JP2008189251A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】波形サイプの長所を生かしつつ、公知のパターンよりもさらに深さ方向に十分な係合力を得ることができ、しかもブロックの倒れ込み方向によりその抑制効果が左右されにくい空気入りタイヤを提供する
【解決手段】複数のサイプを形成した複数のブロックを有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、サイプ10は、ブロック表面においてジグザグないし波線状であって深さ方向に波状溝として形成されており、波状溝は、波面方向に副波状部14を有し、かつ波の高さ方向に波の山部に凹部16、18を有する空気入りタイヤとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数のサイプを形成したブロックを複数有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤに関するものである。本発明の空気入りタイヤは、特にスタッドレスタイヤに適したものである。
スタッドレスタイヤのアイス性能を向上させる目的で、タイヤパターンの各部(センター部、メディエイト部、ショルダー部)に複数のサイプを配置したトレッドパターンが知られている。かかるサイプの形状としては、従来はサイプの深さ方向に形状が変化しない平面又は波形のサイプが一般的であった。このようなサイプをブロックに形成することにより、エッジ効果、除水効果、及び凝着効果が向上するため、サイプの本数は近年増加する傾向にあった。
しかるに上記のようにサイプの本数を増やしてサイプ密度を高めていくと、エッジ数は増えるものの、ブロック全体の剛性が低下してタイヤの接地時におけるブロック構成ゴムが変形して倒れ込むこととなり、逆にエッジ効果が小さくなって、アイス性能も低下するという問題が生じる。このため、サイプの形状を深さ方向で変化させて、サイプの倒れ込みを抑制した、いわゆる3次元サイプが近年注目されている(例えば特許文献1〜3)。
特許文献1に開示の空気入りタイヤは、サイプの倒れ込みを抑制すべく、ブロックに少なくとも1本のタイヤ幅方向のサイプを設け、そのサイプ内の互いに対面する係合面の一方に凸部を形成し、他方に該凸部に噛み合うディンプルを形成したスタッドレスタイヤである。
特許文献2に開示の空気入りタイヤは、波形サイプの振幅を深さ方向位置で変化させることにより、波形サイプを3次元化したものである。
特許文献3に提案されている空気入りタイヤは特許文献1、2の技術が有する課題を解決したものであって波形サイプの長所を生かしつつ、深さ方向に十分な係合力を得ることができ、しかもブロックの倒れ込み方向によりその抑制効果が左右されにくい空気入りタイヤを提供することを目的とし、ブロック表面の波線又はジグザグ線から深さ方向に延びる基準面を有すると共に、その基準面の表側頂部及び裏側頂部に対して縦断面が凹状の係合面を各々設けたサイプを有することを特徴とする。
特開平5−58118号公報 特開平12−6619号公報 特許第3516647号公報
しかし、上記のスタッドレスタイヤでは、係合面の一方に凸部のみを形成するため、倒れ込み抑制作用がブロックの倒れ込みの方向により異なるため、何れかの方向の倒れ込み抑制作用が不十分になるという問題がある。即ち、凸部の突出側へのブロックの倒れ込みには凸部とディンプルとの係合部の圧接力が大きくなって、倒れ込み抑制作用が大きくなるのに対して、逆方向の倒れ込みには凸部とディンプルとの係合部の圧接力が小さくなって、倒れ込み抑制作用も小さくなる。また、平面サイプ(直線サイプ)を前提とするため、波形サイプと比較して、エッジ効果の方向が制限されるという欠点もある。
特許文献2には、波形サイプの振幅を深さ方向位置で変化させることにより、波形サイプを3次元化したトレッドパターンが提案されているが、かかる振幅の変化のみでは、壁面の深さ方向のズレに対する十分な係合力が得られにくいため、サイプの倒れ込み抑制効果が不十分となり易い。
また特許文献3のパターンは、サイプはブロック表面の波線又はジグザグ線から深さ方向に延びており、この波に凹状の係合面が設けられ、係る波と凹凸の係合によりサイプの倒れ込みを防止しており、上記特許文献2の場合よりも優れているが、なおサイプの倒れ込み抑制効果の向上が求められる。
本発明の目的は、波形サイプの長所を生かしつつ、特許文献3のパターンよりもさらに深さ方向に十分な係合力を得ることができ、しかもブロックの倒れ込み方向によりその抑制効果が左右されにくい空気入りタイヤを提供することにある。
本発明の空気入りタイヤは、複数のサイプを形成した複数のブロックを有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、ブロック表面においてジグザグないし波線状であって深さ方向に波状溝として形成されており、
前記波状溝は、波面方向に副波状部を有し、かつ波の山部に凹部を有することを特徴とする。
上記構成のトレッドパターンによれば、波形サイプの長所を生かしつつ、特許文献3のパターンよりもさらに深さ方向に十分な係合力を得ることができ、しかもブロックの倒れ込み方向によりその抑制効果が左右されにくい空気入りタイヤが得られる。
本発明の3次元サイプを形成するタイヤ成形用の金型に配設するサイプ形成部材は、他の複雑なサイプ形状形成用部材と比較すると、比較的製造が容易であるという効果も有する。
本発明の好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1はタイヤトレッド部の平面図である。本発明の空気入りタイヤは、図1に示すように、複数のサイプ10を形成したブロック1を複数有するトレッドパターンTを備える。本実施形態では、周方向溝2と横溝3と斜溝4により区分された4角形ないし5角形のブロック1が形成され、タイヤ幅方向に6列のブロック1が配列されている。図1に例示したサイプは、トレッドのブロック表面に表れる形状はジグザグ状である。ジグザグ形状の場合、角部(ジグザグの山と谷)は、円弧状に形成することが好ましい。サイプを波形状とする場合、該波形状としては特に限定されるものではなく、正弦波に近いもの、直線と曲線とを交互に組み合わせた波線や矩形波に近いもの等を例示することができる。
図1に例示の形態においては、各々のブロック1には、タイヤ幅方向に向けて複数列のサイプ10が形成されており、各々のサイプ10は、ブロック1に隣接する溝に開口している。本発明においてサイプはこの形態に限定されるものではなく、ブロック1の側壁から露出せずにブロック1の側壁の内側に留めたもの、片側のみを留めたもの等を、パターン構成によって適宜使い分けることができる。
サイプ10における波線又はジグザグ線の周期は、いわゆる波形サイプの特性を好適に発現する上で1.5〜4.0mmであることが好ましく、振幅(h)は1.0〜2.5mmであることが好ましい。また、サイプ10の深さは3〜10mmであることが好まく、溝幅はしい。
本発明においては、サイプ10の溝幅が小さいほど、係合面によるブロック1の倒れ込み抑制効果が大きくなるが、溝幅が小さ過ぎるとエッジ部が生じにくくなり、エッジ効果が低減するため、サイプの溝幅は0.2〜0.7mmであることが好ましい。またサイプの密度は、0.1〜0.3mm/mmであることが好ましく、0.15〜0.3mm/mmであることがより好ましい。
図2はサイプの形状を示した部分断面を含むブロックの一部、例えば図1のP部を拡大した斜視図である。この図においては、トレッドのブロック1の表面に表れる形状はジグザグ形状であるサイプを例示した。サイプ10は、ブロックのゴム部21と23との間に波状溝として形成されており、該波状溝は、ゴム部21にブロックの深さ方向に連接して形成された断面が略三角形の凸条12a,12b,12c,12d,・・・と溝形成において対向するゴム部23に連接して形成された凸条13とが凸条の頂部を対向するゴム部の凸条の連接部である谷に臨むように形成された構造を有するものである。ブロック表面においてジグザグないし波線状のサイプの周期はT、振幅はhである。図2の例においては、凸条の山の先端と谷の底は尖っているが、上述のように円弧状に形成することが好ましい。
凸条12(12a,12b,・・・)は、この凸条が形成する波面方向に副波状部14を有し、かつ凸条12には凸条が形成する波の山部が凹となる凹部16、18が形成されている。凹部の数は、図2においては2個の例を示したが1個でも3個でもよく、特に限定されるものではない。また凹部の位置も特に限定されない。また図2においては、副波状部は、く字状の波が1個形成された例を示したが、凸条全体が波状であってもよく、また波の形状も特に限定されず、正弦波等の形状であってもよい。
図3は、図2の凸条12aを対向ゴム部23側から見た正面図である。凸条12aにはく字状の副波状部14が1個形成されており、凹部はサイプの深さ方向に対して垂直に溝状に2個形成されている(16、18)。副波状部14の振幅Hは1〜4mmであることが好ましい。
図4は図2のX−X断面図であり、図4(a)は凹部16、18の断面形状が円弧状の例であり、図4(b)は凹部16、18の断面形状がV字状の例である。図4(c)は図4(a)の凹部の部分を拡大した図である。サイプの溝を構成するゴム部21の凸条12(12c)の山部に形成された凹部16、18に対して、対向するゴム部23に連接して形成された凸条13の谷部に凸部16a、18aがサイプ10の溝幅を隔てて形成されて該凹部と凸部にて係合部を構成し、タイヤ接地時のブロックの変形時に係合し、ブロックの倒れ込みを抑制する作用を奏する。
サイプ10の山部に形成された凹部16,18の深さWは、サイプ10の波線又はジグザグ線の振幅(h)の1/2以下であることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。深さWが0.5mm未満では、サイプ10の倒れ込み抑制効果が不十分となる傾向があり、1.0mmを超えると、タイヤ加硫成型後の脱型時に抵抗が大きくなる傾向がある。
また、凹部16の開口部の大きさLは0.5〜2.5mmであることが好ましい。開口部の大きさLが0.5mm未満では、ブロック1の倒れ込み抑制効果が不十分となる傾向があり、2.5mmを超えると、深さWとの関係で、相対的に例えば凹部16と溝形成において対向するゴム部の凸部との傾斜角ないし湾曲が小さくなるため、ブロック1の倒れ込み抑制効果が不十分となる傾向がある。
1つの凸条に凹部が複数ある場合、その大きさ(開口部の大きさL、深さW)は同じであっても異なってもよい。1つの凸条に凹部が複数ある場合、その間隔P(図2参照)は小さすぎると、隣接する凹部を隔てるゴム部が薄くなって剛性が低下し、ブロック構成ゴム部の倒れ込み防止効果が十分ではなくなるので、1mm以上であることが好ましい。図2〜4に示した凹部は、溝状であるが、凸状の頂部から形成された半円球のような形状であってもよい。この場合凹部の深さは最大深さを意味する。
本発明の空気入りタイヤにおいて、サイプに形成された凹部は、ブロックのセンター部の深さがショルダー部の深さよりも浅いことが好ましい。係る構成によれば、センター部のブロックの倒れ込みがショルダー部のブロックより大きいために、アイス制動においては有効であり、ドライハンドリングにおいては、ショルダー部の倒れ込みがセンター部より小さいために有効なタイヤとなって、アイス制動、ドライハンドリング性能のバランスが良好なタイヤが得られる。深さの浅い凹部を有するサイプは、ブロックの各辺に最も近いものであることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤは、前述の如き作用効果を奏し、アイス性能に優れるため、特にスタッドレスタイヤとして有用である。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
(1)アイス制動性能
タイヤを実車(国産3000ccクラスのFFセダン)に装着し、1名乗車の荷重条件にて、凍結した路面を走行させ、速度40km/hで制動力をかけてフルロックした際の制動距離を指数で評価した。なお、評価は従来品(比較例1)を100としたときの指数表示で示し、数値が大きいほど良好な結果であることを示す。
(2)ドライハンドリング性能
タイヤを上記の実車の全輪に装着し、ドライ路面にて直進走行や旋回走行、制動などを実施し、ドライバーの官能試験によりハンドリング性を評価した。評価は、比較例1を100としたときの指数で示し、数値が大きいほどドライ性能に優れていることを示す。
(実施例1、2)
図1に示すようなトレッドパターンにおいて、図2のような形状であって、正弦波状の波形形状のサイプを形成してサイズ205/65R15のラジアルタイヤを製造した。サイプの深さは7mm、溝幅は0.3mm、振幅(h)2mm、周期2mm、凹部(係合面)は図2のように断面円弧状のものを2個設け、その中心はブロック表面からの深さを3mmと6mmとした。副波状部は図2のように略く字状であり、振幅Hは1.5mmであり、凹部の深さは、サイプを構成する同一の凸条においては同じとし、表1に示した。このタイヤを用いて、上記の各性能評価を行った結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、サイプの振幅(h)を2mmとし、凹部を形成しない点以外は同様にして、サイズ205/65R15のラジアルタイヤを製造し、上記の各性能評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、サイプの振幅(h)を3mmとし、凹部を形成しない点以外は同様にして、サイズ205/65R15のラジアルタイヤを製造し、上記の各性能評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2008189251
表1の結果より、本発明のサイプを備えたタイヤは、アイス制動、ドライハンドリング性能の双方において従来のタイヤの性能よりも優れたものであることが分かる。とりわけブロックのセンターの凹部の深さをショルダー部より浅く設定した実施例2のタイヤは、特に優れた性能を示すものであった。
タイヤトレッド部の平面図 サイプの形状を示した部分断面を含むブロックの斜視図 図2の凸条12aを対向ゴム部23側から見た正面図 図2のX−X断面図
符号の説明
10 サイプ
14 副波状部
16、18 凹部

Claims (4)

  1. 複数のサイプを形成した複数のブロックを有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、
    前記サイプは、ブロック表面においてジグザグないし波線状であって深さ方向に波状溝として形成されており、
    前記波状溝は、波状面方向に副波状部を有し、かつ波の山部に凹部を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記凹部の深さが0.5〜1.5mmであることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記副波状部の波の高さが1.0〜5.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記凹部は、前記ブロックのセンター部の深さがショルダー部の深さよりも浅いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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