以下、本発明の印刷装置の実施の形態について、図1から図25に基づいて説明する。なお、プリンタ10と、コンピュータ120とが接続され、これらが協働することによって、印刷装置が実現される。また、以下の実施の形態では、プリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、かかるインクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。また、後述する各種プログラムが読み込まれ、その機能を良好に果たすものであれば、コンピュータ120を画像処理装置としても良く、プリンタ10を画像処理装置としても良い。
なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ30が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート12が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート12が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート12が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
<レンズシートについて>
最初に、印刷対象物であるレンズシート12について説明する。図1に示すように、レンズシート12は、表面に位置するレンチキュラーレンズ12Aと、このレンチキュラーレンズ12Aの裏面と接するインク吸収層12Bと、該レンズシート12の裏面に位置するインク透過層12Cとを具備している。これらのうち、レンチキュラーレンズ12Aは、一方向を長手とする複数のシリンドリカル凸レンズ(凸レンズ12A1)が、一定のピッチで並列配置された構成となっている。レンチキュラーレンズ12Aにおいては、それぞれの凸レンズ12A1を進行する光の焦点が、レンチキュラーレンズ12Aの裏面(インク吸収層12Bとの境界面Q)に位置するように、凸レンズ12A1の曲率が形成されている。
なお、本実施の形態では、レンチキュラーレンズ12Aにおける凸レンズ12A1の並びのピッチとしては、後述するスケール81のラインパターンの並びのピッチの整数倍とするものがある。例えば、スケール81のラインパターンが1/180インチである場合、凸レンズ12A1のピッチは、10lpi(lens per inch;1インチ当たりの凸レンズ12A1の本数)、20lpi、30lpi、45lpi、60lpi、90lpi、100lpi、130lpi、180lpiとするものがある。しかしながら、凸レンズ12A1のピッチは、該例示には限られず、これらのレンズピッチ以外に種々変更するようにしても良い。また、レンズシート12においては、通常は、製造誤差等によって、上述の凸レンズ12A1のピッチから、若干ずれが生じている。
また、インク透過層12Cは、ノズル33aから吐出されたインク滴が最初に付着する部分であり、該付着したインクが透過していく部分である。このインク透過層12Cは、例えば酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)等の微粒子、硫酸バリウム、ガラスファイバ、プラスチックファイバ等を材質として形成されている。また、インク吸収層12Bは、インク透過層12Cを透過したインクを吸収および/または固着させる部位である。このインク吸収層12Bは、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材質として形成されている。また、レンチキュラーレンズ12Aは、PET、PETG、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV樹脂等を材質として形成されている。
なお、インク吸収層12Bは透明であると共に、インク透過層12Cは、白色である。しかしながら、インク吸収層12Bが白色であっても良く、またインク透過層12Cが透明であっても良く、さらにインク透過層12Cとインク吸収層12Bの両方が透明であっても良い。また、本実施の形態では、インク透過層12Cが存在することにより、印刷後であっても、レンズシート12を直ぐに触ることが可能となっている。しかしながら、レンズシート12は、インク透過層12Cを具備しない構成を採用しても良い。
また、図2に示すように、本実施の形態におけるレンズシート12は、その外観が矩形状を為していると共に、該矩形状の外観を構成するレンズシート12の縁部12Eが、凸レンズ12A1の長手方向(一方向に対応)に対して傾斜する状態に設けられている。すなわち、凸レンズ12A1の長手方向は、矩形状のレンズシート12の外枠(縁部12E)に対して、傾斜する状態に設けられている。なお、凸レンズ12A1の縁部12Eに対する傾斜角度θは、本実施の形態では、10度程度に設けられている。しかしながら、傾斜角度は10度に限られるものではなく、例えば0.1度〜45度の範囲内で、種々の傾斜角度を採用することが可能となっている。
なお、図2においては、基準となる方向(基準方向L)が図示されている。この基準方向Lは、本実施の形態では、回転軸方向に対応している。そして、この基準方向Lが、凸レンズ12A1の長手方向に対して傾斜角度θを為している。
<プリンタの全体的な構成について>
また、図3他に示すように、プリンタ10は、キャリッジモータ(CRモータ22)によってキャリッジ30を主走査方向に往復動させるキャリッジ機構20、PFモータ41(紙送りモータに対応)によってレンズシート12を搬送する用紙搬送機構40等があり、その他、図3に示す制御部100が存在する。
ここで、キャリッジ機構20について説明する。キャリッジ機構20は、図3他に示すように、キャリッジ30を具備している。また、キャリッジ機構20は、キャリッジ30を摺動可能に保持するキャリッジ軸21と、キャリッジモータ(CRモータ22)と、このCRモータ22に取り付けられている歯車プーリ23と、無端のベルト24と、歯車プーリ23との間にこの無端のベルト24を張設する従動プーリ25と、リニアエンコーダ80と、を備えている。
また、図4等に示すように、プラテン50に対向する状態で、キャリッジ30が設けられている。キャリッジ30には、図3等に示すように、各色のインクカートリッジ31が着脱可能に搭載されている。また、キャリッジ30の下部には、印刷ヘッド32が設けられている。図5に示すように、印刷ヘッド32には、ノズル33aがレンズシート12の搬送方向(副走査方向)に列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列33を形成している。なお、本実施の形態では、ノズル列33は、例えば180個のノズル33aから構成されており、このうち、180番目のノズル33aが給紙側、1番目のノズル33aが排紙側に位置している。
また、キャリッジ30の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列33には、ノズル33a毎に、ピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズル33aからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、印刷ヘッド32は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、その他の方式を用いても良い。その他の方式としては、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等が、主な方式として挙げられる。
また、図4等に示すように、プリンタ10は、用紙搬送機構40を具備している。用紙搬送機構40は、レンズシート12等を搬送するためのPFモータ41(図3参照)、および普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ42を具備している。また、給紙ローラ42よりも排紙側には、レンズシート12を搬送および/または挟持するためのPFローラ対43が設けられている。なお、PFローラ対43のうち、PF駆動ローラ43aは、PFモータ41からの駆動力が伝達され、レンズシート12の1ステップずつの搬送を可能としている。
また、PFローラ対43の排紙側には、プラテン50および上述の印刷ヘッド32が上下に対向する様に配設されている。プラテン50は、PFローラ対43によって印刷ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート12を、下方側から支持する。また、プラテン50よりも排紙側には、上述のPFローラ対43と同様の、排紙ローラ対44が設けられている。この排紙ローラ対44のうち、排紙駆動ローラ44aには、PF駆動ローラ43aと共に、PFモータ41からの駆動力が伝達される。
また、プリンタ10のうち、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ42の下方側には、開口部45が設けられている。開口部45は、レンズシート12等の折り曲げ困難な印刷対象物を、プリンタ10の後端側で通過させるための開口部分である。なお、レンズシート12は、単体で開口部45を通過する以外に、トレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
また、図1および図7に示すように、キャリッジ30の下面とプラテン50の間の部位には、レンズシート12における凸レンズ12A1のレンズピッチ(またはレンズ位置)を検出する、レンズ検出手段に対応するレンズ検出センサ60が配置されている。レンズ検出センサ60は、光の投受光方式(透過方式)のセンサであり、図1および図7等に示すように、発光部61と、受光部62とを有している。これらのうち、発光部61は、搬送されるレンズシート12よりもプラテン50側(下方側)に設けられている。また、受光部62は、搬送されるレンズシート12よりもキャリッジ30側(上方側)に設けられている。
図1に示すように、本実施の形態における発光部61は、光の出射側とは反対側に光源612が配置される直下方式の構成を採用しており、光源群611と、この光源群611を覆う拡散板613とを有している。発光部61は、プラテン50の後端側(レンズシート12の給紙側)に設けられている。なお、発光部61が設けられる部位は、プラテン50には限られず、その他の固定的な部位に設けるようにしても良く、また、プラテン50の前端側に設けるようにしても良い。このように、発光部61をプラテン50の後端側に設けることにより、後述する発光部61と受光部62とが対向している。
また、発光部61は、プラテン50の後端側に存在する凹陥部51に設けられている。凹陥部51は、プラテン50の他の部分よりも窪んでいる部分である。この凹陥部51は、光源群611(光源612)が拡散板613に対して一定の距離だけ離間可能となるように、一定以上の深さ寸法を有する状態に設けられている。
また、図1に示すように、光源群611は、多数の光源612が主走査方向に並べられている。これら光源612は、所定色の光を発する発光ダイオード(LED;light emitting diode)である。また、これらの光源612は、所定の間隔毎に配置されていると共に、光源612の指向性を考慮して、レンズシート12に対して一定の間隔だけ離間する状態で配置されている。それにより、光源612から出射された光は、拡散板613に対して、若干の広がりを有した状態で照射される。また、拡散板613は、光源612から出射された光の進行方向を種々変更する。それにより、拡散板613を通過した光は、コントラストの均一化が図られた状態で、レンズシート12に向かって出射される。
なお、本実施の形態では、光源612が並べられた光源群611は、レンズシート12の規定の幅よりも大きくなるように設けられている。そのため、レンズシート12に対して入射される光のコントラストに、大きな差異が生じないように設けられている。また、光のコントラストを一層低減したい場合には、光源群611を構成する光源612の配置を変更して、多数の光源612を千鳥状となるように配置するようにしても良い。
また、キャリッジ30の下面には、受光部62が設けられている。この受光部62は、キャリッジ30の下面に取り付けられていて、しかも、主走査方向において、例えばホームポジションから離間する部位、かつ副走査方向において給紙側に取り付けられている。しかしながら、受光部62の取付位置は、かかる部位には限られず、キャリッジ30の下面のうち、例えば主走査方向の中央部に取り付けられる構成としても良い。
本実施の形態では、受光部62は、基体部621、受光素子623およびスリット板624を有している。このうち、基体部621は、受光素子623を取り付ける部分であり、該受光素子623を取り付ける収納部622を有している。この収納部622は、四方が板状部材で囲まれる状態となっている。そして、板状部材で囲まれた収納部622に受光素子623が取り付けられ、下面側のみが開放している。それによって、一定の拡散光の受光を防止するように構成されている。
また、受光素子623は、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC等のような、受光した光を電気信号に変換することが可能な素子である。また、収納部622の下面側には、スリット板624が取り付けられている。このスリット板624には、光の通過を許容するスリット624aが形成されていて、該スリット624aを介して所定の方向の光(図1においては光軸Lに沿う方向の光)の受光を許容する構成となっている。
なお、スリット624aの幅寸法は、凸レンズ12A1のレンズ幅の1/2以下であることが望ましい。しかしながら、スリット624aの幅寸法が狭すぎる場合、プラテン50とキャリッジ30との間のギャップ調整がシビアになり、良好な検出が行えなくなる虞がある。このため、スリット624aの幅寸法は、一定の寸法値以上とする必要がある。また、スリット板624のうち、スリット624a以外の部分に照射された光は、該スリット板624によって遮断される。かかる構成により、光軸Lに沿う方向以外の拡散光が受光素子623で受光されるのが防止されている。
また、上述のようなスリット板624を設けない構成を採用しても良い。この場合には、受光素子623におけるレンズピッチの検出精度は悪化するものの、各凸レンズ12A1の有する集光作用等により、レンズシート12のレンズピッチの検出は可能である。
また、本実施の形態では、受光部62は、レンズシート12の搬送状態において、該レンズシート12に接触しないものの、このレンズシート12に対して搬送性を悪化させない程度に近接する配置となっている。それにより、発光部61から出射された光は、境界面Qのうち各凸レンズ12A1の曲率中心を焦点として拡散するが、光はさほど拡散しない状態で受光部62に入射される。
なお、発光部61が直下方式を採用する場合、その構成は、発光ダイオードを多数並べるものには限られず、主走査方向を長手とするライン状光源を用いるようにしても良い。ライン状光源としては、具体的には、陰極蛍光ランプ(CFL;Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはエレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)を用いることが可能である。また、発光部61は、その他、可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を用いるようにしても良い。
また、発光部としては、直下方式を採用せずに、エッジライト方式の構成を採用するようにしても良い。この場合、発光部は、主走査方向の端部に配置される光源と、光源の光を主走査方向側に向けて反射するリフレクタと、光が内部を進行すると共に主走査方向を長手とする導光板と、導光板の下面側、側面側および導光板の長手方向の他端側に取り付けられ光を反射する反射部材と、上面側に向かって出射される光を拡散させる拡散フィルムと、導光板の下面に配置され光を拡散させる反射ドットと、を有する状態となる。
また、レンズシート12とノズル33aとの間の距離PGを測定すべく、キャリッジ30の下面には、レンズ検出センサ60以外に、ギャップ検出センサ70が存在するのが好ましい。図8は、距離PGを検出するギャップ検出センサ70の説明図である。図8に示すように、ギャップ検出センサ70は、発光部71と、2つの受光部(第1受光部72a及び第2受光部72b)とを有する。発光部71は、発光ダイオードを有し、レンズシート12に光を照射する。第1受光部72aおよび第2受光部72bは、受光した光量に応じた電気信号を出力する受光素子をそれぞれ有する。なお、第2受光部72bは、第1受光部72aと比較して、発光部71から遠い位置に設けられている。
発光部71から発せられた光は、レンズシート12に照射されると共に、反射される。反射された光は、上述の受光素子に入射され、この受光素子において入射した光量に応じた電気信号に変換される。ここで、距離PGが小さい場合、レンズシート12によって反射された光は、主に第1受光部72aに入射されるが、第2受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第1受光部72aの出力信号は、第2受光部72bの出力信号よりも大きくなる。
一方、距離PGが大きい場合、反射された光は、主に第2受光部72bに入射され、第1受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第2受光部72bの出力信号は、第1受光部72aの出力信号よりも大きくなる。このため、第1受光部72aと第2受光部72bの出力信号の比と距離PGとの関係を予め求めておけば、該出力信号の比に基づいて、レンズシート12等に対応する距離PGを検出することが可能である。この場合、受光部72a,72bの出力信号の比と距離PGとの関係に関する情報をテーブルとしてROM102や不揮発性メモリ110に記憶しておくのが良い。
このような出力信号の検出を、キャリッジ30を主走査方向へ駆動させつつ行う。この駆動に際して、後述するリニアエンコーダ80の位置検出と対応させることにより、レンズシート12の主走査方向における距離PGを検出することが可能となる。
なお、ギャップ検出センサ70は、上述のレンズ検出センサ60と兼用可能である。この場合、発光部61の光軸が傾斜するように配置し、距離PGに応じて第1受光部72aと第2受光部72bとの間における出力信号の比が変化するようにすれば、ギャップ検出センサ70とレンズ検出センサ60とを兼用させることが可能となる。
また、図3等に示すように、キャリッジ機構20には、リニアエンコーダ80が設けられている。リニアエンコーダ80は、ラインパターンが繰り返される符号板81と、符号板81に向けて光を出力すると共に、該符号板81から反射される光を、電気的な信号に変換して制御部100に送信するリニアセンサ82とを有している。
次に、信号形成部90の構成について説明する。図9に示すように、信号形成部90は、フィルタ91と、アンプ(AMP)92と、2値化処理部93とを具備している。これらのうち、フィルタ91は、信号線94の一端側と接続されている。信号線94の他端側は、上述した受光部62(受光素子623)に接続されている。このため、受光部62で発生したアナログ信号は、この信号線94を介してフィルタ91に伝達されるが、フィルタ91では、アナログ信号(図10参照)のうち所定の帯域以外の周波数成分が除去される。それにより、図10に示すようなデジタル信号が生成される。
また、フィルタ91を通過した信号は、AMP92に入力され、所定の電圧等(一例として、40倍等)に増幅される。かかる増幅が為された信号は、続いて2値化処理部93に入力され、該入力された信号をしきい値を超えたか否かで、HレベルまたはLレベルの、2値の信号(2値化信号)とする。この状態で、後述する制御部100に2値化信号を入力し、Hレベルの信号および/またはLレベルの信号の切り替わりタイミングを検出することにより、レンズシート12のレンズピッチが計測可能となる。
次に、制御部100について、図11等に基づいて説明する。制御部100は、制御手段(制御工程を実行)に対応する部分であり、不図示の紙幅検出のためのPWセンサ、レンズ検出センサ60、ギャップ検出センサ70、リニアセンサ82、後述するロータリエンコーダ112、プリンタ10の電源をオン/オフする電源SW等)の各出力信号が入力される。より詳細には、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、ASIC104、DCユニット105、信号処理部106、PFモータドライバ107、CRモータドライバ108、ヘッドドライバ109、不揮発性メモリ110等を備えている。
これらのうち、DCユニット105は、DCモータであるCRモータ22、PFモータ41の速度制御を行うための制御回路である。DCユニット105は、CPU91から送られてくる制御命令、後述する信号処理部106からの出力信号等に基づいて、PFモータ41およびCRモータ22の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づいて、PFモータドライバ107およびCRモータドライバ108へ、モータ制御信号を送信する。
また、信号処理部106は、上述の2値化処理部93から出力される2値化信号、およびリニアセンサ82から出力されるエンコーダ信号が入力される。信号処理部106では、かかる2値化信号およびエンコーダ信号に基づき、レンズピッチの情報を有する2値化信号を反映させた、モータ駆動信号をCRモータ22に出力する。それにより、CRモータ22においては、検出されたレンズピッチに応じた駆動速度で駆動される。
また、上述の制御部100における各構成は、バス100aによって接続され、各構成の間でデータの授受を可能としている。そして、これらの協働、または特有の処理を行う回路を追加する等によって、以下に述べる処理フローが実現される。ここで、以下の図17〜図19、図22、図23および図24等における処理フローを実行する構成は、ハードウエア的に実現されても良く、またソフトウエア的に実現されても良い。
なお、上述の制御部100における各構成の協働により、レンズ信号または/およびENC信号に基づいて、印刷ヘッド32の駆動タイミングを制御することを可能としている。また、この印刷ヘッド32の駆動タイミングの制御では、ノズル列33が有するノズル33aを個別に制御するように構成しても良い。個別にノズル33aの駆動タイミングを制御可能な場合、印刷精度を良好にすることが可能となる。
また、プリンタ10は、インターフェース111を具備している。このインターフェース111を介して、コンピュータ120が接続されている。
なお、図3および図11等に示されるロータリエンコーダ112は、上述のリニアエンコーダ80とは異なり、符号板112aが円盤状に設けられている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダ80と同様となっている。
次に、コンピュータ120の内部構成について、図12に基づいて説明する。コンピュータ120は、CPU121、ROM122、RAM123、HDD(Hard Disk Drive)124、ビデオ回路125、I/F126、バス127、表示装置128、入力装置129および外部記憶装置130によって構成されている。
これらのうち、CPU121は、ROM122やHDD124に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行すると共に、装置の各部を制御する。また、ROM122は、CPU121が実行する基本的なプログラムやデータを格納している。また、RAM123は、CPU121が実行途中のプログラムや、演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。HDD124は、CPU121からの要求に応じて、記録媒体であるハードディスクに記録されているデータや後述するプログラムを読み出すと共に、データを前述したハードディスクに記録する記録装置である。
ビデオ回路125は、CPU121から供給された描画命令に応じて描画処理を実行し、得られた画像データを映像信号に変換して表示装置128に出力する回路である。また、I/F126は、入力装置129および外部記憶装置130から出力された信号の表現形式を適宜変換すると共に、プリンタ10に対して印刷信号PSを出力する回路である。バス127は、コンピュータ120の各構成を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とする信号線である。また、表示装置128は、ビデオ回路125から出力された映像信号に応じた画像を表示する装置である。入力装置129は、例えば、キーボードやマウスを指し、ユーザの操作に応じた信号を生成して、I/F126に供給する装置である。
外部記憶装置130は、例えば、CD−R/RWドライブユニット等によって構成され、CD−Rディスク等の記録メディアに記録されているデータまたはプログラムを読み出してCPU121に供給し、またはCPU121から供給されたデータを、MOディスクまたはFDに記録する装置である。
次に、コンピュータ120に実装されているプログラムおよびドライバの機能について、図13に基づいて説明する。なお、コンピュータ120のハードウエアと、HDD124に記録されているソフトウエアとが協働することにより、各手段が実現される。この図13に示すように、コンピュータ120には、画質調整プログラム141、ビデオドライバプログラム142、およびプリンタドライバプログラム150等の各種のプログラムが記憶されており、これらが所定のオペレーティングシステム(OS)の下で動作している。
これらのうち、画質調整プログラム141が起動されて、表示装置128に表示されるイメージ(起動されるウインドウ141aのイメージ)を図14に示す。この画質調整プログラム141は、ユーザが印刷画像の種類に応じて、画質を選択するたものプログラムである。ここでは、互いに似ている画像データの間で視認画像が切り替わる場合を「滑らか」である、と定義し、互いに似ていない画像データの間で視認画像が切り替わる場合を「鮮明」である、と定義している。そして、画質とは、かかる「滑らか」と「鮮明」との間で、画質値(相関性に関する値に対応)に応じて切り替わる、滑らかさまたは鮮明さの度合いをいう。
ここで、滑らかであるか否かは、クロストークの生じる度合いにも依存する。例えば、図15に示す画素データの2次元配列(縦2×横3)の場合、3番目の画素による視差画像を視認しようとすると、部分的に2番目の画素と4番目の画素とが視認されてしまう(図15の網掛け部分参照)。また、図16に示す2次元配列(縦3×横2)の場合、3番目の画素による視差画像を視認しようとすると、部分的に1番目の画素と2番目の画素と4番目の画素とが視認されたり、2番目の画素と4番目の画素と5番目の画素が視認される等してしまう(図16の網掛け部分参照)。このような現象を、以下、クロストークとする。
以上のようなクロストークに関しては、凸レンズ12A1の幅方向(横方向)に画素を多く配置すると、クロストークの影響が少なくなり、視認される視差画像の切り替わりが明確となる(鮮明となる)。しかしながら、視認される視差画像の切り替わりの滑らかさは低減される。一方、レンズシート12の縦方向に画素を多く配置すると、クロストークの影響が多くなり、視認される視差画像の切り替わりが滑らかとなる。しかしながら、視認される視差画像の切り替わりの鮮明さは低減される。
なお、かかる画質の調整を行うため、本実施の形態では、画質調整プログラム141が起動されると、図14に示されるようなウインドウ141aが、表示装置128に表示される。このウインドウ141aには、鮮明〜普通〜滑らかの間で切り替えることが可能なゲージ141bが表示されていると共に、このゲージ141bには、ユーザのマウスクリックまたはボタン操作によって、ゲージ141bの一端側から他端側までの間を移動することが可能なカーソル141cが表示されている。ここで、ユーザは、自身が希望する画質に応じて、カーソル141cを移動させることが可能となっている。なお、その詳細については、後述する。
また、ビデオドライバプログラム142は、ビデオ回路125を駆動するためのプログラムであり、別途の画像データを表示または加工するためのアプリケーションプログラムから供給された画像データに対してガンマ処理やホワイトバランスの調整等を行った後、映像信号を生成して表示装置128に供給して表示させる際に実行される。
また、図13に示すように、プリンタドライバプログラム150は、解像度変換モジュール151、画像合成モジュール152、ハーフトーンモジュール153、色変換モジュール154、印刷データ生成モジュール155、送信モジュール156等を備えている。
これらの各モジュールのうち、解像度変換モジュール151は、後述する解像度変換の処理を行う。また、画像合成モジュール152は、後述する変換後画像データを作成する処理を行う。また、ハーフトーンモジュール153は、後述するハーフトーン処理を行い、色変換モジュール154は、後述する色変換処理を行う。さらに、印刷データ生成モジュール155は、後述する印刷データを作成する処理を行い、送信モジュール156は、生成された印刷データを、プリンタ10に対して出力する処理を行う。
なお、コンピュータ120における各種ハードウエアおよび各種プログラムが協働することにより、画質選択手段(画質選択工程を実行)、配列候補作成手段(配列候補作成工程を実行)、画像データ形成手段(画像データ形成工程を実行)、基準画像データ決定手段、比較画像データ決定手段、第1の平均値算出手段、第2の平均値算出手段、判断手段、選択手段、印刷データ作成手段(印刷データ作成工程を実行)等が実現される。しかしながら、例えばスタンドアローンプリンタのように、プリンタ10が単独でこれらの機能(手段)を果たすように構成することも可能であり、その場合には、上述のプログラム150〜156と同等のプログラムが、ROM102または不揮発性メモリ110等の記憶部位に記憶される。
<印刷を行うための基本的な処理フローについて>
以上のような構成を用いて、プリンタ10を作動させる場合のうち、印刷を行うための、基本的な処理フローについて、図17に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図2に示すレンズシート12の傾斜角度θが、予めプリンタ10側で認識されており、当該傾斜角度θを反映させて、以後の処理を行うものとする。
図17は、図2に示すレンズシート12へ、印刷を実行する際の処理の概略を示す図である。この図15に示すように、まず、画像データを作成する処理を行う(S10)。画像データの作成は、プリンタ10にコンピュータ120が接続されている場合には、コンピュータ120側のハードディスク等に別途記憶されているプログラムで行われる。また、プリンタ10にコンピュータ120が接続されていない場合には、プリンタ10側の記憶部位に別途記憶されているプログラムで行われる。
<画像データを作成する処理フローについて>
図18は、画像データを作成するための処理の概略を示す図である。この図18に示すように、最初に画素データの配列候補(縦n×横mの2次元の画素データの2次元配列を複数有する配列候補)の作成を行う(S110)。この場合、ユーザから提供される(入力される)視差画像の数(原画像データの数)から、2次元配列の配列候補を作成する。このとき、視差画像の数に対して除算を行い、余りが0となる商と割る値を求め、これらを用いて配列候補を作成する。例えば、視差数が12(入力される画像データの個数が12)の場合、配列候補は、縦1×横12、縦2×横6、縦3×横4、縦4×横3、縦6×横2、縦12×横1となる。
なお、上述の縦n×横mの並びは、鮮明度が高いものから順番に並べている。また、画質調整プログラム141において、扱う視差数が固定の場合であって、配列候補を記憶させるHDD124等の記憶領域に余裕がある場合には、配列候補を予め求め、その配列候補をテーブルとして記憶させるようにしても良い。また、視差数に応じたキャリッジ30の速度も求めることができる場合には、上述のテーブルに、キャリッジ30の速度に関する情報を、記憶させるようにしても良い。
次に、S110で作成される配列候補の中から、1つの2次元配列を選択する(S120)。この2次元配列の選択は、図14に示すような、ウインドウ141aを表示装置128に表示させる。そして、ユーザは、表示されるウインドウ141a内のカーソル141cを、ゲージ141bの中で移動させて、鮮明度(画質値)を決定する。ここで、図14には、その一例として、最も「鮮明」である場合の画質値が10であり、ゲージ141bの一端側(図14の左側)に位置している様子が示されている。同じく図14には、最も「滑らか」である場合の画質値が1であり、ゲージ141bの他端側(図14の右側)に位置している様子が示されている。
かかるウインドウ141aにおいて、例えば画質値が6.3である場合が図示されている。この場合、2次元配列の配列候補で、ゲージ141bを6等分し、それらを画質値の高いものから順次並べると、ユーザが画質値6.3を選択する場合、その画質値に該当する2次元配列が縦3×横4と決定される。なお、上述の縦1×横12〜縦12×横1の場合を例に取ると、縦12×横1は、縦に12個の画素データが並ぶ状態であり、クロストークが非常に多く発生する等の事情から、縦12×横1を配列候補から外すようにしても良い。すなわち、縦n×横1の2次元配列(nは、例えば4以上)は、配列候補から外すようにしても良い。
また、上述のような画質値を連続的に変化させるタイプのウインドウ141aではなく、「鮮明」、「普通」および「滑らか」、または「鮮明」および「滑らか」等のように、数個の項目の中から離散的に選択可能なボタン(指定部位に対応)等のみを設けるタイプのウインドウを表示させるようにしても良い。かかるタイプのウインドウは、特に、2次元配列の配列候補が少ない場合に有効である。例えば、4視差の場合、2次元配列の配列候補は、縦1×横4、縦2×横2、縦4×横1となる。ここで、上述のように、縦n×横1の2次元配列である縦4×横1を、配列候補から外す(除外する)と、当該配列候補は、2つしかなくなる。この状態で、画質値を、「鮮明」から「滑らか」の間で連続的に切り替えるとしても、実際の2次元配列の選択には、さほど影響がない。そのため、上述のような、離散的に選択可能とするウインドウを設けるようにしても、ウインドウ141aを設ける場合と実質的な差異が存在しない。
上述のS120で1つの2次元配列が選択された後に、2次元配列の画像データ(圧縮画像データに対応)を作成する処理を行う(S130)。この処理では、それぞれの入力された画像データ(以下、原画像データとする。)に対して、解像度変換処理および画像合成処理が行われる。なお、この詳細については、後述する図19の処理フローに基づいて説明する。また、このとき作成される画像データは、マトリクス状となる。
上述した、画像合成処理により作成された画像データに対して、ハーフトーン処理等を行う(S140)。なお、ハーフトーン処理に併せて、RGB系からプリンタ10で表現可能なCMYK系へと色変換処理を行うようにするのが好ましく、さらに印刷データの作成まで行わせるのが好ましい。印刷データとは、主走査方向への走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査方向の送り量を示すデータ等である。
なお、図18では、S130で2次元配列の画像データを作成した後に、S140でハーフトーン処理等(好ましくは、色変換処理、印刷データの作成処理等)を行っている。この場合、作成される印刷データは、視認画像の画質が滑らかになるというメリットがある。そのため、この場合には、複数の原画像データが、互いに似ている場合に有効である。しかしながら、図18におけるS130とS140を入れ替えて、2次元配列の画像データを作成する前(原画像データからの独立性を未だ有している段階)に、ハーフトーン処理等を行うようにしても良い。この場合には、2次元配列の画像データを作成する前の、複数の画像データのそれぞれに対して、ハーフトーン処理等が為されるため、視認画像の切り替わりが良好となる。そのため、先立ってハーフトーン処理等を行う場合には、複数の原画像データが、互いにさほど似ていない場合に有効である。
<2次元配列の画像データを作成する処理の詳細について>
図19は、2次元配列の画像データを作成する処理の詳細に関する、処理フローである。
この処理フローにおいては、最初に、レンズシート12の横方向(図20における矢示XX方向;横切る方向に対応)に沿う、画素ブロックの寸法(凸レンズ12A1の横方向の寸法)に関する計算を行う(S131)。すなわち、図20に示すXの長さを算出する。このとき、レンズシート12のレンズピッチ(図20におけるXa)が60LPI(=423.333μm)であるとすると、X=Xa/cos(θ×π/180)により、59.09LPI(=429.864μm)と算出される。ここで、画素ブロックとは、視差数の分だけ画素データを有すると共に、当該画素データがマトリクス状に配置されるブロック状の部分である(図20他参照)。なお、レンズ信号に基づいてインク滴を吐出させる場合、上述のS131での2次元画像作成時のXには、レンズシート12の製造時のレンズ解像度(例えば60LPI等)が与えられる。
次に、画素ブロックを構成する各画素データの横方向の寸法(図20におけるx1)を求める(S132)。この計算では、S131で求められたXを、横方向に配置される画素データの個数で除算する。例えば、縦3×横4の画素ブロックを作成する場合、横方向には4つの画素データが存在する。そのため、x1は、107.466μm(=429.864/4)と求められる。
続いて、レンズシート12の縦方向(図20における矢示YY方向;横切る方向に直交する方向に対応)に沿う、画素ブロックの寸法(凸レンズ12A1の横方向の寸法;この寸法間隔にて、視差画像が出現)に関する計算を行う(S133)。すなわち、図20に示すYの長さを算出する。ここで、図20より、x1とYとの間には、Y=x1/tan(θ×π/180)の関係がある。この式において、上記の例示した数値を代入すると、Y=609.47μmと求められる。なお、Yの寸法変換を行うと、41.67PPI(Parallax per inch;LPIと同等の単位であるが、方向を縦方向としたもの)となる。
次に、各画素データの縦方向の寸法(図20におけるy1)を求める(S134)。この計算では、S133で求められたYを、画素ブロック内において縦方向に配置される画素データの個数で除算する。例えば、縦3×横4の2次元配列の画像データを作成する場合、縦方向には3つの画素データが存在する。そのため、y1は、203.156μm(=609.47/3)と求められる。
S134の後に、画素ブロックを多数配置して、2次元配列の画像データを作成する(S135)。このとき、それぞれの原画像データに対して、画素ブロックの横方向の寸法X、縦方向の寸法Y、印刷サイズ、および印刷解像度に応じて、解像度変換を行う。例えば、上述のような縦3×横4の画素ブロックから構成される解像度変換後の画像データ(以下、変換後画像データとする。)を作成する場合であって、印刷サイズが縦148mm×横100mm、印刷解像度が1440dpi、横方向の解像度が59.09PPI(=LPI)、縦方向の解像度が41.67PPIであるとすると、横方向の画素データの個数(画素数=画素ブロックの個数)は、小数点以下を切り上げて、233画素(≒100/(25.4/59.07))と求まり、縦方向の画素数は、同じく小数点以下を切り上げて、243画素(≒148/(25.4/41.67))と求まる。
そして、それぞれの原画像データに対して、算出された画素数となるように、解像度変換処理を行う。
なお、印刷する場合、縁無し印刷を行えることを考慮すると、印刷画像のサイズは、レンズシート12のサイズよりも大きくする方が、余白が生じず好ましい。そのため、上述の画素数の算出では、小数点以下を切り上げている。また、上述の算出過程では、作成される変換後画像データのアスペクト比と、レンズシート12のアスペクト比とが、同じであるか、または同程度であることが前提となっている。しかしながら、アスペクト比が異なる場合には、原画像データを拡大または縮小したり、変換後画像データのサイズ変更を行う等して、対応させる必要がある。
上述のようにして、それぞれの原画像データの解像度変換処理が為された後に、それぞれの画素ブロックに、1つの視差画像に対応する画素データが配置されるように、順次、解像度変換後の画素データを配置する。このようにして、図20に示すような変換後画像データが作成される。なお、印刷を実行すると、1つの画素データは、複数のドットから構成されるので、当該画素データは、同じ複数のドットから構成される。
ここで、1つの画素データの中のドット数は、画素ブロックの縦方向および横方向のサイズ、印刷解像度、縦方向の視差解像度、横方向の視差解像度により決定される。例えば、画素ブロックの縦×横のサイズが609.47μm(41.67PPI)×429.864μm(59.09PPI)、印刷解像度が1440dpiである場合、1つの画素データの中のドット数は、縦34.56×横24.37となる。
ここで、例示のようにドット数が小数点を含んでいる場合、変換後画像データの全体で、レンズシート12との位置関係が合うように、ドットの調整を行う必要がある。例えば、図21に示すように、凸レンズ12A1の間に画素データ(ドット)が跨る場合、いずれの画素ブロック(凸レンズ12A1)に属するのかを決定する。この場合、ドットが差し掛かる割合のより多い画素ブロック(凸レンズ12A1)に、当該ドットが属するように決定する。この決定方法により、変換後画像データの縦方向および横方向の全体のドットの分配が決定される。
なお、各画素ブロックにおいては、各画素データが有するドットが概略均等になるように、縦方向および横方向のドットを分配する。例えば、縦方向のドットが34ドットであり、縦方向の画素データの個数が3つである場合、それぞれの画素データに対するドットの分配は、11、11、12等となる。
また、それぞれの画素ブロック内における、画素データの配置は、図15、図16および図20等に示されるように、例えば左隅の上部を1番目の視差画像に対応する画像データとなるように決定する(このときの位置が、隅角部に対応)。そして、横方向には、左隣の画素データの番号に対して、縦方向の画素データ数を加えた番号の視差に対応する画素データを配置する。また、縦方向には、下方に向かい降順で、順次視差画像に対応する画像データを配置する。以上のようにして、全ての視差数分の配置を行うことにより、それぞれの画素ブロックが形成される。また、全ての画素ブロックが、上述のようにして形成されることにより、変換後画像データの全体が形成される。
<印刷時の処理フローについて>
続いて、印刷時の処理フローに関して、図22に基づいて説明する。まず、レンズシート12の縁部を基準として、インク滴を吐出するか否かを判断する(S201)。このS201における判断は、ユーザ側で設定(判断)するようにしても良い。また、上述の図21に示される画像データを作成する際に、ユーザ等により指定されているレンズ解像度が、レンズシート12の製造段階の値に対応するか否かで判断しても良い。さらに、プリンタ10が上述したようなレンズ検出センサ60を備えている場合には、レンズシート12の検出が可能なため、当該レンズ検出センサ60を備えているか否かに応じて判断しても良い。
上述のS201の判断において、縁部を基準としてインク滴を吐出する場合(Yesの場合)には、ENC信号に基づいて、インク滴を吐出する設定とする(S202)。ここで、ENC信号を基準とする場合とは、レンズピッチが正確である等、一定の条件を満たす場合である。
また、上述のS201の判断において、縁部を基準とせずに、インク滴を吐出する場合(Noの場合)には、レンズ信号を基準として、インク滴を吐出する設定とする(S203)。この場合、上述のレンズ検出センサ60を用いて、レンズシート12のレンズピッチを検出しながら、印刷を実行する状態となる。
なお、S202の設定を行う場合には、図23(A)に示すように、ENC信号のみに基づいて印刷が実行される。この場合、既に存在している汎用プリンタでも対応が可能であるが、画像データを作成するためには、レンズ解像度(レンズピッチ)を、高精細に求める必要がある。これに対して、S203の設定を行う場合には、図23(B)に示すように、レンズシート12に差し掛からない部位はENC信号に基づいて印刷が実行されると共に、レンズシート12に差し掛かる部位はレンズ信号に基づいて印刷が実行される。この場合、本実施の形態におけるプリンタ10のように、レンズ検出センサ60等を具備し、レンズ信号を生成可能であることが必要となる。しかしながら、画像データを作成するために用いられるレンズ解像度(レンズピッチ)は、レンズシート12の製造段階の値を用いることが可能である。
また、上述のS202、S203における設定が終了した後に、各設定に対応する印刷を実行する(S204)。以上のようにして、印刷が実行される。
このような構成のプリンタ10によれば、入力される原画像データの個数に応じて、2次元配列の配列候補が作成されるので、ユーザが所望の配列候補を容易に選択することが可能となる。また、選択された2次元配列に基づけば、画素ブロックを作成することができるが、このように画素データをブロック状に配置することにより、多数の視差を有する印刷画像を形成可能となる。
また、印刷画像が、多数の視差を有することにより、ユーザは、より自然な状態の立体画像を認識することが可能となったり、より滑らかな動きのアニメーション等を楽しむことができる等、ユーザの楽しみを増加させることが可能となる。
また、上述の実施の形態では、複数の原画像データを元して形成される圧縮画像データは、圧縮および細分化後に、マトリクス状に配置されている。それにより、縦方向または横方向のみに細分化された画素データが配置される場合と比較して、より多数の画素データを配置可能となる。
さらに、互いに相関性の高い原画像データの場合には、縦方向に画素データを多数配置する2次元配列が選択される。それにより、ユーザが視認する際にクロストークが多数生じるため、視差に対応する視認画像の切り替わりが滑らかになる。すなわち、この場合には、相関性の高い(互いに似ている)視認画像が滑らかに切り替わっていき、ユーザは、より滑らかな切り替わりの視認画像(例えばアニメーションや立体画像等)を楽しむことができる。
また、互いに相関性の低い原画像データの場合には、横方向に画素データを多数配置する2次元配列が選択される。そのため、ユーザが視認する際にクロストークはさほど生じないため、視差に対応する画像の切り替わりは、鮮明となる。すなわち、この場合には、相関性の低い(互いにさほど似ていない)視認画像が鮮明に切り替わり、ユーザは、より鮮明に切り替わる視認画像(例えば絵柄が別のものに切り替わる変わり絵等)を楽しむことができる。
また、上述のように、縦n×横1の2次元配列である縦4×横1を、配列候補から除外することにより、良好に視認可能な配列候補の中から、2次元配列をガイドまたは選択させることができる。それにより、ユーザに不要な混乱または手間を生じさせるのを防ぐことができ、ユーザの利便性および楽しみを向上させることが可能となる。
さらに、表示装置128には、ウインドウ141aが表示され、このウインドウ141aには、ゲージ141bおよびカーソル141cが設けられている。そのため、ユーザが所望する画質値を任意に指定することが可能となり、ユーザの希望する画質にて、視差画像を視認することが可能となる。
また、ウインドウ141aは、画質値を離散的に指定する構成を採用することもできる。このようにしても、配列候補が少ない場合等においては、画質値を、「鮮明」から「滑らか」の間で連続的に切り替えるとしても、実際の2次元配列の選択には、さほど影響がない。そのため、上述のような、離散的に選択可能とするウインドウを設けるようにしても、ウインドウ141aを設ける場合と実質的な差異が存在しなく、ウインドウ141aの場合と同様に、ユーザの希望する画質にて、視差画像を視認することが可能となる。
また、レンズシート12は、その外観が矩形状を呈すると共に、縁部は基準方向Lに平行に設けられている。それにより、レンズシート12の基準方向Lが縁部に平行となり、ユーザにとって、視認時の基準方向Lが分かり易い。また、プリンタ10における紙送り等の動作を行い易くなる。
さらに、配列候補または画素ブロックにおいては、各画素データは、隅角部を基準として、降順で配置される。そのため、隅角部を基準として、視差画像が順次移り変わって行くように、各原画像データに対応する画素データを配置可能となる。それにより、レンズシートを回転軸を基準に回転させると、視差画像が順次移り変わって行くように視認することが可能となる。
また、上述のS140の処理のように、2次元配列の画像データを形成した後に、ハーフトーン処理を行うようにすることができる。この場合、入力される原画像データの相関性が高い場合には、視認画像が切り替わる際の滑らかさを向上させることが可能となる。そのため、例えば立体画像を視認する場合や、アニメーション等のタイプに好適となる。
さらに、原画像データが互いに相関性の低い場合、原画像データがそれぞれ独立性を有する段階でハーフトーン処理を行うようにすることができる。この場合、視認画像の切り替わりが良好となる。すなわち、視認画像の切り替わりを鮮明にすることが可能となる。そのため、例えば犬からネコへと絵柄が切り替わる変わり絵等のようなタイプに好適となる。
<処理の第2パターン>
以下、本発明における処理の第2パターンについて説明する。なお、本処理パターンは、既に述べた処理パターンに対して、処理フローが若干相違のみである。そのため、上述の第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明する。
ここで、以下の処理フローにおいては、上述の図18におけるS120の処理フローが変更され、処理の第2パターンとなっている。以下、その詳細について、図24に基づいて説明する。
<図18におけるS120の処理フローの詳細について>
まず、入力される原画像データが、立体画像に対応しているか否かを判断する(S310)。この場合、画像データの形成のために用いられる不図示のアプリケーションソフトを使用する場合には、当該アプリケーションソフトで表示されるインターフェース(ウインドウ)におけるユーザの指定(立体画像であるか否かの指定等)に基づいて、立体画像に対応しているか否かを判断することが可能である。また、立体画像作成のための専用のアプリケーションソフトを用いる場合、または変化系画像作成のための専用のアプリケーションソフトを用いる場合には、当該アプリケーションソフトから、この処理フローを実行するためのプログラムへ、印刷データが受け渡される段階で判断するようにしても良い。さらに、原画像データのヘッダー部分に、立体画像に対応するのか、または変化系画像に対応するのかを判断するための情報(フラグ情報)が存在する場合には、当該情報を参照して、立体画像に対応しているか否かを判断するようにしても良い。
上述のS310の判断において、立体画像に対応すると判断される場合(Yesの場合)、続いて、2次元配列の配列候補の中から、縦方向に最も多くの画素データが配置される候補を選択する(S320)。例えば、縦1×横12、縦2×横6、縦3×横4、縦4×横3、縦6×横2の候補が存在する場合、縦6×横2の配列候補を選択する。なお、このS320の処理後、図24の処理フローを終了する。
また、上述のS310の判断において、立体画像に対応しないと判断される場合(Noの場合)、原画像データは変化系画像に対応する。ここで、原画像データが表示される方向を基準として印刷を実行すると、レンズシート12は、副走査方向に多数配置される状態で印刷が実行される。その場合、凸レンズ12A1のレンズピッチと紙送りピッチとの間のずれの累積により、印刷精度が悪化しがちである。このため、S310の判断において、立体画像に対応しない(変化系画像に対応する)と判断される場合、原画像データを90度回転させる処理を行う(S330)。この回転処理により、インク滴の吐出は、印刷ヘッド32のタイミング制御のみで、レンズピッチに対応させることができ、高精度の印刷を実現可能となる。また、S330の回転処理を行うことにより、図18に示す処理フローもそのまま適用することが可能となる。
なお、かかる判断処理、回転処理等のような、図24および図25の各種処理を実現するために、プリンタドライバプログラム150に、立体画像に対応するか否かを判断する判断モジュール、回転処理を行う回転モジュール等、図13には示されていない別途の各種モジュールを追加するのが望ましい。
S330の回転処理を行った後に、2つの原画像データを比較し、これらが、互いに相関性が高いか否かを判断する(S340)。なお、このS340の処理の詳細については、後述する図25の処理フローにおいて説明する。
上述のS340の判断において、比較された原画像データの間の相関性が互いに高いと判断される場合(Yesの場合)、上述したS320に進行する。一方、S340の判断において、比較された原画像データの間の相関性が互いに高くないと判断される場合(Noの場合)、2次元配列の配列候補の中から、横方向に最も多くの画素データが配置される候補を選択する(S350)。例えば、縦1×横12、縦2×横6、縦3×横4、縦4×横3、縦6×横2の候補が存在する場合、縦1×横12の2次元配列を選択する。なお、このS350の処理後、図24の処理フローを終了する。
<図24のS340における処理フローの詳細について>
続いて、図24におけるS340の処理の詳細について、図25に基づいて説明する。この処理フローにおいては、まず、入力される複数の原画像データの中から、基準となる画像データ(原画像データ)を選択する。そして、この基準となる画像データに対して、所定のサンプリングポイントにおけるR、G、B(色要素)の各成分の3つの階調の平均値(3つの階調値を合計した後に、3等分して得られる平均値;基準平均値に対応)を算出する(S341)。このとき、算出される階調の平均値が、予め分けられている所定の段階(例えば10段階等)の中のいずれかに属させるようにしても良い。
続いて、複数の原画像データの中から、比較対象となる画像データを取り出す(S342)。なお、取り出される(選択される)画像データは、基準となる画像データとは異なる画像データである。
次に、比較対象となる画像データにつき、上述のS341と同様の手法により、R、G、Bの3つの階調の平均値を算出する(S343)。
上述のS343の処理の後に、基準となる画像データの階調の平均値と、比較対象となる画像データの階調の平均値(比較対象平均値に対応)とを比較する。そして、当該比較対象となる画像データの階調の平均値が、予め設定されている許容範囲内にあるか否かを判断する(S344)。なお、この許容範囲内であるか否かの判断は、例えば、基準となる画像データおよび比較対象となる画像データのそれぞれのサンプリングポイントにおける平均値が、所定の範囲内であるか否かを判断する。例えば、サンプリングポイントが10地点存在する場合、当該10地点の全てにおける平均値が、所定の許容範囲に存在するか否かを判断する。
そして、1地点でも、許容範囲から外れる場合には、許容範囲外であるとして、S344の判断においてNoが選択され、処理フローが終了する。このとき、基準となる画像データに対して、比較対象の画像データの相関性が高くないと判断されたことになる。この場合、上述の図24におけるS350へ進行する。また、全てのサンプリングポイントにおける平均値が、所定の範囲内にある場合には、S344の判断においてYesが選択され、次に述べるS345に進行する。なお、Yesが選択される場合、基準となる画像データに対して、比較対象の画像データの相関性が高いと判断されたことになる。
S344の判断でYesが選択された場合、続いて、入力された全ての原画像データに対して、相関性に関する比較が為されたか否かを判断する(S345)。この判断においてYesが選択されると、全ての原画像データの間における相関性が高いことになる。そのため、以後、図24におけるS320に進行する。また、S345の判断においてNoが選択される場合、比較していない原画像データが存在している状態であるため、S342に戻る。そして、このS345は、全ての原画像データとの間での相関性に関する比較が終了するまで、適用される。
なお、上述の図25で説明した処理フローは、基準となる画像データを固定する方式で行っても良い。しかしながら、図25で説明した処理フローは、基準となる画像データは、固定的とはせずに、複数の原画像データを、順次、基準となる画像データとする方式で行っても良い。また、図25で説明した処理フローでは、1つでも許容範囲から外れるものがある場合、相関性が高くないと判断している。しかしながら、数個等の少数の平均値のみが、許容範囲から外れても、相関性が高いと見なす等、S344における判断の条件を緩和するようにしても良い。
このような処理のパターンによれば、配列候補の中から自動的に、最適な2次元配列を決定することができる。また、選択された2次元配列に基づけば、画素ブロックを作成することができるが、このように画素データをブロック状に配置することにより、多数の視差を有する印刷画像を形成することが可能となる。
また、印刷画像が、多数の視差を有することにより、ユーザは、より自然な状態の立体画像を認識することが可能となったり、より滑らかな動きのアニメーション等を楽しむことができる等、ユーザの楽しみを増加させることが可能となる。
また、図25等に示したように、基準となる平均値が、比較対象となる平均値に対して所定の許容範囲内に存在するか否かを判断すると、基準となる原画像データと比較対象となる原画像データとの間の相関性の高い等が自動的に判断される。そして、この判断に基づいて、選択手段が配列候補の中から2次元配列を自動的に選択するため、プリンタやアプリケーションソフト等の操作が苦手なユーザでも、簡単に、視差画像の種類に応じた最適な印刷画像を、レンズシート12に印刷することが可能となる。
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態では、レンズ検出センサ60は、ホームポジションから離間する部位に、1つのみ設けられている。しかしながら、レンズ検出センサ60の個数は1つには限られず、キャリッジ30に複数個設けるようにしても良い。例えば、キャリッジ30の下面のうち、主走査方向の両端にそれぞれレンズ検出センサ60を取り付ける場合、キャリッジ30の往復動のそれぞれにおいて、印刷よりも先にレンズピッチを計測することが可能となり、レンズシート12に対する印刷を往復動のそれぞれで実行可能となる。
また、上述の実施の形態では、レンズシート12は、凸レンズ12A1が多数並べられる構成となっているが、レンズシートはこれには限られず、凹レンズが多数並べられる構成のレンズシートであっても良い。なお、この場合には、上述の各処理は、ポジティブエッジではなく、ネガティブエッジを検出したときを基準とするのが好ましい。
また、上述の実施の形態では、プリンタ10は、印刷のみを行うものには限られず、コピー/ファックス/スキャナ機能も兼ねている複合的なプリンタであっても良い。また、上述の実施の形態においては、レンズシート12に対して印刷画像を直接印刷する、直描型の場合について述べている。しかしながら、別途印刷された印刷物をレンズシートに貼り合わせる、分離型の場合についても、本発明を適用することは勿論可能である。
また、図25における処理フローでは、RGBの階調の平均値を算出している。しかしながら、例えば2次元配列の画像データを作成する前に、色変換処理が実行される場合には、CMYKの階調の平均値を算出するようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、プリンタ10は、レンズシート12への印刷に対応させるべく、印刷ヘッド32が回転する等の特殊な機構を有していない。しかしながら、プリンタ10は、印刷ヘッド32が回転する等の機構を備えるようにしても良い。例えば、キャリッジ軸21の一端側のみをスライドさせるようにして、レンズシート12への印刷に対応させても良い。また、印刷ヘッド32がキャリッジ30に対して回転するタイプの機構を備えるようにして、レンズシート12への印刷に対応させても良い。さらには、キャリッジ30自体がキャリッジ軸21に対して回転するタイプの機構を備えるようにして、レンズシート12への印刷に対応させても良い。