以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置の構成例を示す図である。以下、本発明の第1の実施の形態について、図1から図14に基づいて説明する。図1は、本実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明においては、下方側とは、印刷装置が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ31が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート10が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート10が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート10が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
この図1に示すように、印刷装置は、プラテン20を有し、このプラテン20対してキャリッジ31が往復移動自在に構成されている。キャリッジ31は、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックインクが内部に貯留されたインクカートリッジ30を保持している。キャリッジ31の下方側には、レンズシート10に対向するように、印刷手段としての記録ヘッド32が設けられており、インクカートリッジ30に貯留されているインクを吸引し、微小なインク滴として吐出可能としている。なお、搭載されるインクカートリッジ30は、4色に限られるものではなく、6色、7色および8色等、何色分であっても良い。また、インクカートリッジ30に充填されるインクは、染料系インクには限られず、顔料系インク等、他の種類のインクを搭載しても良い。
キャリッジ31には、タイミングベルト35の一部が固着されている。タイミングベルト35は、プリー33,34を連接するように架張されている。プリー33には、キャリッジモータ36の駆動軸が接続されている。したがって、キャリッジモータ36が回転されると、キャリッジ31が図1中に矢印で示すX方向(主走査方向)に往復動作する。
キャリッジ31の一部(この図の例では左側)には、後述するシリンドリカル凸レンズ(以下、「凸レンズ」と称する)を検出するための光学センサ40が設けられている。なお、検出手段としての光学センサ40の詳細については、後述する。
キャリッジ31が往復動作する経路上には、リニアエンコーダを構成するスケール37が配置されている。キャリッジ31のスケール37に対向する面には、後述する光学センサ38が配置されており、当該光学センサ38によってスケール37に印刷されたパターンを検出することにより、キャリッジ31の位置を特定する。
プラテン20の上流側(紙面の奥側)には、円柱形状を有する紙送りローラ50が設けられている。搬送手段の一部としての紙送りローラ50には、搬送手段の一部としての紙送りモータ(PFモータ)51の駆動力が伝達される。したがって、紙送りモータ51が回転されると、紙送りローラ50が回転され、レンズシート10がプラテン20上を、Y方向(図中矢印で示す方向)の排紙側に向けて搬送される。
レンズシート10は、後述するように、一方の面(第1の面)には、例えば、凸形状を有する複数の凸レンズ(レンズ)が形成されている。また、他方の面(第2の面)は印刷面とされている。図1の例では、凸レンズの長手方向(レンズの伸びている方向)と、Y方向(副走査方向)とが一致するように、レンズシート10が配置される。また、この例では、Y方向に長い短冊状の画像が、各凸レンズの短手方向の幅内に収まるように複数印刷される。なお、凸レンズとしては、図に示す凸形状のみならず、例えば、凹形状を有するものを使用することも可能である。
プラテン20は、その上側面に反射板22を有している。プラテン20は、例えば、樹脂によって構成され、レンズシート10を保持してスムーズに搬送されるようにするとともに、記録ヘッド32と、レンズシート10との間の距離が一定になるようにする。
反射手段としての反射板22は、光学センサ40から照射されてレンズシート10を透過した光を反射し、光学センサ40に戻す機能を有する。反射板22は、例えば、鏡面研磨された金属部材、金属部材が蒸着された樹脂、または、反射率が高い白色の樹脂等によって構成されており、光学センサ40から照射された光を高い反射率で反射する。また、反射板22は、例えば、矩形形状を有しており、長手方向はレンズシート10のX方向よりも広い幅を有しており、短手方向は光学センサ40から照射されるビームよりも広い幅を有している。なお、プラテン20が光を反射する特性を有する場合には、反射板22を特に設けなくてもよい。また、反射板22としては、例えば、表面が平坦な部材ではなく、乱反射する部材(例えば、表面が粗い形状を有する部材)を用いることも可能である。また、反射板22を着脱自在な構造とし、必要に応じて反射板22をプラテン20上に設置するようにしてもよい。
なお、図1では、全体の形状をわかりやすくするために、反射板22をプラテン20の下流側の端部付近に設けているが、実際には上流側の光学センサ40に対向する位置に設けられている。これらの詳細な位置関係については、図7を参照して後述する。
図2は、キャリッジ31の裏面(レンズシートに対向する面)を示す図である。この図に示すように、キャリッジ31の裏面には、複数のノズルが列方向に配置されたノズル列32aを複数有する記録ヘッド32が設けられている。なお、各ノズル列は、例えば、180個のノズルによって構成されている。また、それぞれのノズル列32aは、同一の色のインクを吐出するノズル群によって構成される。
キャリッジ31の裏面の右上端部には、光学センサ40が設けられている。なお、この例では、光学センサ40は、各ノズル列32aの最上端(図の上端)に形成されたノズルよりも上流側(レンズシートの搬送方向の上流側)に設けられているので、レンズシート10が記録ヘッド32の最初のノズル(最上端のノズル)に到達する前に、光学センサ40によって凸レンズを検出することができる。
図3は、図2に示す光学センサ40をA−A’によって切断した場合の光学センサ40とレンズシート10との位置関係を示す断面図である。この図に示すように、光学センサ40は、保持体41ならびに発光部44および受光部45を有している。ここで、保持体41には、発光部44が配置される凹部42および受光部45が配置される凹部43が形成されている。凹部42,43の底面部には発光部44および受光部45がそれぞれ配置されている。
発光部44は、例えば、レーザダイオードまたはLED(Light Emitting Diode)等によって構成され、直進性の高い光を射出する。受光部45は、例えば、フォトダイオードによって構成され、反射板22によって反射された光を受光し、その光の強度に対応するレベルを有する電気信号に変換して出力する。なお、発光部44としては、例えば、赤色光、青色光、緑色光、赤外光等のような、所定の色の光を発することが可能な発光ダイオードを用いることができる。また、例えば可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を発光部としても良い。また、受光部45としては、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC等のような、受光した光を電気信号に変換することが可能な素子を用いることができる。
レンズシート10は、凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を有している。ここで、レンズとしての凸レンズ11は、例えば、透明な樹脂によって構成され、かまぼこ形状を有するレンズが所定の間隔(ピッチ)で複数連結されて構成される。なお、レンズシート10の種類は、レンズの間隔によって示され、例えば、45lpi(lens per inch)、60lpi、90lpi等がある。なお、これ以外のピッチ(例えば、100lpi等)のレンズを使用することも可能である。凸レンズ11は、PET(Polyethylene Terephthalate)、PETG(Polyethylene Terephthalate Glycol)、APET(Amorphous Polyethylene Terephthalate)、PP(Polypropylene)、PS(Polystyrene)、PVC(Polyvinyl chloride)、アクリル、UV(Ultraviolet)硬化樹脂等によって構成される。
インク吸収層12は、インクを吸収する材料によって構成され、インク透過層13を透過したインクを定着させる。なお、インク吸収層12は、例えば、PVA(Poly Vinyl Alcohol)等親水性ポリマ、カチオン化合物、シリカ等微粒子によって構成されている。また、インク透過層13は、インクを透過する材料によって構成され、インク吸収層に定着されたインクを保護する。なお、インク透過層13は、酸化チタン、シリカゲル、PMMA(Polymethylmethacrylate)等微粒子、バインダ樹脂等によって構成されている。なお、インク吸収層12およびインク透過層13のいずれか一方は、非透明な材料によって構成される。また、インク透過層13は、あってもなくてもよい。さらに、インク吸収層12およびインク透過層13以外にも、例えば、透明フィルム層または接着層等があってもよい。
発光部44から射出され、インク透過層13、インク吸収層12、および、凸レンズ11を透過した光は、反射板22によって反射され、一部は、凸レンズ11、インク吸収層12、および、インク透過層13を再度経由し、受光部45によって受光される。ここで、発光部44から射出されて反射板22に至るまでの経路と、発光部44の光軸とは一致している。また、反射板22によって反射されて受光部に至るまでの経路と、受光部45の光軸とは一致している。すなわち、発光部44および受光部45は、図3中に破線で示す光の経路とその光軸が一致するように、凹部42,43の底面部は、反射板22に平行な方向からそれぞれ傾きθを有するように形成されている。このように、発光部44および受光部45のそれぞれの光軸と、光の経路とを一致させることにより、光学センサ40の検出感度を高めることができる。
図4は、凸レンズと発光部44から射出されるビームとの関係を示す図である。この図に示すように、発光部44から射出されるビームの直径をL2とし、1つの凸レンズの短手方向の長さをL1とした場合、L1とL2の間には、例えば、L2≦(L1/2)の関係を有するようにビームの直径を設定する。なお、種類が異なる凸レンズを使用する可能性がある場合には、使用する可能性があるもののうち、最小のサイズの凸レンズについて、以上の関係を有するようにビームを設定する。なお、発光部44として、レーザ光源(レーザダイオード等)を使用すれば、図4に示すようなビーム径になるように簡易に調整することができる。すなわち、レーザ光は単一波長であり、また、コヒーレント性が高いことから、レンズ等を用いることによりビーム径を簡易に変化させることができる。また、レーザ光は、エネルギー密度が高いことから、インク吸収層12が存在する場合であっても、十分な反射光量を得ることができるため、レンズを確実に検出することができる。
図5は、図1に示す印刷装置の制御系の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、印刷装置の制御系としては、キャリッジモータ36、紙送りモータ51、制御部100、および、インターフェース112を有している。ここで、インターフェース112は、制御部100とホストコンピュータ200とを電気的に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするために信号の表現形式等を変換する機能を有する。制御部100は、ホストコンピュータ200から送信されてきた印刷データに基づいてレンズシート10に画像を印刷するための制御を行う。なお、制御部100の詳細については後述する。キャリッジモータ36は、制御部100によって制御され、キャリッジ31を主走査方向に往復動作させる。なお、キャリッジ31の一部には光学センサ38が設けられており、この光学センサ38とスケール37によってリニアエンコーダが構成されている。制御部100は、このリニアエンコーダによってキャリッジ31の現在の位置を知ることができる。紙送りモータ51は、紙送りローラ50に駆動力を与えることにより、レンズシート10を副走査方向に移動させる。ホストコンピュータ200は、HDD(Hard Disk Drive)201を有しており、このHDD201には、レンズシート10の印刷に対応させて画像を加工するための画像加工プログラム等が記憶されている
図6は、図5に示す印刷装置を図の右側から眺めた図である。この図に示すように、キャリッジ31は、プラテン20に対向する状態で設けられている。また、キャリッジ31の下部には、記録ヘッド32が設けられている。図2に示すように、記録ヘッド32には、複数のノズルがレンズシート10の搬送方向(副走査方向)に配置されてノズル列32aを形成している。なお、前述のように、本実施の形態では、各ノズル列32aは、例えば180個のノズルから構成されており、このうち、180番目のノズルが給紙側、1番目のノズルが排紙側に位置している。
また、キャリッジ31の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列32aには、ノズル毎に、ピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、記録ヘッド32は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、その他の方式を用いても良い。その他の方式としては、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等が、主な方式として挙げられる。
用紙搬送機構80は、レンズシート10等の印刷対象物を搬送する駆動力を与える紙送りモータ(不図示)、および、普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ82を具備している。また、この給紙ローラ82よりも排紙側には、レンズシート10を搬送するための紙送りローラ50が設けられている。また、紙送りローラ50よりも排紙側には、プラテン20および上述の記録ヘッド32が上下に対向するように配設されている。プラテン20は、紙送りローラ50によって印刷ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート10を、下方側から支持する。
また、プラテン20よりも排紙側には、上述の紙送りローラ50と同様の、排紙ローラ52が設けられている。この排紙ローラ52は、紙送りモータ51からの駆動力が伝達されて、回転する。なお、紙送りモータ51は、その駆動力を紙送りローラ50と排紙ローラ52とに分配させる構成を採用している。しかしながら、紙送りモータ51以外に、別途のモータを設け、そのモータによって排紙ローラ52を駆動させる構成を採用しても良い。
また、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ82の下方側には、開口部87が設けられている。開口部87は、レンズシート10等の折り曲げ困難な印刷対象物を通過させるための、開口部分である。そのため、開口部87は、レンズシート10を通過させるのに十分な、主走査方向における幅を有している。なお、レンズシート10は、それ単体で開口部87を通過するようにしても良く、また厚みのあるトレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
図7は、プラテン20の側断面図の一例である。図7に示すように、プラテン20には、該プラテン20の基準平面21aから上方に向かい、レンズシート10等が接触する複数のリブ21bが突出している。また、プラテン20のうち、給紙側の端部側には、反射板22が設けられている(図1および図7参照)。反射板22は、光学センサ40の発光部44から発せられた光を反射するための部位である。
レンズシート10は、紙送りローラ50および従動ローラ50aによって挟持されつつ駆動力を与えられて副走査方向に移動される。また、レンズシート10は、印刷が終了すると、排紙ローラ52および従動ローラ52aによって挟持されつつ駆動力を与えられて排紙される。
図8は、制御部100の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)104、DC(Direct Current)ユニット105、信号処理部106、PFモータドライバ107、CRモータドライバ108、ヘッドドライバ109、不揮発性メモリ110、レンズ信号二値化回路111、および、インターフェース112を有している。なお、制御部100には、紙幅検出のためのPW(Paper Width)センサ(不図示)、光学センサ40、ギャップ検出センサ(不図示)、光学センサ38、および、ロータリエンコーダ113等が接続され、これらのセンサから入力された信号に基づいて、記録ヘッド32、紙送りモータ51、および、キャリッジモータ36等を制御する。
ここで、CPU101は、ROM102や不揮発性メモリ110等に記憶されている制御プログラムを実行するための演算処理や、その他の必要な演算処理を行う。また、ROM102には、印刷装置を制御するための制御プログラムおよび処理に必要なデータ等が記憶されている。また、ASIC104は、パラレルインターフェース回路を内蔵しており、インターフェース112を介してホストコンピュータ200から供給される印刷信号を受け取ることができる。
RAM103は、CPU101が実行途中のプログラム/演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。また、不揮発性メモリ110は、印刷装置の電源切断後も、保持の必要な各種データを記憶するためのメモリである。
なお、ロータリエンコーダ113は、上述のリニアエンコーダとは異なり、スケール113aが円盤状に設けられている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダと同様となっている。また、本実施の形態では、ロータリエンコーダ113のスケール113aに設けられている複数のスリットのスリット間隔は、1/180インチとなっていると共に、紙送りモータ51が1スリット分だけ回転すると、1/1440インチだけ、レンズシート10が搬送されるように構成されている。しかしながら、スリット間隔および搬送ピッチは、これには限られず、種々設定することが可能である。
また、DCユニット105は、DCモータであるキャリッジモータ36、紙送りモータ51の速度制御を行うための制御回路である。DCユニット105は、CPU101から送られてくる制御命令、後述する信号処理部106からの出力信号等に基づいて、紙送りモータ51およびキャリッジモータ36の速度制御を行うための各種演算を行い、その演算結果に基づいて、紙送りモータドライバ107およびキャリッジモータドライバ108へ、モータ制御信号を送信する。
また、信号処理部106は、後述するレンズ信号二値化回路111から出力される2値化信号、および、光学センサ38から出力されるエンコーダ信号が入力される。信号処理部106では、かかる2値化信号およびエンコーダ信号に基づき、レンズピッチの情報を有する2値化信号を反映させた、モータ駆動信号をキャリッジモータ36に出力する。それにより、キャリッジモータ36においては、検出されたレンズピッチに応じた駆動速度で駆動される。
PFモータドライバ107は、DCユニット105から供給されたモータ制御信号に応じて、紙送りモータ51を駆動する駆動回路である。CRモータドライバ108は、DCユニット105から供給されたモータ制御信号に応じて、キャリッジモータ36を駆動する駆動回路である。ヘッドドライバ109は、ASIC104から供給された印刷信号に応じて記録ヘッド32に内蔵されているピエゾ素子を駆動し、印刷信号に対応したインク滴を発生して、レンズシート10に所望の画像を印刷する。
また、上述の制御部100における各構成は、バス100aによって接続され、各構成の間でデータの授受を可能としている。
また、印刷装置は、インターフェース112を具備している。このインターフェース112を介して、ホストコンピュータ200が接続されている。なお、このホストコンピュータ200は、前述のように、HDD201を具備しており、このHDD201には、レンズシート10の印刷に対応させて画像を加工するための画像加工プログラムが記憶されている。
この画像加工プログラムは、選択された複数の画像データのうち、該画像データの個数Nに応じて画像データを縦方向または横方向のいずれかの方向のみに1/Nに圧縮する圧縮処理と、この圧縮処理に前後して凸レンズのレンズピッチに応じて画像を分割する画像分割処理と、圧縮処理および画像分割処理が為された短冊状の画像データを、それぞれの凸レンズにおいて適正な部位に配置する配置処理と、を行うものである。なお、画像加工プログラムにおいては、凸レンズの幅(LPI)、画像データの分割方向等、所定の事項を指定可能となっている。また、画像分割処理および圧縮処理を経過すると、細分化画像が形成される。
図9は、図8に示すレンズ信号二値化回路111の詳細を示すブロック図である。この図に示すように、レンズ信号二値化回路111は、バンドパスフィルタ111a、増幅回路111b、および、二値化回路111cを主要な構成要素としている。
ここで、バンドパスフィルタ111aは、受光部45から出力されるアナログ信号から凸レンズ11の周期に対応する信号を選択的に通過させるフィルタである。図10は、100lpiのピッチを有するレンズシート10を用いた場合に、受光部45から出力される信号をフーリエ変換した結果を示す図である。この図に示すように、受光部45から出力される信号には、2kHz付近の信号と、14.4kHz付近の信号の2種類が含まれている。ここで、14.4kHz付近の信号は、印刷装置の駆動周波数(例えば、キャリッジモータ36の駆動周波数)が14.4kHz付近であるため、その影響を受けて出力される信号である。一方、2kHz付近の信号は、キャリッジ31が走査された際に、凸レンズ11によって周期的に反射された光に対応する信号である。したがって、この例では、バンドパスフィルタ111aとしては、2kHz付近の信号を選択的に通過させるフィルタ(2kHzを通過帯域とするフィルタ)を用いればよい。具体的には、2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタを用いる。
なお、凸レンズ11の種類(レンズピッチ)が変化した場合には、受光部45から出力される信号の周波数も変化する。具体的には、解像度が低くなった場合(lpi(lens per inch)が低い場合)は周波数が低くなり、解像度が高くなった場合には周波数が高くなる。したがって、レンズシート10として様々な種類の解像度のものを使用する可能性がある場合には、例えば、最大の解像度と最小の解像度における周波数を予め測定しておき、これらを最大および最小とする帯域を通過帯域に有するバンドパスフィルタ111aを用いることにより、この範囲であればどのような解像度のレンズシート10が選択された場合でもレンズ信号を確実に抽出できる。具体例としては、100lpiの場合には、前述のように、2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタ111aを用いる。また、60lpiの場合には、1.2kHzを中心とし、1.0kHzから1.4kHzまでを通過帯域とするバンドパスフィルタ111aを用いる。したがって、これらの2種類を使用する可能性がある場合には、1.0kHzから2.2kHzまでの通過帯域を有するバンドパスフィルタを用いる。
これ以外にも、例えば、バンドパスフィルタ111aとして、スイットキャパシタフィルタを用い、当該フィルタの駆動周波数(スイッチング周波数)を変化させることにより、使用されているレンズシート10の解像度に応じて最適な通過帯域を設定できるようにしてもよい。すなわち、スイッチトキャパシタフィルタでは、その伝達関数は、キャパシタの容量値の比と、スイッチング周期によって決定される。使用されているキャパシタの容量値は固定であるので、スイッチング周期を変更することにより、例えば、バンドパスフィルタの通過帯域を簡単に変更することができる。
増幅回路111bは、バンドパスフィルタ111aを通過した2kHz付近の信号を、所定のゲイン(例えば、40倍)に増幅し、出力する。二値化回路111cは、例えば、シュミットトリガ回路等によって構成され、増幅回路111bの出力信号が所定の閾値を超えた場合には、ハイの状態の信号を出力し、それ以外の場合にはローの状態の信号を出力する。その結果、二値化回路111cからは、ハイまたはローの二値を有するディジタル信号が出力される。
つぎに、本発明の第1の実施の形態の動作を図11に示すフローチャートを参照して説明する。
レンズシート10に画像を印刷する場合、まず、ホストコンピュータ200において、印刷しようとする画像を加工する処理を実行する(ステップS10)。具体的には、ホストコンピュータ200は、HDD201に格納されている画像加工用プログラムを実行し、対象となる複数の画像をそれぞれ短冊状に分解した後に圧縮処理を施し、得られた画像を順番に並べる。例えば、立体画像の場合には、視点が異なる2枚の画像A,Bを、レンズシート10のレンズ解像度に合わせてそれぞれ同一形状の短冊状の画像(画像As,Bs)に分解し、短冊状の画像AsとBsとを交互に並べていく。そして、得られたストライプ状の画像に対して、解像度変換、色変換処理、ハーフトーン処理等を施し、印刷装置によって印刷するためのデータ(印刷データ)に変換し、印刷装置に供給する(ステップS11)。
印刷装置では、まず、CPU101が、レンズシート10のレンズの解像度に応じてレンズ信号二値化回路111のバンドパスフィルタ111aの通過帯域を初期設定する(ステップS12)。例えば、レンズシート10の解像度が100lpiである場合には、前述のように2kHzを中心とし、1.8kHzから2.2kHzまでを通過帯域とする。なお、印刷解像度に関するデータについては、ホストコンピュータ200から直接得るようにしてもよいし、または、印刷装置の図示せぬ操作部から入力されるようにしてもよい。
バンドパスフィルタ111aの設定が完了すると、CPU101は、紙送りモータ51を駆動し、レンズシート10を所定の位置(印刷開始位置)まで移動させる。具体的には、レンズシート10の先端部分が光学センサ40の直下にくるようにレンズシート10をY方向に移動させる。
レンズシート10が所定の位置まで移動すると、CPU101は、発光部44の発光を開始させるとともに、レンズ信号二値化回路101の動作を開始させる(ステップS13)。そして、CPU101は、ホストコンピュータ200に対して、印刷データが存在するか否かを問い合わせ、存在する場合にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS20に進む(ステップS14)。なお、印刷データが存在する場合は、ホストコンピュータ200から1ライン分の印刷データを受信し、印刷動作を開始する。具体的には、CPU101は、光学センサ38からの出力信号を参照し、キャリッジ31の現在位置を検出し、その位置に応じた駆動信号を生成してキャリッジモータ36に供給する。その結果、キャリッジ31は主走査方向に往復動作を開始する(ステップS15)。
このとき、発光部44からは光が照射されている。発光部44から照射された光は、レンズシート10のインク透過層13およびインク吸収層12を透過し、凸レンズ11に到達する。図12(A)に示すように、発光部44から照射された光(入射光)が凸レンズ11の頂部11aに達した場合、当該入射光は凸レンズ11の頂部11aに当接するように位置している反射板22によって反射され、反射光として受光部45に入射される。すなわち、凸レンズ11の頂部11aに当接している反射板22の角度は、レンズ曲面の当接面の角度と同一であるので、レンズの透過光のほとんどは反射板22によって反射され、受光部45に入射される。なお、発光部44から照射された光の一部は、インク透過層13およびインク吸収層12によって反射されるが、反射板22とは反射される位置が異なることから、当該反射光は受光部45には届かない。したがって、当該反射光に対しては、受光部45は信号を出力しない。
一方、図12(B)に示すように、発光部44から照射された光が凸レンズ11の頂部11aからずれた位置に達した場合、当該入射光は凸レンズ11を透過し、反射板22によって反射されるが、凸レンズ11に再入射する際に乱反射される。その結果、受光部45に入射される光の強度は、図12(A)の場合に比較すると弱くなる。
図13は、従来技術における入射光と反射光の関係を示している。従来技術の場合、図13(A)に示すように、入射光が凸レンズ11の頂部11aに到達した場合、その殆どの部分は凸レンズ11を透過してしまうので、反射光として受光部45に入射される光の強度は小さくなる。一方、図13(B)に示すように、入射光が凸レンズ11の底部11bに到達した場合、入射光は底部11bで乱反射され、反射光として受光部45に入射される。このときの光の強度は、図13(A)の場合に比較すると大きくなる。したがって、受光部45から出力されるアナログ信号は、図13(B)の場合に最大となる信号になる。ところで、凸レンズ11の底部11bの面積は小さく、また、乱反射するので、反射光の量はそれほど大きくない。したがって、図13(B)とそれ以外の場合の反射光の強度比(コントラスト)は、それほど大きくはならず、そのため本実施の形態と比較すると、レンズ信号の検出が困難となる。
図14は、凸レンズ11と、アナログ信号(受光部45の出力信号)と、ディジタル信号(二値化回路111cの出力信号)との対応関係を示している。図14(B)に示すように、受光部45から出力されるアナログ信号は、検出対象であるレンズ(図14(A)参照)の頂部11aで最大となり、徐々に減少する信号である。このような信号は、バンドパスフィルタ111aに供給され、高調波成分(駆動信号)および低域成分(例えば、直流成分および商用電源信号(50Hzの信号))が減衰され、出力される。
バンドパスフィルタ111aから出力された信号は、増幅回路111bに供給され、そこで、例えば、40倍に増幅されて出力される。増幅回路111bから出力された信号は、二値化回路111cに供給され、そこで、所定の閾値と比較される。そして、入力信号が閾値以上である場合には二値化回路111cは出力信号をハイの状態にし、入力信号が閾値未満である場合には二値化回路111cは出力信号をローの状態にする。その結果、二値化回路111cからは、図14(C)に示すように、各凸レンズ11の所定の位置において立ち上がり、所定の位置において立ち下がるパルス列信号が生成されて出力される。
ところで、キャリッジ31は定速動作しており、また、光学センサ40から各ノズル列までの距離は予め分かっている。したがって、二値化回路111cからの出力により、各凸レンズ11が検出されてから、所定のタイミングで各ノズルからインクを吐出するように制御することにより、凸レンズ11の幅に応じて画像が印刷されることになる。具体的には、二値化回路111cの信号の立ち上がりエッジが検出された場合、それをトリガとして、所定の間隔で各ノズル列32aからつぎつぎにインクを吐出することにより凸レンズ11の幅に応じた画像を印刷することができる(ステップS16)。凸レンズ11は、製造時の精度および放置されている環境の湿度に応じてレンズ間隔が変化する。しかしながら、上述のように各凸レンズ11を直接検出し、当該検出されたタイミングに応じてインクを吐出することにより、レンズ間隔に応じて画像を確実に印刷することができる。
つぎに、CPU101は、1走査分の印刷処理が終了したか否かを判定し、終了した場合にはステップS18に進み、それ以外の場合にはステップS16に戻って同様の処理を繰り返す(ステップS17)。
ところで、図2に示す記録ヘッド32の場合、光学センサ40は右上部に配置されている。したがって、図1においてキャリッジ31が右から左へ走査する場合には、光学センサ40が記録ヘッド32に先行するので、前述のような動作が可能になる。しかしながら、キャリッジ31が左から右へ走査する場合には、光学センサ40が記録ヘッド32に後行するため、上述のような動作はできない。そこで、例えば、キャリッジ31が左から右へ移動する場合には、印刷を行わないようにするようにすればよい(ステップS18)。あるいは、キャリッジ31が右から左へ走査する場合に、個々のレンズの位置をエンコーダ信号の出力と対応づけして記憶しておき、キャリッジ31が左から右へ走査する場合には、記憶されている情報を参照して印刷を行うようにしてもよい。あるいは、図2に示すような光学センサ40を右上部のみならず左上部にもうひとつ設け、キャリッジ31が右から左へ走査する場合には右上部の光学センサの出力を利用し、左から右へ走査する場合には左上部の光学センサの出力を利用して印刷を行うようにしてもよい。
このようにして、1ライン分の印刷動作が完了すると、CPU101は紙送りモータ51を駆動して、レンズシート10を所定の距離だけ副走査方向に移動させる(ステップS19)。そして、CPU101は、ステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。すなわち、CPU101は、ホストコンピュータ200からつぎの1ライン分の印刷データを受信し、前述の場合と同様の処理により当該印刷データを印刷する処理を実行する。このような処理を繰り返すことにより、所望の画像をレンズシート10に印刷することができる。
全ての印刷データの印刷が完了すると、CPU101は、光学センサ40の発光を停止させるとともに(ステップS20)、紙送りモータ51を駆動し、レンズシート10を排出する処理を実行する(ステップS21)。この結果、印刷が完了したレンズシート10は、印刷装置の外部に排出される。
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態では、凸レンズ11の位置を光学センサ40によって検出し、検出された位置に応じて画像を印刷するようにしたので、例えば、レンズシート10の製造時の精度が低い場合または環境の湿度によってレンズのピッチが変化した場合でも画像を各レンズの幅内に正確に印刷することが可能になる。
また、第1の実施の形態では、反射板22を設けるようにしたので、従来の場合に比較して、コントラストの強い信号を得ることができる。したがって、凸レンズ11の位置を確実かつ高精度に検出することが可能になる。
また、第1の実施の形態では、発光部44として、直進性を有する光を利用するとともに、その光のビーム幅をレンズの幅の1/2程度とするようにしたので、複数のレンズからの反射光が相互に干渉することを防止することができる。その結果、各レンズの位置を確実に検出することが可能になる。なお、発光部44として、例えば、レーザダイオードを使用した場合、レーザ光は高輝度であることから、インク吸収層12またはインク透過層13によってある程度減衰されても受光部45には十分な反射光が届くので、凸レンズ11を確実に検出することができる。また、レーザ光は、指向性が強く、ビーム面積を絞ることができるので、図4においてL2<<L1の関係となるようにビーム面積を設定すれば、凸レンズ11の一部の形状を正確に反映した反射光を得ることができるため、凸レンズ11の検出精度を高めることが可能になる。また、レーザ光は、エネルギー密度が高いため、インク吸収層12およびインク透過層13が非透明である場合でも、ある程度の反射光の光量を確保することができることから、レンズを確実に検出することができる。
また、第1の実施の形態では、バンドパスフィルタ111aを設け、凸レンズ11のレンズピッチに応じた信号以外の成分を減衰させるようにしたので、ノイズ成分を除去して凸レンズ11の位置を確実に検出することができる。
また、第1の実施の形態では、発光部44と受光部45の光軸が図3に示す入射光と反射光の光軸と一致するように配置するようにしたので、発光部44では光を効率良く照射するとともに、受光部45では反射光を効率良く電気信号に変換することができる。
なお、以上の第1の実施の形態では、図3に示すように、主走査方向に対して平行になるように発光部44と受光部45とを並置するようにしたが、これらを、例えば、主走査方向に直交する方向に並置するようにしてもよい。そのような配置方法によれば、図2において、光学センサ40の主走査方向の専有面積を狭めることができるので、キャリッジ31の主走査方向の幅を狭くすることができる。
また、以上の第1の実施の形態では、発光部44から出射された光をレンズシート10に直接照射するようにしたが、例えば、発光部44とレンズシート10の間にレンズを設け、当該レンズによってビームを絞るようにしてもよい。例えば、ビームが反射板22上で合焦するようにしてもよい。そのような方法によれば、各凸レンズ11の一部に光を絞ることにより、検出解像度を向上させることができる。
なお、以上の第1の実施の形態では、プラテン20にレンズシート10を直接載置する場合について説明したが、例えば、ある程度の厚みを有するトレイにレンズシート10を載置して、当該トレイとともに印刷装置内部に挿入して印刷することも可能である。その場合には、トレイのレンズシート10が載置される部分の全体(または一部)に、反射板を設けておけばよい。
また、以上の第1の実施の形態では、プラテン20と記録ヘッド32との距離は一定としたが、これらの距離をレンズシート10の厚さに応じて調整可能としてもよい。その場合、反射板22と光学センサ40との距離が変化するため、距離が大きい場合には反射光が受光部45に全て入射されないことも想定される。したがって、例えば、これらの距離を調整可能とする場合は、十分な受光量が得られる範囲に調整可能範囲を限定することが望ましい。あるいは、これらの距離に応じて発光部44と受光部45の光軸を調整可能とすることが望ましい。なお、光軸を調整する方法としては、例えば、光ディスク等に用いられている光ピックアップ機構と同等の機構を設けておき、反射板22と光学センサ40の距離に応じて、トラッキングサーボと同様の動作によって光軸を調整すればよい。
つぎに、本発明の第2の実施の形態について説明する。
以下、本発明の第2の実施の形態について、図15から図18に基づいて説明する。図15は、本実施の第2の形態に係る印刷装置の概略基本構成を示す斜視図である。なお、この図において、図1に示す第1の実施の形態と対応する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図15に示す第2の実施の形態では、図1に示す第1の実施の形態の場合と比較すると、キャリッジ31に付加されている光学センサ40が除外され、検出手段としての光学センサ70が新たに付加されている。また、レンズシート10の凸レンズ11の長手方向が主走査方向と同一の方向となるように配置されている。その他の構成は、図1の場合と同様である。
ここで、光学センサ70は、コの字形状の筐体71を有している。当該筐体71は、プラテン20の印刷装置のホームポジション側であって、レンズシート10の右側の端部がその内部を通過する位置に配置されている。なお、ホームポジション側に配置するのは、レンズシート10のサイズが異なる場合でも端部がその内部を確実に通過するようにするためである。すなわち、レンズシート10の一方の端部はホームポジション側に揃えて配置されるため、サイズが異なる場合でも一方の端部は筐体71の内部を確実に通過するからである。
筐体71の内部には、発光部44と受光部45が配置されている。図1の例では、発光部44は筐体の下側に配置され、図の上方向に向けて光を照射する。一方、受光部45は筐体の上側に配置され、図の下方向からの光を受光する。
図16は、光学センサ70とレンズシート10との関係を示す断面図(図15のY方向に切断した図)である。この図に示すように、発光部44から射出された光は、第1の面としての凸レンズ11に入射される。凸レンズ11は、入射された光をインク吸収層12に合焦するように機能するので、入射光はインク吸収層12の1点に集光された後、再度、拡散する。このとき、凸レンズ11の中央付近を通過した光(主光線)は、直進して受光部45に入射され、中央付近以外を通過した光(副光線)は、屈折されて受光部45には入射されない。したがって、発光部44の中心と凸レンズ11の中心とが一致した場合には、受光部45が受光する光の強度は最大となり、これらがずれるにしたがって強度が低下する。その結果、受光部45から出力される信号(アナログ信号)は、図14(B)の場合と同様になる。
ところで、従来の技術では、図17に示すように、インク吸収層12側から光が入射され、凸レンズ11側に受光部45が配置されていた。一方、本発明の第2の実施の形態では、図18に示すように、凸レンズ11側から光が入射され、インク吸収層12側に受光部45が配置されている。
図17に示す従来の技術では、インク吸収層12に入射された光の一部(この例では破線の光)が凸レンズ11を通過して平行光線となって受光部45に到達する。一方、第2の実施の形態の場合、凸レンズ11の全体に入射された光がインク吸収層12の一点に合焦された後に拡散される。したがって、入射される光束密度が同じである場合、出射される光束密度は第2の実施の形態の方が高くなる。このため、第2の実施の方が受光部45へ入射される光の強度が強くなるため、検出感度が高くなる。
また、図17に示す従来の技術では、インク吸収層12に入射された光は、乱反射されて様々な方向を向いた光となった後、凸レンズ11を通過していた。一方、本発明の第2の実施の形態では、凸レンズ11を通過した光は、集光されてインク吸収層12の一点に合焦した後、乱反射によって様々な方向を向いた光となる。検出感度を高めるためには、乱反射を引き起こすインク吸収層12と受光部45との距離は短い方が望ましい。従来の技術では、インク吸収層12と受光部45の間には凸レンズ11が配置されるため、これ以上距離を縮めることはできない。一方、本発明の第2の実施の形態の場合には、これらの間に配置されるのはインク透過層13であり、これは凸レンズ11に比較して薄いため、インク吸収層12と受光部45の間の距離を短くすることができる。その結果、乱反射による拡散の影響を少なくし、検出感度を向上させることができる。
つぎに、本発明の第2の実施の形態の動作について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
ホストコンピュータ200において、印刷画像を生成する手順については、前述の第1の実施の形態の場合と同様である。ただし、第2の実施の形態の場合では、レンズシート10の配置方向が異なるので、短冊状の画像が凸レンズ11の向きに合致するようにする必要がある。
ホストコンピュータ200から画像を印刷する指示がなされると、印刷装置では調整手段としてのCPU101がこれを受けて、前述の場合と同様に、バンドパスフィルタ111aの設定を行う。なお、第2の実施の形態の場合、搬送手段としての紙送りローラ50によってレンズシート10が搬送される速度は、キャリッジ31の動作速度に比較すると遅いので、受光部45から出力される信号の周波数も非常に低いものとなる(例えば、数Hz程度)。また、レンズの解像度による周波数の差も非常に少ないので(例えば、1Hz未満)、レンズ解像度に拘わらず、通過帯域を固定としてもよい。また、周波数が低いことから、バンドパスフィルタを用いずに、ローパスフィルタを用いるようにしてもよい。
バンドパスフィルタ111aの設定が終了すると、CPU101は、紙送りモータ51を駆動し、レンズシート10の先端部が光学センサ70に到達する位置まで搬送する。レンズシート10の先端部が光学センサ70に到達すると、受光部45からは凸レンズ11に対応したアナログ信号が出力される。当該アナログ信号は、前述の場合と同様にディジタル信号に変換され、CPU101に供給される。CPU101は、後述するように、供給されたディジタル信号を参照して、紙送り量を調整する制御を行う。
レンズシート10の先端部分が検出されると、CPU101は、ホストコンピュータ200から1ライン分の印刷データを受信する。そして、キャリッジモータ36を駆動しながら、印刷手段としての記録ヘッド32に印刷データを供給し、1ライン分の印刷を実行する。
1ライン分の印刷が完了すると、CPU101は、紙送りモータ51を駆動して紙送り制御を実行する。このとき、受光部45からは、凸レンズ11の形状に応じたアナログ信号が出力され、レンズ信号二値化回路101からは対応するディジタル信号が出力される。CPU101は、このディジタル信号と、紙送りモータ51の制御量とを比較することにより、レンズシート10の実際の解像度(レンズピッチ)を知ることができる。
このように、実際の解像度を知ることにより、誤差の累積により細分化画像がレンズ位置からずれて印刷することを防止できる。すなわち、レンズの公称の解像度が100lpiである場合に、実際の解像度が101lpiであるとすると、レンズ解像度を100lpiとみなして紙送りを実行していくと、紙送りのたびに1lpi分の誤差が蓄積されることになり、ついには誤差の蓄積により印刷位置に大きなずれを生じてしまう。そこで、ある程度誤差が蓄積された場合には、紙送り量を調整することにより、誤差の蓄積をリセットし、印字位置を正しい位置に調整することができる。
レンズシート10への印刷が完了すると、CPU101は、紙送りモータ51を駆動してレンズシート10を排出するとともに、レンズ信号二値化回路101等の動作を停止する。
なお、第2の実施の形態では、凸レンズ11と同程度の直径を有するビームを例に挙げて説明を行ったが、例えば、図4に示すような径の小さいビームを用いるようにすることも可能である。このようなビームを用いれば、隣接するレンズからの透過光が回り込むことを防止できるため、検出精度を向上させることが可能になる。
また、第2の実施の形態では、全てのノズルを用いて1走査ラインを印刷する場合について説明したが、全てのノズルを使用するとノズルの端部において誤差を生じる場合には、一部のノズル(例えば、給紙側の1行もしくはそれ以上の行のノズル)のみを用いて印刷するようにしてもよい。すなわち、記録ヘッド32のノズル間のピッチは固定であり、ノズル列は副走査方向にある程度の幅を有することから、例えば、給紙側では正常に印刷できても、下流側では誤差の蓄積によって正常に印刷できない場合がある。そのような場合には、印刷する行方向のノズル数を制限することによって、正常に印刷することができる。
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、凸レンズ11からの反射光に基づいて紙送り制御をするようにしたので、レンズと画像の位置を正確に調整することが可能になる。
また、本発明の第2の実施の形態では、凸レンズ11側に発光部44を設け、インク吸収層12側に受光部45を設けるようにしたので、従来の技術に比較して透過光の強度を強くすることができるので、凸レンズ11の位置を正確に検出することが可能になる。
なお、以上の各実施の形態は、一例であって、これ以外にも種々の変形実施態様が存在する。例えば、以上の各実施の形態では、発光部44から照射される光は、円形形状を有する場合を例に挙げて説明したが、例えば、凸レンズ11の長手方向に長軸を有する楕円形状を有するようにしてもよい。そのようなビームを用いることにより、反射光または透過光の光量を増加することができるので、検出感度を向上させることができる。
また、以上の各実施の形態では、発光部44が照射する光の波長については、詳細には説明していないが、例えば、インク吸収層12の透過性が高い波長(例えば、赤外線)等に設定することにより、検出精度を向上させることができる。
また、以上の各実施の形態では、受光部45は反射光または透過光をそのまま入射するようにしたが、例えば、発光部44と同一の波長の光のみを選択的に通過させるフィルタを通した光を入射するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、環境光の影響を少なくすることができる。
また、以上の実施の形態では、二値化回路111cにおいて、所定の閾値と比較することによりアナログ信号を二値化するようにしたので、閾値によってはディジタル信号のデューティーが50%にならない場合も想定される。そこで、増幅回路111bから出力される信号を反転し、これともとの信号を比較し、これらの交差点においてハイまたはローを切り替えるようにすれば、50%に近いデューティーの信号を簡易に得ることができる。
また、以上の各実施の形態は、凸レンズ11の長手方向が主走査方向と直交する場合の実施の形態(第1の実施の形態)と、平行する場合の実施の形態(第2の実施の形態)を別々の形態として説明したが、これらを1つの実施の形態としてもよい。すなわち、光学センサ40および光学センサ70の双方を具備するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、レンズシート10がどのような方向に向けて置かれた場合でも精度よく印刷を行うことができる。なお、その場合、従来の技術では、光学センサ40において、図13に示すように凸レンズ11の底部11bで反射光が強くなり、光学センサ70では頂部11aで透過光が強くなって検出される信号が異なるため、補正回路等を必要とした。しかし、本実施の形態では、双方共に頂部11aで光が強くなるので、補正回路が必要でなく、そのままこれらをレンズ信号二値化回路111に入力することが可能になるので、回路構成を簡略化できる。
また、以上の各実施の形態では、図9に示すようにレンズ信号二値化回路111としては、アナログ回路を使用するようにしたが、例えば、アナログ信号をA/D(Analog to Digital)変換器等でディジタル化した後に各種の処理を実行するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、例えば、バンドパスフィルタ111aの通過帯域を簡易に調整することができる。
また、以上の各実施の形態では、印刷装置はホストコンピュータ200に接続され、当該ホストコンピュータ200から印刷データを受信するようにした。しかしながら、例えば、画像の記憶手段、画像の編集手段、および、印刷データの生成手段等を有し、ホストコンピュータ200を接続しなくても印刷処理が可能ないわゆるスタンドアローンタイプの印刷装置に本発明を適用することも可能である。また、プリンタ(印刷装置)、スキャナ、ファクシミリ、および、コピー機が一体となったディジタル複合機に対しても本発明を適用可能である。
11 凸レンズ(レンズ),22 反射板(反射手段),32 記録ヘッド(印刷手段),40 光学センサ(検出手段),50 紙送りローラ(搬送手段の一部),51 紙送りモータ(搬送手段の一部),70 光学センサ(検出手段),101 CPU(調整手段)