以下、本発明のプリンタの一実施の形態について、図1から図32に基づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、かかるインクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。また、例えばレーザ方式、昇華型熱転写方式、ドットインパクト方式等のインクジェット式以外のプリンタについても、本発明は適用可能である。
なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ30が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート12が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート12が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート12が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
また、以下の説明においては、括弧書きで表される各要素を順次説明する。なお、以下の説明においては、回動機構を備える構成(1)と、他の回動機構を備える構成(2)とは、選択的な要素であり、(1)および(2)のうち、いずれかのみを備えるのが原則であるが、回動機構を備える構成(1)および他の回動機構を備える構成(2)を、共に備える構成を採用しても良い。
<レンズシートについて>
最初に、印刷対象物であるレンズシート12について説明する。図1に示すように、レンズシート12は、表面に位置するレンチキュラーレンズ12Aと、このレンチキュラーレンズ12Aの裏面と接するインク吸収層12Bと、該レンズシート12の裏面に位置するインク透過層12Cとを具備している。これらのうち、レンチキュラーレンズ12Aは、一方向を長手とする複数のシリンドリカル凸レンズ(凸レンズ12A1)が、一定のピッチで並列配置された構成となっている。レンチキュラーレンズ12Aにおいては、それぞれの凸レンズ12A1を進行する光の焦点が、レンチキュラーレンズ12Aの裏面(インク吸収層12Bとの境界面Q)に位置するように、凸レンズ12A1の曲率が形成されている。
なお、本実施の形態では、レンチキュラーレンズ12Aにおける凸レンズ12A1の並びのピッチとしては、後述するスケール81のラインパターンの並びのピッチの整数倍とするものがある。例えば、スケール81のラインパターンが1/180インチである場合、凸レンズ12A1のピッチは、10lpi(lens per inch;1インチ当たりの凸レンズ12A1の本数)、20lpi、30lpi、45lpi、60lpi、90lpi、100lpi、130lpi、180lpiとするものがある。しかしながら、凸レンズ12A1のピッチは、該例示には限られず、これらのレンズピッチ以外に種々変更するようにしても良い。また、レンズシート12においては、通常は、製造誤差等によって、上述の凸レンズ12A1のピッチから、若干ずれが生じている。
また、インク透過層12Cは、ノズル33aから吐出されたインク滴が最初に付着する部分であり、該付着したインクが透過していく部分である。このインク透過層12Cは、例えば酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)等の微粒子、硫酸バリウム、ガラスファイバ、プラスチックファイバ等を材質として形成されている。また、インク吸収層12Bは、インク透過層12Cを透過したインクを吸収および/または固着させる部位である。このインク吸収層12Bは、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材質として形成されている。また、レンチキュラーレンズ12Aは、PET、PETG、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV樹脂等を材質として形成されている。
なお、インク吸収層12Bは透明であると共に、インク透過層12Cは、白色である。しかしながら、インク吸収層12Bが白色であっても良く、またインク透過層12Cが透明であっても良く、さらにインク透過層12Cとインク吸収層12Bの両方が透明であっても良い。また、本実施の形態では、インク透過層12Cが存在することにより、印刷後であっても、レンズシート12を直ぐに触ることが可能となっている。しかしながら、レンズシート12は、インク透過層12Cを具備しない構成を採用しても良い。
また、図2に示すように、本実施の形態におけるレンズシート12は、その外観が矩形状を為していると共に、該矩形状の外観を構成するレンズシート12の縁部12Eが、凸レンズ12A1の長手方向(一方向に対応)に対して傾斜する状態に設けられている。すなわち、凸レンズ12A1の長手方向は、矩形状のレンズシート12の外枠(縁部12E)に対して、傾斜する状態に設けられている。なお、凸レンズ12A1の縁部12Eに対する傾斜角度θは、本実施の形態では、10度程度に設けられている。しかしながら、傾斜角度は10度に限られるものではなく、例えば0.1度〜45度の範囲内で、種々の傾斜角度を採用することが可能となっている。なお、レンズシート12の搬送方向(副走査方向)は、回転軸方向に対応する。
<プリンタの回動機構に係る構成(1)について>
図3他に示すように、プリンタ10は、キャリッジモータ(CRモータ22)によってキャリッジ30を主走査方向に往復動させるキャリッジ機構20、PFモータ41(紙送りモータに対応)によってレンズシート12を搬送する用紙搬送機構40等があり、その他、図3に示す制御部100が存在する。
ここで、キャリッジ機構20について説明する。キャリッジ機構20は、図3および図8他に示すように、キャリッジ30を具備している。また、キャリッジ機構20は、キャリッジ30を摺動可能に保持するキャリッジ軸21と、キャリッジモータ(CRモータ22)と、このCRモータ22に取り付けられている歯車プーリ23と、無端のベルト24と、歯車プーリ23との間にこの無端のベルト24を張設する従動プーリ25と、回動機構(斜め走査機構26(図4参照))と、リニアエンコーダ80と、を備えている。
ここで、図4および図5に示すように、本実施の形態においては、キャリッジ機構20には、支持軸に対応するキャリッジ軸21を回動させるための回動機構(斜めに走査する機構;以下斜め走査機構26とする。)が設けられている。この斜め走査機構26は、ヘッド制御手段の一部に対応し、スライド板261と、ガイドピン265と、ラックギヤ266と、ピニオンギヤ267と、回転軸268と、ギヤ輪列269と、を主要な構成としている。
キャリッジ軸21の一端側21a(図2参照)は、スライド部材に対応するスライド板261に支持されて、紙送り方向にスライド可能に設けられている。これに対して、キャリッジ軸21の他端側21b(図3参照)は、紙送り方向へのスライドを行わないように設けられている。すなわち、他端側21bは、不図示のシャーシに対して固定的に設けられる支持フレーム28の側板28aに対して、スライドしない状態で設けられている。それにより、キャリッジ軸21は、その他端側21bを支点として回動可能に設けられている。
なお、キャリッジ軸21の回動角度は、上述した凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応している。すなわち、紙送り方向に垂直かつプラテン50に平行を為す状態であって、紙送りの下流側にスライドする向きに、10度を中心として、例えば0.2度〜45度の範囲内で回動可能に設けられている。しかしながら、キャリッジ軸21の回動角度は、紙送りの上流側にスライドする向きに、上述のような0.2度〜45度の範囲内で回動するように設けてもよい。また、上述の場合、例えば0.2度〜45度には限られず、0度より大きくければ、最大で何度回動する構成であっても良い。
なお、キャリッジ軸21の一端側21aを平面視すると、当該一端側21aは、円弧を描くように回動する。そのため、一端側21aは、他端側21bに対して、主走査方向における距離が若干近接する向きに移動する。しかしながら、回動する角度が10度程度と小さい場合には、主走査方向において移動する距離(近接する距離)は大きくない。そのため、スライド板261側に、主走査方向に若干近接する向きへの移動を許容する遊びを与えておけば、その移動量を吸収可能となる。なお、近接する向きへの移動量が大きい場合には、別途の構成が必要となる。
また、スライド板261の上端には、最も大面積のプレート部261aから、プリンタ10の長手方向の他端側(図示省略)に向かって折り曲げられる立設部262が設けられている。この立設部262のうち、折り曲げの先端側には、係止フック263が設けられている。係止フック263は、その先端が、該係止フック263の付け根よりもプレート部261aに向かうように折れ曲がっている。この係止フック263には、リニアスケール81の係止孔81aを介して、リニアスケール81が係止される。かかる係止により、リニアスケール81は、張設状態で支持可能となる。すなわち、図4および図5に示す斜め走査機構26では、キャリッジ軸21と共に、リニアスケール81もスライド可能に設けられているため、キャリッジ軸21の回動が為された後でも、キャリッジ30(印刷ヘッド32)の位置検出を精度良く行うことが可能となっている。
また、プレート部261aには、スライドガイド手段の一部として機能するガイド長孔264が設けられている。本実施の形態では、ガイド長孔264は例えば一対設けられていて、2つのガイド長孔264は、互いに一定の距離だけ離間している。このガイド長孔264には、ガイドピン265が差し込まれる。ガイドピン265は、側板28aから、プリンタ10の長手方向の他端側に向かって突出する部材である。かかるガイドピン265のガイド長孔264への差し込みにより、スライド板261は、紙送り方向に沿ってスライド可能となっている。なお、スライド板261のスライドを安定的とするためには、いずれかのガイド長孔264には、例えば2つのガイドピン265が差し込まれる構成とするのが好ましい。
また、プレート部261aのうち、下方側の縁部には、ラックギヤ266が設けられている。このラックギヤ266は、ピニオンギヤ267と噛み合っている。このピニオンギヤ267は、回転軸268を介して側板の外側のギヤ輪列269の最終段のギヤと同期回転するように設けられている。それにより、ピニオンギヤ267には、ギヤ輪列269を介して、不図示のモータ(駆動手段に対応)の駆動力が与えられる。
なお、スライド板261をスライドさせる(キャリッジ軸21を回動させる)ためのモータは、PFモータ41等の他のモータとは独立して設けられる構成としても良く、また、PFモータ41からの駆動力を分配する構成を採用しても良い。また、斜め走査機構26は、スライド板261のスライドと共に、ラックギヤ266とピニオンギヤ267の噛み合いによって実現しているが、ラックギヤ266とピニオンギヤ267の代わりにカム機構を設ける等によって、斜め走査機構26を実現する等、その他の構成を用いるようにしても良い。
なお、図4および図5に示す構成では、キャリッジ軸21の他端側21b(図2参照)は、紙送り方向へのスライドを行わないように設けられている。しかしながら、他端側21bは、一端側21aと同様に、スライドするように構成しても良い。この場合、他端側21bにも、スライド板261等が配置され、一端側21aと同様の構成となる。
<プリンタの他の回動機構に係る構成(2)について>
上述のような、キャリッジ軸21の一端側を回動させる回動機構(斜め走査機構26)以外の他の回動機構を採用しても良い。この例として、図6および図7に示すような、キャリッジ軸21に対して、印刷ヘッド32を回動させる構成がある。この場合も、印刷ヘッド32が回動する角度は、上述した凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応していて、紙送り方向に垂直かつプラテン50に平行を為す方向に対して、10度を中心として、例えば0.2度〜45度の範囲内で回動可能に設けられている。なお、かかる回動機構は、印刷ヘッド32がキャリッジ軸21に対して傾斜する(斜めになる)状態で、インク滴を吐出する。そのため、以下の説明では、このタイプの回動機構を、斜め吐出機構27a,27bとして、以下に説明する。なお、これら斜め吐出機構27a,27bは、ヘッド制御手段の一部に対応する。
図6に示す回動機構27aは、印刷ヘッド32がキャリッジ30に対して回動する構成となっている。かかる構成を採用する場合、例えば、キャリッジ30の下方に回転台271を設け、この回転台271に印刷ヘッド32が取り付けられる構成がある。この場合、不図示のモータ(駆動手段に対応)およびギヤをキャリッジ30に搭載することにより、キャリッジ30に対する印刷ヘッド32の回動が実現される。
なお、キャリッジ30に対して印刷ヘッド32が回転する場合、カートリッジ31と印刷ヘッド32との間を例えば柔軟性を有する材質により形成されるチューブで連結し、印刷ヘッド32の回動に対応させつつインクを供給する等、回転に配慮する構成が採用されている。また、例えばカートリッジ31から印刷ヘッド32に供給されるインク滴の流路を円弧状に形成する等により、回転に対応させるように構成しても良い。
また、図7に示す斜め吐出機構27bは、キャリッジ軸21に対する取付部位272に対して、キャリッジ30ごと回動する構成となっている。斜め吐出機構27bは、キャリッジ軸21に対してスライドさせることが可能な取付部位272を有している。この取付部位272の背面には、ベルト24の一部が固定されている。また、取付部位272は、軸孔273を有していて、この軸孔273にキャリッジ軸21が挿通されている。また、取付部位272には、上下方向に向かう軸挿通孔275を有する軸受274が設けられている。また、キャリッジ30には、軸受274に対応して、上下方向に沿う回動軸276が設けられる。この回動軸276は、キャリッジ30に対して固定的に設けられる。それにより、キャリッジ30が取付部位272に対して回動する構成が実現される。また、例えば取付部位272には、モータ277(駆動手段に対応)が配置されると共に、これら取付部位272および回動軸276には、ギヤ機構278が設けられる。それにより、モータ277を駆動させると、キャリッジ30の回動が実現される。
以上のようにすれば、印刷ヘッド32が、キャリッジ軸21に対して、相対的に傾斜する状態となり、その傾斜角度は、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応する状態とすることができる。なお、図4および図5に示される構成では、キャリッジ軸21の回動によって、主走査方向自体が回動している。これに対して、図6および図7に示される構成では、印刷ヘッド32が回動するものの、主走査方向自体は、従来のプリンタ10と同様に、回動しない状態となっている。このため、後述するように、印刷ヘッド32を駆動してインク滴を吐出させるための、印刷データは、図4および図5に示す斜め走査機構26を採用する場合と、図6および図7に示す斜め吐出機構27a,27bを採用する場合とでは、異なっている。
<プリンタのその他各種構成について>
図3等に示すように、プラテン50に対向する状態で、キャリッジ30が設けられている。キャリッジ30には、図3等に示すように、各色のインクカートリッジ31が着脱可能に搭載されている。また、キャリッジ30の下部には、印刷ヘッド32が設けられている。図9に示すように、印刷ヘッド32には、ノズル33aが列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列33を形成している。なお、本実施の形態では、ノズル列33は、例えば180個のノズル33aから構成されており、このうち、180番目のノズル33aが給紙側、1番目のノズル33aが排紙側に位置している。
また、キャリッジ30の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列33には、ノズル33a毎に、ピエゾ素子PZ(吐出動作部に対応;図20参照)が配置されている。このピエゾ素子PZの作動により、インク通路の端部にあるノズル33aからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、印刷ヘッド32は、ピエゾ素子PZを用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等、その他の方式を用いるようにしても良い。これらの方式の場合、その動作部分が吐出動作部に対応する。
また、図8等に示すように、プリンタ10は、用紙搬送機構40を具備している。用紙搬送機構40は、レンズシート12等を搬送するためのPFモータ41(図3参照)、および普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ42を具備している。また、給紙ローラ42よりも排紙側には、レンズシート12を搬送/挟持するためのPFローラ対43が設けられている。なお、PFローラ対43のうち、PF駆動ローラ43aは、PFモータ41からの駆動力が伝達され、レンズシート12の1ステップずつの搬送を可能としている。
また、図10に示すように、PFローラ対43の排紙側には、プラテン50および上述の印刷ヘッド32が上下に対向する様に配設されている。プラテン50は、PFローラ対43によって印刷ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート12を、下方側から支持する。また、プラテン50よりも排紙側には、上述のPFローラ対43と同様の、排紙ローラ対44が設けられている。この排紙ローラ対44のうち、排紙駆動ローラ44aには、PF駆動ローラ43aと共に、PFモータ41からの駆動力が伝達される。
また、プリンタ10のうち、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ42の下方側には、開口部45が設けられている。開口部45は、レンズシート12等の折り曲げ困難な印刷対象物を、プリンタ10の後端側で通過させるための開口部分である。なお、レンズシート12は、単体で開口部45を通過する以外に、トレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
また、図1および図11等に示すように、キャリッジ30の下面とプラテン50の間の部位には、レンズシート12における凸レンズ12A1のレンズピッチを検出する、レンズ検出手段に対応するレンズ検出センサ60が配置されている。レンズ検出センサ60は、レンズ検出手段に対応し、光の投受光方式(透過方式)のセンサであって、図1および図11等に示すように、発光部61と、受光部62とを有している。発光部61は、プラテン50側(下方側)に設けられ、受光部62は、キャリッジ30側(上方側)に設けられている。
これらのうち、発光部61は、多数の発光ダイオード(LED;light emitting diode)から構成されている。なお、LEDとしては、可視光または赤外光等の種々の波長の光を発するものがあるが、眩しさを抑える場合、赤外光を発する赤外LEDを用いるのが好ましい。また、発光部61は、プラテン50の後端側に存在する凹陥部51に設けられている。凹陥部51は、プラテン50の他の部分よりも窪んでいる部分である。この凹陥部51は、光源群611(光源612)が拡散板613に対して一定の距離だけ離間可能となるように、一定以上の深さ寸法を有する状態に設けられている。
また、受光部62は、例えば図9に示すように、キャリッジ30の下面に取り付けられていて、しかも、主走査方向において、例えばホームポジションから離間する部位、かつ副走査方向において給紙側に取り付けられている。この受光部62は、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード等のような多数の受光素子から構成されている。また、受光部62は、光の出射部位にスリットを有していて、光の拡散を抑える構成を採用するのが好ましい。しかしながら、このような構成を採用せずに、光が拡散する構成を採用しても良い。
なお、発光部61が直下方式を採用する場合、その構成は、発光ダイオードを多数並べるものには限られず、主走査方向を長手とするライン状光源を用いるようにしても良い。ライン状光源としては、具体的には、陰極蛍光ランプ(CFL;Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはエレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)を用いることが可能である。また、発光部61は、その他、可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を用いるようにしても良い。
また、発光部としては、直下方式を採用せずに、エッジライト方式の構成を採用するようにしても良い。この場合、発光部は、主走査方向の端部に配置される光源と、光源の光を主走査方向側に向けて反射するリフレクタと、光が内部を進行すると共に主走査方向を長手とする導光板と、導光板の下面側、側面側および導光板の長手方向の他端側に取り付けられ光を反射する反射部材と、上面側に向かって出射される光を拡散させる拡散フィルムと、導光板の下面に配置され光を拡散させる反射ドットと、を有する状態となる。
また、レンズシート12とノズル33aとの間の距離PGを測定すべく、キャリッジ30の下面には、レンズ検出センサ60以外に、ギャップ検出センサ70が存在するのが好ましい。図12は、距離PGを検出するギャップ検出センサ70の説明図である。図12に示すように、ギャップ検出センサ70は、発光部71と、2つの受光部(第1受光部72a及び第2受光部72b)とを有する。発光部71は、発光ダイオードを有し、レンズシート12に光を照射する。第1受光部72aおよび第2受光部72bは、受光した光量に応じた電気信号を出力する受光素子をそれぞれ有する。なお、第2受光部72bは、第1受光部72aと比較して、発光部71から遠い位置に設けられている。
発光部71から発せられた光は、レンズシート12に照射されると共に、反射される。反射された光は、上述の受光素子に入射され、この受光素子において入射した光量に応じた電気信号に変換される。ここで、距離PGが小さい場合、レンズシート12によって反射された光は、主に第1受光部72aに入射されるが、第2受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第1受光部72aの出力信号は、第2受光部72bの出力信号よりも大きくなる。
一方、距離PGが大きい場合、反射された光は、主に第2受光部72bに入射され、第1受光部72aには拡散光しか入射されない。したがって、第2受光部72bの出力信号は、第1受光部72aの出力信号よりも大きくなる。このため、第1受光部72aと第2受光部72bの出力信号の比と距離PGとの関係を予め求めておけば、該出力信号の比に基づいて、レンズシート12等に対応する距離PGを検出することが可能である。この場合、受光部72a,72bの出力信号の比と距離PGとの関係に関する情報をテーブルとしてROM102や不揮発性メモリ104に記憶しておくのが良い。
このような出力信号の検出を、キャリッジ30を主走査方向へ駆動させつつ行う。この駆動に際して、後述するリニアエンコーダ80の位置検出と対応させることにより、レンズシート12の主走査方向における距離PGを検出することが可能となる。
なお、ギャップ検出センサ70は、上述のレンズ検出センサ60と兼用可能である。この場合、発光部61の光軸が傾斜するように配置し、距離PGに応じて第1受光部72aと第2受光部72bとの間における出力信号の比が変化するようにすれば、ギャップ検出センサ70とレンズ検出センサ60とを兼用させることが可能となる。
また、図3等に示すように、キャリッジ機構20には、位置検出手段に対応するリニアエンコーダ80が設けられている。リニアエンコーダ80は、黒色の印刷部分と光を透過する透明部分とからなるラインパターンが繰り返されるスケール81と、スケール81に向けて光を出力すると共に、該スケール81から反射される光を、電気的な信号(エンコーダ信号;以下、ENC信号とする。)に変換して制御部100に送信するリニアセンサ82とを有している。
次に、信号形成部90の構成について説明する。図13に示すように、信号形成部90は、フィルタ91と、アンプ(AMP)92と、2値化処理部93とを具備している。これらのうち、フィルタ91は、信号線94の一端側と接続されている。信号線94の他端側は、上述した受光部62(受光素子623)に接続されている。このため、受光部62で発生したアナログ信号は、この信号線94を介してフィルタ91に伝達されるが、フィルタ91では、アナログ信号(図14参照)のうち所定の帯域以外の周波数成分が除去される。それにより、図14に示すようなデジタル信号(レンズ信号)が生成される。
また、フィルタ91を通過した信号は、AMP92に入力され、所定の電圧等(一例として、40倍等)に増幅される。かかる増幅が為された信号は、続いて2値化処理部93に入力され、該入力された信号をしきい値を超えたか否かで、HレベルまたはLレベルの、2値の信号(2値化信号)とする。この状態で、後述する制御部100に2値化信号を入力し、H/Lの信号の切り替わりタイミングを検出することにより、レンズシート12のレンズピッチが計測可能となる。
次に、制御部100について説明する。制御部100は、各種の制御を行う部分であって、後述する変形例等で述べるヘッド制御手段の一部に対応する。また、このプリンタ10は、図3に示すコンピュータ130に接続されずに、元画像データに基づいて単独で印刷を行うことも可能となっており、その場合には、制御部100は、ミラー状画像変形手段、および画像合成手段等に対応する。この制御部100は、不図示の紙幅検出のためのPWセンサ、レンズ検出センサ60、ギャップ検出センサ70、リニアセンサ82、後述するロータリエンコーダ132、プリンタ10の電源をオン/オフする電源SW等)の各出力信号が入力される。図3に示すように、制御部100は、CPU101、各種のプログラムを記憶するROM102、データを一時的に蓄えるRAM103、不揮発性メモリ(PROM)104、ASIC105、ヘッドドライバ106、信号処理部107等を具備していて、これらがバス108を介して接続されている。そして、これらの協働、または特有の処理を行う回路を追加する等によって、以下に述べる処理フローが実現される。
なお、以下に述べる処理フローのうち、プリンタ10側で実行可能なものに関しては、ROM102またはPROM104に、その実行に必要なプログラムが記憶されている。しかしながら、以下の各処理フローを実行する構成は、ハードウエア的に実現されても良く、またソフトウエア的に実現されても良い。また、上述の信号処理部107は、ASIC105の一部として組み込まれる構成を採用することも可能である。
また、図3に示すように、プリンタ10は、インターフェース131を具備している。このインターフェース131を介して、コンピュータ130に接続されている。また、プリンタ10は、ロータリエンコーダ132を具備している。ロータリエンコーダ132は、上述のリニアエンコーダ80とは異なり、スケール132aが円盤状に設けられている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダ80と同様となっている。
なお、このコンピュータ130は、CPU、RAM、ROM、HDD(Hard Disk Drive)、インターフェース等を具備している。このうち、HDDには、レンズシート12の印刷に対応させて画像を加工するための画像加工プログラム等が記憶されている。そして、この画像加工プログラムが読み込まれて、コンピュータ130で実行されると、ミラー状画像変形手段、および画像合成手段が機能的に実現される。
また、図15は、代表レンズ値を決定すると共に、この代表レンズ値に基づいてレンズ信号を生成するためのレンズ信号生成回路の構成例を示す図である。なお、このレンズ信号生成回路は、信号処理部107に実現されている。
このレンズ信号生成回路では、レンズ信号から事前学習によってレンズ間隔を求め、求めたレンズ間隔の平均値を代表レンズ値とする。そして、当該代表レンズ値に基づいて、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成する。得られたレンズ信号に基づいて、タイミング信号PTSを生成し、印刷を行う。
この図に示すように、レンズ信号生成回路は、カウンタ200、合計計算回路201、レジスタ202〜206、代表レンズ値決定回路207、および、CPUタイマ208を主要な構成要素としている。
ここで、カウンタ200は、レンズ信号のポジティブエッジが検出されると、レジスタ202のLカウント値をレジスタ203へLラッチとしてコピーするとともに、レジスタ202のLカウント値をクリアする。また、レジスタ202のレンズ数をインクリメントする。そして、その後は、レジスタ203のLカウント値をクロック信号に同期してインクリメントする。
合計計算回路201は、レンズ信号のポジティブエッジが検出されると、レジスタ204に格納されているLラッチ値をレジスタ205の合計値に対して累積加算する。このため、走査するレンズ本数が増えると、合計値が増大する。
レジスタ202には、レンズシート12の端部からのレンズ数が格納される。レジスタ203には、レンズ間のLカウント値が格納される。レジスタ204には、ポジティブエッジが検出された時点において、レジスタ203に格納されている、その直前におけるLカウント値がラッチされる。レジスタ205には、ポジティブエッジが検出されたタイミングで、レジスタ204に格納されているLラッチ値が累積加算されていく。レジスタ206には、レンズ終了値が格納されている。ここで、レンズ終了値とは、最後のレンズであるか否かを判定するための判定値であり、例えば、代表レンズ値の2〜3倍程度の値(判定のための余裕を持たせた値)を格納する。
代表レンズ値決定回路207は、レジスタ203のLカウント値がレジスタ206のレンズ終了値以上となった場合には、レンズシート12の端部であるとし、レジスタ205に格納されている合計値を、レジスタ202に格納されているレンズ数によって除算し、レンズ間隔の平均値を求め、当該平均値を代表レンズ値として、CPUタイマ208に供給する。
生成手段としてのCPUタイマ208は、代表レンズ値決定回路207から供給された代表レンズ値を参考にし、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成し、出力する。
<印刷を行うための基本的な処理フローについて>
以上のような構成を用いて、プリンタ10を作動させる場合のうち、印刷を行うための、基本的な処理フローについて、図16に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図2に示すレンズシート12の傾斜角度θが、予めプリンタ10側で認識されているものとし、当該傾斜角度θを反映させて、以後の処理を行うものとする。
図16は、図2に示すレンズシート12へ、印刷を実行する際の処理の概略を示す図である。この図16に示すように、まず、画像データを作成する処理を行う(S10)。画像データの作成は、プリンタ10にコンピュータ130が接続されている場合には、コンピュータ130側のハードディスク等に別途記憶されているプログラムで行われる。また、プリンタ10にコンピュータ130が接続されていない場合には、プリンタ10側の記憶部位に別途記憶されているプログラムで行われる。
次に、S10で作成された画像データに基づいて、印刷を実行する(S20)。印刷の実行に際しては、図4および図5に示す斜め走査機構26、または図6および図7に示す斜め吐出機構27a,27bのいずれか、または後述する図20の構成が作動して、印刷が実行される。
<画像データを作成する処理フローについて>
(A.図4に示す斜め走査機構26(斜め走査系)を採用する場合における画像データの処理フローについて)
図17は、斜め走査機構26(斜め走査系)を用いる場合における、画像データの処理フローの概略を示す図である。この図17に示すように、最初に画像データの回転処理を行う(S101A)。このイメージを、図18に基づいて説明する。図18は、画像データの処理イメージを示す図である。S101Aの回転処理では、図18に示すように、回転角度θ(傾きθ)だけ、元画像データを回転させる処理を行っている。この回転処理により、元画像データから、第1の変形画像データが作成される。ここで、図26に示すように、凸レンズ12A1の長手方向は、レンズシート12のシート端(副走査方向)に対して傾斜角度θだけ傾いている。しかしながら、画像の回転における回転角度θは、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対して、副走査方向を挟んで線対称となっている。
S101Aの回転処理の後に、第1の変形画像データから、短冊画像の作成処理を行う(S102)。この短冊画像を作成する処理では、それぞれの第1の変形画像データに対して、解像度変換処理および画像合成処理が行われる。
ここで、解像度変換処理では、例えば印刷サイズが100mm(横;主走査方向)×148mm(縦;副走査方向)、レンズ解像度が60LPI、印刷解像度が1440dpiである場合、主走査方向の画素数は、236画素(≒148/(25.4/60))となり、副走査方向の画素数は、8390画素(≒148/(25.4/1440))となる。なお、このときの236画素は、主走査方向における凸レンズ12A1のレンズ本数となっている。
かかる解像度変換後、画像合成処理を行うが、このとき、1つの凸レンズ12A1の中に配置できる各視差の画素数を考慮しつつ、短冊状の画像データを結合していく。例えば、視差数が4である場合、1つの凸レンズ12A1の中における、1つの視差当たりの画素数は、6画素(=24(=1440/60)/4視差)となる。ここで、短冊画像を合成する場合、それぞれの元の画像データから順に、1つの凸レンズ12A1の分の画像データ(=1×8390)を取り出し、それを画素数分だけ乗算し(=6×8390)、その後に、視差順に、画素数分だけ乗算された画像データを結合していく。それにより、1つの凸レンズ12A1の分の短冊状の画像データ(=24×8390)が完成する。この処理を、凸レンズ12A1の本数分だけ、繰り返し行う。そして、各短冊状の画像データを結合して、短冊画像を作成・結合する処理が終了する(図18の短冊画像作成を参照)。それにより、視差用画像データが形成される。
S102の後に、画像合成処理により作成された視差用画像データに対して、ハーフトーン処理等を行う(S103)。なお、ハーフトーン処理に併せて、RGB系からプリンタ10で表現可能なCMYK系へと色変換処理を行うようにするのが好ましく、さらに印刷データの作成まで行わせるのが好ましい。印刷データとは、主走査方向への走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査方向の送り量を示すデータ等である。
なお、図17のフローでは、S102の短冊画像を作成後に、色変換・ハーフトーン処理を適用している。しかしながら、別の方法として、S101Aの画像の回転後に、色変換・ハーフトーン処理を行い、その後にS102の短冊画像作成処理を行い、さらに印刷データの作成を行うようにしても良い。ここで、図17に示すような処理方法では、画質の滑らかさが増す。一方、本段落において別の方法として説明しているものは、画像の切り替わりがよくなる。したがって、多くの場合、図17の方法は、立体印刷向きであり、本段落における別の方法は変わり絵印刷向きである。
以上のようにして作成される視差用画像データに基づいて印刷データが作成され、その印刷データに基づいて、レンズシート12に印刷を実行させれば、レンズシート12の傾斜角度θと、画像の回転角度θとが相殺される。その結果、図26または図28の画像加工あり(2)で示されるような、印刷が実現される。
(B.図6、図7に示す斜め吐出機構27a,27b、または図20に示す構成(斜め吐出系)を採用する場合における画像データの処理フローについて)
図19は、斜め吐出機構27a、斜め吐出機構27a等のような斜め吐出系を用いる場合における、画像データの処理フローの概略を示す図である。
なお、ここでいう斜め吐出系には、図20に示すものも含まれる。それぞれのノズル列33のノズル33aには、図20に示すようなピエゾ素子PZ(吐出動作部に対応)が設けられている。ここで、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応させるためには、ノズル列33の中の個々のノズル33aごとに、各ノズル33aの吐出開始のタイミングをずらすようにすれば良い。そのため、図20では、ノズル33aごとに、傾斜角度θに対応した特有のタイミングでインク滴を吐出させるように、タイミング信号PTSとコモン信号の組がノズル33aごとに、それぞれ与えられている。なお、図20に示す構成も、他の回動機構26,27と同様に、ヘッド制御手段の一部に対応する。
ここで、キャリッジ30の移動速度Vは、予め分かっているので、傾斜角度θが与えられると、それぞれのノズル33aに特有の、タイミング信号PTSとコモン信号の組を与えるようにする。なお、かかるタイミング信号PTSとコモン信号の組を与える処理は、ASIC105内で実行されるが、別途、専用の回路等を設けるようにして、処理を行っても良い。
図19に示すように、斜め吐出機構27a,27b等の斜め吐出系を用いる場合、最初に元画像データの変形処理を行う(S101B)。このイメージを、図21に基づいて説明する。図21は、画像データの処理イメージを示す図である。S101Bの変形処理では、図21に示すように、元画像データのそれぞれについて、平行四辺形状となるように歪ませる処理を行う。この歪ませる処理により、元画像データから、第1の変形画像データが作成される。ここで、この歪ませる処理においては、その歪みの角度θは、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対して、副走査方向を挟んで線対称となっている。また、歪ませる処理の前後においては、画像データの主走査方向における幅、および副走査方向における長さは変化していない。
なお、このS101Bの処理の後には、上述の図17のS102、S103と同様の処理が為される。そのため、この処理の詳細の説明は省略する。また、この図20に示すフローにおいても、別の方法として、S101Bの画像の変形後に、色変換・ハーフトーン処理を行い、その後にS102の短冊画像作成処理を行って、視差用画像データを形成し、さらに印刷データの作成を行うようにしても良い。
以上のようにして作成される視差用画像データに基づいて印刷データが作成され、その印刷データに基づいて、レンズシート12に印刷を実行させれば、レンズシート12の傾斜角度θと、画像の歪みの角度θとが相殺される。その結果、図30または図32の画像加工あり(2)で示されるような、印刷が実現される。
<プリンタ10の動作について>
次に、プリンタ10の動作フロー(図15のS20の詳細)について、図22に基づいて説明する。この図22に示すように、まず、プリンタ10の印刷のための準備を行う(S201)。なお、この準備の詳細については、後述する図23における処理フローにて説明する。
S201に続いて、図17または図19等の処理フローにて作成される1ライン分の印刷データが、コンピュータ130からプリンタ10に向けて送信される場合、CPU101の指令により、CRモータ22が駆動させられ、キャリッジ30は主走査方向に往復動作を開始する(S202)。
なお、この場合、後述するS207に到達するまで、キャリッジ30(CRモータ22)は駆動させられる。また、このキャリッジ30(CRモータ22)の駆動に関しては、後述するS302(図23参照)で決定される、代表レンズ値に基づいて、滑走端1(図26、図28、図30および図32参照)から駆動させるのが好ましい。しかしながら、吐出基準位置1までは、ENC信号に基づいて駆動させ、その吐出基準位置1に到達した後には、レンズ信号に基づいて駆動させるようにしても良い。
また、移動開始後、CPU101は、インク滴の吐出開始位置(=図26等における吐出基準位置1)に到達したか否かを判断する(S203)。そして、この判断において吐出開始位置に到達したと判断される場合(Yesの場合)、CPU101の指令により印刷ヘッド32(ピエゾ素子PZ)が駆動させられ、インク滴が吐出される(S204)。そして、吐出されたインク滴が付着することにより、印刷データに応じた画像(印刷画像;視差画像に対応)が、順次形成されていく。また、上述のS203の判断において、吐出開始位置に到達していないと判断される場合(Noの場合)、上述のS202に戻る。ここで、吐出基準位置1に到達するまでの間(S203においてYesと判断される前)は、キャリッジ30をENC信号に基づいて駆動させると共に、吐出基準位置1に到達したと判断された後(S203においてYesと判断された後)には、キャリッジ30をレンズ信号に基づいて駆動させるようにしても良い。
なお、この吐出開始位置に到達したか否かの判断においては、所定の幾何学的な計算に基づいて算出される吐出開始時間T1が用いられるが、その吐出開始時間T1を算出する処理フローについては、後述する図25、図27、図29および図31等に基づいて説明する。また、この吐出開始位置に到達したか否かについては、図26等における滑走端1から、現在までの経過時間Tcを計測し、計測された経過時間Tcが、吐出開始時間T1に到達したか否かによって判断される。なお、この経過時間Tcの計測は、図15におけるCPUタイマ208等を用いて行うことが可能である。
また、上述のS204のインク滴の吐出を行いながら、CPU101は、インク滴の吐出終了位置に到達したか否かを判断する(S205)。この判断は、キャリッジ30の1走査中の印刷データの全ての印刷が終了したか否か、すなわち1走査の画像の全ての印刷が終了したか否かに基づいて、行われる。しかしながら、かかる判断以外のものとしては、印刷画像のサイズは、ユーザの設定等で事前にプリンタ10側で分かっているので、かかる印刷画像のサイズを超えているか否かで行うようにしても良い。なお、図26等の吐出基準位置2が、S205でYesと判断される場合に対応する。また、吐出基準位置2に到達するまでの間(S205においてYesと判断される前)は、キャリッジ30をレンズ信号に基づいて駆動させると共に、吐出基準位置2に到達したと判断された後(S205においてYesと判断された後)には、キャリッジ30をENC信号に基づいて駆動させるようにしても良い。
そして、この判断において吐出終了位置に到達したと判断される場合(Yesの場合)、CPU101の指令により印刷ヘッド32(ピエゾ素子PZ)の駆動が停止させられ、インク滴の吐出が終了する(S206)。また、上述のS205の判断において、吐出終了位置に到達していないと判断される場合(Noの場合)、上述のS204に戻り、インク滴の吐出を継続させる。
S206の処理に続いて、CPU101の指令により、CRモータ22に停止に応じた電流が印加され、キャリッジ30は停止させられる(S207)。以上のようにして、1ライン分の印刷が終了する。続いて、CPU101の指令により、PFモータ41が駆動させられ、レンズシート12の紙送り動作が実行される(S208)。すなわち、レンズシート12が1ステップ分だけ副走査方向に移動させられる。また、このPFモータ41の駆動と共に、CPU101の指令により、CRモータ22は、印刷時とは逆向きに駆動させられ、キャリッジ30を印刷開始位置に向けて戻すように駆動させる(同じくS208)。
次に、CPU101は、印刷データが存在するか否かを判断する(S209)。この判断において、印刷データが存在する場合(Yesの場合)には、未だレンズシート12に対する印刷が終了していない状態となるため、上述のS202に戻り、S202で説明した順次の処理を実行する。また、S209の判断において、印刷データが存在しないと判断される場合(Noの場合)には、印刷が終了する。
<プリンタ10における準備の詳細について>
続いて、上述の図22の処理フローのうち、S201のプリンタ10の準備の詳細について、図23の処理フローに基づいて説明する。
まず、レンズシート12の凸レンズ12A1の傾斜角度θに応じて、斜め走査系または斜め吐出系の角度調整を行う(S301)。すなわち、斜め走査機構26、斜め吐出機構27a、斜め吐出機構27bのうち、いずれかを作動させて、傾斜角度θに応じた角度調整を行う。また、図20の制御を採用する場合には、傾斜角度θに応じた分だけ、各ピエゾ素子PZの駆動タイミングをずらすように、タイミング信号PTSとコモン信号との組を与えるようにする。
また、上述のS301においては、上述以外にも、斜め走査機構26において、モータによらずに、手でキャリッジ軸21を把持しながら該キャリッジ軸21を回動させて、所望の傾斜角度となるように角度調整を行っても良い。
S301に続いて、プリンタ10においては、代表レンズ値を決定する処理を行う(S302)。ここで、代表レンズ値は、上述のレンズ信号生成回路の代表レンズ値決定回路207で決定される。この代表レンズ値決定回路207では、レジスタ203のLカウント値がレジスタ206のレンズ終了値以上となった場合には、レンズシート12の端部であると判定する。そして、レジスタ205に格納されている合計値を、レジスタ202に格納されているレンズ数によって除算する。この除算により、レンズ間隔の平均値を求められるが、この平均値を代表レンズ値として、CPUタイマ208に供給する。そして、CPUタイマ208は、代表レンズ値決定回路207から供給された代表レンズ値を参考にし、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成し、出力する。
なお、決定された代表レンズ値は、図示外のレジスタ等の記憶部位に記憶される。また、レジスタ202,203,206の動作については、既に述べているので、記載は省略する。
また、代表レンズ値は、上述のようにレンズ間隔の平均値には限られず、レンズ間隔のうち、最も出現頻度が高いものを代表レンズ値としても良い。かかるレンズ信号生成回路の構成例を、図24に示す。この図24に示すように、レンズ信号生成回路は、カウンタ300、候補記録回路301、レジスタ302〜306、優先処理回路307、代表レンズ値決定回路308、および、CPUタイマ309によって構成されている。
ここで、カウンタ300はカウンタ200と同様であり、レジスタ302はレジスタ203と同様であり、レジスタ306はレジスタ206と同様であり、CPUタイマ309も、CPUタイマ208と同様であるため、その説明は省略する。
候補記録回路301は、レジスタ303に格納されているLラッチ値を、その出現頻度を示す値とともにレジスタ305のテーブルに格納する。具体的には、候補記録回路301は、レジスタ305のテーブルの空き領域に格納する場合には、レンズ間隔とともに出現頻度を1として格納する。また、既に格納済みのレンズ間隔を格納する場合には、当該出現頻度を1インクリメントする。さらに、前述の2つ以外に該当する場合には、レジスタ304の優先フラグをセットする。
また、レジスタ303には、ポジティブエッジが検出された時点において、レジスタ302に格納されている、その直前におけるLカウント値がラッチされる。レジスタ304には、前述した優先フラグが格納される。レジスタ305には、レンズ間隔とその出現頻度とがテーブル形式で格納される。例えば、5種類のレンズ間隔がその出現頻度とともに格納される。
優先処理回路307は、レジスタ304の優先フラグがセットされている場合に、Lラッチ値をレジスタ305のテーブルのどこに格納するかを決定する。具体的には、例えば、出現頻度が最も低いレンズ間隔と置換する。または、一番大きいレンズ間隔と置換するか、もしくは、格納されているレンズ間隔の中で分散が最も大きいレンズ間隔と置換する。
代表レンズ値決定回路308は、レジスタ302のLカウント値がレジスタ306のレンズ終了値以上となった場合には、レンズシート12の端部であるとし、レジスタ305に格納されているレンズ間隔の中から、出現頻度が最も高く、レンズ間隔が最も短いものを選択して代表レンズ値として出力する。なお、レンズ間隔が短いものを選択する理由は、凸レンズ12A1の検出誤差が生じた場合には、レンズ間隔が長くなる傾向があるので、同一の出現頻度のレンズ間隔が複数存在する場合には、レンズ間隔が短いものが誤差が少ないためである。
このように構成しても、代表レンズ値決定回路308で、レンズシート12の端部であると判定されると、レジスタ305に格納されているレンズ間隔の中から、出現頻度が最も高く、レンズ間隔が最も短いものを選択して代表レンズ値として出力する。
S302で代表レンズ値が決定されると、続いて、シート端の検出を行う(S303)。このとき、CPU101の指令により、CRモータ22が駆動させられ、キャリッジ30がレンズシート12に向かって移動する。ここで、レンズシート12のシート端を検出する場合、レンズシート12を検出可能な位置まで、該レンズシート12の紙送りを行う。そして、検出が可能な位置まで移動させた後に、レンズ検出センサ60を用いて、シート端を検出する。なお、ここでは、図26等における位置aが、シート端として検出される。
なお、S302の処理で、既に代表レンズ値を決定していると共に、その決定の際のシート送り量(以下、送り量をPとする。)等も既知となっている。そのため、シート端(位置a)が検出されるまでの移動を代表レンズ値に基づいて移動させるようにしても良い。
また、図26等に示すレンズシート12の実際のシート端と、2値化処理部93を経て認識されるシート端(レンズ信号のポジティブエッジ等)との間には、一定のずれが生じる可能性がある。かかるずれの具合によっては、例えば位置c付近のシート端で、レンズシート12に未印刷の部分が生じる可能性がある。そのため、例えばレンズ信号のポジティブエッジが最初に検出される場合、その検出されるポジティブエッジよりも、代表レンズ値に基づいて補完されるレンズ信号の1周期前のポジティブエッジを吐出基準位置1としても良い。このようにすれば、レンズシート12に未印刷の部分が生じるのを防止可能となる。
また、上述のS303においては、シート端の検出と共に、滑走端1からシート端までの間の時間T0を、例えばクロック信号のカウントにより、不図示のレジスタ等の記憶部位に記憶させておく。そして、記憶されている時間T0は、後述する図25他における処理フローにおいて、吐出基準位置1を算出するために用いられる。
S303に続いて、レンズシート12の頭出しを行う(S304)。このとき、CPU101の指令により、PFモータ41を駆動させ、レンズシート12を一度紙送りの上流側に向けて戻す。このときの戻す量は、シート端の検出のためにPFモータ41を駆動させた分か、またはそれ以上とするのが好ましい。この後に、再びレンズシート12を紙送りの下流側に向けて搬送させる。このレンズシート12の搬送と共に、レンズ検出センサ60を、S303で検出されたシート端に予め位置させておく。すると、レンズシート12の紙送りの先端が、レンズ検出センサ60によって検出される。以上のようにして、図22のS201における、プリンタ10の印刷のための準備に関する処理が終了する。
なお、このレンズシート12の頭出しは、レンズ検出センサ60以外に、上述のPWセンサを用いるようにしても良い。
<吐出開始時間T1を算出するための処理フローについて>
続いて、上述のS203の判断で用いられる、所定の吐出開始時間T1を算出するための処理フローについて、図25、図27、図29および図31に基づいて説明する。
(A.図26に対応する処理フロー)
まず、図26に対応する場合の処理フローについて、図25に基づいて説明する。このとき、CPU101は、現在までの紙送り量Pが、レンズシート12のシート長以上であるか否か(副走査方向に沿ったレンズシート12の長さ以上であるか否か)について判断する(S401)。この判断では、レンズシート12の長さ未満である場合(Noの場合)、図26に示す領域abcの範囲内を、印刷ヘッド32の基準位置が通過する。なお、レンズ検出センサ60の中心軸を、このときの基準位置としても良い。
このS401の判断において、紙送り量Pがレンズシート12のシート長未満であると判断される場合(Noの場合)、続いて、現在の印刷ヘッド32の基準位置の走査線(S1等)上における、吐出基準位置1からシート端までの距離Lを計算する(S402)。この計算においては、図26のようにレンズシート12が傾斜している場合、距離L=(シート長−シート送り量P)×sin(θ×π/180)の計算式により求められる。
上述のS402で距離Lを求めた後に、時間T2を算出する(S403)。この算出は、時間T2=(距離L/速さV)の計算式によって求められる。なお、速さVは、キャリッジ30の主走査方向に沿う移動速度である。ここで、CRモータ22は、例えばROM102に記憶されている速度テーブルに沿うように、駆動制御される。そのため、かかる速度テーブルを参照する等により、速さVは、事前に明確となっている。それにより、S402で距離Lが求められれば、時間T2も即座に算出可能となっている。
次に、吐出開始時間T1を求める(S404)。この吐出開始時間T1は、滑走端1からシート端までの時間T0から、S403で算出される時間T2を減じることにより算出される。以上のようにして吐出開始時間T1が算出される。
また、上述のS401で、紙送り量Pが、レンズシート12のシート長以上であると判断される場合(Yesの場合)、走査線S2は、三角cdeの領域を通過する状態となる。このとき、吐出基準位置1とシート端1との間の距離Lの線分は、シート端1を超えて、シート端2側に向かう状態となっていて、その状態の距離Lを計算する(S405)。この計算においては、S402と正負が逆になることを考慮して、距離L=(シート送り量P−シート長)×sin(θ×π/180)の計算式により求められる。
このS405の後のS406は、上述のS403と同様であるため、その説明は省略する。また、S406によって、時間T2が算出されると、吐出開始時間T1を求める(S407)。この吐出開始時間T1は、滑走端1からシート端までの時間T0に、S406で算出される時間T2を加算することにより算出される。以上のようにして吐出開始時間T1が算出される。
(B.図28に対応する処理フロー)続いて、図28に対応する場合の処理フローについて、図27に基づいて説明する。このとき、まず、紙送り量Pが、図28における距離ad(ad長)を超えているか否かを判断する(S501)。なお、この距離ad(ad長)については、ad長=(シート幅)×tan(θ×π/180)の計算式によって求める。また、紙送り量がad区間を越えていない場合、描画領域(レンズシート12に対してθだけ傾いた二点鎖線の領域)がシート端1より右側にあり、一方、紙送り量がad区間を超えた場合にはシート端1より左側にある。この状態を、S501で判断する。
また、紙送り量Pがad区間を超えていないと判断される場合(Noの場合)、続いて、距離Lを求める(S502)。距離Lについては、距離L=(ad長−送り量P)×sin(θ×π/180)の計算式によって求める。続いて、上述のS403と同様に、時間T2=(距離L/速さV)の計算式により、時間T2を求める(S503)。次に、吐出開始時間T1を求める(S504)。この吐出開始時間T1は、時間T0に時間T2を加算することにより算出される。
また、上述のS501で、紙送り量Pが、ad長以上であると判断される場合(Yesの場合)、印刷ヘッド32は、例えば走査線S1に沿って移動する。そのため、距離Lについては、距離L=(送り量P−ad長)×sin(θ×π/180)の計算式により求められる(S505)。続いて、上述のS403,S503と同様に、時間T2=(距離L/速さV)の計算式により、時間T2を求める(S506)。次に、吐出開始時間T1を求める(S507)。この吐出開始時間T1は、時間T0から時間T2を減じることにより算出される。
(C.図30に対応する処理フロー)
続いて、図30に対応する場合の処理フローについて、図29に基づいて説明する。この場合、まず、距離Lを求める(S601)。距離Lについては、距離L=(シート長−送り量P)×tan(θ×π/180)の計算式によって求める。
このS601の後に、S402と同様に、時間T2=(距離L/速さV)を計算することにより、時間T2が求められる(S602)。さらに、S602の後に、S404と同様に、吐出開始時間T1=(時間T0−時間T2)を計算することにより、時間T2が求められる(S603)。
(D.図32に対応する処理フロー)
続いて、図32に対応する場合の処理フローについて、図31に基づいて説明する。この場合、まず、距離Lを求める(S701)。距離Lについては、距離L=(送り量P)×tan(θ×π/180)の計算式によって求める。このS701の後の、S702およびS703は、上述のS602およびS603と同様であり、その説明は省略する。
以上のようにして、図25、図27、図29および図31のそれぞれの場合における、吐出開始時間T1が求められる。そして、この吐出開始時間T1を用いて、上述の図22におけるS203の処理(判断)が為される。
<本発明の効果>
このような構成のプリンタ10によると、レンズシート12との間の回転方向における相対的な位置に応じて、ノズル列33のノズル33aから吐出されるインク滴を、凸レンズ12A1の長手方向に沿わせられる。それにより、凸レンズ12A1の長手が傾斜しているタイプのレンズシート12においても、インク滴の吐出により形成されるドットは、凸レンズ12A1の長手方向に沿わせることができる。また、インク滴の吐出により形成されるドットを、凸レンズ12A1と凸レンズ12A1の間に存在しない(跨らない)ようにすることもできる。そのため、レンズシート12に対する印刷品質を良好にすることが可能となる。
また、凸レンズ12A1の長手が印刷ヘッド32に対して傾斜していても、その傾斜に対応させて印刷できるので、従来のように印刷画像を切り抜く作業も必要なく、紙やレンズシート等に無駄な部分が生じるのを防ぐことが可能となる。
また、本発明によれば、印字幅をさほど減らさずに視差数を増加させることができ、レンズシート12における印刷品質を良好にすることが可能である。
また、図4、図5に示す斜め走査機構26、または図6、図7に示す斜め吐出機構27によって、印刷ヘッド32は、レンズシート12の長手方向に沿って回転させられる。このため、印刷ヘッド32の回転により、凸レンズ12A1の長手が傾斜しているレンズシート12においても、各ノズル33から吐出されるインク滴を、当該凸レンズ12A1の長手に確実に沿わせることができる。そのため、各ノズル列33からのインク滴が吐出され、そのインク滴の着弾によってドット列が形成される場合、そのドット列は、2つの凸レンズ12A1において横断的となる(跨る)のを防ぐことができ、印刷品質を向上させることが可能となる。
また、図4および図5に示される斜め走査機構26では、キャリッジ軸21の一端側21aは、モータの駆動力およびスライド板261を介してスライド可能に設けられている。このため、キャリッジ軸21を、他端側21bを支点として回動させることが可能となり、該回動によって印刷ヘッド32を凸レンズ12A1の傾斜具合に合わせて傾斜させることができる。それにより、良好な印刷が実現可能となる。加えて、この斜め走査機構26では、印刷ヘッド32の傾斜角度のみならず、印刷ヘッド32のスライド方向も傾斜する。そのため、インク滴の吐出によりレンズシート12に形成されるドットは、凸レンズ12A1が傾斜していない通常のレンズシートに対する印刷と同様となる。それにより、レンズシート12に対する印刷品質を一層良好にすることが可能となる。
さらに、図6および図7に示される斜め吐出機構27a,27bでは、キャリッジ軸21は回動しないものの、印刷ヘッド32を回動させることができる。それにより、印刷ヘッド32は、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応させて回動可能となり、インク滴の吐出により形成されるドットは、隣り合う凸レンズ12A1の間に存在せずに、凸レンズ12A1の谷間等に沿わせることができる。そのため、レンズシート12に対する印刷品質を良好にすることが可能となる。
また、図20に示す構成を適用すれば、ピエゾ素子PZは、凸レンズ12A1の傾斜角度に応じて、適切な動作タイミングに制御可能となる。そのため、各ノズル列33からインク滴が吐出され、そのインク滴の着弾によってドット列が形成される場合、そのドット列は、2つの凸レンズ12A1において横断的となる(跨る)のを防ぐことができ、印刷品質を向上させることが可能となる。また、ピエゾ素子PZの制御のみでインク滴の着弾位置を制御できるので、印刷ヘッド32の回動等の複雑な機構が不要となり、コストの低減を図ることも可能となる。
さらに、本実施の形態では、元画像データは、図18または図21に示すように変形処理させられる。このように画像処理すれば、凸レンズ12A1の傾斜角度を相殺して、印刷を実行することが可能となる。それにより、レンズシート12には、歪みや傾斜のない印刷画像を形成させることが可能となる。また、図18または図21に示すように、画像処理においては、レンズシート12のレンズピッチに応じて画像データが細分化させられ、その後に、細分化された画像データを視差順に配置して視差用画像データを形成している。このため、視差用画像データを、レンズピッチに適合させることが可能となる。
また、図4および図5に示す斜め走査機構26を用いる場合、印刷ヘッド32の走査方向とレンズの長手方向とが直交する状態となる。この場合でも、図18に示すような画像処理が為されるので、ノズル列33は、凸レンズ12A1の長手に沿う状態となる。このため、元画像データを凸レンズ12A1の傾斜角度に対応させる分だけ回転させれば、当該凸レンズ12A1の傾斜角度に対応した印刷を実行させることが可能となる。また、上述の回転は、凸レンズ12A1の長手方向と搬送方向とが為す傾斜角度とは逆の角度となっている。そのため、レンズシート12に印刷を実行すれば、傾斜角度同士が相殺され、傾斜のない印刷画像を形成可能となる。
さらに、図6および図7に示す斜め吐出機構27を用いる場合、ノズル列33を凸レンズ12A1の長手に沿わせることが可能であるが、その場合、印刷ヘッド32の走査方向は、ノズル列33および凸レンズ12A1の長手に対して、所定の傾斜角度θを為す状態となる。ここで、図21に示すような画像処理が為されるので、レンズシート12に印刷を実行すれば、傾斜角度同士が相殺され、歪みのない印刷画像を形成可能となる。
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、キャリッジ30は、レンズシート12の上部を定速で移動するようにしても良く、レンズシート12の上部で速度が変化するようにしても良い。なお、タイミング信号PTSとCRモータ22を駆動するための駆動信号とは、それぞれ別の信号(基準信号)に基づいて、作成されても良い。例えば、タイミング信号PTSはレンズ信号に基づいて作成されると共に、CRモータ22の駆動用の駆動信号は、ENC信号に基づいて作成されても良い。この場合であって、特にレンズ信号が代表レンズ値に基づいて生成される場合、それぞれの凸レンズ12A1に印刷される印刷画像にずれが生じるのを防ぐため、キャリッジ30は、一定速で移動する状態となる。
また、上述の実施の形態においては、キャリッジ30の位置に応じて、代表レンズ値を決定するようにしても良い。このとき、キャリッジ30の走査中のある位置において得られるレンズ間隔(代表レンズ値L1)と、代表レンズ値の獲得時のENC間隔(代表ENC値E1;代表レンズ値の獲得時に対応するENC信号のエッジ間に得られるクロック数)とを求め、代表レンズ値L1と代表ENC値E1との比を求める。さらに、キャリッジ30の現在の位置におけるENC間隔(現ENC値E2;現在の位置においてENC信号のエッジ間に得られるクロック数)と、上述の代表レンズ値L1と代表ENC値E1との比から、現ENC値E2に対応する代表レンズ値L2を、比例的に求める。このようにすれば、キャリッジ30の速度が一定でなく、変動する場合でも、その変動に対応させることが可能となる。
なお、上述の代表レンズ値L2を比例的に求める場合、図15のレンズ信号生成回路を用いることはできず、図24も構成を変更して用いる必要がある等、専用の回路が必要となる。また、現ENC値E2は、キャリッジ30の現在位置よりも1周期前の値であるため、現在の周期に対応させるために、所定の補正処理を行うようにしても良い。
また、上述の実施の形態においては、レンズ検出センサ60は、ホームポジションから離間する部位に、1つのみ設けられている。しかしながら、レンズ検出センサ60の個数は1つには限られず、キャリッジ30に複数個設けるようにしても良い。例えば、キャリッジ30の下面のうち、主走査方向の両端にそれぞれレンズ検出センサ60を取り付ける場合、キャリッジ30の往復動のそれぞれにおいて、印刷よりも先にレンズピッチを計測することが可能となり、レンズシート12に対する印刷を往復動のそれぞれで実行可能となる。
また、上述の実施の形態では、ENC信号およびレンズ信号は、パルス信号であると共に、エンコーダ周期情報/レンズ周期情報は、これらのポジティブエッジ/ネガティブエッジとなっている。しかしながら、ENC信号およびレンズ信号がアナログ信号であっても良い。これらがアナログ信号である場合、電圧の所定のしきい値を、エンコーダ周期情報/レンズ周期情報とすれば、カウント値等を算出することが可能となる。
また、上述の実施の形態では、レンズシート12は、凸レンズ12A1が多数並べられる構成となっているが、レンズシートはこれには限られず、凹レンズが多数並べられる構成のレンズシートであっても良い。なお、この場合には、上述の各処理は、ポジティブエッジではなく、ネガティブエッジを検出したときを基準とするのが好ましい。
また、上述の実施の形態では、規定の傾斜角度θのレンズシート12に対して、印刷を実行する場合について述べている。しかしながら、制御部100等で、傾斜角度(図2における傾斜角度θ)がどれぐらいか、算出する処理を行うようにしても良い。かかる算出は、例えば図33に示すように、地点Aと、この地点Aに対して副走査方向に沿って所定距離だけ離間している地点Bとの間の距離Qを計測する。また、副走査方向に垂直な凸レンズ12A1の横断方向に沿う直線上のA地点に対する右隣または左隣のいずれか(図33では右隣)に存在する谷部分までの距離ALと、上述の横断方向上の地点Bに対する右隣または左隣のいずれか(図33では右隣)に存在する谷部分までの距離BLとを計測する。そして、これら距離AL,BLおよび距離Qの計測が終了した後に、続いて、傾斜角度θの計算を行う。θを度で表す場合、傾斜角度θは、θ=ATAN(Δ/Q)×180/πによって求められる。なお、Δは、距離BLと距離ALとの間の差分である。以上のようにして、凸レンズ12A1の傾斜角度θが算出される。
このようにすれば、上述のプリンタ10のように、地点A、地点Bを通るように印刷ヘッド32を走査させる等によって、レンズシート12が、通常のレンズシートであるか、または凸レンズ12A1が傾斜している状態となっているか判断することができる。このため、傾斜していると判断された場合でも、通常のレンズシートと区別して、良好に印刷を行わせることができる。すなわち、凸レンズ12A1が傾斜していて、このレンズピッチに対応させてインク滴を吐出させ、かつ斜め印刷に対応させることが可能となる。
なお、図33に示すように、2点においてレンズピッチの計測を行う場合、凸レンズ12A1の長手方向の一方向に対する傾斜角度θを適切に算出することが可能となり、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮して、適切な位置にインク滴を吐出させることが可能となる。それにより、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮せずにインク滴を吐出させる場合のように、印刷画像がずれたり、曲がったりするのを防止可能となる。
また、上述の実施の形態では、プリンタ10は、印刷のみを行うものには限られず、コピー/ファックス/スキャナ機能も兼ねている複合的なプリンタであっても良い。また、上述の実施の形態においては、レンズシート12に対して印刷画像を直接印刷する、直描型の場合について述べている。しかしながら、別途印刷された印刷物をレンズシートに貼り合わせる、分離型の場合についても、本発明を適用することは勿論可能である。なお、スキャナ機能を備えるプリンタを用いる場合、当該スキャナ機能がスキャナ手段および判断手段の一部に対応する。
このとき、スキャナ機能により、レンズシート12に対して光が照射され、レンズシート12に対して光を照射しつつ、レンズシート12の読み取りデータを出力する。この場合、レンズシート12には、複数の凸レンズ12A1が配置されているため、レンズシート12のレンズピッチまたはレンズ解像度に対応する情報も、読み取りデータに含まれる。また、制御部100では、読み取りデータから、レンズピッチまたはレンズ解像度に対応するパターン情報を算出し、さらに、このパターン情報の計測に基づいて、レンズピッチまたはレンズ解像度を算出する。
このようにすれば、スキャナ機能を用いてレンズシート12を読み取らせれば、レンズピッチまたはレンズ解像度を簡易かつ自動的に算出することが可能となる。加えて、凸レンズ12A1の長手方向の一方向に対する傾斜角度も適切に算出することが可能となる。そのため、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮して、適切な位置にインク滴を吐出させることが可能となる。それにより、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮せずにインク滴を吐出させる場合のように、印刷画像がずれたり、曲がったりするのを防止可能となる。
10…プリンタ、12…レンズシート、12A1…凸レンズ、20…キャリッジ機構、21…キャリッジ軸(支持軸に対応)、26…斜め走査機構(回動機構に対応)、27…斜め吐出機構(回動機構に対応)、30…キャリッジ、50…プラテン、60…レンズ検出センサ(レンズ検出手段に対応)、61…発光部、62…受光部、80…リニアエンコーダ、81…スケール、100…制御部(制御手段および判断手段に対応)、261…スライド板(スライド部材に対応)、277…モータ(駆動手段に対応)、207,308…代表レンズ値決定回路