以下、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置を備えた自動車の制御装置の構成例について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置を備えた自動車の制御装置のシステム構成を示すスケルトン図である。
駆動力源であるエンジン7、エンジン7の回転数を計測するエンジン回転数センサ(図示しない)、エンジントルクを調節する電子制御スロットル(図示しない)、吸入空気量に見合う燃料量を噴射するための燃料噴射装置(図示しない)が設けられており、エンジン制御ユニット101により、吸入空気量、燃料量、点火時期等を操作することで、エンジン7のトルクを高精度に制御することができるようになっている。燃料噴射装置には、燃料が吸気ポートに噴射される吸気ポート噴射方式あるいはシリンダ内に直接噴射される筒内噴射方式があるが、エンジンに要求される運転域(エンジントルク、エンジン回転数で決定される領域)を比較して燃費が低減でき、かつ排気性能が良い方式のエンジンを用いるのが有利である。駆動力源としては、ガソリンエンジンのみならず、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジンや、電動機などでも良い。
自動変速機50には、入力軸クラッチ8、変速機入力軸41、変速機出力軸43、第1ドライブギア1、第2ドライブギア2、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23、回転センサ31、回転センサ33、が設けられており、入力軸クラッチ8を係合、開放することで、エンジン7のトルクを変速機入力軸41に伝達、遮断することが可能である。入力軸クラッチ8には、一般に乾式単板クラッチが用いられるが、乾式多板クラッチや湿式多板クラッチなど、すべての摩擦伝達機構を用いることが可能である。入力軸クラッチ8の押付け力(入力軸クラッチトルク)の制御には、電気によって駆動する作動装置(アクチュエータ)61が用いられており、入力軸クラッチアクチュエータ61に設けられたモータ(図示しない)の電流を制御することで、入力軸クラッチ8の伝達トルクの制御を行っている。
入力軸41には、第1ドライブギア1、第2ドライブギア2、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5が設けられている。第1ドライブギア1、第2ドライブギア2は変速機入力軸41に固定されており、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5は、変速機入力軸41に対して回転自在に設けられている。また、変速機入力軸41の回転数である、入力軸回転数を検出する手段として、回転センサ31が設けられている。
一方、変速機出力軸43には、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15が設けられている。第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12は変速機出力軸43に対して回転自在に設けられており、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15は変速機出力軸43に固定されている。
また、変速機出力軸43の回転数を検出する手段として、回転センサ33が設けられている。
これらのギアの中で、第1ドライブギア1と、第1ドリブンギア11とが、また、第2ドライブギア2と、第2ドリブンギア12とが、また、第3ドライブギア3と、第3ドリブンギア13とが、また、第4ドライブギア4と、第4ドリブンギア14とが、さらに、第5ドライブギア5と、第5ドリブンギア15とが、それぞれ噛合している。
第1噛合い伝達機構21は、第1ドリブンギア11と第2ドリブンギア12の間に設けられている。第1噛合い伝達機構21は、第1ドリブンギア11を出力軸43に係合させたり、第2ドリブンギア12を出力軸43に係合させる。
したがって、入力軸41へ入力された回転トルクは、第1噛合い伝達機構21を介して、第1ドライブギア1−第1ドリブンギア11−出力軸43へ、または、第2ドライブギア2−第2ドリブンギア12−出力軸43へと伝達される。
また、第2噛合い伝達機構22は、第3ドライブギア3と第4ドライブギア4の間に設けられている。第2噛合い伝達機構22は、第3ドライブギア3を入力軸41に係合させたり、第4ドライブギア4を入力軸41に係合させる。したがって、入力軸41へ入力された回転トルクは、第2噛合い伝達機構22を介して、第3ドライブギア3−第3ドリブンギア13−出力軸43へ、または第4ドライブギア4−第4ドリブンギア14−出力軸43へと伝達される。
さらに、第3噛合い伝達機構23は、第5ドライブギア5の横に設けられている。第3噛合い伝達機構23は、第5ドライブギア5を入力軸41に係合させる。したがって、変速機入力軸41へ入力された回転トルクは、第3噛合い伝達機構23を介して、第5ドライブギア5−第5ドリブンギア15−出力軸43へと伝達される。
ここで、噛合い伝達機構21、22、23は、摩擦面を備え、摩擦面を押しつけることによって回転数を同期させて噛合いを行う同期噛合い式を用いている。
変速機入力軸41の回転トルクを、変速機出力軸43に伝達するためには、第1噛合い伝達機構21、または第2噛合い伝達機構22、または第3噛合い伝達機構23のうちいずれか一つを変速機入力軸41もしくは変速機出力軸43の軸方向に移動させ、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5のいずれか一つと係合する必要がある。作動装置であるセレクトアクチュエータ63によって、シフト/セレクト機構24を動作させ、第1噛合い伝達機構21、または第2噛合い伝達機構22、または第3噛合い伝達機構23のいずれを移動させるかを選択し、作動装置であるシフトアクチュエータ62によって、シフト/セレクト機構24を動作させることによって、第1噛合い伝達機構21、または第2噛合い伝達機構22、または第3噛合い伝達機構23のうち、選択されたいずれか一つの噛合い伝達機構の位置を移動し、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5のいずれか一つに係合させ、変速機入力軸41の回転トルクを、第1噛合い伝達機構21、または第2噛合い伝達機構22、または第3噛合い伝達機構23のいずれか一つを介して変速機出力軸43へと伝達することができる。
このように第1ドライブギア1、第2ドライブギア2、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5から、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15を介して変速機出力軸43に伝達された変速機入力軸41の回転トルクは、変速機出力軸43に連結されたディファレンシャルギア(図示しない)を介して車軸(図示しない)に伝えられる。
入力軸クラッチ8の伝達トルクを制御するための作動機構である入力軸クラッチアクチュエータ61は、制御装置である変速機制御ユニット100によって、入力軸クラッチアクチュエータ61に設けられたモータ(図示しない)の電流を制御することで、入力軸クラッチ8の伝達トルクの制御を行っている。なお、入力軸クラッチアクチュエータ61には、入力軸クラッチのストロークを計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63に設けられたモータ(図示しない)の電流を制御することで、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示しない)のストローク位置(セレクト位置)を制御し、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれを移動するか選択している。なお、セレクトアクチュエータ63にはセレクト位置を計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。
また、変速機制御ユニット100によって、シフトアクチュエータ62に設けられたモータ(図示しない)の電流を制御することで、シフト/セレクト機構24に設けられたコントロールアーム(図示しない)の回転力、回転位置を制御し、セレクトアクチュエータ63によって選択された、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかを動作させる荷重、もしくは第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかのストローク位置(シフト位置)を制御できるようになっている。なお、シフトアクチュエータ62にはシフト位置を計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。
また、変速機50には、変速機50内部の潤滑油の温度を計測する油温センサ(図示しない)が設けられている。
また、レバー装置106から、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ等のシフトレバー位置を示すレンジ位置信号が変速機制御ユニット100に入力される。
変速機制御ユニット100、エンジン制御ユニット101は、通信手段103によって相互に情報を送受信する。
変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63を制御してセレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21を移動することを選択し、シフトアクチュエータ62を制御してシフト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21と第1ドリブンギア11が噛合して第1速段となる。
変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63を制御してセレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21を移動することを選択し、シフトアクチュエータ62を制御してシフト位置を制御し、第1噛合い伝達機構21と第2ドリブンギア12が噛合して第2速段となる。
変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63を制御してセレクト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22を移動することを選択し、シフトアクチュエータ62を制御してシフト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22と第3ドライブギア3が噛合して第3速段となる。
変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63を制御してセレクト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22を移動することを選択し、シフトアクチュエータ62を制御してシフト位置を制御し、第2噛合い伝達機構22と第4ドライブギア4が噛合して第4速段となる。
変速機制御ユニット100によって、セレクトアクチュエータ63を制御してセレクト位置を制御し、第3噛合い伝達機構23を移動することを選択し、シフトアクチュエータ62を制御してシフト位置を制御し、第3噛合い伝達機構23と第5ドライブギア5が噛合して第5速段となる。
なお、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23を動作させるシフト/セレクト機構24としては、コントロールシャフト、コントロールアームおよびシフトフォークなどによって構成しても良いし、ドラム式など、噛合い伝達機構21、22、23を移動させるための他の機構を用いても構成可能である。また、各アクチュエータに備えられるモータは、磁石が固定されて巻線が回転される、いわゆる直流モータによって構成しても良いし、巻線が固定して磁石が回転される、いわゆる永久磁石同期モータでも良く、種々のモータが適用可能である。
また、入力軸クラッチアクチュエータ61、シフトアクチュエータ62、セレクトアクチュエータ63は、本実施例においてはモータを備えた電動アクチュエータとして構成しているが、油圧電磁弁、および油圧ピストン、および油圧シリンダを備えた油圧アクチュエータとして構成しても良い。
次に、図2を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置によって制御される変速機に用いられる同期噛合い機構の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置によって制御される変速機に用いられる同期噛合い機構の拡大断面図である。図2は、図1における第1同期噛合い機構21、変速機出力軸43、第1ドリブンギア11の部分を抜粋して拡大して示している。
同期噛合い機構21は、スリーブ21aと、キー21bと、ハブ21cと、リング21dとを備えている。スリーブ21aは、出力軸43と一体的に回転するハブ21cに対してスプライン嵌合されている。スリーブ21aに押付け荷重が加わると、キー21bがスリーブ21aとともに移動し、その端面でリング21dを遊転ギアである第1ドリブンギア11のコーン部に押し付け、リング21dと第1ドリブンギア11間のコーン面に摩擦が働き始める。
スリーブ21aの更なる移動により、キー21bとの噛合が外れると、スリーブ21aが直接リング21dを押す。すると、リング21dと第1ドリブンギア11間のコーン面に摩擦が働くことによって、第1ドライブギア1の回転がスリーブ21aの回転と一致(同期)する。
すると、リング21dは回転自在になり、スリーブ21aの移動を妨げなくなる。その結果、スリーブ21aはリング21dを通過して第1ドリブンギア11のドグ歯11aに完全に噛み合い、シフト動作が完了する。
本実施形態では、同期噛合い機構のコーン面が一つであるシングルコーンタイプを用いているが、コーン面が二つあるダブルコーンタイプ、三つあるトリプルコーンタイプなどがあり、少ない押付け荷重で大きなトルクを伝達可能なように複数のコーン面のある大容量のものを用いるのが有利である。また本実施形態では、同期噛合い機構には、イナーシャロックキー式を用いているが、他にもピン式、サーボ式など種々あり、いずれの方式を用いても構成可能である。
次に、図3を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置における変速機制御ユニット100と、エンジン制御ユニット101との間の入出力信号関係について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置における変速機制御ユニットとエンジン制御ユニットとの間の入出力信号関係を示すブロック図である。
変速機制御ユニット100は、入力部100i、出力部100o、コンピュータ100cを備えたコントロールユニットとして構成される。同様に、エンジン制御ユニット101も、入力部101i、出力部101o、コンピュータ101cを備えたコントロールユニットとして構成される。変速機制御ユニット100からエンジン制御ユニット101に、通信手段103を用いてエンジントルク指令値TTeが送信され、エンジン制御ユニット101はTTeを実現するように、エンジン7の吸入空気量、燃料量、点火時期等(図示しない)を制御する。また、エンジン制御ユニット101内には、変速機への入力トルクとなるエンジントルクの検出手段(図示しない)が備えられ、エンジン制御ユニット101によってエンジン7の回転数Ne、エンジン7が発生したエンジントルクTeを検出し、通信手段103を用いて変速機制御ユニット100に送信する。エンジントルク検出手段には、トルクセンサを用いるか、またはインジェクタの噴射パルス幅や吸気管内の圧力とエンジン回転数等など、エンジンのパラメータによる推定手段としても良い。
変速機制御ユニット100は、所望の入力軸クラッチ伝達トルクを実現するために、入力軸クラッチアクチュエータ61のクラッチモータ61bへ印加する電圧V1_sta、V2_staを調整することで、クラッチモータ61bの電流を制御し、入力軸クラッチ8を係合、解放する。
また、変速機制御ユニット100は、所望のセレクト位置を実現するために、セレクトアクチュエータ63のセレクトモータ63bへ印加する電圧V1_sel、V2_selを調整することで、セレクトモータ63bの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれを噛合させるかを選択する。
また、変速機制御ユニット100は、所望のシフト荷重(第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかを押付ける荷重)、もしくは所望のシフト位置(第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかのスリーブの位置)を実現するために、シフトアクチュエータ62のシフトモータ62bへ印加する電圧V1_sft、V2_sftを調整することで、シフトモータ62bの電流を制御し、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかの噛合、解放を行う。
なお、変速機制御ユニット100には、電流検出回路(図示しない)が設けられており、各モータの電流が目標電流に追従するよう電圧出力を変更して、各モータの回転トルクを制御している。
また、変速機制御ユニット100には回転センサ31、回転センサ33から、入力軸回転数Ni、出力軸回転数Noがそれぞれ入力され、また、レバー装置106から、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ等のシフトレバー位置を示すレンジ位置信号RngPosが入力され、アップスイッチ106aから、所謂マニュアルモードのアップシフト要求信号UpSwが入力され、ダウンスイッチ106bから、マニュアルモードのダウンシフト要求信号DnSwが入力され、アクセル開度センサ301からアクセルペダル踏み込み量Apsが入力され、ブレーキが踏み込まれているか否かを検出するブレーキスイッチ302からのON/OFF信号Brkが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、変速機50内部の潤滑油の温度を計測する油温センサ303から潤滑油温TEMPlubが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、入力軸クラッチのストロークを示すクラッチ位置RPstaが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかのスリーブストローク位置を示すシフト位置RPsftが入力される。
また、変速機制御ユニット100には、第1噛合い伝達機構21、第2噛合い伝達機構22、第3噛合い伝達機構23のいずれかを選択するためのコントロールアームのストローク位置を示すセレクト位置RPselが入力される。
変速機制御ユニット100は、例えば、運転者がシフトレンジをDレンジ等にしてアクセルペダルを踏み込んだときは運転者に発進、加速の意志があると判断し、また、運転者がブレーキペダルを踏み込込んだときは運転者に減速、停止の意志があると判断し、運転者の意図を実現するように、エンジントルク指令値TTe、入力軸クラッチ目標伝達トルクTTsを設定する。
また、出力軸回転数Noから算出する車速Vspとアクセルペダル踏み込み量Apsから目標とする変速段を設定し、設定した変速段への変速動作を実行するよう、エンジントルク指令値TTe、入力軸クラッチ目標伝達トルクTTs、目標シフト荷重TFsft、目標セレクト位置TPselを設定する。
また、変速機制御ユニット100は、設定された入力軸クラッチ目標伝達トルクTTs、目標シフト荷重TFsft、目標セレクト位置TPselを実現するよう、クラッチモータ61b、シフトモータ62b、セレクトモータ63bへ印加する電圧V1_sta、V2_sta、V1_sel、V2_sel、V1_sft、V2_sftを出力する。
次に、図4〜図9を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置によるシフトアクチュエータ62の具体的な制御内容について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフトアクチュエータ62の全体の制御内容の概略を示すフローチャートである。
制御フローは、ステップ401(フィードフォワード荷重演算)と、ステップ402(目標シフト位置演算)と、ステップ403(フィードバック荷重演算)と、ステップ404(目標シフト荷重演算)と、から構成される。
図4の内容は、変速機制御ユニット100のコンピュータ100cにプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。すなわち、以下のステップ401〜404の処理は、変速機制御ユニット100によって実行される。
ステップ401(フィードフォワード荷重演算)の詳細は図5および図6に、ステップ402(目標シフト位置演算)の詳細は図7に、ステップ403(フィードバック荷重演算)の詳細は図8にそれぞれ示す。ステップ404では、ステップ401(フィードフォワード荷重演算)によって算出するフィードフォワード荷重TFsftFFと、ステップ403(フィードバック荷重演算)によって算出するフィードバック荷重TFsftFBを加算することによって目標シフト荷重TFsftを算出する。
変速機制御ユニット100は、ステップ404によって設定された目標シフト荷重TFsftを実現するよう、シフトモータ62bへ印加する電圧V1_sft、V2_sftを出力する。
なお、本実施例においては、シフト位置は中立位置(ニュートラル)を0として、1速または3速または5速側を正、2速または4速または後進側を負で定義している。また、1速または3速または5速のいずれかを締結するようにスリーブを制御する場合のシフト荷重の符号を正、2速または4速または後進のいずれかを締結するようにスリーブを制御する場合のシフト荷重の符号を負で定義している。
次に、図5及び図6を用いて、図4のステップ401(フィードフォワード荷重演算)の詳細について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフトアクチュエータの制御内容の内、フィードフォワード荷重演算の詳細を示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフトアクチュエータの制御内容の内、フィードフォワード荷重演算に用いるテーブル関数の説明図である。
ステップ501において、ギアの締結が必要であるか否かの判定を行い、ギア締結動作を行わない場合はステップ504へ進み、シフト締結荷重上限値TFsftFFL、シフト締結荷重基本値TFsftFFB、フィードフォワード荷重TFsftFFを全て0として終了する。ギア締結動作を実行する場合はステップ502へ進む。
ステップ502では、ギア締結動作が完了しているか否かの判定を行い、ギア締結が完了している場合はステップ504へ進み、シフト締結荷重上限値TFsftFFL、シフト締結荷重基本値TFsftFFB、フィードフォワード荷重TFsftFFを全て0として終了する。ギア締結動作が完了していない場合はステップ503へ進む。
ステップ503では、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれかであるか否かの判定を行い、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれかである場合はステップ505へ進み、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれでもない場合はステップ506へ進む。
ステップ505では、アクセルペダル踏みこみ量Apsおよびシフト位置RPsftの絶対値|RPsft|を入力とした関数flmt135によってシフト締結荷重上限値TFsftFFLを設定する。ここで、関数flmt135は、図6(A)に示すように、シフト位置の絶対値|RPsft|が小さい(ニュートラル付近)場合は比較的大きな値とし、シフト位置の絶対値|RPsft|が大きい(噛合い位置付近)場合は比較的小さい値とすることが望ましい。
また、アクセルペダル踏みこみ量Apsおよびギア締結動作の経過時間TmrONを入力とした関数fbase135によってシフト締結荷重基本値TFsftFFBを設定する。さらに、シフト締結荷重上限値TFsftFFLと、シフト締結荷重基本値TFsftFFBのうち小さい値をフィードフォワード荷重TFsftFFとして算出して終了する。ここで、関数fbase135は、図6(B)に示すように、ギア締結動作の経過時間TmrONが小さい(ギア締結動作を開始直後)は比較的小さい値とし、ギア締結動作の経過時間TmrONが大きくなるにつれて除々に大きな値となるように設定することが望ましい。
以上のように構成することで、フィードフォワード荷重TFsftFFはギア締結を開始したときは比較的小さな値で、締結動作が進むにつれて大きな値となって回転を同期させるための荷重を発生し、さらにストロークしてシフト位置RPsftが噛合い位置に近づくと再び小さい値となり、噛合い位置でシフトショックが発生することを防止できる。
ステップ506では、アクセルペダル踏みこみ量Apsおよびシフト位置RPsftの絶対値|RPsft|を入力とした関数flmt24Rによってシフト締結荷重上限値TFsftFFLを設定する。また、アクセルペダル踏みこみ量Apsおよびギア締結動作の経過時間TmrONを入力とした関数fbase24Rによってシフト締結荷重基本値TFsftFFBを設定する。さらに、シフト締結荷重上限値TFsftFFLと、シフト締結荷重基本値TFsftFFBのうち大きい値をフィードフォワード荷重TFsftFFとして算出して終了する。ここで、関数flmt24Rは、図6(C)に示すように、シフト位置の絶対値|RPsft|が小さい(ニュートラル付近)場合は比較的小さい(負側に大きい)値とし、シフト位置の絶対値|RPsft|が大きい(噛合い位置付近)場合は比較的大きい(負側に小さい)値とすることが望ましい。また、関数fbase24Rは、図6(D)に示すように、ギア締結動作の経過時間TmrONが小さい(ギア締結動作を開始直後)は比較的大きい(負側に小さい)値とし、ギア締結動作の経過時間TmrONが大きくなるにつれて除々に小さい(負側に大きい)値となるように設定することが望ましい。以上のように構成することで、フィードフォワード荷重TFsftFFはギア締結を開始したときは比較的大きい(負側に小さい)値で、締結動作が進むにつれて小さい(負側に大きい)値となって回転を同期させるための荷重を発生し、さらにストロークしてシフト位置RPsftが噛合い位置に近づくと再び大きい(負側に小さい)値となり、噛合い位置でシフトショックが発生することを防止できる。
なお、本実施例においては、ステップ503において、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれかであるか否かの判定を行い、判定にしたがってステップ505、またはステップ506のいずれかを実行するように構成しているが、ステップ503の判定内容を締結ギア位置を判定する内容とし、ステップ505、ステップ506を締結するギア位置に応じて細分化し、締結するギア位置に応じてフィードフォワード荷重TFsftFFを算出するように構成しても良い。またさらには、レンジ位置信号RngPosが非駆動レンジ(Pレンジ、Nレンジ)から駆動レンジ(Rレンジ、Dレンジ等)に切り替えたシーン(レンジセレクト時)や、駆動レンジの中でも、Dレンジの場合や、所謂マニュアルモードの場合等の状況に応じて細分化するようにステップ503やステップ505、またはステップ506を構成しても良い。
次に、図7を用いて、図4のステップ402(目標シフト位置演算)の詳細について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフトアクチュエータの制御内容の内、目標シフト位置演算の詳細を示すフローチャートである。
ステップ701において、休止状態か否か(ギアの締結/解放動作が必要であるか否か)の判定を行い、休止状態である場合(ギアの締結/解放動作を実行しない場合)はステップ711へ進み、目標シフト位置TPsftにシフト位置RPsftを代入して終了する。休止状態ではない場合はステップ702に進む。
ステップ702ではギアの操作が解放動作であるか否かの判定を行い、解放動作である場合はステップ712に進み、解放動作時の目標シフト位置TPsft算出処理を実行して終了する。解放動作ではない場合(締結動作の場合)はステップ703へ進む。
ステップ703では、ギアの締結動作を開始した時点のシフト位置RPsftを、締結開始時位置RPsft_onSTとして算出する。締結開始時位置RPsft_onSTの更新はギアの締結動作を開始した時点の1回のみ行い、それ以降は更新しない。
ステップ704では、同期噛合い機構のスリーブがリングを押し、リングと遊転ギアのコーン面に摩擦が働くシフト位置(ボーク位置)の目標値tTPbalkを設定する。目標当接位置tTPbalkは、変速段(1速〜5速ギア、後進ギア)毎にそれぞれ設定することが望ましく、またさらにはボーク位置の学習機能を備え、学習によって随時更新することが望ましい。なお、目標当接位置tTPbalkは、実際のボーク位置よりも噛合い位置よりに設定することが望ましい。
ステップ705では、ギアの締結動作を開始してから、目標ボーク位置まで、目標シフト位置を移動させる目標移動時間tTMbalkを設定する。目標移動時間tTMbalkは、ギア(1速〜5速ギア、後進ギア)毎にそれぞれ設定することが望ましく、またさらには、シフトモータ62bの温度等、シフトアクチュエータ62の状態に応じて調整することが望ましい。シフトアクチュエータ62を油圧アクチュエータで構成する場合は油温によって調整することが望ましい。また、締結開始時位置RPsft_onSTと、目標当接位置tTPbalkの差分によって調整することが望ましい。また、車両の運転状態に応じて、応答性重視や、ショック低減重視のような調整が可能なように、駆動力源であるエンジン7のトルク、もしくはアクセルペダル踏み込み量Apsによっても調整可能な構成とすることが望ましい。
ステップ706では、ギアの締結動作を開始してからの経過時間tを算出する。締結経過時間tは、ステップ707での演算のため、上限を目標移動時間tTMbalkで制限する。
ステップ707では、目標シフト位置の基本値TPsft0を算出する。ステップ707では、ステップ703からステップ706にて算出した各パラメータを用いて、目標シフト位置の基本値TPsft0が、締結開始時位置RPsft_onSTから目標当接位置tTPbalkまで、目標移動時間tTMbalkで変化するように算出する。具体的には、TPsft0=RPsft_onST×(tTMbalk−t)÷tTMbalk+tTPbalk×t÷tTMbalkとして算出する。このように構成することで、図7の処理が、変速機制御ユニット100のコンピュータ100cによって、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行されることで、ギアの締結動作を開始した後に、目標シフト位置基本値TPsft0が、締結開始時位置RPsft_onSTから目標当接位置tTPbalkまで、目標移動時間tTMbalkで変化する。
ステップ708では、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれかであるか否かの判定を行い、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれかである場合はステップ709へ進み、締結するギアの位置が1速または3速または5速のいずれでもない場合はステップ710へ進む。
ステップ709では、目標シフト位置基本値TPsft0と、シフト位置RPsftのうち大きい値を目標シフト位置TPsftとして算出して終了する。
ステップ710では、目標シフト位置基本値TPsft0と、シフト位置RPsftのうち小さい値を目標シフト位置TPsftとして算出して終了する。
なお、本実施例においては、ステップ709、ステップ710にて目標シフト位置基本値TPsft0と、シフト位置RPsftの大小に応じて目標シフト位置TPsftを算出する構成としているが、目標とする噛合い位置を設定し、同期噛合い機構のスリーブと遊転ギアの回転が一致(同期)したことを判定する同期完了判定を設け、同期完了判定した後に、目標シフト位置TPsftを目標シフト位置基本値TPsft0から目標噛合い位置まで速やかに変化させるように構成しても良い。
次に、図8を用いて、図4のステップ403(フィードバック荷重演算)の詳細について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフトアクチュエータの制御内容の内、フィードバック荷重演算の詳細を示すフローチャートである。
ステップ801において、休止状態か否か(ギアの締結/解放動作が必要であるか否か)の判定を行い、休止状態である場合(ギアの締結/解放動作を実行しない場合)はステップ808へ進み、フィードバック荷重TFsftFBを0とするとともに、位置偏差積分値EPsftIを0として終了する。休止状態ではない場合はステップ802に進む。
ステップ802では、ギアの操作が解放動作であるか否かの判定を行い、解放動作である場合はステップ809に進み、解放動作時のフィードバック荷重TFsftFB算出処理を実行して終了する。解放動作ではない場合(締結動作の場合)はステップ803へ進む。
ステップ803では、シフト位置をフィードバック制御するための比例ゲインKpSFT、積分ゲインKiSFT、微分ゲインKdSFTを算出する。比例ゲインKpSFT、積分ゲインKiSFT、微分ゲインKdSFTはシフト位置RPsftによって調整可能な構成とすることが望ましく、特に微分補正ゲインKdSFTは、シフト位置RPsftが噛合い位置に近づくにつれて小さい値となるように設定することが望ましい。なお、比例ゲインKpSFT、積分ゲインKiSFT、微分ゲインKdSFTは、車両の運転状態に応じて、応答性重視や、ショック低減重視のような調整が可能なように、駆動力源であるエンジン7のトルク、もしくはアクセルペダル踏み込み量Apsによっても調整可能な構成とすることが望ましい。またさらには、レンジ位置信号RngPosが非駆動レンジ(Pレンジ、Nレンジ)から駆動レンジ(Rレンジ、Dレンジ等)に切り替えたシーン(レンジセレクト時)や、駆動レンジの中でも、Dレンジの場合や、所謂マニュアルモードの場合等の状況に応じて細分化するよう構成しても良い。
ステップ804では、目標シフト位置TPsftとシフト位置RPsftの偏差EPsft、位置偏差EPsftを元に算出する位置偏差積分値EPsftI、位置偏差微分値EPsftDを算出する。
ステップ805では、ステップ803で設定したゲインと、ステップ804の算出結果を用いて、比例補正値DpSFT、積分補正値DiSFT、微分補正値DdSFTを算出する。具体的には、比例補正値DpSFT=偏差EPsft×比例ゲインKpSFT、積分補正値DiSFT=位置偏差積分値EPsftI×積分ゲインKiSFT、微分補正値DdSFT=位置偏差微分値EPsftD×微分ゲインKdSFTとして算出する。
ステップ806では、比例補正値DpSFT、積分補正値DiSFT、微分補正値DdSFTから、フィードバック補正値DPsftFBを算出し、ステップ807にて、フィードバック補正値DPsftFBに変換係数αを乗算することによってフィードバック荷重TFsftFBを算出する。
次に図9を用いて、本実施形態による自動変速機の制御装置のシフト制御例について説明する。図9のシフト制御例では、レンジ位置信号RngPosが非駆動レンジであるNレンジから、駆動レンジであるDレンジに切り替えた場合、所謂N→Dレンジセレクト時の制御内容を示している。
図9は、本発明の一実施形態による自動変速機の制御装置のシフト制御例を示すタイムチャートである。
図9において、図9(A)は、目標とするギア位置を示している。Nはニュートラル、1stは1速、2ndは2速である。図9(B)は、第1同期噛合い機構21の押付け荷重の目標値である目標シフト荷重TFsftを示している。
図9(C)は、第1速段と第2速段を選択できる第1同期噛合い機構21のストローク位置である、目標シフト位置TPsft、及びシフト位置RPsftを示している。0(N)は中立(ニュートラル)、1stは1速の噛合い位置、2ndは2速の噛合い位置である。図9(D)は、シフトアクチュエータ62のシフトモータ62bの電流を示している。
時刻t1以前では、図9(A)に示すように、目標ギア位置がN(ニュートラル)であり、目標シフト位置TPsft、シフト位置RPsftは0(N)の位置であり、ニュートラルに保たれている。このとき、図9(B)に示すように、目標シフト荷重TFsftは0であり、その結果、図9(D)に示すように、シフト電流も0である。
時刻t1にて、レンジ位置信号RngPosが非駆動レンジであるNレンジから、駆動レンジであるDレンジに切り替わり、変速機制御ユニット100によって目標ギア位置がN(ニュートラル)から1st(1速)となると、図5のステップ505が実行され、図6(B)の設定によってフィードフォワード荷重TFsftFFが演算される。また、図7のステップ703からステップ709の処理によって、図9(C)の点線に示すように、目標シフト位置TPsftが0(N)から、図7のステップ704で設定された1速側の目標当接位置まで変化する。また、図8のステップ803からステップ807の処理によってフィードバック荷重TFsftFBが演算され、時刻t1付近では、目標シフト位置TPsftとシフト位置RPsftの偏差によってフィードバック荷重TFsftFBはやや大きな値となり、その後、目標当接位置に留まっている目標シフト位置TPsftにシフト位置RPsftが近づくにつれて、図8のステップ805の微分補正値DpSFTによって、シフト位置RPsftの移動速度を低下させるようにフィードバック荷重TFsftFBが小さい値となり、その結果、図9(B)の目標シフト荷重TFsftは、時刻t1付近では、シフト位置RPsftを素早く移動させるように大きな値をとり、時刻t2に近づくにつれてシフト位置RPsftの移動速度が小さくなるように小さい値となり、シフト位置RPsftはボーク位置までスムーズに移動する。
時刻t2以降は、図5のステップ505、図6(B)の設定によって、除々にフィードフォワード荷重TFsftFFが増大し、図9(B)に示すように、目標シフト荷重TFsftも除々に増大する。その結果、図9(D)に示すように、シフト電流も除々に増大し、時刻t3にて、第1同期噛合い機構21のスリーブと1速ドリブンギア11の回転が一致(同期)する。
時刻t3以降は、シフト位置RPsftが、ボーク位置から、1速の噛合い位置へと移動を開始し、時刻t4にて移動が完了する。このとき、図5のステップ505、図6(A)の設定により、シフト位置RPsftが1速の噛合い位置に近づくにつれて、フィードフォワード荷重TFsftFFが除々に小さい値となる。また、図7のステップ709によって、目標シフト位置TPsftと、シフト位置RPsftも一致するため、図8のステップ805の比例補正値DpSFT、微分補正値DdSFTは0となり、目標シフト荷重TFsftはフィードフォワード荷重TFsftFFによって、シフト位置RPsftが1速の噛合い位置に近づくにつれて除々に小さい値となる。目標シフト荷重TFsftが除々に小さい値となることで、第1同期噛合い機構21のスリーブと1速ドリブンギア11が衝突する際のショックを低減できる。時刻t6にて、図5のステップ502、及び図7のステップ701、及び図8のステップ801によって、ギアの締結動作が完了したと判定され、図9(B)に示すように、目標シフト荷重TFsft=0、図9(D)に示すように、シフト電流=0となる。
本実施形態の第1の特徴は、図9(C)に示すように、シフト位置RPsftが、中立位置0(N)からボーク位置まで移動する時刻t1からt2の期間において、時刻t1付近では、シフト位置RPsftが素早く移動し、時刻t2に近づくにつれてシフト位置RPsftの移動速度が小さくなり、シフト位置RPsftが中立位置0(N)からボーク位置まで移動するまでの時間(t2−t1)を短縮しつつ、スリーブがリングに衝突し、リングと第1ドリブンギア11間のコーン面が衝突することによるショック発生を回避することができ、フィーリングの良い変速を実現することができる。
本実施形態の第2の特徴は、図9の時刻t2以降、図5のステップ505、図6(B)の設定によって、除々にフィードフォワード荷重TFsftFFが増大し、図9(B)に示すように、目標シフト荷重TFsftも除々に増大する。その結果、図9(D)に示すように、シフト電流も除々に増大し、時刻t3にて、第1同期噛合い機構21のスリーブと1速ドリブンギア11の回転が一致(同期)する。これによって、時間(t3−t2)を短くすることができる。
本実施形態の第3の特徴は、上記第1、第2の特徴を以下のようにして具体化している。すなわち、スリーブの目標位置を設定し、スリーブの位置が目標位置に追従するようにスリーブの押付け荷重をフィードバック制御する。そのとき、スリーブの目標位置を、制御開始から所定時間が経過するまでの第一段階(図9の時刻t1から所定時間までの間、図9(C)に点線で示す)においては、スリーブの目標位置を所定の傾きで増加させ、第一段階以降、スリーブと遊転ギアの回転が同期するまでの第二段階においては、スリーブの目標位置の増加傾きを、第一段階におけるスリーブの目標位置の増加傾きよりも小さい傾き(図9(C)に点線で示すように、時刻t3までは、増加傾きを零)とし、第二段階以降の第三段階(図9の時刻t3〜t4)においては、第二段階におけるスリーブの目標位置の増加傾きよりも大きい傾きでスリーブの目標位置を増加させるように設定するものである。
次に、図10を用いて、本実施形態による自動車の制御装置によって制御される自動変速機の第2の構成例について説明する。
図10は、本発明の一実施形態による自動車の制御装置によって制御される自動変速機の第2の構成例のスケルトン図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
自動変速機51には、第1クラッチ1008、第2クラッチ1009、第1入力軸1041、第2入力軸1042、出力軸1043、第1ドライブギア1、第2ドライブギア2、第3ドライブギア3、第4ドライブギア4、第5ドライブギア5、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15、第1噛合い伝達機構1021、第2噛合い伝達機構1022、第3噛合い伝達機構1023、回転センサ1031、回転センサ1032、回転センサ1033が設けられている。
本構成例が、図1に図示の構成例と異なる点は、図1に図示の構成例が入力軸クラッチ8の係合によってエンジン7のトルクを変速機入力軸41に伝達するように構成されているのに対し、本構成例がツインクラッチで構成している点である。
すなわち、第1クラッチ1008の係合によって、エンジン7のトルクを第1入力軸1041に伝達し、また第2クラッチ1009の係合によって、エンジン7のトルクを第2入力軸1042に伝達する。第2入力軸1042は中空になっており、第1入力軸1041は、第2入力軸1042の中空部分を貫通し、第2入力軸1042に対し回転方向への相対運動が可能な構成となっている。
第2入力軸1042には、第1ドライブギア1と第3ドライブギア3と第5ドライブギア5が固定されており、第1入力軸1041に対しては、回転自在となっている。また、第1入力軸1041には、第2ドライブギア2と第4ドライブギア4が固定されており、第2入力軸1042に対しては、回転自在となっている。
第1クラッチ1008の係合、解放は、電磁弁105aによって制御する油圧によって行われ、第2クラッチ1009の係合、解放は、電磁弁105bによって制御する油圧によって行われる。
また、第1入力軸1041の回転数を検出する手段として、センサ1031が設けられており、第2入力軸1042の回転数を検出する手段として、センサ1032が設けられている。
一方、出力軸1043には、第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15が設けられている。第1ドリブンギア11、第2ドリブンギア12、第3ドリブンギア13、第4ドリブンギア14、第5ドリブンギア15は出力軸1043に対して回転自在に設けられている。
また、出力軸1043の回転数を検出する手段として、センサ1033が設けられている。
また、第1ドリブンギア11と第3ドリブンギア13の間には、第1ドリブンギア11を出力軸1043に係合させたり、第3ドリブンギア13を出力軸1043に係合させる、第1噛合い伝達機構1021が設けられている。
また、第2ドリブンギア12と第4ドリブンギア14の間には、第2ドライブギア12を出力軸1043に係合させたり、第4ドリブンギア14を出力軸1043に係合させる、第3噛合い伝達機構1023が設けられている。
また、第5ドリブンギア15には、第5ドリブンギア15を出力軸1043に係合させる、第2噛合い伝達機構1022が設けられている。
ここで、噛合い伝達機構1021、1022、1023は、図2に示したように、摩擦面を押しつけることによって回転数を同期させて噛合いを行う同期噛合い式を用いる。
制御装置である変速機制御ユニット102によって油圧機構105に設けられた電磁弁105aの電流を制御することで、第1クラッチ1208の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、油圧機構105、電磁弁105aが第1クラッチ1208を作動させる作動機構として構成されている。
また、変速機制御ユニット102によって油圧機構105に設けられた電磁弁105bの電流を制御することで、第2クラッチ1209の伝達トルクの制御を行っている。すなわち、油圧機構105、電磁弁105bが第2クラッチ1209を作動させる作動機構として構成されている。
また、変速機制御ユニット102によって、油圧機構105に設けられた電磁弁105c、105dの電流を制御することで、第1シフト機構71に設けられた油圧ピストン(図示しない)を介して、第1噛合い伝達機構1021の荷重またはストローク位置(第一シフト位置)を制御できるようになっている。なお、第1シフト機構71には第一シフト位置を計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。第1シフト機構71によって、第1噛合い伝達機構1021の位置を移動し、第1ドリブンギア11または、第3ドリブンギア13と係合させることで、第2入力軸1042の回転トルクを、第1噛合い伝達機構1021を介して出力軸1043へと伝達することができる。
また、変速機制御ユニット102によって、油圧機構105に設けられた電磁弁105e、105fの電流を制御することで、第2シフト機構72に設けられた油圧ピストン(図示しない)を介して、第2噛合い伝達機構1022の荷重またはストローク位置(第二シフト位置)を制御できるようになっている。なお、第2シフト機構72には第二シフト位置を計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。また、第2シフト機構72によって、第2噛合い伝達機構1022の位置を移動し、第5ドリブンギア15と係合させることで、第2入力軸1042の回転トルクを、第2噛合い伝達機構1022を介して出力軸1043へと伝達することができる。
また、変速機制御ユニット102によって、油圧機構105に設けられた電磁弁105g、105hの電流を制御することで、第3シフト機構に設けられた油圧ピストン(図示しない)を介して、第3噛合い伝達機構1023の荷重またはストローク位置(第三シフト位置)を制御できるようになっている。なお、第3シフト機構75には第三シフト位置を計測する位置センサ(図示しない)が設けられている。また、第3シフト機構によって、第3噛合い伝達機構1023の位置を移動し、第2ドリブンギア12または、第4ドリブンギア14と係合させることで、第1入力軸1041の回転トルクを、第3噛合い伝達機構1023を介して出力軸1043へと伝達することができる。
図10に示す構成においても、噛合い伝達機構1021、1022、1023を制御するにあたり、図4から図8に示した制御と同様の制御を実行することで、第一シフト位置、または第二シフト位置、または第三シフト位置が中立位置0(N)からボーク位置まで移動するまでの時間を短縮しつつ、スリーブがリングに衝突し、リングと遊転ギア間のコーン面が衝突することによるショック発生を回避することができ、フィーリングの良い変速を実現することができる。
以上、説明したように、本実施形態によれば、スリーブを遊転ギア側へ押しつけて同期噛合い機構の噛合いを行う際に、スリーブがリングを押付け始める時点よりも前に、スリーブが移動を開始したときの移動速度よりもスリーブの移動速度が小さくなるように作動装置を制御することにより、スリーブの移動速度過大によるショックを発生させることなく、かつ可能な限り短時間でスリーブを移動せしめることができる。