JP2008163216A - グリース - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−オレフィンオリゴマー及び/又はα−オレフィンオリゴマー水素添加物50質量%以上を含み、かつ動粘度と引火点が、式(I)
引火点(℃)≧49×lnγ+90 (I)
[ただし、γは40℃における動粘度(mm2/s)である。]
の関係を満たす基油と増ちょう剤とを含有するグリース、及び(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマー、(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油と、増ちょう剤とを含有するグリースである。
【選択図】なし
Description
グリースの基油として使用される合成潤滑油は使用目的により一長一短があるが、粘度が低く、熱安定性ないし酸化安定性の見地からポリα−オレフィンを使用する場合が多い。しかし、従来のポリα−オレフィンは、同一分子量の飽和脂肪族炭化水素化合物においても数多くの異性体が含まれ、特定の成分(異性体)を蒸留などの精製法で取出すことができない。そのため、所定粘度の合成油においても、揮発しやすい成分と揮発しにくい成分の混合物となり、このような飽和脂肪族炭化水素化合物をグリースの基油として用いると、揮発しやすい成分が先に揮発して機械の稼動中に基油の粘度が増大し、グリースの蒸発量が増大すると同時に、低温流動性も悪化する。
したがって、それらに使用されるグリースも、一層低温性能が良好であるとともに、高温性能にも優れることが要求される。したがって、低粘度でかつ一層蒸発性が低い、すなわち、蒸発損失が少ない基油を用いることが要求されるようになってきている。
これらのグリースは、軸受機構にいったん封入されてしまうと、補給がない状態で生涯潤滑性を維持しなければならないため、グリースの基油の蒸発損失や分解損失は極力避けなければならない。
通常の鉱油に代表される炭化水素基油では、低粘度化(低分子量)すると蒸発損失も増え、低粘度化と低蒸発化とを両立するのは困難である。
このポリ−α−オレフィンとしては、現在BF3触媒を用いるカチオン重合によって、α−オレフィンをオリゴマー化し、さらに水素添加したものが多用されている。しかしながら、この製法では、オリゴマーの分子量分布の制御ができず、かつ、重合度が同一の化合物においてもそれぞれ多数の異性体が生成する。したがって、BF3触媒でα−オレフィンをオリゴマー化して得られた生成物は精製が困難で沸点範囲が広くなるため蒸発減量(ロス)が多いなどの欠点を有している。
例えば、BF3触媒を用いて得られたデセントリマーの水素添加物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この化合物は、粘度が高い割には引火点が低い。
一方、メタロセン触媒を用い、数平均分子量500〜200000のデセンオリゴマーを製造し、必要に応じ引続き水素添加して、エンジン油やギヤ油などの潤滑剤成分として、特に粘度指数向上剤や増粘剤として用いる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、グリースについては、具体的に使用するオリゴマーや、グリースの内容については開示されていない。
(1)α−オレフィンオリゴマー及び/又はα−オレフィンオリゴマー水素添加物50質量%以上を含み,かつ動粘度と引火点が、式(I)
引火点(℃)≧49×lnγ+90 (I)
[ただし、γは40℃における動粘度(mm2/s)である。]
の関係を満たす基油と,増ちょう剤とを含有することを特徴とするグリース(グリースI)、及び
(2)(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマー、
(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油と、増ちょう剤とを含有することを特徴とするグリース(グリースII)、
を提供するものである。
(3)α−オレフィンオリゴマーが、(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマーであり、α−オレフィンオリゴマー水素添加物が、(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物である上記(1)項に記載のグリース、
(4)基油が、(A)及び(B)成分の中から選ばれる少なくとも1種を50〜100質量%含む上記(2)項に記載のグリース、
(5)基油の40℃における動粘度が8〜250mm2/sである上記(1)〜(4)項のいずれかに記載のグリース、
(6)増ちょう剤が、リチウム系増ちょう剤叉はウレア系増ちょう剤である上記(1)〜(5)項のいずれかに記載のグリース、
(7)増粘剤、潤滑性向上剤、油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む上記(1)〜(6)項のいずれかに記載のグリース、
(8)混和ちょう度が175〜340である上記(1)〜(7)項のいずれかに記載のグリース、及び
(9)転がり軸受叉は直動軸受に用いられる上記(1)〜(8)項のいずれかに記載のグリース、
である。
当該基油は、動粘度と引火点が、式(I)
[ただし、γは40℃における動粘度(mm2/s)である。]
の関係を満たすことが必要である。引火点が「49×lnγ+90」(γは前記と同じである。)の値より低い場合、基油は必要とする動粘度において、蒸発量が多く、引火点が低くなり、本発明の目的が達せられない。
引火点(℃)≧49×lnγ+95 (I−a)
より好ましくは、式(I−b)
引火点(℃)≧49×lnγ+100 (I−b)
の関係を満たすものが望ましい。
なお、前記動粘度は、JIS K2283に準拠して測定した値であり、引火点は、JIS K2265に準拠し、COC法で測定した値である。
これら(A)のα−オレフィンオリゴマー、及び(B)のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物を用いれば、低粘度であっても、蒸発量が少なく、引火点が高い基油が得られ、低温性能が優れるともに蒸発量が少なく、しかも高温性能に優れるグリースを容易に得ることができる。
[(A)α−オレフィンオリゴマー]
当該基油に好ましく用いられる(A)成分のα−オレフィンオリゴマーは、メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマーである。このα−オレフィンオリゴマーの炭素数が16〜60の範囲にあれば、低温流動性、低蒸発性、酸化安定性の良好な基油が得られ、それを用いたグリースは、本発明の目的が達せられる。前記α−オレフィンオリゴマーの好ましい炭素数は20〜50の範囲である。
本発明において、α−オレフィンのオリゴマー化に用いられるメタロセン触媒としては、従来公知の触媒、例えば(a)周期律表第4族元素を含有するメタロセン錯体と、(b)(b−1)前記(a)成分のメタロセン錯体又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成し得る化合物及び/又は(b−2)アルミノキサンと、所望により用いられる(c)有機アルミニウム化合物との組み合わせを挙げることができる。
前記(a)触媒成分のメタロセン錯体としては、従来公知の化合物、例えばビス(n−オクタデシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス[(t−ブチルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドおよびビス[3,3−(2−メチル−ベンズインデニル)]ジメチルシランジイルジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらのメタロセン錯体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(b−2)化合物であるアルミノキサンとしては、例えばメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンなどの鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンを挙げることができる。これらのアルミノキサンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(b)触媒成分として前記(b−1)化合物を1種以上用いてもよいし、(b−2)化合物を1種以上用いてもよく、また、(b−1)化合物1種以上と(b−2)化合物1種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、所望により用いられる(c)触媒成分の有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
(a)触媒成分と(b)触媒成分を用いて触媒を調製する場合、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で接触操作を行うことが好ましい。
また、(a)触媒成分、(b)触媒成分および(c)有機アルミニウム化合物を用いて触媒を調製する場合、(b)触媒成分と(c)有機アルミニウム化合物を事前に接触させてもよいが、α−オレフィンの存在下、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を接触することによっても充分高活性な触媒が得られる。
上記触媒成分は、予め、触媒調製槽において調製したものを使用してもよいし、オリゴマー化工程において調製したものを反応に使用してもよい。
α−オレフィンのオリゴマー化は、バッチ式、連続式のいずれであってもよい。オリゴマー化において溶媒は必ずしも必要とせず、オリゴマー化は、懸濁液、液体モノマー或いは不活性溶媒中で実施できる。溶媒中でのオリゴマー化の場合には、液体有機炭化水素、例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエンなどが使用される。オリゴマー化は液体モノマーが過剰に存在する反応混合物中で実施することが好ましい。
オリゴマー化の条件は、温度が15〜100℃程度であり、圧力は大気圧〜0.2MPa程度である。また、α−オレフィンに対する触媒の使用割合は、α−オレフィン/(A)成分のメタロセン錯体モル比が、通常1000〜106、好ましくは2000〜105であり、反応時間は、通常10分〜48時間程度である。
このようにして、メタロセン触媒によって製造されたα−オレフィンオリゴマーは、二重結合を有するが、特に末端ビニリデン結合の含有量が高い。
このαオレフィンオリゴマーは、通常一般式 (II)
前記一般式(II)において、p、q及びrは、それぞれ独立に0〜18の整数、nは0〜8の整数を示し、nが2以上の場合、qは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、p+n×(2+q)+rの値は12〜56である。
当該基油に好ましく用いられる(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(A)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物であって、前記のようにして単離された所望の重合度を有するα−オレフィンオリゴマーを、公知の方法によって水素添加することにより製造してもよいし、あるいは前記のオリゴマー化反応後、脱灰処理、中和処理、洗浄処理を行ったのち、蒸留によるα−オレフィンオリゴマーの単離操作を行わずに、水素添加を行い、その後蒸留により所望の重合度のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物を単離することによって製造してもよい。
水素添加反応の条件としては、Ni系触媒であれば、通常150〜200℃、Pd、Ptなどの貴金属触媒であれば、通常50〜150℃、コバルトトリスアセチルアセトナート/有機アルミニウムなどの均一系触媒であれば、通常20〜100℃の温度範囲とし、水素圧は、常圧〜20MPa程度である。
各触媒における反応温度が前記範囲にあれば、適度の反応速度を有すると共に、同一重合度を有するオリゴマーにおける異性体の生成を抑制することができる。
このα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、通常一般式 (III)
前記一般式(III)において、a、b、c及びmは、それぞれ前記一般式(II)におけるp、q、r及びnと同じである。
このα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(A)成分の末端にビニリデン結合を有するα−オレフィンオリゴマーよりも、酸化安定性などの面から好適である。
その他の基油としては、グリースに通常使用される鉱油基油及び/又は合成油基油を用いることができる。
鉱油基油としては、例えば原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは鉱油系ワックスやフィッシャ−トロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。
また、鉱油系基油の芳香族分(%CA)は3以下が好ましく、2以下、さらには1以下であることが好ましい、また、硫黄分は、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。%CAが3以下であり、硫黄分が100質量ppm以下であれば、組成物の酸化安定性を良好に保つことができる。
本発明では、その他基油として、鉱油基油、合成油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油基油、1種以上の合成油基油、1種以上の鉱油基油と1種以上の合成油基油との混合油等を挙げることができる。
(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマー、
(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油を用いる。
上記(A)、(B)成分の各α−オレフィンオリゴマー及びα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、グリースIにおいて、好ましい基油の例として、[(A)α−オレフィンオリゴマー]、及び[(B)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物]で説明したものと同じものを使用することがきる。
基油中に、前記(A)、(B)成分のα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物が50質量%以上含まれていれば、低粘度であっても、蒸発量が少なく、引火点が高い基油が得られ、低温性能が優れるともに蒸発量が少なく、しかも高温性能に優れるグリースを容易に得ることができる。
上記基油には、前述の(A)成分、(B)成分のα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物以外に、その他の基油を、50質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは90質量%以下の割合で含むことができる。その他の基油としては、グリースIの説明において、その他の基油として例示したものと同様のものを使用することができる。
また、グリースIIの基油の好ましい40℃における動粘度、引火点などについてもグリースIの場合と同様である。
本発明に用いられる増ちょう剤としては、特に制限がなく、石鹸系、非石鹸系いずれも使用できる。この増ちょう剤としては、グリースの滴点が230℃以上となるものが好ましい。該滴点が230℃以上であれば、潤滑上の問題、例えば、高温での軟化やそれに伴う漏洩、焼付け等が生じるのを抑制することができる。
金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられ、カルボン酸としては、油脂を加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸、テレフタル酸、サルチル酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸を用いたリチウム系のリチウム石鹸が好適である。この石鹸系の増ちょう剤を配合するに当たっては、基油にカルボン酸と上記金属水酸化物を投入して、基油中でケン化させて配合してもよい。
この内、リチウム系のリチウムコンプレックス石鹸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸及び/又は分子中に1個以上のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12(より好ましくは炭素数4〜9)の脂肪族ジカルボン酸とを、例えば、水酸化リチウムなどのリチウム化合物と反応させることにより得られ、前記リチウム石鹸と比べて耐熱性に優れるので、増ちょう剤として、より好ましい。
上記炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸としては、特に制限はなく、例えば12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシラウリン酸、16−ヒドロキシパルミチン酸などが挙げられるが、これらの中で特に12−ヒドロキシステアリン酸が好適である。
また、上記炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、例えばアゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などを挙げることができるが、これらの中でアゼライン酸が好適である。
ここで、脂肪酸及び/又は分子中に1個以上のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸との全質量中、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸が20〜90質量%であることが好ましい。20〜90質量%の範囲内であれば、熱的に安定な増ちょう剤が得られ、グリースの高温での長寿命化を実現するのに有利である。
これらの石鹸系増ちょう剤の中では、リチウム系増ちょう剤が好ましく、中でもリチウムコンプレックス石鹸が好適である。
ここで、増ちょう剤としてのウレア化合物としては、従来、ウレア系増ちょう剤として使用されているウレア化合物の中から、任意のものを用いることができる。このウレア化合物には、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などがある。
ウレア化合物は、耐熱性、耐水性ともに優れ、特に高温での安定性が良好なため、高温箇所に好適に用いられる。
上記の各種増ちょう剤のグリース中の配合量はグリース性状が得られる範囲であれば特に制限されるものではなく、グリースを基準として、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
本発明に係るグリースに用いる増ちょう剤は、ちょう度を付与するためのもので配合量が少なすぎると所望のちょう度が得られず、一方配合量が多すぎるとグリースの潤滑性が低下する。
増粘剤としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリアルキルスチレン(PAS)、スチレン-ジエン共重合体(SCP)等が挙げられる。
潤滑性向上剤としては、例えば硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、チオリン酸類、チオカルバミン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル、(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)などの極圧剤やオレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級脂肪族アルコールなどの油性剤が、清浄分散剤としては、例えばこはく酸イミド、ボロン系こはく酸イミドなどが挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、目的に応じて適宜選定すればよいが、通常、これらの添加剤の合計が潤滑剤を基準にして30質量%以下になるように配合する。
酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲で選定される。
先ず、基油の一部に所定の割合の増ちょう剤及び所望により増粘剤を配合し、所定の温度に加熱して均質化する。その後残りの基油を配合して冷却し、所定の温度に達したところで所望により各種添加剤を所定量配合することにより、本発明に係るグリースを得ることができる。
したがって、本発明のグリースは、攪拌等の機械的負荷が大きい潤滑部分に用いるグリースとしても有効に使用することができる。
なお、混和ちょう度はJIS K 2560に基づいて求められる値である。
なお、諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)基油の40℃動粘度
JIS K2283に準拠して測定した。
(2)グリースのちょう度、混和ちょう度
JIS K2220.7に準拠して測定した
(3)グリースの滴点
JIS K2220.8に準拠して測定した。
(4)低温トルク試験
JIS K2220.18に準拠して測定した。
(5)高温軸受寿命試験
ASTM D3336に準拠して、温度を180℃にして測定した。
(6)蒸発性試験
JIS K2220・10に準拠して測定した。
(a)デセンのオリゴマー化
内容積5リットルの三つ口フラスコに、不活性ガス気流下、デセンモノマー(出光興産(株)製:リニアレン10)4リットル(21.4モル)を仕込み、更に、トルエンに溶解したビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(錯体質量1168mg:4ミリモル)と同じくトルエンに溶解したメチルアルモキサン(Al換算:40ミリモル)を添加した。これらの混合物を40℃に保ち、20時間攪拌を行った後、メタノール20mlを添加してオリゴマー化反応を停止させた。次いで、反応混合物をオートクレーブから取出し、これに5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液4リットルを添加し、室温で強制攪拌を4時間した後、分液操作を行なった。上層の有機層を取出し、未反応のデセンおよび副反応生成物のデセン異性体をストリッピングして除去した。
(b)デセンオリゴマーの水素化
内容積5リットルのオートクレーブに、窒素気流下、(a)で製造したデセンオリゴマー3リットルを入れ、トルエンに溶解させたコバルトトリスアセチルアセトナート(触媒重量3.0g)とトルエンで希釈したトリイソブチルアルミニウム(30ミリモル)を添加した。添加後、水素で系内を2回置換してから、昇温し、反応温度80℃で、水素圧を0.9MPaに保持した。水素化は発熱を伴いながら直ちに進行し、反応開始後4時間の時点で降温し、反応を停止した。その後、脱圧し、内容物を取出してから、反応生成物を単蒸留し、留出温度240〜270℃、圧力530Paの留分(1−デセンの3量体の水素添加物)を分離した。
製造例1の残渣から減圧蒸留により0.5Torrでトップ温度261℃、ボトム温度293℃での留分(1−デセンの4量体の水素添加物)を分離した。
第1表に示す組成のリチウムコンプレックスグリースを調製し、滴点、低温トルク試験及び蒸発量を測定した。その結果を第1表に示す。
なお、グリースは、以下の方法で製造した。
(i)グリース製造釜に、使用する基油の1/2(質量)とグリース全量に対し12−ヒドロキシステアリン酸11.5質量%及び防錆剤1.0質量%に相当する量を反応釜に配合し、撹拌しながら加熱溶解させた。
(ii)グリース全量に対し、水酸化リチウム(一水和物)3.1質量%、及びテレフタル酸2.4質量%に相当する量を水に溶解した水溶液を上記(i)に添加し、加熱混合した。グリースの温度が205℃に達した後、5分間保持した。
(iii)次に、残りの基油を添加した後、50℃/1時間で80℃まで冷却し、表1に示すアミン系酸化防止剤を添加混合した。
(iv)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行ってグリースを得た。
1)製造例1で得られたメタロセン触媒によって合成された1−デセンの3量体の水素添加物
2)製造例2で得られたメタロセン触媒によって合成された1−デセンの4量体の水素添加物
3)従来法による1−デセンのオリゴマーであるポリアルファオレフィン(BP Chemicals社製、商品名「DURASYN−164」)
4)従来法による1−デセンのオリゴマーであるポリアルファオレフィン(BP Chemicals社製、商品名「DURASYN−166」)
5)従来法による1−デセンのオリゴマーであるポリアルファオレフィン(BP Chemicals社製、商品名「DURASYN−168」)
6)12−ヒドロキシステアリン酸及びテレフタル酸とを水酸化リチウムと反応させて得られるリチウムコンプレックスグリース
7)ジオクチルジフェニルアミン
8)Caスルホネート
第2表に示す組成のウレアグリースを調製し、滴点、低温トルク試験及び軸受寿命試験を行った。その結果を第2表に示す。
なお、グリースは、以下の方法で製造した。
(i)ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートがグリース全量に対し6.4質量%に相当する量を、使用する基油の2/3(質量)の基油に加え、加熱溶解し、原料1とした。
(ii)また、残りの1/3の基油に、オクチルアミンをグリース全量に対し6.6質量%に相当する量加え、加熱溶解し、原料2とした。
(iii)次に、グリース反応釜中で原料1を50〜60℃で強撹拌しながら、原料2を除々に投入した。さらに撹拌しながら加熱し、グリースの温度が165℃に達した後、1時間保持した。
(iv)その後、アラルキル化ナフチルアミンを添加混合し、さらに室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行ってグリースを得た。
9)ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、2倍モルのオクチルアミンの反応物、
1)、3)、7)及び8)は第1表と同じ
Claims (9)
- α−オレフィンオリゴマー及び/又はα−オレフィンオリゴマー水素添加物を50質量%以上含み、かつ動粘度と引火点が、式(I)
引火点(℃)≧49×lnγ+90 (I)
[ただし、γは40℃における動粘度(mm2/s)である。]
の関係を満たす基油と、増ちょう剤とを含有することを特徴とするグリース。 - (A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマー、
(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油と、増ちょう剤とを含有することを特徴とするグリース。 - α−オレフィンオリゴマーが、(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜60のα−オレフィンオリゴマーであり、α−オレフィンオリゴマー水素添加物が、(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物である請求項1に記載のグリース。
- 基油が、(A)及び(B)成分の中から選ばれる少なくとも1種を50〜100質量%含む請求項2に記載の変速機油組成物。
- 基油の40℃における動粘度が8〜250mm2/sである請求項1〜4のいずれかに記載のグリース。
- 増ちょう剤が、リチウム系増ちょう剤又はウレア系増ちょう剤である請求項1〜5のいずれかに記載のグリース。
- 増粘剤、潤滑性向上剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜6のいずれかに記載のグリース。
- 混和ちょう度が175〜340である請求項1〜7のいずれかに記載のグリース。
- 転がり軸受又は直動軸受に用いられる請求項1〜8のいずれかに記載のグリース。
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