JP2006253042A - 固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超少量白金担持電極の触媒層を備えた固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法において、触媒金属の電気化学的な反応に対する活性を飛躍的に向上させることができる製造方法および触媒層に亀裂が生じない製造方法を提供する。
【解決手段】固体高分子形燃料電池の製造方法において、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合した後に、その混合液とカーボンとを含むスラリー分散物を形成する第1の工程と、その分散物を乾燥して陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む混合物を形成したのちに、その混合物中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着し、つぎにその吸着した陽イオンを化学的に還元する工程とがあることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法に関するものである。
固体高分子形燃料電池(PEFC)の単セルは、陽イオン交換膜/電極接合体を一対のセパレータで挟持した構造である。陽イオン交換膜/電極接合体は、陽イオン交換膜の一方の面にアノ−ドを、もう一方の面にカソ−ドを接合したものである。セパレータにはガス流路が加工されており、たとえば、アノ−ドに燃料として水素、カソ−ドに酸化剤として酸素を供給することによって、電力が得らえる。アノ−ドおよびカソ−ドでは、つぎのような電気化学反応が進行する。
アノ−ド:2H→4H+4e
カソ−ド:O+4H+4e→H
上記のような電気化学反応には触媒が必要である。触媒では、プロトン(H)および電子(e)の授受がおこる。つまり、電気化学反応は、酸化剤あるいは燃料などの反応物質と、プロトン(H)と、電子(e)との三者が存在する界面(以下、この界面を反応界面と呼ぶことにする)で進行する。したがって、燃料電池の出力密度は、反応界面を増大することによって向上する。反応界面を多く形成するには、反応物質の移動チャンネル、プロトンの伝導チャンネルおよび電子の伝導チャンネルが三次元的に形成された電極を製作することが必要である。
さらに、プロトンは、数個の水和水をともなって陽イオン交換膜をアノードからカソードに移動する。このために、PEFCの電極では、アノードへの水の供給とカソードからの水の排出との両立が必要である。
固体高分子形燃料電池のアノードおよびカソードには、電気化学反応を円滑に進めるために触媒金属が備えられる。その触媒金属には、反応に関与する電子、反応物質および水が、導電性多孔質体を介して授受される。その導電性多孔質体は電極とセパレータとの間に配されており、電子の伝導、反応物質の拡散および水の移動を円滑にするために、その導電性多孔質体には撥水性を付与した多孔質なカーボンペーパーなどが用いられる。
従来、上述の三次元構造を持つ電極は、カーボン担体に白金などの触媒金属の粒子を担持させた触媒担持カーボンとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子との分散物を導電性多孔質体の電極基材に塗布(厚み3〜30μm)して加熱乾燥したのちに、その上に陽イオン交換樹脂の溶液を塗布・含浸・乾燥させる方法によって、または触媒担持カーボンと陽イオン交換樹脂の溶液そして必要に応じてPTFE粒子とからなるペーストを導電性多孔質体の電極基材に塗布(塗布厚み3〜30μm)したのちに、乾燥する方法によって製作される(本明細書では、これらの製造方法を用いて製作した電極を従来電極と呼ぶ)。
しかしながら、従来の触媒電極では、触媒金属が反応界面以外にも存在するので、触媒金属の利用率は低く、例えば非特許文献1では、わずかに15〜20%程度であるという問題が報告されている。
その問題を解決するために、カーボンの表面と陽イオン交換樹脂のイオンクラスターと呼ばれるプロトン伝導経路との接面に触媒金属を選択的に形成することによって、触媒金属の利用率を著しく向上させた電極の製法が、特許文献1や非特許文献2で開示されている。本明細書では、この電極を超少量白金担持電極と呼ぶことにする。
この電極の触媒層は、カーボンおよび陽イオン交換樹脂を含む混合物を用意したのちに、その陽イオン交換樹脂の対イオンと触媒金属の陽イオンとのイオン交換反応により、その陽イオンを陽イオン交換樹脂に吸着させ、さらに吸着したその陽イオンを化学的に還元することによって製造される。この電極の触媒金属は、電気化学的な反応が進行する反応界面に選択的に担持されるので、その金属の利用率が従来の燃料電池用電極よりも著しく高い。この触媒層を備えた電極を持つPEFCは、少量の触媒金属で高出力を示す。
特開2000−012041号公報 Edson A.Ticianelli、J.Electroanal. Chem、251、275(1988) 人見周二他、第40回電池討論会要旨集、167−168、(1999)
超少量白金担持電極の触媒層において、金属触媒の粒径および分散性はカーボンの表面を被覆する陽イオン交換樹脂の被膜の均一性に依存するもので、微細な触媒金属を高分散に担持させるためには薄くて均一な陽イオン交換樹脂の被膜をカーボンの表面に形成しなければならない。
カーボンには数nmから数十nmの大きさの微細孔が存在するので、従来の陽イオン交換樹脂とカーボンとを混合する方法では、カーボンの微細孔に陽イオン交換樹脂を十分に深く含浸することが困難であった。この不十分な含浸によって、薄くて均一な陽イオン交換樹脂の被膜をカーボンの表面に形成することができなかったので、触媒金属の粒子を微細化および高分散することができなかった。そのため、超少量白金担持電極の電気化学的な反応に対する活性、およびこの電極を備える燃料電池の高出力化は不十分なものであった。
超少量白金担持電極を備えるPEFCの性能をさらに向上させるためには、触媒層のプロトン伝導率を高くすることが有効である。触媒層のプロトン伝導率は、触媒層製作に用いる陽イオン交換樹脂のイオン交換容量の値を大きくすることによって高くなる。このイオン交換容量とは、陽イオン交換樹脂の単位質量あたりのイオン交換基のモル数(mol/g)で表される値である。
イオン交換容量を大きくすることによって、触媒層のプロトン伝導率が高くなるが、逆に触媒層製作用の分散物の結着性が低下する。そのため、イオン交換容量の高い陽イオン交換樹脂を用いた触媒層には亀裂が発生し、その結果、触媒層の電気伝導率が著しく低下し、PEFCの電圧が低下するという問題があった。
そこで、本発明の目的は、超少量白金担持電極の触媒層を備えた固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法において、カーボンの微細孔の深くまで陽イオン交換樹脂の溶液を含浸させて薄い陽イオン交換樹脂の被膜をカーボンの表面に均一に形成し、触媒金属を微細化および高分散化し、触媒金属の電気化学的な反応に対する活性を飛躍的に向上させることができる製造方法および触媒層に亀裂が生じない製造方法を提供することにある。
請求項1に発明は、固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法において、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合した後に、その混合液とカーボンとを含むスラリー分散物を形成する第1の工程と、その分散物を乾燥して陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む混合物を形成したのちに、その混合物中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着し、つぎにその吸着した陽イオンを化学的に還元する工程とがあることを特徴とする。
請求項2の発明は、上記固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法の第1の工程において、分散物中のアミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒の含有量が10〜60質量%であることを特徴とする。
請求項3の発明は、上記固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法において、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒が、ジメチルホルムアミドあるいはジメチルスルホキシドであることを特徴とする。
本発明によれば、固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法の第1の工程において、まず、陽イオン交換樹脂の溶液とアミド結合あるいはスルホニル結合を備える有機溶媒とを混合することにより、陽イオン交換樹脂の溶液の粘度が低下するので、陽イオン交換樹脂溶液はカーボンの一次粒子間の空隙に奥深くまで浸透することが可能になる。そして、浸透した溶液から陽イオン交換樹脂の薄い被膜がカーボンの表面に均一に形成され、触媒金属が微細化および高分散化されるので、触媒金属の電気化学的反応に対する活性を飛躍的に向上させることができ、固体高分子形燃料電池を高出力化することができる。
また、この第1の工程において、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とカーボンとを混合してスラリー分散物とすることにより、このスラリー分散物中での陽イオン交換樹脂とカーボンとの分散性が向上する。そのため、陽イオン交換樹脂が均一な厚みでカーボン粒子を被覆し、カーボン粒子同士が陽イオン交換樹脂でつながり、強固な電子伝導チャンネルが形成される。その結果、本発明の燃料電池用電極の触媒層には亀裂が発生せず、触媒層は高い電気伝導率を示すようになり、固体高分子形燃料電池を高出力化することができる。
本発明は、固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法において、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合した後に、その混合液とカーボンとを含むスラリー分散物を形成する第1の工程と、その分散物を乾燥して陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む混合物を形成したのちに、その混合物中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着し、つぎにその吸着した陽イオンを化学的に還元する工程とがあることを特徴とする。
第1の工程では、まず、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合した後に、その混合液とカーボンとを含むスラリー分散物を形成する。この混合順序を採用した場合に、陽イオン交換樹脂溶液はカーボンの一次粒子間の空隙に奥深くまで浸透することが可能となる。
つぎの工程では、第1の工程で得られたスラリー分散物を、例えばスプレー法、スクリーン印刷法もしくはドクタ−ブレ−ド法などによって基体に塗布する。基体には、たとえば高分子フィルムを用いることができる。つぎに、塗布したスラリーを乾燥することによって、スルホキシド結合あるいはアミド結合をもつ溶媒、水およびアルコールを除去する。
乾燥温度は、スルホキシド結合あるいはアミド結合をもつ溶媒を除去するためには60℃以上が好ましく、陽イオン交換樹脂の劣化を防ぐためには130℃以下が好ましい。この工程によって、基体上に陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む固体の混合体が形成される。この混合体は、シート状以外に、塊状あるいは粉末状としてもよい。
この混合体がシート状である場合には、スラリー分散物を高分子シートあるいは金属箔などの基材に塗布してのちに乾燥することによって得られる。混合体が塊状である場合には、スラリーを容器などに入れた状態で乾燥することによって得られる。さらに、混合体が粉末状である場合には、スラリーを噴霧乾燥する方法あるいはシート状や塊状の混合体を粉砕することによって得られる。
つぎに、触媒金属の陽イオンが含まれる化合物などを水またはアルコールを含む水に溶解した溶液を調製する。つぎに、この溶液中に、混合体を浸漬することによって、その混合体に含まれる陽イオン交換樹脂に触媒金属の陽イオンを吸着させる。この吸着は、その陽イオン交換樹脂の対イオンと触媒金属の陽イオンとのイオン交換反応によるものである。このとき、金属元素を含む陽イオンを2種類以上用いることによって、混合体に2種類以上の金属元素を吸着させてもよい。
触媒金属の陽イオンは、陽イオン交換樹脂が被覆されずに露出しているカーボン表面には吸着し難く、陽イオン交換樹脂の対イオンとのイオン交換反応により陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路に優先的に吸着するものが好ましい。そのような吸着特性を持つ触媒金属となる陽イオンとして、白金族金属を含む陽イオン、あるいは白金族金属の錯イオンを用いることができる。
陽イオンを吸着させた後、混合体を脱イオン水で洗浄する。この洗浄によって、混合体に含まれる陽イオン交換樹脂に吸着した陽イオン以外は、取り除かれる。その取り除かれる陽イオンには、たとえばカーボンに吸着したものなどが含まれる。
最後に、混合体に吸着した触媒金属の陽イオンを化学的に還元して、カーボンと陽イオン交換樹脂と触媒金属を含む触媒層を形成する。化学的還元の例としては、水素ガスを含むガスまたはヒドラジンを含む不活性ガスによって気相還元する方法がある。ここで、水素ガスを含むガスとは水素ガスと、窒素、ヘリウムおよびアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスであることが好ましい。さらにこの混合ガスは、水素ガスを10vol%以上含むか、純水素ガスであることが好ましい。
気相還元の温度は、触媒金属の陽イオンの還元反応が起こる100℃以上であることが好ましく、陽イオン交換樹脂の劣化を防ぐため200℃以下であることが好ましい。そして、気相還元の時間は、充分に触媒金属の陽イオンを還元させるため6時間以上であることが好ましい。
還元工程において、カーボンは白金族金属の陽イオンの還元反応に対して触媒としての活性があるので、200℃以下の温度でも、陽イオン交換樹脂に含まれる陽イオンを還元することができる。たとえば、パーフルオロカーボンスルホン酸型陽イオン交換樹脂膜中に吸着した白金アンミン錯イオン[Pt(NH2+の水素による還元温度は約300℃で(境哲男、大阪工業技術試験所季報、36、10(1985))あるが、交換基を修飾したカーボン粒子(Denka Black、Vulcan XC−72、Black Peal 2000等)の表面に吸着した[Pt(NH2+のそれは、180℃であることが報告されている(K.Amine、M.Mizuhata、K.Oguro、H.Takenaka、J.Chem.Soc.Faraday Trans.、91、4451(1995))。
この活性によって、カーボンの表面近傍の陽イオンが優先的に触媒金属まで還元されるので、そのカーボンの表面に触媒金属が生成する。その触媒金属の表面は、陽イオンの還元反応に対して触媒としての活性があるので、陽イオン交換樹脂中の陽イオンがその表面で次々に触媒金属まで還元される。この工程では、還元剤の種類、還元剤濃度、還元圧力、還元時間、還元温度を適時調整することによって、カーボンの表面に生成する触媒金属の粒径や表面性状を制御することができる。
上記第1の工程とそれに続く工程をそれぞれ2回以上おこなうことによって、混合体に2つ以上の触媒金属を担持してもよい。
以上の第1の工程とそれに続く工程とを経ることによって、触媒金属を陽イオン交換樹脂のイオン伝導経路とカーボンの表面との接面に選択的に担持した、本発明の固体高分子形燃料電池用超少量白金担持触媒を製作することができる。
さらに、上記の工程で得られた固体高分子形燃料電池用触媒を陽イオン交換膜の表面に接合し、陽イオン交換膜/触媒層積層体を形成する。
この接合工程は、加熱圧着することによりおこなうことができる。加熱温度は、陽イオン交換樹脂のガラス転移温度の近傍であることが好ましい。しかしながら、水が凍結しない0℃以上であれば、加圧することによって、電極と陽イオン交換膜とを接合することができる。その接合には、平プレス機あるいはロールプレス機を用いることができる。
本発明で用いる陽イオン交換樹脂は、プロトン伝導性を有する樹脂、たとえばパーフルオロカーボンスルホン酸型あるいはスチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いることができる。さらに、パーフルオロカーボンカルボン酸型あるいはスチレン−ジビニルベンゼンカルボン酸型陽イオン交換樹脂を使用することができるが、化学的な安定性が高く、かつプロトン伝導性が高いパーフルオロカーボンスルホン酸型樹脂、例えばデュポン社製のナフィオン膜を用いることができる。さらに、陽イオン交換樹脂のイオン交換容量は、触媒層のプロトン伝導率が高くなることから0.9×10−3mol/g以上であることが好ましい。
陽イオン交換樹脂を溶解する溶媒には、水とアルコールとが任意の割合で混合したものを用いることができる。
本発明の分散物に含まれるアミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒の例としては、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド(NMF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素などで、さらに、これらの溶媒を、単独で、あるいは混合して用いてもよい。これらの中でもとくに、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノンが安価で手に入りやすく、触媒層の電気伝導率向上の効果が大きいので好ましい。
本発明のスラリー分散物に含まれるアミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒は、陽イオン交換樹脂の溶液と任意の割合で混合することができるが、スラリー分散物を用いて製作する触媒層の電気伝導率向上の効果が高いので、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
本発明の触媒層に用いるカーボンとしては、粉末状、顆粒状あるいは繊維状などの形態のものを用いることができ、さらにそれらの混合物をも用いてもよい。カーボンには、電子伝導性が高く、かつ表面積が大きいカーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、活性炭などが好ましく、とくに、カーボンブラックは触媒金属が高分散するので好ましい。
第1の工程における混合方法には特に限定はなく、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂溶液とカーボンとが混ざり合うことができれば、どのような方法を用いてもかまわない。混合には攪拌羽、攪拌子、ミキサー、ボールミルなどを用いることができる。この混合の過程において、その混合物に超音波を照射することによって、さらに効果的に混合溶液とカーボンと混ぜることができる。
本発明の燃料電池用電極の触媒層に担持する触媒金属は、電気化学的な酸素の還元反応および水素の酸化反応に対する触媒活性が高いので、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、オスミウムなどの白金族金属およびその合金を含むことが好ましい。触媒層の厚みは、ガスの拡散が充分促進されるので、50μm以下、さらに好ましくは30μm以下であることが好ましい。
本発明で用いる、触媒金属の陽イオンが含まれる化合物としては、白金族金属を含む陽イオン、あるいは白金族金属の錯イオンを用いることができる。たとえば、その錯イオンとして、[Pt(NH2+や[Pt(NH4+などとあらわすことができる白金のアンミン錯イオン、または[Ru(NH2+や[Ru(NH3+が好ましい。さらに、アンミン錯体イオンの他にも、硝酸基あるいはニトロソ基を配位した白金族金属の錯イオンを用いることができる。
本発明の触媒層と陽イオン交換樹膜との接合体の断面の模式図を図1に示す。図1において、11は本発明の燃料電池用電極の触媒層、12は陽イオン交換膜、13はカーボン、14はカーボンを被覆する陽イオン交換樹脂、15は触媒金属、16は細孔である。
図1に示すように、カーボン13と陽イオン交換樹脂14とが混ざり合うことによって、カーボン13と陽イオン交換樹脂14とが三次元的に分布する。カーボン13の表面には、触媒金属15の微細粒子が担持されている。さらに、そのカーボン13と陽イオン交換樹脂14との混合物には、複数の細孔16が形成される。この触媒層11では、カーボン13、陽イオン交換樹脂14および細孔16が、それぞれ電子の伝導経路、プロトンの伝導経路および反応物と水との移動経路を形成する。これらの3つ経路が、触媒層11に三次元的に形成されるので、反応物、プロトン(H)および電子(e)とが存在する反応界面が増大する。
この超少量白金担持電極では、カーボン表面に陽イオン交換樹脂の被膜が均一に形成されているとともに、カーボン粒子同士がつながっている。したがって、この触媒層は高い電気伝導率を有する。さらに、電極反応に関与しない触媒金属が極めて少ないので、触媒金属の利用率が著しく高い。さらに、この触媒層の触媒金属は、陽イオン交換樹脂のイオン伝導経路とカーボンとの接面に選択的に触媒金属が担持された構造を有するので、触媒金属の利用率がさらに高くなる。
触媒層11の触媒金属は、選択的に陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路とカーボンの表面との接面に担持されている。その構造を説明するために、触媒層のカーボンの表面近傍を模式的に図2に示す。図において、21はカーボン、22はカーボンを被覆する陽イオン交換樹脂、23は触媒金属、24はイオン伝導経路(親水性領域)、25は疎水性領域である。陽イオン交換樹脂22はイオン伝導経路(親水性領域)24と疎水性領域25とから構成される。イオン伝導経路24とカーボン21の表面との接面に触媒金属粒子23が選択的に担持されている。
ところで、パーフルオロスルホン酸樹脂などの陽イオン交換樹脂は、H.L.Yeager等(J.Electrochem.Soc.,128,1880、(1981))および小久見等(J.Electrochem.Soc.,132,2601(1985))の報告に記載されているように、主鎖が集合した疎水性領域と側鎖が集合した親水性領域とにミクロ相分離した構造であることが知られている。
その疎水性領域は、ポリテトラフルオロエチレンに類似の構造であるので、反応物および水の透過は著しく少ない。一方、そのプロトン伝導経路では、側鎖の先端に結合しているイオン交換基がクラスターを形成しており、そのクラスターに水が取り込まれることによって、対イオンが移動可能な状態になる。つまり、水、プロトンおよび反応物(水素または酸素)は、プロトン伝導経路を移動することができる。
したがって、陽イオン交換樹脂22のプロトン伝導経路24とカーボン21の表面との接面に担持された触媒金属粒子23は反応界面を形成することができるので、電気化学的な反応に対して活性である。逆に、陽イオン交換樹脂22の疎水性領域25とカーボン21の表面に存在する触媒金属は反応物およびプロトンの供給がおこらないので、電気化学的な反応に対して不活性である。
つぎに、亀裂の生じた従来の触媒層と陽イオン交換膜との接合体の断面の模式図を図3に示す。図3において、31は従来の触媒層、32は陽イオン交換膜、33および38はカーボン、34はカーボン33の表面を被覆する陽イオン交換樹脂、35は触媒金属、36は細孔、37は亀裂によってカーボンとカーボンとの連通が切断された部分である。この触媒層において、カーボン38に担持されている触媒金属35で起こる電極反応に関与する電子は電極内部を迂回するので、電気抵抗が増大する。したがって、この触媒層の電気伝導率は低くなる。
本発明の触媒層を備える陽イオン交換膜/電極接合体(MEA)は、たとえばつぎの方法を用いて製造することができる。まず、本発明の燃料電池用電極の触媒層を陽イオン交換膜の少なくとも一方の面に接合する。接合は、触媒層を陽イオン交換膜に加熱圧着することによりおこなうことができる。接合の加熱温度は、たとえばナフィオン膜の場合では95℃から135℃であることが好ましい。接合には、平プレス機あるいはロールプレス機を用いることができる。
つぎに、本発明の触媒層と陽イオン交換膜との接合体の両面に電極基材を接合する。電極基材には導電性多孔質体であるカーボンペーパー、カーボンクロスおよびカーボンフィットなどの導電性多孔質カーボンを用いることができる。
本発明の燃料電池用電極の触媒層を備える固体高分子形燃料電池は、例えば、前述のMEAを反応ガス用流路が加工されたセパレータで挟持し、さらにその両面からエンドプレートで挟持しボルトで締めつけることによって製造することができる。
本発明の固体高分子形燃料電池の断面を模式的に図4に示す。図4において、41は固体高分子形燃料電池、42は燃料電池用電極、43は触媒層、44は電極基材、45は陽イオン交換膜、46はセパレータ、47はセパレータのガス流路、48はシール材である。
本発明の触媒層43が、陽イオン交換膜45の両面に接触するように配置される。その触媒層42の他方の面には、撥水性を付与した導電性多孔質体の電極基材44の一面が接触するように配置される。さらに、電極基材44の他面にはガス供給路47を備えるセパレータ46が接触するように配置される。すなわち、固体高分子形燃料電池41は、一対の触媒層43と、一対の電極基材44と、一対のセパレータ46とで陽イオン交換膜45を挟持することによって構成される。さらに、そのセパレータ間に、ガスケットやOリングなどのシール材48を配することによって、反応ガスの気密が保たれている。
本発明の固体高分子形燃料電池用電極の製造方法の第1の工程において、まず、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合して混合溶液(この混合溶液を「溶液X」とする)を作製し、次に溶液Xとカーボンとを混合してスラリー分散物を形成する場合、粘度が低下した溶液Xとカーボンとを混合することになる。
カーボン材料には、カーボン粉末を用いることができる。カーボン粉末は、たとえば直径30nm程度の一次粒子が凝集することによって二次粒子を形成している。この二次粒子には、多くの微細孔が形成されている。溶液Xとカーボン粉末との混合工程において、溶液Xの粘度が高い場合には、カーボン粉末の微細孔の奥深くまで溶液Xを含浸させることが困難である。逆に、溶液Xの粘度が低い場合には、カーボン粉末の微細孔の奥深くまで溶液Xを含浸させることができる。
溶液Xの粘度が低い場合の、溶液Xとカーボン粉末との混合物の状態を模式的に図5に示す。図5において、51はカーボンの二次粒子、52は微細孔、53は溶液Xである。カーボンの二次粒子51には微細孔52が形成されていおり、その表面には溶液X53が存在する。図5に示したように、溶液Xの粘度が低い場合には、溶液Xは微細孔52の奥まで含浸する。
これに対して、溶液Xの粘度が高い場合の、溶液Xとカーボンとの混合物の状態を模式的に図6に示す。図6において、51はカーボンの二次粒子、52は微細孔、54は溶液X、55は空隙である。カーボンの二次粒子51に形成された微細孔52の入口近傍では、粘度が高い溶液X54が存在する。溶液Xが微細孔52の奥まで完全に到達しないので、微細孔52には空隙55が形成される。この空隙55の形成は、溶液Xの粘度が高いので、微細孔52への浸透が十分ではないことに起因する。この空隙55の形成によって、カーボンの二次粒子51の表面には、陽イオン交換樹脂が存在しない部分が形成される。つづいて、溶液Xとカーボン粒子との混合物から溶媒が除去されることによって、陽イオン交換樹脂の被膜がカーボン粒子の表面に形成される。
溶液Xの粘度が低い場合について、陽イオン交換樹脂の被膜の状態を模式的に図7に示す。図7において、51はカーボンの二次粒子、52は微細孔、71は陽イオン交換樹脂の被膜である。
図7に示したように、溶液Xの粘度が低い場合には、カーボンの二次粒子51の表面を全体的に覆うように、陽イオン交換樹脂の被膜71が形成される。この場合、陽イオン交換樹脂の被膜の原料となる陽イオン交換樹脂の溶液が、カーボンの二次粒子51の微細孔にも存在するので、カーボン粒子の表面に均一で薄い被膜が形成される。
一方、溶液Xの粘度が高い場合について、陽イオン交換樹脂の被膜の状態を模式的に図8に示す。図8において、51はカーボンの二次粒子、52は微細孔、81は陽イオン交換樹脂の被膜である。
図8に示したように、溶液Xの粘度が高い場合には、カーボンの二次粒子51の表面を部分的に覆うように、陽イオン交換樹脂の被膜81が形成される。この場合、その被膜の原料となる陽イオン交換樹脂の溶液が、カーボンの二次粒子51の微細孔に存在しない空隙が形成されるので、不均一で部分的に厚い被膜が形成される。つまり、そのカーボンの二次粒子には、陽イオン交換樹脂の被膜が形成されない部分が存在する。
被膜形成後の工程において、カーボンと陽イオン交換樹脂との混合物中に含まれる陽イオン交換樹脂にの対イオンに触媒金属の陽イオンを吸着させ、そのつぎの工程で、吸着した触媒金属の陽イオンを還元することにより、触媒金属がカーボンの表面と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に選択的に析出させる。したがって、カーボンの表面と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面が存在しない部分には、触媒金属は析出しない。
つまり、図7に示すように陽イオン交換樹脂の被膜が全体的に形成される場合は、その触媒金属はカーボンの表面に高分散な状態に析出するが、逆に、図8に示すように陽イオン交換樹脂の被膜が部分的に形成される場合は、その触媒金属はカーボンの表面に偏った状態で析出する。後者の場合、その陽イオン交換樹脂の被膜の厚さも偏った状態になる。
この製法では、触媒金属の粒子径は陽イオン交換樹脂の被膜の厚さに応じて変化するので、その偏りによって析出した触媒金属の粒子径が不均一なものになる。たとえば、その被膜が分厚い部分には、粒子径が大きい触媒金属が生成する。その大きな粒子径が存在することによって、触媒金属の重量あたりの表面積は、均一で小さい粒径の場合よりも低減する。
言い換えると、陽イオン交換樹脂の溶液の粘度を低減することによって、カーボンの表面に均一な被膜を形成した場合には、微細で均一な粒子径の触媒金属を担持することができる。触媒金属は重量あたりの表面積が大きくなるので、電気化学的な反応に対する触媒活性が向上する。さらに、均一な被膜が形成されたカーボン表面には、触媒金属が析出する接面が増大するので、触媒金属が析出しやすくなる。この場合、混合物に含まれる樹脂に吸着した触媒金属の陽イオンのモル量に対して接面に析出する触媒金属のモル量が増大する。
[実施例1]
つぎの方法にしたがい分散物および固体高分子形燃料電池用触媒を製作した。第1の工程では、イオン交換容量1.10×10−3mol/gの陽イオン交換樹脂と溶媒とを含む5質量%陽イオン交換樹脂溶液80gとカーボン(Vulcan XC−72、キャボット社製)6gとジメチルスルホキシド36.86gとを混合して、ジメチルスルホキシドの含有量が30質量%である分散物Aを製作した。
つぎに、分散物Aを高分子フィルム(FEPシート)に膜厚20μmとなるように塗布し、室温で1時間乾燥した。さらに、分散物Aを100℃で3時間乾燥し、陽イオン交換樹脂溶液に含まれていた溶媒とジメチルスルホキシドとを除去することによって、陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む混合体Aを得た。
つぎに、この混合体Aを0.05mol/lの[Pt(NH]Clを含む水溶液中に6時間浸漬し、混合体A中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに[Pt(NH2+を吸着させ、その後、混合体Aを精製水で充分洗浄・乾燥した。
つぎに、シート状の混合体Aを1気圧、180℃の水素雰囲気中に6時間保持することによって、混合体A中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに吸着した[Pt(NH2+を還元し、白金を陽イオン交換樹脂のイオン伝導経路とカーボンの表面との接面に優先的に担持させた。つづいて、この混合体Aをイオン交換水に1時間浸漬し、還元工程で還元されなかった混合物中の不要な[Pt(NH2+を溶出し、本発明の固体高分子形燃料電池用触媒Aが含まれる触媒層Aを得た。この触媒層Aには、触媒金属としての白金が0.045mg/cm担持されていた。
つぎに、陽イオン交換膜(デュポン社製、ナフィオン115膜、膜厚約120μm)を0.5mol/lの硫酸で1時間煮沸したのちに、その膜に脱イオン水で5回の洗浄および1時間煮沸を施した。つづいて、触媒層Aをシート状にし、5cm×5cmの大きさに裁断したものを用意し、陽イオン交換膜の両面に触媒層Aを配したのち、加熱圧着(135℃、50kg/cm)することによって、陽イオン交換膜と触媒層Aとの接合体を得た。つぎに、陽イオン交換膜/触媒層A接合体からFEPシートを剥がし取ることによって、本発明の固体高分子形燃料電池用陽イオン交換膜/触媒層接合体を得た。
最後に、陽イオン交換膜/触媒層接合体の両面に、撥水性を付与した導電性多孔質体のカーボンペーパーを配したのち、一対のセパレータで挟持することによって、本発明の固体高分子形燃料電池を作製し、これを燃料電池Aとした。
[実施例2]
第1の工程では、まず、陽イオン交換樹脂の溶液と有機溶媒との混合溶液を調製した。陽イオン交換樹脂溶液としてNafion溶液(アルドリッチ社製、5質量%溶液)150gにジメチルホルムアミド(DMF)96gと2−プロパノール54gとを加えたのちに、振とう台で12時間以上攪拌することによって、ポリマー含有量2.5質量%、DMF含有量質量32%の混合溶液(溶液X)を作製した。
つぎに、溶液X84gを容器に採取し、カーボンとしてVulcan XC−72(キャボット社社製)を6g添加したのちに、羽式攪拌器を用いて超音波を照射しながら1時間攪拌して分散物を作製した。この容器を50℃の恒温水槽に設置し、分散物を羽式攪拌器で攪拌した。このとき、分散物の溶媒が蒸発するので、分散物は濃縮される。この濃縮によって、分散物の重量に対する固形分重量(カーボンと陽イオン交換樹脂の固形分との和)を14質量%に調整し、これを分散物Bとした。
つぎに、隙間が200μmのアプリケータを用いて、スラリーBを高分子シート(ダイキン工業社製、FEPシート)に塗布し、室温で乾燥することによって、陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む、厚みは約20μm(高分子シートの厚みを除く)の混合体Bを得た。
吸着および還元工程は実施例1と同様にして、本発明の固体高分子形燃料電池用触媒Bが含まれる触媒層Bを得た。この触媒層Bには、触媒金属としての白金が0.045mg/cm担持されていた。
さらに実施例1と同様にして、陽イオン交換膜/触媒層B接合体を備えた本発明の固体高分子形燃料電池を作製し、これを燃料電池Bとした。
[実施例3]
第1の工程で分散物を作製する場合の溶媒をジメチルホルムアミド(DMF)としたこと以外は実施例1と同様にして、分散物Cを製作した。さらに、この分散物Cを用いて、実施例1と同様にして、固体高分子形燃料電池用触媒Cが含まれる触媒層Cを得た。この触媒層Cには、触媒金属としての白金が0.044mg/cm担持されていた。
[実施例4]
第1の工程で分散物を作製する場合の溶媒をN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)としたこと以外は実施例1と同様にして、分散物Dを製作した。さらに、この分散物Dを用いて、実施例1と同様にして、固体高分子形燃料電池用触媒Dが含まれる触媒層Dを得た。この触媒層Dには、触媒金属としての白金が0.045mg/cm担持されていた。
[比較例1]
第1の工程で分散物を作製する場合ジメチルスルホキシドを用いず、そのほかの組成と製作方法は実施例1の分散物Aと同様にして、従来の触媒層Eを製作した。この触媒層Eには、触媒金属としての白金が0.043mg/cm担持されていた。
さらに実施例1と同様にして、陽イオン交換膜/触媒層E接合体を備えた本発明の固体高分子形燃料電池を作製し、これを燃料電池Eとした。
[触媒層の電気伝導率測定]
実施例1〜4および比較例1で得られた触媒層A、B、C、DおよびEについて、それぞれの電極を5cm×8cmの大きさに裁断し、四深針抵抗率計(Laresta−EP、三菱化学社製)を用いて電気伝導率を測定した。その測定の方法は、JIS K7194にしたがって5点測定でおこなった。測定結果を表1に示す。
Figure 2006253042
表1から明らかなように、本発明の触媒層A、B、CおよびDの電気伝導率は、比較例1の従来の触媒層えの場合と比べて著しく高くなることがわかった。このことは、アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒を触媒層製作用分散物に加えることによって、カーボンと陽イオン交換樹脂との分散性が向上するので、陽イオン交換樹脂が均一にカーボン粒子に被覆するとともに、カーボン粒子同士がつながって強固な電子伝導チャンネルを形成したためであると考えられる。
[実施例5および6]
[実施例5]
実施例1の分散物を製造する第1の工程において、分散物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の含有率が、分散物全体の5、10、15、20、30、40、50、55、60質量%とした分散物を作製し、これらの分散物を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池用触媒を製作した。
[実施例6]
実施例3の分散物を製造する第1の工程において、分散物中のジメチルホルムアミド(DMF)の含有率が、分散物全体の5、10、15、20、30、40、50、55、60質量%とした分散物を作製し、これらの分散物を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池用触媒を製作した。
実施例5および6で得られた触媒層の電気伝導率を、実施例1と同様の方法で測定し、触媒層の電気伝導率と、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルホルムアミド(DMF)の含有量との関係を図9に示す。図9において、記号□はDMSOの場合の、記号◆はDMFの場合の関係を示す。
図9から、DMSOまたはDMFの含有量が10質量%以上、60質量%以下のときに、電気伝導率向上の効果が現れることがわかった。とくに、DMSOまたはDMFの含有量が20質量%以上、50質量%以下のときに、高い効果が得られた。そして、DMSOまたはDMFの含有率が30質量%のときに、触媒層の電気伝導率は最大となった。
[燃料電池の特性]
実施例1の燃料電池A、実施例2の燃料電池Bおよび比較例1の燃料電池Eについて、電圧―電流特性を測定した。測定条件は、セル温度を80℃、アノードガスを純水素、アノード利用率を80%、アノード加湿温度を80℃、カソードガスを空気、カソード利用率40%、カソード加湿温度を80℃とした。
試験結果を図10に示す。図10において、曲線Aは実施例1の燃料電池Aの、また、曲線Eは比較例1の燃料電池Eの、電流−電圧特性を示す。なお、図10には示していないが、実施例2の燃料電池Bの電流−電圧特性は、実施例1の燃料電池Aの電流−電圧特性とほぼ同じであった。
実施例1の燃料電池A、実施例2の燃料電池Bおよび比較例1の燃料電池Eにもちいた触媒層について、吸着した白金アンミン錯体の陽イオンのモル数、析出した白金のモル数、白金の析出率、白金の担持量および白金重量あたりの電流密度を、表2にまとめて示す。白金の析出率は、析出した白金のモル数に対する吸着した白金アンミン錯体の陽イオンのモル数の割合で定義される。さらに、白金重量あたりの電流密度は、触媒金属の電気化学的な反応に対する触媒活性の指標であり、セル電圧0.7Vにおける電流密度を白金の担持量で除した値である。
Figure 2006253042
このように、図10から、実施例1の燃料電池Aの特性は、比較例1の燃料電池Eの特性よりも優れていることがわかったが、このことは、分散物Aにジメチルスルホキシドを添加した効果によって、触媒層Aの亀裂の発生を抑制できたことと、その触媒層の電気伝導率が向上したこととに起因するものと考えられる。
これらの触媒層では、カーボンと陽イオン交換樹脂を含む混合物の塗布量がそれぞれ同等であり、さらにこれらの混合物には同等量の陽イオン交換樹脂がそれぞれ含まれるので、これらの電極に吸着する白金アンミン錯体の陽イオンのモル数はほぼ同じであった。
しかしながら、実施例1や実施例2の白金の析出率は、比較例1の場合よりも約6%高いことから、実施例1や実施例2の触媒層の製法では、比較例1の場合よりも、吸着した白金アンミン錯体の陽イオンから白金に還元されるものが多いことがわかる。さらに実施例1や実施例2の白金重量当たりの電流密度は、比較例1の場合よりも高いので、実施例1や実施例2の触媒層の触媒金属は、電気化学的反応に対する触媒活性が向上したことを示唆する。この触媒活性の向上は、白金粒子の微細化にともなう表面積の増大に起因するものと考えられる。
また、実施例1のように陽イオン交換樹脂の溶液の粘度を低減することによって、カーボンの表面に均一な被膜が形成される。その被膜の形成によって、微細で均一な粒子径の触媒金属を担持することができる。したがって、その触媒金属の微細化によって、重量あたりの表面積が大きくなるので、電気化学的な反応に対する触媒活性が向上する。さらに、均一な被膜が形成されたカーボン表面には、触媒金属が析出する接面が増大するので、その金属が析出しやすくなる。この場合、混合物に含まれる樹脂に吸着した触媒金属の陽イオンのモル量に対して接面に析出する触媒金属のモル量が増大する。
つまり、本発明の燃料電池用電極の製法が開示するように、粘度を低減した陽イオン交換樹脂の溶液を用いることによって、カーボンの表面と陽イオン交換樹脂のプロトン伝導経路との接面に選択的に担持した触媒金属を微細化および高分散化できるので、その触媒金属の電気化学的な反応に対する活性を飛躍的に向上することと、その触媒が付与された電極を備える燃料電池を高出力化することとができる。
本発明の燃料電池用電極の触媒層と陽イオン交換樹脂膜との接合体の断面を模式的に示した図。 触媒金属である白金が陽イオン交換樹脂のイオン伝導経路とカーボンの表面との接面に選択的に担持された電極の内部構造を模式的に示した図。 亀裂が発生した従来の触媒層と陽イオン交換膜との接合体の断面を模式的に示した図。 本発明の触媒層を備える固体高分子形燃料電池の断面を模式的に示した図。 溶液Xの粘度が低い場合の、溶液Xとカーボンとの混合物の状態を模式的に示す図。 溶液Xの粘度が高い場合の、溶液Xとカーボンとの混合物の状態を模式的に示す図。 粘度が低い溶液Xからカーボン材料の表面に形成された陽イオン交換樹脂の被膜の状態を模式的に示す図。 粘度が高い溶液Xからカーボン材料の表面に形成された陽イオン交換樹脂の被膜の状態を模式的に示す図。 DMSOまたはDMFのスラリーへの添加量と触媒層の電気伝導率の関係を示す図。 燃料電池AおよびEの電圧−電流特性を示す図。
符号の説明
11 本発明の固体高分子形燃料電池用電極の触媒層
12、32 陽イオン交換膜
13、21、33、38 カーボン
14、22、34 カーボンを被覆する陽イオン交換樹脂
15、23、35 触媒金属
16、36 細孔
24 陽イオン交換樹脂のイオン伝導経路(親水性領域)
25 陽イオン交換樹脂の疎水性領域
31 従来の触媒層
37 亀裂によってカーボンとカーボンとの連通が切断された部分
41 固体高分子形燃料電池
42 燃料電池用電極
43 触媒層
44 電極基材
45 陽イオン交換膜
46 セパレータ
47 セパレータのガス流路
48 シール材
51 カーボンの二次粒子
52 微細孔
53 粘度が低い陽イオン交換樹脂の溶液X
54 粘度が高い陽イオン交換樹脂の溶液X
55 空隙
71、81 陽イオン交換樹脂の被膜

Claims (3)

  1. アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒と陽イオン交換樹脂の溶液とを混合した後に、その混合液とカーボンとを含むスラリー分散物を形成する第1の工程と、その分散物を乾燥して陽イオン交換樹脂とカーボンとを含む混合物を形成したのちに、その混合物中の陽イオン交換樹脂の固定イオンに触媒金属の陽イオンを吸着し、つぎにその吸着した陽イオンを化学的に還元する工程とがあることを特徴とする固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法。
  2. 第1の工程において、分散物中のアミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒の含有量が10〜60質量%であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法。
  3. アミド結合あるいはスルホニル結合をもつ有機溶媒が、ジメチルホルムアミドあるいはジメチルスルホキシドであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用触媒の製造方法。
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