JP5568111B2 - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等として好適な固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた全フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含まない電解質。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。
また、全フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含み、C−F結合を含まない電解質)、又は、部分フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む電解質)の使用も検討されている。
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として実用化するためには、解決すべき課題が残されている。例えば、炭化水素系電解質は、全フッ素系電解質に比べて安価であるが、過酸化物ラジカルにより劣化しやすいという問題がある。
また、固体高分子電解質は、通常、プロトン伝導性を発現するためには水を必要とする。そのため、高い出力を安定して得るためには、燃料電池の運転状況によらず、固体高分子電解質を適切な含水状態に維持する必要がある。
さらに、固体高分子型燃料電池を低コスト化するためには、白金等の高価な貴金属触媒の使用量を低減する必要があり、そのためには、微細な触媒粒子を均一に分散させる必要がある。しかしながら、貴金属触媒は、担体表面において凝集しやすいという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、炭化水素系電解質に酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化イリジウム等の遷移金属酸化物微粒子を分散させた高耐久固体高分子電解質が開示されている。同文献には、炭化水素系電解質膜中に酸化ルテニウム等を分散させることによって、膜の耐酸化性が向上する点が記載されている。
また、特許文献2には、炭化水素系固体高分子電解質膜に、酸化マンガン、酸化ルテニウム等の遷移金属酸化物触媒、あるいは、鉄フタロシアニン、銅フタロシアニン等の大環状金属錯体触媒を添加した固体高分子電解質膜が開示されている。同文献には、炭化水素系電解質に遷移金属酸化物触媒あるいは大環状金属錯体触媒を添加すると、電極反応の副反応により生じた過酸化水素が遷移金属酸化物触媒あるいは大環状金属錯体触媒によって分解され、炭化水素系電解質の耐酸化性が向上する点が記載されている。
また、特許文献3には、パーフルオロカーボンスルホン酸膜をリン酸ジルコニウム化合物の水溶液中に浸漬することにより得られる電解質膜が開示されている。同文献には、電解質膜中にリン酸ジルコニウム化合物を含有させることによって、水分子がリン酸基と水和し、電解質膜の保水性が向上する点が記載されている。
また、特許文献4には、白金を担持したカーボン粉末にニッケル及びコバルトの化合物を担持させ、熱処理によってこれらを合金化させ、酸処理によって合金化していないニッケル及びコバルトを溶解抽出させ、不活性ガス中で加熱乾燥させる白金合金触媒の製造方法が開示されている。同文献には、酸処理によって白金と合金化していないニッケル等が除去されるので、長時間、安定した電位を保つことができる点が記載されている。
また、特許文献5には、導電性担体に担持された白金系貴金属触媒を空気中50〜90℃でアニール処理することにより得られる固体高分子型燃料電池用電極触媒が開示されている。同文献には、アニール処理によって白金系貴金属触媒の表面に、所定量の酸素が保持・固定されるので、触媒の耐久性が向上する点が記載されている。
さらに、特許文献6には、白金とコバルトの合金よりなり、白金の割合が原子比で67%以上75%であるリン酸型燃料電池用カソード触媒が開示されている。同文献には、白金とコバルトを合金化させることによって合金相が安定化するので、触媒の耐久性が向上する点が記載されている。
特開2001−118591号公報 特開2000−106203号公報 特開平6−103983号公報 特開平6−246160号公報 特開2004−349113号公報 特開2001−345107号公報
Pt、Ru、Ir、Rh等の貴金属又はこれらの酸化物は、過酸化物を分解させる作用を有している。そのため、これらの粉末を炭化水素系電解質又は部分フッ素系電解質に添加すると、過酸化物ラジカルの発生が抑制され、耐酸化性を向上させることができる。しかしながら、貴金属は資源量が少なく、高価であるので、この方法は実用的ではない。
一方、大環状金属錯体やある種の遷移金属酸化物は、過酸化水素を分解する作用があり、しかも、貴金属に比べて安価であるが、電子伝導性は低い。そのため、MEAの耐久性を向上させるためにこれらの化合物を電極に多量に添加すると、内部抵抗あるいは接触抵抗の上昇を招き、電池性能が低下するという問題がある。
また、全フッ素系電解質は、従来、過酸化物ラジカルに対する耐性が高く、過酸化物ラジカルが共存する環境下において長期間使用した場合であっても、劣化しないと考えられていた。しかしながら、全フッ素系電解質といえども、燃料電池の作動条件下で長時間使用すると、経時劣化する場合がある。そのため、要求される耐酸化性のレベルが高い用途に対しては、電解質の耐久性をさらに向上させることが望まれている。
さらに、特許文献4〜6には、電極触媒の劣化を抑制する種々の方法が提案されている。しかしながら、従来の方法では、電極触媒の劣化を抑制する効果が不十分である。また、電極触媒の劣化の原因は、明らかにされていない。
本発明が解決しようとする課題は、実用的であり、電池性能が高く、かつ、耐久性に優れた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、全フッ素系電解質を用いた固体高分子型燃料電池において、全フッ素系電解質の耐久性を向上させることにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、電極触媒の劣化を抑制し、長期間に渡って高い出力が安定して得られる固体高分子型燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る固体高分子型燃料電池は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記固体高分子型燃料電池は、
電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体と、
前記電解質膜及び前記電極のいずれか1以上に添加された、Feを実質的に含まない難溶性無機アニオン交換体と
を備えている。
(2)前記難溶性無機アニオン交換体は、La(OH) 3 、Ca(OH) 2 、Al(OH) 3 、Bi(OH) 3 、Mg(OH) 2 、Mg 6 Al 2 (OH) 16 CO 34 2 O、及び、Co(OH) 3 からなる群から選ばれるいずれか1以上の化合物からなる。
燃料電池の運転中に過酸化物ラジカルが発生すると、電解質や炭素材料を劣化させ、クロスリークの増加や電圧低下が生じる。一方、難溶性無機アニオン交換体は、過酸化物又は過酸化物ラジカルを分解し、無害化する作用がある。そのため、これを電解質膜及び電極のいずれか1以上に添加すれば、製造コストを大幅に上昇させることなく過酸化物ラジカルによる電解質や炭素材料の劣化に起因する出力低下を抑制することができる。
また、燃料電池のような電位変動が生ずる環境下では、特に空気極側において、Pt等の貴金属触媒の溶出及び粒成長が起こり、触媒能が低下する。この劣化は、ハロゲンイオンが共存することによってさらに促進される。また、ハロゲンイオンは、燃料電池内の金属材料を腐食させる原因となる。一方、難溶性無機アニオン交換体は、ハロゲンイオンを吸着する作用がある。そのため、これを電解質膜又は電極に添加すれば、燃料電池内の微量のハロゲンイオンを除去することができ、ハロゲンイオンに起因する触媒能の低下及び金属材料の腐食を抑制することができる。
QCM法により求めた白金溶解量とICP分析により求めた白金溶解量との関係を示す図である。 溶液中に含まれるCl濃度と2000サイクル経過時の重量減少(白金溶解)量との関係を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を備えている。また、固体高分子型燃料電池は、通常、このようなMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを複数個積層したものからなる。
本発明において、固体高分子電解質膜の材質は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。
すなわち、固体高分子電解質膜の材質は、高分子鎖内にC−H結合を含み、かつC−F結合を含まない炭化水素系電解質、及び高分子鎖内にC−F結合を含むフッ素系電解質のいずれであっても良い。また、フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む部分フッ素系電解質であっても良く、あるいは、高分子鎖内にC−F結合を含み、かつC−H結合を含まない全フッ素系電解質であっても良い。
なお、フッ素系電解質は、フルオロカーボン構造(−CF2−、−CFCl−)の他、クロロカーボン構造(−CCl2−)や、その他の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基)を備えていてもよい。また、固体高分子電解質膜を構成する高分子の分子構造は、特に限定されるものではなく、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良く、あるいは環状構造を備えていても良い。
また、固体高分子電解質に備えられる電解質基の種類についても、特に限定されるものではない。電解質基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基等がある。固体高分子電解質には、これらの電解質基の内、いずれか1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。さらに、これらの電解質基は、直鎖状固体高分子化合物に直接結合していても良く、あるいは、分枝状固体高分子化合物の主鎖又は側鎖のいずれかに結合していても良い。
炭化水素系電解質としては、具体的には、
(1)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の電解質基が導入されたポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテル等、及びこれらの誘導体(脂肪族炭化水素系電解質)、
(2)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の電解質基が導入されたポリスチレン、芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等、及びこれらの誘導体(部分芳香族炭化水素系電解質)、
(3)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の電解質基が導入されたポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等、及びこれらの誘導体(全芳香族炭化水素系電解質)、
等が好適な一例として挙げられる。
また、部分フッ素系電解質としては、具体的には、高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の電解質基が導入されたポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(以下、これを「PS−g−ETFE」という。)、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
また、全フッ素系電解質としては、具体的には、デュポン社製ナフィオン(登録商標)、旭化成(株)製アシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)製フレミオン(登録商標)等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
さらに、本発明において、MEAを構成する固体高分子電解質膜は、固体高分子電解質のみからなるものであっても良く、あるいは、多孔質材料、長繊維材料、短繊維材料等からなる補強材を含む複合体であっても良い。
これらの中でも、フッ素系電解質、特に全フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−F結合を有しており、耐酸化性に優れているので、これに対して本発明を適用すれば、耐酸化性及び耐久性に優れた固体高分子型燃料電池が得られる。
MEAを構成する電極は、通常、触媒層と拡散層の二層構造を取るが、触媒層のみによって構成される場合もある。電極が触媒層と拡散層の二層構造を取る場合、電極は、触媒層を介して電解質膜に接合される。
触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、電極触媒又は電極触媒を担持した担体と、その周囲を被覆する触媒層内電解質とを備えている。一般に、電極触媒には、MEAの使用目的、使用条件等に応じて最適なものが用いられる。固体高分子型燃料電池の場合、電極触媒には、白金、白金合金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム等又はこれらの合金が用いられる。触媒層に含まれる電極触媒の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
触媒担体は、微粒の電極触媒を担持すると同時に、触媒層における電子の授受を行うためのものである。触媒担体には、一般に、カーボン、活性炭、フラーレン、カーボンナノフォン、カーボンナノチューブ等が用いられる。触媒担体表面への電極触媒の担持量は、電極触媒及び触媒担体の材質、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な担持量が選択される。
触媒層内電解質は、固体高分子電解質膜と電極との間でプロトンの授受を行うためのものである。触媒層内電解質には、通常、固体高分子電解質膜を構成する材料と同一の材料が用いられるが、異なる材料を用いても良い。触媒層内電解質の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
拡散層は、触媒層との間で電子の授受を行うと同時に、反応ガスを触媒層に供給するためのものである。拡散層には、一般に、カーボンペーパ、カーボンクロス等が用いられる。また、撥水性を高めるために、カーボンペーパ等の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性高分子の粉末とカーボンの粉末との混合物(撥水層)をコーティングしたものを拡散層として用いても良い。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、MEAを構成する固体高分子電解質膜及び電極のいずれかに、難溶性無機アニオン交換体が添加されていることを特徴とする。
ここで、「難溶性無機アニオン交換体」とは、過酸化物分解作用及びアニオン吸着作用を有する難溶性の化合物であって、少なくとも1つのOH基、結晶水、又はハロゲンイオン(特に、Cl-イオン)と交換可能なアニオン基を持つものをいう。難溶性無機アニオン交換体は、実質的にFeを含まないものが好ましい。
耐久性に優れた燃料電池システムを得るためには、難溶性無機アニオン交換体は、H分解作用を示す金属元素が水と接した場合に、金属元素が固定場所から溶出しにくいもの(難溶性)である必要がある。
ここで、通常の燃料電池の作動環境下の水のpHは、大気中のCO2、NOx、SOx、及び、構成材料から溶出する有機酸、ハロゲンイオンの影響により、中性でなく、弱酸性のpH4〜6程度である。場合によっては、フッ素系電解質膜からのF-イオンやスルホン酸脱離によるSO3 -イオンによりpH3程度まで低下することがある。また、副生するH22の作用により、さらに材料からイオンの溶出が起こりやすい環境になっている。さらに、固体高分子型燃料電池の作動温度は、一般に、80℃程度である。
従って、実際には、これらの厳しい環境下において難溶性であることが要求されるが、このような燃料電池の作動環境下における難溶性の程度は、室温(18〜25℃)における難溶性無機アニオン交換体の溶解度積の大きさで代用することができる。
耐久性に優れた燃料電池システムを得るためには、難溶性無機アニオン交換体は、室温(18〜25℃)における溶解度積が1×10-3以下であるものが好ましい。
「Feを実質的に含まない」とは、Feを積極的な構成成分として含まないことに加えて、不可避的不純物としての濃度が低いことをいう。Feの含有量は、具体的には、水酸化物、含水酸化物又はオキシ水酸化物に換算して0.1wt%以下(1000ppm以下)が好ましい。Feの含有量が水酸化物等に換算して0.1wt%を超えると、Feがイオンとして溶け出し、過酸化水素がラジカル分解する。すなわち、Feイオンの触媒作用により生成した・OHラジカルが触媒層内電解質や電解質膜を攻撃し、電池性能の低下を引き起こすおそれがある。また、・OHラジカルが拡散層や電極担体のC材料を攻撃(酸化)し、撥水性を低下させ、電池性能の劣化を引き起こしやすい。従って、Feの含有量が水酸化物、含水酸化物又はオキシ水酸化物に換算して0.1wt%を超える場合には、前処理によりこれらを除去する必要がある。
除去方法としては、
(1)粉体を磁性体(磁石)により磁気選別し、酸化鉄、オキシ水酸化鉄等の異物を除去する方法、
(2)酸(硫酸、硝酸、塩酸)で鉄化合物を除去した後、中和、水洗する方法、
などがある。
難溶性無機アニオン交換体は、
(1)過酸化水素を分解し、・OHラジカルによる電解質や炭素材料の劣化を防ぐ作用、及び、
(2)ハロゲンイオンなどのアニオンを吸着し、触媒層内の触媒金属(例えば、Pt)がハロゲン錯体(例えば、PtCl4 2-)として溶解し、消耗することを防ぐ作用、
を有している。
ここで、ある化合物が持つ過酸化物分解作用の程度(分解能力)は、次の(1)式に示す分解率ηで表すことができる。
η={(1.0−C)/1.0}×100 ・・・(1)
但し、Cは、1wt%の過酸化物を含む水溶液50ml中に、平均粒径50μm以下の難溶性無機アニオン交換体を100ppm添加し、100℃×1hr放置後の過酸化物濃度である。
固体高分子型燃料電池の耐久性を向上させるためには、難溶性無機アニオン交換体は、過酸化水素(H22)の分解率が30%以上であるものが好ましい。分解率は、さらに好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
過酸化物分解作用及びアニオン吸着作用がある難溶性無機アニオン交換体としては、具体的には、希土類元素(La〜Lu)、遷移金属元素(3d〜5d遷移金属元素)、及びアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれるいずれか1以上の水酸化物、水和水酸化物、含水酸化物、オキシ水酸化物、又は、オキシ酸化物などがある。
また、難溶性無機アニオン交換体は、特に、Y、Zr、La、Ce、Pr、Gd、Yb、Tb、Co、Cu、Ti、Al、Nb、Bi、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれるいずれか1以上の元素を含む水酸化物、水和水酸化物、含水酸化物、オキシ水酸化物、又は、オキシ酸化物が好ましい。これらは、他の難溶性無機アニオン交換体に比べて、過酸化物分解作用及び/又はアニオン吸着作用が大きいという特徴がある。
MEAには、これらのいずれか1種の難溶性無機アニオン交換体が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。また、MEAの複数箇所に難溶性無機アニオン交換体が含まれる場合、各箇所に含まれる難溶性無機アニオン交換体は互いに同種であっても良く、異種であっても良い。
ここで、「水酸化物」とは、一般式:Mx(OH)y(但し、Mの価数をZとして、Z×X=Y。X、Yは、正の整数。)で表される水酸基とカチオンの化合物をいう。
「水和水酸化物」とは、水酸化物にさらに水が結合したものをいう。水和水酸化物としては、例えば、LiOH・H2O、CsOH・H2O、Cr(OH)3・nH2Oなどがある。
「含水酸化物(又は水和酸化物)」とは、酸化物に水が結合したものをいう。含水酸化物としては、例えば、CeO2・nH2Oなどがある。なお、nは、通常、正の整数であるが、脱水の程度によりnは必ずしも整数をとるとは限らない。これらは、該当する陽イオンの酸性酸化物として記載される場合もある。例えば、WO2・H2O=H2WO3、WO3・H2O=H2WO4、TiO2・H2O=H2TiO3、TiO2・2H2O=H4TiO4などである。
「オキシ水酸化物」とは、酸化物に水酸基(OH)が結合したものをいう。オキシ水酸化物としては、FeOOH、CrOOH、AlOOHなどがある。但し、例えば、AlOOHにさらに結晶水が加わったもの(AlOOH・H2O)は、Al(OH)3とも記載されるので、オキシ水酸化物と水酸化物が明確に区別できるものではない。
「オキシ酸化物」とは、オキシ水酸化物又は含水オキシ水酸化物に含まれるOH基の全部又は一部がハロゲンイオン(特に、Cl-イオン)と交換能を持つ他のアニオン(例えば、NO3-、SO4 2-等)に置換されたものをいう。オキシ酸化物としては、例えば、BiO(NO3)・nH2Oなどがある。
さらに、難溶性無機アニオン交換体は、400℃以下の熱履歴を受けたものが好ましい。難溶性無機アニオン交換体の製造過程及びMEAの製造過程において、難溶性無機アニオン交換体が400℃を超える熱履歴を受けると、過酸化物分解作用及び/又はアニオン吸着作用が低下する。
400℃以下の熱履歴を受けた難溶性無機アニオン交換体が高い過酸化物分解作用及び/又はアニオン吸着作用を有するのは、以下の理由によると考えられる。
(1)高温の熱履歴を受けておらず、粒子のネッキング(焼結)が起きにくく比表面積の低下割合が小さいために、過酸化物分解作用が大きい。
(2)OH基や結晶水の喪失(脱水)によるイオン交換容量の低下が少ないために、FやClなどのハロゲンイオンの吸着容量が大きい。
難溶性無機アニオン交換体の固定場所は、電解質膜及び電極のいずれであっても良い。また、電極に固定する場合、難溶性無機アニオン交換体の固定場所は、触媒層及び拡散層のいずれであっても良い。また、固体高分子型燃料電池において、過酸化物は、カソードで生ずる電極反応の副反応により生成し、生成した過酸化物が電解質膜を通ってアノード側に拡散すると考えられている。従って、難溶性アニオン交換体は、少なくともカソード及びその近傍に固定するのが好ましい。
また、固体高分子型燃料電池は、一般に、電解質膜の電気伝導度を維持するために、補機を用いて加湿が行われている。また、カソード側では、電極反応により水が生成する。これらの水は、通常、そのまま燃料電池外に排出されるが、燃料電池システム全体の保水量を低減するために、排出された水分を電解質膜の加湿に再利用する場合がある。このような場合には、排出された水の中に過酸化物が含まれていることがあるので、セパレータの表面、配管類の内表面、保水タンクの内表面等、水が循環する経路に難溶性無機アニオン交換体を固定しても良い。
難溶性無機アニオン交換体の形態は特に限定されるものではなく、難溶性無機アニオン交換体の種類、固定場所等に応じて、種々の形態を取ることができる。
例えば、難溶性無機アニオン交換体を電解質膜に固定する場合、電解質膜の内部及び/又は表面に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を均一に分散させても良い。また、電解質膜が固体高分子電解質と補強材との複合体である場合、補強材の表面に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定しても良い。
また、例えば、難溶性無機アニオン交換体を触媒層に固定する場合、電極触媒若しくは電極触媒を担持するための担体及び/又は触媒層内電解質の表面に、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定しても良く、あるいは、担体及び/又は触媒層内電解質の内部に固定しても良い。また、触媒層を形成した後、その表面に、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定しても良い。
さらに、難溶性無機アニオン交換体を拡散層に固定する場合、拡散層の内部又は表面に均一に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を分散させても良く、あるいは、拡散層の触媒層側表面に形成される撥水層の内部又は表面に均一に分散させても良い。
また、MEAのいずれかに微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定する場合、その粒径は、固定場所に応じて、最適な粒径を選択する。
例えば、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を電解質膜又は触媒層に固定する場合、その粒径は、10μm以下が好ましい。粒径が10μmを超えると、難溶性無機アニオン交換体を均一に分散させるのが困難となり、あるいは、電解質膜に機械的ダメージを与えるおそれがある。一般に、粒径が小さくなるほど、少量の固定で高い過酸化物分解作用及び/又はアニオン吸着作用が得られる。但し、粒径が小さくなりすぎると、溶解性が高くなり、長期の安定性に劣る場合がある。従って、難溶性無機アニオン交換体の粒径は、0.1μm以上が好ましい。
一方、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を拡散層に固定する場合、0.1〜50μm以下のやや大粒径のものでも使用できる。但し、相対的に粒径の大きな粉末を使用する場合には、電解質膜又は触媒層に直接、接しない場所に固定するのが好ましい。
難溶性無機アニオン交換体の固定量は、過酸化物分解触媒の種類、形態、固定場所等に応じて最適な量を選択する。一般に、過酸化物の分解能力及び/又はアニオン吸着能が大きく、かつ、比表面積の大きい難溶性無機アニオン交換体を用いるほど、相対的に少量の固定で、高い過酸化物分解作用及び/又はアニオン吸着作用が得られる。一般に、難溶性無機アニオン交換体の固定量が多くなるほど、耐久性は向上する。但し、難溶性無機アニオン交換体を過剰に固定しても実益がなく、むしろ高コスト化、機械的性質の低下、電池性能の低下等を招く場合がある。
例えば、電解質膜の内部、電解質膜の表面、及び/又は、補強材の表面に、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定する場合、難溶性無機アニオン交換体の添加量(=難溶性無機アニオン交換体の重量/(難溶性無機アニオン交換体の重量+電解質膜の重量))は、0.01〜1.0wt%が好ましい。難溶性無機アニオン交換体の添加量が0.01wt%未満であると、十分な効果が得られない。一方、難溶性無機アニオン交換体の添加量が1.0wt%を超えると、電解質膜の機械的性質が損なわれる場合がある。
また、例えば、触媒層の表面及び/又は内部に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定する場合、難溶性無機アニオン交換体の添加量(=難溶性無機アニオン交換体の重量×/触媒層の固形分の重量)は、0.01〜10.0wt%が好ましい。難溶性無機アニオン交換体の添加量が0.01wt%未満であると、十分な効果が得られない。一方、難溶性無機アニオン交換体の添加量が10.0wt%を超えると、内部抵抗が増加し、電池性能が低下する場合がある。
また、例えば、拡散層の表面(拡散層表面に撥水層が形成される場合には、撥水層の表面及び内部を含む)に難溶性無機アニオン交換体を固定する場合、難溶性無機アニオン交換体の添加量は、0.01〜5.0mg/cm2が好ましい。難溶性無機アニオン交換体の添加量が0.01mg/cm2未満であると、十分な効果が得られない。一方、難溶性無機アニオン交換体の添加量が5.0mg/cm2を超えると、接触抵抗が増加し、電池性能が低下する場合がある。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池の製造方法について説明する。
MEAの構成要素の内、難溶性無機アニオン交換体が固定された電解質膜は、
(1)微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固体高分子電解質又はその前駆体(例えば、ナフィオン(登録商標)のスルホニルフルオライド体)に加えて湿式又は乾式で混練し、膜化する第1の方法、
(2)微粒子状の難溶性無機アニオン交換体又はこれを分散させたスラリーを電解質膜又はその前駆体の表面に、散布、噴霧又は塗布(ドクターブレードを含む。以下同じ。)する第2の方法、
(3)補強材の表面に、上述した第2の方法を用いて微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定し、この補強材と固体高分子電解質又はその前駆体とを湿式又は乾式で複合化させる第3の方法、
(4)これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
また、MEAの構成要素の内、難溶性無機アニオン交換体が固定された触媒層は、
(1)電極触媒又は電極触媒を担持させた担体と、高分子電解質とを含む溶液(以下、これを「触媒インク」という)に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を加え、ポリテトラフルオロエチレンシート等の高分子材料からなる基体の表面に噴霧又は塗布する第1の方法、
(2)電解質膜表面又は拡散層の表面に、直接、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を含む触媒インクを噴霧又は塗布する第2の方法、
(3)難溶性無機アニオン交換体を含まない触媒インクを用いて触媒層を形成し、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体又はこれを分散させたスラリーを触媒層の表面に散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4)(a)難溶性無機アニオン交換体を構成する金属元素を含む化合物であって、常温で液体であるもの又は適当な溶媒に溶解させることができるもの(例えば、塩、塩化物、アルコキシド、アルコラート、アセチルアセトナート等。)を含む溶液に触媒担体を加え、触媒担体の表面に金属元素を含む化合物を吸着させ、
(b)金属元素を含む化合物の加水分解、加熱分解、電気分解、光分解等を行い、触媒担体表面に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を形成し、
(c)この触媒担体を触媒インクに加えて触媒層を形成する第4の方法、
(5)これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
また、MEAの構成要素の内、難溶性無機アニオン交換体が固定された拡散層は、
(1)微粒状の難溶性無機アニオン交換体又はこれを分散させたスラリーを、カーボンペーパー等の表面に、散布、噴霧又は塗布する第1の方法、
(2)炭素粒子、撥水性粉末(例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末)、及び、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を含むスラリーをカーボンペーパー等の表面に噴霧又は塗布し、難溶性無機アニオン交換体を含む撥水層を形成する第2の方法、
(3)カーボンペーパー等の表面に難溶性無機アニオン交換体を含まない撥水層を形成し、微粒子状の難溶性無機アニオン交換体又はこれを分散させたスラリーを撥水層の表面に、散布、噴霧又は塗布する第3の方法、
(4)触媒層に難溶性無機アニオン交換体を固定するための第4の方法と同様の手順に従い、炭素粒子の表面に微粒子状の難溶性無機アニオン交換体を固定し、これを用いてカーボンペーパー等の表面に撥水層を形成する第4の方法、
(5)拡散層がC系材料である場合において、難溶性無機アニオン交換体を構成する金属元素を含む化合物であって、常温で液体であるもの又は適当な溶媒に溶解させることができるもの(例えば、塩、塩化物、アルコキシド、アルコラート、アセチルアセトナート等。)を含む溶液にC系材料を浸漬し、C系材料の表面及び/又は内部に難溶性無機アニオン交換体を吸着させる第5の方法、
(6)これらの組み合わせ、
等により製造することができる。
これらの各方法において、難溶性無機アニオン交換体の固定条件(例えば、使用する溶媒の種類、溶液濃度、触媒インクの組成、金属元素を含む化合物の分解条件等)は、電解質膜、触媒層、拡散層及び難溶性無機アニオン交換体の材質や組成、固定方法等に応じて、最適な条件を選択する。
上述した各種の方法を用いて、電解質膜、触媒層及び拡散層の少なくとも1つに難溶性無機アニオン交換体を固定した後、電解質膜の両面に触媒層を接合し、さらに、必要に応じて、触媒層の表面に拡散層を接合すれば、MEAが得られる。電解質膜と触媒層及び拡散層の接合は、通常、ホットプレスにより行われる。この場合、MEAの製造工程における熱履歴(例えば、拡散層の表面に撥水層を形成する際の焼成温度、ホットプレス温度等)は、400℃以下が好ましい。
さらに、得られたMEAの両面をガス流路を備えたセパレータで挟持してユニットセルとし、このユニットセルを複数個積層すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池の作用について説明する。
固体高分子型燃料電池の作動環境下においては、電極反応の副反応として過酸化水素などの過酸化物が生成する。この過酸化物は、Fe2+/Fe3+イオンなどの価数が変わる遷移金属イオン(Mn+/M(n+1)+)の存在下では、次の(2)式の酸化反応、又は(3)式の還元反応によって、ラジカル分解することが知られている。
HOOH+M(n+1)+→HOO・+H++Mn+ ・・・(2)
HOOH+Mn+→HO・+OH-+M(n+1)+ ・・・(3)
固体高分子型燃料電池は、一般に、補機を用いて電解質膜の加湿が行われており、かつMEAの近傍には、配管類等に由来する遷移金属イオンが存在しているので、過酸化物ラジカルが発生しやすい環境にある。一方、過酸化物のラジカル分解で発生した過酸化物ラジカル(HOO・、HO・など)は、有機高分子化合物のC−H結合を分断し、有機高分子化合物の変質、低分子量化を招くことが知られている。そのため、固体高分子型燃料電池に従来の炭化水素系電解質又は部分フッ素系電解質をそのまま用いると、実用上十分な耐久性が得られない。
また、全フッ素系電解質は、その高分子鎖内にC−H結合が含まれていないために、従来は、過酸化物ラジカルにより劣化しないと考えられていた。しかしながら、本願発明者らは、全フッ素系電解質であっても、燃料電池の作動環境下において劣化し、かつ劣化により燃料電池からFイオンが排出されること、並びに、その原因物質が過酸化物ラジカルであることを見出している。
これに対し、上述した難溶性無機アニオン交換体は、過酸化物ラジカルによる劣化を抑制する作用がある。これは、難溶性無機アニオン交換体の固体表面においては、過酸化物がラジカル分解する前に、次の(4)式の還元反応、又は次の(5)式の酸化反応によって、イオン分解するためと考えられる。
22+2H++2e-→2H2O ・・・(4)
22→O2+2H++2e- ・・・(5)
なお、固体表面での反応は、結局、(4)式及び(5)式より、次の(6)式のように、2分子の過酸化水素が衝突して水と酸素に分解する、いわゆる接触分解反応として表される。
2HOOH→2H2O+O2 ・・・(6)
そのため、固体高分子電解質膜、触媒層及び拡散層のいずれか1以上に、難溶性無機アニオン交換体を固定すると、過酸化物ラジカルの生成が抑制され、その結果として、過酸化物ラジカルによる有機化合物の変質、低分子量化等が抑制される。また、固体高分子電解質膜として炭化水素系電解質膜又は部分フッ素系電解質膜を用いた場合であっても、高い耐久性を有する固体高分子型燃料電池が得られる。さらに、固体高分子電解質膜として全フッ素系電解質を用いた場合には、過酸化物ラジカルによる全フッ素系電解質の劣化及びこれに起因するFイオンの溶出が抑制され、さらに耐久性に優れた固体高分子型燃料電池が得られる。
さらに、過酸化物ラジカルは、拡散層や触媒担体などの炭素材料を攻撃し、電池性能の低下を引き起こす。しかしながら、MEAのいずれかに難溶性無機アニオン交換体を固定すると、過酸化物ラジカルが炭素材料を攻撃することに起因する電池性能の劣化を抑制することができる。
また、難溶性無機アニオン交換体は、高温又は低pHの水に対する溶解度が相対的に小さいので、燃料電池環境下において長期間使用しても、これらが溶出するおそれが少ない。そのため、これをMEAのいずれかの部分に固定すれば、長期間に渡って高い耐久性を示す固体高分子型燃料電池が得られる。
また、希土類元素、遷移金属元素及び典型金属元素は、比較的資源量に富み、Pt等の貴金属に比べて安価である。そのため、これらの金属元素を含む難溶性無機アニオン交換体をMEAのいずれかに固定すれば、過酸化物分解触媒としてPt等の貴金属元素を多量に用いる必要がない。すなわち、固体高分子型燃料電池を高コスト化することなく、その耐久性を向上させることができる。特に、Ce、La、Y、Zr等を含む難溶性無機アニオン交換体は、相対的に安価であることに加えて、過酸化物の分解作用が高いので、固体高分子型燃料電池の高コスト化を招くことなく、耐久性を飛躍的に向上させることができる。
さらに、燃料電池のような電位変動が生ずる環境下では、特に空気極側において、Pt等の貴金属触媒の溶出及び粒成長が起こり、触媒能が劣化する。この劣化は、ハロゲンイオンが共存することによってさらに促進される。この点は、本願発明者等が初めて見出したものである。
特に、Cl-イオンは、大気の塵埃(海水飛沫、融雪塩等)、雨水等に含まれており、これらが運転中に空気極側のフィルターを通過して燃料電池内部に混入することがある。また、ハロゲンイオンは、新品状態の触媒担体、触媒金属、電解質にも数ppmのレベルで存在しており、さらにMEA製造過程、スタック製造過程でも混入する。そのため、長期間の使用によって電極劣化が進行し、長期の耐久性を確保することが困難であった。
さらに、ハロゲンイオンは、燃料電池内にある金属材料を腐食させる原因ともなる。
これに対し、難溶性無機アニオン交換体は、OH基、結晶水、又はハロゲンイオンと交換可能なアニオン基を有しているので、ハロゲンイオンのようなアニオンを吸着する作用がある。
例えば、難溶性無機アニオン交換体の一種であるLa(OH)3は、次の(7)〜(9)式に従ってF-イオンを吸着すると考えられる。
La(OH)3+F- → La(OH)2F+OH- ・・・(7)
La(OH)2F+F- → La(OH)F2+OH- ・・・(8)
La(OH)F2+F- → LaF3+OH- ・・・(9)
また、例えば、Biの含水オキシ酸化物の一種であるBiO(NO3)・nH2O(5/3≧n>0)は、酸化ビスマス(Bi23)粉末と硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO3)3・5H2O)の粉末とをモル比で1:1になるように混合し、室温〜80℃で反応させることにより得られる(特開2000−016814号公報)。この含水オキシ酸化物を有効成分とする難溶性無機アニオン交換体とハロゲンイオンとを反応させると、ハロゲンイオンをBiOX(X=I、Br、Cl、F)として除去することができる。
そのため、このような難溶性無機アニオン交換体を電解質膜又は電極に添加すれば、燃料電池内の微量のハロゲンイオンを除去することができ、ハロゲンイオンに起因する触媒能の低下及び金属材料の腐食を抑制することができる。
(白金溶解試験(1): QCM法による重量変化と白金溶解量の関係)
水晶振動子微量天秤(quartz crystal microbalance:QCM)法を用いて、白金の重量変化と白金溶解量の関係を調べた。
白金板に水晶振動子を取り付け、これを100ppmのCl-イオンを含む水溶液中に浸漬した。所定時間経過後、共振周波数から水晶振動子付白金板の重量変化を求めた。また、これと同時に溶液を採取し、溶液中の白金濃度をICPにより分析した。以下、同様にして、水晶振動子付白金板の重量変化と溶液中の白金濃度を、溶液中への浸漬時間を変えて測定した。
図1に、QCM法により求めた白金溶解量とICP分析により求めた白金溶解量の関係を示す。図1より、両者は比例関係にあり、白金の重量減少量(QCM法)と白金の溶解量(ICP分析)が対応していることがわかる。
なお、QCM法は、その共振周波数から水晶振動子の重量変化を求める方法である。重量変化の原因としては、水分子やアニオンの吸脱着、あるいは白金の溶解・析出が考えられるが。前者による重量変化については、水分子やアニオンの吸着状態(作用極の電極電位)が同じである場合、考えなくて良い。その場合の重量変化の原因は、すべて白金の溶解・析出にあると考えられる。
また、ICPより求めた白金溶解量がQCM法により求めた重量減少より若干少ないのは、後者では理論式を用いたため、計算して得られた重量減少量と実際のそれとで若干のずれが生じたためと考えられる。
(白金溶解試験(2): 白金溶解速度に対するCl-濃度の影響)
QCM法を用いて、白金の溶解速度に対するCl-濃度の影響を調べた。溶液には、所定量のNaClを含む0.1M硫酸水溶液を用いた。温度は室温とし、作用電極(水晶振動子を取り付けた白金板)の電位を0.5Vと1.4Vの間で9.9V・s-1でスウィープしながらサイクルした。
図2に、2000サイクル経過時の重量減少(白金溶解)量を示す。図2より、Cl-濃度の増加に伴い、白金溶解速度が直線的に増加することがわかる。これは、Cl-イオンが共存すると、アクアイオン(Pt2+、Pt4+)に比べて安定な[PtCl4]2-、あるいは[PtCl6]4-が形成され、白金の溶解が促進されるためと考えられる。
以上から、実際の燃料電池において、触媒近傍に存在するCl-を除去することで、白金の溶解を抑制できると考えられる。
(触媒中のCl-の定量)
後述する触媒インク作製時に用いた白金担持カーボン中に、不純物としてどれだけCl-が存在するかを調べるために、以下の実験を行った。
(1) 白金担持カーボン0.5gを10mLの蒸留水に浸漬し、80℃で24時間保持した。
(2) 上記溶液をイオンクロマトにて分析した。
上記溶液中のCl-濃度は、0.3ppmであった。バックグラウンド測定として白金担持カーボンを入れずに行った試験では、Cl-が検出されなかったことから、このCl-は白金担持カーボン中に不純物として存在していたものである。この値から、実際の燃料電池における白金近傍のCl-濃度は、50ppmと見積もられる(相対湿度100%においてナフィオン(登録商標)の含水率が30%であり、すべてのCl-がナフィオン(登録商標)へ溶け出すと仮定)。実際には、燃料電池の製造工程や運転時にCl-が取り込まれ、Cl-濃度が上述の試算よりさらに高くなる可能性がある。図2より、試算されたCl-濃度は、白金溶出を促進するに十分であり、このCl-を除去することが触媒の耐久性向上に不可欠であることがわかる。
(参考例1、実施例2、参考例3、実施例4〜6、参考例7、実施例8〜9、比較例1〜9: Fイオン吸着試験)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のキャップ付き容器にFイオン(F濃度1000ppmのNaF水溶液を使用)を20ppm含む1wt%過酸化水素水溶液50mLと、各種含水酸化物又は水酸化物(粒径:1〜6μm)を1000ppm加え、2分間超音波を当てて水中で十分に分散させた。さらに、溶液中に過酸化物ラジカルを発生させるためにFeCl2をFe10ppmとなるように加え、100℃×8hr加熱した。その後、孔径0.1μmのPTFE製ろ紙で濾過した後、ろ液中のF濃度をオリオンリサーチ社製のイオン選択性電極で測定した。
試薬は、和光純薬工業(株)製、キシダ化学(株)製、又は高純度化学研究所製のものを用いた。また、含水酸化物のnの値は約2であり、Mが4価の金属元素である場合、M(OH)4とも表せる。
表1に、溶液中に残存しているFイオン濃度を示す。溶液中のFイオン濃度が低いことは、過酸化物ラジカルが存在する環境下におけるFイオン吸着能が高いことを示す。
表1より、参考例1、実施例2、参考例3、実施例4〜6、参考例7、実施例8〜9で用いた含水酸化物又は水酸化物は、アニオン吸着力及び触媒活性に優れるオキシ水酸化物であるα−FeOOHよりもFイオン吸着力が高いことがわかる。また、Ceの含水酸化物CeO2・nH2Oの単位重量当たりのFイオン吸着力は、Ceの酸化物、リン酸塩、炭酸塩、フッ化物よりもはるかに大きいことがわかる。
Figure 0005568111
(参考例10、実施例11、参考例12、実施例13〜15、参考例16、実施例17〜19、比較例10〜14: 過酸化水素の分解率)
PTFE製のキャップ付き容器に1.0wt%の過酸化水素水溶液50mLと、各種含水酸化物又は水酸化物(粒径:1〜6μm)を100ppm加え、2分間超音波を当てて水中で十分に分散させた。その後、100℃×1hr加熱し、過酸化水素を分解させた。試験液を定性ろ紙で濾過した後、ろ液中の過酸化水素濃度C(wt%)を測定した。試料極には、Pt平滑板を用い、0.1MH2SO4中で1.2V vs. NHEで定電位酸化し、過酸化水素濃度Cを10分後の電流値から電気化学的に定量した。過酸化水素の分解率は、(1)式により求めた。
表2に、過酸化水素の分解率を示す。参考例10、実施例11、参考例12、実施例13〜15、参考例16、実施例17〜19の過酸化水素の分解率ηは、いずれもCeのリン酸塩(比較例10)、Ceのフッ化物(比較例11)、Laの酸化物(比較例12)、及びFeのオキシ水酸化物(比較例13)に比べて大きいことがわかる。また、Bi23(比較例14)の分解率は22%であるのに対し、Bi(OH)3(実施例15)の分解率は、45.3%であった。
Figure 0005568111
参考例20〜26、比較例15〜16: 触媒層への添加量の影響)
60wt%Pt/C触媒0.5gに、平均粒径2μmのCeO2・nH2O粉末を加え、さらに、蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをPTFEシート上に塗布、乾燥して転写電極を得た。CeO2・nH2O粉末の添加量は、触媒層の固形分重量の0.005〜15.0wt%とした。また、Pt使用量は、カソードが0.5〜0.6mg/cm2、アノードが0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定とした。
これらの電極を36mm角に切り出し、F系電解質の両面に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))して、MEAを作製した。CeO2・nH2O粉末の添加は、空気極のみ、水素極のみ、両極の各々とし、F系電解質膜には、ナフィオン(登録商標)112を用いた。拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用い、電極面側にアセチレンブラックとPTFE粒子からなる撥水層を10mg/cm2の目付量になるようにスプレー塗布し、N2雰囲気炉で200℃×30分間の焼き付け処理を行った。
得られたMEAについて耐久試験を行った。耐久試験条件は、以下の通りである。
アノードガス:H2(100mL/min)
カソードガス:空気(100mL/min)
セル温度:80℃
加湿器温度:80℃(アノード側、カソード側ともに)
試験時間:開回路1分、0.1A/cm2での1分間の発電を1サイクルとするサイクル試験を150時間。
耐久試験前及び耐久試験終了後において、0.8A/cm2における電圧値を測定し、この電圧値の低下割合(=ΔV/V0。V0は耐久試験前の電圧値、ΔVは耐久試験前後の電圧の変化量の絶対値。)を比較した。また、試験開始後24hr〜48hrの間に回収した空気極側ドレイン水をサンプリングして、F濃度をオリオンリサーチ社製のイオン選択性電極で測定した。
比較として、触媒層にα−FeOOHを10.0wt%添加したもの(比較例16)、及び何も添加しなかったもの(比較例15)についても、同様に耐久試験を行った。
表3に、その結果を示す。表3より、触媒層にCeO2・nH2O粉末を添加すると、無添加及びα−FeOOH添加に比べて、電圧低下が小さく、溶液中に排出されたF濃度も低いことがわかる。CeO2・nH2O粉末の添加量が15.0wt%である場合(参考例26)、セル抵抗が増加し、0.8A/cm2の発電を安定して行うことができず、耐久試験を行うことができなかった。しかしながら、CeO2・nH2O粉末の添加量を0.01〜10.0wt%とすると、比較例15及び16に比べて、電圧低下とF排出量を大幅に低減できることがわかった。
Figure 0005568111
(参考例27〜28、比較例17: 温度履歴の影響(1))
0.1M Ce(NO3)3水溶液100mLに1.0M NH3水溶液100mLを加え、攪拌しながら80℃×4hr反応させ、水酸化セリウムの沈殿を生成させた。途中で30wt%過酸化水素水を10mL添加して、Ce3+からCe4+への変換を促した。このゲルを濾過して冷水で十分に洗浄し、過剰のアンモニアを除去した。さらに、得られたゲル(含水酸化物)を80℃、400℃、500℃の各温度で大気中4hrの乾燥を行った。
乾燥させたゲルについて、参考例1、実施例2、参考例3、実施例4〜6、参考例7、実施例8〜9と同一の方法を用いて、F吸着性能を測定した。また、乾燥させたゲルをさらに600℃×2hrで乾燥させ、600℃乾燥前後の重量変化から含水量を求めた。
表4に、含水量及び溶液中に残存しているFイオン濃度を示す。表4より、乾燥温度が高くなるほど、含水量が低下し、溶液中のFイオン濃度が増加(F吸着能が低下)することがわかる。なお、粉末XRDの結果、500℃、600℃乾燥を行ったものは、含水のCeO2に由来する幅広い回折線は見られず、立方晶の無水CeO2に由来する鋭い回折線が見られた。
Figure 0005568111
参考例29、比較例18: 温度履歴の影響(2))
CeO2・nH2Oに代えて、80℃で乾燥させたCe(OH)4参考例29)及び500℃で乾燥させたCe(OH)4(比較例18)を用いた以外は、参考例20と同様の手順に従い、MEAを作製した。Ce(OH)4の添加量は、いずれも5.0wt%とした。
得られたMEAについて、参考例20と同一条件下で電圧低下割合及び空気極側ドレイン水中のF濃度を測定した。
表5にその結果を示す。表5より、80℃乾燥は、500℃乾燥に比べて、電池劣化が大幅に抑制されることがわかる。
Figure 0005568111
(参考例30〜34、比較例19: 電解質膜への添加量の影響)
ZrO2・nH2O(キシダ化学製)を電解質膜に添加した。電解質膜への添加方法は、ガラスシャーレを用いたキャスト法とした。すなわち、ナフィオン(登録商標)ソリューション(デュポン社製)の固形樹脂成分に対し、0.005〜1.5wt%添加し、4分間の超音波攪拌の後、ガラスシャーレにキャストした。次いで、溶媒を60℃で除去し、最終的に120℃×2hr乾燥させた。
次に、60wt%Pt/C触媒0.5gに蒸留水2.0g、エタノール2.5g、プロピレングリコール1.0g、22wt%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)0.9gをこの順で加え、超音波ホモジナイザーで分散させて触媒インクを作製した。これをPTFEシート上に塗布し、乾燥して転写電極を得た。Pt使用量は、カソードが0.5〜0.6mg/cm2、アノードが0.3〜0.4mg/cm2の範囲で一定とした。これらの電極を36mm角に切り出し、キャスト膜の両面に熱圧着(120℃、50kgf/cm2(4.9MPa))して、MEAを作製した。拡散層は、参考例20で使用したものと同じものを用いた。
キャスト膜を製造後、目視により製膜状況を調べた。なお、ひび割れが多数発生し、不均一な膜となったものを「×」、均一な膜となった場合を「○」とした。
また、MEAについて耐久試験を行った。耐久試験は、参考例20と同一条件下で行い、耐久試験前後で0.8A/cm2における電圧値の低下割合を比較した。
表6に、その結果を示す。添加量が1.5wt%になると、自立した膜が得られず、発電試験を行うことができなかった。一方、添加量が0.01〜1.0wt%であると、製膜性を低下させることなく、電圧低下を抑制できることがわかった。
Figure 0005568111
(実施例35〜39、比較例20: 拡散層への添加量の影響)
拡散層は、炭素繊維織物からなるカーボンクロスを用い、電極面側にアセチレンブラックとPTFE粒子とLa(OH)3粉末(和光純薬工業(株)製)とを含む撥水ペーストをスプレー塗布し、撥水層を形成した。撥水層の全体の目付量は、10mg/cm2とし、La(OH)3粉末の添加量は、0.005〜6.0mg/cm2とした。
得られた拡散層を用いてMEAを作製した。なお、La(OH)3を含む拡散層の使用は、両極、空気極のみ、又は燃料極のみとした。また、MEAの製造条件は、触媒層にCeO2・nH2O粉末を添加しなかった以外は、参考例20と同一とした。
さらに、得られたMEAを用いて耐久試験を行った。耐久試験条件は、実施例20と同一とした。
表7に、その結果を示す。拡散層へのLa(OH)3の添加量が6.0mg/cm2である場合、親水性が高すぎたために0.8A/cm2での電圧値が不安定となり、耐久試験を行うことができなかった。一方、添加量が0.01〜5.0mg/cm2であると、電圧低下を抑制できることがわかった。
Figure 0005568111
(実施例40〜42、比較例21: 触媒層への市販無機アニオン交換体の添加)
[1. 無機アニオン交換体を含む触媒インクの作製]
白金担持カーボン(Pt担持量45wt%)0.5gに対してイオン交換体(IXE−550(東亞合成(株)製))0.025g、及び蒸留水4gを加え、超音波分散(3分)した後、30分間放置した。この溶液にエタノール2g、プロピレングリコール1g、及びナフィオン(登録商標)溶液1gを加えて超音波分散(3分)し、触媒インク(以下、これを「触媒インク(A)」という)を得た。
[2. 無機アニオン交換体を含まない触媒インクの作製]
白金担持カーボン0.5gに対して、蒸留水4gを加え、超音波分散(3分)した後、30分間放置した。この溶液に対してエタノール2g、プロピレングリコール1g、及びナフィオン(登録商標)溶液1gを加えて超音波分散(3分)し、触媒インク(以下、これを「触媒インク(B)」という)を得た。
[3. 触媒シートの作製]
PTFEシートを用意し、PTFEシート上に触媒インク(A)又は触媒インク(B)を、それぞれ均一の厚さとなるように塗り、60℃で6時間真空乾燥した。このようにして作製した触媒シートを、それぞれ、「触媒シート(A)」、「触媒シート(B)」と呼ぶ。
[4. MEAの作製]
6cm×6cmのナフィオン(登録商標)112膜の表面に触媒シート(A)又は(B)(3.6cm×3.6cm)を転写し、4水準のMEA(実施例40〜42、比較例21)を作製した。
[5. 耐久試験]
得られたMEAを用いて耐久試験を行った。耐久試験は、参考例20と同一条件下で行い、耐久試験前後で0.8A/cm2における電圧値の低下割合を比較した。
表8に、その結果を示す。イオン交換体を添加したMEAは、未添加に比べて電圧低下が少ないことがわかる。
Figure 0005568111
(比較例22)
0.1M Ce(NO3)3水溶液100mLに1.0M NH3水溶液100mLを加え、これにさらにFe2(SO4)3・5H2Oを0.002M加えて、攪拌しながら80℃×4hr反応させ、水酸化セリウムを共沈させた。途中で30wt%過酸化水素水を10mL添加して、Ce3+からCe4+への変換を促した。このゲルを濾過して冷水で十分に洗浄し、過剰のアンモニアを除去した。得られたゲル(含水酸化物)を大気中80℃×4hr乾燥させた。
さらに、乾燥させたゲルを触媒層に含むMEAを作製した。MEAの製造条件は、CeO2・nH2O粉末に代えてFeを含むゲルを用いた以外は、参考例20と同一とした。
参考例27で合成されたゲルに含まれるFeの重量をICPによって分析したところ、30ppmであった。一方、比較例22で得られたゲルに含まれるFeの重量は、0.13wt%であった。さらに、比較例22で得られたゲルを触媒層に添加したMEAを用いて耐久試験を行ったところ、電圧低下率は、6.8%であり、参考例27で合成されたゲルを用いたMEA(参考例29)より大幅に増加した。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に適用することができる。
また、難溶性無機アニオン交換体が固定された固体高分子電解質の用途は、固体高分子型燃料電池の電解質膜あるいは触媒層内電解質に限定されるものではなく、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質膜、電極材料等としても用いることができる。

Claims (7)

  1. 以下の構成を備えた固体高分子型燃料電池。
    (1)前記固体高分子型燃料電池は、
    電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体と、
    前記電解質膜及び前記電極のいずれか1以上に添加された、Feを実質的に含まない難溶性無機アニオン交換体と
    を備えている。
    (2)前記難溶性無機アニオン交換体は、La(OH) 3 、Ca(OH) 2 、Al(OH) 3 、Bi(OH) 3 、Mg(OH) 2 、Mg 6 Al 2 (OH) 16 CO 34 2 O、及び、Co(OH) 3 からなる群から選ばれるいずれか1以上の化合物からなる。
  2. 前記電極は、触媒層と拡散層の2層構造を持ち、
    前記難溶性無機アニオン交換体は、前記電解質膜、前記触媒層、及び前記拡散層のいずれか1以上に添加されている請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
  3. 前記難溶性無機アニオン交換体は、400℃以下の熱履歴を受けたものである請求項1又は2に記載の固体高分子型燃料電池。
  4. 前記電解質膜への前記難溶性無機アニオン交換体の添加量(=前記難溶性無機アニオン交換体の重量×100/(前記難溶性無機アニオン交換体の重量+前記電解質膜の重量))は、0.01〜1.0wt%である請求項1から3までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
  5. 前記触媒層への前記難溶性無機アニオン交換体の添加量(=前記難溶性無機アニオン交換体の重量×100/前記触媒層の固形分の重量)は、0.01〜10.0wt%である請求項1から4までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
  6. 前記拡散層への前記難溶性無機アニオン交換体の添加量は、0.01〜5.0mg/cm2である請求項1から5までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
  7. 前記難溶性無機アニオン交換体の室温における溶解度積Kspが1.0×10-3以下である請求項1から6までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
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