JP2008163379A - 表面処理アルミニウム材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ性溶液によりアルミニウム材料をエッチング処理することにより前記アルミニウム材料の表面にスマットを付着させるエッチング工程と、前記スマットを除去する中和工程を行なわずに前記アルミニウム材料を、弱酸性からアルカリ性の電解液中で電解することにより、前記アルミニウム材料の表面に陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化工程とを備える表面処理アルミニウム材料の製造方法とする。
【選択図】なし
Description
また、従来からデスマット処理には、アルミニウムを腐食し難い硝酸水溶液が広く用いられている。しかし、硝酸は、製造設備を腐食させる場合があることや、環境への負荷が大きいため排水規制の対象となっていることなどから、使用量を低減することが望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂塗膜や樹脂フィルムとの高い密着性が得られる陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材料の製造方法を提供することを課題としている。
また、本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法は、前記陽極酸化皮膜の有孔率が5%以下である方法とすることができる。
また、本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法は、前記陽極酸化皮膜上にシラン系カップリング剤を塗布する工程を備える方法とすることができる。
また、デスマット処理を省略できるので、製造設備の簡素化を図ることができるとともに、工程数を削減できるので、コストダウンが可能となる。また、デスマット処理には、硝酸水溶液が広く用いられているが、デスマット処理の省略によりデスマット処理に使用される硝酸水溶液が不要となるため、環境への負荷が軽減でき、安全衛生の向上にも貢献できる。
本発明において用いられるアルミニウム材料としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の7000系合金、Al−Fe−Mn系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造用合金、電気用合金、AC1A,AC2A,AC3A,AC4Bなどの鋳造用合金などが用いられる。
本実施形態においては、このようなアルミニウム材料をアルカリ性溶液によりエッチング処理する。エッチング工程を行なうことにより、アルミニウム材料に付着した油分が除去(脱脂)されるとともに、アルミニウム材料の表面に形成されている不均質な自然酸化皮膜が除去される。また、エッチング工程を行なうことにより、Mg、Fe、Si、Cu、またはこれらの水酸化物からなるアルカリ性溶液に不溶な成分であるスマットが、アルミニウム材料の表面に付着される。
エッチング工程において用いるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液、またはこれらの混合水溶液などが挙げられる。また、脱脂性向上のために、これらのアルカリ性溶液に界面活性剤を添加しても良い。
アルミニウム材料のエッチング量が0.05g/m2未満であると、スマットの量が0.01g/m2以上とならず、十分に密着性を向上させる効果が発揮されない恐れがある。また、アルミニウム材料のエッチング量が2.0g/m2を超えると、エッチング処理時間を長くしたり、アルカリ性溶液の温度や濃度を増加したりすることによる生産性の低下及びコストの増加の問題が生じるため、好ましくない。また、アルミニウム材料のエッチング量が2.0g/m2を超えると、表面が粗面化されて金属光沢が低下するとともに、後述する陽極酸化工程で形成する陽極酸化皮膜の皮膜均一性が低下するため好ましくない。
次いで、エッチング工程により付着したスマットが表面に0.01g/m2以上付着しているエッチング工程後のアルミニウム材料を、弱酸性からアルカリ性の電解液中で電解することにより、アルミニウム材料の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する。
なお、本発明において「無孔質陽極酸化皮膜」とは、陽極酸化皮膜の表面積に対する10〜50nmの細孔の有孔率が5%以下であるもののことを言う。
弱酸性からアルカリ性の電解液としては、特に限定されないが、アルカリ金属の塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、酒石酸塩、リン酸塩などを用い、pHを4〜12の弱酸性からアルカリ性の水溶液とすることが望ましい。
本発明においては、陽極酸化工程において、デスマット処理を省略できる。デスマット処理を省略することで、製造設備の簡素化を図ることができるとともに、工程数を削減できるのでコストダウンが可能となる。
また、従来からデスマット処理には、アルミニウムを腐食しがたい硝酸水溶液が用いられている。しかし、硝酸は、製造設備を腐食させる場合があることや、環境への負荷が大きいため排水規制の対象となっていることなどから、使用量を低減することが望まれている。デスマット処理の省略により、デスマット処理において使用する酸性溶液が不要となるので、環境への負荷が低減でき、安全衛生の向上にも貢献できる。
なお、スマットの量が多すぎると、陽極酸化工程において、スマットが絶縁層となり電解を阻害する場合がある。本発明においては、スマットの量が多すぎる場合には、エッチング工程と陽極酸化工程との間に、酸性溶液によるデスマット処理を行なうことができるが、エッチング工程でコントロールすれば不要である。スマットの量の適切な範囲は、0.01g/m2〜2.0g/m2である。
本実施形態において陽極酸化工程によって得られた陽極酸化皮膜上には、シラン系カップリング剤を塗布することが望ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基である有機官能基を有するものを用いることが好ましい。シラン系カップリング剤は、水またはアルコール等の揮発性溶媒で希釈して塗布することが望ましい。塗布方法としては、浸漬法、スプレー法、ロールコート法が挙げられるが、これに限られるものではない。シラン系カップリング剤の塗布量は、特に限定されないが、シラン系カップリング剤の架橋効果を効果的に得るために、乾燥後の固形分重量が0.1〜100mg/m2となるようにされることが好ましい。
また、本実施形態の表面処理アルミニウム材料の製造方法は、陽極酸化皮膜上にシラン系カップリング剤を塗布する工程を備えているので、シラン系カップリング剤の架橋効果によって無機質である陽極酸化皮膜と有機質である樹脂塗膜や樹脂フィルムとの結合を高めることができ、さらに高い密着性が得られる。
アルミニウム材料として、JIS1050アルミニウム合金、JI5052アルミニウム合金、Mgを1.0重量%添加したアルミニウム合金のいずれかである表1に示す合金を圧延して厚さ0.2mmとしたアルミニウム合金板を用い、1%水酸化ナトリウム水溶液、日本ペイント(株)社製のアルカリ脱脂剤(商品名:サーフクリーナーEC370(中エッチングタイプ、界面活性剤添加))の2%水溶液のいずれかである表1に示すアルカリ性溶液を用い、浴温50℃でスプレー法により表1に示す時間エッチング処理(エッチング工程)した。このときのアルミニウム材料のエッチング量をエッチング処理前後の重量差から求めた。その結果を表1に示す。
その後、アルミニウム材料を陽極とし、カーボン板を陰極とし、表1に示す電解質を含む表1に示すpHの50℃の電解液中で、陽極酸化皮膜の厚さが0.15μmとなるように電解することにより、アルミニウム材料の表面に陽極酸化皮膜を形成した(陽極酸化工程)。なお、陽極酸化工程において、電解液がホウ酸塩またはケイ酸塩を含む場合には107Vの定電圧で電解し、電解液が水酸化ナトリウムを含む場合または硫酸である場合には1A/dm2の定電流で電解した。
実施例1と同様にしてエッチング工程を行なった後、酸性溶液として10%硝酸水溶液を用い、25℃でスプレー法により表1に示す時間デスマット処理を行った。その後、エッチング工程により付着してデスマット処理後に残存するスマットの量を測定した。スマット量の測定は、デスマット処理後の重量と、測定用に10%硝酸溶液で別途完全にデスマットした後の重量との重量差から求めた。その結果を表1に示す。
その後、実施例1と同様にして陽極酸化工程を行なうことにより、アルミニウム材料の表面に陽極酸化皮膜を形成した。
実施例1と同様にして陽極酸化工程までの工程を行なった後、陽極酸化皮膜上にシラン系カップリング剤を塗布した。シラン系カップリング剤としては、有機官能基がアミノ系のものを用い、乾燥後の固形分重量が10mg/m2となるようロールコートにより塗布した。
ポリエステル系塗膜は、乾燥後の厚さが2μmとなるようロールコート法により塗布し、200℃で10分間焼き付け乾燥することにより形成した。
また、PETフィルム層は、エチレンテレフタレートとイソフタレートを共重合した二軸延伸フィルムであって、融点260℃、厚さ14μmの配向層と融点230℃、厚さ1μmの接着層の二層からなるPETフィルムを、ヒートロールによって170℃に加熱されたアルミニウム材料上に加圧ロールにより線圧18kg/cm2で圧着することにより形成した。
JIS5600−5−6に従い、lmm間隔25マスの碁盤目を形成し、セロテープ(登録商標)剥離を行った。そして、樹脂層の剥離したマスの数により、以下に示すように評価した。
○:剥離なし
△:剥離マス数1〜5マス
×:剥離マス数6以上
「エリクセン試験(張出し加工テープ剥離試験)」
エリクセン試験機により、直径20mmの鋼球ポンチを用いて高さ5mmに張出し加工し、加工部のセロテープ(登録商標)剥離を行った。そして、樹脂層の剥離した部分の面積率により、以下に示すように評価した。
○:剥離なし
△:剥離面積率20%未満
×:剥離面積率20%以上
これに対し、比較例1〜比較例5では、表1に示すように、全てスマット量が0.01g/m2未満であり、表2に示すように、碁盤目試験およびエリクセン試験の評価に×が含まれていた。
このことより、本発明によれば、樹脂塗膜や樹脂フィルムとの密着性を向上させることができることが明らかとなった。
Claims (5)
- アルカリ性溶液によりアルミニウム材料をエッチング処理することにより前記アルミニウム材料の表面にスマットを付着させるエッチング工程と、
前記スマットを除去する中和工程を行なわずに前記アルミニウム材料を、弱酸性からアルカリ性の電解液中で電解することにより、前記アルミニウム材料の表面に陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化工程とを備えることを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。 - アルカリ性溶液によりアルミニウム材料をエッチング処理することにより前記アルミニウム材料の表面にスマットを付着させるエッチング工程と、
前記スマットが前記表面に0.01g/m2以上付着している前記アルミニウム材料を、弱酸性からアルカリ性の電解液中で電解することにより、前記アルミニウム材料の表面に陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化工程とを備えることを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。 - 前記アルミニウム材料が、Mgを1.0質量%以上含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 前記陽極酸化皮膜の有孔率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 前記陽極酸化皮膜上にシラン系カップリング剤を塗布する工程を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
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