以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施の形態について、図1から図17に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明においては、下方側とは、印刷装置が設置される側(Z軸下方向)を指し、上方側とは、設置される側から離間する側(Z軸上方向)を指す。また、後述するキャリッジ31が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート10が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート10が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート10が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
この図1に示すように、印刷装置は、プラテン20を有し、このプラテン20対してキャリッジ31が往復移動自在に構成されている。キャリッジ31は、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックインクが内部に貯留されたインクカートリッジ30を保持している。キャリッジ31の下方側には、レンズシート10に対向するように、印刷手段としての記録ヘッド32が設けられており、インクカートリッジ30に貯留されているインクを吸引し、微小なインク滴として吐出可能としている。なお、搭載されるインクカートリッジ30は、4色に限られるものではなく、6色、7色および8色等、何色分であっても良い。また、インクカートリッジ30に充填されるインクは、染料系インクには限られず、顔料系インク等、他の種類のインクを搭載しても良い。
キャリッジ31には、タイミングベルト35の一部が固着されている。タイミングベルト35は、プリー33,34を連接するように架張されている。プリー33には、キャリッジモータ36の駆動軸が接続されている。したがって、キャリッジモータ36が回転されると、キャリッジ31が図1中に矢印で示すX方向(主走査方向)に往復動作する。
キャリッジ31の一部(この図の例では左側)には、後述するシリンドリカル凸レンズ(以下、「凸レンズ」と称する)を検出するための検出手段としての光学センサ40が設けられている。なお、光学センサ40の詳細については、後述する。
キャリッジ31が往復動作する経路上には、リニアエンコーダを構成するスケール37が配置されている。キャリッジ31のスケール37に対向する面には、後述する光学センサ38が配置されており、当該光学センサ38によってスケール37に印刷されたパターンを検出することにより、キャリッジ31の主走査経路上における位置を特定する。
プラテン20の上流側(紙面の奥側)には、円柱形状を有する紙送りローラ50が設けられている。搬送手段の一部としての紙送りローラ50には、搬送手段の一部としての紙送りモータ(PFモータ)51の駆動力が伝達される。したがって、紙送りモータ51が回転されると、紙送りローラ50が回転され、レンズシート10がプラテン20上を、Y方向(図中矢印で示す方向)の排紙側に向けて搬送される。
レンズシート10は、後述するように、一方の面(第1の面)には、例えば、凸形状を有する複数の凸レンズ(レンズ)が形成されている。また、他方の面(第2の面)は印刷面とされている。図1の例では、凸レンズの長手方向(凸レンズの伸びている方向)と、Y方向(副走査方向)とが一致するように、レンズシート10が配置される。また、この例では、Y方向に長い短冊状の画像が、各凸レンズの短手方向の幅内に収まるように複数印刷される。なお、凸レンズとしては、図に示す凸形状のみならず、例えば、凹形状を有するものを使用することも可能である。
プラテン20は、その上側面に発光手段としての発光部22を有している。プラテン20は、例えば、樹脂によって構成され、レンズシート10を保持してスムーズに搬送されるようにするとともに、記録ヘッド32と、レンズシート10との間の距離が一定になるようにする。
発光部22は、レンズシート10に対して光を照射し、当該レンズシート10を透過した光を光学センサ40に入射させる。発光部22は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)が主走査経路に沿って配置され、その上部に光を拡散させるための透過性拡散板(例えば、オパール、パール、磨りガラス等の板)が配置されて構成されている。透過性拡散板は、発光部22から照射される光が均一光となるようにするためのものである。また、発光部22は、例えば、矩形形状を有しており、長手方向はレンズシート10のX方向よりも広い幅を有しており、短手方向は光学センサ40の受光部の副走査方向の幅よりも広い幅を有している。なお、拡散板ではなく透過板(例えば、アクリル板、ガラス板)を設ける構成としたり、あるいは透過性拡散板または透過板等を全く設けない構成としたりすることも可能である。拡散板または透過性拡散板を設けた場合には、発光素子22aに対してインク滴が付着し、発光強度が低下することを防止できる。
なお、図1では、全体の形状をわかりやすくするために、発光部22をプラテン20の下流側の端部付近に設けているが、実際には上流側の光学センサ40に対向する位置に設けられている。これらの詳細な位置関係については、図6を参照して後述する。
図2は、キャリッジ31の裏面(レンズシートに対向する面)を示す図である。この図に示すように、キャリッジ31の裏面には、複数のノズルが副走査方向に配置されたノズル列32aを複数有する記録ヘッド32が設けられている。なお、各ノズル列は、例えば、180個のノズルによって構成されている。また、それぞれのノズル列32aは、同一の色のインクを吐出するノズル群によって構成される。
キャリッジ31の裏面の右上端部には、光学センサ40が設けられている。なお、この例では、光学センサ40は、各ノズル列32aの最上端(図の上端)に形成されたノズルよりも上流側(レンズシートの搬送方向の上流側)に設けられているので、レンズシート10が記録ヘッド32の最初のノズル(最上端のノズル)に到達する前に、光学センサ40によって凸レンズを検出することができる。
図3は、図2に示す光学センサ40、レンズシート10、および、発光部22の位置関係を示す図である。この図に示すように、光学センサ40は、保持体41および受光部43を有している。ここで、保持体41には、受光部43が配置される凹部42が形成されている。凹部42の底面部には受光部43が配置されている。
受光部43は、例えば、フォトダイオードによって構成され、レンズシート10を透過した光を受光し、その光の強度に対応するレベルを有する電気信号に変換して出力する。なお、発光部22としては、例えば、赤色光、青色光、緑色光、赤外光等のような、所定の色の光を発することが可能な発光ダイオードを用いることができる。また、例えば可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なLED、ランプ、または、EL(Electro Luminescence)を発光部としても良い。
発光部22は、複数の発光素子22aが主走査経路に沿って配置されている。発光素子22aとしては、例えば、LEDを使用することができる。発光素子22aの上方側には、透過性拡散板22bが配置されており、発光素子22aから照射された光を拡散して均一光としてレンズシート10に入射する。
なお、発光部22としては、例えば、冷陰極管を用いることができる。あるいは、導光板をプラテン20上に主走査方向に沿って配置し、その端部に冷陰極管またはLED等を配置するようにしてもよい。さらに、受光部43としては、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC等のような、受光した光を電気信号に変換することが可能な素子を用いることができる。
レンズシート10は、凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を有している。ここで、レンズとしての凸レンズ11は、例えば、透明な樹脂によって構成され、かまぼこ形状を有するレンズが所定の間隔(ピッチ)で複数連結されて構成される。なお、レンズシート10の種類は、レンズの間隔によって示され、例えば、45lpi(lens per inch)、60lpi、90lpi等がある。なお、これ以外のピッチ(例えば、100lpi等)のレンズを使用することも可能である。凸レンズ11は、PET(Polyethylene Terephthalate)、PETG(
Polyethylene Terephthalate Glycol)、APET(Amorphous Polyethylene Terephthalate)、PP(Polyethylene)、PS(Polystyrene)、PVC(Polyvinyl chloride)、アクリル、UV(Ultraviolet)硬化樹脂等によって構成される。
インク吸収層12は、インクを吸収する材料によって構成され、インク透過層13を透過したインクを定着させる。なお、インク吸収層12は、例えば、PVA(Poly Vinyl Alchol)等親水性ポリマ、カチオン化合物、シリカ等微粒子によって構成されている。また、インク透過層13は、インクを透過する材料によって構成され、インク吸収層に定着されたインクを保護する。なお、インク透過層13は、酸化チタン、シリカゲル、PMMA(Polymethylmethacrylate)等微粒子、バインダ樹脂等によって構成されている。なお、インク吸収層12およびインク透過層13のいずれか一方は、非透明な材料によって構成される。また、インク透過層13は、あってもなくてもよい。さらに、インク吸収層12およびインク透過層13以外にも、例えば、透明フィルム層または接着層等があってもよい。
発光部22から射出された光は、凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を経由し、受光部43によって受光される。受光部43は、受光した透過光の強度に応じた電気信号を出力する。
図4は、図1に示す印刷装置の制御系の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、印刷装置の制御系としては、キャリッジモータ36、紙送りモータ51、制御部100、および、インターフェース112を有している。ここで、インターフェース112は、制御部100とホストコンピュータ150とを電気的に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするために信号の表現形式等を変換する機能を有する。制御部100は、ホストコンピュータ150から送信されてきた印刷データに基づいてレンズシート10に画像を印刷するための制御を行う。なお、制御部100の詳細については後述する。キャリッジモータ36は、制御部100によって制御され、キャリッジ31を主走査方向に往復動作させる。なお、キャリッジ31の一部には光学センサ38が設けられており、この光学センサ38とスケール37によってリニアエンコーダが構成されている。制御部100は、このリニアエンコーダによってキャリッジ31の現在の位置を知ることができる。紙送りモータ51は、紙送りローラ50に駆動力を与えることにより、レンズシート10を副走査方向に移動させる。ホストコンピュータ150は、HDD(Hard Disk Drive)151を有しており、このHDD151には、レンズシート10の印刷に対応させて画像を加工するための画像加工プログラム等が記憶されている。
図5は、図4に示す印刷装置を図の右側から眺めた図である。この図に示すように、キャリッジ31は、プラテン20に対向する状態で設けられている。また、キャリッジ31の下部には、印刷を行う領域としての記録ヘッド32が設けられている。図2に示すように、記録ヘッド32には、複数のノズルがレンズシート10の搬送方向(副走査方向)に配置されてノズル列32aを形成している。なお、前述のように、本実施の形態では、各ノズル列32aは、例えば180個のノズルから構成されており、このうち、180番目のノズルが給紙側、1番目のノズルが排紙側に位置している。
また、キャリッジ31の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列32aには、ノズル毎に、ピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、記録ヘッド32は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、その他の方式を用いても良い。その他の方式としては、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等が、主な方式として挙げられる。
用紙搬送機構80は、レンズシート10等の印刷対象物を搬送する駆動力を与える紙送りモータ(不図示)、および、普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ82を具備している。また、この給紙ローラ82よりも排紙側には、レンズシート10を搬送するための紙送りローラ50が設けられている。また、紙送りローラ50よりも排紙側には、プラテン20および上述の記録ヘッド32が上下に対向するように配設されている。プラテン20は、紙送りローラ50によって記録ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート10を、下方側から支持する。
また、プラテン20よりも排紙側には、上述の紙送りローラ50と同様の、排紙ローラ52が設けられている。この排紙ローラ52は、紙送りモータ51からの駆動力が伝達されて、回転する。なお、紙送りモータ51は、その駆動力を紙送りローラ50と排紙ローラ52とに分配させる構成を採用している。しかしながら、紙送りモータ51以外に、別途のモータを設け、そのモータによって排紙ローラ52を駆動させる構成を採用しても良い。
また、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ82の下方側には、開口部87が設けられている。開口部87は、レンズシート10等の折り曲げ困難な印刷対象物を通過させるための、開口部分である。そのため、開口部87は、レンズシート10を通過させるのに十分な、主走査方向における幅を有している。なお、レンズシート10は、それ単体で開口部87を通過するようにしても良く、また厚みのあるトレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
図6は、プラテン20の側断面図の一例である。図6に示すように、プラテン20には、該プラテン20の基準平面21aから上方に向かい、レンズシート10等が接触する複数のリブ21bが突出している。また、プラテン20のうち、給紙側の端部側には、発光部22が設けられている(図1および図7参照)。発光部22は、前述したようにレンズシート10に対して光を照射するための部位である。
レンズシート10は、紙送りローラ50および従動ローラ50aによって挟持されつつ駆動力を与えられて副走査方向に移動される。また、レンズシート10は、印刷が終了すると、排紙ローラ52および従動ローラ52aによって挟持されつつ駆動力を与えられて排紙される。
図7は、制御部100の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部100は、CPU101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)104、DC(Direct Current)ユニット105、信号処理部106、PFモータドライバ107、CRモータドライバ108、ヘッドドライバ109、不揮発性メモリ110、レンズ信号二値化回路111、および、インターフェース112を有している。なお、制御部100には、紙幅検出のためのPW(Paper Width)センサ(不図示)、光学センサ40、ギャップ検出センサ(不図示)、光学センサ38、および、ロータリエンコーダ113等が接続され、これらのセンサから入力された信号に基づいて、記録ヘッド32、紙送りモータ51、および、キャリッジモータ36等を制御する。
ここで、調整手段としてのCPU101は、ROM102や不揮発性メモリ110等に記憶されている制御プログラムを実行するための演算処理や、その他の必要な演算処理を行う。また、ROM102には、印刷装置を制御するための制御プログラムおよび処理に必要なデータ等が記憶されている。また、ASIC104は、パラレルインターフェース回路を内蔵しており、インターフェース112を介してホストコンピュータ150から供給される印刷信号を受け取ることができる。
RAM103は、CPU101が実行途中のプログラム/演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。また、不揮発性メモリ110は、印刷装置の電源切断後も、保持の必要な各種データを記憶するためのメモリである。
なお、ロータリエンコーダ113は、上述のリニアエンコーダとは異なり、スケール113aが円盤状に設けられている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダと同様となっている。また、本実施の形態では、ロータリエンコーダ113のスケール113aに設けられている複数のスリットのスリット間隔は、1/180インチとなっていると共に、紙送りモータ51が1スリット分だけ回転すると、1/1440インチだけ、レンズシート10が搬送されるように構成されている。しかしながら、スリット間隔および搬送ピッチは、これには限られず、種々設定することが可能である。
また、DCユニット105は、DCモータであるキャリッジモータ36、紙送りモータ51の速度制御を行うための制御回路である。DCユニット105は、CPU101から送られてくる制御命令、後述する信号処理部106からの出力信号等に基づいて、紙送りモータ51およびキャリッジモータ36の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づいて、紙送りモータドライバ107およびキャリッジモータドライバ108へ、モータ制御信号を送信する。
また、信号処理部106は、後述するレンズ信号二値化回路111から出力される2値化信号、および、光学センサ38から出力されるエンコーダ信号が入力される。信号処理部106では、かかる2値化信号およびエンコーダ信号に基づき、レンズピッチの情報を有する2値化信号を反映させた、モータ駆動信号およびPTS(Print Timing Signal)信号を生成し、キャリッジモータ36および記録ヘッド32にそれぞれ出力する。それにより、キャリッジモータ36においては、検出されたレンズピッチに応じた駆動速度で駆動され、また、レンズピッチに応じた位置に画像が印刷される。
PFモータドライバ107は、DCユニット105から供給されたモータ制御信号に応じて、紙送りモータ51を駆動する駆動回路である。CRモータドライバ108は、DCユニット105から供給されたモータ制御信号に応じて、キャリッジモータ36を駆動する駆動回路である。調整手段としてのヘッドドライバ109は、ASIC104から供給された印刷信号に応じて記録ヘッド32に内蔵されているピエゾ素子を駆動し、印刷信号に対応したインク滴を発生して、レンズシート10に所望の画像を印刷する。
また、上述の制御部100における各構成は、バス100aによって接続され、各構成の間でデータの授受を可能としている。
また、印刷装置は、インターフェース112を具備している。このインターフェース112を介して、ホストコンピュータ150が接続されている。なお、このホストコンピュータ150は、前述のように、HDD151を具備しており、このHDD151には、レンズシート10の印刷に対応させて画像を加工するための画像加工プログラムが記憶されている。
この画像加工プログラムは、選択された複数の画像データのうち、該画像データの個数Nに応じて画像データを縦方向または横方向のいずれかの方向のみに1/Nに圧縮する圧縮処理と、この圧縮処理に前後して凸レンズのレンズピッチに応じて画像を分割する画像分割処理と、圧縮処理および画像分割処理が為された短冊状の画像データを、それぞれの凸レンズにおいて適正な部位に配置する配置処理と、を行うものである。なお、画像加工プログラムにおいては、凸レンズの幅(LPI)、画像データの分割方向等、所定の事項を指定可能となっている。また、画像分割処理および圧縮処理を経過すると、細分化画像が形成される。
図8は、図7に示すレンズ信号二値化回路111の詳細を示すブロック図である。この図に示すように、レンズ信号二値化回路111は、バンドパスフィルタ111a、増幅回路111b、および、二値化回路111cを主要な構成要素としている。
ここで、バンドパスフィルタ111aは、受光部43から出力されるアナログ信号から凸レンズ11の周期に対応する信号を選択的に通過させるフィルタである。図9は、100lpiのピッチを有するレンズシート10を用いた場合に、受光部43から出力される信号をフーリエ変換した結果を示す図である。この図に示すように、受光部43から出力される信号には、2kHz付近の信号と、14.4kHz付近の信号の2種類が含まれている。ここで、14.4kHz付近の信号は、印刷装置の駆動周波数(例えば、キャリッジモータ36の駆動周波数)が14.4kHz付近であるため、その影響を受けて出力される信号である。一方、2kHz付近の信号は、キャリッジ31が走査された際に、凸レンズ11によって周期的に透過された光に対応する信号である。したがって、この例では、バンドパスフィルタ111aとしては、2kHz付近の信号を選択的に通過させるフィルタ(2kHzを通過帯域とするフィルタ)を用いればよい。具体的には、2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタを用いる。
なお、凸レンズ11の種類(レンズピッチ)が変化した場合には、受光部43から出力される信号の周波数も変化する。具体的には、解像度が低くなった場合(lpi(lens per inch)が低い場合)は周波数が低くなり、解像度が高くなった場合には周波数が高くなる。したがって、レンズシート10として様々な種類の解像度のものを使用する可能性がある場合には、例えば、最大の解像度と最小の解像度における周波数を予め測定しておき、これらを最大および最小とする帯域を通過帯域に有するバンドパスフィルタ111aを用いることにより、この範囲であればどのような解像度のレンズシート10が選択された場合でもレンズ信号を確実に抽出できる。具体例としては、100lpiの場合には、前述のように、2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタ111aを用いる。また、60lpiの場合には、1.2kHzを中心とし、1.0kHzから1.4kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタ111aを用いる。したがって、これらの2種類を使用する可能性がある場合には、1.0kHzから2.2kHzまでの通過帯域を有するバンドパスフィルタを用いる。
これ以外にも、例えば、バンドパスフィルタ111aとして、スイットキャパシタフィルタを用い、当該フィルタの駆動周波数(スイッチング周波数)を変化させることにより、使用されているレンズシート10の解像度に応じて最適な通過帯域を設定できるようにしてもよい。すなわち、スイッチトキャパシタフィルタでは、その伝達関数は、キャパシタの容量値の比と、スイッチング周期によって決定される。使用されているキャパシタの容量値は固定であるので、スイッチング周期を変更することにより、例えば、バンドパスフィルタの通過帯域を簡単に変更することができる。
増幅回路111bは、バンドパスフィルタ111aを通過した2kHz付近の信号を、所定のゲイン(例えば、40倍)に増幅し、出力する。二値化回路111cは、例えば、シュミットトリガ回路等によって構成され、増幅回路111bの出力信号が所定の閾値を超えた場合には、ハイの状態の信号を出力し、それ以外の場合にはローの状態の信号を出力する。その結果、二値化回路111cからは、ハイまたはローの二値を有するディジタル信号が出力される。
図10は、レンズ信号が正常でない場合(例えば、凸レンズ11の形成不良の場合、動作振動もしくはコーティング層の不均一に起因して光が変化してしまう場合、または、検出不良の場合)において、図8に示すレンズ信号二値化回路111から出力されるレンズ信号を補完するための補完手段としてのレンズ信号補完回路の構成例を示す図である。なお、レンズ信号補完回路は、図7に示す信号処理部106に内蔵されている。図10に示すように、レンズ信号補完回路は、カウンタ200、レジスタ201〜203、欠損管理回路204、補完信号生成回路205、スイッチ206を主要な構成要素としている。
ここで、カウンタ200は、レンズ信号のポジティブエッジ(レンズ信号がローからハイに変化する箇所)から、つぎのポジティブエッジまでを、図示せぬクロック信号(例えば、CPU信号または周波数生成回路から供給される信号)に同期してカウントアップする。なお、クロック信号は、レンズ信号よりも十分に周期が短い信号である。
レジスタ201には、カウンタ200のカウント値(Lカウント値)が格納される。当該レジスタ201は、ポジティブエッジが検出された時点でクリアされ、カウントアップ動作が実行される。
レジスタ202には、補完開始フラグが格納される。補完開始フラグは、レンズ信号が正常でない場合に、レンズ信号補完回路による補完動作を開始することを示すフラグである。補完フラグは、ポジティブエッジが検出された時点で、カウンタ200によってクリア(=0)され、レンズ信号が正常でない場合に欠損管理回路204によってセット(=1)される。
レジスタ203には、代表レンズ値が格納される。代表レンズ値とは、凸レンズ11の間隔の代表的な値であり、例えば、印刷開始前にキャリッジ31によってレンズシート10を走査し、得られた複数のレンズ間隔値の平均値としたり、印刷を行おうとする凸レンズの直前の凸レンズのレンズ間隔としたりすることができる。なお、レンズ間隔の求め方の詳細については、後述する。
欠損管理回路204は、レジスタ201に格納されているLカウント値が、レジスタ203に格納されている代表レンズ値以上となった場合には、レンズ信号が正常でないとして、レジスタ202の補完開始フラグをセットし、レジスタ201のLカウント値をクリアする。なお、Lカウント値が代表レンズ値以上になった場合に、直ちに補完動作を開始するのではなく、例えば、Lカウント値が代表レンズ値よりも所定のカウント値(例えば、10カウント)だけ上回った場合に、補完動作を開始することも可能である。そのような方法によれば、動作範囲に余裕を持たせることで誤動作を防止できる。
補完信号生成回路205は、補完開始フラグがセットされた場合に出力される補完信号を生成する回路である。すなわち、補完信号生成回路205は、レジスタ201のLカウント値とレジスタ203の代表レンズ値とを比較し、例えば、Lカウント値が代表レンズ値の1/2未満である場合には、その出力をハイの状態とし、Lカウント値が代表レンズ値の1/2以上である場合には、その出力をローの状態とする。
スイッチ206は、レジスタ202に格納されている補完開始フラグがクリアされている場合には、レンズ信号が正常であるとしてレンズ信号を選択して出力し、セットされている場合にはレンズ信号が正常でないとして補完信号生成回路205からの補完信号を選択して出力する。
つぎに、本発明の第1の実施の形態の動作を図11に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS10:ホストコンピュータ150は、印刷しようとする画像を加工する処理を実行する。具体的には、ホストコンピュータ150は、HDD151に格納されている画像加工用プログラムを実行し、画像の加工を行う。ここで、レンズシート10に対して立体画像またはモーション画像を印刷する場合は、対象となる複数の画像をそれぞれ短冊状に分解した後に圧縮処理を施し、得られた画像を順番に並べる。例えば、立体画像の場合には、視点が異なる2枚の画像A,Bを、レンズシート10のレンズ解像度に合わせてそれぞれ同一形状の短冊状の画像(画像As,Bs)に分解し、短冊状の画像AsとBsとを交互に並べてストライプ状の画像を生成する。
ステップS11:ホストコンピュータ150は、ステップS10によって生成された画像(通常の画像またはストライプ状の画像)に対して、解像度変換、色変換処理、ハーフトーン処理等を施し、印刷装置によって印刷するためのデータ(印刷データ)に変換し、印刷装置に供給する。
ステップS12:印刷装置のCPU101は、初期設定を行う。すなわち、CPU101は、例えば、レンズシート10のレンズの解像度に応じてレンズ信号二値化回路111のバンドパスフィルタ111aの通過帯域を初期設定する。具体的には、レンズシート10の解像度が100lpiである場合には、前述のように2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とする。なお、印刷解像度に関するデータについては、ホストコンピュータ150から直接得るようにしてもよいし、または、印刷装置の図示せぬ操作部から入力されるようにしてもよい。
バンドパスフィルタ111a等の設定が完了すると、CPU101は、紙送りモータ51を駆動し、レンズシート10を所定の位置(印刷開始位置)まで移動させる。具体的には、レンズシート10の先端部分が光学センサ40の直下にくるようにレンズシート10をY方向に移動させる。
ステップS13:CPU101は、発光部22の発光を開始させるとともに、レンズ信号二値化回路101の動作を開始させる。その結果、発光部22から照射された光は、レンズシート10を透過して、受光部43に入射され、凸レンズ11に応じた電気信号が出力される。レンズ信号二値化回路111は、受光部43から出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換して出力する。
ステップS14:CPU101は、ホストコンピュータ150に対して、印刷データが存在するか否かを問い合わせ、存在する場合にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS20に進む。
ステップS15:CPU101は、光学センサ38からの出力信号を参照し、キャリッジ31の現在位置を検出し、その位置に応じた駆動信号を生成してキャリッジモータ36に供給する。その結果、キャリッジ31は主走査方向に往復動作を開始する。
ステップS16:CPU101は、ホストコンピュータ150から1ライン分の印刷データを受信し、受信したデータに応じてインクを吐出する処理を実行する。なお、このとき、吐出のタイミングは、以下の処理によって補完されたレンズ信号に基づいて調整される。したがって、凸レンズ11内に画像を正確に印刷することができるとともに、後述するように凸レンズ11に欠損等が生じている場合であっても、凸レンズ11内に画像を確実に印刷することができる。
すなわち、印刷時においては、発光部22から光が照射されている。発光部22から照射された光は、レンズシート10の凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を透過し、受光部43に入射される。図12(A)に示すように、受光部43と凸レンズ11の光軸が一致する場合には、凸レンズ11によって集光された光の多くが受光部43に入射するので、受光部43の出力信号のレベルが高くなる。一方、図12(B)に示すように、これらの光軸がずれている場合は、凸レンズ11によって集光された光の多くが受光部43に入射されないので、受光部43の出力信号のレベルが低くなる。
図13は、凸レンズ11、アナログ信号(受光部43の出力信号)、ディジタル信号(二値化回路111cの出力信号)、レンズ間隔、および、補完レンズ信号の関係を示す図である。なお、この例では、図13(A)に示すように、一部の凸レンズ11bが形成不良となっている。
図13(B)に示すように、受光部43から出力されるアナログ信号は、検出対象である凸レンズ(図13(A)参照)の頂部11aで最大となり、徐々に減少する信号である。このような信号は、バンドパスフィルタ111aに供給され、高調波成分(駆動信号)および低域成分(例えば、直流成分および商用電源信号(50Hzの信号))が減衰され、出力される。
バンドパスフィルタ111aから出力された信号は、増幅回路111bに供給され、そこで、例えば、40倍に増幅されて出力される。増幅回路111bから出力された信号は、二値化回路111cに供給され、そこで、所定の閾値と比較される。そして、入力信号が閾値以上である場合には二値化回路111cは出力信号をハイの状態にし、入力信号が閾値未満である場合には二値化回路111cは出力信号をローの状態にする。その結果、二値化回路111cからは、図13(C)に示すように、各凸レンズ11の所定の位置において立ち上がり、所定の位置において立ち下がるパルス列信号が生成されて出力される。
ここで、形成不良の凸レンズ11bが存在する場合、図13(B)に示すように、アナログ信号の波高が十分とはならないため、図13(C)に示すようにディジタル信号は、ハイの状態とはならず、ローの状態を維持してしまう。このような場合、凸レンズ11bに対しては印刷が行われなくなってしまう。そこで、本実施の形態では、図10に示すレンズ信号補完回路において、図14に示す処理を実行することにより、レンズ信号を補完し、凸レンズ11bに対しても画像が印刷されるようにする。図14に示すフローチャートの処理の流れについて、以下に説明する。この処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS30:CPU101は、レンズ信号を出力する範囲であるか否かを判定し、出力範囲であると判定した場合はステップS31に進み、それ以外の場合には処理を終了する。すなわち、CPU101は、図15(A)に示すように、レンズシート10が存在する補完対象領域であるか否かに基づいて判定し、補完対象領域である場合にはステップS31に進む。なお、補完対象領域であるか否かの判定方法としては、例えば、図示せぬ紙検出センサからの出力を参照し、レンズシートが存在すると判定された場合には、補完対象領域であると判定する。あるいは、キャリッジ31が走査中に、最初のレンズ信号が検出されてから最後のレンズ信号が検出されるまでは補完対象領域であると判定する。なお、最初のレンズ信号か否かについては、最初のポジティブエッジであるか否かにより判定する。また、最後のレンズ信号か否かについては、レンズ信号間隔がある一定間隔以上になった場合、キャリッジ31の位置が印刷画像サイズを超えた場合、または、紙検出センサによりレンズシートが無くなったと判定された場合に最後のレンズ信号と判定する。
ステップS31:カウンタ200は、レンズ信号のポジティブエッジを検出したか否かを判定し、ポジティブエッジを検出した場合にはステップS32に進み、それ以外の場合にはステップS33に進む。例えば、図13(C)に示すディジタル信号において、図13(D)に示すタイミングで示されるポジティブエッジ(例えば、PE30〜33)が検出された場合には、ステップS32に進み、それ以外の場合にはステップS33に進む。例えば、ポジティブエッジ30が検出された場合には、ステップS32に進む。
ステップS32:カウンタ200は、レジスタ201に格納されているLカウント値をクリアするとともに、レジスタ202に格納されている補完開始フラグをクリアする。この結果、Lカウント値は、“0”となってカウント動作が開始される。また、補完開始フラグが“0”となることにより、スイッチ206は、レンズ信号を選択する。
ステップS33:カウンタ200は、図示せぬクロック信号に基づいて、レジスタ201に格納されているLカウント値を1インクリメントする。なお、ステップS32においてLカウント値がクリアされると、それ以降の処理では、ステップS33の処理に分岐し、Lカウント値が1ずつインクリメントされる。
ステップS34:欠損管理回路204は、レジスタ201に格納されているLカウント値が、レジスタ203に格納されている代表レンズ値以上となったか否かを判定し、代表レンズ値以上となった場合にはステップS35に進み、それ以外の場合にはステップS36に進む。具体的説明すると、図13(C),(D)に示すように、レンズ信号が正常な場合には、例えば、PE30およびPE31のように、時間Tの間隔でポジティブエッジが検出される。しかしながら、レンズ信号が正常でない場合には、PE31が検出されてから時間Tが経過しても、つぎのポジティブエッジは検出されない。この場合、Lカウント値はリセットされないため、時間Tの代表的な値である代表レンズ値以上となる。そのような場合には、ステップS34において、YESと判定されてステップS35に進むことになる。
なお、代表レンズ値としては、直前の凸レンズ11において検出されたLカウント値を利用するか、または、直前の1走査におけるレンズ値の平均値を利用する。また、レンズ値そのものではなく、例えば、レンズ値に所定の値(例えば、5〜10程度の値)を加算した値を代表レンズ値として使用することも可能である。そのような方法によれば、レンズ信号が正常であるが、誤差によってレンズ信号が通常よりも長い場合(時間Tが通常より長い場合)に、補完レンズ信号ではなく、レンズ信号が選択される。このため、レンズの幅に基づいてより忠実に印刷することができる。
ステップS35:補完信号生成回路205は、レジスタ203に格納されている代表レンズ値と、レジスタ201に格納されているLカウント値を参照して、補完レンズ信号を生成する。具体的には、例えば、代表レンズ値が1000である場合には、0〜499の範囲でハイの状態となり、500〜999の範囲でローの状態となる信号を出力する。なお、より正確には、Lカウント値は、ポジティブエッジが入力されないため、その前のポジティブエッジから継続してインクリメントされる。したがって、Lカウント値から代表レンズ値を減算した値が、0〜499の範囲でハイの状態となり、500〜999の範囲でローの状態となる信号を出力する。
このとき、レジスタ202の補完開始フラグは、セットされた状態となっているので、スイッチ206は、補完信号生成回路205からの補完レンズ信号を選択し、補完レンズ信号が出力される。
ステップS36:スイッチ206は、レジスタ202の補完開始フラグがリセットされていることから、オリジナルのレンズ信号(以下、「原レンズ信号」と称する)を選択し、出力する。
図13(A)に示すように、形成不良である凸レンズ11bが存在する場合、図13(C)に示すように、レンズ信号が抜けた状態となる。その場合、図10に示す、欠損管理回路204がLカウント値が代表レンズ値以上になったことを検出し、補完開始フラグをセットする。その結果、補完信号生成回路205によって生成された補完信号が選択されて出力されるので、図13(E)に示すように、正常なレンズ信号が出力される。このため、正常に印刷を行うことができる。
図16は、キャリッジ31が図1の右から左へ走査される場合のキャリッジ31の移動速度と、各部の信号の関係を示すタイミング図である。この図に示すように、キャリッジ31の動作は、停止区間、加速区間、定速区間、減速区間、および、停止区間に分けられる。停止区間では、キャリッジ31は停止した状態となる。加速区間では、キャリッジ31は所定の加速度で加速されその移動速度を増す。定速区間では、キャリッジ31は一定の速度で移動する。この区間において印刷がなされるため、この区間の幅は印刷媒体であるレンズシート10の幅よりも広くなっている(図16(B)参照)。減速区間では、キャリッジ31が減速される。
キャリッジ31が図16(A)に示すように移動すると、定速区間のレンズシート10が存在する区間では、レンズ信号二値化回路111からは図16(C)に示すような二値化されたレンズ信号が出力される。このとき、レンズ信号が正常でない場合、前述した処理により、レンズ信号が補正されて正常な信号とされる。
このようなレンズ信号は、ASIC104に供給され、そこで1つの凸レンズ11内に印刷する画素数に応じて定数倍され、PTS信号が生成される。例えば、主走査方向の印刷解像度が1440dpiである場合にレンズピッチが90lpiである場合、1つの凸レンズ11内には16(=1440/90)個の画素が印刷されるため、ASIC104は、レンズ信号を16倍した信号を生成して出力する(図16(E)参照)。ヘッドドライバ109は、ASIC104から供給されたPTS信号に基づいて記録ヘッド32を制御し、レンズシート10の端が検出されてからある一定時間後に吐出を開始し、各ノズルからPTS信号に同期してインクを吐出させて所望の画像を印刷させる(図11のステップS16)。なお、レンズシート10の端部が検出されてからある一定時間後に吐出を開始するのではなく、当該吐出を開始する位置に対応するエンコーダの値(絶対値)が検出された場合に、吐出を開始するようにしてもよい。
凸レンズ11は、製造時の精度および放置されている環境の湿度に応じてレンズ間隔が変化する。しかしながら、上述のように各凸レンズ11を直接検出してPTS信号を生成し、当該生成されたPTS信号に応じてインクを吐出することにより、レンズ間隔に応じて画像を正確に印刷することができる。
一方、DCユニット105は、光学センサ38から出力されるENC信号を入力する。図16(D)に示すように、ENC信号はキャリッジ31の速度に応じた間隔を有する信号である。すなわち、キャリッジ31の速度が遅い場合には、パルスの間隔が開いた信号となり、速度が速い場合には間隔が詰まった信号となる。DCユニット105は、このようなENC信号を入力し、信号の間隔を参照することにより速度を検出して、加速、定速、および、減速の制御を行うとともに、ENC信号のパルス数をカウントすることにより、キャリッジ31の現在位置を検出し、加速および減速を行う位置を判断する。
図11のフローチャートの説明に戻る。
ステップS17:CPU101は、1走査分の印刷処理が終了したか否かを判定し、終了した場合にはステップS18に進み、それ以外の場合にはステップS16に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS18:CPU101は、キャリッジ31を逆方向に移動させる。すなわち、図2に示す記録ヘッド32の場合、光学センサ40は右上部に配置されている。したがって、図1においてキャリッジ31が右から左へ走査する場合には、光学センサ40が記録ヘッド32に先行するので、前述のような動作が可能になる。しかしながら、キャリッジ31が左から右へ走査する場合には、光学センサ40が記録ヘッド32に後行するため、上述のような動作はできない。そこで、例えば、キャリッジ31が左から右へ移動する場合には、キャリッジ31を移動するのみで印刷を行わないようにする。
ステップS19:1ライン分の印刷動作が完了すると、CPU101は紙送りモータ51を駆動して、レンズシート10を所定の距離だけ副走査方向に移動させる。そして、CPU101は、ステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。すなわち、CPU101は、ホストコンピュータ150からつぎの1ライン分の印刷データを受信し、前述の場合と同様の処理により当該印刷データを印刷する処理を実行する。このような処理を繰り返すことにより、所望の画像をレンズシート10に印刷することができる。
ステップS20:全ての印刷データの印刷が完了すると、CPU101は、発光部22が発光状態となっている場合には発光部22の発光を停止させる。
ステップS21:CPU101は、紙送りモータ51を駆動し、レンズシート10を排出する処理を実行する。この結果、印刷が完了したレンズシート10は、印刷装置の外部に排出される。
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態では、凸レンズ11の位置を光学センサ40によって検出し、検出された位置に応じて画像を印刷するようにしたので、例えば、レンズシート10の製造時の精度が低い場合または環境の湿度によってレンズのピッチが変化した場合でも画像を各レンズの幅内に正確に印刷することが可能になる。
また、第1の実施の形態では、レンズ信号が正常でない場合には、レンズ信号補完回路により補完動作を行うことにより、正常なレンズ信号を生成するようにしたので、例えば、凸レンズ11の形成不良の場合、動作振動もしくはコーティング層の不均一に起因して光が変化してしまう場合、または、検出不良の場合であっても、印刷を正常に行うことが可能になる。
また、第1の実施の形態では、バンドパスフィルタ111aを設け、凸レンズ11のレンズピッチに応じた信号以外の成分を減衰させるようにしたので、ノイズ成分を除去して凸レンズ11の位置を確実に検出することができる。
なお、以上の第1の実施の形態では、プラテン20にレンズシート10を直接載置する場合について説明したが、例えば、ある程度の厚みを有するトレイにレンズシート10を載置して、当該トレイとともに印刷装置内部に挿入して印刷することも可能である。その場合には、トレイのレンズシート10が載置される部分の全体(または一部)に、発光部を設けておけばよい。
また、以上の第1の実施の形態では、プラテン20と記録ヘッド32との距離は一定としたが、これらの距離をレンズシート10の厚さに応じて調整可能としてもよい。その場合、発光部22と光学センサ40との距離が変化するため、距離が大きい場合には反射光が受光部43に全て入射されないことも想定される。したがって、例えば、これらの距離を調整可能とする場合は、十分な受光量が得られる範囲に調整可能範囲を限定することが望ましい。
なお、以上の実施の形態では、キャリッジ31が図1の右から左に移動する際に印刷を行い、左から右へ移動する際には印刷を行わないようにしたが、例えば、図17に示すように、キャリッジ31の裏面に光学センサ40とは別の検出手段としての光学センサ400を設けるようにし、左から右へ移動する際には光学センサ400からの信号に基づいて印刷を行うことも可能である。この例では、キャリッジ31の裏面には、記録ヘッド32の中心線に対称な位置に光学センサ400が新たに設けられている。なお、光学センサ400の構造は、光学センサ40と同様であり、発光部22から照射され、レンズシート10を透過した光の強弱に応じた電気信号を出力する。また、図8に示すバンドパスフィルタ111aに対しては、キャリッジ31が右から左へ移動する際には、光学センサ40からの出力を入力し、左から右へ移動する際には、光学センサ400からの出力を入力する。なお、これ以降の処理は、前述の場合と同様である。
このようなキャリッジ31を用いれば、キャリッジ31がどちらに移動する際にも印刷を行うことができるので、印刷速度を向上させることができる。
また、光学センサ40は、図2に示すように1つだけしか用いない場合であっても、例えば、右から左へ走査する場合にはレンズ信号をバッファに格納して記憶し、左から右へ走査する場合にはバッファに記憶されたレンズ信号を参照して印刷を行うことも可能である。
つぎに、本発明の第2の実施の形態について説明する。
以下、本発明の第2の実施の形態について、図18から図20に基づいて説明する。図18は、本実施の第2の形態に係る印刷装置の概略基本構成を示す斜視図である。なお、この図において、図1に示す第1の実施の形態と対応する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図18に示す第2の実施の形態では、図1に示す第1の実施の形態の場合と比較すると、キャリッジ31に設けられている光学センサ40が光学センサ410に置換されている。また、プラテン20の発光部22が反射板300に置換されている。その他の構成は、図1の場合と同様である。
ここで、反射板300は、光学センサ410から照射されてレンズシート10を透過した光を反射し、光学センサ410に戻す機能を有する。反射板300は、例えば、鏡面研磨された金属部材、金属部材が蒸着された樹脂、または、反射率が高い白色の樹脂等によって構成されており、光学センサ410から照射された光を高い反射率で反射する。また、反射板300は、例えば、矩形形状を有しており、長手方向はレンズシート10のX方向よりも広い幅を有しており、短手方向は光学センサ410から照射されるビームよりも広い幅を有している。なお、プラテン20が光を反射する特性を有する場合には、反射板300を特に設けなくてもよい。また、反射板300としては、例えば、表面が平坦な部材ではなく、乱反射する部材(例えば、表面が粗い形状を有する部材)を用いることも可能である。また、反射板300を着脱自在な構造とし、必要に応じて反射板300をプラテン20上に設置するようにしてもよい。
なお、図18では、全体の形状をわかりやすくするために、反射板300をプラテン20の下流側の端部付近に設けているが、実際には上流側の光学センサ410に対向する位置に設けられている。なお、これらの位置関係は、図6の場合と同様である。
なお、この例では、光学センサ410は、各ノズル列32aの最上端(図の上端)に形成されたノズルよりも上流側(レンズシートの搬送方向の上流側)に設けられているので、レンズシート10が記録ヘッド32の最初のノズル(最上端のノズル)に到達する前に、光学センサ410によって凸レンズを検出することができる。
図19は、光学センサ410とレンズシート10との位置関係を示す断面図である。この図に示すように、光学センサ410は、保持体411ならびに発光部414および受光部415を有している。ここで、保持体411には、発光部414が配置される凹部412および受光部415が配置される凹部413が形成されている。凹部412,413の底面部には発光部414および受光部415がそれぞれ配置されている。
発光部414は、例えば、レーザダイオードまたはLED等によって構成され、直進性の高い光を射出する。受光部415は、例えば、フォトダイオードによって構成され、反射板300によって反射された光を受光し、その光の強度に対応するレベルを有する電気信号に変換して出力する。なお、発光部414としては、例えば、赤色光、青色光、緑色光、赤外光等のような、所定の色の光を発することが可能な発光ダイオードを用いることができる。また、例えば可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を発光部としても良い。また、受光部415としては、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC等のような、受光した光を電気信号に変換することが可能な素子を用いることができる。
発光部414から射出され、インク透過層13、インク吸収層12、および、凸レンズ11を透過した光は、反射板300によって反射され、一部は、凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を再度経由し、受光部415によって受光される。ここで、発光部414から射出されて反射板300に至るまでの経路と、発光部414の光軸とは一致している。また、反射板300によって反射されて受光部に至るまでの経路と、受光部415の光軸とは一致している。すなわち、発光部414および受光部415は、図20中に破線で示す光の経路とその光軸が一致するように、凹部412,413の底面部は、反射板300に平行な方向からそれぞれ傾きθを有するように形成されている。このように、発光部414および受光部415のそれぞれの光軸と、光の経路とを一致させることにより、光学センサ410の検出感度を高めることができる。
発光部414から照射された光は、レンズシート10のインク透過層13およびインク吸収層12を透過し、凸レンズ11に到達する。図20(A)に示すように、発光部414から照射された光(入射光)が凸レンズ11の頂部11aに達した場合、当該入射光は凸レンズ11の頂部11aに当接するように位置している反射板300によって反射され、反射光として受光部415に入射される。すなわち、凸レンズ11の頂部11aに当接している反射板300の角度は、レンズ曲面の当接面の角度と同一であるので、レンズの透過光のほとんどは反射板300によって反射され、受光部415に入射される。なお、発光部414から照射された光の一部は、インク透過層13およびインク吸収層12によって反射されるが、反射板300とは反射される位置が異なることから、当該反射光は受光部415には届かない。したがって、当該反射光に対しては、受光部415は信号を出力しない。
一方、図20(B)に示すように、発光部414から照射された光が凸レンズ11の頂部11aからずれた位置に達した場合、当該入射光は凸レンズ11を透過し、反射板300によって反射されるが、凸レンズ11に再入射する際に乱反射される。その結果、受光部415に入射される光の強度は、図20(A)の場合に比較すると弱くなる。
以上の動作原理により、光学センサ410によりレンズシート10の凸レンズ11の位置を検出することができる。なお、その他の部分の動作については、第1の実施の形態の場合と同様であるのでその説明は省略する。
以上に説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態のように、複数の光源を有する発光部22を設ける必要がなくなるので、装置の製造コストを低減することが可能になる。
また、以上の第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様に、レンズ信号補完回路によって補完動作を行うことにより、レンズ信号が正常でない場合にも、これを補完して、正常な印刷を行うことができる。
つぎに、本発明の第3の実施の形態について説明する。
以下、本発明の第3の実施の形態について、図21および図22に基づいて説明する。図21は、本実施の第3の形態に係る印刷装置に使用されている決定手段としてのレンズ信号生成回路の構成例を示す図である。第3の実施の形態に係る印刷装置では、レンズ信号から事前学習によってレンズ間隔を求め、求めたレンズ間隔の平均値を代表レンズ値とする。そして、当該代表レンズ値に基づいて、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成する。得られたレンズ信号に基づいて、PTS信号を生成し、印刷を行う。
この図に示すように、レンズ信号生成回路は、カウンタ300、合計計算回路301、レジスタ302〜306、代表レンズ値決定回路307、および、CPUタイマ308を主要な構成要素としている。
ここで、カウンタ300は、レンズ信号のポジティブエッジが検出されると、レジスタ302のLカウント値をレジスタ303へLラッチとしてコピーするとともに、レジスタ302のLカウント値をクリアする。また、レジスタ302のレンズ数をインクリメントする。そして、その後は、レジスタ303のLカウント値をクロック信号に同期してインクリメントする。
合計計算回路301は、ポジティブエッジが検出されると、レジスタ304に格納されているLラッチ値をレジスタ305の合計値に対して累積加算する。
レジスタ302には、レンズシート10の端部からのレンズ数が格納される。レジスタ303には、レンズ間のLカウント値が格納される。レジスタ304には、ポジティブエッジが検出された時点において、レジスタ303に格納されている、その直前におけるLカウント値がラッチされる。レジスタ305には、ポジティブエッジが検出されたタイミングで、レジスタ304に格納されているLラッチ値が累積加算されていく。レジスタ306には、レンズ終了値が格納されている。ここで、レンズ終了値とは、最後のレンズを検出するための判定値であり、例えば、代表レンズ値の2〜3倍程度の値を格納する。
代表レンズ値決定回路307は、レジスタ303のLカウント値がレジスタ306のレンズ終了値以上となった場合には、レンズシート10の端部であるとし、レジスタ305に格納されている合計値を、レジスタ302に格納されているレンズ数によって除算し、レンズ間隔の平均値を求め、当該平均値を代表レンズ値として、CPUタイマ308に供給する。
生成手段としてのCPUタイマ308は、代表レンズ値決定回路307から供給された代表レンズ値を参考にし、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成し、出力する。
つぎに、図22を参照して、第3の実施の形態の動作について説明する。なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の場合と同様に図11に示す処理が実行されるが、第3の実施の形態では、図22に示す処理によって得られた代表レンズ値に基づいて継続的にレンズ信号が生成される。すなわち、第1の実施の形態では、レンズ信号が正常でない場合に、補完レンズ信号が一時的に選択されて出力されるが、第3の実施の形態では、CPUタイマ308の出力が恒常的に出力される。
図22の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS50:CPU101は、レンズ信号を出力する範囲であるか否かを判定し、出力範囲であると判定した場合はステップS51に進み、それ以外の場合にはステップS56に進む。すなわち、CPU101は、レンズシート10が存在する領域であるか否かに基づいて判定し、レンズシート10が存在する領域である場合にはステップS51に進む。なお、レンズシート10の有無については、例えば、ポジティブエッジが最初に検出された場合には、レンズシート10が存在する領域に入ったと判定する。また、レジスタ303に格納されているLカウント値がレジスタ306に格納されているレンズ終了値以上になった場合には、レンズシート10が存在する領域が終了したと判定する。
ステップS51:カウンタ300は、レンズ信号のポジティブエッジを検出したか否かを判定し、ポジティブエッジを検出した場合にはステップS53に進み、それ以外の場合にはステップS52に進む。例えば、図13(C)に示すディジタル信号において、図13(D)に示すタイミングで示されるポジティブエッジ(例えば、PE30〜33)が検出された場合には、ステップS53に進み、それ以外の場合にはステップS52に進む。例えば、ポジティブエッジ30が検出された場合には、ステップS53に進む。
ステップS52:カウンタ300は、図示せぬクロック信号に基づいて、レジスタ303に格納されているLカウント値を1インクリメントし、ステップS50に戻って同様の処理を繰り返す。なお、ステップS53においてLカウント値がクリアされると、それ以降の処理では、ステップS52の処理に分岐し、Lカウント値が1ずつインクリメントされる。
ステップS53:合計計算回路301は、レジスタ304に格納されているLラッチ値をレジスタ305に格納されている合計値に加算する。より詳細には、まず、カウンタ300が、レジスタ303に格納されているLカウント値をレジスタ304にLラッチ値としてコピーする。つぎに、合計計算回路301が、レジスタ304に格納されているLラッチ値をレジスタ305に格納されている合計値に加算する。この結果、レジスタ305には、それまで検出されたレンズ間隔の累積加算値が格納される。
ステップS54:カウンタ300は、レジスタ303に格納されているLカウント値を初期化(リセット)する。
ステップS55:カウンタ300は、レジスタ302に格納されているレンズ数を1インクリメントする。そして、ステップS50に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS56:代表レンズ値決定回路307は、レンズ間隔の平均値を計算し、代表レンズ値とする。より詳細には、代表レンズ値決定回路307は、レジスタ305に格納されている合計値(全てのレンズ間隔を合計した値)を、レジスタ302に格納されているレンズ数で除算することにより、レンズ間隔の平均値を得るので、これを代表レンズ値とする。
ステップS57:CPUタイマ308は、代表レンズ値決定回路307から供給された代表レンズ値に基づいて、クロック信号を分周し、レンズ信号を生成して出力する。
以上のようにして生成されたレンズ信号は、ASIC104に供給され、そこで、図16に示すPTS信号が生成され、ヘッドドライバ109に供給される。ヘッドドライバ109は、PTS信号に同期してインクを吐出し、レンズシート10に画像を印刷する。
以上の処理によれば、1走査分のレンズ信号からレンズ間隔の平均値としての代表レンズ値を求め、当該代表レンズ値に基づいてレンズ信号を生成し、PTS信号を生成するようにしたので、例えば、レンズに欠損等が生じている場合であっても、画像を正確に印刷することができる。
また、代表レンズ値として、平均値を用いるようにしたので、個々のレンズは、多少の誤差を有している場合であっても、全体として見た場合には、正確に画像をレンズ内に印刷することができる。
なお、以上の実施の形態では、レンズシートの最初と最後のレンズについても計算処理の対象とするようにしたが、これらを除外して代表レンズ値を求めるようにしてもよい。すなわち、最初と最後のレンズについては、レンズの谷の部分で裁断されているとは限らないため(レンズの山の部分で裁断されている場合もあるため)、これらを計算対象として含めないためである。また、最後のレンズについては、レジスタ201に格納されているレンズ終了値によって、最後のレンズであるか否かを判定するため、実際のレンズ間隔よりも長くなってしまうことから、これを除外するためである。すなわち、図15(B)において、最後のレンズ信号を含む期間Bを除外して、区間Aの範囲のみを計算の対象とするためである。
また、最後のレンズを検出したら代表レンズ値を計算するのではなく、所定数のレンズが検出されたら、代表レンズ値を計算するようにしてもよい。あるいは、所定の範囲のレンズ(例えば、10個目から20個目のレンズ)から代表レンズ値を計算するようにしたもよい。また、平均値を計算せずに、例えば、10番目に検出されたレンズ間隔を代表レンズ値とするようにしてもよい。
なお、以上の例では、印刷する前に代表レンズ値を計算し、当該代表レンズ値を用いて、その後の印刷処理を実行するようにしたが、例えば、印刷する直前の走査において得られた代表レンズ値として、つぎの走査において印刷を行うようにすることも可能である。あるいは、所定の走査毎に(例えば、1〜5走査毎に)代表レンズ値を計算し、その後の走査では当該代表レンズ値を用いて印刷することも可能である。このように現在の走査に近い位置に存在するレンズから求めた代表レンズ値を利用することにより、例えば、レンズシート10がスキューを有して(傾いて)配置されている場合であっても、画像をレンズ内に正確に印刷することができる。
つぎに、本発明の第4の実施の形態について説明する。
以下、本発明の第4の実施の形態について、図23および図24に基づいて説明する。図23は、本実施の第4の形態に係る印刷装置に使用されているレンズ信号生成回路の構成例を示す図である。第4の実施の形態に係る印刷装置では、第3の実施の形態の場合と同様に、レンズ信号から事前学習によってレンズ間隔を求め、求めたレンズ間隔のうち、出現頻度が高いものを代表レンズ値とする。そして、当該代表レンズ値に基づいて、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成する。得られたレンズ信号に基づいて、PTS信号を生成し、印刷を行う。
この図に示すように、レンズ信号生成回路は、カウンタ500、候補記録回路501、レジスタ502〜506、優先処理回路507、代表レンズ値決定回路508、および、CPUタイマ509によって構成されている。
ここで、カウンタ500は、レンズ信号のポジティブエッジが検出されると、レジスタ502のLカウント値をレジスタ503へLラッチ値としてコピーするとともに、レジスタ502のLカウント値をクリアする。そして、その後は、レジスタ502の値をクロック信号に同期してインクリメントする。
候補記録回路501は、レジスタ503に格納されているLラッチ値を、その出現頻度を示す値とともにレジスタ505のテーブルに格納する。具体的には、候補記録回路501は、レジスタ505のテーブルの空き領域に格納する場合には、レンズ間隔とともに出現頻度を1として格納する。また、既に格納済みのレンズ間隔を格納する場合には、当該出現頻度を1インクリメントする。さらに、前述の2つ以外に該当する場合には、レジスタ504の優先フラグをセットする。
レジスタ502には、レンズ間のLカウント値が格納される。レジスタ503には、ポジティブエッジが検出された時点において、レジスタ502に格納されている、その直前におけるLカウント値がラッチされる。レジスタ504には、前述した優先フラグが格納される。レジスタ505には、レンズ間隔とその出現頻度とがテーブル形式で格納される。例えば、5種類のレンズ間隔がその出現頻度とともに格納される。レジスタ506には、レンズ終了値が格納される。当該レンズ終了値は、第3の実施の形態の場合と同様で、最後のレンズを検出するための判定値であり、例えば、代表レンズ値の2〜3倍程度の値を格納する。
優先処理回路507は、レジスタ504の優先フラグがセットされている場合に、Lラッチ値をレジスタ505のテーブルのどこに格納するかを決定する。具体的には、例えば、出現頻度が最も低いレンズ間隔と置換する。または、一番大きいレンズ間隔と置換するか、もしくは、格納されているレンズ間隔の中で分散が最も大きいレンズ間隔と置換する。
代表レンズ値決定回路508は、レジスタ502のLカウント値がレジスタ506のレンズ終了値以上となった場合には、レンズシート10の端部であるとし、レジスタ505に格納されているレンズ間隔の中から、出現頻度が最も高く、レンズ間隔が最も短いものを選択して代表レンズ値として出力する。なお、レンズ間隔が短いものを選択する理由は、レンズの検出誤差が生じた場合には、レンズ間隔が長くなる傾向があるので、同一の出現頻度のレンズ間隔が複数存在する場合には、レンズ間隔が短いものが誤差が少ないためである。
CPUタイマ509は、代表レンズ値決定回路508から供給された代表レンズ値を参考にし、クロック信号を分周することによりレンズ信号を生成し、出力する。
つぎに、図24を参照して、第4の実施の形態の動作について説明する。なお、第4の実施の形態は、第3の実施の形態と同様に、図24に示す処理によって得られた代表レンズ値に基づいて継続的にレンズ信号が生成される。すなわち、第1の実施の形態では、レンズ信号が正常でない場合に、補完レンズ信号が一時的に選択されて出力されるが、第4の実施の形態では、CPUタイマ509の出力が恒常的に出力される。
図24の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS70:CPU101は、レンズ信号を出力する範囲であるか否かを判定し、出力範囲であると判定した場合はステップS71に進み、それ以外の場合にはステップS74に進む。すなわち、CPU101は、レンズシート10が存在する領域であるか否かに基づいて判定し、レンズシート10が存在する領域である場合にはステップS71に進む。なお、レンズシート10の有無については、例えば、ポジティブエッジが最初に検出された場合には、レンズシート10が存在する領域に入ったと判定する。また、レジスタ502に格納されているLカウント値がレジスタ506に格納されているレンズ終了値以上になった場合には、レンズシート10が存在する領域が終了したと判定する。
ステップS71:カウンタ500は、レンズ信号のポジティブエッジを検出したか否かを判定し、ポジティブエッジを検出した場合にはステップS73に進み、それ以外の場合にはステップS72に進む。例えば、図13(C)に示すディジタル信号において、図13(D)に示すタイミングで示されるポジティブエッジ(例えば、PE30〜33)が検出された場合には、ステップS73に進み、それ以外の場合にはステップS72に進む。例えば、ポジティブエッジ30が検出された場合には、ステップS73に進む。
ステップS72:カウンタ500は、図示せぬクロック信号に基づいて、レジスタ502に格納されているLカウント値を1インクリメントし、ステップS70に戻って同様の処理を繰り返す。なお、ステップS73においてLカウント値がクリアされると、それ以降の処理では、ステップS72の処理に分岐し、Lカウント値が1ずつインクリメントされる。
ステップS73:候補記録回路501は、レジスタ503に格納されているLラッチ値をレジスタ505のテーブルに格納する。より詳細には、候補記録回路501は、レジスタ505のテーブルに同一のレンズ間隔が既に格納されている場合には、当該レンズ間隔の出現頻度を1インクリメントする。また、同一のレンズ間隔が格納されていない場合であって、空き領域がある場合には、当該空き領域にLラッチ値を、出現頻度“1”として格納する。さらに、同一のレンズ間隔が格納されていない場合であって、空き領域がない場合には、レジスタ504の優先フラグをセットする。
優先フラグがセットされると、優先処理回路507は、Lラッチ値をレジスタ505のテーブルのどこに格納するかを決定する。例えば、レジスタ505のテーブルの中で、出現頻度が最も低いレンズ間隔と、Lラッチ値とを置換する。または、テーブルの中で一番大きいレンズ間隔と、Lラッチ値を置換するか、または、テーブルに格納されているレンズ間隔の中で分散が最も大きいレンズ間隔と、Lラッチ値を置換する。なお、置換せずに、そのままの状態とすることも可能である。
ステップS74:代表レンズ値決定回路508は、レジスタ505のテーブルに格納されているレンズ間隔の中で、出現頻度が最も高いものを選択して代表レンズ値とする。なお、出現頻度が最も高いレンズ間隔が複数存在する場合には、レンズ間隔が最も短いものを選択して代表レンズ値とする。なお、最も低いものを選択する理由は、前述の通りである。
ステップS75:CPUタイマ509は、代表レンズ値決定回路508から供給された代表レンズ値に基づいて、クロック信号を分周し、レンズ信号を生成して出力する。
以上のようにして生成されたレンズ信号は、第3の実施の形態の場合と同様に、ASIC104に供給され、そこで、図16に示すPTS信号が生成され、ヘッドドライバ109に供給される。ヘッドドライバ109は、PTS信号に同期してインクを吐出し、レンズシート10に画像を印刷する。
以上の処理によれば、1走査分のレンズ信号から出現頻度が最も高いレンズ間隔を代表レンズ値として選択し、当該代表レンズ値に基づいてレンズ信号を生成し、PTS信号を生成するようにしたので、例えば、レンズに欠損等が生じている場合であっても、画像を正確に印刷することができる。
また、代表レンズ値として、出現頻度が高いものを利用するようにしたので、出現頻度が高いレンズに合わせて印刷を行うことができることから、正確に画像をレンズ内に印刷することができる。
なお、以上の実施の形態では、レンズシートの最初と最後のレンズについても計算処理の対象とするようにしたが、これらを除外して代表レンズ値を求めるようにしてもよい。すなわち、最初と最後のレンズについては、レンズの谷の部分で裁断されているとは限らないため(レンズの山の部分で裁断されている場合もあるため)、これらを計算対象として含めないためである。また、最後のレンズについては、レジスタ201に格納されているレンズ終了値によって、最後のレンズであるか否かを判定するため、実際のレンズ間隔よりも長くなってしまうことから、これを除外するためである。すなわち、図15(B)において、最後のレンズ信号を含む期間Bを除外して、区間Aの範囲のみを計算の対象とするためである。
また、最後のレンズを検出したら代表レンズ値を計算するのではなく、所定数のレンズが検出されたら、代表レンズ値を計算するようにしてもよい。あるいは、所定の範囲のレンズ(例えば、10個目から20個目のレンズ)から代表レンズ値を計算するようにしたもよい。また、平均を計算せずに、例えば、10番目に検出されたレンズ間隔を代表レンズ値とするようにしてもよい。
なお、以上の例では、印刷する前に代表レンズ値を計算し、当該代表レンズ値を用いて、その後の印刷処理を実行するようにしたが、例えば、印刷する直前の走査において得られた代表レンズ値として、つぎの走査において印刷を行うようにすることも可能である。あるいは、所定の走査毎に(例えば、1〜5走査毎に)代表レンズ値を計算し、その後の走査では当該代表レンズ値を用いて印刷することも可能である。このように現在の走査に近い位置に存在するレンズから求めた代表レンズ値を利用することにより、例えば、レンズシート10がスキューを有して(傾いて)配置されている場合であっても、画像をレンズ内に正確に印刷することができる。
なお、以上の各実施の形態は、一例であって、これ以外にも種々の変形実施態様が存在する。例えば、第3の実施の形態または第4の実施の形態において算出された代表レンズ値を、第1の実施の形態において使用することも可能である。このような方法によれば、より正確な代表レンズ値に基づいて凸レンズ11の欠損等を検出できるので、補完精度を高めることができる。
また、第2の実施の形態と、第1、第3、および、第4の実施の形態を適宜組み合わせることも可能である。
また、以上の実施の形態では、レンズシート10としては、凸レンズ11がシートの辺に対して平行に形成されたものを例に挙げて説明したが、例えば、凸レンズが辺に対して所定の角度を有して形成されているレンズシート(例えば、凸レンズが辺に対して数度から数十度傾いて形成されているレンズシート)を使用することも可能である。その場合、インクを吐出する位置が、レンズシートの副走査方向の移動に応じて変化するので、吐出位置を副走査量に応じて変化させる。
また、以上の各実施の形態では、発光部22および発光部414が照射する光の波長については、詳細には説明していないが、例えば、インク吸収層12の透過性が高い波長(例えば、赤外線)等に設定することにより、検出精度を向上させることができる。
また、以上の各実施の形態では、受光部43および受光部415は反射光または透過光をそのまま入射するようにしたが、例えば、発光部22および発光部414と同一の波長の光のみを選択的に通過させるフィルタを通した光を入射するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、環境光の影響を少なくすることができる。
また、以上の実施の形態では、二値化回路111cにおいて、所定の閾値と比較することによりアナログ信号を二値化するようにしたので、閾値によってはディジタル信号のデューティーが50%にならない場合も想定される。そこで、増幅回路111bから出力される信号を反転し、これともとの信号を比較し、これらの交差点においてハイまたはローを切り替えるようにすれば、50%に近いデューティーの信号を簡易に得ることができる。
また、以上の各実施の形態では、図8に示すようにレンズ信号二値化回路111としては、アナログ回路を使用するようにしたが、例えば、アナログ信号をA/D(Analog to Digital)変換器等でディジタル化した後に各種の処理を実行するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、例えば、バンドパスフィルタ111aの通過帯域を簡易に調整することができる。
また、以上の各実施の形態では、印刷装置はホストコンピュータ150に接続され、当該ホストコンピュータ150から印刷データを受信するようにした。しかしながら、例えば、画像の記憶手段、画像の編集手段、および、印刷データの生成手段等を有し、ホストコンピュータ150を接続しなくても印刷処理が可能ないわゆるスタンドアローンタイプの印刷装置に本発明を適用することも可能である。また、プリンタ(印刷装置)、スキャナ、ファクシミリ、および、コピー機が一体となったディジタル複合機に対しても本発明を適用可能である。
11 凸レンズ(レンズ),22 発光部(発光手段),32 記録ヘッド(印刷手段),40 光学センサ(検出手段),50 紙送りローラ(搬送手段の一部),51 紙送りモータ(搬送手段の一部),109 ヘッドドライバ(調整手段),300 反射板(反射手段),308 CPUタイマ(決定手段),409 CPUタイマ(決定手段)