び/又は触媒層と接触させればよい。
上述した各種の方法を用いて、電解質膜、触媒層及び拡散層のいずれか1以上を作製した後、電解質膜の両面に触媒層を接合し、さらに、必要に応じて、触媒層の表面に拡散層を接合すれば、MEAが得られる。あるいは、通常の方法を用いてMEAを作製した後、イオン交換法、電解法等を用いてMEAのいずれかに難溶性塩を固定し、及び/又は、Csイオンでイオン交換する。
さらに、得られたMEAの両面をガス流路を備えたセパレータで挟持してユニットセルとし、このユニットセルを複数個積層すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
さらに、得られたMEAの両面をガス流路を備えたセパレータで挟持してユニットセルとし、このユニットセルを複数個積層すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池の作用について説明する。
電池性能の低下の原因の一つに、ハロゲンイオン、特に、Cl-イオンの影響が考えられている。Cl-イオンは、微量の不可避的不純物として触媒層、電解質膜又は拡散層に含まれている。例えば、触媒担持には、白金族元素の塩化物錯体が使用されることが多く、担持後の洗浄においては完全なCl-イオンの除去が困難である。このCl-イオンが、白金族元素と錯イオンを形成し、触媒層から失われる。次の(c)式及び(d)式に、Ptの例を示す。
4Cl- + Pt2+ → PtCl4 2- ・・・(c)
6Cl- + Pt4+ → PtCl6 2- ・・・(d)
電池性能の低下の原因の一つに、ハロゲンイオン、特に、Cl-イオンの影響が考えられている。Cl-イオンは、微量の不可避的不純物として触媒層、電解質膜又は拡散層に含まれている。例えば、触媒担持には、白金族元素の塩化物錯体が使用されることが多く、担持後の洗浄においては完全なCl-イオンの除去が困難である。このCl-イオンが、白金族元素と錯イオンを形成し、触媒層から失われる。次の(c)式及び(d)式に、Ptの例を示す。
4Cl- + Pt2+ → PtCl4 2- ・・・(c)
6Cl- + Pt4+ → PtCl6 2- ・・・(d)
また、Cl-イオンは、運転中に空気極側から大気の塵埃(海水飛沫、融雪塩等)や雨水から燃料電池内部にフィルターを通過して混入することがある。そのため、材料の洗浄に注意を払い、かつ、システム内部にイオン交換樹脂を配置してCl-イオンを除去したとしても、長期の耐久性を確保することが困難であった。
さらに、Cl-イオンを固定するために、Cs+イオンの供給体として、別途、Cs+イオンを含有するタンクを備え付け、そこから供給することも考えられる。しかしながら、このような方法では、システムが複雑化・巨大化するため、現実的ではない。
さらに、Cl-イオンを固定するために、Cs+イオンの供給体として、別途、Cs+イオンを含有するタンクを備え付け、そこから供給することも考えられる。しかしながら、このような方法では、システムが複雑化・巨大化するため、現実的ではない。
これに対し、MEAに予め不純物として存在するCl-イオンを塩素系錯塩として固定すれば、Cl-イオンに起因する白金族元素の溶出を抑制することができる。また、MEAのいずれかの部分に、Cs+イオンを微量に放出するCs+イオン供給源を固定すれば、予め不純物として存在し、又は、外部から侵入するCl-イオンを塩素系錯塩として固定することができる。しかも、別途、Cs+イオンを含有するタンクを設ける必要がないので、システムを複雑化・巨大化させることもない。
(実施例1、比較例1〜8)
塩化白金酸0.2g/Lの水溶液5mlに各種塩化物水溶液(塩化物イオン濃度はすべて100ppm)1mlを添加し、室温1時間放置後に沈殿生成の有無を見た。表1に、その結果を示す。
沈殿が生成したものは、塩化セシウム溶液のみであった。この黄褐色物をろ過して水洗後にXRDで調査したところ、回折線プロファイルは、JCPDSカードのCs2PtCl6 29−414と一致した。
塩化白金酸0.2g/Lの水溶液5mlに各種塩化物水溶液(塩化物イオン濃度はすべて100ppm)1mlを添加し、室温1時間放置後に沈殿生成の有無を見た。表1に、その結果を示す。
沈殿が生成したものは、塩化セシウム溶液のみであった。この黄褐色物をろ過して水洗後にXRDで調査したところ、回折線プロファイルは、JCPDSカードのCs2PtCl6 29−414と一致した。
(実施例2〜7、比較例9)
[1. Cs、F、Alを含む錯塩の作製]
関東化学工業(株)製の試薬特級水酸化アルミニウム1Mを40wt%HF200mlに溶かし、アルミニウムのフルオロ錯体イオンAlF4 -を形成した。この水溶液に和光純薬工業(株)製の試薬特級Cs2CO3粉末0.5Mを少しずつかき混ぜながら添加し、生成したスラリーを80℃で1時間熟成した。熟成後、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ紙でろ過し、純水で洗浄し、60℃×4hr大気中で乾燥した。
得られた白色粉末のXRDによる回折線プロファイルは、含水フッ化アルミニウムとは異なる複雑な回折線を示し、CsとAlとF又はH2Oとの錯塩を形成していた。
[1. Cs、F、Alを含む錯塩の作製]
関東化学工業(株)製の試薬特級水酸化アルミニウム1Mを40wt%HF200mlに溶かし、アルミニウムのフルオロ錯体イオンAlF4 -を形成した。この水溶液に和光純薬工業(株)製の試薬特級Cs2CO3粉末0.5Mを少しずつかき混ぜながら添加し、生成したスラリーを80℃で1時間熟成した。熟成後、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ紙でろ過し、純水で洗浄し、60℃×4hr大気中で乾燥した。
得られた白色粉末のXRDによる回折線プロファイルは、含水フッ化アルミニウムとは異なる複雑な回折線を示し、CsとAlとF又はH2Oとの錯塩を形成していた。
[2. 電解質膜へのCs錯塩添加]
市販パーフルオロポリマー分散液(デュポン社製DE2020、ポリマー固形分約20wt%、溶媒はエタノールとプロパノールと水の混合溶媒)に、[1.]で作製したCe錯塩粉末をポリマー固形分重量に対し、Csとして0〜1.5wt%となるように加えて超音波で分散した。この溶液をPTFE製容器に入れ、室温で1晩放置して溶媒を除去した。その後、120℃で1hr大気中で乾燥して溶媒を除去し、膜厚50μmの膜を得た。
市販パーフルオロポリマー分散液(デュポン社製DE2020、ポリマー固形分約20wt%、溶媒はエタノールとプロパノールと水の混合溶媒)に、[1.]で作製したCe錯塩粉末をポリマー固形分重量に対し、Csとして0〜1.5wt%となるように加えて超音波で分散した。この溶液をPTFE製容器に入れ、室温で1晩放置して溶媒を除去した。その後、120℃で1hr大気中で乾燥して溶媒を除去し、膜厚50μmの膜を得た。
[3. MEAの作製]
次に、これらの膜を利用してMEAを作製した。電極は、Pt使用量が一定となるようにPTFEシート上にドクターブレード法により形成した。空気極のPt使用量は、0.5〜0.6mg/cm2、燃料極のPt使用量は、0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定となるようにした。このPtとカーボン粉末(ケッチェンブラック)とパーフルオロポリマー電解質からなる電極を36mm角に切り出し、電解質膜に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))してMEAを作製した。拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用い、電極面側にアセチレンブラックとPTFE粒子からなる撥水層を10mg/cm2の目付量になるようにスプレー塗布し、N2雰囲気炉で200℃×30分間の焼き付け処理を行って用いた。
次に、これらの膜を利用してMEAを作製した。電極は、Pt使用量が一定となるようにPTFEシート上にドクターブレード法により形成した。空気極のPt使用量は、0.5〜0.6mg/cm2、燃料極のPt使用量は、0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定となるようにした。このPtとカーボン粉末(ケッチェンブラック)とパーフルオロポリマー電解質からなる電極を36mm角に切り出し、電解質膜に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))してMEAを作製した。拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用い、電極面側にアセチレンブラックとPTFE粒子からなる撥水層を10mg/cm2の目付量になるようにスプレー塗布し、N2雰囲気炉で200℃×30分間の焼き付け処理を行って用いた。
[4. 耐久試験方法]
耐久試験は、以下の条件下で行った。
アノードガス:H2(100ml/min)
カソードガス:Air(100ml/min)
セル温度: 80℃
加湿器温度: 60℃(アノード側、カソード側ともに)
試験時間: 開回路1分、0.1A/cm2を1分とするサイクル試験を150時間
耐久試験前後で0.8A/cm2における電圧値とその低下割合を比較した。なお、耐久前の0.8A/cm2における電圧値を初期電圧として初期性能の目安とした。
耐久試験は、以下の条件下で行った。
アノードガス:H2(100ml/min)
カソードガス:Air(100ml/min)
セル温度: 80℃
加湿器温度: 60℃(アノード側、カソード側ともに)
試験時間: 開回路1分、0.1A/cm2を1分とするサイクル試験を150時間
耐久試験前後で0.8A/cm2における電圧値とその低下割合を比較した。なお、耐久前の0.8A/cm2における電圧値を初期電圧として初期性能の目安とした。
[5. 試験結果]
表2に、耐久試験の結果を示す。表2より、電解質膜にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表2より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5wt%のもの(実施例6)は、膜の機械的強度が非常に弱く、自立した膜として得ることができなかった。一方、添加量0.005%のもの(実施例7)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
表2に、耐久試験の結果を示す。表2より、電解質膜にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表2より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5wt%のもの(実施例6)は、膜の機械的強度が非常に弱く、自立した膜として得ることができなかった。一方、添加量0.005%のもの(実施例7)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
(実施例8〜14)
[1. 触媒層へのCs錯塩添加]
60wt%Pt/C触媒0.5gに、平均粒径2μmのCs錯塩粉末(実施例2〜7の[1.]で作製したもの)を、Csとして電極重量比0.01〜2wt%となるように加えた。これに、蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをPTFEシート上に塗布、乾燥して転写電極を得た。空気極のPt使用量は0.5〜0.6mg/cm2、燃料極のPt使用量は、0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定となるようにした。
これらの電極を36mm角に切り出し、F系電解質膜(ナフィオン(登録商標)112、膜厚50μm)の両面に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))してMEAを作製した。Ce錯塩粉末の添加は、空気極のみ、燃料極のみ、両極の各々とした。拡散層は、実施例2〜7の[3.]と同一のものを用いた。
[1. 触媒層へのCs錯塩添加]
60wt%Pt/C触媒0.5gに、平均粒径2μmのCs錯塩粉末(実施例2〜7の[1.]で作製したもの)を、Csとして電極重量比0.01〜2wt%となるように加えた。これに、蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをPTFEシート上に塗布、乾燥して転写電極を得た。空気極のPt使用量は0.5〜0.6mg/cm2、燃料極のPt使用量は、0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定となるようにした。
これらの電極を36mm角に切り出し、F系電解質膜(ナフィオン(登録商標)112、膜厚50μm)の両面に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))してMEAを作製した。Ce錯塩粉末の添加は、空気極のみ、燃料極のみ、両極の各々とした。拡散層は、実施例2〜7の[3.]と同一のものを用いた。
[2. 耐久試験方法]
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表3に、耐久試験の結果を示す。表3より、触媒層にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下割合は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表3より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5%のもの(実施例13)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が低くなった。一方、添加量0.007%のもの(実施例14)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表3に、耐久試験の結果を示す。表3より、触媒層にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下割合は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表3より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5%のもの(実施例13)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が低くなった。一方、添加量0.007%のもの(実施例14)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
(実施例15〜20)
[1. 拡散層へのCs錯塩添加]
拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用いた。電極面側に、アセチレンブラックと、PTFE粒子と、実施例2〜7の[1.]で作製したCs錯塩粉末をCsとして0.05〜1.5mg/cm2となるように添加した撥水層を、10mg/cm2の目付量となるようにスプレー塗布し、N2雰囲気炉で200℃×30分間の焼き付け処理を行った。以下、電解質膜にCs錯塩粉末を添加しなかった以外は、実施例2〜7の[3.]と同様の手順に従い、MEAを作製した。
[1. 拡散層へのCs錯塩添加]
拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用いた。電極面側に、アセチレンブラックと、PTFE粒子と、実施例2〜7の[1.]で作製したCs錯塩粉末をCsとして0.05〜1.5mg/cm2となるように添加した撥水層を、10mg/cm2の目付量となるようにスプレー塗布し、N2雰囲気炉で200℃×30分間の焼き付け処理を行った。以下、電解質膜にCs錯塩粉末を添加しなかった以外は、実施例2〜7の[3.]と同様の手順に従い、MEAを作製した。
[2. 耐久試験方法]
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表4に、耐久試験の結果を示す。表4より、拡散層にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下割合は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表4より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5mg/cm2のもの(実施例19)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が小さくなった。一方、添加量0.005mg/cm2のもの(実施例20)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表4に、耐久試験の結果を示す。表4より、拡散層にCs錯塩を添加したMEAの電圧低下割合は、Cs錯塩無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表4より、Cs錯塩の添加量が多くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
添加量1.5mg/cm2のもの(実施例19)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が小さくなった。一方、添加量0.005mg/cm2のもの(実施例20)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合は大きくなった。
(実施例21〜26)
[1. 電解質膜のCsイオン交換]
Csイオンを含む溶液として硫酸セシウムCs2SO4を用い、Csを1g/Lと0.1g/L含む母液を用意した。膜として、膜厚50μmのF系膜(ナフィオン(登録商標)112、大きさ36×36mm)を用意した。この膜の酸基密度は、0.98meq/gであった。この膜1枚を100mlの純水に沈め、それぞれ、膜の酸基が0.05〜50%置換するように、Csを含む母液を適量加えた。一晩室温で浸漬後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してMEAを形成する元膜とした。
MEAの作製は、電解質膜にCs錯塩を添加しなかった点を除き、実施例2〜7と同様とした。
[1. 電解質膜のCsイオン交換]
Csイオンを含む溶液として硫酸セシウムCs2SO4を用い、Csを1g/Lと0.1g/L含む母液を用意した。膜として、膜厚50μmのF系膜(ナフィオン(登録商標)112、大きさ36×36mm)を用意した。この膜の酸基密度は、0.98meq/gであった。この膜1枚を100mlの純水に沈め、それぞれ、膜の酸基が0.05〜50%置換するように、Csを含む母液を適量加えた。一晩室温で浸漬後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してMEAを形成する元膜とした。
MEAの作製は、電解質膜にCs錯塩を添加しなかった点を除き、実施例2〜7と同様とした。
[2. 耐久試験方法]
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表5に、耐久試験の結果を示す。表5より、Csイオン交換した電解質膜を用いたMEAの電圧低下割合は、Csイオン無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表5より、Csイオン交換割合が高くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
イオン交換割合0.05%のもの(実施例25)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合が大きくなった。一方、イオン交換割合50%のもの(実施例26)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が小さくなった。
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表5に、耐久試験の結果を示す。表5より、Csイオン交換した電解質膜を用いたMEAの電圧低下割合は、Csイオン無添加のMEA(比較例9)より小さいことがわかる。また、表5より、Csイオン交換割合が高くなるほど、電圧低下割合が小さくなることがわかる。
イオン交換割合0.05%のもの(実施例25)は、初期電圧は高いが、電圧低下割合が大きくなった。一方、イオン交換割合50%のもの(実施例26)は、電圧低下割合は小さいが、初期電圧が小さくなった。
(実施例27、比較例10〜12)
[1. イオン交換した触媒層を備えた試料極の作製]
厚さ0.1mm、大きさ25mm×25mmの炭素板(純度99.8%)上にスプレー塗布により、Pt/Cとナフィオン(登録商標)ソルーションとからなる触媒層を、Pt量として0.3〜0.4mg/cm2となるように形成し、120℃×30分の大気中加熱焼成により溶媒を除去した。
次に、この炭素板に形成された触媒層に含まれるナフィオンソルーションの酸基の40%相当をCs、K又はNaでイオン交換した。イオン交換処理は、炭素板1枚を、触媒層に含まれる酸基の40%に相当するイオンを含む硝酸塩水溶液100ml中に室温で1日浸漬し、その後イオン交換水で水洗することにより行った。なお、比較のため、イオン交換処理を行わない炭素板も作製した。
[1. イオン交換した触媒層を備えた試料極の作製]
厚さ0.1mm、大きさ25mm×25mmの炭素板(純度99.8%)上にスプレー塗布により、Pt/Cとナフィオン(登録商標)ソルーションとからなる触媒層を、Pt量として0.3〜0.4mg/cm2となるように形成し、120℃×30分の大気中加熱焼成により溶媒を除去した。
次に、この炭素板に形成された触媒層に含まれるナフィオンソルーションの酸基の40%相当をCs、K又はNaでイオン交換した。イオン交換処理は、炭素板1枚を、触媒層に含まれる酸基の40%に相当するイオンを含む硝酸塩水溶液100ml中に室温で1日浸漬し、その後イオン交換水で水洗することにより行った。なお、比較のため、イオン交換処理を行わない炭素板も作製した。
[2. Csイオン交換がPtの溶出を抑制していることを証明するモデル試験]
[1.]で作製した炭素板を試料極とし、白金箔を対極、白金線を参照極とする3極式O−リング押し付けセル(試料溶液6ml)でPtの溶解試験を行った。
試験は、試料極をポテンショスタットとファンクションジェネレータにつなぎ、高速の電位走査を繰り返して実施した。なお、参照極として用いた白金線の電位は、予めAg/AgClとの電位差を求めておき、標準水素電極電位に構成して用いた。
試料液は、0.1M H2SO4に100ppmのClを加えた水溶液(NaClで添加)とし、電位走査速度は1V/sec、電位掃引範囲は0.2V〜1.4V vs NHE、温度は20±1℃、時間は3時間とした。
試験後の溶液を0.45μmのPTFE製ろ紙でろ過し、ろ液中のPt溶解量をICP(誘導結合プラズマ発光分析法)で分析した。
[1.]で作製した炭素板を試料極とし、白金箔を対極、白金線を参照極とする3極式O−リング押し付けセル(試料溶液6ml)でPtの溶解試験を行った。
試験は、試料極をポテンショスタットとファンクションジェネレータにつなぎ、高速の電位走査を繰り返して実施した。なお、参照極として用いた白金線の電位は、予めAg/AgClとの電位差を求めておき、標準水素電極電位に構成して用いた。
試料液は、0.1M H2SO4に100ppmのClを加えた水溶液(NaClで添加)とし、電位走査速度は1V/sec、電位掃引範囲は0.2V〜1.4V vs NHE、温度は20±1℃、時間は3時間とした。
試験後の溶液を0.45μmのPTFE製ろ紙でろ過し、ろ液中のPt溶解量をICP(誘導結合プラズマ発光分析法)で分析した。
[3. 試験結果]
表6に、モデル試験の結果を示す。表6より、Csでイオン交換した試料極(実施例27)は、Naイオン(比較例10)若しくはKイオン(比較例11)でイオン交換した試料極、又は、イオン交換なし(比較例12)の試料極に比べて、Ptの溶出量が減少していることがわかる。
表6に、モデル試験の結果を示す。表6より、Csでイオン交換した試料極(実施例27)は、Naイオン(比較例10)若しくはKイオン(比較例11)でイオン交換した試料極、又は、イオン交換なし(比較例12)の試料極に比べて、Ptの溶出量が減少していることがわかる。
(実施例28〜30、比較例13)
[1. Csを含む溶液を用いたイオン洗浄によるMEAの製造]
塩化白金酸及び塩化ルテニウムを含む溶液を用いて、炭素微粒子にPt−Ru合金を担持した改質ガス燃料極用の触媒(Pt担持量45wt%)を用意した。この触媒0.1gを0.1M硫酸20mlに入れて超音波で攪拌後、80℃×4hrの処理を行い、0.1μmのPTFE製ろ紙でろ過し、触媒からのCl-イオンの抽出処理を行った。このろ液のイオンクロマト分析を行ったところ、Cl-イオン濃度は、0.5ppmであった。
また、同様に、空気極用の塩化白金酸から炭素担体に担持したPt触媒について、Cl-イオンの抽出処理を行ったところ、Cl-イオン濃度は、0.6ppmであった。
[1. Csを含む溶液を用いたイオン洗浄によるMEAの製造]
塩化白金酸及び塩化ルテニウムを含む溶液を用いて、炭素微粒子にPt−Ru合金を担持した改質ガス燃料極用の触媒(Pt担持量45wt%)を用意した。この触媒0.1gを0.1M硫酸20mlに入れて超音波で攪拌後、80℃×4hrの処理を行い、0.1μmのPTFE製ろ紙でろ過し、触媒からのCl-イオンの抽出処理を行った。このろ液のイオンクロマト分析を行ったところ、Cl-イオン濃度は、0.5ppmであった。
また、同様に、空気極用の塩化白金酸から炭素担体に担持したPt触媒について、Cl-イオンの抽出処理を行ったところ、Cl-イオン濃度は、0.6ppmであった。
一方、上記触媒1gを100ppmのCsと、酸化剤として0.3wt%のH2O2を含む硝酸セシウム水溶液200mlに入れて超音波を当てて、60℃で1時間混合した。なお、中途で2回減圧脱泡処理を行い、触媒の細孔内部までCsイオンが行き届くように注意した。その後、孔径0.1μmのPTFEろ紙でろ過し、イオン交換水で十分水洗し、80℃×2hrの真空加熱処理を行った。この触媒0.1gに対し、上記と同様のCl-イオンの抽出処理を行ったところ、Cl-イオン濃度は、いずれも0.1ppmに減少した。これにより、CsがClとPt又はRuと結合していることが示唆された。
得られた触媒を用いて、MEAを作製した。MEAの作製方法は、電解質膜として通常のF系電解質膜を用いた点、並びに、燃料極及び/又は空気極に硝酸セシウム洗浄処理を施したものを用いた点以外は、実施例2〜7と同様とした。
得られた触媒を用いて、MEAを作製した。MEAの作製方法は、電解質膜として通常のF系電解質膜を用いた点、並びに、燃料極及び/又は空気極に硝酸セシウム洗浄処理を施したものを用いた点以外は、実施例2〜7と同様とした。
[2. 耐久試験方法]
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表7に、耐久試験の結果を示す。表7より、硝酸セシウム洗浄処理を施した電極を用いたMEAの電圧低下割合は、無処理のMEA(比較例13)より小さいことがわかる。また、表7より、両極に硝酸セシウム洗浄処理を施したMEA(実施例28)の電圧低下割合は、一方の電極に硝酸セシウム洗浄処理を施したMEA(実施例29、30)より小さいことがわかる。
実施例2〜7と同一条件下で、耐久試験を行い、初期電圧及び耐久試験前後での電圧の低下割合を測定した。
[3. 試験結果]
表7に、耐久試験の結果を示す。表7より、硝酸セシウム洗浄処理を施した電極を用いたMEAの電圧低下割合は、無処理のMEA(比較例13)より小さいことがわかる。また、表7より、両極に硝酸セシウム洗浄処理を施したMEA(実施例28)の電圧低下割合は、一方の電極に硝酸セシウム洗浄処理を施したMEA(実施例29、30)より小さいことがわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に適用することができる。
また、Csを含む難溶性塩が固定され、又は、Csイオンでイオン交換された固体高分子電解質の用途は、固体高分子型燃料電池の電解質膜あるいは触媒層内電解質に限定されるものではなく、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等としても用いることができる。
また、Csを含む難溶性塩が固定され、又は、Csイオンでイオン交換された固体高分子電解質の用途は、固体高分子型燃料電池の電解質膜あるいは触媒層内電解質に限定されるものではなく、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等としても用いることができる。
Claims (11)
- 電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のいずれか1以上の部分に添加された、Csを含む1種又は2種以上の難溶性塩と
を備えた固体高分子型燃料電池。 - 前記難溶性塩は、Csと、塩素と、白金族元素とを含む錯塩である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記錯塩は、Cs2PtCl6、Cs2PdCl2、Cs2IrCl6、及び、Cs2RhCl6からなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項2に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記難溶性塩は、Csと、フッ素と、前記白金族元素以外の金属元素とを含む錯塩である請求項1から3までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記白金族元素以外の金属元素は、Al、Ga、Cr、Cu、Ti、Zr、Ce、及び、Laからなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項4に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記錯塩は、CsAl2F5、CsAl3F10、CsAlF4、Cs3AlF6、CsAlF4、CsAlF4・2H2O、Cs2AlF5・H2O、CsGaF4、CsGaF4・2H2O、Cs2CrF5・H2O、CsCrF6、Cs2CuF4、CsTiF4、Cs2TiF6、及び、CsCe2F7からなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項4に記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記電解質膜への前記難溶性塩の添加量は、Csとして0.01〜1.0wt%である請求項4から6までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記触媒層への前記難溶性塩の添加量は、Csとして0.01〜1.0wt%である請求項4から7までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記電極は、拡散層を含み、
前記拡散層への前記難溶性塩の添加量は、Csとして0.01〜1.0mg/cm2である請求項4から8までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。 - 電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記電解質膜及び/又は触媒層内電解質の酸基のプロトンの一部とイオン交換されたCsイオンと
を備えた固体高分子型燃料電池。 - Csの前記酸基に対するイオン交換割合は、0.1〜40%である請求項10に記載の固体高分子型燃料電池。
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---|---|---|---|---|
JP2010257771A (ja) * | 2009-04-24 | 2010-11-11 | Toyota Central R&D Labs Inc | 高耐久性電解質膜、電極及び固体高分子型燃料電池 |
CN103782433A (zh) * | 2011-08-26 | 2014-05-07 | 旭硝子株式会社 | 固体高分子电解质膜及固体高分子型燃料电池用膜电极接合体 |
GB2508795A (en) * | 2012-09-21 | 2014-06-18 | Ucl Business Plc | Electrolysis electrocatalyst comprising palladium and iridium |
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EP3573152A1 (en) * | 2018-05-22 | 2019-11-27 | Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. | Active material for fluoride ion secondary battery and fluoride ion secondary battery using the same |
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2007
- 2007-02-12 JP JP2007031423A patent/JP2008198447A/ja active Pending
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