JP2003144921A - 脱ハロゲン化触媒及び高純度モノクロロ酢酸の製造法 - Google Patents

脱ハロゲン化触媒及び高純度モノクロロ酢酸の製造法

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JP2003144921A
JP2003144921A JP2001342800A JP2001342800A JP2003144921A JP 2003144921 A JP2003144921 A JP 2003144921A JP 2001342800 A JP2001342800 A JP 2001342800A JP 2001342800 A JP2001342800 A JP 2001342800A JP 2003144921 A JP2003144921 A JP 2003144921A
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dehalogenation
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ester
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Kazuyuki Matsuoka
一之 松岡
Akira Yamashita
彰 山下
Hisao Yoshida
久夫 吉田
Kenji Shimizu
健司 清水
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NIKKI CHEMCAL CO Ltd
Daicel Corp
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NIKKI CHEMCAL CO Ltd
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率
よく脱ハロゲン化できる脱ハロゲン化触媒を提供する。 【解決手段】 パラジウムが担体に0.1〜5重量%担
持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体
の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且
つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上で
ある脱ハロゲン化触媒。前記担体として、例えば活性
炭、二酸化ケイ素などが使用できる。担体の形状は、例
えば、(a)直径1〜15mm、長さ1〜30mmの円
柱状、(b)直径1〜15mmの球状、又は(c)外径
1〜15mm、内径0.5〜14mm、長さ1〜30m
mのリング状である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脱ハロゲン化触
媒、この脱ハロゲン化触媒を用いたα−ハロカルボン酸
又はそのエステルの脱ハロゲン化方法、及び前記脱ハロ
ゲン化触媒を用いた高純度モノクロロ酢酸の製造法に関
する。高純度モノクロロ酢酸は薬品及び化粧品分野等に
おける基礎化学品の合成原料として有用な化合物であ
る。
【0002】
【従来の技術】α−モノハロカルボン酸やそのエステル
はカルボン酸又はそのエステルをハロゲン化することに
より製造されるが、この際対応するα,α−ジハロカル
ボン酸、α,α,α−トリハロカルボン酸やそれらのエ
ステルが副生する。しかし、α−モノハロカルボン酸又
はそのエステルと上記の副生物とは一般に沸点が近似し
ている(例えば、モノクロロ酢酸の沸点が188℃であ
るのに対し、ジクロロ酢酸の沸点は192℃である)た
め、蒸留により両者を分離することは困難である。そこ
で、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルと上記副
生物との混合物を、パラジウム触媒の存在下で水素化処
理し、α,α−ジハロカルボン酸又はそのエステル等を
脱ハロゲン化して対応するα−モノハロカルボン酸又は
そのエステルに変換し、それによって純度の高いα−ハ
ロカルボン酸又はそのエステルを得る方法が提案されて
いる。しかしながら、この方法では、目的物であるα−
モノハロハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン
化反応も並行して起こるため、反応の選択性を高めるこ
とが要求される。
【0003】特開平9−169691号公報には、第一
工程でモノクロロ酢酸とジクロロ酢酸との混合物の水素
化反応を400〜600ppmのジクロロ酢酸残留含有
率になるまで行い、第二工程においてこの混合物を溶融
結晶化処理に付すことを特徴とする高純度モノクロロ酢
酸の製造方法が開示されている。しかし、工業的には一
工程で高純度のモノクロロ酢酸を得ることが望ましい。
【0004】特公平8−8990号公報には、比較的微
細な活性炭にパラジウムを担持した触媒を用いてα−ハ
ロカルボン酸又はそのエステルを水素により脱ハロゲン
化する方法が開示されている。この方法によれば、モノ
クロロ酢酸80重量%、ジクロロ酢酸4重量%、酢酸1
6重量%の混合物を水素化処理することにより、ジクロ
ロ酢酸を900〜1700ppm程度にまで低減される
(実施例1)。しかし、ジクロロ酢酸の含有量としては
未だ不十分である。
【0005】脱ハロゲン化触媒としては、フランス特許
第1,581,391号及び第2,046,424号、
英国特許第1,188,745号、米国特許第2,86
3,917号、ドイツ特許第1,915,037号、特
開昭50−30828号公報などに開示がある。例え
ば、特開昭50−30828号公報には、貴金属が担体
材料の幾何学的表面上に著しく富化されている触媒を使
用して、粗製モノクロロ酢酸中に含まれるジクロロ及び
トリクロロ酢酸を水素で部分的に脱ハロゲン化する方法
が開示されている。この方法によれば、約92.6%の
モノクロロ酢酸、4.8%のジクロロ酢酸、0.1%の
トリクロロ酢酸及び2.5%の酢酸よりなる混合物か
ら、ジクロロ酢酸を0.5%含有するモノクロロ酢酸が
得られる(例)。しかし、ジクロロ酢酸の含有量として
は未だ十分といえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを効率よく脱
ハロゲン化できる脱ハロゲン化触媒及び脱ハロゲン化方
法を提供することにある。本発明の他の目的は、α,α
−ジハロカルボン酸若しくはα,α,α−トリハロカル
ボン酸又はそれらのエステルを選択的にα−モノハロカ
ルボン酸又はそのエステルに変換できる脱ハロゲン化触
媒及び脱ハロゲン化方法を提供することにある。本発明
のさらに他の目的は、ジクロロ酢酸を含有する低純度の
モノクロロ酢酸からジクロロ酢酸含量の極めて少ない高
純度のモノクロロ酢酸を一工程で効率よく製造する方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため鋭意検討した結果、特定量のパラジウム
が担体に担持され、担持されたパラジウムのうち一定量
以上のパラジウムが担体の表面から一定の深さまでの層
に担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が一定
量以上である担持触媒を水素による脱ハロゲン化方法に
用いると、α−モノハロカルボン酸又はそのエステルの
脱ハロゲン化を抑制しつつ、α,α−ジハロカルボン酸
若しくはα,α,α−トリハロカルボン酸又はそれらの
エステルを効率よく脱ハロゲン化して対応するα−モノ
ハロカルボン酸又はそのエステルに変換できることを見
いだし、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、パラジウムが担体に
0.1〜5重量%担持され、担持されたパラジウムの7
0重量%以上が担体の表面から深さ50μmまでの層に
担持されており、且つ一酸化炭素の化学吸着量が20m
l/g−Pd以上である脱ハロゲン化触媒を提供する。
【0009】前記担体には活性炭又は二酸化ケイ素が含
まれる。担体の形状は、好ましくは(a)直径1〜15
mm、長さ1〜30mmの円柱状、(b)直径1〜15
mmの球状、又は(c)外径1〜15mm、内径0.5
〜14mm、長さ1〜30mmのリング状である。
【0010】本発明は、また、上記の脱ハロゲン化触媒
の存在下、α−ハロカルボン酸又はそのエステルを水素
と反応させて脱ハロゲン化するα−ハロカルボン酸又は
そのエステルの脱ハロゲン化方法を提供する。
【0011】α−ハロカルボン酸には、下記式(1)
【化2】 (式中、Xは塩素又は臭素原子を示し、R1、R2は、同
一又は異なって、塩素原子、臭素原子、水素原子又は炭
素数1〜10のアルキル基を示す)で表される化合物が
含まれる。好ましいα−ハロカルボン酸として、例えば
ジクロロ酢酸が挙げられる。脱ハロゲン化反応は、例え
ば、圧力が1〜1000kPa、温度が100〜250
℃、水素使用量がα−ハロカルボン酸又はそのエステル
1モルに対して1〜50モルの条件で行うことができ
る。
【0012】本発明は、さらに、上記の脱ハロゲン化触
媒の存在下、ジクロロ酢酸を含有するモノクロロ酢酸を
水素と反応させて前記ジクロロ酢酸を脱塩素化する高純
度モノクロロ酢酸の製造法を提供する。脱塩素化反応
は、例えば、圧力1〜1000kPa、温度100〜2
50℃の条件で行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】[脱ハロゲン化触媒]本発明の脱
ハロゲン化触媒では、担体にパラジウムが0.1〜5重
量%担持されている。担体としては、多孔質で耐酸性を
有するものが好ましく、例えば、活性炭、二酸化ケイ
素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などが
挙げられる。これらのなかでも、活性炭及び二酸化ケイ
素が好ましく、特に活性炭が好ましい。
【0014】活性炭としては、植物系、鉱物系、ポリマ
ー系等の何れの原料から得られた活性炭であってもよい
が、なかでも植物系の原料から得られた活性炭、特にヤ
シ殻炭が好ましい。活性炭は、一般に、炭化、整粒した
原料を、水蒸気、空気(酸素)及び燃焼ガス(二酸化炭
素)によって賦活するガス賦活法、又は原料に塩化亜鉛
水水溶液などを含浸させて焼成する薬品賦活法等により
製造される。本発明における活性炭は、前記何れの方法
によって製造されたものでもよい。
【0015】活性炭の比表面積は500m2/g以上で
あるのが好ましく、2000m2/gを超えてもよい
が、一般には500〜2000m2/g程度、特に60
0〜1500m2/g程度の比表面積を有する活性炭が
用いられる。活性炭の細孔容積は特に限定されないが、
一般には0.5〜1.5ml/gの範囲である。
【0016】活性炭の形状は如何なるものであってもよ
いが、円柱状、球状、リング状(円筒状を含む)、薄片
状、粉末状などが好ましい。なかでも、(a)直径1〜
15mm(特に2〜10mm)、長さ1〜30mm(特
に2〜20mm)の円柱状、(b)直径1〜15mm
(特に2〜10mm)の球状、又は(c)外径1〜15
mm(特に2〜10mm)、内径0.5〜14mm(特
に1.5〜9mm)、長さ1〜30mm(特に2〜20
mm)のリング状(円筒状を含む)が好ましい。
【0017】脱ハロゲン化触媒としてのパラジウム/担
体触媒は、例えば、パラジウム塩(広くパラジウム原子
を含有する塩を意味する)の水溶液中に担体を投入して
該担体にパラジウム塩を担持し、このパラジウム塩を還
元剤で還元することにより調製できる。パラジウム塩と
しては、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム等の
有機酸又は無機酸のパラジウム塩;テトラクロロパラジ
ウム酸ナトリウム、テトラニトロパラジウム酸ナトリウ
ム等のパラジウム含有酸のアルカリ金属塩などが挙げら
れる。還元剤としては、特に限定されず、例えば、ホル
マリン、メタノール、ギ酸、ヒドラジン、水素化ホウ素
ナトリウム、水素ガスなどが例示される。パラジウム担
持量は、好ましくは0.3〜4重量%程度である。
【0018】本発明の脱ハロゲン化触媒の重量な特徴
は、担体に担持されたパラジウムの70重量%以上が担
体の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、
且つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上
(例えば20〜120ml/g−Pd程度)である点に
ある。担体の表面から深さ50μmまでの層に担持され
ているパラジウムの割合が、担体に担持されたパラジウ
ム全量に対して70重量%未満である場合や、一酸化炭
素の化学吸着量が20ml/g−Pd未満の場合には触
媒活性や反応の選択性が不十分となる。
【0019】本発明の脱ハロゲン化触媒では、担体の外
表面から深さ50μmまでの層に担持パラジウムの90
重量%以上が担持されているのがより好ましい。特に、
担体の外表面から深さ30μmまでの層、とりわけ20
μmまでの層に担持パラジウムの70重量%以上(特に
90重量%以上)が担持されているのが好ましい。一酸
化炭素の化学吸着量は、より好ましくは25ml/g−
Pd以上(例えば25〜100ml/g−Pd程度)で
ある。
【0020】なお、本発明の脱ハロゲン化触媒におい
て、一酸化炭素の化学吸着量から担持パラジウムの比表
面積Sは次式により算出できる。 S(m2/g)=(Pd1g当たりの吸着COガス分子
数)×(格子定数)2格子定数=3.89Å
【0021】このことより、本発明の脱ハロゲン化触媒
は担持パラジウムの比表面積が大きく、それによって高
い触媒活性が得られるものと推察される。本発明の脱ハ
ロゲン化触媒において、担持パラジウムの比表面積は、
通常82m2/g−Pd以上(82〜490m2/g−P
d程度)であり、好ましくは100m2/g−Pd以上
(100〜410m2/g−Pd程度)である。
【0022】担持パラジウム粒子の担体上での位置制御
及び一酸化炭素(CO)吸着量の制御は、例えば、上記
のパラジウム/担体触媒の調製法において、パラジウム
塩を担体に担持するときの水溶液のpHを調整すること
により可能である。例えば、パラジウム塩の水溶液に活
性炭等の担体を投入してパラジウム塩が平衡吸着に達し
たときのpHを4〜12、より好ましくは6〜11の範
囲になるように、担体を浸漬する前のパラジウム塩の水
溶液のpHを制御することにより、パラジウム/担体触
媒における担持パラジウム粒子の位置制御及び一酸化炭
素吸着量をコントロールできる。
【0023】なお、担体の種類により、担体の表面上に
還元性の官能基が存在する場合、パラジウム塩水溶液中
に担体を投入すると、パラジウム塩が担体の表面で直ち
に還元されてパラジウム金属の薄いフィルムを形成する
ため、所望の物性を有する触媒が得られない場合があ
る。このような場合は、予め過酸化水素などの酸化剤で
担体表面を酸化するか、或いは、パラジウム塩水溶液と
酸化剤を混合してパラジウム塩の還元を防止することが
望ましい。
【0024】前記パラジウム塩水溶液中のパラジウム濃
度は、担持するパラジウム量、使用する担体の吸水量な
どにより異なるが、一般的には0.1〜5重量%であ
り、好ましくは担体を浸漬したときにパラジウム塩が全
量担体に吸着される濃度以下である。パラジウム塩が担
体に吸着されずに水溶液中に残存する場合には、還元に
より比較的大きなパラジウム粒子として担体上に析出す
るため、所望の物性を有する触媒が得られないことが多
い。パラジウム塩水溶液の量は、パラジウム塩濃度やパ
ラジウム担持量等により異なるが、担体がパラジウム塩
を全量吸着できるような量以下で、且つ担体の吸水可能
な量以上の水を含むのが好ましい。パラジウム塩水溶液
中の水の量が、担体の吸水可能な量未満の場合には、担
体を浸漬したとき、パラジウム塩(ひいてはパラジウ
ム)が担体表面上に均一に吸着されにくくなる。
【0025】パラジウム塩水溶液に担体を浸漬する際の
温度は、特に限定されないが、通常水溶液の沸点以下の
温度である。好ましい温度範囲は5〜80℃程度であ
る。以上、触媒の調製法(パラジウムの担持法)の一例
を示したが、触媒の調製法としてはこれに限定されるも
のではない。
【0026】担持パラジウム粒子の担持状態(担体上の
位置、分布等)は、X線電子マイクロプローブ分析(E
MPA)、或いは走査電子顕微鏡(SEM)により測
定、観察できる。触媒の一酸化炭素(CO)化学吸着量
は、サンプル(触媒)に既知容量の一酸化炭素を供給す
ることにより測定できる。一酸化炭素の供給は、サンプ
ルが一酸化炭素で飽和し、もはや化学吸着せず、供給し
た容積に対応する一酸化炭素の一定量が放出されるまで
行われる。測定は50℃で実施する。サンプルは一酸化
炭素を吸着させる前に、予めパラジウム表面の酸素を除
去する目的で、200℃で水素により還元処理を施し、
さらにパラジウム表面に吸着した水素を除去するために
200℃でヘリウムによりフラッシュする。ヘリウム気
流中で50℃にサンプルを維持し、ヘリウム気流中に一
定量の一酸化炭素をパルスとして供給し、一酸化炭素の
吸収が無くなるまでパルスによる一酸化炭素の供給を繰
り返し、一酸化炭素の吸着量を測定する。
【0027】[脱ハロゲン化法]本発明の脱ハロゲン化
法では、上記の脱ハロゲン化触媒の存在下、α−ハロカ
ルボン酸又はそのエステルを水素と反応させて脱ハロゲ
ン化する。α−ハロカルボン酸としては、カルボキシル
基のα位の炭素原子にハロゲン原子が結合している化合
物であれば特に限定されないが、その代表的な例とし
て、前記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0028】前記式(1)中、R1、R2における炭素数
1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチ
ル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s
−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチ
ル、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1-10アルキ
ル基が挙げられる。R2としては、塩素原子、臭素原子
又は水素原子が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0029】前記α−ハロカルボン酸の最も代表的な例
は、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸であり、本発明は
特にジクロロ酢酸に対して有用である。
【0030】α−ハロカルボン酸のエステルとしては、
広範なエステルが使用できるが、その代表的な例とし
て、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステ
ル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチ
ルエステル、t−ブチルエステル、ヘキシルエステルな
どのアルキルエステル(例えば、C1-20アルキルエステ
ル);シクロヘキシルエステルなどの脂環式エステル;
フェニルエステルなどのアリールエステル;ベンジルエ
ステルなどのアラルキルエステルなどが挙げられる。
【0031】脱ハロゲン化反応(水素化反応)は溶媒の
存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、反応に
不活性な溶媒であればよいが、代表的な例として、酢酸
などの脂肪族カルボン酸又はそのエステル、反応生成物
(目的化合物)などが挙げられる。反応は液相反応、気
相反応の何れであってもよい。
【0032】反応方式としては、固定床、流動床、懸濁
床等の何れの方式も使用でき、また連続式、バッチ式、
セミバッチ式の何れであってもよい。好ましくは、α−
ハロカルボン酸又はそのエステルと水素とを連続的に固
定床に供給する方法が採用される。
【0033】反応温度は、例えば100〜250℃、好
ましくは110〜200℃程度である。反応温度が10
0℃未満では反応速度が遅くなり経済的ではない。反応
温度が250℃を超えると望まない副反応が起きるため
好ましくない。反応は減圧下から加圧下まで広い圧力範
囲で実施できるが、一般的には1〜1000kPa、好
ましくは5〜500kPa程度である。圧力が1kPa
より低い場合には生産性が悪くなりやすく、1000k
Paより高くしても反応速度の促進効果は小さく得策で
はない。水素の使用量はα−ハロカルボン酸又はそのエ
ステル1モルに対して1〜50モル程度が好ましい。
【0034】本発明の脱ハロゲン化法は、ジクロロ酢酸
を含有するモノクロロ酢酸を水素と反応させ、前記ジク
ロロ酢酸を脱塩素化して高純度モノクロロ酢酸を製造す
るのに特に有用である。この脱塩素化反応は、圧力1〜
1000kPa程度、温度100〜250℃程度の条件
で行うのが好ましい。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、α−ハロカルボン酸又
はそのエステルを効率よく脱ハロゲン化できる。また、
α−モノハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲン
化を抑制しつつ、α,α−ジハロカルボン酸若しくは
α,α,α−トリハロカルボン酸又はそれらのエステル
を高い選択率でα−モノハロカルボン酸又はそのエステ
ルに変換できる。さらに、本発明によれば、ジクロロ酢
酸を含有する低純度のモノクロロ酢酸からジクロロ酢酸
含量の極めて少ない高純度のモノクロロ酢酸を一工程で
効率よく製造できる。
【0036】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。
【0037】実施例1 市販の直径3mm、長さ4.5mmの円柱状の活性炭3
00gを水1000ml中に投入し、脱気処理を20分
間実施した後、水切りを行った。テトラクロロパラジウ
ム酸ナトリウム4.16gを水500mlに溶解し、さ
らに30重量%過酸化水素水35gを添加し、重炭酸ソ
ーダの水溶液を加えてpHを4に調整した。このパラジ
ウム塩水溶液中に水切りをした活性炭を投入し、室温で
1時間浸漬することにより、パラジウム塩を活性炭に完
全に吸着させた。1時間後の溶液のpHは8.0であっ
た。このままの状態で60℃に昇温し、ギ酸ソーダ5.
58g含有する水溶液60mlを加え、60℃で1時間
還元処理した。還元終了後、温水で十分洗浄し、120
℃で乾燥して触媒(0.5重量%パラジウム/活性炭)
を得た。得られた触媒について一酸化炭素の化学吸着量
を測定したところ、36ml/g−Pdであった。電子
マイクロアナライザー及び電子顕微鏡を用いた反射電子
像によりパラジウムの担持状態を分析、観察したとこ
ろ、図1及び図2に示されるように、担持パラジウムの
全量が担体の外部表面から20μmまでの層に担持され
ていた。なお、図1において、横軸は担体の外部表面か
らの距離(Distance)(μm)、縦軸は強度[Intensit
y(Counts)]を示す。
【0038】比較例1 テトラクロロパラジウム酸ナトリウムを活性炭に担持さ
せるときのpHを2とした点以外は実施例1と同様の操
作を行い、触媒(0.5重量%パラジウム/活性炭)を
調製した。得られた触媒について一酸化炭素の化学吸着
量を測定したところ、46ml/g−Pdであった。電
子マイクロアナライザーによりパラジウムの担持状態を
分析、観察したところ、パラジウムは担体のほぼ全体に
亘って担持されていた。
【0039】実施例2〜5、比較例2〜3 テトラクロロパラジウム酸ナトリウムを活性炭に担持さ
せるときのpHを変えて実施例1と同様の方法で、一酸
化炭素化学吸着量及びパラジウム担持状態の異なる触媒
(0.5重量%パラジウム/活性炭)を調製した。得ら
れた触媒の一酸化炭素化学吸着量及びパラジウム担持状
態を表1に示す。
【表1】
【0040】実験例 二重ジャケットにより加熱された内径20mm、長さ1
000mmの反応管に上記実施例又は比較例で得られた
触媒200mlを充填した。反応管の上部よりジクロロ
酢酸(DCA)を含有するモノクロロ酢酸(MCA)と
水素とを所定の速度で供給し、所定温度で脱塩素化反応
を実施した。なお、水素の供給量はジクロロ酢酸(DC
A)1モルに対して10モルとした。反応生成物中のジ
クロロ酢酸濃度(出口DCA濃度)及び酢酸濃度(出口
酢酸濃度)を分析した。これらの結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】表2に示されるように、本発明に相当する
実施例の触媒を用いた場合には、ジクロロ酢酸を含有す
るモノクロロ酢酸からジクロロ酢酸含有量の極めて少な
い高純度のモノクロロ酢酸が得られる。これに対し、パ
ラジウムが担体のほぼ全体に亘って担持されている触媒
や一酸化炭素化学吸着量が20ml/g−Pd未満であ
る触媒を用いた場合には、ジクロロ酢酸の脱ハロゲン化
が効率よく進行せず、高純度のモノクロロ酢酸を得るこ
とができない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製した触媒におけるパラジウム担
持状態を電子線マイクロアナライザーで分析した結果を
示す図である。
【図2】実施例1で調製した触媒の電子顕微鏡による反
射電子像を示す写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 久夫 新潟県新津市滝谷本町1−26 日揮化学株 式会社内 (72)発明者 清水 健司 新潟県新津市滝谷本町1−26 日揮化学株 式会社内 Fターム(参考) 4G069 AA03 AA08 AA12 BA02A BA08A BA08B BC72A BC72B BD02A BD02B BD04A BD04B CB35 DA06 EA02X FB14 4H006 AA02 AC13 BA25 BA55 BA56 BC10 BC11 BC31 BE20 BM10 BM72 BS10 4H039 CA10 CD20

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パラジウムが担体に0.1〜5重量%担
    持され、担持されたパラジウムの70重量%以上が担体
    の表面から深さ50μmまでの層に担持されており、且
    つ一酸化炭素の化学吸着量が20ml/g−Pd以上で
    ある脱ハロゲン化触媒。
  2. 【請求項2】 担体が活性炭又は二酸化ケイ素である請
    求項1記載の脱ハロゲン化触媒。
  3. 【請求項3】 担体の形状が、(a)直径1〜15m
    m、長さ1〜30mmの円柱状、(b)直径1〜15m
    mの球状、又は(c)外径1〜15mm、内径0.5〜
    14mm、長さ1〜30mmのリング状である請求項1
    又は2記載の脱ハロゲン化触媒。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかの項に記載の脱ハ
    ロゲン化触媒の存在下、α−ハロカルボン酸又はそのエ
    ステルを水素と反応させて脱ハロゲン化することを特徴
    とするα−ハロカルボン酸又はそのエステルの脱ハロゲ
    ン化方法。
  5. 【請求項5】 α−ハロカルボン酸が、下記式(1) 【化1】 (式中、Xは塩素又は臭素原子を示し、R1、R2は、同
    一又は異なって、塩素原子、臭素原子、水素原子又は炭
    素数1〜10のアルキル基を示す)で表される化合物で
    ある請求項4記載の脱ハロゲン化方法。
  6. 【請求項6】 α−ハロカルボン酸がジクロロ酢酸であ
    る請求項4又は5記載の脱ハロゲン化方法。
  7. 【請求項7】 脱ハロゲン化反応を、圧力が1〜100
    0kPa、温度が100〜250℃、水素使用量がα−
    ハロカルボン酸又はそのエステル1モルに対して1〜5
    0モルの条件で行う請求項4記載の脱ハロゲン化方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3の何れかの項に記載の脱ハ
    ロゲン化触媒の存在下、ジクロロ酢酸を含有するモノク
    ロロ酢酸を水素と反応させて前記ジクロロ酢酸を脱塩素
    化することを特徴とする高純度モノクロロ酢酸の製造
    法。
  9. 【請求項9】 脱塩素化反応を、圧力1〜1000kP
    a、温度100〜250℃の条件で行う請求項8記載の
    高純度モノクロロ酢酸の製造法。
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