以下、本発明のプリンタの一実施の形態について、図1から図25に基づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、かかるインクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。また、例えばレーザ方式、昇華型熱転写方式、ドットインパクト方式等のインクジェット式以外のプリンタについても、本発明は適用可能である。
なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ30が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート12が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート12が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート12が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
また、以下の説明においては、括弧書きで表される各要素を順次説明する。なお、以下の説明においては、回動機構を備える構成(1)と、他の回動機構を備える構成(2)と、回動機構を備えない構成(3)とは、選択的な要素であり、(1)〜(3)のうち、いずれかのみを備えるのが原則であるが、全てを備える構成、またはいずれか2つを選択的に備える構成を採用しても良い。
<レンズシートについて>
最初に、印刷対象物および光学シートに対応するレンズシート12について説明する。図1に示すように、レンズシート12は、表面に位置するレンチキュラーレンズ12A(光学的手段に相当)と、このレンチキュラーレンズ12Aの裏面と接するインク吸収層12Bと、該レンズシート12の裏面に位置するインク透過層12Cとを具備している。これらのうち、レンチキュラーレンズ12Aは、一方向を長手とする複数のシリンドリカル凸レンズ(凸レンズ12A1)が、一定のピッチで並列配置された構成となっている。レンチキュラーレンズ12Aにおいては、それぞれの凸レンズ12A1を進行する光の焦点が、レンチキュラーレンズ12Aの裏面(インク吸収層12Bとの境界面Q)に位置するように、凸レンズ12A1の曲率が形成されている。
ここで、インク吸収層12Bは、コンテンツ配置部に相当するが、コンテンツ配置部を、レンチキュラーレンズ12Aに貼り合わせる専用紙、ロール状の紙等としても良い。なお、レンズシート12は、上述のインク吸収層12Bおよびインク透過層12Cを備えない構成を採用することも可能である。
なお、本実施の形態では、レンチキュラーレンズ12Aにおける凸レンズ12A1の並びのピッチとしては、後述するスケール81のラインパターンの並びのピッチの整数倍とするものがある。例えば、スケール81のラインパターンが1/180インチである場合、凸レンズ12A1のピッチは、30lpi(lens per inch;1インチ当たりの凸レンズ12A1の本数)、45lpi、60lpi、90lpi、180lpi(180dpiのパターンピッチのラインパターンを有するスケール81と比較して、1〜6の比を有するピッチ)とするものがある。しかしながら、凸レンズ12A1のピッチは、該例示には限られず、例えば100lpiのように、種々変更するようにしても良い。また、レンズシート12においては、通常は、製造誤差等によって、上述の凸レンズ12A1のピッチから、若干ずれが生じている。
また、インク透過層12Cは、ノズルから吐出されたインク滴が最初に付着する部分であり、該付着したインクが透過していく部分である。このインク透過層12Cは、例えば酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)等を材質として形成されている。また、インク吸収層12Bは、インク透過層12Cを透過したインクを吸収/固着させる部位である。このインク吸収層12Bは、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材質として形成されている。なお、インク吸収層12B/インク透過層12Cは、共に白色であるが、本実施の形態では、インク透過層12Cの方が、インク吸収層12Bよりも、白色の度合いが強くなっている。
また、図2に示すように、本実施の形態におけるレンズシート12は、その外観が矩形状を為していると共に、該矩形状の外観を構成するレンズシート12の縁部12Eが、凸レンズ12A1の長手方向(遷移方向に相当)に対して傾斜する状態に設けられている。すなわち、凸レンズ12A1の長手方向は、矩形状のレンズシート12の外枠(縁部12E)に対して、傾斜する状態に設けられている。なお、凸レンズ12A1の縁部12Eに対する傾斜角度θは、本実施の形態では、10度程度に設けられている。しかしながら、傾斜角度は10度に限られるものではなく、5度〜15度の範囲内であれば、視差に対応する視差画像の視認性が良好となる。
<プリンタの回動機構に係る構成(1)について>
図3他に示すように、プリンタ10は、キャリッジモータ(CRモータ22)によってキャリッジ30を主走査方向に往復動させるキャリッジ機構20、PFモータ41(紙送りモータに対応)によってレンズシート12を搬送する用紙搬送機構40等があり、その他、図3に示す制御部100が存在する。
ここで、キャリッジ機構20について説明する。キャリッジ機構20は、図3および図8他に示すように、キャリッジ30を具備している。また、キャリッジ機構20は、キャリッジ30を摺動可能に保持するキャリッジ軸21と、キャリッジモータ(CRモータ22)と、このCRモータ22に取り付けられている歯車プーリ23と、無端のベルト24と、歯車プーリ23との間にこの無端のベルト24を張設する従動プーリ25と、回動機構26と、リニアエンコーダ80と、を備えている。
ここで、図4および図5に示すように、本実施の形態においては、キャリッジ機構20には、支持軸に対応するキャリッジ軸21を回動させるための回動機構26が設けられている。この回動機構26は、スライド板261と、ガイドピン265と、ラックギヤ266と、ピニオンギヤ267と、回転軸268と、ギヤ輪列269と、を主要な構成としている。
キャリッジ軸21の一端側21aは、スライド部材に対応するスライド板261に支持されて、紙送り方向にスライド可能に設けられている。これに対して、キャリッジ軸21の他端側21b(図3参照)は、不図示のシャーシに対して固定的に設けられる支持フレーム28の側板28aに対して、スライドしない状態で設けられている。それにより、キャリッジ軸21は、その他端側21bを支点として回動可能に設けられている。なお、キャリッジ軸21の回動角度は、上述した凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応していて、紙送り方向に垂直かつプラテン50に平行を為す方向に対して、10度を中心として、最大5〜15度の範囲内で回動可能に設けられている。
なお、一端側21aは、円弧を描くように回動するが、このとき、一端側21aは、他端側21bに対して、若干近接する向きに移動する。しかしながら、上述のように回動する角度が小さく、近接する向きへの移動量が大きくないため、スライド板261側に近接する向きへの移動を吸収する遊びを与えておけば、その移動量を吸収可能となる。なお、近接する向きへの移動量が大きい場合には、別途の構成が必要となる。
また、スライド板261の上端には、最も大面積のプレート部261aから、プリンタ10の長手方向の他端側261bに向かって折り曲げられる立設部262が設けられている。この立設部262のうち、折り曲げの先端側には、係止フック263が設けられている。係止フック263は、その先端が、該係止フック263の付け根よりもプレート部261aに向かうように折れ曲がっている。この係止フック263には、リニアスケール81の係止孔81aに係止される。かかる係止により、リニアスケール81は、張設状態で支持可能となる。すなわち、図4および図5に示す回動機構26では、キャリッジ軸21と共に、リニアスケール81もスライド可能に設けられているため、キャリッジ軸21の回動が為された後でも、キャリッジ30(印刷ヘッド32)の位置検出を精度良く行うことが可能となっている。
また、プレート部261aには、スライドガイド手段の一部として機能するガイド長孔264が設けられている。本実施の形態では、ガイド長孔264は例えば一対設けられていて、2つのガイド長孔264は、互いに一定の距離だけ離間している。このガイド長孔264には、ガイドピン265が差し込まれる。ガイドピン265は、側板28aから、プリンタ10の長手方向の他端側に向かって突出する部材である。かかるガイドピン265のガイド長孔264への差し込みにより、スライド板261は、紙送り方向に沿ってスライド可能となっている。なお、スライド板261のスライドを安定的とするためには、いずれかのガイド長孔264には、例えば2つのガイドピン265が差し込まれる構成とするのが好ましい。
また、プレート部261aのうち、下方側の縁部には、ラックギヤ266が設けられている。このラックギヤ266は、ピニオンギヤ267と噛み合っている。このピニオンギヤ267は、回転軸268を介して側板の外側のギヤ輪列269の最終段のギヤと同期回転するように設けられている。それにより、ピニオンギヤ267には、ギヤ輪列269を介して、不図示のモータ(駆動手段に対応)の駆動力が与えられる。
なお、スライド板261をスライドさせる(キャリッジ軸21を回動させる)ためのモータは、PFモータ41等の他のモータとは独立して設けられる構成としても良く、また、PFモータ41からの駆動力を分配する構成を採用しても良い。また、回動機構26は、スライド板261のスライドと共に、ラックギヤ266とピニオンギヤ267の噛み合いによって実現しているが、ラックギヤ266とピニオンギヤ267の代わりにカム機構を設ける等によって、回動機構26を実現する等、その他の構成を用いるようにしても良い。
<プリンタの他の回動機構に係る構成(2)について>
上述のような、キャリッジ軸21の一端側を回動させる回動機構26以外の他の回動機構を採用しても良い。この例として、図6および図7に示すような、キャリッジ軸21に対して、印刷ヘッド32を回動させる構成がある。この場合も、印刷ヘッド32が回動する角度は、上述した凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応していて、紙送り方向に垂直かつプラテン50に平行を為す方向に対して、10度を中心として、最大5〜15度の範囲内で回動可能に設けられている。なお、かかる回動機構を、回動機構27a,27bとして、以下に説明する。
図6に示す回動機構27aは、印刷ヘッド32がキャリッジ30に対して回動する構成となっている。かかる構成を採用する場合、例えば、キャリッジ30の下方に回転台271を設け、この回転台271に印刷ヘッド32が取り付けられる構成がある。この場合、不図示のモータ(駆動手段に対応)およびギヤをキャリッジ30に搭載することにより、キャリッジ30に対する印刷ヘッド32の回動が実現される。なお、キャリッジ30に対して印刷ヘッド32が回転する場合、カートリッジ31と印刷ヘッド32との間を例えば柔軟性を有する材質により形成されるチューブで連結し、印刷ヘッド32の回動に対応させつつインクを供給する等、回転に配慮する必要がある。
また、図7に示す回動機構27bは、キャリッジ軸21に対する取付部位272に対して、キャリッジ30ごと回動する構成となっている。回動機構27bは、キャリッジ軸21に対してスライドさせることが可能な取付部位272を有している。この取付部位272の背面には、ベルト24の一部が固定されている。また、取付部位272は、軸孔273を有していて、この軸孔273にキャリッジ軸21が挿通されている。また、取付部位272には、上下方向に向かう軸挿通孔275を有する軸受274が設けられている。また、キャリッジ30には、軸受274に対応して、上下方向に沿う回動軸276が設けられる。この回動軸276は、キャリッジ30に対して固定的に設けられる。それにより、キャリッジ30が取付部位272に対して回動する構成が実現される。また、例えば取付部位272には、モータ277(駆動手段に対応)が配置されると共に、これら取付部位272および回動軸276には、ギヤ機構278が設けられる。それにより、モータ277を駆動させると、キャリッジ30の回動が実現される。
以上のようにすれば、印刷ヘッド32が、キャリッジ軸21に対して、相対的に傾斜する状態となり、その傾斜角度は、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応する状態とすることができる。なお、図4および図5に示される構成では、キャリッジ軸21の回動によって、主走査方向自体が回動している。これに対して、図6および図7に示される構成では、印刷ヘッド32が回動するものの、主走査方向自体は、従来のプリンタ10と同様に、回動しない状態となっている。このため、後述するように、印刷ヘッド32を駆動してインク滴を吐出させるための、印刷データは、図4および図5に示す回動機構26を採用する場合と、図6および図7に示す回動機構27a,27bを採用する場合とでは、異なっている。
<回動機構を備えない構成(3)について>
また、上述の図4〜図7に示すような、回動機構26,27を備える構成以外に、この回動機構26,27を備えずに、図1および図2に示すレンズシート12に対する印刷を行うことも、当然可能である。しかしながら、回動機構26,27を備えない場合には、後述する図15等に示す処理フローにおいて、専用の処理フローが実施される。
<プリンタのその他各種構成について>
図3等に示すように、プラテン50に対向する状態で、キャリッジ30が設けられている。キャリッジ30には、図3等に示すように、各色のインクカートリッジ31が着脱可能に搭載されている。また、キャリッジ30の下部には、印刷ヘッド32が設けられている。図9に示すように、印刷ヘッド32には、ノズル33aが列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列33を形成している。なお、本実施の形態では、ノズル列33は、例えば180個のノズル33aから構成されており、このうち、180番目のノズル33aが給紙側、1番目のノズル33aが排紙側に位置している。
また、キャリッジ30の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列33には、ノズル33a毎に、ピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズル33aからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、印刷ヘッド32は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等、その他の方式を用いるようにしても良い。
また、図8等に示すように、プリンタ10は、用紙搬送機構40を具備している。用紙搬送機構40は、レンズシート12等を搬送するためのPFモータ41(図3参照)、および普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ42を具備している。また、給紙ローラ42よりも排紙側には、レンズシート12を搬送/挟持するためのPFローラ対43が設けられている。なお、PFローラ対43のうち、PF駆動ローラ43aは、PFモータ41からの駆動力が伝達され、レンズシート12の1ステップずつの搬送を可能としている。
また、PFローラ対43の排紙側には、プラテン50および上述の印刷ヘッド32が上下に対向する様に配設されている。プラテン50は、PFローラ対43によって印刷ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート12を、下方側から支持する。また、プラテン50よりも排紙側には、上述のPFローラ対43と同様の、排紙ローラ対44が設けられている。この排紙ローラ対44のうち、排紙駆動ローラ44aには、PF駆動ローラ43aと共に、PFモータ41からの駆動力が伝達される。
また、プリンタ10のうち、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ42の下方側には、開口部45が設けられている。開口部45は、レンズシート12等の折り曲げ困難な印刷対象物を、プリンタ10の後端側で通過させるための開口部分である。なお、レンズシート12は、単体で開口部45を通過する以外に、トレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
また、図1および図11等に示すように、キャリッジ30の下面とプラテン50の間の部位には、レンズシート12における凸レンズ12A1のレンズピッチを検出する、光学検出手段に対応するレンズ検出センサ60が配置されている。レンズ検出センサ60は、レンズ検出手段に対応し、光の投受光方式(透過方式)のセンサであって、図1および図11等に示すように、発光部61と、受光部62とを有している。発光部61は、プラテン50側(下方側)に設けられ、受光部62は、キャリッジ30側(上方側)に設けられている。
これらのうち、発光部61は、多数の発光ダイオード(LED;light emitting diode)から構成されている。なお、LEDとしては、可視光または赤外光等の種々の波長の光を発するものがあるが、眩しさを抑える場合、赤外光を発する赤外LEDを用いるのが好ましい。また、発光部61は、プラテン50の後端側に存在する凹陥部51に設けられている。凹陥部51は、プラテン50の他の部分よりも窪んでいる部分である。この凹陥部51は、光源群611(光源612)が拡散板613に対して一定の距離だけ離間可能となるように、一定以上の深さ寸法を有する状態に設けられている。
また、受光部62は、例えば図9示すように、キャリッジ30の下面に取り付けられていて、しかも、主走査方向において、例えばホームポジションから離間する部位、かつ副走査方向において給紙側に取り付けられている。この受光部62は、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード等のような多数の受光素子から構成されている。また、受光部62は、光の出射部位にスリットを有していて、光の拡散を抑える構成を採用するのが好ましい。しかしながら、このような構成を採用せずに、光が拡散する構成を採用しても良い。
なお、発光部61が直下方式を採用する場合、その構成は、発光ダイオードを多数並べるものには限られず、主走査方向を長手とするライン状光源を用いるようにしても良い。ライン状光源としては、具体的には、陰極蛍光ランプ(CFL;Cathode Fluorescent Lamp)、または冷陰極蛍光ランプ(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)を用いることが可能である。また、発光部61は、その他、可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を用いるようにしても良い。
また、発光部としては、直下方式を採用せずに、エッジライト方式の構成を採用するようにしても良い。この場合、発光部は、主走査方向の端部に配置される光源と、光源の光を主走査方向側に向けて反射するリフレクタと、光が内部を進行すると共に主走査方向を長手とする導光板と、導光板の下面側、側面側および導光板の長手方向の他端側に取り付けられ光を反射する反射部材と、上面側に向かって出射される光を拡散させる拡散フィルムと、導光板の下面に配置され光を拡散させる反射ドットと、を有する状態となる。
また、レンズシート12とノズル33aとの間の距離PGを測定すべく、キャリッジ30の下面には、レンズ検出センサ60以外に、ギャップ検出センサ70が存在するのが好ましい。図12は、距離PGを検出するギャップ検出センサ70の説明図である。図12に示すように、ギャップ検出センサ70は、発光部71と、2つの受光部(第1受光部72a及び第2受光部72b)とを有する。発光部71は、発光ダイオードを有し、レンズシート12に光を照射する。第1受光部72aおよび第2受光部72bは、受光した光量に応じた電気信号を出力する受光素子をそれぞれ有する。なお、第2受光部72bは、第1受光部72aと比較して、発光部71から遠い位置に設けられている。
発光部71から発せられた光は、レンズシート12に照射されると共に、反射される。反射された光は、上述の受光素子に入射され、この受光素子において入射した光量に応じた電気信号に変換される。ここで、距離PGが小さい場合、レンズシート12によって反射された光は、主に第1受光部72aに入射されるが、第2受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第1受光部72aの出力信号は、第2受光部72bの出力信号よりも大きくなる。
一方、距離PGが大きい場合、反射された光は、主に第2受光部72bに入射され、第1受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第2受光部72bの出力信号は、第1受光部72aの出力信号よりも大きくなる。このため、第1受光部72aと第2受光部72bの出力信号の比と距離PGとの関係を予め求めておけば、該出力信号の比に基づいて、レンズシート12等に対応する距離PGを検出することが可能である。この場合、受光部72a,72bの出力信号の比と距離PGとの関係に関する情報をテーブルとしてROM102や不揮発性メモリ104に記憶しておくのが良い。
このような出力信号の検出を、キャリッジ30を主走査方向へ駆動させつつ行う。この駆動に際して、後述するリニアエンコーダ80の位置検出と対応させることにより、レンズシート12の主走査方向における距離PGを検出することが可能となる。
なお、ギャップ検出センサ70は、上述のレンズ検出センサ60と兼用可能である。この場合、発光部61の光軸が傾斜するように配置し、距離PGに応じて第1受光部72aと第2受光部72bとの間における出力信号の比が変化するようにすれば、ギャップ検出センサ70とレンズ検出センサ60とを兼用させることが可能となる。
また、図3等に示すように、キャリッジ機構20には、位置検出手段に対応するリニアエンコーダ80が設けられている。リニアエンコーダ80は、黒色の印刷部分と光を透過する透明部分とからなるラインパターンが繰り返されるスケール81と、スケール81に向けて光を出力すると共に、該スケール81から反射される光を、電気的な信号(エンコーダ信号;以下、ENC信号とする。)に変換して制御部100に送信するリニアセンサ82とを有している。
次に、信号形成部90の構成について説明する。図13に示すように、信号形成部90は、フィルタ91と、アンプ(AMP)92と、2値化処理部93とを具備している。これらのうち、フィルタ91は、信号線94の一端側と接続されている。信号線94の他端側は、上述した受光部62(受光素子623)に接続されている。このため、受光部62で発生したアナログ信号は、この信号線94を介してフィルタ91に伝達されるが、フィルタ91では、アナログ信号(図14参照)のうち所定の帯域以外の周波数成分が除去される。それにより、図14に示すようなデジタル信号(レンズ信号;検出信号に相当)が生成される。
また、フィルタ91を通過した信号は、AMP92に入力され、所定の電圧等(一例として、40倍等)に増幅される。かかる増幅が為された信号は、続いて2値化処理部93に入力され、該入力された信号をしきい値を超えたか否かで、HレベルまたはLレベルの、2値の信号(2値化信号)とする。この状態で、後述する制御部100に2値化信号を入力し、H/Lの信号の切り替わりタイミングを検出することにより、レンズシート12のレンズピッチが計測可能となる。
次に、制御部100について説明する。制御部100は、各種の制御を行う部分であって、制御手段および判断部に対応する部分であり、不図示の紙幅検出のためのPWセンサ、レンズ検出センサ60、ギャップ検出センサ70、リニアセンサ82、後述するロータリエンコーダ132、プリンタ10の電源をオン/オフする電源SW等)の各出力信号が入力される。図3に示すように、制御部100は、CPU101、各種のプログラムを記憶するROM102、データを一時的に蓄えるRAM103、不揮発性メモリ(PROM)104、ASIC105、ヘッドドライバ106等を具備していて、これらがバス107を介して接続されている。そして、これらの協働、または特有の処理を行う回路を追加する等によって、以下に述べる処理フローが実現される。
なお、以下の図15、図17および図19における処理フローを実行する構成は、ハードウエア的に実現されても良く、またソフトウエア的に実現されても良い。
また、図3に示すように、プリンタ10は、インターフェース131を具備している。このインターフェース131を介して、コンピュータ130に接続されている。また、プリンタ10は、ロータリエンコーダ132を具備している。ロータリエンコーダ132は、上述のリニアエンコーダ80とは異なり、スケール132aが円盤状に設けられている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダ80と同様となっている。
<印刷を行うための基本的な処理フローについて>
以上のような構成を用いて、プリンタ10を作動させる場合のうち、印刷を行うための、基本的な処理フローについて、図15に基づいて説明する。
プリンタ10の電源オン状態で、最初にレンズシート12の凸レンズ12A1が、傾斜しているか否かを判断する(S10;情報獲得工程に対応)。かかる判断を行うことにより、後述する印刷データが、凸レンズ12A1の傾斜に対応させて形成すべきか(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に対して傾斜しているか)、または通常のレンズシート12への印刷のように凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿うかが定まる。この判断において、Yesの場合(凸レンズ12A1の長手が傾斜している場合)、S20に進行する。また、Noの場合(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿っている場合)、後述するS50に進行する。
上述のS10においてYesの場合、続いて、傾斜角度(図2における傾斜角度θ)がどれぐらいか、算出する処理を行う(S20)。かかる算出は、例えば図16に示すように、地点Aと、この地点Aに対して副走査方向に沿って所定距離だけ離間している地点Bとの間の距離Qを計測する。また、副走査方向に垂直な凸レンズ12A1の横断方向に沿う直線上のA地点に対する右隣または左隣のいずれか(図16では右隣)に存在する谷部分までの距離ALと、上述の横断方向上の地点Bに対する右隣または左隣のいずれか(図16では右隣)に存在する谷部分までの距離BLとを計測する。そして、これら距離AL,BLおよび距離Qの計測が終了した後に、続いて、傾斜角度θの計算を行う。θを度で表す場合、傾斜角度θは、θ=ATAN(Δ/Q)×180/πによって求められる。なお、Δは、距離BLと距離ALとの間の差分である。以上のようにして、凸レンズ12A1の傾斜角度θが算出される。
上述の傾斜角度の算出の後に、傾斜角度θの情報を反映させて、印刷すべき印刷データを作成する処理を行う(S30;以下、S50まで印刷工程に対応)。この処理により、印刷データが作成されると、印刷を実行する(S40)。また、上述のS10の判断において、Noの場合(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿っている場合)、凸レンズ12A1が傾斜していない状態の、印刷データを作成する処理を行う(S50)。
なお、S50においては、レンズ解像度(凸レンズ12A1の本数)と、印刷解像度、印刷サイズに応じて、解像度変換が為され複数枚の原画像データが合成された後の視認画像データにおける画像サイズの計算(通常は、原画像データの圧縮となる)が行われる。次に、個々の凸レンズ12A1内の画素数Rを求める。画素数Rは、個々の凸レンズ12A1内に打てるドット数に対応する。次に、個々の凸レンズ12A1内における、1画像データ当たりの画素数(ドット数)Lを求める。この画素数Lは、ドット数Lを、原画像データの枚数で除算することにより、求められる。以上のようにして、解像度変換がなされ、かかる解像度変換を、原画像データのそれぞれに対して行う。そして、定められている順番(視認角度順)に、解像度変換後の細分化された圧縮原画像データを並べて配置する。それにより、1つの凸レンズ12A1内に配置される、短冊状の細分化画像データが作成される。
また、作成された細分化画像データを、凸レンズ12A1の短手方向の並びの順に配置することにより、複数の原画像データの情報が反映された、視認画像データが作成される。なお、この後に、色変換処理を実行し、視認画像データのR,G,B系で表現される色成分が、プリンタ10で印刷/表現可能なシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)系の色成分に変換される。さらに、色変換が為された視認画像データに対して、ハーフトーン処理が行われる。ここで、ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施の形態では256階調)をプリンタ10が画素毎に表現可能な階調値に減色する処理をいう。ここで、「減色」とは、色を表現する階調の数を減らすことをいう。なお、具体的には、記録率テーブルを参照して、例えば、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、および「大ドットの形成」の4階調への減色を行う。なお、かかるハーフトーン処理においては、誤差拡散法、ディザ法といった手法を用いて、ドットの分散処理が行われる。
さらに、ハーフトーン処理が為された画像データから、印刷データを生成する処理が実行される。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータであり、分散テーブルの分散データを参照して作成される。以上が、本発明に係る印刷を行う際の、基本的な処理フローである。
<凸レンズ12A1が傾斜している場合の印刷データ作成の処理フローについて>
続いて、上述のS30の判断において、凸レンズ12A1が傾斜していると判断された場合(Yesの場合)に、印刷データを作成するための処理について、図17に基づいて説明する。
最初に、作成される印刷データが、連続画素配置に対応するか、または離間画素配置に対応するかを判断する(S301)。ここで、連続画素配置とは、図18に示すように、各視差に対応する、原画像データを圧縮して得られる圧縮原画像データを構成する画素データが、凸レンズ12A1の長手方向に沿って連続的(列状)に配置される状態をいう。これに対して、離間画素配置とは、各視差に対応する上述の圧縮原画像データを構成する画素が、凸レンズ12A1の長手方向に沿って配置されるものの、連続的(列状)ではなく、他の画素データを挟んで離間した状態で配置される状態をいう。
なお、印刷データが連続画素配置に対応させるか、または離間画素配置に対応させるかは、原画像データの数(視差数)によって判断するようにしても良い。しかしながら、例えば画質等、他の要素によって判断するようにしても良い。
ここで、離間画素配置の方が、図18に示す連続画素配置よりも、視認可能(配置可能)な原画像データの枚数が多くなる。なお、離間画素配置/連続画素配置においては、共に視認する際のレンズシート12の回転は基準方向L(この方向が、基準軸方向および回転軸方向に相当)を基準としていて、ユーザの目も、基準方向Lを基準としている。ここで、離間画素配置においては、例えば画素1と画素2とでは、基準方向Lに対して異なった角度となっていて、凸レンズ12A1の表面に対する角度も異なっている。このため、ユーザの目には、レンズシート12の傾ける角度に応じて、視認される画素が切り替えられる。
なお、離間画素配置では、レンズシート12を連続的に回転させる場合、視認される画素は、例えばマトリクス状の配置の画素が、連続的に切り替えられる。また、本実施の形態では、ユーザがレンズシート12を通して視認する絵柄は、立体画像に対応している。そのため、各画素は近似しており、上述のような離間画素配置を採用しても、ユーザは良好に視認可能となっている。
上述のS301の判断において、Yesの場合(連続画素配置に対応する場合)、続いて各圧縮原画像データの回転処理を行う(S302)。この回転処理においては、上述のS20において検出された、傾斜角度θの分だけ、各圧縮原画像データを回転させる処理を行う。次に、連続画素配置に対応する一次画像データを作成する(S303)。この場合、回転処理が為された各圧縮原画像データに対して、紙送り方向に対応する方向に沿って、凸レンズ12A1のレンズピッチに対応させて、細分化する。なお、細分化に先立って、本実施の形態では、解像度変換処理を行い、原画像データに対して、画像データの圧縮を経て、各圧縮原画像データを得る。そして、この圧縮原画像データから短冊状の細分化画像データを作成する。次に、短冊状の細分化画像データを、視認時に切り替わる順番で配置する。このようにして、一次画像データが得られる。
続いて、S303で作成された一次画像データに対して、先のS302とは逆向きに、同一の回転角度θだけ回転させる、逆回転処理を行う(S304;このとき作成される画像データを、視差画像データとする。)。この逆回転により、それぞれの原画像データに対応する細分化画像データの境界が、凸レンズ12A1の長手に沿う状態となる。
上述のS304で作成された視差画像データに対して、上述したのと同様のハーフトーン処理を行う(S305)。なお、ハーフトーン処理は、複数の圧縮原画像データの個々に対し行う等、S304よりも前の段階で行うようにしても良い。また、ハーフトーン処理が為された画像データから、上述したのと同様の印刷データを生成する処理が実行される(S306)。
また、上述のS301において、離間画素配置に対応すると判断される場合、次に、印刷を行うプリンタ10が、斜め吐出に対応しているか否か(上述の回動機構26,27を備えるか否か、または回動機構26,27を備える場合には、それが使用可能な状態であるか否か)を判断する(S310)。ここで、斜め吐出とは、ノズル列33が紙送り方向に沿わなく、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応する角度だけ傾斜している状態をいう。
また、上述のS310の判断において、斜め吐出に対応していると判断される場合、続いて、斜め吐出に対応する、視差画像データを作成する(S311)。なお、かかる視差画像データが作成されると、続いて上述のS305に示すハーフトーン処理に移行する。
また、上述のS310において、プリンタ10が斜め吐出に対応していないと判断される場合(Noの場合)、上述したS302と同様の、各圧縮原画像データの回転処理を行う(S312)。この回転処理においても、凸レンズ12A1の傾斜角度θの分だけ、各圧縮原画像データを回転させる処理を行う。
S312の次に、離間画素配置に対応する一次画像データを作成する(S313)。このとき、上述のS303と同様に、回転処理が為された各圧縮原画像データに対して、紙送り方向に対応する方向に沿って、凸レンズ12A1のレンズピッチに対応させて、細分化する。なお、細分化の処理に先立ち、離間画素配置に対応させて、紙送り方向においても、各原画像データを圧縮する処理を行う。この場合、凸レンズ12A1の長手方向に沿って配置される細分化画像データの個数に応じて、各原画像データが圧縮される。そして、かかる圧縮が終了した後に、圧縮後の各圧縮原画像データを、凸レンズ12A1の本数と、それぞれの圧縮原画像データにおける画素データを1つずつ並べてマトリクスを形成することにより、マトリクス状の細分化画像データが形成される。このようにして、一次画像データが作成される。
かかる一次画像データが作成された後に、当該一次画像データに対して、先のS312とは逆向きに、同一の回転角度だけ回転させる、逆回転処理を行う(S314;このとき作成される画像データは、視認画像データに対応)。この逆回転により、それぞれの原画像データに対応する細分化画像データの境界が、凸レンズ12A1の長手に沿う状態となる。
なお、かかる視認画像データが作成されると、続いて上述のS305に示すハーフトーン処理に移行する。以上が、本発明に係る印刷を行う際の、印刷データを作成するための処理フローである。
<印刷を実行する際の処理フローについて>
続いて、上述のS40の判断において、凸レンズ12A1が傾斜していると判断された場合(Yesの場合)に、印刷を実行するための処理について、図19に基づいて説明する。
印刷を実行する場合、まず、視認画像データを基とする印刷データのピッチ調整を行う(S401)。このピッチ調整においては、インク滴の吐出に対応するドットのデータが、凸レンズ12A1の谷間の部分に存在する場合に、いずれかの凸レンズ12A1側にそのドットのデータが含まれるように調整する。この場合、ドットのデータが跨る割合に応じて、いずれかの凸レンズ12A1側に含まれるように、調整する。次に、レンズシート12の縁部12Eを基準として、インク滴を吐出するか否かを判断する(S402)。この判断において、縁部12Eを基準としてインク滴を吐出する場合(Yesの場合)には、ENC信号に基づいて、インク滴を吐出する設定とする(S403)。ここで、ENC信号を基準とする場合とは、レンズピッチが正確である等、一定の条件を満たす場合である。
また、上述のS402の判断において、縁部12Eを基準とせずに、インク滴を吐出する場合(Noの場合)には、レンズ信号を基準として、インク滴を吐出する設定とする(S404)。この場合、上述のレンズ検出センサ60を用いて、レンズシート12のレンズピッチを検出しながら、印刷を実行する状態となる。
また、上述のS403、S404における設定が終了した後に、続いて、上述のS310と同様に、プリンタ10が斜め吐出に対応しているか否か(上述の回動機構26,27を備えるか否か、または回動機構26,27を備える場合には、それが使用可能な状態であるか否か)を判断する(S405)。この判断において、プリンタ10が斜め吐出に対応していると判断される場合(Yesの場合)、続いて、斜め吐出に対応する設定とする(S406)。また、上述のS405において、プリンタ10が斜め吐出に対応していないと判断される場合(Noの場合)、斜め吐出ではなく、通常の吐出に対応する設定とする(S407)。
そして、上述のS406およびS407での設定が為された後に、各設定に対応する印刷を実行する(S408)。
ここで、各設定に対応する印刷の例を、述べる。例えば、図4等に示すように、キャリッジ軸21の一端側21aをスライドさせることが可能な回動機構26を具備する場合、図20に示すように、印刷に際しては、紙送り方向に対して、印刷ヘッド32の走査方向が直交しておらず、しかも、レンズシート12の凸レンズ12A1の長手が、ノズル列33の長手と一致する方向となっている。この場合、インク滴の吐出のタイミングは、レンズ信号を基準とする状態となる。そのため、レンズピッチに応じて、インク滴の吐出タイミングを調整しながら、印刷を実行することになる。
なお、図20に示す状態においては、ノズル列33の長手が紙送り方向に沿う状態における紙送り量をLとすると、紙送り量P=Lcosθとなる。かかる紙送り量でPFモータ41を駆動すると共に、レンズ信号をトリガとしてインク滴を吐出すれば、図2に示すようなレンズシート12に対して、良好な印刷を実行することができる。なお、図20において、レンズピッチが正確である場合であって、レンズ信号とENC信号との整合性が良好である等の場合には、縁部12Eを検出した後に、ENC信号を基準として、印刷を実行するようにしても良い。
また、例えば図6および図7に示すように、キャリッジ軸21は固定的であると共に、このキャリッジ軸21に対して印刷ヘッド32が回動する回動機構27a,27bを備える場合、図20に示す場合とは異なり、凸レンズ12A1内に配列されるインク滴のドットは、正方形状とはならなく、図21に示すような平行四辺形を形成する状態でドットがレンズシート12に付着する。このため、インク滴の吐出に対応する印刷データを作成する場合、かかる平行四辺形状のドット配置に対応させるように、印刷データを作成する。この場合、レンズ信号のエッジを基準としてドットを形成する場合、印刷ヘッド32の走査方向に沿って数ドット進行すると、図21におけるドット配置では、図20におけるドット配置よりも一つだけ紙送り方向において隣に位置する画素データに対応させて、インク滴を吐出する状態となる。
なお、図21に示す場合、印刷ヘッド32の主走査方向は、凸レンズ12A1の幅方向に対して、若干傾斜しているため、主走査方向に沿う凸レンズ12A1の横断距離は、凸レンズ12A1の幅方向よりも長い。そのため、印刷ヘッド32は、1つの凸レンズ12A1につき、打てるドットの数を多くすることができる。
さらに、回動機構26,27を具備せずに、印刷ヘッド32の制御駆動のみで印刷を行う場合において、個々のノズル33aにおいてインク吐出のタイミングを独自に調整可能であれば、図22において示されたような、平行四辺形状のドット配置で印刷を実行することができる。この場合も、インク吐出は、レンズ信号をトリガとして吐出する状態となる。
また、回動機構26,27を有しない構成において、個々のノズル33aのインク吐出のタイミングを独自に調整することが困難である場合、印刷ヘッド32を駆動させてインク滴の吐出によりドットが形成されると、図23に示すように、隣り合う凸レンズ12A1の間の谷部分(境界部分)に、ドットが位置する場合が生じる。かかる場合、隣り合う凸レンズ12A1の谷部分に差し掛かるドットは、差し掛かっている割合の多い凸レンズ12A1内の画素データに対応させて、印刷を実行するようにする。この場合、例えばノズル列33のうち、一端側からN番目までは隣り合ううちの一方の凸レンズ12A1側の画素データに対応するドット(図23における凸レンズL1側)、N+1番目から他端側までは他方の凸レンズ12A1の画像データに対応するドット(図23における凸レンズL2側)が形成される。なお、ドットの中心点は、いずれかの凸レンズL1側、または凸レンズL2側に位置するため、ドットの中心点が属する位置によって、いずれかの凸レンズL1側、または凸レンズL2側の画素データに対応するようにしても良い。
なお、レンズ信号を基準として、インク滴を吐出する場合、例えば図24に示すように、レンズシート12の縁部12E側で、レンズ信号のパルス幅が狭い領域が生じる。このとき、当該狭いパルス幅に、通常の幅の凸レンズ12A1の1本分の吐出信号が存在すると、インク滴を吐出した場合に、ドットが詰め込まれる状態となり、視認される絵柄も、横方向に圧縮された状態となるか、またはインク滴の混じり合いにより、にじんだような状態となり、好ましくない。この場合、図25に示すように、縁部12E側に対応するレンズ信号を、他のタイミングにおけるレンズ信号と同等のパルス幅となるように、信号の補完処理を行うようにしても良い。それにより、ドットが詰め込まれる状態が解消され、他の部分と同程度の印刷品質を確保できる。また、一定数のドットを打たないように、吐出信号を間引くようにしても良い。
このような構成のレンズシート12、プリンタ10および印刷方法によれば、レンズシート12の基準方向Lは、凸レンズ12A1の長手に対して傾斜角度θで傾斜している。このため、レンズシート12を回転させると、凸レンズ12A1の表面の角度は、凸レンズ12A1を横切る方向のみならず、レンズシート12の基準方向Lに沿っても変化する。それにより、視差画像を構成する圧縮原画像データを、横切る方向に直線状に配置するのみならず、平面状に配置することができ、複数の視差に対応する視差画像を視認する場合、視差画像の切り替わりが滑らかになり、視認するユーザに自然な印象を与えることが可能となる。
また、レンズシート12は、その外観が矩形状を呈すると共に、縁部12Eは基準方向Lに平行に設けられている。それにより、レンズシート12の基準方向Lが縁部12Eに平行となり、ユーザにとって、視認時の基準方向Lが分かり易い。また、プリンタ10における紙送り等の動作を行い易くなる。
また、上述の傾斜角度θは、5度〜15度の範囲内で傾斜している。このため、レンズシート12の基準方向Lを基準に回転させた場合に、視認画像における画像の切り替わりが良好となり、特に視認画像が立体画像に対応する場合、立体画像が滑らかに切り替わり、ユーザにとって視認性が良好となる。
また、上述のプリンタ10のように、地点A、地点Bを通るように印刷ヘッド32を走査させる等によって、レンズシート12が、通常のレンズシートであるか、または凸レンズ12A1が傾斜している状態となっているかが判断されるため、傾斜していると判断された場合でも、通常のレンズシートと区別して、良好に印刷を行わせることができる。すなわち、凸レンズ12A1が傾斜していて、このレンズピッチごとに視認画像データに対応するインク滴を吐出させ、かつ斜め印刷に対応させることができる。
なお、図16に示すように、2点においてレンズピッチの計測を行う場合、凸レンズ12A1の長手方向の一方向に対する傾斜角度θを適切に算出することが可能となり、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮して、適切な位置にインク滴を吐出させることが可能となる。それにより、凸レンズ12Aの傾斜角度を考慮せずにインク滴を吐出させる場合のように、印刷画像(印刷コンテンツに相当)がずれたり、曲がったりするのを防止することができる。
さらに、図22に示すような、印刷ヘッド32からのインク滴の吐出を、それぞれのノズル33a毎に制御可能な場合、それぞれのノズル毎に、インク滴の吐出のタイミングを調整することができる。このため、凸レンズ12A1の長手が紙送り方向に対して傾斜しているレンズシート12においても、各凸レンズ12A1のレンズピッチ毎に、視差に対応する分だけの原画像データが視認画像データに存在し、該傾斜に対応するように、各ノズル33aからインク吐出のタイミングをずらしながら印刷を実行可能となる。それにより、印刷ヘッド32を回動させる回動機構26,27等を有しなくても、凸レンズ12A1の傾斜に対応する印刷を良好に行わせることが可能となる。
また、レンズ信号は、凸レンズ12A1の幅に応じてパルス幅が異なるパルス信号であり、さらに、制御部100は、レンズ信号の検出により、レンズシート12の縁部12E付近の凸レンズ12A1の幅が狭いと判断すると、他の部分と同様のパルス幅となるように、補完処理を行っている。それにより、狭いパルス幅のレンズ信号に、複数の視差の視差画像データに対応する印刷データ(ドット)が詰め込まれる状態が解消され、他の部分と同程度の印刷品質を確保できる。
さらに、図4〜図7に示されるように、回動機構26,27を具備する場合、当該回動機構26,27によって印刷ヘッド32を凸レンズ12A1の長手に沿わせるように回転させることができる。それにより、図2に示されるようなレンズシート12においても、印刷ヘッド32から吐出されるインク滴が凸レンズ12A1の間に跨らない状態で、印刷実行可能となる。それにより、視差画像が印刷されると、視差毎の画像の切り替わりが良好となる等、印刷品質を向上させることが可能となる。
また、図4および図5に示される回動機構26においては、キャリッジ軸21の一端側21aは、モータの駆動力およびスライド板261を介してスライド可能に設けられている。このため、キャリッジ軸21を、他端側21bを支点として回動させることが可能となり、該回動によって印刷ヘッド32を凸レンズ12A1の傾斜具合に合わせて傾斜させることができる。それにより、良好な印刷が実現可能となる。加えて、この回動機構26では、図20に示すように、印刷ヘッド32の傾斜角度のみならず、印刷ヘッド32のスライド方向も傾斜する。そのため、インク滴の吐出によりレンズシート12に形成されるドットは、凸レンズ12A1が傾斜していない通常のレンズシートに対する印刷と同様となる。それにより、レンズシート12に対する印刷品質を一層良好にすることが可能となる。
さらに、図6および図7に示される回動機構27a,27bにおいては、キャリッジ軸21は回動しないものの、印刷ヘッド32を回動させることができる。それにより、印刷ヘッド32は、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応させて回動可能となり、インク滴の吐出により形成されるドットは、隣り合う凸レンズ12A1の間に存在せずに、凸レンズ12A1の谷間等に沿わせることができる。そのため、レンズシート12に対する印刷品質を良好にすることが可能となる。
また、図18に示すように、連続画素配置を採用する場合、凸レンズ12A1を横切る方向に沿って、レンズピッチに対応させて細分化された複数の圧縮原画像データから、視差画像データが構成される。この場合、凸レンズ12A1が基準方向Lに対して傾斜している場合でも、視差毎の画像の切り替わりが良好となる視差画像を、レンズシート12に対して印刷可能となる。また、主走査方向が凸レンズ12A1の長手方向に対して斜めになるため、この主走査方向に沿う距離が若干伸び、着弾させるドット数を増やすことができるため、印刷品質を向上させることが可能となる。
さらに、離間画素配置を採用する場合、複数の原画像データから形成される視差画像データは、圧縮および細分化後に、マトリクス状に配置される。それにより、凸レンズ12A1を横切る方向のみに細分化された圧縮原画像データが配置される、図18に示す場合と比較して、より多数の画素データ(圧縮および細分化された圧縮画像データ)を配置可能となる。それによって、例えばユーザに視認されるのが立体画像である場合、運動視差に対応させることが可能となり、ユーザは、より自然な状態の立体画像を認識することが可能となる。
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、レンズシート12への印刷に際して、専用のトレイを用いるようにしても良い。トレイを用いる場合、該トレイには、レンズシート12の大きさに対応する嵌め込み部が存在し、この嵌め込み部にレンズシート12を嵌め込むと、凸レンズ12A1の長手は紙送り方向に沿うものの、レンズシートの縁部は、紙送り方向に傾斜する状態となる。しかしながら、かかるトレイを用いて印刷を行うと、回動機構26,27等の特有の機構を設けなくても、印刷品質を確保することが可能となる。
また、上述の実施の形態においては、レンズ検出センサ60は、ホームポジションから離間する部位に、1つのみ設けられている。しかしながら、レンズ検出センサ60の個数は1つには限られず、キャリッジ30に複数個設けるようにしても良い。例えば、キャリッジ30の下面のうち、主走査方向の両端にそれぞれレンズ検出センサ60を取り付ける場合、キャリッジ30の往復動のそれぞれにおいて、印刷よりも先にレンズピッチを計測することが可能となり、レンズシート12に対する印刷を往復動のそれぞれで実行可能となる。
また、上述の実施の形態では、ENC信号およびレンズ信号は、パルス信号であると共に、エンコーダ周期情報/レンズ周期情報は、これらのポジティブエッジ/ネガティブエッジとなっている。しかしながら、ENC信号およびレンズ信号がアナログ信号であっても良い。これらがアナログ信号である場合、電圧の所定のしきい値を、エンコーダ周期情報/レンズ周期情報とすれば、カウント値等を算出することが可能となる。
また、上述の実施の形態では、レンズシート12は、凸レンズ12A1が多数並べられる構成となっているが、レンズシートはこれには限られず、凹レンズが多数並べられる構成のレンズシートであっても良い。なお、この場合には、上述の各処理は、ポジティブエッジではなく、ネガティブエッジを検出したときを基準とするのが好ましい。
また、上述の実施の形態では、プリンタ10は、印刷のみを行うものには限られず、コピー/ファックス/スキャナ機能も兼ねている複合的なプリンタであっても良い。また、上述の実施の形態においては、レンズシート12に対して印刷画像を直接印刷する、直描型の場合について述べている。しかしながら、別途印刷された印刷物をレンズシートに貼り合わせる、分離型の場合についても、本発明を適用することは勿論可能である。
10…プリンタ、12…レンズシート(光学シートに相当)、12A1…凸レンズ(光学的手段に相当)、20…キャリッジ機構、21…キャリッジ軸(支持軸に対応)、26,27…回動機構、30…キャリッジ、50…プラテン、60…レンズ検出センサ(光学検出手段に相当)、61…発光部、62…受光部、80…リニアエンコーダ、81…スケール、100…制御部(制御手段および判断手段に対応)、261…スライド板(スライド部材に対応)、277…モータ(駆動手段に対応)