JP2008183558A - 脱ハロゲン化触媒の製造方法 - Google Patents

脱ハロゲン化触媒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率よく脱ハロゲン化できる脱ハロゲン化触媒の製造方法、及び該製造方法により得られた脱ハロゲン化触媒を使用した脱ハロゲン化方法を提供する。
【解決手段】本発明の脱ハロゲン化触媒の製造方法は、pH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元することにより、パラジウムが担体に0.1〜5重量%担持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上である脱ハロゲン化触媒を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、脱ハロゲン化触媒の製造方法、及び該製造方法により得られた脱ハロゲン化触媒を使用したα−ハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化方法、高純度モノクロロ酢酸の製造方法に関する。高純度モノクロロ酢酸は薬品及び化粧品分野等における基礎化学品の合成原料として有用な化合物である。
α−モノハロカルボン酸やそのエステルはカルボン酸又はそのエステルをハロゲン化することにより製造されるが、この際対応するα,α−ジハロカルボン酸、α,α,α−トリハロカルボン酸やそれらのエステルが副生する。しかし、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルと上記の副生物とは一般に沸点が近似している(例えば、モノクロロ酢酸の沸点が188℃であるのに対し、ジクロロ酢酸の沸点は192℃である)ため、蒸留により両者を分離することは困難である。そこで、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルと上記副生物との混合物を、パラジウム触媒の存在下で水素化処理し、α,α−ジハロカルボン酸又はそのエステル等を脱ハロゲン化して対応するα−モノハロカルボン酸又はそのエステルに変換し、それによって純度の高いα−ハロカルボン酸又はそのエステルを得る方法が提案されている。しかしながら、この方法では、目的物であるα−モノハロハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化反応も並行して起こるため、反応の選択性を高めることが要求される。
特開平9−169691号公報には、第一工程でモノクロロ酢酸とジクロロ酢酸との混合物の水素化反応を400〜600ppmのジクロロ酢酸残留含有率になるまで行い、第二工程においてこの混合物を溶融結晶化処理に付すことを特徴とする高純度モノクロロ酢酸の製造方法が開示されている。しかし、工業的には一工程で高純度のモノクロロ酢酸を得ることが望ましい。
特公平8−8990号公報には、比較的微細な活性炭にパラジウムを担持した触媒を用いてα−ハロカルボン酸又はそのエステルを水素により脱ハロゲン化する方法が開示されている。この方法によれば、モノクロロ酢酸80重量%、ジクロロ酢酸4重量%、酢酸16重量%の混合物を水素化処理することにより、ジクロロ酢酸を900〜1700ppm程度にまで低減される(実施例1)。しかし、ジクロロ酢酸の含有量としては未だ不十分である。
脱ハロゲン化触媒としては、フランス特許第1,581,391号及び第2,046,424号、英国特許第1,188,745号、米国特許第2,863,917号、ドイツ特許第1,915,037号、特開昭50−30828号公報などに開示がある。例えば、特開昭50−30828号公報には、貴金属が担体材料の幾何学的表面上に著しく富化されている触媒を使用して、粗製モノクロロ酢酸中に含まれるジクロロ及びトリクロロ酢酸を水素で部分的に脱ハロゲン化する方法が開示されている。この方法によれば、約92.6%のモノクロロ酢酸、4.8%のジクロロ酢酸、0.1%のトリクロロ酢酸及び2.5%の酢酸よりなる混合物から、ジクロロ酢酸を0.5%含有するモノクロロ酢酸が得られる(例)。しかし、ジクロロ酢酸の含有量としては未だ十分といえない。
特開平9−169691号公報 特公平8−8990号公報 特開昭50−30828号公報
従って、本発明の目的は、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率よく脱ハロゲン化できる脱ハロゲン化触媒の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率よく脱ハロゲン化できる脱ハロゲン化触媒、及び、脱ハロゲン化方法、高純度モノクロロ酢酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、pHを特定の範囲に調製した水溶液中でパラジウム塩を担持させて得られた担持触媒は、特定量のパラジウムが担体に担持され、担持されたパラジウムのうち一定量以上のパラジウムが担体の表面から一定の深さまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が一定量以上であり、該担持触媒を水素による脱ハロゲン化方法に用いると、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化を抑制しつつ、α,α−ジハロカルボン酸若しくはα,α,α−トリハロカルボン酸又はそれらのエステルを効率よく脱ハロゲン化して対応するα−モノハロカルボン酸又はそのエステルに変換できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、pH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元することにより、パラジウムが担体に0.1〜5重量%担持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上である脱ハロゲン化触媒を製造する脱ハロゲン化触媒の製造方法を提供する。
予め酸化剤により表面を酸化した担体を使用し、pH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元する、又は、酸化剤が共存するpH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元して調製することが好ましい。
担体としては、活性炭又は二酸化ケイ素が好ましく、担体の形状が、(a)直径1〜15mm、長さ1〜30mmの円柱状、(b)直径1〜15mmの球状、又は(c)外径1〜15mm、内径0.5〜14mm、長さ1〜30mmのリング状であることが好ましい。
本発明は、また、上記脱ハロゲン化触媒の製造方法により得られた脱ハロゲン化触媒の存在下、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを水素と反応させて脱ハロゲン化するα−ハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化方法を提供する。
α−ハロカルボン酸には、下記式(1)
Figure 2008183558
(式中、Xは塩素又は臭素原子を示し、R1、R2は、同一又は異なって、塩素原子、臭素原子、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す)
で表される化合物が含まれる。好ましいα−ハロカルボン酸として、例えばジクロロ酢酸が挙げられる。脱ハロゲン化反応は、例えば、圧力が1〜1000kPa、温度が100〜250℃、水素使用量がα−ハロカルボン酸又はそのエステル1モルに対して1〜50モルの条件で行うことができる。
本発明の製造方法により得られた脱ハロゲン化触媒によれば、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率よく脱ハロゲン化できる。また、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化を抑制しつつ、α,α−ジハロカルボン酸若しくはα,α,α−トリハロカルボン酸又はそれらのエステルを高い選択率でα−モノハロカルボン酸又はそのエステルに変換できる。
さらに、本発明の製造方法により得られた脱ハロゲン化触媒によれば、ジクロロ酢酸を含有する低純度のモノクロロ酢酸からジクロロ酢酸含量の極めて少ない高純度のモノクロロ酢酸を一工程で効率よく製造できる。
[脱ハロゲン化触媒]
本発明の脱ハロゲン化触媒では、担体にパラジウムが0.1〜5重量%担持されている。担体としては、多孔質で耐酸性を有するものが好ましく、例えば、活性炭、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などが挙げられる。これらのなかでも、活性炭及び二酸化ケイ素が好ましく、特に活性炭が好ましい。
活性炭としては、植物系、鉱物系、ポリマー系等の何れの原料から得られた活性炭であってもよいが、なかでも植物系の原料から得られた活性炭、特にヤシ殻炭が好ましい。活性炭は、一般に、炭化、整粒した原料を、水蒸気、空気(酸素)及び燃焼ガス(二酸化炭素)によって賦活するガス賦活法、又は原料に塩化亜鉛水水溶液などを含浸させて焼成する薬品賦活法等により製造される。本発明における活性炭は、前記何れの方法によって製造されたものでもよい。
活性炭の比表面積は500m2/g以上であるのが好ましく、2000m2/gを超えてもよいが、一般には500〜2000m2/g程度、特に600〜1500m2/g程度の比表面積を有する活性炭が用いられる。活性炭の細孔容積は特に限定されないが、一般には0.5〜1.5ml/gの範囲である。
活性炭の形状は如何なるものであってもよいが、円柱状、球状、リング状(円筒状を含む)、薄片状、粉末状などが好ましい。なかでも、(a)直径1〜15mm(特に2〜10mm)、長さ1〜30mm(特に2〜20mm)の円柱状、(b)直径1〜15mm(特に2〜10mm)の球状、又は(c)外径1〜15mm(特に2〜10mm)、内径0.5〜14mm(特に1.5〜9mm)、長さ1〜30mm(特に2〜20mm)のリング状(円筒状を含む)が好ましい。
脱ハロゲン化触媒としてのパラジウム/担体触媒は、例えば、パラジウム塩(広くパラジウム原子を含有する塩を意味する)の水溶液中に担体を投入して該担体にパラジウム塩を担持し、このパラジウム塩を還元剤で還元することにより調製できる。パラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム等の有機酸又は無機酸のパラジウム塩;テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラニトロパラジウム酸ナトリウム等のパラジウム含有酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。還元剤としては、特に限定されず、例えば、ホルマリン、メタノール、ギ酸、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素ガスなどが例示される。パラジウム担持量は、好ましくは0.3〜4重量%程度である。
本発明の脱ハロゲン化触媒の重量な特徴は、担体に担持されたパラジウムの70重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上(例えば20〜120ml/g−Pd程度)である点にある。担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されているパラジウムの割合が、担体に担持されたパラジウム全量に対して70重量%未満である場合や、一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd未満の場合には触媒活性や反応の選択性が不十分となる。
本発明の脱ハロゲン化触媒では、担体の外表面から深さ50μmまでの層に担持パラジウムの90重量%以上が担持されているのがより好ましい。特に、担体の外表面から深さ30μmまでの層、とりわけ20μmまでの層に担持パラジウムの70重量%以上(特に90重量%以上)が担持されているのが好ましい。一酸化炭素の化学吸着量は、より好ましくは25ml/g−Pd以上(例えば25〜100ml/g−Pd程度)である。
なお、本発明の脱ハロゲン化触媒において、一酸化炭素の化学吸着量から担持パラジウムの比表面積Sは次式により算出できる。
S(m2/g)=(Pd1g当たりの吸着COガス分子数)×(格子定数)2
格子定数=3.89Å
このことより、本発明の脱ハロゲン化触媒は担持パラジウムの比表面積が大きく、それによって高い触媒活性が得られるものと推察される。本発明の脱ハロゲン化触媒において、担持パラジウムの比表面積は、通常82m2/g−Pd以上(82〜490m2/g−Pd程度)であり、好ましくは100m2/g−Pd以上(100〜410m2/g−Pd程度)である。
担持パラジウム粒子の担体上での位置制御及び一酸化炭素(CO)吸着量の制御は、例えば、上記のパラジウム/担体触媒の調製法において、パラジウム塩を担体に担持するときの水溶液のpHを調整することにより可能である。例えば、パラジウム塩の水溶液に活性炭等の担体を投入してパラジウム塩が平衡吸着に達したときのpHを4〜12、より好ましくは6〜11の範囲になるように、担体を浸漬する前のパラジウム塩の水溶液のpHを制御することにより、パラジウム/担体触媒における担持パラジウム粒子の位置制御及び一酸化炭素吸着量をコントロールできる。
なお、担体の種類により、担体の表面上に還元性の官能基が存在する場合、パラジウム塩水溶液中に担体を投入すると、パラジウム塩が担体の表面で直ちに還元されてパラジウム金属の薄いフィルムを形成するため、所望の物性を有する触媒が得られない場合がある。このような場合は、予め過酸化水素などの酸化剤で担体表面を酸化するか、或いは、パラジウム塩水溶液と酸化剤を混合してパラジウム塩の還元を防止することが望ましい。
前記パラジウム塩水溶液中のパラジウム濃度は、担持するパラジウム量、使用する担体の吸水量などにより異なるが、一般的には0.1〜5重量%であり、好ましくは担体を浸漬したときにパラジウム塩が全量担体に吸着される濃度以下である。パラジウム塩が担体に吸着されずに水溶液中に残存する場合には、還元により比較的大きなパラジウム粒子として担体上に析出するため、所望の物性を有する触媒が得られないことが多い。パラジウム塩水溶液の量は、パラジウム塩濃度やパラジウム担持量等により異なるが、担体がパラジウム塩を全量吸着できるような量以下で、且つ担体の吸水可能な量以上の水を含むのが好ましい。パラジウム塩水溶液中の水の量が、担体の吸水可能な量未満の場合には、担体を浸漬したとき、パラジウム塩(ひいてはパラジウム)が担体表面上に均一に吸着されにくくなる。
パラジウム塩水溶液に担体を浸漬する際の温度は、特に限定されないが、通常水溶液の沸点以下の温度である。好ましい温度範囲は5〜80℃程度である。以上、触媒の調製法(パラジウムの担持法)の一例を示したが、触媒の調製法としてはこれに限定されるものではない。
担持パラジウム粒子の担持状態(担体上の位置、分布等)は、X線電子マイクロプローブ分析(EMPA)、或いは走査電子顕微鏡(SEM)により測定、観察できる。触媒の一酸化炭素(CO)化学吸着量は、サンプル(触媒)に既知容量の一酸化炭素を供給することにより測定できる。一酸化炭素の供給は、サンプルが一酸化炭素で飽和し、もはや化学吸着せず、供給した容積に対応する一酸化炭素の一定量が放出されるまで行われる。測定は50℃で実施する。サンプルは一酸化炭素を吸着させる前に、予めパラジウム表面の酸素を除去する目的で、200℃で水素により還元処理を施し、さらにパラジウム表面に吸着した水素を除去するために200℃でヘリウムによりフラッシュする。ヘリウム気流中で50℃にサンプルを維持し、ヘリウム気流中に一定量の一酸化炭素をパルスとして供給し、一酸化炭素の吸収が無くなるまでパルスによる一酸化炭素の供給を繰り返し、一酸化炭素の吸着量を測定する。
[脱ハロゲン化法]
本発明の脱ハロゲン化法では、上記の脱ハロゲン化触媒の存在下、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを水素と反応させて脱ハロゲン化する。α−ハロカルボン酸としては、カルボキシル基のα位の炭素原子にハロゲン原子が結合している化合物であれば特に限定されないが、その代表的な例として、前記式(1)で表される化合物が挙げられる。
前記式(1)中、R1、R2における炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1-10アルキル基が挙げられる。R2としては、塩素原子、臭素原子又は水素原子が好ましく、特に水素原子が好ましい。
前記α−ハロカルボン酸の最も代表的な例は、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸であり、本発明は特にジクロロ酢酸に対して有用である。
α−ハロカルボン酸のエステルとしては、広範なエステルが使用できるが、その代表的な例として、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ヘキシルエステルなどのアルキルエステル(例えば、C1-20アルキルエステル);シクロヘキシルエステルなどの脂環式エステル;フェニルエステルなどのアリールエステル;ベンジルエステルなどのアラルキルエステルなどが挙げられる。
脱ハロゲン化反応(水素化反応)は溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよいが、代表的な例として、酢酸などの脂肪族カルボン酸又はそのエステル、反応生成物(目的化合物)などが挙げられる。反応は液相反応、気相反応の何れであってもよい。
反応方式としては、固定床、流動床、懸濁床等の何れの方式も使用でき、また連続式、バッチ式、セミバッチ式の何れであってもよい。好ましくは、α−ハロカルボン酸又はそのエステルと水素とを連続的に固定床に供給する方法が採用される。
反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは110〜200℃程度である。反応温度が100℃未満では反応速度が遅くなり経済的ではない。反応温度が250℃を超えると望まない副反応が起きるため好ましくない。反応は減圧下から加圧下まで広い圧力範囲で実施できるが、一般的には1〜1000kPa、好ましくは5〜500kPa程度である。圧力が1kPaより低い場合には生産性が悪くなりやすく、1000kPaより高くしても反応速度の促進効果は小さく得策ではない。水素の使用量はα−ハロカルボン酸又はそのエステル1モルに対して1〜50モル程度が好ましい。
本発明の脱ハロゲン化法は、ジクロロ酢酸を含有するモノクロロ酢酸を水素と反応させ、前記ジクロロ酢酸を脱塩素化して高純度モノクロロ酢酸を製造するのに特に有用である。この脱塩素化反応は、圧力1〜1000kPa程度、温度100〜250℃程度の条件で行うのが好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
市販の直径3mm、長さ4.5mmの円柱状の活性炭300gを水1000ml中に投入し、脱気処理を20分間実施した後、水切りを行った。テトラクロロパラジウム酸ナトリウム4.16gを水500mlに溶解し、さらに30重量%過酸化水素水35gを添加し、重炭酸ソーダの水溶液を加えてpHを4に調整した。このパラジウム塩水溶液中に水切りをした活性炭を投入し、室温で1時間浸漬することにより、パラジウム塩を活性炭に完全に吸着させた。1時間後の溶液のpHは8.0であった。このままの状態で60℃に昇温し、ギ酸ソーダ5.58g含有する水溶液60mlを加え、60℃で1時間還元処理した。還元終了後、温水で十分洗浄し、120℃で乾燥して触媒(0.5重量%パラジウム/活性炭)を得た。
得られた触媒について一酸化炭素の化学吸着量を測定したところ、36ml/g−Pdであった。電子マイクロアナライザー及び電子顕微鏡を用いた反射電子像によりパラジウムの担持状態を分析、観察したところ、図1及び図2に示されるように、担持パラジウムの全量が担体の外部表面から20μmまでの層に担持されていた。なお、図1において、横軸は担体の外部表面からの距離(Distance)(μm)、縦軸は強度[Intensity(Counts)]を示す。
比較例1
テトラクロロパラジウム酸ナトリウムを活性炭に担持させるときのpHを2とした点以外は実施例1と同様の操作を行い、触媒(0.5重量%パラジウム/活性炭)を調製した。
得られた触媒について一酸化炭素の化学吸着量を測定したところ、46ml/g−Pdであった。電子マイクロアナライザーによりパラジウムの担持状態を分析、観察したところ、パラジウムは担体のほぼ全体に亘って担持されていた。
実施例2〜5、比較例2〜3
テトラクロロパラジウム酸ナトリウムを活性炭に担持させるときのpHを変えて実施例1と同様の方法で、一酸化炭素化学吸着量及びパラジウム担持状態の異なる触媒(0.5重量%パラジウム/活性炭)を調製した。得られた触媒の一酸化炭素化学吸着量及びパラジウム担持状態を表1に示す。
Figure 2008183558
実験例
二重ジャケットにより加熱された内径20mm、長さ1000mmの反応管に上記実施例又は比較例で得られた触媒200mlを充填した。反応管の上部よりジクロロ酢酸(DCA)を含有するモノクロロ酢酸(MCA)と水素とを所定の速度で供給し、所定温度で脱塩素化反応を実施した。なお、水素の供給量はジクロロ酢酸(DCA)1モルに対して10モルとした。反応生成物中のジクロロ酢酸濃度(出口DCA濃度)及び酢酸濃度(出口酢酸濃度)を分析した。これらの結果を表2に示す。
Figure 2008183558
表2に示されるように、本発明に相当する実施例の触媒を用いた場合には、ジクロロ酢酸を含有するモノクロロ酢酸からジクロロ酢酸含有量の極めて少ない高純度のモノクロロ酢酸が得られる。これに対し、パラジウムが担体のほぼ全体に亘って担持されている触媒や一酸化炭素化学吸着量が20ml/g−Pd未満である触媒を用いた場合には、ジクロロ酢酸の脱ハロゲン化が効率よく進行せず、高純度のモノクロロ酢酸を得ることができない。
実施例1で調製した触媒におけるパラジウム担持状態を電子線マイクロアナライザーで分析した結果を示す図である。 実施例1で調製した触媒の電子顕微鏡による反射電子像を示す写真である。

Claims (7)

  1. pH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元することにより、パラジウムが担体に0.1〜5重量%担持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上である脱ハロゲン化触媒を製造する脱ハロゲン化触媒の製造方法。
  2. 予め酸化剤により表面を酸化した担体を使用し、pH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元する、又は、酸化剤が共存するpH4〜12(平衡吸着時)の水溶液中でパラジウム塩を担体に吸着させて、これを還元して調製する請求項1に記載の脱ハロゲン化触媒の製造方法。
  3. 担体が活性炭又は二酸化ケイ素である請求項1又は2に記載の脱ハロゲン化触媒の製造方法。
  4. 担体の形状が、(a)直径1〜15mm、長さ1〜30mmの円柱状、(b)直径1〜15mmの球状、又は(c)外径1〜15mm、内径0.5〜14mm、長さ1〜30mmのリング状である請求項1〜3の何れかの項に記載の脱ハロゲン化触媒の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れかの項に記載の脱ハロゲン化触媒の製造方法で製造された、パラジウムが担体に0.1〜5重量%担持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上である脱ハロゲン化触媒。
  6. 請求項5に記載の脱ハロゲン化触媒の存在下、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを水素と反応させて脱ハロゲン化することを特徴とするα−ハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン化方法。
  7. 請求項5に記載の脱ハロゲン化触媒の存在下、ジクロロ酢酸を含有するモノクロロ酢酸を水素と反応させて前記ジクロロ酢酸を脱塩素化することを特徴とする高純度モノクロロ酢酸の製造方法。
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